(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、多角形基板においては、多角形基板の中央部から多角形基板の周縁部までの距離が、位置によって異なる。即ち、多角形基板の辺の中央部(頂点間の中央部)は、基板の中心部からの距離が比較的短く、多角形基板の頂点付近は、基板の中心部との距離が比較的長くなる。このため、多角形基板にめっきするときのターミナルエフェクトは、基板の全周囲に渡って不均一に生じる。
【0009】
本発明者らは、多角形基板へのめっき方法及び装置を検討するにあたり、電解めっきの進展に伴う多角形基板上の電流密度分布の変化を検討した。
図21Aないし
図21Dは、多角形基板の一例である四角形基板にめっきをしたときの、めっきの進展に伴う電流密度分布の変化を示す概略図である。
図21Aは、めっき初期の四角形基板の電流密度分布を示す。
図21Aに示すように、四角形基板S1の中心部C1では、ターミナルエフェクトにより電気抵抗値が周縁部に比べて高いので、電流密度が最も小さい。
図21Aに示す段階では、四角形基板S1の辺中央領域A1は四角形基板S1の中心部C1からの距離が比較的短いので、辺中央領域A1における電気抵抗値が相対的に低くなる。このため、辺中央領域A1に、電場が比較的集中し電流密度が高くなる。一方で、四角形基板S1の頂点付近の角部領域A2及び辺中央領域A1と角部領域A2との間に位置する中間領域A3では、辺中央領域A1に比べて中心部C1からの距離が長いので、辺中央領域A1に比べて電気抵抗値が高くなる。このため、
図21Aに示す段階では、角部領域A2及び中間領域A3には、辺中央領域A1ほど電場が集中していない。
【0010】
めっきが進むと、
図21Bに示すように、中心部C1からの距離が比較的長い角部A2へも電場が集中し始める。一方で、辺中央領域A1及び中間領域A3における電流密度は、
図21Aに示した辺中央領域A1及び中間領域A3における電流密度に比べて、小さくなっている。これらは、めっきが進み、膜厚が大きくなるにつれて、ターミナルエフェクトの影響が徐々に小さくなっているからである。
【0011】
さらにめっきが進み、膜厚が大きくなることにより、
図21Cに示すように、辺中央領域A1の電場の集中が緩和されている。このため、辺中央領域A1の電流密度と中間領域A3の電流密度との差は、
図21A及び
図21Bに比べて小さくなっている。一方で、角部領域A2へ電場の集中は、めっきが進んでもあまり変化がない。
【0012】
さらにめっきが進むと、
図21Dに示すように、辺中央領域A1の電流密度と中間領域A3の電流密度との差は、ほとんどなくなる。一方で、角部領域A2には引き続き電場集中が起きている。
【0013】
図21Aないし21Dに関連して説明したように、四角形基板S1の辺中央領域A1では、めっきの初期段階では電場が集中し、めっきが進むにつれて電流密度が小さくなる。これに対して、四角形基板S1の中間領域A3では、めっきの初期段階においては辺中央領域A1よりも電流密度は小さく、めっきが進むにつれて辺中央領域A1との差が小さくなっていく。したがって、辺中央領域A1は、中間領域A3よりもめっきの膜厚が大きくなる傾向がある。
【0014】
一方で、四角形基板S1の角部領域A2には、めっき初期段階では電場の集中は多少小さいが、めっきの初期段階から終了時まで一貫して電場が集中し続ける。このため、角部領域A2は、辺中央領域A1及び中間領域A3に比べて膜厚が大きくなる傾向がある。
【0015】
以上のように、多角形基板におけるターミナルエフェクトは、基板の周縁部の位置によって異なるので、基板の周縁部において電流密度分布の不均一が生じる。このため、円形基板に比べて、多角形基板にめっきされる膜の面内均一性が悪いという課題を本発明者らは見出した。
【0016】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、多角形基板にめっきされる膜の面内均一性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一形態によれば、めっき装置が提供される。このめっき装置は、アノードを保持するように構成されるアノードホルダと、多角形基板を保持するように構成される基板ホルダと、前記アノードホルダ及び前記基板ホルダを収容して、前記アノード及び前記基板をめっき液に浸漬するためのめっき槽と、前記アノードと前記基板との間に流れる電流を制御するための制御装置と、を有する。前記基板ホルダは、前記多角形基板の各辺に沿って配置される複数の給電部材を有する。前記制御装置は、前記複数の給電部材に少なくとも2つの異なる値の電流が同時に供給されるように、電流を制御し得るように構成される。
【0018】
上記めっき装置の一形態において、前記給電部材は、前記多角形基板の辺の中央部を含む辺中央領域に接触可能な第1給電部材と、前記辺中央領域に隣接する中間領域に接触可能な第2給電部材及び/又は前記中間領域よりも前記多角形基板の角部に近接する領域に接触可能な第3給電部材とを含み、前記制御装置は、前記第1給電部材と、前記第2給電部材及び/又は前記第3給電部材とに、それぞれ異なる値の電流を供給するように、電流を制御し得るように構成される。
【0019】
上記めっき装置の一形態において、前記制御装置は、前記第2給電部材に流れる電流の値が、前記第1給電部材に流れる電流の値よりも大きくなるように、前記電流を制御し得るように構成される。
【0020】
上記めっき装置の一形態において、前記制御装置は、めっき開始時に第1値の電流が前記第1給電部材に供給され、その後前記第1値よりも大きい第2値の電流が前記第1給電部材に供給されるように、前記電流を制御し得るように構成される。
【0021】
上記めっき装置の一形態において、前記制御装置は、前記第1給電部材に流れる電流が、前記第1値から前記第2値に段階的に増加するように、前記電流を制御し得るように構成される。
【0022】
上記めっき装置の一形態において、前記制御装置は、前記第1給電部材に流れる電流が、前記第1値から前記第2値に連続的に増加するように、前記電流を制御し得るように構成される。
【0023】
上記めっき装置の一形態において、前記制御装置は、前記第3給電部材に流れる電流の値が、前記第1給電部材に流れる電流の値よりも小さくなるように、前記電流を制御し得るように構成される。
【0024】
上記めっき装置の一形態において、前記第3給電部材は、前記多角形基板の辺の交点以外の領域に接触するように構成される。
【0025】
本発明の一形態によれば、アノードと多角形基板との間に電流を流して前記多角形基板にめっきする方法が提供される。この方法は、前記多角形基板の各辺に沿って複数の給電部材を接触させる工程と、前記アノードと、前記多角形基板と、をめっき液に浸漬する工程と、前記複数の給電部材に、少なくとも2つの異なる値の電流を同時に供給する工程と、を有する。
【0026】
上記めっき方法の一形態において、前記複数の給電部材を接触させる工程は、前記多角形基板の辺の中央部を含む辺中央領域に第1給電部材を接触させる工程と、前記辺中央領域に隣接する中間領域に第2給電部材を接触させ、且つ/又は前記中間領域よりも前記多角形基板の角部に近接する領域に第3給電部材を接触させる工程と、を含み、前記電流を供給する工程は、前記前記第1給電部材と、前記第2給電部材及び/又は前記第3給電部
材とに、それぞれ異なる値の電流を供給する工程を含む。
【0027】
上記めっき方法の一形態において、前記電流を供給する工程は、前記前記第2給電部材に流れる電流の値が、前記第1給電部材に流れる電流の値よりも大きくなるように、前記第1給電部材及び前記第2給電部材に電流を供給する工程を含む。
【0028】
上記めっき方法の一形態において、前記電流を供給する工程は、めっき開始時に第1値の電流を前記第1給電部材に供給し、その後前記第1値よりも大きい第2値の電流を前記第1給電部材に供給する工程を含む。
【0029】
上記めっき方法の一形態において、前記電流を供給する工程は、前記第1給電部材に流れる電流を、前記第1値から前記第2値に段階的に増加させる工程を含む。
【0030】
上記めっき方法の一形態において、前記電流を供給する工程は、前記第1給電部材に流れる電流を、前記第1値から前記第2値に連続的に増加させる工程を含む。
【0031】
上記めっき方法の一形態において、前記電流を供給する工程は、前記第3給電部材に流れる電流の値が、前記第1給電部材に流れる電流の値よりも小さくなるように、前記第1給電部材及び前記第3給電部材に電流を供給する工程を含む。
【0032】
上記めっき方法の一形態において、前記多角形基板の前記角部領域に第3給電部材を接触させる工程は、前記第3給電部材を前記多角形基板の辺の交点以外の領域に接触させる工程を含む。
【0033】
本発明の一形態によれば、多角形基板を保持するための基板ホルダが提供される。基板ホルダは、前記多角形基板を保持するための基板保持面と、前記基板保持面に保持された前記多角形基板に給電するための複数の給電部材と、を有し、前記給電部材は、前記多角形基板と接触可能に構成される接点部を有し、前記接点部は、前記多角形基板の辺に沿うように、略直線状に整列される。
【0034】
上記基板ホルダの一形態において、基板ホルダは、前記給電部材に電流を供給するための電源と電気的に接続される外部接点部と、前記外部接点部と、前記給電部材とを接続する接続ユニットと、を有し、前記給電部材は、前記多角形基板の辺の中央部を含む辺中央領域に接触可能な第1給電部材と、前記辺中央領域に隣接する中間領域に接触可能な第2給電部材及び/又は前記中間領域よりも前記多角形基板の角部に近接する領域に接触可能な第3給電部材を含み、前記接続ユニットは、前記外部接点部から、前記第1給電部材と、前記第2給電部材及び/又は第3給電部材とにそれぞれ接続される、互いに電気的に独立した複数の接続ユニットを有する。
【0035】
上記基板ホルダの一形態において、前記外部接点部は、前記第1給電部材と前記接続ユニットを介して接続される複数の第1外部接点部と、前記第2給電部材と前記接続ユニットを介して接続される複数の第2外部接点部及び/又は前記第3給電部材と前記接続ユニットを介して接続される複数の第3外部接点部と、を有し、前記接続ユニットは、前記複数の第1外部接点部にそれぞれ接続される複数の第1接点配線と、前記複数の第1接点配線と接続される第1プレートと、前記第1プレートと前記第1給電部材とを電気的に接続する第1給電配線と、前記複数の第2外部接点部にそれぞれ接続される複数の第2接点配線、前記複数の第2接点配線と接続される第2プレート、及び前記第2プレートと前記第2給電部材とを電気的に接続する第2給電配線、並びに/又は、前記複数の第3外部接点部にそれぞれ接続される複数の第3接点配線、前記複数の第3接点配線と接続される第3プレート、及び前記第3プレートと前記第3給電部材とを電気的に接続する第3給電配線
と、を有する。
【0036】
上記基板ホルダの一形態において、前記第3給電部材は、前記多角形基板の辺の交点以外の領域に接触するように構成される。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、多角形基板にめっきされる膜の面内均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
図1は、本発明の実施形態におけるめっき装置の全体配置図を示す。
図1に示すように
、このめっき装置は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット100を搭載する2台のカセットテーブル102と、基板のオリフラ(オリエンテーションフラット)やノッチなどの位置を所定の方向に合わせるアライナ104と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピンリンスドライヤ106とを有する。スピンリンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ30を載置して基板の着脱を行う基板着脱部120が設けられている。これらのユニット100,104,106,120の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置122が配置されている。
【0041】
基板着脱部120、基板ホルダ30の保管及び一時仮置きを行うストッカ124、基板を純水に浸漬させるプリウェット槽126、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜をエッチング除去するプリソーク槽128、プリソーク後の基板を基板ホルダ30と共に洗浄液(純水等)で洗浄する第1洗浄槽130a、洗浄後の基板の液切りを行うブロー槽132、めっき後の基板を基板ホルダ30と共に洗浄液で洗浄する第2洗浄槽130b、及びめっきユニット10は、この順に配置されている。
【0042】
このめっきユニット10は、オーバーフロー槽136の内部に複数のめっき槽14を収納して構成されている。各めっき槽14は、内部に1個の基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを施すようになっている。
【0043】
めっき装置は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ30を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ搬送装置140を有する。この基板ホルダ搬送装置140は、基板着脱部120、ストッカ124、プリウェット槽126、プリソーク槽128、第1洗浄槽130a、及びブロー槽132との間で基板を搬送する第1トランスポータ142と、第1洗浄槽130a、第2洗浄槽130b、ブロー槽132、及びめっきユニット10との間で基板を搬送する第2トランスポータ144を有している。めっき装置は、第2トランスポータ144を備えることなく、第1トランスポータ142のみを備えるようにしてもよい。
【0044】
この基板ホルダ搬送装置140のオーバーフロー槽136を挟んだ反対側には、各めっき槽14の内部に位置してめっき槽14内のめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドル16(
図2参照)を駆動するパドル駆動装置146が配置されている。
【0045】
基板着脱部120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ30は、この載置プレート152に水平状態で並列に載置され、一方の基板ホルダ30と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ30と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われる。
【0046】
図2は、
図1に示すめっき装置に備えられているめっきユニットの概略側断面図(縦断面図)である。
図2に示すように、めっきユニット10は、めっき液、基板ホルダ30、及びアノードホルダ13を収容するように構成されためっき槽14と、オーバーフロー槽(不図示)とを有する。基板ホルダ30は、多角形の基板Wfを保持するように構成され、アノードホルダ13は、金属表面を有するアノード12を保持するように構成される。
【0047】
めっきユニット10は、さらに、複数(本実施形態では3つ)の電源15A,15B,15Cと、電源15A,15B,15Cをそれぞれ独立制御するための制御装置17と、を有する。電源15A,15B,15Cは、それぞれアノード12と基板Wfとに電気的に接続され、アノード12と基板Wfとの間に電流を流すように構成される。制御装置17は、電源15A,15B,15Cを制御することにより、基板ホルダ30に設けられる後述する第1給電部材41A,41B,41Cにそれぞれ異なる値の電流が供給されるよ
うに、電流を制御する。
【0048】
めっきユニット10は、基板Wfとアノード12との間の電場を調整するための調整板20と、めっき液を撹拌するためのパドル16と、を有する。調整板20は、基板ホルダ30とアノード12との間に配置される。具体的には、調整板20の下端部が、めっき槽14の床面に設けられた一対の凸部材24間に挿入されて、調整板20がめっき槽14に対して固定される。パドル16は、基板ホルダ30と調整板20との間に配置される。
【0049】
調整板20は、略中央部に基板Wfの形状に対応する開口21を有する。調整板20がめっき槽14に収容された状態で、基板Wfとアノード12に電圧が印加されると、アノード12からの電流が、開口21を通過して、基板Wfに流れる。言い換えれば、調整板20は、アノード12と基板Wfとの間に形成される電場の一部を遮蔽する。
【0050】
図3は
図2に示しためっきユニット10で使用される本実施形態に係る基板ホルダ30の斜視図であり、
図4は、基板ホルダ30の保持面を示す平面図である。基板ホルダ30は、
図3に示すように、例えば塩化ビニル製で平板状の第1保持部材31と、この第1保持部材31に取付けられた第2保持部材32とを有する。第2保持部材32は、基板Wfを第1保持部材31に押さえつけるように、第1保持部材31に着脱可能に取り付けられる。
【0051】
基板ホルダ30の第1保持部材31の略中央部には、基板Wf(図示の例では四角形)を載置して保持するための保持面34(基板保持面の一例に相当する)が設けられている(
図4参照)。即ち、
図3に示す第2保持部材32を第1保持部材31から取り外し、基板Wfを取り外すと、保持面34が第1保持部材31の一部として現れる。第1保持部材31の保持面34の周りには、内方に突出する突出部を有する逆L字状のクランパ33が円周状に等間隔に設けられている。
【0052】
基板ホルダ30の第1保持部材31の端部には、基板ホルダ30を搬送したり吊下げ支持したりする際の支持部となる一対の略L字状のアーム35が連結されている。例えば、
図1に示したストッカ124内において、ストッカ124の周壁上面にアーム35を引っ掛けることで、基板ホルダ30が垂直に吊下げ支持される。また、この吊下げ支持された基板ホルダ30のアーム35を基板ホルダ搬送装置140の第1トランスポータ142又は第2トランスポータ144で把持して基板ホルダ30が搬送される。なお、プリウェット槽126、プリソーク槽128、洗浄槽130a,130b、ブロー槽132及びめっき槽134内においても、基板ホルダ30は、アーム35を介してそれらの周壁に吊下げ支持される。
【0053】
また、アーム35の一方には、
図1に示した電源15A,15B,15Cと電気的に接続される外部接点部37が設けられている。この外部接点部37は、後述する複数の接続ユニットを介して保持面34の外周に設けられた複数の導電体38A,38B,38C(
図4参照)と電気的に接続されている。
【0054】
第2保持部材32は、基板Wfが露出される略四角形の開口40を有するシールホルダ32aを有する。シールホルダ32aの外周部には、シールホルダ32aを第1保持部材54に押し付けて固定するための押えリング32bが回転自在に装着されている。押えリング32bは、その外周部において外方に突出する複数の突条部39を有する。突条部39の上面とクランパ33の内方突出部の下面は、回転方向に沿って互いに逆方向に傾斜するテーパ面を有する。
【0055】
基板を保持するときは、まず、第2保持部材32を取り外した状態で、第1保持部材3
1の保持面34(
図4参照)に基板Wfを載置し、第2保持部材32を第1保持部材31に装着する。続いて、押えリング32bを時計回りに回転させて、押えリング32bの突条部39をクランパ33の内方突出部の内部(下側)に滑り込ませる。これにより、突条部39とクランパ33にそれぞれ設けられたテーパ面を介して、第1保持部材31と第2保持部材32とが互いに締付けられてロックされ、基板Wfが保持される。基板Wfの保持を解除するときは、第1保持部材31と第2保持部材32とがロックされた状態において、押えリング32bを反時計回りに回転させる。これにより、押えリング32bの突条部39が逆L字状のクランパ33から外されて、基板Wfの保持が解除される。
【0056】
次に、
図3に示した第2保持部材32について詳細に説明する。
図5は、第2保持部材32の裏面側の正面図である。ここで、裏面側とは、
図3に示される第2保持部材32の面を表面側としたときの裏面側を意味する。
図5に示すように、第2保持部材32は、開口40の周囲に沿って配置される複数の給電部材41を有する。第2保持部材32が第1保持部材31に装着されたとき、開口40は基板Wfの各辺と略一致するように配置されるので、このとき、給電部材41は基板Wfの各辺に沿って、基板Wf上に配置されることになる。
【0057】
給電部材41は、基板Wfの辺の中央部を含む辺中央領域に接触可能な第1給電部材41Aと、辺中央領域に隣接する中間領域に接触可能な第2給電部材41Bと、中間領域よりも基板Wfの角部に近接した角部領域に接触可能な第3給電部材41Cを含む。第1給電部材41Aは、
図4に示した導電体38Aと接触するように構成される第1脚部42Aと、基板Wfの辺中央領域に接触するように構成される第1接点部43Aとを有する。第2給電部材41Bは、
図4に示した導電体38Bと接触するように構成される第2脚部42Bと、基板Wfの中間領域に接触するように構成される第2接点部43Bとを有する。第3給電部材41Cは、
図4に示した導電体38Cと接触するように構成される第3脚部42Cと、基板Wfの角部領域に接触するように構成される第3接点部43Cとを有する。本実施形態に係る基板ホルダ30は、多角形の基板Wfを保持するように構成されるので、第1接点部43Aと、第2接点部43Bと、第3接点部43Cは、基板Wfの各辺に沿って略直線状に整列される。
【0058】
第1給電部材41A、第2給電部材41B、及び第3給電部材41Cには、
図1に示した電源15A,15B,15Cから、
図3に示した外部接点部37、後述する複数の接続ユニット、
図4に示した複数の導電体38A,38B,38Cを介して、電流が供給される。第1給電部材41A、第2給電部材41B、及び第3給電部材41Cに供給された電流は、第1接点部43A、第2接点部43B、及び第3接点部43Cから基板Wfにそれぞれ供給される。
【0059】
第3給電部材41Cは、基板Wfの角部領域に接触するように構成される一方で、基板Wfの角(辺の交点)上には接触しない。より好ましくは、第3給電部材41Cは、基板Wfの角(辺の交点)近傍には接触しないように配置される。ここで、基板Wfの角近傍とは、
図21Aないし
図21Dに示した電場が集中しやすい領域をいい、例えば、角(辺の交点)から一辺の長さの20%の長さ以内の範囲となる領域をいう。具体的には、例えば、基板Wfの角(辺の交点)から約1.5cmの範囲というときもあれば、約1.0cmの範囲をいうときもある。
図21Aないし
図21Dに関連して説明したように、多角形基板Wfの角部近傍は、電場が集中する傾向がある。このため、本実施形態の基板ホルダ30では、第3給電部材41Cが、基板Wfの角以外の領域に接触するように構成することで、電場が集中しやすい領域に電流が流れにくくすることができる。好ましくは、基板Wfの角から、基板Wfの一辺の長さの20%に相当する長さ以内の範囲については、基板Wfと給電部材41とが接触しないような領域を設けるとよい。ここで、給電部材41が基板Wfと接触しない領域を、角から20%を超えた領域とする場合、即ち、給電部材
41と基板Wfとの接触部の角からの距離があまりに大きくなるときは、角部付近の電場集中が緩和されるため角部付近のめっき膜厚集中は低減される。一方で、この場合、辺中央領域のめっき膜厚は増加してしまうため、めっき膜厚の均一性が確保できなくなるおそれが生じてしまう。
【0060】
次に、
図3に示した外部接点部37について詳細に説明する。
図6は、基板ホルダ30に設けられる外部接点部37の正面図である。
図6においては、基板ホルダ30のアーム35付近が拡大されており、アーム35が透過して示されている。基板ホルダ30の外部接点部37は、一対の第1外部接点部37A,37Aと、一対の第2外部接点部37B,37Bと、一対の第3外部接点部37C,37Cと、一対の第4外部接点部37D,37Dと、を有する。
図6においては、それぞれの外部接点部37のうち、一方のみが示されている。第1外部接点部37Aと、第2外部接点部37Bと、第3外部接点部37Cと、第4外部接点部37Dは、互いに電気的に独立しており、それぞれ異なる電流を流すことができる。
【0061】
基板ホルダ30は、第1外部接点部37A,37Aのそれぞれに接続される一対の第1接点配線45A,45Aと、第2外部接点部37B,37Bのそれぞれに接続される一対の第2接点配線45B,45Bと、第3外部接点部37C,37Cのそれぞれに接続される一対の第3接点配線45C,45Cと、第4外部接点部37D,37Dのそれぞれに接続される一対の第4接点配線45D,45Dと、を有する。
図6においては、それぞれの接点配線のうち、一方のみが示されている。第1接点配線45Aと、第2接点配線45Bと、第3接点配線45Cと、第4接点配線45Dとは、互いに電気的に独立しており、それぞれ異なる電流を流すことができる。
【0062】
図7は、
図4に示した保持面34の内部に設けられるプレートを示す平面図である。基板ホルダ30は、一対の第1接点配線45Aに接続される第1プレート46Aと、一対の第2接点配線45Bに接続される第2プレート46Bと、一対の第3接点配線45Cに接続される第3プレート46Cと、一対の第4接点配線45Dに接続される第4プレート46Dと、を有する。第1プレート46Aと、第2プレート46Bと、第3プレート46Cと、第4プレート46Dとは、互いに電気的に独立しており、それぞれ異なる電流を流すことができる。
【0063】
第1プレート46Aには、
図4に示した導電体38Aを介して第1プレート46Aと第1給電部材41Aとを電気的に接続する、第1給電配線47Aが接続される。第2プレート46Bには、
図4に示した導電体38Bを介して第2プレート46Bと第2給電部材41Bとを電気的に接続する、第2給電配線47Bが接続される。第3プレート46Cには、
図4に示した導電体38Cを介して第3プレート46Cと第3給電部材41Cとを電気的に接続する、第3給電配線47Cが接続される。第4プレート46Dには、第4給電配線47Dが接続される。本実施形態においては、第4外部接点部37D,37Dと、第4接点配線45D、45Dと、第4プレート46Dと、第4給電配線47Dとは、予備の電流供給手段であり、基板に電流を供給するように構成されていない。必要に応じて、第4給電配線47Dを、給電部材41のいずれかに接続することもできる。第1給電配線47Aと、第2給電配線47Bと、第3給電配線47Cと、第4給電配線47Dとは、互いに電気的に独立しており、それぞれ異なる電流を流すことができる。
【0064】
図6及び
図7に示した、第1接点配線45A、第1プレート46A、及び第1給電配線47Aは、第1外部接点部37Aと第1給電部材41Aとを電気的に接続する第1接続ユニットを構成する。また、第2接点配線45B、第2プレート46B、及び第2給電配線47Bは、第2外部接点部37Bと第2給電部材41Bとを電気的に接続する第2接続ユニットを構成する。同様に、第3接点配線45C、第3プレート46C、及び第3給電配
線47Cは、第3外部接点部37Cと第3給電部材41Cとを電気的に接続する第3接続ユニットを構成する。各接続ユニットは、互いに電気的に独立しており、それぞれ異なる電流を流すことができる。
【0065】
図7に示したように、第1プレート46Aには、2つの第1接点配線45Aが接続される。これにより、2つの第1外部接点部37A,37A間に電気抵抗の差があった場合でも、2つの第1接点配線45Aからの電流が1つの第1プレート46Aに流れることにより、その電気抵抗の差に起因する2つの第1接点配線45Aの電流値の差を解消することができる。第2プレート46B、第3プレート46C、及び第4プレート46Dも、同様の効果を有する。
【0066】
図7に示す実施形態では、第1給電配線47Aと、第2給電配線47Bと、第3給電配線47Cと、第4給電配線47Dは、それぞれ1本のみが図示されている。しかしながら、これに限らず、給電部材41の数に応じて、適宜配線の数を増加させたり、配線を分岐させたりすることもできる。
【0067】
以上で説明したように、本実施形態に係る基板ホルダ30は、第1接点部43Aと、第2接点部43Bと、第3接点部43Cは、基板Wfの辺に沿って略直線状に整列されるので、多角形の基板Wfを保持し、基板Wfに電流を供給することができる。
【0068】
また、基板ホルダ30は、外部接点部37から、第1接続ユニット、第2接続ユニット、及び第3接続ユニットを介して、第1給電部材41A、第2給電部材41B、及び第3給電部材41Cにそれぞれ異なる値の電流を供給することができる。このため、後述するように、基板Wfの周縁部に生じる不均一なターミナルエフェクトに応じて、基板Wfの辺中央領域、中間領域、及び角部領域に異なる値の電流を流すことができ、基板Wfに形成される膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0069】
なお、基板ホルダ30は、一対の第1外部接点部37A,37Aと、一対の第2外部接点部37B,37Bと、一対の第3外部接点部37C,37Cと、一対の第4外部接点部37D,37Dと、を有するものとしているが、これには限られない。例えば、それぞれの外部接点部37は、一つずつ設けられてもよい。また、基板ホルダ30は、第1外部接点部37A、第2外部接点部37Bと、第3外部接点部37Cと、第4外部接点部37Dとのうち、少なくとも一つの任意の外部接点部のみを有するように構成されてもよい。同様に、基板ホルダ30は、第1接続ユニット、第2接続ユニット、及び第3接続ユニットのうち、少なくとも一つの任意の接続ユニットを有するように構成されてもよい。
【0070】
図8は、基板ホルダ30の別の実施形態を示す斜視図である。図示の基板ホルダ30は、
図3に示した基板ホルダ30に比べて、保持される基板Wfの向きが異なる。図示のように、この基板ホルダ30は、基板ホルダ30が
図2に示しためっき槽14に吊り下げられた状態で基板Wfの角が鉛直下方に位置するように、基板Wfを保持する。これにより、基板ホルダ30がめっき槽14から引き上げられたときに、基板Wf等に付着しためっき液が略四角形の開口40の縁に沿って下方に移動し、開口40の下方の角部からめっき液を速やかに液切りすることができる。したがって、基板ホルダ30をめっき槽14から引き上げて次工程に搬出する際には、めっき槽14上で速やかにめっき液を液切りできるので、液だれ等の問題が生じることを防止することができる。
【0071】
次に、
図2に示しためっきユニット10において、基板Wfにめっきをするプロセスについて説明する。
図21Aないし
図21Dに関連して説明したように、多角形基板Wfには、周縁部に沿って不均一なターミナルエフェクトが生じる。このため、本発明のめっき装置では、多角形基板の各辺に沿って配置される複数の給電部材41を有する基板ホルダ
30を使用し、制御装置17が複数の給電部材41のうちの異なる給電部材に少なくとも2つの異なる値の電流を同時に供給するように構成される。これにより、多角形基板Wfの不均一なターミナルエフェクトに応じて、多角形基板Wfの周縁部に適切な値の電流を流すことができる。以下で説明する複数のプロセスとしては、例示的に、3つの異なる値の電流を基板Wfに同時に流すプロセス(
図9ないし
図14)と、2つの異なる値の電流を基板Wfに同時に流すプロセス(
図15ないし
図20)が説明される。しかしながら、これらの例に限らず、本発明のめっき装置は、4以上の異なる値の電流を基板Wfに同時に流すようにすることもできる。この場合は、電気接点に電流を流すための電源、外部接点部37、及び接続ユニット(接点配線、プレート、及び給電配線)の数が適宜調節され得る。このように、不均一なターミナルエフェクトに応じて、基板Wfに局所的に異なる値の電流を同時に流すことで、膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0072】
図9は、基板Wfと給電部材41との位置関係を示す概略図である。
図9に示す例では、基板Wfは四角形であり、その4辺に沿って給電部材41が配置される。給電部材41は、
図5に関連して説明したように、基板Wfの辺の中央部を含む辺中央領域に接触可能な第1給電部材41Aと、辺中央領域に隣接する中間領域に接触可能な第2給電部材41Bと、中間領域よりも基板Wfの角部に近接した角部領域に接触可能な第3給電部材41Cを含む。
【0073】
第1給電部材41Aは、
図2に示した電源15Aと電気的に接続され、電源15Aにより電圧が印加される。ここで、第1給電部材41Aと電源15Aを含む回路を回路Aという。第2給電部材41Bは、
図2に示した電源15Bと電気的に接続され、電源15Bにより電圧が印加される。ここで、第2給電部材41Bと電源15Bを含む回路を回路Bという。第3給電部材41Cは、
図2に示した電源15Cと電気的に接続され、電源15Cにより電圧が印加される。ここで、第3給電部材41Cと電源15Cを含む回路を回路Cという。
【0074】
次に、電源15A,15B,15Cが、回路A、回路B、及び回路Cに流す電流のレシピ例について説明する。
図10ないし
図14は、回路A、回路B、及び回路Cに流れる電流のレシピ例を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸はめっき時間(%)を示し、縦軸は1接点あたりの平均電流値(A)を示す。なお、電源15A,15B,15Cは、
図10ないし
図14に示される電流が回路A、回路B、及び回路Cに流れるように、
図2に示した制御装置17によって制御される。
【0075】
図10に示す例では、回路Aには約8A、回路Bには約10A、回路Cには約1Aの定電流が、めっきプロセス全体にわたって流れる。即ち、回路A、回路B、及び回路Cには、それぞれ異なる値の電流が流れるように、電源15A,15B,15Cが制御される。
【0076】
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、基板Wfの辺中央領域A1には、ターミナルエフェクトにより、四角形基板S1の辺中央領域A1では、めっきの初期段階では電場が集中し、めっきが進むにつれて電流密度が小さくなる。これに対して、四角形基板S1の中間領域A3では、めっきの初期段階においては辺中央領域A1よりも電流密度は小さく、めっきが進むにつれて辺中央領域A1との差が小さくなっていく。したがって、辺中央領域A1は、中間領域A3よりもめっきの膜厚が大きくなる傾向がある。一方で、四角形基板S1の角部領域A2には、めっきの初期段階から終了時まで、電場が集中し続ける。このため、角部領域A2は、辺中央領域A1及び中間領域A3に比べて膜厚が大きくなる傾向がある。
【0077】
このため、
図10に示す例では、最も膜厚が大きくなる傾向がある角部領域に接触する第3給電部材41C(回路C)に供給する電流の値を、他の回路に比べて小さくしている
。一方で、中間領域よりも電場が集中しやすい辺中央領域に接触する第1給電部材41A(回路A)に供給する電流の値を、回路Bに比べて小さくしている。言い換えれば、基板Wfの周縁部の中で最も電場が集中し難い中間領域に接触する第2給電部材41B(回路B)に供給する電流の値を、他の回路に比べて大きくしている。
【0078】
図10に示すように電源15A,15B,15Cを制御することにより、多角形基板Wfのターミナルエフェクト及び/又はめっき槽構造に起因する電場の不均一により生じる膜厚の面内均一性の悪化を補償し、膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0079】
図11に示す例では、回路Aにはめっき時間50%までは約4Aでめっき時間50%からは約8Aの電流が、回路Bにはめっきプロセス全体にわたって約10Aの電流が、回路Cにはめっき時間50%までは約2Aでめっき時間50%からは約1Aの電流が流れる。なお、
図11では、各回路の電流を切り替えるタイミングを、めっき時間50%としているが、例えば、めっき時間40%、あるいはめっき時間60%といった他の数値を選択することもできる。ここで、「めっき時間」とは、(めっき時間)=100×(経過時間)/(めっきが完了するまでに要する時間)で計算される数値(単位:%)のことをいう。し
たがって、めっき時間50%とは、めっきが完了するまでに要する時間のうち、半分の時間が経過した時点のことをいう。
【0080】
図11に示す例では、
図10に示す例に比べて、回路A及び回路Cに流れる電流の値をめっき途中で変更している点が異なる。即ち、回路Aに流れる電流の値を、めっき途中で段階的に増加させている。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、基板の辺中央領域A1には、ターミナルエフェクトにより、四角形基板S1の辺中央領域A1では、めっきの初期段階では電場が集中し、めっきが進むにつれて電流密度が小さくなる。このため、電場が集中するめっきの初期段階では、電流の値を比較的小さくし、電流密度が小さくなるめっきの途中段階で電流の値を比較的大きくしている。このように、ターミナルエフェクトに応じて電流値を変化させているので、定電流を流し続ける
図10の例に比べて、より膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0081】
また、
図11に示す例では、回路Cに流れる電流の値を、めっき途中で減少させている。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、基板の角部領域A2には、めっきの初期段階から終了時まで一貫して電場が集中し続けるが、めっき初期段階では電場の集中は多少小さい。このため、めっきの初期段階では、電流の値を比較的大きくし、電場の集中が大きくなるめっきの途中段階で電流の値を比較的小さくする。このように、ターミナルエフェクトの変化に応じて電流値を変化させているので、定電流を流し続ける
図10の例に比べて、より膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0082】
図12に示す例では、回路Aにはめっき時間50%までは約4Aでめっき時間50%からは約8Aの電流が、回路Bにはめっきプロセス全体にわたって約10Aの電流が、回路Cにはめっき時間50%までは0Aでめっき時間50%からは約1Aの電流が流れる。
【0083】
図12に示す例では、
図11に示す例に比べて、めっき時間50%までは回路Cに電流が流れない点が異なる。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、基板の角部領域A2は、辺中央領域A1及び中間領域A3に比べて膜厚が大きくなる傾向がある。このため、
図12に示す例では、めっきプロセス中に回路Cに電流が流れない時間を設けることで、角部領域A2の膜厚の増加を抑制することができる。なお、
図12では、回路の電流を切り替えるタイミングを、めっき時間50%としているが、例えば、めっき時間40%、あるいは、めっき時間60%といった他の数値を選択することもできる。
【0084】
図13に示す例では、回路Aにはめっき時間30%までは約2A、めっき時間30%か
ら50%までは約4A、めっき時間50%からは約8Aの電流が流れる。また、回路Bにはめっきプロセス全体にわたって約10Aの電流が、回路Cにはめっき時間50%までは0Aでめっき時間50%からは約1Aの電流が流れる。
【0085】
図13に示す例では、
図12に示す例に比べて、めっきプロセスが進むにつれて、回路Aに流れる電流の値が多段階で増加する点が異なる。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、辺中央領域A1におけるターミナルエフェクトは徐々に変化する。即ち、辺中央領域A1の電場は、徐々に変化する。このため、
図13に示す例では、ターミナルエフェクトの変化に応じて回路Aに流れる電流の値を多段階で増加させているので、回路Aに流れる電流の値が1段階で変化する
図12の例に比べて、より膜厚の面内均一性を向上させることができる。なお、
図13では、回路Aに約8Aの電流が流れるように電流を切り替えるタイミングを、めっき時間50%としているが、例えば、めっき時間40%、あるいは、めっき時間60%といった他の数値を選択することもできる。
【0086】
回路Aの電流の値を多段階で変化させるのと同様に、必要に応じて回路B及び回路Cの電流の値も多段階で変化させてもよい。また、回路A、回路B、及び回路Cの電流の値を、多段階ではなく、一次関数のように連続的に変化させてもよい。また、
図14に示す例のように、パルス電流を回路A、回路B、及び回路Cの電流に流してもよい。
【0087】
以上、四角形の基板Wfにめっきをするプロセスについて説明したが、これに限らず、三角形、又は五角形以上の基板Wfにも、同様のプロセスでめっきをすることができる。
【0088】
次に、基板Wfにめっきをする他のプロセスについて説明する。
図15は、基板Wfと給電部材41との位置関係を示す概略図である。
図15に示す例では、基板Wfは六角形であり、その6辺に沿って給電部材41が配置される。
【0089】
図15に示す給電部材41は、基板Wfの辺の中央部を含む辺中央領域に接触可能な第1給電部材41Aと、基板Wfの角部に近接した角部領域に接触可能な第3給電部材41Cを含む。即ち、
図5に示した辺中央領域に隣接する中間領域に接触可能な第2給電部材41Bに対応する給電部材が存在しない。
【0090】
第1給電部材41Aは、
図2に示した電源15Aと電気的に接続され、電源15Aにより電圧が印加される。ここで、第1給電部材41Aと電源15Aを含む回路を回路Aという。第3給電部材41Cは、
図2に示した電源15Cと電気的に接続され、電源15Cにより電圧が印加される。ここで、第3給電部材41Cと電源15Cを含む回路を回路Cという。
【0091】
次に、電源15A,15Cが、回路A及び回路Cに流す電流のレシピ例について説明する。
図16ないし
図20は、回路A及び回路Cに流れる電流のレシピ例を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸はめっき時間(%)を示し、縦軸は電流レシピ(A)を示す。なお、電源15A,15Cは、
図16ないし
図20に示される電流が回路A及び回路Cに流れるように、
図2に示した制御装置17によって制御される。
【0092】
図16に示す例では、回路Aには約8A、回路Cには約1Aの定電流が、めっきプロセス全体にわたって流れる。即ち、回路A及び回路Cには、それぞれ異なる値の電流が流れるように、電源15A,15B,15Cが制御される。
【0093】
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、四角形基板S1の辺中央領域A1では、ターミナルエフェクトによりめっきの初期段階で電場が集中し、めっきが進むにつれて電流密度が小さくなる。一方で、四角形基板S1の角部領域A2には、めっきの初期
段階から終了時まで、電場が集中し続ける。このため、角部領域A2は、辺中央領域A1に比べて膜厚が大きくなる傾向がある。
【0094】
このため、
図16に示す例では、最も膜厚が大きくなる傾向がある角部領域に接触する第3給電部材41C(回路C)に供給する電流の値を、回路Aに比べて小さくしている。
【0095】
図16に示すように電源15A,15Cを制御することにより、多角形基板Wfのターミナルエフェクト及びめっき槽構造に起因する電場の不均一により生じる膜厚の面内均一性の悪化を補償し、膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0096】
図17に示す例では、回路Aにはめっき時間50%までは約4Aでめっき時間50%からは約8Aの電流が、回路Cにはめっき時間50%までは約2Aでめっき時間50%からは約1Aの電流が流れる。
【0097】
図17に示す例では、
図16に示す例に比べて、回路A及び回路Cに流れる電流の値をめっき途中で変更している点が異なる。即ち、回路Aに流れる電流の値を、めっき途中で段階的に増加させている。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、四角形基板S1の辺中央領域A1では、ターミナルエフェクトによりめっきの初期段階で電場が集中し、めっきが進むにつれて電流密度が小さくなる。このため、電場が集中するめっきの初期段階では、電流の値を比較的小さくし、電流密度が小さくなるめっきの途中段階で電流の値を比較的大きくしている。ターミナルエフェクトに応じて電流値を変化させているので、定電流を流し続ける
図16の例に比べて、より膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0098】
また、
図17に示す例では、回路Cに流れる電流の値を、めっき途中で減少させている。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、基板の角部領域A2には、めっきの初期段階から終了時まで一貫して電場が集中し続けるが、めっき初期段階では電場の集中は多少小さい。このため、めっきの初期段階では、電流の値を比較的大きくし、電場の集中が大きくなるめっきの途中段階で電流の値を比較的小さくする。ターミナルエフェクトの変化に応じて電流値を変化させているので、定電流を流し続ける
図16の例に比べて、より膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0099】
図18に示す例では、回路Aにはめっき時間50%までは約4Aでめっき時間50%からは約8Aの電流が、回路Cにはめっき時間50%までは0Aでめっき時間50%からは約1Aの電流が流れる。
【0100】
図18に示す例では、
図17に示す例に比べて、めっき時間50%までは回路Cに電流が流れない点が異なる。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、基板の角部領域A2は、辺中央領域A1及び中間領域A3に比べて膜厚が大きくなる傾向がある。このため、
図18に示す例では、めっきプロセス中に回路Cに電流が流れない時間を設けることで、角部領域A2の膜厚の増加を抑制することができる。
【0101】
図19に示す例では、回路Aにはめっき時間30%までは約2A、めっき時間30%から50%までは約4A、めっき時間50%からは約8Aの電流が流れる。また、回路Cにはめっき時間50%までは0Aでめっき時間50%からは約1Aの電流が流れる。
【0102】
図19に示す例では、
図18に示す例に比べて、めっきプロセスが進むにつれて、回路Aに流れる電流の値が多段階で増加する点が異なる。
図21Aないし
図21Cに関連して説明したように、辺中央領域A1におけるターミナルエフェクトは徐々に変化する。即ち、辺中央領域A1の電場は、徐々に変化する。このため、
図19に示す例では、ターミナ
ルエフェクトの変化に応じて回路Aに流れる電流の値を多段階で増加させているので、回路Aに流れる電流の値が1段階で変化する
図18の例に比べて、より膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0103】
回路Aの電流の値を多段階で変化させるのと同様に、必要に応じて回路Cの電流の値も多段階で変化させてもよい。また、回路A及び回路Cの電流の値を、多段階ではなく、一次関数のように連続的に変化させてもよい。また、
図20に示す例のように、パルス電流を回路A及び回路Cの電流に流してもよい。
【0104】
図15ないし
図20に示した例では、基板ホルダ30が、第1給電部材41Aと第3給電部材41Cとを有するものとして説明されている。しかしながら、基板ホルダ30は、第1給電部材41Aと第2給電部材41Bを備えるように構成されていてもよい。この場合の回路A及び回路Bに流れる電流は、
図10ないし
図14に示した回路A及び回路Bに流れる電流と同様とすることができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。