(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分割予定ラインによって複数の領域に区画された板状の被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、を備える加工装置で用いられるチャックテーブルの製造方法であって、
該保持面を有する板状の多孔質材の該保持面を被覆部材で覆うカバーステップと、
該カバーステップを実施した後、被加工物の該分割予定ラインに対応する第1逃げ溝を該保持面に形成する第1逃げ溝形成ステップと、
該第1逃げ溝形成ステップを実施した後、該第1逃げ溝に樹脂を供給して硬化させる第1逃げ溝封止ステップと、
該第1逃げ溝封止ステップを実施した後、該第1逃げ溝より浅くて幅の狭い第2逃げ溝を該第1逃げ溝に沿って該樹脂に形成する第2逃げ溝形成ステップと、
該保持面の被加工物に対応する保持領域と、吸引源に接続され該保持面の該保持領域に負圧を伝える負圧伝達領域と、を除く該多孔質材の表面を封止する表面封止ステップと、
該被覆部材を該保持面から剥離する剥離ステップと、を備えることを特徴とするチャックテーブルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るチャックテーブルの製造方法は、カバーステップ(
図2(A)参照)、第1逃げ溝形成ステップ(
図2(B)参照)、第1逃げ溝封止ステップ(
図3(A)参照)、剥離ステップ(
図3(B)参照)、平坦化ステップ(
図3(C)参照)、第2逃げ溝形成ステップ(
図4(A)参照)、及び表面封止ステップ(
図4(B)参照)を含む。
【0014】
カバーステップでは、板状の多孔質材の第1面(保持面)を被覆部材で覆う。第1逃げ溝形成ステップでは、被加工物の分割予定ライン(ストリート)に対応する第1逃げ溝を多孔質材の第1面に形成する。第1逃げ溝封止ステップでは、第1逃げ溝に樹脂を供給して硬化させる。剥離ステップでは、被覆部材を多孔質材の第1面から剥離する。
【0015】
平坦化ステップでは、樹脂を研削して多孔質材の第1面側を平坦化する。第2逃げ溝形成ステップでは、第1逃げ溝より浅くて幅の狭い第2逃げ溝を第1逃げ溝に沿って樹脂に形成する。表面封止ステップでは、第1面の被加工物に対応する保持領域と、第1面の保持領域に負圧を伝えるための負圧伝達領域と、を除く多孔質材の表面を封止する。以下、本実施形態に係るチャックテーブルの製造方法について詳述する。
【0016】
はじめに、本実施形態に係るチャックテーブルの製造方法で製造されるチャックテーブルの概略について説明する。
図1は、チャックテーブルの構成例等を模式的に示す斜視図である。本実施形態で製造されるチャックテーブル23は、半導体ウェーハや光デバイスウェーハ、セラミックスパッケージ基板等の被加工物31を吸引、保持できるように構成されている。
【0017】
被加工物31は、例えば、円盤状に形成されており、その一方側の面は、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)33で複数の領域に区画されている。各領域には、IC、LED、SAWフィルタ等のデバイス35が形成されている。ただし、被加工物31の材質、形状、分割予定ライン33の配置、デバイス35の種類等に制限はない。
【0018】
チャックテーブル23は、多孔質材料でなる円盤状の多孔質材1を含んでいる。この多孔質材1は、チャックテーブル23の保持面となる概ね平坦な第1面1aを有している。第1面1aの被加工物31に対応する保持領域1cには、被加工物31の分割予定ライン33に対応する逃げ溝(第1逃げ溝7、第2逃げ溝11)が形成されている。
【0019】
また、多孔質材1には、保持領域1cに負圧を伝えるための負圧伝達領域(第1負圧伝達領域1d(
図4(B)等参照)、第2負圧伝達領域1e)が形成されている。この負圧伝達領域と保持領域1cとを除く多孔質材1の表面全体は、樹脂13等で封止されている。各負圧伝達領域には、エアの逆流を防ぐ逆止弁(負圧維持部材)15が設けられている。
【0020】
本実施形態に係るチャックテーブルの製造方法では、まず、板状の多孔質材1の第1面1aを被覆部材で覆うカバーステップを実施する。
図2(A)は、カバーステップを模式的に示す斜視図である。
図2(A)に示すように、カバーステップでは、まず、多孔質状のセラミック、メタル、半導体、樹脂等でなる円盤状の多孔質材1を用意する。
【0021】
この多孔質材1の径は、保持対象である被加工物31の径よりも大きくなっている。多孔質材1に含まれる細孔の形状及び大きさは、被加工物31を適切に吸引、保持できる範囲で任意に設定される。
【0022】
カバーステップでは、
図2(A)に示すように、保持面となる多孔質材1の第1面1aに被覆部材3を貼り付ける。被覆部材3としては、例えば、紫外線を照射することで粘着力が低下するUVテープ等を用いることができる。なお、本実施形態では、多孔質材1と同じ大きさの被覆部材3を用いているが、被覆部材3は、例えば、被加工物31に対応する保持領域1cのみを覆う大きさに形成されても良い。被覆部材3は、少なくとも被加工物31のデバイス35が形成された領域に対応する第1面1aの領域を覆うことができれば良い。
【0023】
カバーステップの後には、被加工物31の分割予定ライン33に対応する第1逃げ溝7を多孔質材1の第1面1aに形成する第1逃げ溝形成ステップを実施する。
図2(B)は、第1逃げ溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。この第1逃げ溝形成ステップは、例えば、
図2(B)に示す切削装置2で実施される。
【0024】
切削装置2は、多孔質材1を保持するための保持テーブル4を備えている。保持テーブル4は、モータ等を含む回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、保持テーブル4の下方には、テーブル移動機構(不図示)が設けられており、保持テーブル4は、このテーブル移動機構で水平方向に移動する。
【0025】
保持テーブル4の上面は、多孔質材1の第2面1b側を吸引、保持する保持面4aとなっている。この保持面4aには、保持テーブル4の内部に形成された流路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)の負圧が作用し、多孔質材1を吸引するための吸引力が発生する。
【0026】
保持テーブル4の上方には、多孔質材1を切削するための切削ユニット6が配置されている。切削ユニット6は、切削ユニット移動機構(不図示)に支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。スピンドルハウジングの内部には、モータ等を含む回転駆動源(不図示)に連結されたスピンドル8が収容されている。
【0027】
スピンドル8は、回転駆動源から伝達される回転力によって水平方向に概ね平行な回転軸の周りに回転し、切削ユニット移動機構によってスピンドルハウジングと共に移動する。スピンドルハウジングの外部に露出したスピンドル8の一端部には、円環状の切削ブレード10が装着されている。
【0028】
第1逃げ溝形成ステップでは、まず、多孔質材1の第2面1bに、樹脂等でなる保護部材5を貼り付ける。次に、多孔質材1に貼り付けられた保護部材5を保持テーブル4の保持面4aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。これにより、多孔質材1は、第1面1a側の被覆部材3が上方に露出した状態で保持テーブル4に吸引、保持される。
【0029】
また、保持テーブル4と切削ユニット6とを相対的に移動、回転させて、多孔質材1の第1面1aに設定された第1逃げ溝形成予定ラインに切削ブレード10を合わせる。第1逃げ溝形成予定ラインは、多孔質材1で被加工物31を保持する際に、被加工物31の分割予定ライン33と重なる位置(分割予定ライン33に対応する位置)に設定される。
【0030】
その後、切削ブレード10を回転させて被覆部材3及び多孔質材1に切り込ませると共に、第1逃げ溝形成予定ラインに平行な方向に保持テーブル4を移動させる。これにより、所定深さの第1逃げ溝7を多孔質材1の第1面1aに形成できる。上述の手順を繰り返し、全ての分割予定ライン33に対応する第1逃げ溝7が形成されると、第1逃げ溝形成ステップは終了する。
【0031】
第1逃げ溝形成ステップの後には、第1逃げ溝7に樹脂を供給して硬化させる第1逃げ溝封止ステップを実施する。
図3(A)は、第1逃げ溝封止ステップを模式的に示す断面図である。第1逃げ溝封止ステップでは、まず、各第1逃げ溝7に液状の樹脂9を供給する。
【0032】
第1逃げ溝7への液状の樹脂9の供給は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、インクジェット、ポッティング等の任意の方法で実施できる。液状の樹脂9としては、例えば、紫外線等の光で硬化する光硬化型の樹脂や、熱で硬化する熱硬化型の樹脂等を用いると良い。
【0033】
液状の樹脂9を第1逃げ溝7に供給した後には、この樹脂9を硬化させる。樹脂9の硬化方法は、樹脂9の種類に合わせて適切に選択される。第1逃げ溝7に供給された液状の樹脂9が完全に硬化すると、第1逃げ溝封止ステップは終了する。
【0034】
第1逃げ溝封止ステップの後には、被覆部材3を多孔質材1の第1面1aから剥離する剥離ステップを実施する。
図3(B)は、剥離ステップを模式的に示す断面図である。例えば、被覆部材3としてUVテープを用いた場合には、紫外線を照射して粘着力を低下させることで被覆部材3を容易に剥離できる。
【0035】
図3(B)に示すように、被覆部材3を剥離した後の多孔質材1の第1面1a側には、樹脂9に起因する僅かな段差が存在する可能性がある。そのため、剥離ステップの後には、硬化した樹脂9を研削して多孔質材1の第1面1a側を平坦化する平坦化ステップを実施することが望ましい。
図3(C)は、平坦化ステップを模式的に示す一部断面側面図である。
【0036】
平坦化ステップは、例えば、
図3(C)に示す研削装置12で実施される。研削装置12は、多孔質材1を保持するための保持テーブル14を備えている。保持テーブル14は、モータ等を含む回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、保持テーブル14の下方には、テーブル移動機構(不図示)が設けられており、保持テーブル14は、このテーブル移動機構で水平方向に移動する。
【0037】
保持テーブル14の上面は、多孔質材1の第2面1b側を吸引、保持する保持面14aとなっている。この保持面14aには、保持テーブル14の内部に形成された流路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)の負圧が作用し、多孔質材1を吸引するための吸引力が発生する。
【0038】
保持テーブル14の上方には、多孔質材1の第1面1aから突出した樹脂9を研削するための研削ユニット16が配置されている。研削ユニット16は、研削ユニット昇降機構(不図示)に支持されたスピンドルハウジング18を備える。スピンドルハウジング18の内部には、モータ等を含む回転駆動源(不図示)に連結されたスピンドル20が収容されている。
【0039】
スピンドル20は、回転駆動源から伝達される回転力によって鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。スピンドルハウジング18の外部に露出したスピンドル20の下端部には、円盤状のホイールマウント22が固定されている。
【0040】
ホイールマウント22の下面には、ホイールマウント22と概ね同径の研削ホイール24が装着されている。研削ホイール24は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料で形成されたホイール基台26を備えている。ホイール基台26の下面には、複数の研削砥石28が環状に配列されている。
【0041】
平坦化ステップでは、まず、多孔質材1に貼り付けられた保護部材5を保持テーブル14の保持面14aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。これにより、多孔質材1は、第1面1a側が上方に露出した状態で保持テーブル14に吸引、保持される。
【0042】
次に、保持テーブル14を研削ホイール24の下方に移動させる。また、
図3(C)に示すように、保持テーブル14と研削ホイール24とをそれぞれ回転させながら、スピンドルハウジング18を下降させる。スピンドルハウジング18の下降速さ(下降量)は、多孔質材1の第1面1aから突出した樹脂9の上面に研削砥石28の下面が押し付けられる程度とする。
【0043】
これにより、多孔質材1の第1面1aから突出した樹脂9を研削して、第1面1aと樹脂9とが面一になるように平坦化できる。多孔質材1の第1面1a側が所望の平坦度まで平坦化されると、平坦化ステップは終了する。なお、この平坦化ステップでは、多孔質材1の第1面1aを同時に研削して、第1面1aと樹脂9とが完全に面一になるように平坦化しても良い。また、平坦化ステップは、樹脂9に起因する段差が問題とならない場合には省略して良い。
【0044】
平坦化ステップの後には、第1逃げ溝7より浅くて幅の狭い第2逃げ溝を第1逃げ溝7に沿って樹脂9に形成する第2逃げ溝形成ステップを実施する。
図4(A)は、第2逃げ溝形成ステップを模式的に示す一部断面側面図である。この第2逃げ溝形成ステップは、例えば、
図4(A)に示す切削装置32で実施される。
【0045】
切削装置32は、多孔質材1を保持するための保持テーブル34を備えている。保持テーブル34は、モータ等を含む回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、保持テーブル34の下方には、テーブル移動機構(不図示)が設けられており、保持テーブル34は、このテーブル移動機構で水平方向に移動する。
【0046】
保持テーブル34の上面は、多孔質材1の第2面1b側を吸引、保持する保持面34aとなっている。この保持面34aには、保持テーブル34の内部に形成された流路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)の負圧が作用し、多孔質材1を吸引するための吸引力が発生する。
【0047】
保持テーブル34の上方には、多孔質材1を切削するための切削ユニット36が配置されている。切削ユニット36は、切削ユニット移動機構(不図示)に支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。スピンドルハウジングの内部には、モータ等を含む回転駆動源(不図示)に連結されたスピンドル38が収容されている。
【0048】
スピンドル38は、回転駆動源から伝達される回転力によって水平方向に概ね平行な回転軸の周りに回転し、切削ユニット移動機構によってスピンドルハウジングと共に移動する。スピンドルハウジングの外部に露出したスピンドル38の一端部には、円環状の切削ブレード40が装着されている。この切削ブレード40は、第1逃げ溝形成ステップで使用される切削ブレード10より薄くなっている。
【0049】
第2逃げ溝形成ステップでは、まず、多孔質材1に貼り付けられた保護部材5を保持テーブル34の保持面34aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。これにより、多孔質材1は、第1面1a側が上方に露出した状態で保持テーブル34に吸引、保持される。また、保持テーブル34と切削ユニット36とを相対的に移動、回転させて、樹脂9に切削ブレード40を合わせる。
【0050】
その後、切削ブレード40を回転させて樹脂9に切り込ませると共に、第1逃げ溝7に平行な方向に保持テーブル34を移動させる。ただし、切削ブレード40の切り込み深さは、切削ブレード40が樹脂9を貫通しない(第1逃げ溝7の底に達しない)程度とする。これにより、第1逃げ溝7より浅くて幅の狭い第2逃げ溝11を第1逃げ溝7に沿って樹脂9に形成できる。上述の手順を繰り返し、全ての第1逃げ溝7に対応する第2逃げ溝11が形成されると、第2逃げ溝形成ステップは終了する。
【0051】
第2逃げ溝形成ステップの後には、第1面1aの被加工物31に対応する保持領域1cと、この保持領域1cに負圧を伝える負圧伝達領域(第1負圧伝達領域1d、第2負圧伝達領域1e)と、を除く多孔質材1の表面全体を封止する表面封止ステップを実施する。
図4(B)は、表面封止ステップを模式的に示す断面図である。
【0052】
表面封止ステップでは、まず、保護部材5を多孔質材1の第2面1bから剥離し、次に、保持領域1cと負圧伝達領域(第1負圧伝達領域1d、第2負圧伝達領域1e)とを被覆部材(不図示)で覆う。被覆部材としては、カバーステップで使用される被覆部材3と同様のUVテープ等を用いることができる。
【0053】
次に、露出した多孔質材1の表面全体に液状の樹脂13を供給する。樹脂13の供給は、第1逃げ溝封止ステップと同様に、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、インクジェット、ポッティング等の任意の方法で実施できる。また、樹脂13としては、樹脂9と同様の樹脂を用いることができる。
【0054】
液状の樹脂13を多孔質材1の表面全体に供給した後には、この樹脂13を硬化させる。樹脂13の硬化方法は、樹脂13の種類に合わせて適切に選択される。その後、保持領域1c及び負圧伝達領域(第1負圧伝達領域1d、第2負圧伝達領域1e)を覆う被覆部材を剥離して、表面封止ステップは終了する。
【0055】
なお、この表面封止ステップは、カバーステップの後、剥離ステップの前(代表的には、第1逃げ溝形成ステップの前)に実施されても良い。この場合、カバーステップにおいて貼り付けた被覆部材3を表面封止ステップで流用できる。また、第1逃げ溝封止ステップと表面封止ステップとを同時に実施して工程を簡略化することもできる。
【0056】
表面封止ステップを実施する前、又は実施した後には、第1負圧伝達領域1d及び第2負圧伝達領域1eに逆止弁(負圧維持部材)15を設ける。
図4(C)は、逆止弁15の構造等を模式的に示す一部断面側面図である。なお、
図4(C)では、第2負圧伝達領域1eに設けた逆止弁15を例示しているが、第2面1b側の第1負圧伝達領域1dにも同様の逆止弁15が上下逆向きに設けられる。
【0057】
図4(C)に示すように、逆止弁15は、上下に開口部を有する筒状の筐体17を含んでいる。筐体17の内部には、一方側(
図4(C)では下方側)の開口部を塞ぐための栓19が配置されている。この栓19は、ばね21の力で筐体17の内壁面に密着している。そのため、多孔質材1の外部(逆止弁15の上方側)の圧力が、多孔質材1の内部(逆止弁15の下方側)の圧力よりも十分に低くならない限り、エアのリークは抑制される。
【0058】
次に、本実施形態に係るチャックテーブルの製造方法で製造されるチャックテーブル23を用いる加工装置の例を説明する。
図5は、本実施形態に係るチャックテーブル23を用いる切削装置(加工装置)の構成例を模式的に示す斜視図である。なお、本実施形態に係るチャックテーブル23は、レーザー加工装置等の他の加工装置で用いることもできる。
【0059】
図5に示すように、切削装置(加工装置)42は、各構造を支持する基台44を備えている。基台44の上面には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い矩形の開口44aが形成されている。この開口44a内には、X軸移動テーブル46、X軸移動テーブル46をX軸方向に移動させるX軸移動機構(チャックテーブル移動手段)(不図示)、及びX軸移動機構を覆う防塵防滴カバー48が設けられている。
【0060】
X軸移動機構は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール(不図示)を備えており、X軸ガイドレールには、X軸移動テーブル46がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル46の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレールと平行なX軸ボールネジ(不図示)が螺合されている。
【0061】
X軸ボールネジの一端部には、X軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールネジを回転させることで、X軸移動テーブル46はX軸ガイドレールに沿ってX軸方向に移動する。X軸移動テーブル46上には、支持基台50を介してチャックテーブル23が設けられている。
【0062】
開口44aの近傍には、被加工物31を切削する切削ユニット(加工手段)52を支持する片持ち梁状の支持構造54が配置されている。支持構造54の前面上部には、切削ユニット52をY軸方向(左右方向、割り出し送り方向)及びZ軸方向(鉛直方向)に移動させる切削ユニット移動機構56が設けられている。
【0063】
切削ユニット移動機構56は、支持構造54の前面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール58を備えている。Y軸ガイドレール58には、切削ユニット移動機構56を構成するY軸移動プレート60がスライド可能に取り付けられている。
【0064】
Y軸移動プレート60の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール58に平行なY軸ボールネジ62が螺合されている。Y軸ボールネジ62の一端部には、Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。Y軸パルスモータでY軸ボールネジ62を回転させれば、Y軸移動プレート60は、Y軸ガイドレール58に沿ってY軸方向に移動する。
【0065】
Y軸移動プレート60の表面(前面)には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール64が設けられている。Z軸ガイドレール64には、Z軸移動プレート66がスライド可能に取り付けられている。
【0066】
Z軸移動プレート66の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール64に平行なZ軸ボールネジ68が螺合されている。Z軸ボールネジ68の一端部には、Z軸パルスモータ70が連結されている。Z軸パルスモータ70でZ軸ボールネジ68を回転させれば、Z軸移動プレート66は、Z軸ガイドレール64に沿ってZ軸方向に移動する。
【0067】
Z軸移動プレート66の下部には、切削ユニット52が設けられている。この切削ユニット52は、スピンドル(不図示)の一端側に装着された円環状の切削ブレード72を備えている。スピンドルの他端側にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドルに装着された切削ブレード72を回転させる。また、切削ユニット52に隣接する位置には、被加工物31を撮像するカメラ74が設置されている。
【0068】
なお、上述したチャックテーブル23には、切削ブレード72より幅の広い第2逃げ溝11を形成することが望ましい。これにより、被加工物31の加工時に、切削ブレード72とチャックテーブル23との干渉を防止できる。
【0069】
切削ユニット移動機構56でY軸移動プレート60をY軸方向に移動させれば、切削ユニット52及びカメラ74はY軸方向に移動する。また、切削ユニット移動機構56でZ軸移動プレート66をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット52及びカメラ74はZ軸方向に移動する。
【0070】
開口44aの近傍には、被加工物11と共にチャックテーブル23を搬送する搬送ユニット(搬送手段)76が設けられている。
図6(A)及び
図6(B)は、搬送ユニット76でチャックテーブル23が搬送される様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0071】
図6(A)に示すように、チャックテーブル23を支持する支持基台50には、負圧を伝達する吸引経路78が設けられている。この吸引経路78の一端側は、バルブ80等を介して吸引源82に接続されている。チャックテーブル23の第1負圧伝達領域1dは、支持基台50と対面する位置に形成されており、支持基台50にチャックテーブル23を載せると、第1負圧伝達領域1dと吸引経路78の他端側とは接続される。
【0072】
チャックテーブル23で被加工物31を保持する際には、
図6(A)に示すように、支持基台50に支持されたチャックテーブル23の保持領域1cに被加工物31を載せて、バルブ80を開く。これにより、吸引源82の負圧は、吸引経路78を通じてチャックテーブル23の第1負圧伝達領域1dに作用する。
【0073】
第1負圧伝達領域1dに接続された吸引経路78の圧力は、チャックテーブル23の内部の圧力よりも十分に低くなるので、第1負圧伝達領域1dに設けられた逆止弁15の栓19は、ばね21の力に抗して動き、栓19と筐体17の内壁面との間に隙間ができる。その結果、チャックテーブル23の内部の圧力が低下して、被加工物31は、チャックテーブル23に吸引、保持される。すなわち、被加工物31は、第1負圧伝達領域1dを介して保持領域1cに作用する負圧でチャックテーブル23に吸引、保持される。
【0074】
なお、チャックテーブル23の内部の圧力が低下した状態では、上述のように、第2負圧伝達領域1eに設けられた逆止弁15の栓19が筐体17の内壁面に密着する。よって、吸引源82からの負圧が第2負圧伝達領域1eにおいてリークすることはない。
【0075】
一方、被加工物11と共にチャックテーブル23を搬送する際には、
図6(B)に示すように、まず、搬送ユニット76をチャックテーブル23に接触させる。搬送ユニット76には、負圧を伝達する吸引経路84が設けられている。吸引経路84の一端側は、バルブ86等を介して吸引源88に接続されている。
【0076】
また、搬送ユニット76の下面側には、チャックテーブル23に接触する吸着パッド90が設けられており、吸引経路84の他端側は、この吸着パッド90に接続されている。よって、
図6(B)に示すように、搬送ユニット76の吸着パッド90をチャックテーブル23の第2負圧伝達領域1eに接触させると、吸引経路84の他端側と第2負圧伝達領域1eとは接続される。
【0077】
この状態で、バルブ80を閉じてバルブ86を開くと、吸引源82から第1負圧伝達領域1dへの負圧は遮断され、吸引源88の負圧は吸引経路84を通じてチャックテーブル23の第2負圧伝達領域1eに作用する。これにより、チャックテーブル23を搬送ユニット76で吸引、保持して搬送できる。なお、第1負圧伝達領域1dには逆止弁15が設けられているので、チャックテーブル23の内部の圧力が第1負圧伝達領域1dからのリークで低下することはない。
【0078】
また、例えば、搬送時の振動等によってチャックテーブル23と被加工物31との間に一時的な隙間が生じ、チャックテーブル23の内部の圧力が上昇した場合には、第2負圧伝達領域1eの逆止弁15が開いて、チャックテーブル23の内部の圧力を再び低下させる。つまり、被加工物31は、第2負圧伝達領域1eを介して保持領域1cに作用する負圧で、チャックテーブル23に吸引、保持される。よって、被加工物31を脱落することなくチャックテーブル23と共に搬送できる。
【0079】
以上のように、本実施形態に係るチャックテーブルの製造方法では、板状の多孔質材1を用いてチャックテーブル23を製造するので、例えば、被加工物31を分割して形成されるチップにそれぞれ対応する1つ(又は少数)の吸引孔を備える従来のチャックテーブル等に比べて、分割後のチップを強い力で吸引、保持可能なチャックテーブルを実現できる。つまり、本実施形態によれば、ダイシングテープを使用しなくても板状の被加工物31を適切に吸引、保持可能なチャックテーブル23を製造できる。
【0080】
また、本実施形態に係るチャックテーブルの製造方法では、多孔質材1への逃げ溝(第1逃げ溝7、第2逃げ溝11)の形成や、樹脂9,13による封止といった比較的簡単なステップでチャックテーブル23を製造できるので、例えば、チップサイズの変更があった場合等に、切削装置(加工装置)42の使用者等がチャックテーブル23を製造することも可能になる。
【0081】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、第1逃げ溝封止ステップの後に剥離ステップを実施しているが、剥離ステップは、必ずしも第1逃げ溝封止ステップの直後に実施されなくても良い。例えば、第1逃げ溝封止ステップ、第2逃げ溝形成ステップ、及び表面封止ステップを実施した後に、剥離ステップ(必要に応じて平坦化ステップも)を実施しても良い。この場合、表面封止ステップにおいて被覆部材3を流用できるというメリットがある。
【0082】
また、上記実施形態では、表面封止ステップにおいて多孔質材1を樹脂13のみで封止しているが、金属等でなる基台等を用いて多孔質材1を封止することもできる。
図7は、変形例に係るチャックテーブルの製造方法で製造されるチャックテーブルの構成例を模式的に示す断面図である。
【0083】
図7に示すチャックテーブル25は、少なくとも多孔質材1の表面の一部を覆う金属でなる基台27を含む。この基台27には、多孔質材の第1負圧伝達領域1d及び第2負圧伝達領域1eに対応する逆止弁(負圧維持部材)15が設けられている。基台27は、接着剤として機能する樹脂13によって多孔質材1に接着されている。その他の部分については、上記実施形態のチャックテーブル23と同様で良い。
【0084】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。