特許第6487633号(P6487633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487633粘着剤組成物及びその製造方法、ならびに、粘着剤層及びその製造方法
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  • 特許6487633-粘着剤組成物及びその製造方法、ならびに、粘着剤層及びその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487633
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及びその製造方法、ならびに、粘着剤層及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20190311BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190311BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20190311BHJP
   C09J 123/20 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C09J153/02
   C09J11/06
   C09J7/38
   C09J123/20
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-112618(P2014-112618)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227395(P2015-227395A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金塚 洋平
(72)【発明者】
【氏名】木口 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】清水 政一
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−302496(JP,A)
【文献】 国際公開第02/040611(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/077267(WO,A1)
【文献】 特開平02−001788(JP,A)
【文献】 特開平02−153987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部と、
(B)23℃にて固体であり、分子量が2,000以下である化合物0.01質量部以上5質量部以下と、
(C)23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒と、を含む粘着剤組成物であって、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物は、一般式(A−B)nで表されるブロック共重合体(a1)の水素添加物(1)と一般式A−B−A又は(A−B)m−Xで表されるブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)(前記式中、Aはそれぞれ同一又は異なって、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックAを表し、Bはそれぞれ同一又は異なって、共役ジエン化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックBを表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上の整数を表し、Xはカップリング剤残基を表す。)とからなり、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物及び前記(B)化合物が、いずれも前記(C)溶媒に溶解しており、
粘着剤組成物から前記(C)溶媒を除去して得られる粘着剤層のJIS K7361法における全光線透過率が80%以上である、粘着剤組成物。
【請求項2】
(D)第1の相溶剤5質量部以上80質量部以下をさらに含み、
前記(D)第1の相溶剤は、前記重合体ブロックAに相溶する性質を有し、軟化点が80℃以上であり、かつ、前記(C)溶媒に溶解している、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
(E)第2の相溶剤10質量部以上150質量部以下をさらに含み、
前記(E)第2の相溶剤は、前記重合体ブロックBに相溶する性質を有し、23℃において液体であり、かつ、前記(C)溶媒に溶解している、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(A)水添ブロック共重合体組成物を構成する前記ブロック共重合体(a1)の水素添加物(1)と前記ブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)との質量比が90:10〜10:90である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(B)化合物は、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤及び金属不活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(D)第1の相溶剤は、芳香族系粘着付与樹脂である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記芳香族系粘着付与樹脂が、芳香族石油樹脂、スチレン系重合体、α−メチルスチレン系重合体、スチレン−(α−メチルスチレン)系共重合体、スチレン−脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン−(α−メチルスチレン)−脂肪族炭化水素系共重合体及びスチレン−芳香族炭化水素系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記(E)第2の相溶剤が、ポリブテン系化合物、ポリイソブチレン系化合物及びポリイソプレン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記(D)第1の相溶剤及び前記(E)第2の相溶剤の合計含有量が、前記(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部に対して20質量部以上200質量部以下である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を製造する方法であって、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部に対し前記(B)化合物を0.01質量部以上5質量部以下含有する水添ブロック共重合体組成物のペレットであって、前記ペレットの内部及び表面に前記(B)化合物が存在することを特徴とする水添ブロック共重合体組成物ペレットを前記(C)溶媒に溶解させる工程を含む、粘着剤組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を基材上に塗工して膜を得る工程と、
前記膜を乾燥させることにより、前記(C)溶媒を除去して、粘着剤層を得る工程と、を含む、粘着剤層の製造方法。
【請求項12】
(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部と、
(B)23℃にて固体であり、分子量が2,000以下である化合物0.01質量部以上5質量部以下と、含む粘着剤層であって、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物は、一般式(A−B)nで表されるブロック共重合体(a1)の水素添加物(1)と一般式A−B−A又は(A−B)m−Xで表されるブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)(前記式中、Aはそれぞれ同一又は異なって、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックAを表し、Bはそれぞれ同一又は異なって、共役ジエン化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックBを表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上の整数を表し、Xはカップリング剤残基を表す。)とからなり、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物及び前記(B)化合物が、いずれも、(C)23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒に溶解する性質を有し、
JIS K7361法における全光線透過率が80%以上である、粘着剤層。
【請求項13】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から前記(C)溶媒を除去することにより得られる、請求項12に記載の粘着剤層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及びその製造方法、ならびに、粘着剤層及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水添ブロック共重合体は、粘着剤組成物の成分として使用されている。水添ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックと、共役ジエン化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックBとを含む共重合体の水素添加物である(例えば、特許文献1)。
【0003】
この水添ブロック共重合体は一般に、ペレット状、フレーク状又はブロック状等の粒子状の形状にて取り扱われる。しかしながら、粘着剤に使用されるような比較的柔軟な水添ブロック共重合体は自着性(自己ブロッキング性)が強いため、粒子の表面を、タルクや有機高分子粒子等のブロッキング防止剤で覆うことで、粒子同士の自着(ブロッキング)を防止する措置がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−295056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなブロッキング防止剤と水添ブロック共重合体との混合物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成する場合において、該粘着剤組成物を溶媒に溶解させたときに、ブロッキング防止剤が該溶媒に溶解しないため、溶液又は該粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層にくすみが生じることがある。この場合、透明性が要求される用途には不適となる。
【0006】
また、くすみの発生は、該粘着剤組成物又は該粘着剤層が高温高湿環境下に曝された場合に顕著に生じる場合がある。例えば、該粘着剤組成物又は該粘着剤層を常温下で溶媒に溶解させた際に軽微なくすみが生じたとしても、高温高湿環境下では、該粘着剤組成物又は該粘着剤層に看過できないくすみとなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、水添ブロック共重合体を含む粘着剤組成物の組成について鋭意検討したところ、特定の材料を含む粘着剤組成物及び該粘着剤組成物から形成される粘着剤層が高い透明性及び耐湿熱白化性を有し、かつ、後述の添加成分により、優れた密着性、段差追従性を付与できることを見出した。
【0008】
本発明は、高い透明性を有し、かつ、優れた耐湿熱白化性を有する粘着剤層を得ることができる粘着剤組成物及びその製造方法、ならびに、粘着剤層及びその製造方法を提供する。
【0009】
1.本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、
(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部と、
(B)分子量が2,000以下である化合物0.01質量部以上5質量部以下と、
(C)23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒とを含む粘着剤組成物であって、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物は、一般式(A−B)nで表されるブロック共重合体(a1)の水素添加物(1)と一般式A−B−A又は(A−B)m−Xで表されるブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)(前記式中、Aはそれぞれ同一又は異なって、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックAを表し、Bはそれぞれ同一又は異なって、共役ジエン化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックBを表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上の整数を表し、Xはカップリング剤残基を表す。)とからなり、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物及び前記(B)化合物が、いずれも前記(C)溶媒に溶解している。
【0010】
2.上記1に記載の粘着剤組成物において、(D)第1の相溶剤5質量部以上80質量部以下をさらに含み、前記(D)第1の相溶剤は、前記重合体ブロックAに相溶する性質を有し、軟化点が80℃以上であり、かつ、前記(C)溶媒に溶解することができる。
【0011】
3.上記1又は2に記載の粘着剤組成物において、(E)第2の相溶剤10質量部以上150質量部以下をさらに含み、
前記(E)第2の相溶剤は、前記重合体ブロックBに相溶する性質を有し、23℃において液体であり、かつ、前記(C)溶媒に溶解していることができる。
【0012】
4.上記1ないし3のいずれかに記載の粘着剤組成物において、前記(A)水添ブロック共重合体組成物を構成する前記ブロック共重合体(a1)の水素添加物(1)と前記ブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)との質量比が90:10〜10:90であることができる。
【0013】
5.上記1ないし4のいずれかに記載の粘着剤組成物において、前記(B)化合物は、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤及び金属不活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることができる。
【0014】
6.上記1ないし5のいずれかに記載の粘着剤組成物において、前記(D)第1の相溶剤は、芳香族系粘着付与樹脂であることができる。
【0015】
7.上記6に記載の粘着剤組成物において、前記芳香族系粘着付与樹脂が、芳香族石油樹脂、スチレン系重合体、α−メチルスチレン系重合体、スチレン−(α−メチルスチレン)系共重合体、スチレン−脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン−(α−メチルスチレン)−脂肪族炭化水素系共重合体及びスチレン−芳香族炭化水素系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることができる。
【0016】
8.上記1ないし7のいずれかに記載の粘着剤組成物において、前記(E)第2の相溶剤が、ポリブテン系化合物、ポリイソブチレン系化合物及びポリイソプレン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることができる。
【0017】
9.上記1ないし8のいずれかに記載の粘着剤組成物において、前記(D)第1の相溶剤及び前記(E)第2の相溶剤の合計含有量が、前記(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部に対して20質量部以上200質量部以下であることができる。
【0018】
10.本発明の一態様に係る粘着剤組成物の製造方法は、上記1ないし9のいずれかに記載の粘着剤組成物の製造方法であって、前記(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部に対し前記(B)化合物を0.01質量部以上5質量部以下含有する水添ブロック共重合体組成物のペレットであって、前記ペレットの内部及び表面に前記(B)化合物が存在することを特徴とする水添ブロック共重合体組成物ペレットを前記(C)溶媒に溶解させる工程を含む。
【0019】
11.本発明の一態様に係る粘着剤層の製造方法は、上記1ないし9のいずれかに記載の粘着剤組成物を基材上に塗工して膜を得る工程と、前記膜を乾燥させることにより、前記(C)溶媒を除去して、粘着剤層を得る工程と、
を含む。
【0020】
12.本発明の一態様に係る粘着剤層は、
(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部と、
(B)分子量が2,000以下である化合物0.01質量部以上5質量部以下と、含む粘着剤層であって、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物は、一般式(A−B)nで表されるブロック共重合体(a1)の水素添加物(1)と一般式A−B−A又は(A−B)m−Xで表されるブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)(前記式中、Aはそれぞれ同一又は異なって、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックAを表し、Bはそれぞれ同一又は異なって、共役ジエン化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックBを表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上の整数を表し、Xはカップリング剤残基を表す。)とからなり、
前記(A)水添ブロック共重合体組成物及び前記(B)化合物が、いずれも、(C)23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒に溶解する性質を有する。
【0021】
13.上記12に記載に記載の粘着剤層において、上記1ないし9のいずれかに記載の粘着剤組成物から前記(C)溶媒を除去することにより得られることができる。
【発明の効果】
【0022】
上記1ないし9のいずれかに記載の粘着剤組成物は、前記(A)水添ブロック共重合体組成物100質量部と、前記(B)分子量が2,000以下である化合物0.01質量部以上5質量部以下と、前記(C)23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒と、を含み、かつ、前記(A)水添ブロック共重合体組成物及び前記(B)化合物が、いずれも前記(C)溶媒に溶解していることにより、透明性に優れている。このため、該粘着剤組成物を用いて成膜した後、前記(C)溶媒を除去して得られる粘着剤層において、前記(B)化合物の溶解性に優れ、かつ、該(B)化合物が析出しにくい。これにより、該粘着剤層は透明性が高く、かつ、耐湿熱白化性に優れている。また、後述の添加成分により、優れた密着性及び段差追従性を該粘着剤層に付与することができる。
【0023】
また、上記10に記載の粘着剤組成物の製造方法によれば、前記(A)水添ブロック共重合体組成物ペレットを前記(C)溶媒に溶解させる工程を含むことにより、前記(A)水添ブロック共重合体組成物、前記(B)化合物を前記(C)溶媒に溶解させることができるため、透明性に優れた粘着剤組成物を得ることができ、後に続く、粘着剤組成物の製造工程で一般的に行われる濾過工程、さらにはより透明性が要求される光学用途での精密濾過工程においても、濾過装置に目詰まりを生じさせることなく、スムーズな濾過作業が可能となる。
【0024】
上記11に記載の粘着剤層の製造方法によれば、上記1ないし9のいずれかに記載の粘着剤組成物を基材上に塗工して膜を得る工程と、前記膜を乾燥させることにより、前記(C)溶媒を除去して、粘着剤層を得る工程と、を含むことにより、前記(B)化合物の溶解性に優れ、かつ、該(B)化合物が析出しにくい粘着剤層を得ることができるため、透明性及び耐湿熱白化性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0025】
また、上記12又は13に記載の粘着剤層は、前記(A)水添ブロック共重合体組成物及び前記(B)化合物が、いずれも、(C)23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒に溶解する性質を有することにより、例えば、透明性及び耐湿熱白化性を必要とする環境下で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る出入力装置(タッチパネル式入出力装置)の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0028】
1.粘着剤組成物
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、(A)水添(水素添加:hydrogenated)ブロック共重合体組成物(以下、単に「(A)成分」と記載する場合もある。)100質量部と、(B)分子量が2,000以下である化合物(以下、単に「(B)成分」と記載する場合もある。)0.01質量部以上5質量部以下と、(C)23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒(以下、単に「(C)成分」と記載する場合もある。)とを含む。
【0029】
本実施形態に係る粘着剤組成物では、(A)成分及び(B)成分が、いずれも(C)成分に溶解している。本発明において、「(A)成分及び(B)成分が、いずれも(C)成分に溶解している」ことは、目視にて(A)成分又は(B)成分が固体として粘着剤組成物中に確認されず、くすみや白濁も該粘着剤組成物中に見られないことをいい、具体的には、目開き1μmの濾紙で濾過した際に目詰まりを生じさせず、濾紙上に残渣がないことをいう。
【0030】
1.1.(A)成分
(A)成分は、一般式(A−B)nで表されるブロック共重合体(a1)の水素添加物(以下、単に「水素添加物(1)」と記載することもある。)(1)と一般式A−B−A又は(A−B)m−Xで表されるブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)(以下、単に「水素添加物(2)」と記載することもある。)(前記式中、Aはそれぞれ同一又は異なって、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックAを表し、Bはそれぞれ同一又は異なって、共役ジエン化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックBを表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上の整数を表し、Xはカップリング剤残基を表す。)とからなる。
【0031】
一般式(A−B)nにおいて、nは1、2又は3であることができる。また、一般式(A−B)m−Xにおいて、1以上の整数であるmは、2以上4以下であることが好ましい。
【0032】
水素添加物(1)及び水素添加物(2)は熱可塑性エラストマーである。水素添加物(1)及び水素添加物(2)を構成する、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックAにおいて、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位は、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンであることが好ましく、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましい(さらに好ましくはスチレン)。また、水素添加物(1)及び水素添加物(2)を構成する、共役ジエン化合物由来の単量体単位からなる重合体ブロックBにおいて、共役ジエン化合物由来の単量体単位は、例えばブタジエン、イソプレン、もしくはブタジエンとイソプレンの混合物であることが好ましく、イソプレンであることがより好ましい。また、一般式(A−B)m−Xにおけるカップリング剤残基としては、例えば、ジビニルベンゼン;エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの多価エポキシ化合物;ジメチルジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランなどのハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチルなどのエステル化合物;炭酸ジメチル等の炭酸エステル化合物;ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのアルコキシシラン化合物などの公知のカップリング剤に由来するカップリング剤残基が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る粘着剤組成物では、得られる粘着剤層の粘弾性の調整が容易である点で、(A)成分における水素添加物(1)と水素添加物(2)との質量比が90:10〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがより好ましく、70:30〜30:70であることがさらに好ましい(ここで、(A)成分100質量%とした場合、水素添加物(1)と水素添加物(2)との合計量が100質量%である。)なお、水添添加物(1)と水添添加物(2)との質量比は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られた溶出曲線から求めることができる。
【0034】
本実施形態に係る粘着剤組成物に耐久性を付与できる点で、水素添加物(1)が含有する重合体ブロックAの含有量及び水素添加物(2)が含有する重合体ブロックAの含有量は、それぞれ、当該水素添加物(1)又は当該水素添加物(2)の3質量%以上40質量%以下であることができ、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。なお、ブロックAの含有量は、H−NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0035】
本実施形態に係る粘着剤組成物に段差追従性を付与できる点で、水素添加物(1)及び水素添加物(2)が含有する重合体ブロックBの含有量は、それぞれ、当該水素添加物(1)又は当該水素添加物(2)の60質量%以上97質量%以下であることができ、70質量%以上95質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。なお、ブロックBの含有量は、H−NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0036】
本実施形態に係る粘着剤組成物に耐候性を付与できる点で、水素添加物(1)及び水素添加物(2)は、前記重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物由来の炭素−炭素二重結合が水素添加されたものであり、その水素添加率がそれぞれ50重量%以上である(かつ100質量%以下)ことが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。なお、水素添加率は、水素添加の前後において、H−NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0037】
本発明において、前記重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物由来の炭素−炭素二重結合の水素添加率とは、共役ジエン化合由来の炭素−炭素二重結合のうち、水素添加により飽和されているものの割合をいう。
【0038】
本実施形態に係る粘着剤組成物に、より優れた段差追従性を付与できる点で、水素添加物(1)の重量平均分子量は1万以上30万以下であることが好ましく、2万以上であることがより好ましく、3万以上であることがさらに好ましく、一方、25万以下であることがより好ましく、20万以下であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態に係る粘着剤組成物に耐久性を付与できる点で、水素添加物(2)の重量平均分子量は5万以上50万以下であることが好ましく、8万以上であることがより好ましく、10万以上であることがさらに好ましく、一方、40万以下であることがより好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。なお、ここで言う重量平均分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0040】
水素添加物(1)としては、例えば、スチレンとイソプレンのジブロック共重合体の水素添加物(SEP)、スチレンとブタジエンのジブロック共重合体の水素添加物(SEB)、スチレンとブタジエン/イソプレンのジブロック共重合体の水素添加物(SEEP)などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
水素添加物(2)としては、例えば、スチレンとイソプレンとスチレンのトリブロック共重合体の水素添加物(SEPS)、スチレンとブタジエンとスチレンのトリブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、スチレンとブタジエン/イソプレンとスチレンのトリブロック共重合体の水素添加物(SEEPS)などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
1.2.(B)成分
(B)成分である分子量が2,000以下である化合物は、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の透明性、密着性及び耐湿熱白化性に寄与する。
【0043】
(B)成分は無機化合物又は有機化合物であることができ、(C)成分への溶解性に優れている点で、有機化合物であることが好ましい。さらに、(C)成分への溶解性の観点では、(B)成分は無機塩又は有機塩を含まない化合物であることが好ましい。
【0044】
具体的な(B)成分としては、紫外線吸収剤(例えば、チヌビン326(分子量316)、チヌビン329(分子量323))、光安定剤(例えば、アデカスタブLA−77(分子量481)、アデカスタブLA−52(分子量847))、酸化防止剤(例えば、BHT(分子量220)、アデカスタブAO−330(分子量775)、アデカスタブAO−60(分子量 1178)、イルガノックス1076(分子量531)など)、金属不活性剤(例えば、ベンゾトリアゾール(分子量119))からなる群より選択される少なくとも1種である。(B)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本実施形態に係る粘着剤組成物の透明性を担保できる点で、本実施形態に係る粘着剤組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であり、0.2質量部以上3質量部以下であることが好ましく、0.25質量部以上2.5質量部以下がより好ましい。
【0046】
(C)成分への溶解性に優れている点で、(B)成分の分子量は1,800以下であることが好ましく、1,500以下であることがより好ましく、通常、100以上である。なお、(B)成分が高分子化合物である場合、(B)成分の分子量は、重量平均分子量(Mw)を意味する。
【0047】
(B)成分の分子量が2,000を超える場合、粘着剤組成物から形成される粘着剤層中で(B)成分が析出しやすくなる。その結果、該粘着剤層の粘着力が低下することがある。また、(B)成分の析出により、該粘着剤層の透明性が低下することがある。さらに、該粘着剤層が常温で透明であったとしても、高温高湿条件下に該粘着剤層を曝した場合、分子量の大きさに起因して析出しやすく、耐湿熱白化性に劣ることがある。
【0048】
また、水添ブロック共重合体組成物(A)のペレット上に担持し、ブロッキングを抑制できる点で、(B)成分は常温で固体であるものが好ましい。
【0049】
また、(B)成分の平均粒子径は50μm以下であることが好ましく、通常、0.01μm以上であり、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。本発明において、微粉状粒子を分級したり、ペレット状、顆粒状の粒子を粉砕して所望の粒径として使用したりすることができる。なお、粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡によって測定することができ、例えば、後述する本願実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0050】
1.3.(C)成分
(C)成分である23℃にて液体である脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である溶媒は、(A)成分及び(B)成分を溶解させることができる性質を有する。
【0051】
(C)成分として使用可能な脂肪族炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、メチルペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素,シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0052】
また、(C)成分として使用可能な芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンが挙げられる。(C)成分として、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素のうち1種又は2種を組み合わせて用いることができる。
【0053】
本実施形態に係る粘着剤組成物において、(A)成分及び(B)成分を溶解させることができ、かつ、本実施形態に係る粘着剤組成物から粘着剤層を形成する際の塗工作業性を良好にする点で、本実施形態に係る粘着剤組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して100質量部以上1,000質量部以下であることが好ましく、200質量部以上600質量部以下であることがより好ましい。
【0054】
1.4.(D)第1の相溶剤
第1の相溶剤(以下、単に「(D)成分」と記載する場合もある。)は、(A)成分を構成するブロック共重合体(a1)又はブロック共重合体(a2)に含まれる前記重合体ブロックAに相溶する性質を有し、軟化点(softening point)が80℃以上であり、かつ、(C)成分に溶解している。
【0055】
本発明において、「(D)成分が(C)成分に溶解している」ことは、目視にて(D)成分が固体として本実施形態に係る粘着剤組成物中に確認されず、くすみや白濁も見られないことをいい、具体的には、目開き1μmの濾紙で濾過した際に目詰まりを生じさせず、濾紙上に残渣がないことをいう。
【0056】
本発明において「相溶性を有する(compatible)」又は「相溶する(compatibilizing)」とは、異なる2つの成分を混合して得られる混合物において、濁り又は相分離が目視にて確認されないことをいう。
【0057】
ここで、(D)成分が前記重合体ブロックAに相溶するか否かは、前記重合体ブロックAに相当する成分、すなわち、芳香族ビニル単量体のみから合成される重合体の水素添加物と、(D)成分と、を用いて評価することとする。
【0058】
より具体的には、芳香族ビニル単量体のみから重合される重合体の水素添加物と(D)成分とを、必要に応じて溶媒を用いて混合して得られる混合物において濁りの発生、又は、該重合体の水素添加物を含有する相と(D)成分を含有する相との相分離が目視にてみられない場合は、(D)成分は前記重合体ブロックAに相溶するものとし、一方、上述の濁り又は相分離が目視にてみられる場合、(D)成分は前記重合体ブロックAに相溶しないものする。
【0059】
本実施形態に係る粘着剤組成物が(D)成分を含むことにより、(D)成分が前記重合体ブロックAに相溶するため、該粘着剤組成物から形成される粘着剤層に、ある程度の硬さを付与しつつ、被着体への密着性を高めることができ、かつ、該粘着剤層の耐熱性を高めることができる。
【0060】
(D)成分は例えば、芳香族系粘着付与樹脂(tackifier resin)であることができる。(D)成分として用いられる芳香族系粘着付与樹脂は、相溶性の観点からは分子量5,000以下であるのが好ましい。
【0061】
(D)成分として使用可能な芳香族系粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族石油樹脂、スチレン系重合体、α−メチルスチレン系重合体、スチレン−(α−メチルスチレン)系共重合体、スチレン−脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン−(α−メチルスチレン)−脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン−芳香族炭化水素系共重合体などがあげられる。
【0062】
より具体的には、例えば市販のスチレン−芳香族炭化水素系共重合体としてのFMR−0150(軟化点145℃、三井化学社製)、スチレン−脂肪族炭化水素系共重合体としてのFTR−6100(軟化点100℃、三井化学社製)、FTR−6110(軟化点110℃、三井化学社製)及びFTR−6125(軟化点125℃、三井化学社製)、スチレン−(α−メチルスチレン)−脂肪族炭化水素系共重合体としてのFTR−7100(軟化点100℃、三井化学社製)、スチレン系重合体としてのFTR−8120(軟化点120℃、三井化学社製)及びSX−100(軟化点100℃、ヤスハラケミカル社製)、α−メチルスチレン系重合体としてのFTR−0100(軟化点100℃、三井化学社製)、スチレン−(α−メチルスチレン)系共重合体としてのFTR−2120(軟化点120℃、三井化学社製)、FTR−2140(軟化点145℃、三井化学社製)、クリスタレックス3100(軟化点100℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス3085(軟化点85℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス5140(軟化点140℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス1120(軟化点120℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックスF85(軟化点85℃、イーストマンケミカル社製)、クリスタレックスF100(軟化点100℃、イーストマンケミカル社製)及びクリスタレックスF115(軟化点115℃、イーストマンケミカル社製)、などを使用することもできる。(D)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
本実施形態に係る粘着剤組成物に耐久性を付与して、被着体との密着性を高めることができ、かつ耐久性を高めることができる観点から、(D)成分の軟化点は80℃以上であることができ、95℃以上であることが好ましい。
【0064】
(A)成分との相溶性を高めることができる観点で、本実施形態に係る粘着剤組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。
【0065】
1.5.(E)第2の相溶剤
第2の相溶剤(以下、単に「(E)成分」と記載する場合もある。)は、(A)成分を構成するブロック共重合体(a1)又はブロック共重合体(a2)に含まれる前記重合体ブロックBに相溶する性質を有し、かつ、常温(23℃)において液体であり、かつ、(C)成分に溶解している。
【0066】
なお、本発明において「液体」とは、粘稠な粘弾性(viscoelastic)液体や、その他低粘度の液体も含むものである。
【0067】
本発明において、「(E)成分が(C)成分に溶解している」ことは、目視にて(E)成分が固体として粘着剤組成物中に確認されず、くすみや白濁も該粘着剤組成物に見られないことをいい、さらに、目開き1μmの濾紙で濾過した際に目詰まりを生じさせず、濾紙上に残渣がないことをいう。
【0068】
本発明において「相溶性を有する(compatible)」又は「相溶する(compatibilizing)」とは、異なる2つの成分を混合して得られる混合物において、濁り又は相分離が目視にて確認されないことをいう。
【0069】
ここで、(E)成分が前記重合体ブロックBに相溶するか否かは、前記重合体ブロックBに相当する成分、すなわち、共役ジエン単量体のみから合成される重合体の水素添加物と、(E)成分と、を用いて評価することとする。
【0070】
より具体的には、共役ジエン単量体のみから重合される重合体の水素添加物と(E)成分とを、必要に応じて溶媒を用いて混合して得られる混合物において濁りの発生、又は、該重合体の水素添加物を含有する相と(E)成分を含有する相との相分離が目視にてみられない場合は、(E)成分は前記重合体ブロックBに相溶するものとし、一方、上述の濁り又は相分離が目視にてみられる場合、(E)成分は前記重合体ブロックBに相溶しないものする。
【0071】
本実施形態に係る粘着剤組成物が(E)成分を含むことにより、(E)成分が前記重合体ブロックBに相溶するため、該粘着剤層の濡れ性(wet-ability)を高めることによる結果として、耐久性を高めることができる。
【0072】
(E)成分は、例えばポリブテン系化合物、ポリイソブチレン系化合物、ポリイソプレン系化合等の脂肪族炭化水素を含む軟化剤であることができる。
【0073】
(E)成分として使用可能な軟化剤としては、市販の軟化剤、例えばポリブテン系化合物として日石ポリブテンLV−7、LV−50、LV−100、HV−15、HV−35、HV−50、HV−100、HV−300、HV−1900及びSV−7000(いずれもJX日鉱日石エネルギー社製)、ポリイソブチレン系化合物としてテトラックス3T、4T、5T及び6T、ハイモール4H、5H、5.5H及び6H(いずれもJX日鉱日石エネルギー社製)、ポリイソプレン系化合物としてクラプレンLIR−290(クラレ社製)などを使用することもできる。(E)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
(A)成分との相溶性を高めることができる観点で、本実施形態に係る粘着剤組成物における(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して10質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、一方、15質量部以上130質量部以下であることがより好ましい。
【0075】
さらに、(D)成分及び(E)成分の合計含有量は、(A)成分100質量部に対して20質量部以上200質量部以下であることが好ましく、25質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。
【0076】
本実施形態に係る粘着剤組成物が(D)成分及び(E)成分を含むことが好ましい。本実施形態に係る粘着剤組成物において、(D)成分が、(A)成分を構成するブロック共重合体(a1)又はブロック共重合体(a2)に含まれる前記重合体ブロックAに相溶し、(E)成分が、(A)成分を構成するブロック共重合体(a1)又はブロック共重合体(a2)に含まれる前記重合体ブロックBに相溶することで、粘着剤の凝集力を高めることによって耐久性を高めることができる。
【0077】
より具体的には、(D)成分に起因する、(A)成分を構成する前記重合体ブロックAへの相溶による軟化点が高い成分による耐熱性の向上と、(E)成分に起因する、被着体への濡れ性の向上との2つの相互作用によって、粘着剤層の耐久性を高めることができる。これにより、耐久性、密着性及び耐候性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0078】
1.6.用途
本実施形態に係る粘着剤組成物の用途としては、透明性、密着性、段差追従性又は耐湿熱白化性が要求される用途であれば特に限定されないが、例えば、後述する光学部材等の光学用途に好適に使用することができる。
【0079】
より具体的には、本実施形態に係る粘着剤組成物を画像表示装置や入出力装置を構成する部材の貼り合わせに用いることができる。
【0080】
本実施形態に係る粘着剤組成物を用いた貼り合わせの対象となる部材は、例えば、光学部材(例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム及びハードコートフィルムからなる群から選択される光学フィルム)、ITO層等の金属層、あるいは、ガラス又はプラスチックからなる基材であってもよい。
【0081】
例えば、本実施形態に係る粘着剤組成物は、タッチパネル式入出力装置を構成する部材の貼り合わせに好適に用いることができる。
【0082】
本実施形態に係る粘着剤組成物を、タッチパネル式出入力装置を構成する部材の貼り合わせに使用した例を、図1を参照して説明する。
【0083】
図1は、本発明の一実施形態に係る出入力装置(タッチパネル式入出力装置100)の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態に係るタッチパネル式出入力装置100は、液晶表示装置(LCD)10と、タッチパネル部20と、LCD10とタッチパネル部20との間に設けられた接着剤層30とを含む。接着剤層30はLCD10とタッチパネル部20とを接着する。
【0084】
接着剤層30は、例えば、本実施形態に係る粘着剤組成物をセパレータ(図示せず)の表面に塗布し、乾燥して得られた接着シートをセパレータから剥離して、LCD10とタッチパネル20との間に設置したものである。
【0085】
また、図1に示すように、LCD10は、偏光板11と、粘着剤層12と、液晶パネル13と、粘着剤層14と、偏光板15とがこの順で積層されて構成されている。粘着剤層12は偏光板11と液晶パネル13とを接着し、粘着剤層14は液晶パネル13と偏光板15とを接着する。
【0086】
また、図1に示すように、タッチパネル部20は、飛散防止フィルム16と、粘着剤層17と、ITO層18と、ガラスパネル19とがこの順で積層されて構成されている。粘着剤層17は、飛散防止フィルム16とITO層18とを接着する。
【0087】
粘着剤層12,14,17は、粘着剤層30と同じく、本実施形態に係る粘着剤組成物をセパレータ(図示せず)の表面に塗布し、揮発成分を乾燥して得られた接着シートをセパレータから剥離して設置したものである。
【0088】
1.7.作用効果
本実施形態に係る粘着剤組成物は、(A)成分100質量部と、(B)成分0.01質量部以上5質量部以下と、(C)成分とを含み、かつ、(A)成分及び前記(B)成分が、いずれも(C)成分に溶解していることにより、透明性に優れている。
【0089】
また、該粘着剤組成物を用いて成膜した後、前記(C)溶媒を除去して得られる粘着剤層において、前記(B)化合物の分子量が2,000以下と低分子量であるため、前記(B)化合物の分散性に優れ、かつ、該(B)化合物が析出しにくい粘着剤層を得ることができる。これにより、該粘着剤層は透明性が高く、かつ、耐湿熱白化性に優れている。
【0090】
したがって、該粘着剤層は、透明性を要求される用途に好適に使用することができ、かつ、添加剤により密着性及び耐久性を付与することが出来るため、過酷条件下で被着体から発生するガス(水蒸気や被着体由来の揮発性成分)による浮きやハガレを抑制することができる。これにより、例えば、該粘着剤層を用いて、高品質でかつ耐久性に優れた画像表示装置を得ることができる。
【0091】
なお、背景技術の欄で述べたように、水添ブロック共重合体は一般に自着性(自己ブロッキング性)が強いため、通常、粒子の表面をタルクや有機高分子粒子等のブロッキング防止剤で覆うことで、粒子同士の自着(ブロッキング)を防止する措置がとられている。しかしながら、タルクや一般的な有機高分子粒子が付着した水添ブロック共重合体を用いて形成された粘着剤層は、有機高分子成分が析出したり、タルク等がそもそも水添ブロック共重合成体と相溶しないことに起因して、透明性、粘着性及び耐湿熱白化性に劣ったりすることがある。
【0092】
また、一般に、透明性が高い粘着剤層を得るためには、粘着剤組成物中に含まれる不溶成分(例えばタルク等)を洗浄及び濾過により除去する工程が必須であるが、粘着剤組成物が不溶成分を含有していると、フィルターに目詰まりを生じさせやすく、スムーズな濾過が出来ないだけでなく、仮に濾過工程を経た後であっても、濾過後の系内に微量の不溶成分が残存するため、高い透明性を有する粘着剤層を得ることが難しい。
【0093】
これに対して、本実施形態に係る粘着剤組成物によれば、(A)成分及び前記(B)成分がいずれも(C)成分に溶解しているため、粘着剤層を形成する際に(B)成分を除去する必要がないため、粘着剤層を作製する際の手間を少なくすることができる。また、(B)成分の分子量が2,000以下であることにより、得られた粘着剤層中の該(B)成分の溶解性に優れ、かつ、該(B)成分が析出しにくい。これにより、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて、透明性、粘着性及び耐湿熱白化性に優れた粘着剤層を形成することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る粘着剤組成物が、(A)成分との相溶性に優れた(D)成分及び(E)成分を含むことにより、優れた密着性及び段差追従性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0095】
2.粘着剤組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る発明の粘着剤組成物の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じて(D)成分及び(E)成分を含む、上記実施形態に係る粘着剤組成物を製造する方法であって、(A)成分100質量部に対し(B)成分を0.01質量部以上5質量部以下含有する水添ブロック共重合体組成物のペレットであって、前記ペレットの内部及び表面に(B)成分が存在することを特徴とする水添ブロック共重合体組成物ペレットを(C)成分に溶解させる工程を含む。
【0096】
本実施形態に係る発明の粘着剤組成物の製造方法によれば、前記ペレットを(C)成分に溶解させる工程を含むことにより、(A)成分及び(B)成分が(C)成分に溶解した粘着剤組成物を得ることができる。これにより、該粘着剤組成物を用いて、透明性及び耐湿熱白化性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0097】
なお、(A)成分からなるペレットの内部及び表面に(B)成分が存在する水添ブロック共重合体組成物ペレットの製造方法としては、例えば(A)成分と(B)成分(内部用)との組成物を混練してペレットを製造し、次いで(B)成分(表面用)をペレット表面に外添等すればよい。ペレットの内部及び表面に存在する(B)成分は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0098】
また、本発明の粘着剤組成物が(D)成分及び/又は(E)成分を含有する場合には、前記粘着剤組成物の製造工程において、前記ペレットと同時に添加して(C)成分に溶解させてもよく、あるいは、前記ペレットを添加・溶解させた後に(D)成分及び/又は(E)成分を組成物溶液に添加して、(C)成分に溶解させてもよい。
【0099】
3.粘着剤層(粘着シート)及びその製造方法
本発明の一実施形態に係る粘着剤層(粘着シート)は、(A)成分100質量部と、(B)成分0.01質量部以上5質量部以下と、含む。
【0100】
本実施形態に係る粘着剤層は、上記実施形態に係る粘着剤組成物から前記(C)成分を除去することにより得ることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る粘着剤層(粘着シート)の製造方法は、上記実施形態に係る粘着剤組成物を基材上に塗工して膜を得る工程と、前記膜を乾燥させることにより(C)成分を除去して、粘着剤層を得る工程と、を含む。
【0101】
本実施形態に係る粘着剤層の製造方法によれば、上記実施形態に係る粘着剤組成物において、(A)成分及び(B)成分が(C)成分に溶解しており、(B)成分の分子量が2,000以下であることにより、得られる粘着剤層において(B)成分の溶解性に優れ、かつ(B)成分が該粘着剤層中に析出しにくいため、透明性、粘着力及び耐湿熱白化性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0102】
例えば、本実施形態に係る粘着剤組成物を剥離基材(セパレータ)の表面に塗布し、例えば(C)成分が蒸発する温度に該セパレータを保持することにより、本実施形態に係る粘着剤層(粘着シート)を得ることができる。
【0103】
より具体的には、剥離基材上に、本実施形態に係る粘着剤組成物をグラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等により塗布し、塗布された該粘着剤組成物を常温(例えば15℃以上40℃以下)で保持するか、又は適宜加熱することにより(例えば40℃以上200℃以下)、乾燥させて、本実施形態に係る粘着剤層を作製することができる。
【0104】
本実施形態に係る粘着剤層は、透明性により優れている点で、全光線透過率が、JIS K7361法において80%以上であることができ、90%以上であることが好ましい。
【0105】
また、本実施形態に係る粘着剤層は、耐久性により優れている点で、25℃、1Hzにおける貯蔵弾性率が1×10Pa以上2×10Pa以下であることができ、5×10Pa以上1×10Pa以下であることが好ましい。
【0106】
本実施形態に係る粘着剤層の厚みは、通常は10μm以下500μm以下、好ましくは20μm以上300μm以下の範囲である。
【0107】
4.実施例
以下、本発明を下記実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0108】
4.1.水添ブロック共重合体組成物ペレットの調製
4.1.1.水添ブロック共重合体の合成
〔合成例1〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン2,500ml、開始剤として濃度10.5質量%のsec−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液)26.4mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを101ml加えて60分間重合した。
その後、温度を60℃に昇温した後、イソプレンを10ml加えて反応させ、3分間おいてから同量のイソプレンを加えて反応させるという操作を繰り返して行い、最終的にイソプレンを合計1092ml加え、その後さらに90分間反応を追い込んだ後、メタノール1.5mlで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。
この反応混合液に水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を41.8g添加し、水素圧力2MPa、150℃で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することによりブロック共重合体(a1)の水素添加物(1)−1を得た。
得られた水素添加物(1)−1を分析した結果、スチレン−イソプレンジブロック共重合体の水素添加物であり、スチレン含有量が11質量%であり、重量平均分子量が46,100であり、水素添加率が99.8%であった。
【0109】
〔合成例2〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3,000ml、開始剤として濃度10.5質量%のsec−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液)2.8mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを25ml加えて60分間重合した。
その後、温度を60℃に昇温した後、イソプレンを10ml加えて反応させ、3分間おいてから同量のイソプレンを加えて反応させるという操作を繰り返して行い、最終的にイソプレンを合計540ml加え、その後さらに90分間反応を追い込んだ。
さらに同温度でスチレン25mlを添加して60分間重合させた後、メタノール0.16mlで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。
この反応混合液に水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を20.6g添加し、水素圧力2MPa、150℃で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することによりブロック共重合体(a2)の水素添加物(2)−1を得た。
得られた水素添加物(2)−1を分析した結果、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物であり、スチレン含有量が11質量%であり、重量平均分子量が215,300であり、水素添加率が99.3%であった。
【0110】
4.1.2.水添ブロック共重合体組成物ペレットの調製
合成例1及び2で得られた水素添加物(1)−1及び(2)−1を、(1)−1/(2)−1=60/40の質量割合で予備混合し、さらに(B)成分(内部添加(内添)用)としてアデカスタブAO−60を水素添加物(1)−1及び(2)−1の合計100質量部に対して0.2質量部添加しさらに予備混合させた後、二軸押出機にて200℃で溶融混練を行い、(A)成分中に(B)成分が混合している水添ブロック共重合体組成物からなるペレットを得た。
ついで、表1及び表2に示される配合にて(A)成分100質量部に対して表1及び表2に示される(B)成分(外部添加(外添)用)を外添して、(B)成分がペレットの内部及び表面に存在する水添ブロック共重合体組成物ペレットを調製した。
【0111】
4.2.粘着剤組成物の調製
表1及び表2に示される配合にて各成分を混合して、実施例1ないし9及び比較例1ないし4の粘着剤組成物をそれぞれ調製した。なお、粘着剤組成物の調製において、(A)成分及び(B)成分は、上記4.1.2.欄に記載の製造方法で調製された水添ブロック共重合体組成物ペレットとして配合した。
【0112】
すなわち、(A)成分及び(B)成分を含有する水添ブロック共重合体組成物ペレットと、その他の成分とを(C)成分に溶解させて、実施例1ないし9及び比較例1ないし4の粘着剤組成物をそれぞれ調製した。
【0113】
実施例1ないし9の粘着剤組成物では、目視にて粘着剤組成物中に固体が確認されず、該粘着剤組成物中にくすみや白濁も見られなかった。また、実施例1ないし9の粘着剤組成物を目開き1μmの濾紙で濾過した際に目詰まりを生じさせず、濾紙上に残渣がなかった。このことから、実施例1ないし9の粘着剤組成物では、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分が(C)成分に溶解しているのが確認された。
【0114】
なお、実施例1ないし9の粘着剤組成物では、全光線透過率は90%以上であった。このことからも、実施例1ないし9の粘着剤組成物では、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分が(C)成分に溶解していることが理解できる。
【0115】
一方、比較例1ないし4の粘着剤組成物では、目視にて粘着剤組成物中に固体が確認された。また、比較例1ないし4の粘着剤組成物を目開き1μmの濾紙で濾過した際に濾紙上に残渣が確認された。さらに、比較例1ないし4の粘着剤組成物では、全光線透過率は80%未満であった。このことから、比較例1ないし4の粘着剤組成物では、(B)成分の代わりに添加した担持粒子が(C)成分に溶解していないことが確認された。
【0116】
4.3.評価方法
4.3.1.ヘイズ・全光線透過率(透明性、耐湿熱白化性)
(初期)
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、次いで、80℃の乾燥機で溶媒を除去した。粘着剤塗工面に剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせて粘着シートを得た。
【0117】
得られた粘着シートの片側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、ガラスに貼り合わせて試験片を作製した。試験片をオートクレーブ処理した(50℃、5atm、20分)後、もう一方のポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し粘着剤層のヘイズ及び全光線透過率をヘイズメーター(型名「HM−150」、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。
【0118】
(湿熱後)
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、次いで、80℃の乾燥機で溶媒を除去した。粘着剤塗工面に剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせて粘着シートを得た。
【0119】
得られた粘着シートの片側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、ガラスに貼り合わせて試験片を作製した。試験片をオートクレーブ処理した(50℃、5atm、20分)後、85℃、85%の乾燥機に24時間入れ、23℃、50%環境下に取り出して1時間放置した後、もう一方のポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し粘着剤層のヘイズ及び全光線透過率をヘイズメーター(型名「HM−150」、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。
【0120】
4.3.2.粘着力(密着性)
(初期)
実施例及び比較例で得られ粘着剤組成物溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で溶媒を除去した。次いで、粘着剤塗工面に剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせて粘着シートを得た。
【0121】
得られた粘着シートの片側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、幅25mmに裁断して試験片を作製した。
【0122】
試験片の剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、露出した粘着剤塗工面を2kgのローラーを用いてガラスに圧着した。貼付から20分後にガラス板から粘着シートを剥離し(23℃、剥離角度180°、剥離速度300mm/分)、初期粘着力を測定した。
【0123】
(湿熱後)
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で溶媒を除去した。次いで、粘着剤塗工面に剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせて粘着シートを得た。
【0124】
得られた粘着シートの片側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、幅25mmに裁断して試験片を作製した。
【0125】
試験片の剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、露出した粘着剤塗工面を2kgのローラーを用いてガラスに圧着した。85℃、85%環境下に24時間入れ、23℃、50%環境下に1時間放置した後、ガラス板から粘着シートを剥離し(23℃、剥離角度180°、剥離速度300mm/分)、湿熱後粘着力を測定した。
【0126】
4.3.3.段差追従性
上記4.3.1で説明された作製方法によって得られた、厚さ50μmの粘着シートを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに転写して評価試験体を得た。
一方で、表面上に任意の段差を備えるガラス板を作製し本試験用の被着体を作製する。なお、本試験におけるガラス板上に備えられる段差は、所定の一定の厚みを有するポリエチレンテレフタレート粘着テープをガラス板の表面に貼り付けることによって形成された。ガラス板の表面に貼り付けられるポリエチレンテレフタレート粘着テープの厚さは、粘着剤層厚に対して25%、15%の二種類である。すなわち、ガラス板の表面には二種類の段差が備えられることとなる。
上記方法によって、本試験用の被着体である、表面上に任意の段差を備えるガラス板の表面に、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに転写された厚さ50μmの粘着シートを貼り付け、試験片とした。
その後、当該試験片を50℃、5atm、20分の条件でオートクレーブ処理をした後、目視にて段差の埋まりを観察した(表1及び表2における、「オートクレーブ後」)。
さらに、当該試験片を80℃dry条件下で24時間静置した後、目視にて段差の埋まりを観察した(表1及び表2における、「80℃dry 24時間後」)。
上記内容を踏まえ、粘着剤組成物によって得られる粘着層の段差追従性を以下の評価基準にて評価した。
(評価)
○:粘着層厚み50μmに対して25%の段差(すなわち12.5μmの段差)を埋めることができ、該段差周辺に空隙や気泡が視認されない。
△:粘着層厚み50μmに対して12.5%の段差(すなわち7.5μmの段差)を埋めることができ、段差周辺に空隙や気泡が視認されないが、粘着層厚み50μmに対して25%の段差(すなわち12.5μmの段差)を埋めることができず、第二の段差周辺に空隙や気泡が視認された。
×:80℃dryの乾燥機に24時間静置した後に、段差周辺に空隙や気泡が視認された。
【0127】
4.3.4.表面平滑性
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で溶媒を除去した。塗工面を目視で観察した。
○:塗工面に不具合は見られなかった。
△:実用出来るものの塗工面に若干の塗工スジやムラが見られた。
【0128】
4.3.5.弾性率
実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で溶媒を除去した。次いで、粘着剤層の厚さが1mmになるように粘着剤層を重ね合わせ、オートクレーブ処理(50℃、5atm、20min)することにより測定用試験片を得た。
得られた測定用サンプルの温度25℃における貯蔵弾性率(周波数1Hz、単位:10Pa)をAnton Paar製「Physica MCR300」を用いて測定した。
【0129】
4.3.6.粒子の平均粒子径
実施例及び比較例の担持粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテック(株)製 S―4800)を用いて測定した。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
なお、実施例及び比較例で用いた各成分は以下の通りである。
・(B)成分
チヌビン326:紫外線吸収剤、平均粒子径0.4μm、分子量316、(BASF社製)
BHT(ジブチルヒドロキシトルエン):酸化防止剤、平均粒子径1μm、分子量220(東京化成工業(株)製)
ベンゾトリアゾール:金属不活性剤、平均粒子径1μm、分子量119、(東京化成工業(株)製)
アデカスタブAO−60:酸化防止剤、平均粒子径16μm、分子量、1178、(ADEKA社製)
・その他の添加剤
タルク:無機粒子、平均粒子径5μm、(日油(株)製)
ステアリン酸カルシウム:有機金属塩粒子、平均粒子径1μm、分子量607、(日油(株)製)
PEワックス:有機高分子粒子、平均粒子径8μm、重量平均分子量5,000以上、(ヤスハラケミカル(株)製)
・(C)成分
トルエン:三協化学社製
n−ヘキサン:三協化学社製
・(D)成分
FTR−6100:軟化点100℃の芳香族系粘着付与樹脂(三井化学社製)
・(E)成分
HV100:ポリブテン(JX日鉱日石エネルギー社製)
BI−3000:水素化ポリブタジエン(日本曹達(株)製)
【0133】
4.4.評価結果
表1の結果から、本願実施例1ないし9の粘着剤組成物は、(A)成分100質量部と(B)成分0.01質量部以上5質量部以下と、(C)成分とを含み、(A)成分及び(B)成分が(C)成分に溶解していることにより、高い透明性を有し、かつ、密着性、段差追従性及び耐湿熱白化性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0134】
これに対して、表2に示すように、本願比較例1ないし3の組成物は、本発明の(B)成分とは異なり、(C)成分に溶解しない添加剤を含むので、透明性及び耐湿熱白化性に劣ることが理解できる。
【0135】
また、本願比較例4の組成物は、(B)成分の代わりに、重量平均分子量が5,000以上のPEワックスを含むため、透明性、耐湿熱白化性に劣ることが理解できる。
【符号の説明】
【0136】
10 液晶表示装置(LCD)
11,15 偏光板
12,14,17 粘着剤層
13 液晶パネル
16 飛散防止フィルム
18 ITO層
19 ガラスパネル(タッチパネル)
30 粘着剤層
20 タッチパネル部
100 タッチパネル式入出力装置
図1