(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン(A)100質量部に対し、エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)を0.1〜20質量部、酸変性ポリオレフィン(C)を0.1〜20質量部、酸変性ポリオレフィン(D)を0.1〜10質量部含有し、
ポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)が0.01〜10g/10minであり、
酸変性ポリオレフィン(C)の酸価が0.1〜9mgKOH/gであり、
酸変性ポリオレフィン(D)の酸価が10mgKOH/gを超えて、120mgKOH/g以下であり、かつ
ポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)に対する酸変性ポリオレフィン(D)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)の比(D/A)が50以上である、樹脂組成物(E)。
ポリオレフィン(A)層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層を含む多層構造体の回収物と、酸変性ポリオレフィン(D)を含有する回収助剤とを溶融混練する請求項1に記載の樹脂組成物(E)の製造方法。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)層の内側にある各層の厚みの合計をIとし、(B)層の外側にある各層の厚みの合計をOとしたときの厚み比(I/O)が50/50より小さく、かつ
(B)層の厚みをXとし、全体厚みをYとしたときの厚み比(X/Y)が下記(1)式を満足する、請求項5に記載の燃料容器。
0.005≦(X/Y)≦0.13 (1)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂組成物(E)は、ポリオレフィン(A)100質量部に対し、エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)を0.1〜20質量部、酸変性ポリオレフィン(C)を0.1〜20質量部、酸変性ポリオレフィン(D)を0.1〜10質量部含有し、ポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)が0.01〜10g/10minであり、酸変性ポリオレフィン(C)の酸価が0.1〜9mgKOH/gであり、酸変性ポリオレフィン(D)の酸価が10mgKOH/gを超えて、120mgKOH/g以下であり、かつポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)に対する酸変性ポリオレフィン(D)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)の比(D/A)が50以上であるものである。
【0016】
樹脂組成物(E)に含有されるポリオレフィン(A)のMFR(メルトフローレート、190℃、2.16kg荷重下)が0.01〜10g/10minである必要がある。ポリオレフィン(A)のMFRが0.01g/10min未満の場合、EVOH(B)とポリオレフィン(A)の溶融粘度の差が大きくなり過ぎて、樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の分散性が不十分になり、得られる成形品の耐衝撃性が不十分になる場合がある。一方、ポリオレフィン(A)のMFRが10g/10minを超える場合、得られる成形品の耐衝撃性が不十分になる場合がある。当該MFRは、5g/10min以下が好ましく、3g/10min以下がより好ましく、2g/10min以下がさらに好ましい。特に優れた耐衝撃性を有する成形品が得られる観点からは、ポリオレフィン(A)のMFRは0.8g/10min以下が好ましく、0.4g/10min以下がより好ましく、0.1g/10min以下がさらに好ましい。本発明において、樹脂のMFRはJIS K 7210に準拠して測定される。本発明において、融点が190℃付近あるいは190℃を超える樹脂のMFRは、2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値を用いる。本発明において、ポリオレフィン(A)が複数種類の樹脂の混合物である場合、それぞれの樹脂のMFRを混合質量比で加重平均した値をポリオレフィン(A)のMFRとする。EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)又は酸変性ポリオレフィン(D)が複数種類の樹脂の混合物である場合も、ポリオレフィン(A)と同様にして、それぞれのMFRを求める。
【0017】
ポリオレフィン(A)としては、ポリプロピレン;プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンとを共重合したプロピレン系共重合体;低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン;エチレンと、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンとを共重合したエチレン系共重合体;ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などが挙げられる。ポリオレフィン(A)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。中でも、ポリオレフィン(A)として、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン、エチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂が好ましい。耐熱性に優れた成形品が得られる観点からは、ポリオレフィン(A)として、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。一方、耐衝撃性に優れた成形品が得られる観点からは、ポリオレフィン(A)として、ポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、高密度ポリエチレンがさらに好ましい。
【0018】
樹脂組成物(E)に含有されるEVOH(B)は、エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することにより得ることができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。EVOH(B)のエチレン含有量は20〜60モル%が好ましい。エチレン含有量が20モル%未満の場合には、樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の熱安定性が悪化するおそれがある。エチレン含有量は23モル%以上がより好ましい。また、エチレン含有量が60モル%を超えるとバリア性が低下するおそれがある。エチレン含有量は55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。一方、EVOH(B)のビニルエステル単位のけん化度はバリア性の観点から、80%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。EVOH(B)のエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0019】
EVOH(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には5モル%以下の範囲で、エチレン及びビニルエステル以外の重合性単量体が共重合されていてもよい。このような重合性単量体としては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸エステル;アルキルビニルエーテル;N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミドまたはその4級化物、N−ビニルイミダゾールまたはその4級化物、N−ビニルピロリドン、N,N−ブトキシメチルアクリルアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
【0020】
本発明において使用されるEVOH(B)のMFR(メルトフローレート)(210℃、2160g荷重下で測定)は0.1〜100g/10minが好適である。EVOH(B)のMFRが100g/10minを超える場合には、EVOH(B)と酸変性ポリオレフィン(C)の溶融粘度の差が大きくなり過ぎて、樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の分散性が不十分になり、熱安定性が低下するおそれがある。EVOH(B)のMFRは、50g/10min以下がより好適であり、30g/10min以下がさらに好適である。一方、EVOH(B)のMFRが0.1g/10min未満の場合には、酸変性ポリオレフィン(D)と粘度差が大きくなりすぎて、樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の分散性が不十分になり、耐衝撃性が不十分になるおそれがある。当該MFRは0.5g/10min以上がより好適である。
【0021】
樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の含有量は、ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部である。EVOH(B)の含有量が20質量部を超える場合には、樹脂組成物(E)を溶融混練した際に、スクリューやダイへの付着物の量が増加するうえに、得られる成形品の耐衝撃性が低下する。当該含有量は、15質量部以下が好ましい。一方、EVOH(B)の含有量が0.1質量部未満の場合には、EVOH(B)に起因するスクリューやダイへの付着物の問題や耐衝撃性の問題が生じにくいため、本発明を採用するメリットが小さい。当該含有量は、1質量部以上が好適である。
【0022】
樹脂組成物(E)に含有される酸変性ポリオレフィン(C)としては、ポリオレフィンを酸でグラフト変性させて得られるグラフト変性ポリオレフィンや、オレフィンと酸を共重合させて得られるオレフィン系共重合体が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、酸変性ポリオレフィン(C)としてグラフト変性ポリオレフィンが好適である。ポリオレフィン(A)との相溶性に優れる観点から、酸変性ポリオレフィン(C)が、ポリオレフィン(A)と同じ種類のポリオレフィンを酸変性させたものであることが好ましい。例えば、ポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(C)が酸変性ポリプロピレンであることが好ましく、ポリオレフィン(A)がポリエチレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(C)が酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0023】
酸変性ポリオレフィン(C)として用いられるグラフト変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン(A)として用いられるものとして上述したポリオレフィンを酸でグラフト変性させたものが挙げられる。ポリオレフィンにグラフト化させる酸としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体を用いることができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。このうち無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィンが最も好適である。
【0024】
酸変性ポリオレフィン(C)として用いられるオレフィン系共重合体としては、ポリオレフィン(A)として用いられるものとして上述したポリオレフィンに対してさらに共重合成分として酸を含有させたものが挙げられる。このとき用いられる酸としては、ポリオレフィンにグラフト化させる酸として上述したものが挙げられる。
【0025】
酸変性ポリオレフィン(C)の酸価は0.1〜9mgKOH/gである。このような酸価を有する酸変性ポリオレフィン(C)は、ポリオレフィン(A)やEVOH(B)との接着性に優れるため、ポリオレフィン(A)層とEVOH(B)層を有する多層構造体の接着層として用いられる。通常、このような多層構造体の回収物を用いて樹脂組成物(E)を製造した場合に樹脂組成物(E)に含有される。樹脂組成物(E)中に酸変性ポリオレフィン(C)が含有されることにより、樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の分散性が向上して、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。酸変性ポリオレフィン(C)の酸価が0.1mgKOH/g未満の場合、樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の分散性が低下して、得られる成形品の耐衝撃性が低下するうえに、酸変性ポリオレフィン(C)のポリオレフィン(A)やEVOH(B)に対する接着性も低下する。酸変性ポリオレフィン(C)の酸価は、0.5mgKOH/g以上が好適である。一方、酸変性ポリオレフィン(C)の酸価が9mgKOH/gを超える場合には、回収前の多層構造体を構成する樹脂の粘度マッチングが悪化し、得られる成形品の層厚みが不均一になるおそれがある。酸変性ポリオレフィン(C)の酸価は、7mgKOH/g以下が好適であり、5mgKOH/g以下がより好適であり、3mgKOH/g以下がさらに好適である。酸変性ポリオレフィン(C)が複数種類の樹脂の混合物である場合には、それぞれの樹脂の酸価を混合質量比で加重平均した値を酸変性ポリオレフィン(C)の酸価とする。
【0026】
酸変性ポリオレフィン(C)のMFR(メルトフローレート、190℃、2.16kg荷重下)が0.1〜100g/10minであることが好適である。ポリオレフィン(A)層とEVOH(B)層を有する多層構造体の回収物を用いた樹脂組成物(E)を製造した場合に、酸変性ポリオレフィン(C)のMFRがこのような範囲であることにより、酸変性ポリオレフィン(C)と、ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフイン(D)の粘度のバランスが良好となる。その結果、EVOH(B)の分散性がさらに向上して、成形品としたときの耐衝撃性がさらに向上する。
【0027】
樹脂組成物(E)中の酸変性ポリオレフィン(C)の含有量は、ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部である。酸変性ポリオレフィン(C)の含有量が0.1質量部未満の場合には、樹脂組成物(E)中のEVOH(B)の分散性が低下して、得られる成形品の耐衝撃性が低下する。当該含有量は、0.5質量部以上が好適であり、2質量部以上がより好適である。一方、酸変性ポリオレフィン(C)の含有量が20質量部を超える場合には、得られる成形品の耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0028】
樹脂組成物(E)に含有される酸変性ポリオレフィン(D)としては、ポリオレフィンを酸でグラフト変性させて得られるグラフト変性ポリオレフィンや、オレフィンと酸を共重合させて得られるオレフィン系共重合体が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、酸変性ポリオレフィン(D)としてグラフト変性ポリオレフィンが好適である。ポリオレフィン(A)との相溶性に優れる観点から、酸変性ポリオレフィン(D)が、ポリオレフィン(A)と同じ種類のポリオレフィンを酸変性させたものであることが好ましい。例えば、ポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(D)が酸変性ポリプロピレンであることが好ましく、ポリオレフィン(A)がポリエチレンである場合には、酸変性ポリオレフィン(D)が酸変性ポリエチレンであることが好ましい。また、酸変性ポリオレフィン(D)中のα−オレフィン単位の合計含有量は、95モル%を超えていることが好適である。
【0029】
酸変性ポリオレフィン(D)として用いられるグラフト変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン(A)として用いられるものとして上述したポリオレフィンを酸でグラフト変性させたものが挙げられる。このとき用いられる酸としては、酸変性ポリオレフィン(C)の製造に用いられる酸として上述したものが挙げられる。このうち無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィンが最も好適に用いられる。
【0030】
酸変性ポリオレフィン(D)として用いられるオレフィン系共重合体としては、ポリオレフィン(A)として用いられるものとして上述したポリオレフィンに対してさらに共重合成分として酸を含有させたものが挙げられる。このとき用いられる酸としては、酸変性ポリオレフィン(C)の製造に用いられる酸として上述したものが挙げられる。
【0031】
酸変性ポリオレフィン(D)の酸価は10mgKOH/gを超えて、120mgKOH/g以下である。樹脂組成物(E)中にこのような高い酸価を有する酸変性ポリオレフィン(D)が含有されることにより、樹脂組成物(E)を長時間連続して溶融成形した場合でもスクリューやダイへ付着する劣化物の量が低減されるとともに、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。酸変性ポリオレフィン(D)の酸価は、12mgKOH/g以上が好適であり、18mgKOH/g以上がより好適であり、25mgKOH/g以上がさらに好適であり、35mgKOH/g以上が特に好適であり、40mgKOH/g以上が最も好適である。一方、酸変性ポリオレフィン(D)の酸価は100mgKOH/g以下が好適であり、70mgKOH/g以下がより好適である。酸変性ポリオレフィン(D)が複数種類の樹脂の混合物である場合には、それぞれの樹脂の酸価を混合質量比で加重平均した値を酸変性ポリオレフィン(D)の酸価とする。
【0032】
樹脂組成物(E)中の酸変性ポリオレフィン(D)の含有量は、ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部である。酸変性ポリオレフィン(D)の含有量が0.1質量部未満の場合、スクリューやダイへ付着する劣化物の量を低減させる効果や得られる成形品の耐衝撃性を向上させる効果が得られない。酸変性ポリオレフィン(D)の含有量は、0.5質量部以上が好適であり、1質量部以上がより好適である。一方、酸変性ポリオレフィン(D)の含有量が10質量部を超える場合には、酸変性ポリオレフィン(D)とEVOH(B)との過剰な反応により樹脂組成物(E)の熱安定性が低下するおそれがある。酸変性ポリオレフィン(D)の含有量は、8質量部以下が好適である。
【0033】
酸変性ポリオレフィン(D)のMFR(メルトフローレート、190℃、2.16kg荷重下)が5g/10min以上であることが好適である。酸変性ポリオレフィン(D)のMFRが5g/10min未満の場合、樹脂組成物(E)を溶融混練した際に、スクリューやダイへの付着物の量が増加するおそれや、得られる成形品の耐衝撃性が低下するおそれがある。酸変性ポリオレフィン(D)のMFRは10g/10min以上がより好適であり、15g/10min以上がさらに好適であり、20g/10min以上が特に好適である。一方、酸変性ポリオレフィン(D)のMFRは、通常、1000g/10min以下である。
【0034】
樹脂組成物(E)における、ポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)に対する酸変性ポリオレフィン(D)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)の比(D/A)が50以上である必要がある。これにより、樹脂組成物(E)を長時間連続して溶融成形した場合でもスクリューやダイへ付着する劣化物の量が低減されるとともに、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。当該比(D/A)は100以上が好適であり、150以上がより好適であり、200以上がさらに好適であり、400以上が特に好適であり、500以上が最も好適である。一方、前記比(D/A)は、20000以下が好適であり、10000以下がより好適であり、5000以下がさらに好適であり、2000以下が特に好適である。
【0035】
樹脂組成物(E)における、酸変性ポリオレフィン(C)の酸価と酸変性ポリオレフィン(D)の酸価の差が10mgKOH/g以上であることが好適である。当該酸価の差が10mgKOH/g未満の場合、樹脂組成物(E)を溶融混練した際に、スクリューやダイへの付着物の量が増加するおそれや、得られる成形品の耐衝撃性が低下するおそれがある。酸変性ポリオレフィン(C)の酸価と酸変性ポリオレフィン(D)の酸価の差が15mgKOH/g以上であることがより好適であり、20mgKOH/g以上であることがさらに好適であり、25mgKOH/g以上であることが特に好適であり、30mgKOH/g以上であることが最も好適である。
【0036】
樹脂組成物(E)に、本発明の効果を阻害しない範囲でポリオレフィン(A)、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)及び酸変性ポリオレフィン(D)以外の他の添加剤を含有させることもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、帯電防止剤を挙げることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。樹脂組成物(E)中における他の添加剤の含有量は、通常50質量%以下であり、20質量%以下が好適であり、10質量%以下がより好適である。
【0037】
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)など。
【0038】
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなど。
【0039】
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステルなど。
【0040】
滑剤:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、N−ステアリルエルカアミド、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛など。
【0041】
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウムなど。
【0042】
帯電防止剤:グリセリンモノ脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタインなど。
【0043】
次に、ポリオレフィン(A)、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)及び酸変性ポリオレフィン(D)を混合して、本発明の樹脂組成物(E)を得る方法、および樹脂組成物(E)の成形方法について説明する。
【0044】
樹脂組成物(E)を得るための各成分の混合方法について特に制限はなく、ポリオレフィン(A)、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)及び酸変性ポリオレフィン(D)を一度にドライブレンドして溶融混練する方法;ポリオレフィン(A)、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)及び酸変性ポリオレフィン(D)の一部を予め溶融混練してから、他の成分を配合して溶融混練する方法;ポリオレフィン(A)、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)及び酸変性ポリオレフィン(D)の一部又は全部を含有する多層構造体と、他の成分を配合して溶融混練する方法が挙げられる。
【0045】
樹脂組成物(E)の製造方法として、ポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層を含む多層構造体の回収物と、酸変性ポリオレフィン(D)を含有する回収助剤とを溶融混練する方法が好適である。ここで、多層構造体の回収物とは、当該多層構造体からなる成形品を製造する際に発生するバリ等のスクラップや成形時の不合格品等の回収物である。また、このような回収物を溶融混練する際に配合される添加剤を回収助剤といい、ここでは、酸変性ポリオレフィン(D)を含有する回収助剤が用いられる。前記回収助剤中の酸変性ポリオレフィン(D)の含有量は、5〜100質量%が好適である。酸変性ポリオレフィン(D)の含有量は、10質量%以上がより好適であり、20質量%以上がさらに好適であり、50質量%以上が特に好適である。
【0046】
なかでも、ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(D)を含有し、ポリオレフィン(A)に対する酸変性ポリオレフィン(D)の質量比(D/A)が0.1〜10であり、ポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)が0.01〜10g/10minであり、酸変性ポリオレフィン(D)の酸価が10mgKOH/gを超えて、120mgKOH/g以下であり、かつポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)に対する酸変性ポリオレフィン(D)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)の比(D/A)が50以上である回収助剤が好ましい。当該回収助剤は、ポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層を含む多層構造体の回収を始め、ポリオレフィンとEVOHとを含む成形品の回収に広く用いることができる。
【0047】
前記回収助剤に用いられるポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(D)として、樹脂組成物(E)に用いられるものとして上述したものが用いられる。ポリオレフィン(A)に対する酸変性ポリオレフィン(D)の質量比(D/A)は0.1〜10である。酸変性ポリオレフィン(D)に対して、ポリオレフィン(A)をこのような質量比で混合することにより、前記回収助剤をポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層を含む多層構造体の回収物とともに溶融混練する際に、スクリューやダイへの付着物の量がさらに低減されるとともに、得られる成形品の耐衝撃性がさらに向上する。質量比(D/A)は0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。
【0048】
前記回収助剤における、ポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)に対する酸変性ポリオレフィン(D)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)の比(D/A)が50以上である必要がある。これにより、前記回収助剤をポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層を含む多層構造体の回収物とともに溶融混練する際に、スクリューやダイへの付着物の量がさらに低減されるとともに、得られる成形品の耐衝撃性がさらに向上する。当該比(D/A)は100以上が好適であり、150以上がより好適であり、200以上がさらに好適であり、400以上が特に好適であり、500以上が最も好適である。一方、前記比(D/A)は、20000以下が好適であり、10000以下がより好適であり、5000以下がさらに好適であり、3000以下が特に好適である。
【0049】
相溶性の観点から、前記回収助剤に含有されるポリオレフィン(A)と回収される多層構造体に含まれるポリオレフィン(A)とは同じ種類のポリオレフィンであることが好ましい。例えば、回収される多層構造体に含まれるポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合には、前記回収助剤に含有されるポリオレフィン(A)もポリプロピレンであることが好ましく、回収される多層構造体に含まれるポリオレフィン(A)がポリエチレンである場合には、前記回収助剤に含有されるポリオレフィン(A)もポリエチレンであることが好ましい。
【0050】
前記回収助剤中のポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(D)の合計含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。前記回収助剤は本発明の効果を阻害しない範囲でポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(D)以外の他の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、樹脂組成物(E)に含有される他の添加剤として上述したものが挙げられる。
【0051】
酸変性ポリオレフィン(D)に対して、ポリオレフィン(A)や他の成分を配合する場合は、それらを予め溶融混練して、それら全てを含有する樹脂組成物としてから回収物に添加することが好ましい。このような回収助剤は、好適にはペレット形状で回収物に配合される。回収物は、適当な寸法に粉砕しておくことが好ましく、粉砕された回収物に対してペレット形状の回収助剤を混合することが好適である。
【0052】
樹脂組成物(E)の原料として、未使用の樹脂のみを用いても構わないが、原料の少なくとも一部として、多層構造体の回収物を用いることにより、廃棄物量が抑制されるので環境保全の観点から好ましく、コスト低減の効果も得られる。樹脂組成物(E)中の前記回収物の量は、50質量%以上であることが好適である。
【0053】
さらに、樹脂組成物(E)の原料とされる回収物が、ポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層に加えて、樹脂組成物(E)層を含有する多層構造体からなるものであることも好ましい。すなわち、樹脂組成物(E)層を含有する多層構造体からなる成形品を製造し、その成形品の回収物を、再び同様の多層構造体における樹脂組成物(E)層の原料として用いることが好ましい。
【0054】
樹脂組成物(E)が、ポリオレフィン(A)、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)及び酸変性ポリオレフィン(D)以外の他の成分を含む場合、それらの成分を含有させる方法は特に限定されず、上述の(A)、(B)、(C)、(D)の各成分と同様の操作で含有させることができる。ポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層を含む多層構造体の回収物を用いて樹脂組成物(E)を製造する場合、当該多層構造体のいずれかの層に他の成分が含有されていてもよい。また、酸変性ポリオレフィン(D)を含有する回収助剤に他の成分が含有されていてもよい。
【0055】
樹脂組成物(E)層、ポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層、及び酸変性ポリオレフィン(C)層を含む多層構造体が本発明の好適な実施態様である。前記多層構造体の層構成としては以下のようなものが例示される。
【0057】
6層 A/C/B/C/E/A、E/A/C/B/C/A、A/E/C/B/C/E、E/A/C/B/C/E
【0058】
7層 A/E/C/B/C/E/A、A/E/C/B/C/A/E、E/A/C/B/C/A/E
【0059】
前記多層構造体において、層間の接着性が向上する観点から、EVOH(B)層と酸変性ポリオレフィン(C)層とが接触していることが好適である。
【0060】
前記多層構造体における、ポリオレフィン(A)層の合計厚みに対するEVOH(B)層の合計厚みの比(B/A)が0.5/100〜20/100であることが好適である。当該厚み比(B/A)が0.5/100未満の場合には、バリア性が不十分になるおそれがある。一方、当該厚み比が(B/A)が20/100を超える場合には、耐衝撃性が低下するおそれや、コスト高になるおそれがある。
【0061】
前記多層構造体における、ポリオレフィン(A)層の合計厚みに対する酸変性ポリオレフィン(C)層の合計厚みの比(C/A)が0.5/100〜20/100であることが好適である。当該厚み比(C/A)が0.5/100未満の場合には、層間接着性が不十分になるおそれがある。一方、当該厚み比(C/A)が20/100を超える場合には、多層構造体の製造に用いられる樹脂の粘度マッチングが悪化して、多層構造体を製造する際に、層厚みが不均一になるおそれがある。
【0062】
前記多層構造体における、ポリオレフィン(A)層の合計厚みに対する樹脂組成物(E)層の合計厚みの比(E/A)が5/100〜60/100であることが好適である。当該厚み比(E/A)が5/100未満の場合には、コスト高になるおそれがある。一方、当該厚み比(E/A)が80/100を超える場合には、耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0063】
前記多層構造体の全体厚みは、用途に応じて適宜設定することができる。前記全体厚みは、100〜8000μmが好適である。全体厚みが100μm以上であることにより、剛性の高い多層構造体が得られる。全体厚みが500μm以上であることがより好適である。一方、全体厚みが8000μm以下であることにより、フレキシブルな多層構造体が得られる。全体厚みが7000μm以下であることがより好適である。
【0064】
前記多層構造体の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、一般のポリオレフィンの分野において実施されている成形方法、例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形、熱成形等を挙げることができる。なかでも、共押出成形及び共射出成形が好適であり、共押出成形がより好適である。
【0065】
樹脂組成物(E)層を有する燃料容器が樹脂組成物(E)の好適な実施態様である。そして、樹脂組成物(E)層に加えて、さらにポリオレフィン(A)層、EVOH(B)層及び酸変性ポリオレフィン(C)層を有する燃料容器が前記多層構造体の好適な実施態様である。このとき、当該燃料容器が、(B)層の内外層に(C)層を介して、(A)層又は(E)層を有するものであることが好ましい。当該燃料容器は中間層の(B)層の両側に(C)層を介して(A)層又は(E)層を有するものである。
【0066】
前記燃料容器において、EVOH(B)層の内側にある各層の厚みの合計をIとし、(B)層の外側にある各層の厚みの合計をOとしたときの厚み比(I/O)が50/50より小さいことが好ましい。言い換えれば、EVOH(B)層を、全体厚みに対し内側寄りの位置に配置するということである。ここで、内側あるいは外側の一部に(A)層、(C)層及び(E)層以外の層を有する場合には、その厚みをI、Oに加えるものである。なお、本発明の燃料容器における各層の厚みは、容器の胴部の平均厚みのことをいう。かかる位置にEVOH(B)層を配置することで、全体層厚みに対して中心に配置する場合に比較してガソリンバリア性および耐衝撃性が改善される。(I/O)≦45/55であることがより好ましく、(I/O)≦40/60であることがさらに好ましく、(I/O)≦35/65であることが特に好ましく、(I/O)≦30/70であることが最適である。ただし、最内層は(A)層、(C)層又は(E)層が好ましい。燃料容器を成形する方法として好ましいのは共押出ブロー成形方法であるが、このとき円筒状溶融パリソンを金型で切断、接着しなければならず、その際最内層同士が互いに接する形で接着することで円筒状開口部を閉じることになる。最内層が、(A)層、(C)層又は(E)層であることにより、この閉じた部分(ピンチオフ部分という)の接着強度が向上する。この観点から、(I/O)≧1/99が好ましく、(I/O)≧2/98がより好ましく、(I/O)≧5/95が特に好ましく、(I/O)≧10/90が最適である。
【0067】
また、(B)層の厚みをXとし、全体厚みをYとしたときの厚み比(X/Y)が下記(1)式を満足することも好ましい。
0.005≦(X/Y)≦0.13 (1)
【0068】
(X/Y)が0.005未満である場合、ガソリンバリア性が低下するおそれがある。(X/Y)の値は好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上である。一方、(X/Y)が0.13以上である場合、耐衝撃性が低下するおそれや、EVOH(B)を大量に用いることでコストが上昇するおそれがある。(X/Y)の値は好ましくは0.10以下であり、より好ましくは0.07以下である。
【0069】
本発明の燃料容器の層構成としては以下のようなものが好ましい。この例示において、左が内側で右が外側である。
【0070】
5層 (内側)A/C/B/C/E(外側)、E/C/B/C/A
【0071】
6層 A/C/B/C/E/A、A/E/C/B/C/A、E/C/B/C/E/A、A/E/C/B/C/E、E/E/C/B/C/A、A/C/B/C/E/E
【0072】
7層 A/E/C/B/C/E/A、A/E/C/B/C/E/E、E/E/C/B/C/E/A
【0073】
本発明の樹脂組成物(E)は、溶融成形を長時間連続して行った場合でもスクリューやダイへ付着する劣化物の量が少ない。なおかつ樹脂組成物(E)を用いることにより耐衝撃性及び外観に優れた多層構造体からなる成形品が得られる。当該成形品は、食品包装容器、燃料容器などに好適に用いられる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0075】
[MFR]
JIS K 7210に準拠して樹脂のMFRを測定した。
【0076】
[樹脂の酸価]
JIS K 2501に基づいて、酸変性ポリオレフィンの酸価を測定し、酸価から酸変性量(mmol/g)を算出した。溶剤はキシレンを使用した。
【0077】
[試験片の耐衝撃性]
JIS K 7110に準じてIZOD衝撃強度測定を行った。射出成形機(日精製、FS−80S)を用いて、樹脂組成物ペレットの射出成形を行った後、得られた成形品(長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm)をノッチング加工することにより試験片を得た。デジタル衝撃試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用い、得られた試験片の23℃および−40℃におけるIZOD衝撃強度(kJ/m
2)を測定した。
【0078】
[分散性]
樹脂組成物ペレットの切断面を電子染色し、走査電子顕微鏡で観察することにより、ポリオレフィン(A)中に分散したEVOH(B)の粒径を求めた。
【0079】
[燃料容器の50%破壊高さの測定]
燃料容器に、エチレングリコールを内容積に対して60体積%充填し、−40℃の冷凍室に3日間放置した後、コンクリート上に落下させ、ボトルが破壊(容器内部のエチレングリコールが漏れる)する落下高さを求めた。破壊高さは、n=30の試験結果を用いて、JIS試験法(K7211の「8.計算」の部分)に示される計算方法を用いて、50%破壊高さを求めた。
【0080】
[ポリオレフィン(A)]
・A1:密度0.900g/cm
3、MFR(190℃、2.16kg荷重下で測定)1g/10minであるポリプロピレン
・A2:密度0.945g/cm
3、MFR(190℃、2.16kg荷重下で測定)0.03g/10minである高密度ポリエチレン
【0081】
[EVOH(B)]
・B1:エチレン含有量32モル%、けん化度99.9モル%、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.6g/10min、密度1.19g/cm
3であるEVOH
【0082】
[酸変性ポリオレフィン(C)]
・C1:三井化学株式会社製無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン「ADMER(登録商標) QF500」[密度0.900g/cm
3、MFR(190℃、2.16kg荷重下で測定)1.1g/10min、酸価1.1mgKOH/g]
・C2:三井化学株式会社製無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン「ADMER(登録商標) GT6」[密度0.92g/cm
3、MFR(190℃、2.16kg荷重下で測定)1.1g/10min、酸価1.5mgKOH/g]
【0083】
[酸変性ポリオレフィン(D)]
・D1〜D8:
ポリプロピレン(PP、密度0.91g/cm
3)、無水マレイン酸(MAn)及び2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(開始剤)を溶融混練した後、ペレット化して得られた無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(D1〜D8)を用いた。無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(D1〜D8)の酸価及びMFR(190℃、2.16kg荷重下で測定)を表1に示す。
・D9〜D15:
高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm
3であるPE1又は密度0.93g/cm
3であるPE2)、無水マレイン酸及び2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを溶融混練した後、ペレット化して得られた無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(D9〜D15)を用いた。無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(D9〜D15)の酸価及びMFR(190℃、2.16kg荷重下で測定)を表2に示す。
【0084】
実施例1
[回収助剤の製造]
ポリプロピレン(A1)25質量部、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(D1)75質量部をドライブレンドしてから、二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製「2D25W」、径25mm)を用いて、215℃にて溶融混練した後、ペレタイザーを用いてペレット化して回収助剤を得た。
【0085】
[ロングラン性評価]
得られた回収助剤2.4質量部、ポリプロピレン(A1)100質量部、EVOH(B1)8.6質量部、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(C1)10質量部をドライブレンドした後、単軸押出機(プラスチック工学研究所社製「GT−40−26」径40mm)を用いて、215℃にて溶融混練した後、ペレット化して樹脂組成物(E)ペレットを得た。このときの溶融混練条件を以下に示す。得られた樹脂組成物(E)ペレットを再度同じ単軸押出機に投入して同じ条件で溶融混練した後、ペレット化して樹脂組成物(E)ペレットを得た。得られた樹脂組成物(E)ペレットを同様に溶融混練する工程をさらに3回繰り返した。前記単軸押出機に低密度ポリエチレンを供給して15分間運転した後、スクリュー及びダイを取り外してスクリュー付着物及び目ヤニ(ダイへの付着物)をそれぞれ採取して、秤量した。また、得られた樹脂組成物(E)ペレット(溶融混練を5回繰り返したもの)の耐衝撃性及び分散性を上記の方法により評価した。これらの結果を表3に示す。
スクリュー回転数:95rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D=200℃/215℃/215℃/215℃/215℃/215℃
【0086】
溶融混練の繰り返し数と目ヤニ付着量との関係を評価した。溶融混練の繰り返し数を1〜4回として、樹脂組成物(E)ペレットの製造と得られた樹脂組成物(E)ペレットの再溶融混練を行った後、目ヤニ付着量を秤量した。樹脂組成物(E)ペレットの製造や再溶融混練、目ヤニ付着量の秤量は上記と同じ方法で行った。
図1に、溶融混練の繰り返し数に対して、目ヤニ付着量をプロットした。また、上述した溶融混練を5回繰り返した際の目ヤニ付着量も併せてプロットした。
【0087】
実施例2、3
前記回収助剤、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)の添加量を表3に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(E)ペレットの作製及び評価(溶融混練の繰り返し数と目ヤニ付着量との関係の評価を除く)を行った。結果を表3に示す。
【0088】
実施例4〜8、比較例1、2
酸変性ポリオレフィン(D)の種類を表3に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(E)ペレットの作製及び評価(溶融混練の繰り返し数と目ヤニ付着量との関係の評価を除く)を行った。結果を表3に示す。
【0089】
実施例9
酸変性ポリオレフィン(D)のみからなる回収助剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(E)ペレットの作製及び評価(溶融混練の繰り返し数と目ヤニ付着量との関係の評価を除く)を行った。結果を表3に示す。
【0090】
比較例3
回収助剤の代わりにポリプロピレン(A1)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。結果を表3及び
図1に示す。
【0091】
実施例10、13〜16、比較例4、5
ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(C)及び酸変性ポリオレフィン(D)の種類を表4に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(E)ペレットの作製及び評価を行った。溶融混練の繰り返し数と目ヤニ付着量との関係の評価は実施例10のみ行った。結果を表4及び
図2に示す。
【0092】
実施例11、12
前記回収助剤、EVOH(B)、酸変性ポリオレフィン(C)の添加量を表4に示すとおりに変更した以外は実施例10と同様にして樹脂組成物(E)ペレットの作製及び評価(溶融混練の繰り返し数と目ヤニ付着量との関係の評価を除く)を行った。結果を表4に示す。
【0093】
実施例17
酸変性ポリオレフィン(D)のみからなる回収助剤を用いたこと以外は、実施例10と同様にして樹脂組成物(E)ペレットの作製及び評価(溶融混練の繰り返し数と目ヤニ付着量との関係の評価を除く)を行った。結果を表4に示す。
【0094】
比較例6
回収助剤の代わりに高密度ポリエチレン(A2)のみを用いたこと以外は、実施例10と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。結果を表4及び
図2に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
酸価が0.1〜9mgKOH/gである酸変性ポリオレフィン(C)と酸価が10mgKOH/gを超えて、120mgKOH/g以下である酸変性ポリオレフィン(D)を含み、ポリオレフィン(A)のMFRに対する酸変性ポリオレフィン(D)のMFRの比(D/A)が50以上である本発明の樹脂組成物(E、実施例1〜17)は、目ヤニ付着量及びスクリュー付着物量が少なく、EVOH(B)の分散性に優れるとともに、得られる成形品の耐衝撃強度も高かった。一方、酸変性ポリオレフィン(C)と酸価が10mgKOH/g未満である酸変性ポリオレフィンを含み、かつMFRの比(D/A)が50未満である樹脂組成物(比較例1、2、5)、酸変性ポリオレフィン(C)と酸価が10mgKOH/g未満である酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物(比較例4)、酸変性ポリオレフィンとして、酸変性ポリオレフィン(C)のみ含む樹脂組成物(比較例3、6)は、上記全ての性能が不十分であった。
【0100】
図1に示されるとおり、酸変性ポリオレフィンとして、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(C1)のみ含む樹脂組成物(比較例3)を繰り返し溶融混練した場合、溶融混練の繰り返し数が増えるにつれて、目ヤニ付着量が増加した。一方、(C1)に加えて、酸価が45mgKOH/gである無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(D1)を含有する本発明の樹脂組成物(E、実施例1)を繰り返し溶融混練した場合、驚くべきことに溶融混練を繰り返し行った場合でも目ヤニの付着は確認されなかった。
【0101】
また、
図2に示されるとおり、酸変性ポリオレフィンとして、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(C2)のみ含む樹脂組成物(比較例6)を繰り返し溶融混練した場合、繰り返し数に関わらず、一定量の目ヤニが付着した。一方、(C2)に加えて、酸価が47mgKOH/gである無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(D9)を含有する本発明の樹脂組成物(E、実施例10)を繰り返し溶融混練した場合、驚くべきことに繰り返し数が増えるにつれて、目ヤニ付着量が減少した。
【0102】
実施例18
[回収物の製造]
ポリプロピレン(A1)、EVOH(B1)及び無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(C1)を用いて、下記の条件にて3種5層の多層フィルム(A1:208μm/C1:16μm/B1:32μm/C1:16μm/A1:208μm)を作製した。
・ポリプロピレン(A1)
押出機: 32mmφ押出機 GT−32−A(プラスチック工学研究所社製)
押出温度: 供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/210/220/220℃
ダイ: 300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
・EVOH(B)
押出機: 20mmφ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製作所製)
押出温度: 供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/210/220/220℃
ダイ: 300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
・無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(C1)
押出機: 20mmφ押出機 SZW20GT−20MG−STD(株式会社テクノベル製)
押出温度: 供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/210/220/220℃
ダイ: 300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
【0103】
得られた多層フィルムを径8mmφメッシュの粉砕機で粉砕して回収物を得た。得られた回収物の質量比は、A1/B1/C1=100/10.2/7.8であった。
【0104】
[多層フィルムの製造]
得られた回収物118.6質量部及び実施例1で得られた回収助剤2.4質量部をドライブレンドして混合樹脂を得た。得られた混合樹脂、ポリプロピレン(A1)、EVOH(B1)及び無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(C1)を用いて、4種6層の多層フィルム(A1:208μm/混合樹脂[樹脂組成物(E)]:320μm/C1:16μm/B1:32μm/C1:16μm/A1:208μm)を作製した。このとき、ポリプロピレン(A1)、EVOH(B)、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(C1)は、上述した回収物を製造する条件と同じ条件で成形し、混合樹脂[樹脂組成物(E)層]は、以下の条件で成形した。
押出機: 32mmφ押出機 GT−32−A(プラスチック工学研究所社製)
押出温度: 供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/210/220/220℃
ダイ: 300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
【0105】
多層フィルムを連続して製造し、100時間経過後に得られた多層フィルムの外観を以下の基準で評価した。結果を表5に示す。
A:多層フィルムにスジが観察された。
B:多層フィルムにスジが観察されなかった。
【0106】
実施例19
ポリプロピレン(A1)の代わりに高密度ポリエチレン(A2)を用いたこと、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(C1)の代わりに無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(C2)を用いたこと及び無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(D1)の代わりに無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(D9)を用いたこと以外は実施例18と同様にして多層フィルムの作製及び評価を行った。結果を表5に示す。
【0107】
比較例7
回収助剤の代わりにポリプロピレン(A1)のみを用いたこと以外は実施例18と同様にして多層フィルムの作製及び評価を行った。結果を表5に示す。
【0108】
比較例8
回収助剤の代わりに高密度ポリエチレン(A2)のみを用いたこと以外は実施例19と同様にして多層フィルムの作製及び評価を行った。結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
実施例20
ポリオレフィン(A)としてA2、EVOH(B)としてB1、酸変性ポリエチレン(C)として無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(C2)、回収物として実施例10の樹脂組成物(E)ペレット(溶融混練を5回繰り返したもの)を用い、鈴木製工所製押出ブロー成形機「TB−ST−6P」にて210℃(内側)A/C/B/C/E/A(外側)の層構成の4種6層パリソンを押し出し、15℃の金型内でブローし、20秒冷却して全層厚み2050μm[(内側)A/C/B/C/E/A(外側)=350/50/50/50/850/700μm]の500mL燃料容器(底面直径は100mm、高さは64mm)を成形した。得られた燃料容器を50%破壊高さの評価に用いた。評価結果を表6に示す。
【0111】
実施例21
層構成を(内側)A/C/E/C/B/A(外側)=350/50/850/50/50/700μmとした以外は、実施例20と同様に燃料容器を成形し、50%破壊高さを評価した。評価結果を表6に示す。
【0112】
比較例9、10
実施例10の樹脂組成物(E)の代わりに、比較例4または5の樹脂組成物を用いた以外は実施例20と同様に燃料容器を成形し、50%破壊高さを評価した。評価結果を表6に示す。
【0113】
【表6】
ポリオレフィン(A)100質量部に対し、エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)を0.1〜20質量部、酸変性ポリオレフィン(C)を0.1〜20質量部、酸変性ポリオレフィン(D)を0.1〜10質量部含有し、ポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)が0.01〜10g/10minであり、酸変性ポリオレフィン(C)の酸価が0.1〜9mgKOH/gであり、酸変性ポリオレフィン(D)の酸価が10mgKOH/gを超えて、120mgKOH/g以下であり、かつポリオレフィン(A)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)に対する酸変性ポリオレフィン(D)のMFR(190℃、2.16kg荷重下)の比(D/A)が50以上である、樹脂組成物(E)とする。本発明の樹脂組成物(E)は、溶融成形を長時間連続して行った場合でもスクリューやダイへ付着する劣化物の量が少ない。なおかつ樹脂組成物(E)を用いることにより耐衝撃性及び外観に優れた成形品が得られる。本発明の製造方法によれば、樹脂組成物(E)を長期間安定して製造できる。