特許第6488912号(P6488912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6488912吸着層付き基板の梱包方法及び吸着層付き基板の梱包装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488912
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】吸着層付き基板の梱包方法及び吸着層付き基板の梱包装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 23/20 20060101AFI20190318BHJP
   B65D 85/48 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B65B23/20
   B65D85/48
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-127181(P2015-127181)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-7718(P2017-7718A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰則
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 洋
(72)【発明者】
【氏名】立山 優貴
(72)【発明者】
【氏名】堀 雄貴
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−213918(JP,A)
【文献】 特開2015−093405(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/018028(WO,A1)
【文献】 特開平05−301730(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 19/00−23/22
B65D 85/30−85/48
B65D 85/86
B65D 85/90
B65B 59/00−65/08
C03C 15/00−23/00
B32B 1/00−43/00
C03B 23/00−35/26
C03B 40/00−40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に吸着層が形成された基板を梱包容器に搭載する搭載工程と、
前記梱包容器に搭載された前記基板の吸着層の表面に対し、疵を付与する疵付与工程と、
前記搭載工程と前記疵付与工程とを繰り返して行うことにより、前記梱包容器に複数の前記基板を積載する、吸着層付き基板の梱包方法。
【請求項2】
前記疵付与工程は、前記基板の吸着層の表面にロールブラシを押し当てて、前記ロールブラシを前記基板の一端側から他端側に向けて移動させる移動工程を含む、請求項1に記載の吸着層付き基板の梱包方法。
【請求項3】
前記基板は、厚さが0.7mm以下であり、縦横寸法が1000mm以上のガラス板である、請求項1又は2に記載の吸着層付き基板の梱包方法。
【請求項4】
前記吸着層は、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、又は無機化合物からなる、請求項1、2又は3に記載の吸着層付き基板の梱包方法。
【請求項5】
表面に吸着層が形成された基板を梱包容器に搭載する搭載部材と、
前記梱包容器に搭載された前記基板の吸着層の表面に疵を付与する疵付与部材と、
前記疵付与部材を、前記基板の吸着層の表面に押し当てて、前記基板の一端側から他端側に向けて移動させる移動部材と、
を備える、吸着層付き基板の梱包装置。
【請求項6】
前記疵付与部材は、ロールブラシである、請求項5に記載の吸着層付き基板の梱包装置。
【請求項7】
前記ロールブラシは、軸と、前記軸の周面に設けられたブラシとからなり、前記ブラシは、前記軸の周面の一部の領域に設けられている、請求項6に記載の吸着層付き基板の梱包装置。
【請求項8】
前記移動部材は、駆動源と前記駆動源の動力を前記疵付与部材に伝達する複数の動力伝達部材と、を備える、請求項5から7の何れか1項に記載の吸着層付き基板の梱包装置。
【請求項9】
前記疵付与部材の両端は、分解可能なカップリング部材を介して、前記移動部材に連結される、請求項5から8の何れか1項に記載の吸着層付き基板の梱包装置。
【請求項10】
前記疵付与部材は、除塵部材によって包囲されている、請求項5から9の何れか1項に記載の吸着層付き基板の梱包装置。
【請求項11】
静電気除去部材を備える、請求項5から10の何れか1項に記載の吸着層付き基板の梱包装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着層付き基板の梱包方法及び吸着層付き基板の梱包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池等の電子デバイスの薄型化、軽量化に伴い、これらの電子デバイスに用いられるガラス板、樹脂板、金属板等の基板の薄板化が要望されている。
【0003】
しかしながら、基板の厚さが薄くなると、基板のハンドリング性が悪化するため、基板の表面に電子デバイス用の機能層(薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)、カラーフィルタ(CF:Color Filter))を形成することが困難になる。
【0004】
そこで、表面に吸着層が備えられた補強板(基板)を使用し、この補強板の吸着層に基板の裏面を吸着させて、基板を補強板により補強した積層体を構成し、積層体の状態で基板の表面に機能層を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、基板のハンドリング性が向上するため、基板の表面に機能層を良好に形成できる。そして、補強板は、機能層の形成後に基板から剥離され、剥離された補強板は、パレット(梱包容器)に複数枚単位で積載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/090147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、パレットに積載された複数の補強板をパレットから1枚ずつ取り出す際に、隣接する2枚の補強板同士が、吸着層によって吸着されているため、補強板をパレットから1枚ずつ取り出すことが困難であった。
【0007】
一方で、隣接する2枚の補強板の間に、いわゆる合紙等のシートを介在させれば、補強板をパレットから1枚ずつ取り出すことが可能になる。しかしながら、この方法では、シートが別途必要になるとともに、シートが吸着層に吸着される場合があるので、シートの取り外し作業が別途必要になるという問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、表面に吸着層が備えられた複数の基板を、シートを介在させることなく梱包容器に積載した場合であっても、梱包容器から基板を1枚ずつ容易に取り出すことが可能な吸着層付き基板の梱包方法及び吸着層付き基板の梱包装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸着層付き基板の梱包方法の一態様は、本発明の目的を達成するために、表面に吸着層が形成された基板を梱包容器に搭載する搭載工程と、梱包容器に搭載された基板の吸着層の表面に対し、疵を付与する疵付与工程と、搭載工程と疵付与工程とを繰り返して行うことにより、梱包容器に複数の基板を積載することを特徴とする。
【0010】
本発明の吸着層付き基板の梱包装置の一態様は、本発明の目的を達成するために、表面に吸着層が形成された基板を梱包容器に搭載する搭載部材と、梱包容器に搭載された基板の吸着層の表面に疵を付与する疵付与部材と、疵付与部材を、基板の吸着層の表面に押し当てて、基板の一端側から他端側に向けて移動させる移動部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様によれば、搭載工程にて基板を、搭載部材によって梱包容器に搭載する。次に、疵付与工程にて基板の吸着層の表面に、疵付与部材によって疵を付与する。すなわち、移動部材によって疵付与部材を、基板の吸着層の表面に押し当て、基板の一端側から他端側に向けて移動させる。そして、搭載工程と疵付与工程とを繰り返し行うことにより、梱包容器に複数の基板を積載する。
【0012】
本発明で説明する疵とは、疵付与部材から吸着層の表面に付与される疵である。詳述すれば、本発明の基板は、搭載部材によって梱包容器に搭載された後、移動部材によって移動される疵付与部材の動作によって、吸着層の表面に、疵である溝部を形成する。溝部の深さは、吸着層の厚さ(数ミクロンから数十ミクロン)に基づきミクロン単位である。
【0013】
本発明は、吸着層の表面に疵を付与することに技術的な特徴がある。これにより、吸着層の吸着面積が減少するので、隣接する2枚の基板同士の吸着力を低下させることができる。したがって、表面に吸着層が備えられた複数の基板を、シートを介在させることなく梱包容器に積載した場合であっても、梱包容器から基板を1枚ずつ容易に取り出すことができる。
【0014】
また、本発明は、梱包容器に搭載した状態で疵を付与することに技術的な特徴がある。これにより、疵を付与するためのスペースを省スペース化することができる。
【0015】
なお、隣接する2枚の基板同士の吸着力をより低下させるためには、吸着層の表面に複数本の疵を付与することが好ましい。また、吸着層の表面において、疵を規則的に付与してもよく、無作為に付与してもよい。更に、基板同士の吸着力をより一層低下させるためには、吸着層の表面において、疵を均一にかつ密に付与することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様の疵付与工程は、基板の吸着層の表面にロールブラシを押し当てて、ロールブラシを基板の一端側から他端側に向けて移動させる移動工程を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の一態様によれば、ロールブラシによって吸着層の表面に、複数本の疵を均一にかつ密に付与することができるので、隣接する2枚の基板同士の吸着力をより一層低下させることができる。ロールブラシは回転させながら移動させてもよく、回転を停止させた状態で移動させてもよい。
【0018】
本発明の一態様の基板は、厚さが0.7mm以下であり、縦横寸法が1000mm以上のガラス板であることが好ましい。
【0019】
本発明の一態様の基板は、電子デバイス用基板を補強するガラス製の補強板に好適である。また、縦横寸法が1000mm以上のガラス板は、所謂、第5世代(例えば1100mm×1300mm)以上の電子デバイス用基板を補強する補強板に好適である。
【0020】
本発明の一態様の吸着層は、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、又は無機化合物からなることが好ましい。
【0021】
本発明の一態様によれば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、又は無機化合物からなる吸着層の表面に、疵付与部材によって疵を付与することができる。
【0022】
本発明の一態様の疵付与部材は、ロールブラシであって、ロールブラシは、軸と、軸の周面に設けられたブラシとからなり、ブラシは、軸の周面の一部の領域に設けられていることが好ましい。
【0023】
本発明の一態様によれば、梱包容器に縦積みされた基板の吸着層の下端部に対しても、ロールブラシのブラシによって疵を良好に付与することができる。
【0024】
本発明の一態様の移動部材は、駆動源と駆動源の動力を疵付与部材に伝達する複数の動力伝達部材と、を備えることが好ましい。
【0025】
本発明の一態様によれば、複数の動力伝達部材のうち一つの動力伝達部材が故障した場合でも、他の動力伝達部材によって疵付与部材を支持することができるので、疵付与部材の落下を防止することができる。
【0026】
本発明の一態様は、疵付与部材の両端は、分解可能なカップリング部材を介して、移動部材に連結されることが好ましい。
【0027】
本発明の一態様によれば、移動部材に対する疵付与部材の交換を容易に行うことができる。
【0028】
本発明の一態様の疵付与部材は、除塵部材によって包囲されていることが好ましい。
【0029】
本発明の一態様によれば、疵付与部材の動作によって吸着層から発生した塵埃を除塵部材によって除塵することができるので、梱包容器の周辺に塵埃が飛散することを防止することができる。
【0030】
本発明の一態様は、静電気除去部材を備えることが好ましい。
【0031】
本発明の一態様によれば、疵付与部材の動作によって吸着層から発生した塵埃が、静電気によって梱包装置及び梱包容器に再付着することを防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の吸着層付き基板の梱包方法及び吸着層付き基板の梱包装置によれば、表面に吸着層が備えられた複数の基板を、シートを介在させることなく梱包容器に積載した場合であっても、梱包容器から基板を1枚ずつ容易に取り出すことができる。また、梱包容器に積載した状態で疵を付与するので、疵を付与するためのスペースを省スペース化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】積層体の一例を示す要部拡大側面図
図2】実施形態の疵付け装置の斜視図
図3】実施形態の梱包装置の正面図
図4図3に示した梱包装置の左側面図
図5図4の左側面図において要部を断面で示した梱包容器の説明図
図6】実施形態の梱包装置による補強板の梱包方法を示したフローチャート
図7】軸の周面の一部に一群のブラシが植設されたロールブラシの側面図
図8】補強板の吸着層の下端部にブラシが当接された側面図
図9】軸の外周面の対称位置にブラシが2か所設けられたロールブラシの側面図
図10】軸の外周面にブラシが等間隔で3か所設けられたロールブラシの側面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に従って、本発明の吸着層付き基板の梱包方法及び吸着層付き基板の梱包装置の実施形態について説明する。
【0035】
以下においては、本発明に係る吸着層付き基板の梱包方法及び吸着層付き基板の梱包装置を、電子デバイスの製造工場にて使用する形態について説明する。
【0036】
電子デバイスとは、表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池等の電子部品をいう。表示パネルとしては、液晶ディスプレイパネル(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)、及び有機ELディスプレイパネル(OELD:Organic Electro Luminescence Display)を例示できる。
【0037】
電子デバイスは、ガラス製、樹脂製、金属製等の基板の表面に電子デバイス用の機能層(LCDであれば、薄膜トランジスタ(TFT)、カラーフィルタ(CF))を形成することにより製造される。
【0038】
上記の基板は、機能層の形成前に、裏面が補強板(基板)の吸着層に吸着されて積層体に構成される。その後、積層体の状態で基板の表面に機能層が形成される。そして、機能層の形成後、基板から補強板が剥離される。
【0039】
〔積層体1〕
図1は、積層体1の一例を示した要部拡大側面図である。
【0040】
積層体1は、機能層が形成される基板2と、基板2を補強する補強板(基板)3とを備える。また、補強板3は、表面3aに吸着層4が備えられ、吸着層4に基板2の裏面2bが吸着される。すなわち、基板2は、吸着層4との間に作用するファンデルワールス力、又は吸着層4の粘着力によって、補強板3に吸着層4を介して吸着される。
【0041】
[基板2]
基板2は、表面2aに機能層が形成される。基板2としては、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板を例示できる。これらの基板のなかでも、ガラス基板は、耐薬品性、耐透湿性に優れ、かつ線膨張係数が小さいので、電子デバイス用の基板2として好適である。また、線膨張係数が小さくなるに従い、高温下で形成される機能層のパターンが冷却時に、ずれ難くなる利点もある。
【0042】
ガラス基板のガラスとしては、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスを例示できる。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0043】
ガラス基板のガラスとしては、製造する電子デバイスの種類に適したガラスを選択して採用することが好ましい。例えば、液晶パネル用のガラス基板には、アルカリ金属成分を実質的に含まない無アルカリガラスを採用することが好ましい。
【0044】
基板2の厚さは、基板2の種類に応じて設定される。例えば、基板2にガラス基板を採用する場合、基板2の厚さは、電子デバイスの軽量化、薄板化のため、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下に設定される。厚さが0.3mm以下の場合、ガラス基板に良好なフレキシブル性を与えることができる。更に、厚さが0.1mm以下の場合、ガラス基板をロール状に巻き取ることができるが、ガラス基板の製造の観点、及びガラス基板の取り扱いの観点から、ガラス基板の厚さは0.03mm以上であることが好ましい。
【0045】
なお、図1では基板2が1枚の基板で構成されているが、基板2は、複数枚の基板で構成されたものでもよい。すなわち、基板2は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0046】
[補強板3]
補強板3としては、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板、又はこれらの板状体を積層した板状体を例示できる。
【0047】
補強板3の種類は、製造する電子デバイスの種類、電子デバイスに使用する基板2の種類等に応じて選定される。補強板3と基板2とが同一の材質であると、温度変化による反り、剥離を低減できる。
【0048】
補強板3と基板2との平均線膨張係数の差(絶対値)は、基板2の寸法形状等に応じて適宜設定されるが、35×10−7/℃以下であることが好ましい。ここで、「平均線膨張係数」とは、50〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数(JIS R3102)をいう。
【0049】
補強板3の厚さは、補強板3の種類、補強する基板2の種類、厚さ等に応じて、0.7mm以下に設定される。なお、補強板3の厚さは、基板2よりも厚くてもよいし、薄くてもよいが、基板2を補強するため、0.4mm以上であることが好ましい。また、補強板3の縦横寸法は、所謂第5世代と称されるサイズ(縦1100mm×横1300mm)以上の基板2に対応するように、縦横寸法が1000mm以上であることが好ましい。また、補強板3の縦横寸法は、第6世代(縦1500mm×横1800mm〜縦1500mm×横1850mm)以上のサイズの基板2に対応する寸法であってもよい。
【0050】
なお、本例では補強板3が1枚の基板で構成されているが、補強板3は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0051】
[吸着層4]
吸着層4は、吸着層4と補強板3との間で剥離するのを防止するため、補強板3との間の結合力が、基板2との間の結合力よりも高く設定される。これにより、補強板3が吸着層4とともに基板2から剥離される。
【0052】
吸着層4の材質は、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂を例示できる。また、いくつかの種類の樹脂を混合して吸着層4を構成することもできる。そのなかでも、耐熱性や剥離性の観点から、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が吸着層4として好ましい。実施形態では、吸着層4としてシリコーン樹脂層を例示する。
【0053】
シリコーン樹脂層は、付加重合型シリコーン樹脂層、縮重合型シリコーン樹脂層が好ましい。付加重合型シリコーン樹脂層としては、特開2011−046174号公報に開示のものが好ましい。例えば、付加重合型シリコーン樹脂層は、下記線状オルガノポリシロキサン(a)と下記線状オルガノポリシロキサン(b)とを含む硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であり、硬化性シリコーン樹脂組成物を補強板の表面で硬化させることにより形成された硬化シリコーン樹脂層を用いることが好ましい。
【0054】
線状オルガノポリシロキサン(a)とは、アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサンである。線状オルガノポリシロキサン(b)とは、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ、ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサンである。
【0055】
縮重合型シリコーン樹脂層は、オルガノアルコキシシラン化合物を含む混合物の部分加水分解縮合物を補強板の表面で硬化させることにより形成することができる。
【0056】
フッ素樹脂層は、プラズマ重合されたフルオロポリマー層が好ましい。フッ素樹脂層は、例えば、CFガスとCガスの混合物を用いて、誘電結合型プラズマエッチング装置(オックスフォード社製、ICP380)で製膜することができる。
【0057】
吸着層4の厚さは、特に限定されないが、シリコーン樹脂層の場合、好ましくは1〜50μmに設定され、より好ましくは4〜20μmに設定される。吸着層4の厚さを1μm以上とすることにより、吸着層4と基板2との間に気泡や異物が混入した際、吸着層4の変形によって、気泡や異物の厚さを吸収できる。一方、吸着層4の厚さを50μm以下とすることにより、吸着層4の形成時間を短縮でき、更に吸着層4の樹脂を必要以上に使用しないため経済的である。
【0058】
フッ素樹脂層の場合、好ましくは1〜100nmに設定され、より好ましくは1〜10nmに設定される。
【0059】
吸着層4の外形は、補強板3が吸着層4の全体を支持できるように、補強板3の外形と同一であるか、補強板3の外形よりも小さいことが好ましい。また、吸着層4の外形は、吸着層4が基板2の全体を密着できるように、基板2の外形と同一であるか、基板2の外形よりも大きいことが好ましい。
【0060】
また、図1では吸着層4が1層で構成されているが、吸着層4は2層以上で構成することもできる。この場合、吸着層4を構成する全ての層の合計の厚さが、吸着層の厚さとなる。また、この場合、各層を構成する樹脂の種類は異なっていてもよい。
【0061】
更に、実施形態では、吸着層4として有機膜である樹脂を用いたが、樹脂層に代えて、MgF(フッ化マグネシウム)からなる無機層(無機化合物)を用いてもよい。また、無機層を構成する無機膜は、例えばメタルシリサイド、窒化物、炭化物、及び炭窒化物、金属酸化物、芳香族シランからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0062】
メタルシリサイドは、例えばW、Fe、Mn、Mg、Mo、Cr、Ru、Re、Co、Ni、Ta、Ti、Zr、及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくはタングステンシリサイドである。
【0063】
窒化物は、例えばSi、Hf、Zr、Ta、Ti、Nb、Na、Co、Al、Zn、Pb、Mg、Sn、In、B、Cr、Mo、及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくは窒化アルミニウム、窒化チタン、または窒化ケイ素である。
【0064】
炭化物は、例えばTi、W、Si、Zr、及びNbからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくは炭化ケイ素である。
【0065】
炭窒化物は、例えばTi、W、Si、Zr、及びNbからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくは炭窒化ケイ素である。
【0066】
メタルシリサイド、窒化物、炭化物、及び炭窒化物は、その材料に含まれるSi、N又はCと、その材料に含まれる他の元素との間の電気陰性度の差が小さく、分極が小さい。そのため、無機膜と水との反応性が低く、無機膜の表面に水酸基が生じ難い。よって、無機膜とガラス基板である基板2との離型性を良好に保つことができる。
【0067】
金属酸化物は、例えばSiO、SiO、Al、MgO、Y、La、Pr11、Sc、WO、HfO、In、ITO、ZrO、Nd、Ta、CeO、Nb、TiO、TiO、Ti、NiO、ZnO及びそれらの組み合わせを使用することができる。また、金属酸化物は、Ga等がドーピングされてもよい。
【0068】
芳香族シランは、例えばドデシルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、4−ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン及びそれらの組み合わせを使用することができる。
【0069】
積層体1の基板2の表面2aには、機能層が形成される。機能層の形成方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PVD(Physical Vapor Deposition)法等の蒸着法、スパッタ法が用いられる。機能層は、フォトリソグラフィ法、エッチング法によって所定のパターンに形成される。基板2の表面2aに機能層が形成された後、補強板3は、基板2から剥離される。
【0070】
〔補強板3の梱包容器10〕
次に、基板2から剥離された補強板3が搭載される梱包容器10について説明する。
【0071】
図2は、梱包容器10の一例を示した全体斜視図である。
【0072】
梱包容器10は、台座12の上面に、補強板3の下縁部が載置される底板14が設けられる。底板14は、その上面が台座12の上面に対して5°〜25°、好ましくは10°〜20°、より好ましくは約18°に傾斜して配置される。
【0073】
また、台座12には、背板フレーム16が立設される。背板フレーム16は、傾斜した底板14の上面に対して90°〜100°、好ましくは約95°となるように台座12に立設され、背板フレーム16の前面に補強板3の背面を支持する背板18が立て掛けられて固定される。
【0074】
梱包容器10には、後述するロボットによって補強板3が1枚ずつ搭載される(搭載工程)。そして、梱包容器10に搭載された補強板3は、後述するロールブラシによって吸着層4の表面の一部が削り取られ、疵が付与される(疵付与工程)。そして、補強板3は、搭載工程と疵付与工程とが繰り返し行われることにより、複数枚(例えば300枚)積載された積層体20の形態で梱包容器10に梱包される。ここで、梱包体とは、積層体20が梱包容器10に梱包された形態をいう。
【0075】
〔補強板3の梱包装置22〕
図3は、梱包装置22の正面図である。図4は、梱包装置22の左側面図である。図5は、図4の左側面図において要部を断面で示した説明図である。
【0076】
補強板3の搭載時において梱包容器10は、ターンテーブル24の上面に載置される。ターンテーブル24の近傍には、図2の如く前述のロボット(搭載部材)26が設置される。また、基板2から剥離された補強板3は、ロボット26の近傍に設置された搬出テーブル28に1枚ずつ載置される。搬出テーブル28に載置された補強板3が、ロボット26によって1枚ずつ搬送されて梱包容器10に搭載される。
【0077】
また、図5の如く、ターンテーブル24には、前述のロールブラシ(疵付与部材)30を昇降移動させる昇降装置(移動部材)32が図3図4の如く設置される。すなわち、実施形態の梱包装置22は、ロボット26、ロールブラシ30、及び昇降装置32によって構成される。
【0078】
[ロボット26]
図2の如く、ロボット26のアーム34の先端部には、複数の吸着パッド36が同一平面上に取り付けられている。アーム34の動作は、不図示の制御部によって制御され、また、この制御部によって吸着パッド36の吸着開始・停止動作も制御されている。すなわち制御部は、搬出テーブル28に載置された補強板3を吸着パッド36によって保持可能な位置と、梱包容器10に補強板3を搭載する位置との間でアーム34を動作させる。また、制御部は、搬出テーブル28に載置された補強板3を吸着パッド36によって保持する際に、吸着パッド36の吸着動作を開始させ、梱包容器10に補強板3を搭載した後に、吸着パッド36の吸着動作を停止させるように吸着パッド36を制御する。これにより、補強板3が、ロボット26によって梱包容器10に1枚ずつ搭載される。
【0079】
[ロールブラシ30]
図5の如く、ロールブラシ30は、円柱状の軸38の周面の全域にブラシ40が均一にかつ密に植設されて構成される。ロールブラシ30は、図3図4の昇降装置32によって水平方向に支持されている。また、図3の如く、ロールブラシ30の軸長Lは、補強板3の幅Wよりも長めに構成されており、補強板3の吸着層4の全域にロールブラシ30が押し当てられるように構成されている。ロールブラシ30は、昇降装置32によって、補強板3の上端(一端)に押し当てられ、かつ上端から下端(他端)に向けて下降移動されことにより、吸着層4に疵を付与することができる。また、ロールブラシ30は、昇降装置32に搭載されたモータ42の回転力によって軸38(図5参照)を中心に回転され、この回転力によっても吸着層4に疵を付与することができる。
【0080】
吸着層4に対し、疵を良好に付与可能なブラシ40の材質として、ポリプロピレン、ナイロンを例示できる。なお、疵付与部材としてロールブラシ30を例示したが、これに限定されるものではなく、櫛歯状又は鋸歯状の疵付与部材であっても適用できる。このような疵付与部材であってもポリプロピレン、ナイロン製であることが好ましい。
【0081】
[昇降装置32]
図3の如く、昇降装置32は、ロールブラシ30を昇降自在に支持する門型フレーム44を備える。門型フレーム44の両側の脚部44A、44Bにロールブラシ30の両端部が昇降自在に支持される。また、脚部44A、44Bは、梱包容器10の背板18と同角度に傾斜して設置されている。
【0082】
梱包容器10は、脚部44A、44Bの間のターンテーブル24の上面に載置され、かつ梱包容器10の背板18が脚部44A、44Bに対して平行となる位置に載置される。よって、ロールブラシ30は、背板18に立て掛けられた補強板3の吸着層4に沿って昇降移動される。
【0083】
また、脚部44A、44Bの下端部は、ターンテーブル24の上面に敷設されたレール46に摺動自在に支持される。レール46は、梱包容器10に対する補強板3の積載方向に沿って配設されている。よって、レール46に対する脚部44A、44Bの位置を調整することにより、吸着層4に対するロールブラシ30の押し込み量が調整される。
【0084】
すなわち、梱包容器10に搭載された補強板3の吸着層4に対する、ロールブラシ30のブラシ40の押し込み量が調整される。この押し込み量は、ブラシ40の材質、ブラシ40の線径、ブラシ40の線長によって適宜設定されるものであるが、0.1〜9mmの範囲で設定することが好ましい。なお、押し込み量とは、吸着層4にブラシ40の先端を当接した状態で、吸着層4に対して直交方向にブラシ40を押し込んだ量をいう。
【0085】
一方、タイミングベルト(動力伝達部材)48Aが脚部44Aの長手方向に沿って配設され、同様に、タイミングベルト(動力伝達部材)48Bが脚部44Bの長手方向に沿って配設される。タイミングベルト48A、48Bは、脚部44A、44Bに対して各々2本備えられている。これらのタイミングベルト48A、48Aには、箱状に構成されたブラシ搬送ユニット50Aが固定され、同様にタイミングベルト48B、48Bには、箱状に構成されたブラシ搬送ユニット50Bが固定されている。
【0086】
ブラシ搬送ユニット50Aには、モータ42が配置されており、モータ42の出力軸52が、リジットカップリング等の分解可能なカップリング部材54Aを介して、ロールブラシ30の軸38の一端部38Aに着脱自在に連結されている。
【0087】
また、ブラシ搬送ユニット50Bには、回転自在に支持された軸56がロールブラシ30の軸38に向けて突設され、この軸56が、リジットカップリング等の分解可能なカップリング部材54Bを介して、ロールブラシ30の軸38の他端部38Bに着脱自在に連結されている。
【0088】
また、ブラシ搬送ユニット50Aとブラシ搬送ユニット50Bとの間には、除塵部材を構成するカバー58が設けられる。このカバー58は、図5の如く、ロールブラシ30を取り囲むように設けられるとともに、補強板3の吸着層4に対向するブラシ40の一部を開放するように、ロールブラシ30に沿ってスリット60が備えられている。
【0089】
更に、カバー58には、不図示の吸引装置に連結されたダクト62が固定されている。よって、吸引装置が駆動されると、ロールブラシ30の引っ掻き作用によって発生した、吸着層4からの塵埃をカバー58及びダクト62を介して外部に排出することができる。
【0090】
また、昇降装置32には、タイミングベルト48A、48Aを駆動するモータ(駆動源)64が設けられる。このモータ64は、タイミングベルト48A、48Aの下端を張設するプーリ66に回転力を伝達する。よって、モータ64の正転及び反転の回転力がプーリ66を介してタイミングベルト48A、48Aに伝達されると、タイミングベルト48A、48Aに連結されたブラシ搬送ユニット50Aが脚部44Aに沿って昇降移動され、この昇降移動に追従してブラシ搬送ユニット50Bがタイミングベルト48B、48Bをガイドとして昇降移動される。よって、ロールブラシ30が水平姿勢を保持した状態で昇降移動される。
【0091】
更にまた、梱包装置22には、図4の如くイオナイザー(静電気除去部材)68が備えられている。イオナイザー68は、門型フレーム44の上方に設けられており、昇降装置32及び梱包容器10に向けてプラス・マイナスのイオンを吹き付けることにより、電荷の偏りを中和する。
【0092】
〔補強板3の梱包方法〕
図6は、実施形態の梱包装置22による補強板3の梱包方法を示したフローチャートである。
【0093】
同図によれば、基板2から剥離された補強板3が搬出テーブル28に載置されると、その補強板3をロボット26によって保持、搬送して梱包容器10に搭載する(搭載工程:Step10)。
【0094】
次に、梱包容器10に搭載された補強板3の吸着層4の表面に、ロールブラシ30によって疵を付与する(疵付与工程:Step20)。すなわち、昇降装置32によってロールブラシ30を、補強板3の吸着層4の上端に押し当てる。次に、吸着層4の上端から下端に向けてロールブラシ30を、モータ64の動力によって下降移動させる。これにより、吸着層4の表面にロールブラシ30のブラシ40による疵が付与される。なお、ロールブラシ30の下降移動時においては、ロールブラシ30をモータ42によって回転させながら下降移動させてもよく、また、ロールブラシ30の回転を停止した状態でロールブラシ30を下降移動させてもよい。
【0095】
また、疵付与工程(S20)の動作中においては、除塵部材の吸引装置を駆動し、疵で発生した塵埃をカバー58及びダクト62を介して外部に排出する。
【0096】
この後、補強板3が梱包容器10に所定枚積載されるまで(S30)、搭載工程(S10)と疵付与工程(S20)とを繰り返して行い、吸着層4に疵が付与された複数の補強板3を梱包容器10に積載していく。そして、補強板3が梱包容器10に所定枚積載されると、補強板3の搭載を終了する。
【0097】
なお、ブラシ40の押し込み量を一定又は許容範囲で保持するため、補強板3の積載動作に対応させて、門型フレーム44のターンテーブル24に対する位置を変更することが好ましい。この門型フレーム44の位置変更は、1枚の補強板3が載置される毎に実施してもよいが、複数枚の補強板3が載置される毎に実施してもよい。また、門型フレーム44の位置変更装置を梱包装置22に設け、この位置変更装置を、補強板3の搭載動作に連動させて、門型フレーム44の位置変更を自動化することが好ましい。
【0098】
〔実施例〕
〈ロールブラシ30〉
径 :64mm
ブラシ材質 :ポリプロピレン
ブラシ線径 :0.2mm〜0.3mm
ブラシ線長 :12mm
ブラシ押し込み量:5mm
回転数 :2000回転/分
〈昇降装置32〉
昇降速度 :200mm/秒
上記条件にて補強板3の吸着層4に、ロールブラシ30によって疵を付与し、300枚の補強板3を梱包容器10に積載した。この後、梱包容器10に積載された補強板3を取り出す際にロボットを使用したところ、ロボットにて梱包容器10から1枚ずつ補強板3を取り出すことができた。
【0099】
〔実施形態の特徴〕
ロールブラシ30によって吸着層4の表面に、溝状の疵を付与することに特徴がある。これにより、吸着層4の吸着面積が減少するので、隣接する2枚の補強板3同士の吸着力を低下させることができる。
【0100】
したがって、表面に吸着層4が備えられた複数の補強板3を、シートを介在させることなく梱包容器10に積載した場合であっても、梱包容器10から補強板3を1枚ずつ容易に取り出すことができる。
【0101】
また、梱包容器10に搭載した補強板3の吸着層4を、ロールブラシ30によって疵を付与することに特徴がある。これにより、疵を付与するためのスペースを省スペース化することができる。つまり、疵を付与するスペースを専用に設ければ、その専用スペースを梱包容器10の近傍に設ける必要があるが、実施形態では、梱包容器10に補強板3を搭載した状態で疵を付与するので、専用のスペースが不要になる。
【0102】
疵付与工程において、補強板3の吸着層4の上端にロールブラシ30を押し当てて、ロールブラシ30を補強板3の上端から下端に向けて移動させる移動工程を含むことに特徴がある。
【0103】
つまり、ロールブラシ30によって吸着層4の表面に、複数本の疵を均一にかつ密に付与することができるので、隣接する2枚の補強板3同士の吸着力をより一層低下させることができる。ロールブラシ30は、回転させながら移動させてもよく、回転停止させた状態で移動させてもよい。また、吸着層4に対し、ロールブラシ30を上下方向に往復移動させて疵を付与してもよいが、引っ掻き作用による発塵を抑制するためには、上下の片側移動のみで疵を付与することが好ましい。また、この動作によって1枚の補強板3に対する疵付与時間を短縮することができる。
【0104】
補強板3がガラス板であって、厚さが0.7mm以下であり、縦横寸法が1000mm以上のガラス板であることに特徴がある。
【0105】
つまり、電子デバイス用基板を補強するガラス製の補強板3に好適となる。また、縦横寸法が1000mm以上のガラス板は、所謂、第5世代(例えば1100mm×1300mm)以上の電子デバイス用基板を補強する補強板3に好適となる。
【0106】
補強板3の吸着層4が、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、又は無機化合物からなることに特徴がある。
【0107】
実施形態の梱包装置22によれば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、又は無機化合物からなる吸着層4の表面に、ロールブラシ30によって疵を良好に付与することができる。
【0108】
一方、梱包体としては、ロールブラシ30によって疵が付けられた複数の補強板3が、梱包容器10に積載されてなることに特徴がある。
【0109】
この梱包体によれば、表面に吸着層4が備えられた複数の補強板3を、シートを介在させることなく梱包容器10に積載した場合であっても、梱包容器10から補強板3を1枚ずつ容易に取り出すことができる。
【0110】
また、疵付与部材は、ロールブラシであって、ロールブラシは、軸と、軸の周面に設けられたブラシとからなり、ブラシは、軸の周面の一部の領域に設けられていることに特徴がある。
【0111】
図7は、軸38の周面の一部の領域に、一群のブラシ40Aが植設されたロールブラシ30の側面図である。ブラシ40Aは、軸38の長手方向に沿って植設されている。
【0112】
ロールブラシ30によれば、図8の如く、梱包容器10に縦積みされた補強板3の吸着層4の下端にブラシ40Aを容易に当てることができる。ブラシ40Aを吸着層4の下端に当てる場合には、その直前にロールブラシ30の回転を停止し、ブラシ40Aを吸着層4の下端に向けた状態でロールブラシ30を下降移動させればよい。
【0113】
なお、ブラシ40Aは、図9の如く軸38の外周面の対称位置に2か所設けてもよく、図10の如く、等間隔に3箇所設けてもよい。
【0114】
また、梱包装置22の昇降装置32が、モータ64とモータ64の動力をロールブラシ30に伝達する2本のタイミングベルト48A、48Aと、を備えることに特徴がある。
【0115】
すなわち、2本のタイミングベルト48A、48Aのうち一つのタイミングベルト48Aが破断等で故障しても、他のタイミングベルト48Aによってロールブラシ30を支持することができるので、ロールブラシ30の落下を防止することができる。なお、タイミングベルト48B、48Bについても同様である。
【0116】
実施形態では、動力伝達部材としてタイミングベルト48A、48Bを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、チェーン、送りねじ装置等の他の動力伝達部材であってもよい。また、動力伝達部材は、2本に限らず3本以上配置してもよいが、3本以上配置すると梱包装置22が大型化するため、2本であることが好ましい。
【0117】
更に、ロールブラシ30の両端の軸が、容易に分解可能なカップリング部材54A、54Bを介して、昇降装置32に連結されることに特徴がある。
【0118】
これにより、昇降装置32に対するロールブラシ30の交換を容易に行うことができる。
【0119】
つまり、ロールブラシ30の両端の軸は、通常、ボールベアリング等の軸受の内輪に圧入されて回転自在に支持される。この支持形態でロールブラシ30を交換する場合、軸受の内輪からロールブラシ30の両端の軸を引き抜かなければならない。この作業は、特殊な工具と熟練を要する。
【0120】
これに対して、カップリング部材は、複数の部材をボルトによって組み立てられた組立体なので、ボルトを取り外すだけでカップリング部材を容易に分解でき、ロールブラシ30の両端の軸を取り外すことができる。この作業は、特殊な工具を必要とせず熟練も要しないので、ロールブラシ30の交換を容易に行うことができる。
【0121】
また、ロールブラシ30がカバー58によって包囲され、カバー58がダクト62を介して吸引装置に連結されていることに特徴がある。
【0122】
すなわち、ロールブラシ30の引っ掻き動作によって吸着層4から発生した塵埃を、カバー58で包囲しつつダクト62を介して外部に排出することができるので、梱包容器10の周辺に塵埃が飛散することを防止することができる。
【0123】
また、図4のイオナイザー68を梱包装置22に備えたことに特徴がある。
【0124】
すなわち、ロールブラシ30の引っ掻き動作によって吸着層4から発生した塵埃が、静電気によって梱包装置22及び梱包容器10に再付着することを、イオナイザー68による静電気除去作用によって防止することができる。
【0125】
なお、図2図5では、補強板3を斜めに立て掛けて搭載する縦積みの梱包容器10を例示したが、補強板3を水平に積載する平積みの梱包容器に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1…積層体、2…基板、2a…基板の表面、2b…基板の裏面、3…補強板、3a…補強板の表面、4…吸着層、10…梱包容器、12…台座、14…底板、16…背板フレーム、18…背板、20…積層体、22…梱包装置、24…ターンテーブル、26…ロボット、28…搬出テーブル、30…ロールブラシ、32…昇降装置、34…アーム、36…吸着パッド、38…軸、40、40A…ブラシ、42…モータ、44…門型フレーム、44A、44B…脚部、46…レール、48A、48B…タイミングベルト、50A、50B…ブラシ搬送ユニット、52…出力軸、54A、54B…カップリング部材、56…軸、58…カバー、60…スリット、62…ダクト、64…モータ、66…プーリ、68…イオナイザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10