特許第6489270号(P6489270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特許6489270エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料
<>
  • 特許6489270-エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料 図000010
  • 特許6489270-エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料 図000011
  • 特許6489270-エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489270
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/36 20060101AFI20190318BHJP
   C08G 59/06 20060101ALI20190318BHJP
   C08G 61/02 20060101ALI20190318BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190318BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C08G59/36
   C08G59/06
   C08G61/02
   H01L23/30 R
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-106899(P2018-106899)
(22)【出願日】2018年6月4日
(62)【分割の表示】特願2014-100467(P2014-100467)の分割
【原出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2018-138679(P2018-138679A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳行
(72)【発明者】
【氏名】秋元 源祐
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−145255(JP,A)
【文献】 特開2003−128748(JP,A)
【文献】 特開2012−031281(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073557(WO,A1)
【文献】 特開2003−064164(JP,A)
【文献】 特開2004−323580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08G 61/00−61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物(b1)の芳香核上にアラルキル基を一つ有するモノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)と、フェノール化合物(b2)の芳香核上にアラルキル基を二つ有するジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)と、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させて得られるフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル(x3)との混合物からなるエポキシ樹脂であって、
前記モノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)の含有率がGPC測定における面積比率で0.01%〜15%となる範囲であり、かつ、前記ジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)の含有率がGPC測定における面積比率で0.01%〜15%となる範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項2】
前記モノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)が下記構造式(4)
【化1】
[式(4)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニル基、ナフチル基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Gはグリシジル基を表す。]
で表される化合物であり、前記ジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)が下記構造式(5)
【化2】
[式(5)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニル基、ナフチル基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Gはグリシジル基を表す。]
で表される化合物である請求項記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
前記フェノール化合物(a3)とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させて得られるフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル(x3)中に、下記構造式(6)
【化3】
[式(6)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニレン基、ナフチレン基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Gはグリシジル基を表し、pはそれぞれ独立して1又は2、qは0〜20の整数である。]
で表される多官能化合物(W)を含有する請求項記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
前記構造式(6)においてnの値が0である2官能体(w1)のエポキシ樹脂全体における含有率が、GPC測定における面積比率で5%〜30%となる範囲である請求項記載のエポキシ樹脂。
【請求項5】
軟化点が40℃〜130℃の範囲であり、かつ、150℃における溶融粘度が0.05〜500dPa・sの範囲である請求項1〜4の何れか一つに記載のエポキシ樹脂。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つに記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項6記載の硬化性樹脂組成物に加え、更に無機充填剤を含有することを特徴とする半導体封止材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動性に優れ、かつ、硬化物における耐熱性や難燃性にも優れるエポキシ樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂やフェノール性水酸基含有樹脂は、接着剤や、成形材料、塗料等の材料に用いられている他、得られる硬化物が耐熱性や耐湿性などに優れる点から半導体封止材料やプリント配線板用絶縁材料等の電気・電子分野で幅広く用いられている。
【0003】
これらの各種用途のうち、半導体封止材料の分野では、BGA、CSPといった表面実装パッケージへの移行や、鉛フリー半田への対応、ハロゲン系難燃材の排除などの技術革新が進められており、具体的には、更なる耐熱性の向上と熱時弾性率の低減、及び、ハロゲンフリーでも高い難燃性を実現可能な樹脂材料が求められている。また、半導体封止材料は樹脂材料にシリカ等のフィラーを充填させて用いることから、充填率を高めるためには前記各性能に加え、樹脂材料が低粘度で流動性に優れる必要がある。更に、近年各種電子機器における信号の高速化、高周波数化が進んでおり、これに対応できるような低誘電率性も要求性能の一つになっている。
【0004】
これら様々な要求特性に対応するための樹脂材料として、例えば、フェノールビフェニルアラルキル樹脂と、塩化ベンジルとを140℃で3時間反応させて得られるベンジル化フェノールノボラック樹脂、及びこれとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂(例えば、特許文献1、2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−64164号公報
【特許文献2】特開2004−323580号公報
【0006】
前記特許文献1、2に記載されたフェノールノボラック樹脂及びエポキシ樹脂は、従来の樹脂材料と比較すると溶融粘度が低く流動性に優れるものであるが、硬化物における耐熱性が十分ではなく、両性能をバランス良く高いレベルで兼備するものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、流動性に優れ、かつ、硬化物における耐熱性や難燃性にも優れるエポキシ樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び封止材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、フェノール化合物とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させて得られるフェノール樹脂に、フェノール化合物の芳香核上にアラルキル基を一つ有するモノアラルキル化体と、フェノール化合物の芳香核上にアラルキル基を2つ有するジアラルキル化体とをそれぞれ一定割合で含有する混合物からなるフェノール性水酸基含有樹脂をポリグリシジルエール化して得られるエポキシ樹脂は、流動性に優れ、かつ、硬化物における耐熱性及び難燃性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、フェノール化合物(b1)の芳香核上にアラルキル基を一つ有するモノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)と、フェノール化合物(b2)の芳香核上にアラルキル基を二つ有するジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)と、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させて得られるフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル(x3)との混合物からなるエポキシ樹脂であって、前記モノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)の含有率がGPC測定における面積比率で0.01%〜15%となる範囲であり、かつ、前記ジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)の含有率がGPC測定における面積比率で0.01%〜15%となる範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂を提供するものである。
【0010】
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂と硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなる硬化物をも提供するものである。
【0012】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物に加え、無機充填剤を含有する半導体封止材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流動性に優れ、かつ、硬化物における耐熱性や難燃性にも優れるエポキシ樹脂、これらの何れかを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び半導体封止材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(1)のGPCチャートである。
図2合成例2で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(2)のGPCチャートである。
図3】実施例で得られたエポキシ樹脂(1)のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂は、フェノール化合物(b1)の芳香核上にアラルキル基を一つ有するモノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)と、フェノール化合物(b2)の芳香核上にアラルキル基を二つ有するジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)と、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させて得られるフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル(x3)との混合物からなるエポキシ樹脂であって、前記モノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)の含有率がGPC測定における面積比率で0.01%〜15%となる範囲であり、かつ、前記ジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)の含有率がGPC測定における面積比率で0.01%〜15%となる範囲であることを特徴とする。ここで前記フェノール化合物(b1)と(b2)と(b3)とは同一であっても異なっていてもよい。
【0017】
即ち、本発明のエポキシ樹脂は、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させて得られるフェノール樹脂のポリグリシジルエーテルを主成分とし、フェノール化合物(b1)の芳香核上にアラルキル基を一つ有するモノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)(以下「モノアラルキル化体(z1)」と略記する。)と、フェノール化合物(b2)の芳香核上にアラルキル基を2つ有するジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)(以下「ジアラルキル化体(z2)」と略記する。)とを、それぞれ所定量含有してなることを特徴とするものである。ここで前記フェノール化合物(b1)と(b2)と(b3)とは同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂が必須の成分として含有する前記モノアラルキル化体(z1)は、比較的低分子量の化合物でありながら芳香環を高濃度で含む分子構造を有するため、硬化物の耐熱性を降下させることなく、エポキシ樹脂の流動性を高める効果を奏する。更に、このような芳香環を高濃度で有する構造は、硬化物の難燃性を高める効果も併せて奏する。本発明のエポキシ樹脂中の前記モノアラルキル化体(z1)の含有率は、GPC測定における面積比率で0.01%〜15%の範囲であり、0.01%未満の場合にはエポキシ樹脂の流動性が低下する。一方、15%を超える場合には、硬化物の耐熱性が低下する。この流動性と耐熱性とのバランスの観点から、GPC測定における面積比率で1.0%〜10.0%の範囲で含有することが好ましく、特に2.0%〜8.0%の範囲で含有することが好ましい。
【0019】
また、本発明のエポキシ樹脂のもう一つの必須成分である前記ジアラルキル化体(z2は、前記モノアラルキル化体(z1)同様、硬化物の耐熱性を降下させることなくエポキシ樹脂の流動性を高める効果を奏する。更に、一般的なノボラック樹脂と比較して分子配向性が高く、かつ、芳香環構造を高濃度で有することから、前記硬化に加えて、硬化物の難燃性を高め、その熱時弾性率を低減させる効果も併せて奏する。本発明のエポキシ樹脂中の前記ジアラルキル化体(z2)の含有率は、GPC測定における面積比率で0.01%〜15%の範囲であり、0.01%未満の場合にはエポキシ樹脂の流動性が低下する。一方、15%を超える場合には、硬化物の耐熱性が低下する。この性能バランスの観点から、GPC測定における面積比率で1.0〜5.0%の範囲で含有することが好ましく、特に1.0〜3.0%の範囲で含有することが好ましい。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂の原料である前記フェノール化合物(b1)、(b2)は、フェノール性水酸基を有するものであって、かつ、その芳香核上に(b1)の場合は少なくとも1つ、(b2)の場合は少なくとも2つの水素原子を有しており、前記モノアラルキル化体(x1)、ジアラルキル化体(x2)が生成し得るものであれば良い。中でも、反応性に優れ、前記モノアラルキル化体(x1)及び前記ジアラルキル化体(x2)が生成しやすいことから、フェノール、又はフェノールの芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1つ有するフェノール化合物であることが好ましく、より耐熱性に優れる硬化物が得られることから、フェノールの芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1つ有するフェノール化合物であることがより好ましい。なお、前記フェノール化合物(b1)、及び(b2)は同一でも異なっていてもよいが、製造効率の観点からは、同一であることが好ましい。
【0021】
この場合、前記モノアラルキル化体(z1)は、具体的には、下記構造式(4)
【0022】
【化1】
[式(4)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニル基、ナフチル基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Gはグリシジル基を表す。]
で表される化合物である。また、前記ジアラルキル化体(z2)は、具体的には、下記構造式(5)
【0023】
【化2】
[式(5)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニル基、ナフチル基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Gはグリシジル基を表す。]
で表される化合物である。
【0024】
前記フェノールの芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1つ有するフェノール化合物の中では、反応性に優れ、前記モノアラルキル化体(z1)及び前記ジアラルキル化体(z2)が生成しやすいことから、フェノール性水酸基のオルト位又はパラ位に炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1つ有するフェノール化合物であることがより好ましく、更に、より高い耐熱性を有する硬化物が得られることから、オルトクレゾール又はパラクレゾールであることが特に好ましい。
【0025】
前述の通り、本発明のエポキシ樹脂は、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させて得られるフェノール樹脂のポリグリシジルエーテルを主成分とし、この中には種々の樹脂成分を含有する。具体的には、前記フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合体であるフェノール樹脂の芳香核の一部乃至全部がアラルキル化されたフェノール樹脂のポリグリシジルエーテルであって、特にフェノール化合物(b3)の芳香核上にアラルキル基を有するものが好ましく得られる。このような化合物は、具体的には、下記構造式(6)
【0026】
【化3】
[式(6)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニレン基、ナフチレン基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Arはそれぞれ独立してフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、或いはこれらの芳香核上にハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1乃至複数個有する構造部位の何れかであり、Gはグリシジル基を表し、pはそれぞれ独立して1又は2、qは0〜20の整数である。]
で表される構造を有する多官能化合物(W)が挙げられる。
【0027】
ここで、前記フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応、及び、得られた重縮合体とアラルキル化剤との反応は、主に、フェノール性水酸基のオルト位又はパラ位を反応点として進行する。従って、前記フェノール化合物(b3)が、フェノール性水酸基のオルト位又はパラ位に炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1つ有するフェノール化合物である場合、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合体が含有する芳香核のうち、分子鎖の末端の2つの芳香核がアラルキル化された化合物、即ち、前記構造式(6)で表される多官能化合物(W)の前駆体フェノールが高い収率で生成する。
【0028】
該多官能化合物(W)は、分子鎖の末端の2つの芳香核がアラルキル化された構造を有することにより、アラルキル化による粘度の上昇を低く抑えることが出来、エポキシ樹脂の流動性と、硬化物の耐熱性とを兼備し、更に難燃性にも優れるものとなる。また、このような制御された構造を有する化合物は分子配向性が高く、反応性にも優れることから、硬化物における熱時弾性率や誘電率を低く抑えることが出来る。
【0029】
前述の通り、本発明で用いるフェノール化合物(b1)、(b2)、(b3)は、反応性に優れ、前記モノアラルキル化体(z1)及び前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体であるフェノール類が生成しやすいことから、フェノール或いは、フェノール性水酸基のオルト位又はパラ位に炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を1つ有するフェノール化合物であることがより好ましいく、硬化物の耐熱性及び難燃性により優れるエポキシ樹脂となることから、フェノール、オルトクレゾール又はパラクレゾールであることが特に好ましい。これに加え、前記構造式(6)で表される多官能化合物(W)の前駆体フェノールが生成しやすいことからも、前記フェノール化合物(b3)は、フェノール、オルトクレゾール又はパラクレゾールであることが特に好ましい。
【0030】
更に、前記多官能化合物(W)の中でも、フェノール化合物(b3)の2量体の2つの芳香環がそれぞれアラルキル化された化合物のジグリシジルエーテル、具体的には、前記構造式(6)においてnの値が0である2官能体(w1)は、分子構造中の芳香環構濃度と官能基濃度とのバランスに優れるため、硬化物の耐熱性及び難燃性を高め、更に、その熱時弾性率や誘電率を低減させる効果が高いことから好ましい。また、該2官能体(w1)は比較的低分子量の化合物であるため、樹脂を高粘度化させることなく硬化物の耐熱性を向上させることが出来る。本発明のエポキシ樹脂における前記2官能体(w1)の含有率は、耐熱性及び難燃性に優れ、熱時弾性率や誘電率の低い硬化物が得られることから、GPC測定における面積比率が5〜30%の範囲であることが好ましい。
【0031】
尚、本発明のエポキシ樹脂における前記モノアラルキル化体(z1)、前記ジアラルキル化体(z2)、及び前記2官能体(w1)の含有率とは、下記の条件によるGPC測定によって計算される、本発明のエポキシ樹脂の全ピーク面積に対する、前記各構造体のピーク面積の存在割合である。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0032】
上記した本発明のエポキシ樹脂は、例えば、以下の方法により製造することができる。即ち、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物とを重合触媒の存在下で反応させて重縮合反応物を得(工程1)、次いで、得られた重縮合反応物及びフェノール化合物(b1)(b2)とアラルキル化剤とを有機溶剤及び酸触媒の条件下で反応させてフェノール樹脂を得(工程2)、これとエピハロヒドリンとを塩基性触媒の存在下で反応させる(工程3)により製造することが出来る。ここで前記フェノール化合物(b1)と(b2)と(b3)は同一であっても異なっていてもよい。また、前記重縮合反応物は、市販されているものをそのまま用いてもよい。
【0033】
まず前記工程1について説明する。工程で前記フェノール化合物(b3)と反応させるキシリレン化合物の具体例としては、ジ(クロロメチル)ベンゼン、ジ(ブロモメチル)ベンゼン、ジ(クロロメチル)ビフェニル、ジ(クロロメチル)ナフタリン、ジ(クロロメチル)ビフェニルエーテル、ジ(メトキシメチル)ベンゼン、ジ(メトキシメチル)ビフェニル、ジ(メトキシメチル)ビフェニルエーテル、ジ(メトキシメチル)ナフタレン等が挙げられ、これらの中でもフェノール化合物との反応性、及び得られた硬化物が流動性と耐熱性、難燃性のバランスに優れることからジ(クロロメチル)ベンゼン、ジ(クロロメチル)ビフェニル、ジ(メトキシメチル)ベンゼン、ジ(メトキシメチル)ビフェニルが好ましい。これらの化合物におけるクロロメチル基、メトキシメチル基の置換位置はオルト、メタ、パラのいずれでもよいが、一般的に好ましいのはパラ位またはメタ位であり、ジ(クロロメチル)ビフェニルやジ(メトキシメチル)ビフェニルの場合、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルや4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニルが挙げられる。またメタ位とパラ位の混合系でもかまわない。フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との反応割合は、通常フェノール化合物(b3)1モルに対しキシリレン化合物が0.01〜0.9モルの範囲である。より好ましくは、フェノール化合物(b3)の2量体が生成しやすいことから、フェノール化合物(b3)1モルに対し、キシリレン化合物が0.01〜0.8モルの範囲であり、0.01〜0.7モルの範囲であることが特に好ましい。
【0034】
工程1の反応で用いる重合触媒は特に限定されるものではないが、酸触媒が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。このとき、重合触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。またジ(クロロメチル)ビフェニルやジ(クロロメチルベンゼン)の場合は酸触媒を使用しなくても少量の水分の存在により反応が進行する。
【0035】
前記工程1は、通常、100〜200℃の温度条件下、1〜20時間で行う。また、前記工程1は必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。ここで用いる有機溶剤は、前記温度条件下で使用可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではなく、具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これら有機溶剤を用いる場合には反応原料の総質量に対し10〜500質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0036】
前記工程1では、得られる重縮合反応物の着色を抑制する目的で、各種の酸化防止剤や還元剤を用いても良い。前記酸化防止剤は、例えば、2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール化合物、2価の硫黄化合物、3価のリン原子を含む亜リン酸エステル化合物等が挙げられる。前記還元剤は、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイト、これらの塩や亜鉛等が挙げられる。
【0037】
前記工程1の反応終了後は、反応混合物のpH値が3〜7、好ましくは4〜7になるまで中和或いは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法に従って行えば良い。具体的には、重合触媒として酸触媒を用いた場合には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を中和剤として用いることが出来る。中和の際には、事前にリン酸等のバッファーを添加しても良いし、一度塩基性にした後シュウ酸等でpH値が3〜7となるように調整しても良い。
【0038】
中和或いは水洗を行った後は、減圧加熱条件下で未反応の反応原料や有機溶剤、副生成物等を留去して生成物の濃縮を行うことにより、目的の重縮合反応物を得ることが出来る。この時、原料として用いたフェノール化合物(b3)は引き続き行う工程(2)でのアラルキル化剤との反応の際の原料となりうるため、未反応物として系内からすべてを除去する必要はない。
【0039】
工程1で得られる重縮合反応物は、得られるエポキシ樹脂中の前記モノアラルキル化体(z1)、前記ジアラルキル化体(z2)、及び前記2官能体(w1)の含有率を前述した好ましい範囲に調整することが容易となることから、JIS K7234に準拠して測定される軟化点が100℃以下が好ましく、80℃以下のものであることが更に好ましい。
【0040】
続く工程2は、得られた重縮合反応物に、必要によりフェノール化合物(b1)(b2)を加え、これら混合物とアラルキル化剤とを反応させる工程である。ここで用いるアラルキル化剤は、例えば、フェニルメタノール化合物、フェニルメチルハライド化合物、ナフチルメタノール化合物、ナフチルメチルハライド化合物、及びスチレン化合物等が挙げられる。具体的には、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルアイオダイト、o−メチルベンジルクロライド、m−メチルベンジルクロライド、p−メチルベンジルクロライド、p−エチルベンジルクロライド、p−イソプロピルベンジルクロライド、p−tert−ブチルベンジルクロライド、p−フェニルベンジルクロライド、5−クロロメチルアセナフチレン、2−ナフチルメチルクロライド、1−クロロメチル−2−ナフタレン及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルクロライド、α,α−ジメチルベンジルクロライド、ベンジルメチルエーテル、o−メチルベンジルメチルエーテル、m−メチルベンジルメチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル、p−エチルベンジルメチルエーテル及びこれらの核置換異性体、ベンジルエチルエーテル、ベンジルプロピルエーテル、ベンジルイソブチルエーテル、ベンジルn−ブチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル及びこれらの核置換異性体、ベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−エチルベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、ptert−ブチルベンジルアルコール、p−フェニルベンジルアルコール、α−ナフチルメタノール及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルアルコール、α,α−ジメチルベンジルアルコール、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0041】
これらの中でも、反応性に優れ前記モノアラルキル化体(z1)や前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体フェノールが生成しやすいことから、ベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−エチルベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、ptert−ブチルベンジルアルコール、p−フェニルベンジルアルコール、α−ナフチルメタノール等のベンジルアルコール化合物又はナフチルメタノール化合物が好ましく、ベンジルアルコール化合物が特に好ましい。
【0042】
工程2において、アラルキル化剤と反応させるフェノール化合物(b1)(b2)は、同一であっても異なっていても良く、前記工程1で得た重縮合反応物中の未反応フェノールでも、新たに追加して反応させても良い。前記工程1で得た重縮合反応物、重縮合反応生成物中の未反応フェノール、フェノール化合物(b1)(b2)とアラルキル化剤との反応割合は、該重縮合反応物中の未反応フェノール化合物の量や、重縮合体の核体数の平均値等にも寄るが工程1で用いたフェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物中のフェノール化合物部位、該重縮合反応物中の未反応フェノール、フェノール化合物(b1)(b2)の合計1モルに対し、アラルキル化剤を0.55〜0.80モルの範囲で用いることが好ましい。
【0043】
工程2で用いる酸触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。中でも、触媒能が高く前記モノアラルキル化体(z1)や前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体フェノールの生成が促進されることから有機酸が好ましい。このとき、重合触媒の使用量は反応原料の総質量に対して0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0044】
前記工程2の反応は、前記モノアラルキル化体(z1)や前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体フェノールの生成を促進するため、100〜200℃の高温条件下で行うことが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。また、工程2の反応時間は製造スケールに寄っても異なるが、100℃以上、好ましくは130℃以上での保持時間が長いほど前記モノアラルキル化体(z1)や前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体フェノールが生成し易い。具体的には、100℃以上、このましくは130℃以上での保持時間が4時間以上であることが好ましい。
【0045】
前記工程2の反応は有機溶剤中で行うことにより、前記モノアラルキル化体(z1)や前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体フェノールの生成を促進することが出来る。ここで用いる有機溶剤は、前記温度条件下で使用可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではなく、具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これら有機溶剤の使用量は、反応が効果的に促進されることから、反応原料の総質量に対し10〜500質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0046】
工程2の終了後は、反応液をそのまま工程3に用いても良いし、反応生成物を中和又は水洗処理した後、これを工程3に用いても良い。反応生成物を中和又は水洗する方法は前記工程1で説明した方法と同様である。なお、前述の製法は、効率の観点より、フェノール化合物(b1)、(b2)のアラルキル化と、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物のアラルキル化を系内で同一に行うものであるが、目的とするエポキシ樹脂の前駆体フェノールを得る方法としては、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物のアラルキル化で得られる樹脂に、別途用意したモノアラルキル化体(z1)、ジアラルキル化体(z2)の前駆体フェノールを混合して、本願発明で規定する範囲に調整してもよい。
【0047】
工程2で得られるフェノール樹脂は、得られるエポキシ樹脂中の前記モノアラルキル化体(z1)及び前記ジアラルキル化体(z2)の含有率を前述した好ましい範囲に調整することが容易となることから、GPC測定における面積比率で、前記モノアラルキル化体(z1)の前駆体であるフェノール化合物を0.01%〜15%の範囲、前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体であるフェノール化合物を0.01%〜15%の範囲で含有することが好ましい。
【0048】
更に、得られるエポキシ樹脂中の前記モノアラルキル化体(z1)、前記ジアラルキル化体(z2)、及び前記2官能体(w1)の含有率を前述した好ましい範囲に調整することが容易となることから、GPC測定における面積比率で、前記モノアラルキル化体(z1)の前駆体であるフェノール化合物を0.01%〜15%の範囲、前記ジアラルキル化体(z2)の前駆体であるフェノール化合物を0.01%〜15%の範囲、前記2官能体(w1)の前駆体であるフェノール化合物を5%〜30%の範囲で含有することが好ましい。
【0049】
また、工程2で得られるフェノール樹脂の水酸基当量は、得られるエポキシ樹脂のエポキシ当量を後述する工程な範囲に調整することが容易となることから、170〜300g/当量の範囲であることが好ましい。
【0050】
工程3では、工程2で得られた反応生成物をエピハロヒドリンと反応させることにより、目的とするエポキシ樹脂を得る。
【0051】
斯かる工程3は、具体的には、前記工程2で得たフェノール樹脂が含有するフェノール性水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、フェノール性水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0052】
なお、工業生産を行う際、エポキシ化合物生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
【0053】
工程3で用いる塩基性触媒は、工程1と同様に、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ化反応の触媒活性に優れる点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0054】
また、工程3は有機溶媒中で行うことにより反応速度を高めることができる。ここで用いる有機溶媒は特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール性溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
【0055】
工程3の終了後は、反応生成物を水洗した後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用した有機溶媒を留去する。また、加水分解性ハロゲンのより少ないエポキシ化合物とするために、前記水洗工程を行う前に未反応のエピハロヒドリンや併用した有機溶媒を留去し、得られた粗生成物をトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に再溶解して、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて追反応させることもできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ粗生成物100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。追反応終了後は、生成した塩を濾過や水洗などの方法により除去し、更に、加熱減圧下でトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。なお、工程3は、本願発明のエポキシ樹脂を効率よく得る方法であるが、フェノール化合物(b3)とキシリレン化合物との重縮合反応物をアラルキル化剤と反応させ、これをグリシジルエーテル化してなるポリグリシジルエーテルに、別途用意した、フェノール化合物(b1)の芳香核上にアラルキル基を一つ有するモノアラルキル化体のグリシジルエーテル(z1)、フェノール化合物(b2)の芳香核上にアラルキル基を二つ有するジアラルキル化体のグリシジルエーテル(z2)を規定量混合して、本発明のエポキシ樹脂として調整することも可能である。
【0056】
このようにして得られるエポキシ樹脂は、硬化性に優れ、かつ、耐熱性や難燃性が高く、熱時弾性率の低い硬化物が得られることから、そのエポキシ当量が230〜360g/当量の範囲であることが好ましい。
【0057】
また、本発明のエポキシ樹脂は、流動性に優れ、かつ、硬化物における熱時弾性率が低く、耐熱性及び難燃性にも優れることを特徴としている。具体的には、流動性に優れ、半導体封止剤用途等に好適に用いることが出来ることから、軟化点が40〜130℃の範囲であることが好ましく、また、150℃における溶融粘度が0.05〜500dPa・sの範囲であることが好ましい。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂と硬化剤とを含有するもの(以下「硬化性樹脂組成物(2)」と略記する。)である。
【0059】
前記硬化性樹脂組成物(2)において、前記エポキシ樹脂の硬化剤は、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの各種の公知の硬化剤が挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0060】
前記エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、硬化性に優れる樹脂組成物となり、耐熱性、難燃性及び熱時低弾性に優れる硬化物が得られることから、エポキシ樹脂中のエポキシ基と、硬化剤中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが好ましい。
【0061】
また、前記硬化性樹脂組成物(2)は、本発明のエポキシ樹脂及び前記硬化剤に加え、更に、本発明のエポキシ樹脂以外の、その他のエポキシ樹脂を含有しても良い。
【0062】
ここで用いるその他のエポキシ樹脂は、具体的には、2,7−ジグリシジルオキシナフタレン、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテル、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール系化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0063】
ここで、リン原子含有エポキシ樹脂としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を及びHCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0064】
これらその他のエポキシ樹脂を用いる場合には、本発明が奏する流動性に優れ、かつ、硬化物における熱時弾性率が低く、耐熱性及び難燃性に優れる効果が十分に発揮されることから、全エポキシ樹脂成分中、本発明のエポキシ樹脂が50質量%以上となる範囲で用いることが好ましい。
【0065】
また、これらその他のエポキシ樹脂を用いる場合、硬化性樹脂組成物(2)の配合割合は、硬化性に優れる樹脂組成物となり、耐熱性、難燃性及び熱時低弾性に優れる硬化物が得られることから、全エポキシ成分中のエポキシ基と、前記硬化剤中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.5〜1/1.5となる割合であることが好ましい。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0067】
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても、複数種を併用しても良い。
【0068】
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系の何れも使用でき、無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0069】
前記赤リンは加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法は、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0070】
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0071】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、前記フェノール性水酸基含有樹脂又はエポキシ樹脂、硬化剤、及びその他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0072】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0073】
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0074】
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0075】
前記シアヌル酸化合物は、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0076】
前記窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0077】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0078】
前記シリコーン系難燃剤は、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0079】
前記シリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、前記フェノール性水酸基含有樹脂又はエポキシ樹脂、硬化剤、及びその他の添加剤や充填材等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0080】
前記無機系難燃剤は、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0081】
前記金属水酸化物は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0082】
前記金属酸化物は、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0083】
前記金属炭酸塩化合物は、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0084】
前記金属粉は、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0085】
前記ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0086】
前記低融点ガラスは、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0087】
前記無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5〜50質量部の範囲で配合することが好ましく、特に5〜30質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0088】
前記有機金属塩系難燃剤は、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0089】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい
【0090】
この他、本発明の硬化性樹脂組成物は必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。本発明の硬化性樹脂組成物は流動性に優れる特徴を有することから、無機質充填剤の配合量を高めることが可能であり、このような硬化性樹脂組成物は特に半導体封止材料用途に好適に用いることが出来る。
【0092】
前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0093】
この他、本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0094】
本発明の硬化性樹脂組成物をプリント配線基板用ワニスに調整する場合には、有機溶剤を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0095】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤等の添加剤を含む硬化性樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0096】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物が耐熱性や難燃性に優れ、熱時弾性率や誘電率が低い特徴を有することから、各種電子材料用途に用いることが出来る。中でも、その流動性の高さを活かし、特に半導体封止材料用途として好適に用いることが出来る。
【0097】
該半導体封止材料は、例えば、本発明のエポキシ樹脂、硬化剤、及び充填材等の配合物を、押出機、ニーダー、ロール等を用いて均一になるまで十分に混合する方法により調整することが出来る。ここで用いる充填材は前記した無機充填材が挙げられ、前述の通り、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5〜95質量部の範囲で用いることが好ましい。中でも、難燃性や耐湿性、耐半田クラック性が向上し、線膨張係数を低減できることから、70〜95質量部の範囲で用いることが好ましく、80〜95質量部の範囲で用いることが特に好ましい。
【0098】
得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50〜200℃の温度条件下で2〜10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【実施例】
【0099】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、1)軟化点、2)溶融粘度、3)GPC、4)13C−NMR、及び5)MSは以下の条件にて測定した。
【0100】
1)軟化点測定法:JIS K7234
【0101】
2)溶融粘度測定法:ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した。
【0102】
3)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0103】
合成例1 フェノール性水酸基含有樹脂(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、エァ・ウォーター製ビフェニルアラルキル樹脂樹HE−200C−10 211g(1.0当量)、フェノール23.5g(0.25mol)、ベンジルアルコール40.5g(0.375mol)、パラトルエンスルホン酸2.8g、キシレン235gを仕込み、室温から140℃まで攪拌しながら昇温し、140℃で4時間、150℃に昇温して更に3時間反応した。反応終了後、80℃まで降温した後に、49%水酸化ナトリウム1.2gを添加して中和した後、加熱減圧下乾燥してフェノール性水酸基含有樹脂(1)240質量部得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(1)の軟化点は60℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.9dPa・s、水酸基当量は236g/当量であった。フェノール性水酸基含有樹脂(1)のGPCチャートを図1に示す。GPCチャートから算出されるフェノール性水酸基含有樹脂(1)中におけるモノアラルキル化体(x1)の含有率は2.8%、ジアラルキル化体(x2)の含有率は1.2%、2官能体(y1)の含有率は13.0%であった。
【0104】
合成例2 フェノール性水酸基含有樹脂(2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、エァ・ウォーター製ビフェニルアラルキル樹脂樹HE−200C−10 211g(1.0当量)、ο-クレゾール108g(1.0mol)、ベンジルアルコール64.8g(0.6mol)、パラトルエンスルホン酸3.8g、キシレン319gを仕込み、室温から140℃まで攪拌しながら昇温し、140℃で4時間、150℃に昇温して更に3時間反応した。反応終了後、80℃まで降温した後に、49%水酸化ナトリウム1.6gを添加して中和した後、加熱減圧下乾燥してフェノール性水酸基含有樹脂()260質量部得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂()の軟化点は50℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.5dPa・s、水酸基当量は233g/当量であった。フェノール性水酸基含有樹脂()のGPCチャートを図2に示す。GPCチャートから算出されるフェノール性水酸基含有樹脂(2)中におけるモノアラルキル化体(x1)の含有率は7.7%、ジアラルキル化体(x2)の含有率は1.7%、2官能体(y1)の含有率は10.6%であった。
【0105】
実施例 エポキシ樹脂(1)の製造
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら合成で得られたフェノール性水酸基含有樹脂()233g(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン555g(6.0モル)、n−ブタノール167gを仕込み攪拌しながらテトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液90g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン590gとn−ブタノール177gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去してエポキシ樹脂(1)221gを得た。得られたエポキシ樹脂(1)の軟化点は46℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.8dPa・s、エポキシ当量は328g/当量であった。エポキシ樹脂(1)のGPCチャートを図3に示す。GPCチャートから算出されるエポキシ樹脂(1)中の前記モノアラルキル化体(z1)に相当する成分の含有率は6.3%、前記ジアラルキル化体(z2)に相当する成分の含有率は1.8%、前記2官能体(w1)に相当する成分の含有率は13.2%であった。
【0106】
比較製造例1 フェノール性水酸基含有樹脂(1’)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノール96.7g(1.03モル)、4,4’−ジクロロメチルビフェニル103.3g(0.41モル)及び水0.5gを仕込んで昇温させ、系内が均一になり、HClの発生が始まった後、100℃で3時間保持し、さらに150℃で1時間熱処理を加えた。反応で出てくるHClはそのまま系外へ揮散させ、アルカリ水でトラップした。この段階で未反応4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルは残存しておらず、全て反応したことをガスクロマトグラフィで確認した。反応終了後、減圧にして未反応フェノールを系外へ除去し、最終的に約4000Paで150℃まで減圧処理することで、残存フェノールがガスクロマトグラフィで未検出になった。得られたフェノールビフェニルアラルキル樹脂の水酸基当量は213g/eqでありであった。引き続きこのフェノールビフェニルアラルキル樹脂を140℃に保持しながら、さらに塩化ベンジル34.0g(0.27モル)及び水0.5gを1時間かけて滴下し、さらに2時間保持した。反応で出てくるHClはそのまま系外へ揮散させ、アルカリ水でトラップした。このようにして目的とするフェノール系重合体186gを得た。アセチル化逆滴定法で求めた水酸基当量は231g/eqであった。GPCチャートから算出されるフェノール性水酸基含有樹脂(1’)中におけるモノアラルキル化体(x1)およびジアラルキル化体(x2)の含有率は未検出であった。
【0107】
比較製造例2 エポキシ樹脂(1’)の製造
攪拌機、温度計、ディーンスタークトラップおよびコンデンサーが装着された2リットルの四つ口フラスコに、比較製造例1で得られたフェノールビフェニルアラルキル樹脂 231g及びエピクロルヒドリン555g(6モル)を加え、溶解した。それを55℃に加熱し、減圧下でそれに49%NaOH水溶液82g(1モル)を4時間かけて滴下した。その際、共沸して留出した液体をディーンスタークトラップで水とエピクロルヒドリンに分離し、エピクロルヒドリンのみを反応系に戻しながら反応を行なった。滴下終了後、さらに1時間その温度で攪拌した後、120℃まで加熱し、未反応のエピクロルヒドリンを蒸留回収した。次いで得られた粗樹脂溶液にメチルイソブチルケトン600gと水200gを加えて、無機塩を水洗にて除去した。この溶液に1−ブタノール100gと5%NaOH水溶液100gを添加し、85℃で3時間攪拌した。その後静置分液して、下層を除去し、さらに水洗を2回繰り返した。次いで共沸脱水、濾過を経て、メチルイソブチルケトン脱溶剤して目的とするエポキシ樹脂(A)321gを得た。この樹脂のエポキシ当量は311g/eq、溶融粘度は1.2dPa・s、加水分解性塩素は40wtppmであった。
【0108】
実施例2、3及び比較例
<硬化性樹脂組成物(2A)の調整>
エポキシ樹脂(1)、エポキシ樹脂(1’)、フェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」水酸基当量104g/eq)、フェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製「XLC−3L」水酸基当量172g/eq)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、無機充填材として溶融シリカ、シランカップリング剤、カルナウバワックス、及びカーボンブラックを下記表に示す組成で配合し、2本ロールを用いて90℃の温度で5分間溶融混練して硬化性樹脂組成物(2A)を得た。
【0109】
尚、硬化性樹脂組成物の調整で用いた各成分の詳細は以下の通りである。
溶融シリカ:電気化学株式会社製「FB−560」
シランカップリング剤:γ−グリシドキシトリエトキシキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−403」)
カルナウバワックス:株式会社セラリカ野田製「PEARL WAX No.1−P」
【0110】
<試験片(A)の作成>
得られた硬化性樹脂組成物(2A)を粉砕したものを、トランスファー成形機を用いて圧力70kg/cm、ラム速度5cm/秒、温度175℃、時間180秒の条件にて幅12.7mm、長さ127mm、厚み1.6mmの長方形に成形し、試験片(A)を得た。
【0111】
<難燃性の評価>
前記試験片(A)を5本用い、UL−94試験法に準拠した燃焼試験を行った。
*1:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
*2:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
評価結果を表に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例3、4及び比較例
<硬化性樹脂組成物(2B)の調整>
前記エポキシ樹脂(1)、エポキシ樹脂(1’)、フェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」水酸基当量104g/eq)、フェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製「XLC−3L」水酸基当量172g/eq)、及び硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを下記表4に示す組成で配合し、120℃で1時間溶融混練して硬化性樹脂組成物(2B)を得た。
【0114】
<試験片(B)の作成>
得られた硬化性樹脂組成物(2B)を粉砕したものを、トランスファー成形機を用いて圧力50kg/cm、ラム速度5cm/秒、温度150℃、時間300秒の条件にて幅12.7mm、長さ127mm、厚み2.4mmの長方形に成形し、試験片(B)を得た。
【0115】
<耐熱性の評価>
前記試験片(B)から5mm×54mm×2.4mmのサイズに切り出したサンプルについて、粘弾性測定装置(レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用い、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として測定した。評価結果を表に示す。
【0116】
<熱時弾性率の測定>
前記試験片(B)から5mm×54mm×2.4mmのサイズに切り出したサンプルについて、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて測定し、得られたチャートの貯蔵弾性率を測定した。評価結果を表4に示す。
【0117】
<誘電率の評価>
前記試験片(B)について、JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率を測定した。評価結果を表4に示す。
【0118】
【表2】
図1
図2
図3