(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダイボンド材は、前記半田と前記光反射材が分散している部分と、前記半田の一部が前記配線上で連結した部分とを有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実装される半導体素子が発光素子の場合、発光素子から出射される光を効率的に取り出すために、ダイボンド材での光の吸収を最小限に止めることが必要となる。従って、半導体装置にダイボンド用に利用されているようなダイボンド材をそのまま発光素子のダイボンド材として使用することは、半田又は樹脂等による光吸収に関して一切考慮されていないことから、現実的でない。
【0005】
また、発光素子の電極が半導体層に対して同じ側に設けられた片面電極構造の発光素子をフリップチップで実装し、発光素子の各電極と実装基板における各配線との間での電気的な接続を行う場合には、それら配線から露出した実装基板表面に、出射された光が直接照射されるため、基板自体の劣化が避けられないという別の課題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ダイボンド材による光の吸収を最小限に止めて効率的に光を取り出すことができるとともに、実装基板の劣化をも防止することができるダイボンド材及びこのダイボンド材を利用した発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
〔1〕透光性を有する熱硬化性樹脂中に、半田及び光反射材が含有されたダイボンド材であって、
前記透光性を有する熱硬化性樹脂は、前記半田よりも多く含有されていることを特徴とするダイボンド材。
〔2〕前記光反射材は、前記半田よりも多く含有されている上述のダイボンド材。
〔3〕透光性を有する熱硬化性樹脂が25〜85重量部、半田が5〜30重量部及び光反射材が10〜70重量部含有されてなる上述したいずれか1つのダイボンド材。
〔4〕光反射材が絶縁性材料から選択される粉末又は粒子形態である上述したいずれか1つのダイボンド材。
〔5〕半田は、粉末又は粒子形態である上述したいずれか1つのダイボンド材。
〔6〕半導体層積層構造の同一面側に一対の電極が配置された発光素子及び
該発光素子を搭載し、表面に互いに分離された配線を有する基板を備えた発光装置であって、
前記基板表面の配線と、前記発光素子の一対の電極とが、上述したいずれか1つに記載のダイボンド材でそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする発光装置。
〔7〕前記配線間の基板表面が前記ダイボンド材で被覆されている上述したいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダイボンド材による光の吸収を最小限に止めて効率的に光を取り出すことができ、また、発光素子を実装するための実装基板の劣化を防止することができるダイボンド材及び発光装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のダイボンド材は、透光性を有する熱硬化性樹脂と、半田と、光反射材とを含有する。
【0011】
(熱硬化性樹脂)
透光性を有する熱硬化性樹脂(以下、単に「熱硬化性樹脂」ということがある)としては、発光素子から出射された光の60%程度以上を透過し得るもの、好ましくは70%程度以上、75%程度以上、80%程度以上、85%程度以上、90%程度以上を透過し得るものが好ましい。
熱硬化性樹脂に半田フラックス機能をもたせたものがあるが、このような樹脂を単独で使用又は併用してもよい。
【0012】
また、熱硬化性樹脂は、熱硬化に要する温度として、後述する半田の融点と同等の温度で硬化するものが好ましい。例えば、120〜300℃程度が挙げられ、140〜250℃程度が好ましい。具体的には、半田としてSn−Biを用いた場合には、140〜200℃程度、Sn−Ag−Cuを用いた場合には、200〜250℃程度が挙げられる。
さらに、熱硬化性樹脂は、硬化するまでに種々の時間を要するものがあるが、簡便かつ確実な半田接合を行うために、短時間で硬化するものが好ましい。例えば、数分間以内に硬化するものが好ましく、1分間以内に硬化するものがより好ましく、数十秒間以内に硬化するもの、10秒間以内に硬化するものがさらに好ましい。
【0013】
熱硬化性樹脂としては、具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、シリコーンなどが挙げられる。特に、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等が好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物の成分として用いられるエポキシ樹脂としては、たとえば、従来公知の脂肪族エポキシ樹脂および芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂のなかで、不飽和結合を有するエポキシ樹脂は、波長の短い光及び熱により二重結合が切れたり、酸化されて、黄変着色や劣化の原因になることがあるため、反応性の高い不飽和結合を含まないエポキシ樹脂が好ましく、特に脂肪族エポキシ樹脂なかでも脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
【0014】
熱硬化性樹脂又は光反射材は、本発明のダイボンド材中の主成分として含有されていることが好ましい。ここで主成分としては、最も重量割合が多い成分を意味する。従って、熱硬化性樹脂もしくは光反射材は、ダイボンド材を構成する、後述の半田よりも多く含有されていることが好ましい。
また、ダイボンド材の塗布性を考慮して、熱硬化性樹脂は光反射材よりも多く含有されていることがより好ましい。これにより、ダイボンド材を適当な塗布量及び塗布厚とすることができる。これは、熱硬化性樹脂の含有率が少なく、ダイボンド材としての粘度が上がると、微量塗布が難しくなり、発光素子の上面までダイボンド材が回りこんでしまうためである。
なお、本明細書においては、各成分の多い/少ないは、特に断りのない限り重量基準の含有率又は含有量とする。
【0015】
熱可塑性樹脂の含有率は、ダイボンド材の全重量(100%)に対して、25〜85%程度が挙げられ、30〜70%程度が好ましく、40〜70%程度がより好ましく、50〜70%程度がさらに好ましい。
【0016】
(半田)
半田は、当該分野で通常用いられているもの、市販されているものであれば特に限定されることなくどのようなものでも用いることができる。例えば、Ag、Au、Cu、Pt、Pd、W、Ni、Ta、Ti、Cr、Fe、Co、Ga、In、Li、Se、Sn、Bi、Tl、Zn、Te及びPbの少なくとも1種の金属又は合金を含むものが挙げられる。なかでも、Sn、Cu、Ag、Bi、Sb、In、Zn、Au、Ni,Pb等から選択された少なくとも1種の金属又は合金を含むものが好ましく、Sn、Cu、Ag、Bi、Zn、Pb等から選択された少なくとも1種の金属又は合金を含むものがより好ましい。
【0017】
合金としては、例えば、95.3Ag/4.7Bi等のAg−Bi系、66Ag/34Li等のAg−Li系、3Ag/97In等のAg−In系、67Ag/33Te等のAg−Te系、97.2Ag/2.8Tl等のAg−Tl系、45.6Ag/54.4Zn等のAg−Zn系、80Au/20Sn等のAu−Sn系、52.7Bi/47.3In系のBi−In系、35In/65Sn、51In/49Sn、52In/48Sn等のIn−Sn系、8.1Bi/91.9Zn等のBi−Zn系、43Sn/57Bi、42Sn/58Bi等のSn−Bi系、98Sn/2Ag、96.5Sn/3.5Ag、96Sn/4Ag、95Sn/5Ag等のSn−Ag系、91Sn/9Zn、30Sn/70Zn等のSn−Zn系、99.3Sn/0.7Cu等のSn−Cu系、95Sn/5Sb等のSn−Sb系、95.5Sn/3.5Ag/1In等のSn−Ag−In系、86Sn/9Zn/5In、81Sn/9Zn/10In等のSn−Zn−In系、95.5Sn/0.5Ag/4Cu、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cu等のSn−Ag−Cu系、90.5Sn/7.5Bi/2Ag、41.0Sn/58Bi/1,0Ag等のSn−Bi−Ag系、89.0Sn/8.0Zn/3.0Bi等のSn−Zn−Bi系、Sn/Ag/Cu/Bi等が挙げられる。
特にSn−Bi系等の融点が低い半田は、熱硬化性樹脂の硬化温度との調整が図りやすいため好ましい。
【0018】
半田は、ダイボンド材において均一に分散している状態が好ましいことから、小片、粉末状又は粒子の形態であることが好ましい。この場合の大きさは特に限定されないが、例えば、小片、粉末状又は平均粒径は50μm程度以下が好ましく、35μm程度以下のものがより好ましい。ここで、平均粒径とは、レーザ回折法、光学顕微鏡等による画像観察等によって測定することができる。
半田の含有量は、発光素子の電極と各配線とを電気的に接合できる量であればよく、さらには光の吸収を最小限に止める程度に含まれていることが好ましい。
半田の含有率は、ダイボンド材の全重量(100%)に対して、5〜30%程度が挙げられ、10〜30%程度が好ましい。
【0019】
(光反射材)
光反射材としては、発光素子から出射される光を反射し得るものであればよい。なかでも、導電性を有さない材料、つまり、絶縁性材料からなるものが好ましい。具体的には、酸化チタン、酸化ケイ素、硫酸バリウム、窒化ホウ素等が挙げられる。
光反射材は、ダイボンド材において均一に分散している状態が好ましいことから、小片、粉末状又は粒子の形態であることが好ましい。この場合の大きさは特に限定されないが、例えば、小片、粉末状又は粒子の平均粒径は数μm程度以下が好ましく、数百nm程度以下のものがより好ましい。
ここでの平均粒径は、上記と同様測定することができる。
【0020】
光反射材は、半田による光の吸収を最小限に止める程度に含有されていることが好ましい。つまり、半田と同程度の量又は半田よりも多く含有されていることが好ましい。
また、上述したように、光反射材は、熱硬化性樹脂よりも少なく含有されていてもよいが、熱硬化性樹脂よりも多いことが好ましい。
例えば、光反射材の含有率は、ダイボンド材の全重量(100%)に対して、10〜70%程度が挙げられ、10〜40%程度が好ましく、20〜30%程度がより好ましい。
【0021】
本発明のダイボンド材においては、さらに、半田フラックス、フィラー、活性剤、チクソ剤、硬化剤等、当該分野で用いられている種々の添加剤をダイボンド材の作用を損なわない範囲で含有してもよい。つまり、これらの添加剤は、光吸収を避けるために、光吸収しない材料又は光吸収が許容される最小限の量に止めることが好ましい。また、ダイボンド材の融点を低減し、加工時の温度を引き下げるために、インジウム又はインジウム合金、アンチモン合金等を添加してもよい。
本発明のダイボンド材は、通常、熱硬化性樹脂が常温で流動状態であることから、例えば、10〜100万cP程度の粘度を有する形態であることが適している。このような粘度を有することにより、ダイボンド材としての使用時にそのままの形態で、簡便に使用することができる。
【0022】
本発明のダイボンド材は、上述したように、透光性の熱硬化性樹脂中に、半田が分散していることにより、ダイボンド材として異方性を有することができるため、種々の形状の発光素子、種々の形状又は配線パターンを有する実装基板に対して、容易かつ簡便にダイボンドすることができる。
【0023】
また、本発明のダイボンド材は、上述したように、透光性を有する熱硬化性樹脂または光反射材を主成分とすることにより、より好ましくは熱硬化性樹脂を主成分とすることにより、ダイボンド材による光の吸収を最大限に防止することができる。また、このような透光性の熱硬化性樹脂中に、光反射材が半田よりも多く、かつ均一に分散しているために、半田による光の吸収を最小限に止めるのみならず、配線間の基板への光照射を最小限に止めることができ、基板の劣化を回避することができる。さらに、発光素子から出射した光が直接ダイボンド材に当たり反射される以外の光、つまり、周辺部材からの反射・散乱光がダイボンド材に再度入射した場合でも、効率よく光を反射させることができる。
【0024】
本発明のダイボンド材は、例えば、熱硬化性樹脂が25〜85重量部、半田が5〜30重量部及び光反射材が10〜70重量部含有されていることが好ましく、熱硬化性樹脂が35〜85重量部、半田が5〜30重量部及び光反射材が10〜40重量部含有されることがより好ましい。
【0025】
このような割合で各成分を含有することにより、ダイボンド材としての異方導電性を確保することができるとともに、光の吸収と反射とのバランスを図ることができる。さらに、配線上における半田による濡れ性を確保することによって、配線上においては確実に半田によるダイボンドを行うことができるとともに、半田の濡れ性が良好ではない部位(例えば、絶縁性の基板の露出領域)においては、半田による連結による短絡を回避しながら、熱硬化性樹脂により、半田のボンディング性をより補強して、確実なダイボンドを実現することができる。その結果、光反射材により基板に光が直接照射されることを回避することができるため、基板の劣化を阻止することが可能となる。
【0026】
本発明の発光装置は、上述したダイボンド材を用いて、発光素子が基板上にダイボンドされた装置である。
そのために、発光装置は、発光素子を備える。この発光素子は、第1半導体層(例えば、n型半導体層)、活性層及び第2半導体層(例えば、p型半導体層)の種類、材料は特に限定されるものではないが、例えば、III-V族化合物半導体、II-VI族化合物半導体等、種々の半導体が挙げられる。具体的には、In
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化ガリウム系の半導体材料が挙げられ、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体が好ましい。各層の膜厚及び層構造は、当該分野で公知のものを利用することができる。
この発光素子は、半導体積層構造の異なる面に一対の電極がそれぞれ配置されていてもよいが、同一面側に一対の電極が配置されているもの、いわゆる片面電極タイプが好ましい。このような構成によって、フリップチップ実装を行うことができ、上述したダイボンド材によって、簡便に一対の電極への電気的な接続を図ることができる。
【0027】
発光素子がダイボンドされる基板は、通常、板状又はシート状の部材であり、いわゆる実装基板、パッケージ基材等を意味する。その材料は特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂などの樹脂(フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の剛性の材料、BTレジン、PPA、ポリイミド、PET等のフレキシブル材料等)、セラミックス、ガラス等の絶縁性材料により形成されているものが挙げられる。
【0028】
基板の表面には、少なくとも1つの発光素子の一対の電極に対応するように、互いに分離された少なくとも2つの配線パターンが存在する。また、基板の表面に配線が存在する限り、内部に配線が埋め込まれたものであってもよい。このような配線パターンの形状は、特に限定されず、種々の形態とすることができる。
配線は、半田接合が可能であり、導電性材料により形成されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属又は合金等が挙げられる。また、これらの材料により鍍金によって形成されたものでもよい。
【0029】
このような基板表面の互いに分離された配線と、発光素子の一対の電極とが、それぞれ、上述したダイボンド材で電気的に接続されている。
この場合、基板表面の互いに分離された配線のうちの一方と、発光素子の一対の電極の一方とが、基板表面の互いに分離された配線のうちの他方と、発光素子の一対の電極の他方とが、分離して、それぞれダイボンド材によってボンディングされていてもよいが、
図1に示したように、基板2上の互いに分離された配線3と、一対の電極1aとが、ダイボンド材4によって一体的にボンディングされているものが好ましい。
言い換えると、互いに分離された配線3上のみならず、配線3間の基板2の露出面が、ダイボンド材4で被覆されるように配置されていることが好ましい。これにより、正電極ごとに、あるいは負電極ごとに、ダイボンド材を配置してダイボンドすることなく、一度のダイボンド材の配置によりダイボンドすることができ、より簡便に製造することが可能となる。
【0030】
このような形態のダイボンドを実現するために、上述した本発明のダイボンド材の使用が有利となる。つまり、熱硬化性樹脂が、半田及び光反射材を均一に分散させて含有することにより、熱硬化性樹脂内で、配線上における半田の濡れ性により、配線と電極との接続を確実に図ることができ、一方、配線間であって、基板の露出面では、半田の濡れ性が良好ではない部位(例えば、絶縁性の基板の露出領域)では、半田がダイボンド材に分散しているため、半田の連結による配線間又は電極間の短絡を回避することができる。加えて、光反射材で発光素子からの光が基板に直接照射されることを防ぎ、基板の劣化を阻止することができる、極めて良好なダイボンドを実現することができる。
【0031】
一般に、配線材料は、半田に対して濡れ性が比較的良好であり、一方、基板を構成するような絶縁性材料は、半田に対する濡れ性が配線材料よりも悪いため又は半田をはじくため、上述したような配線間での半田の連結による短絡を回避することが可能である。あるいは、熱硬化性樹脂に対する半田の含有率を調整することにより、上述したような配線間又は電極間での半田の連結による短絡を効果的に回避することができる。
【0032】
また、配線間の基板露出面がダイボンド材で被覆されることにより、発光素子直下の基板の露出面(配線が配置されている以外の部位)に、ダイボンド材の光反射材が配置することとなり、基板の露出面への光の照射が回避され、光照射による基板の露出面の劣化を効果的に防止することができる。
【0033】
本発明の発光装置を製造するためには、まず、所望の互いに分離した配線がその表面に形成された基板と、半導体積層構造の同一面側に一対の電極が配置された発光素子とを準備する。
次いで、互いに分離した配線の表面に、ダイボンド材を塗布する。この場合の塗布は、ディスペンサを用いた塗布、印刷等の公知の方法を利用することができる。この際、ダイボンド材は、互いに分離した配線上及びそれら配線間も含めて塗布することが好ましい。
続いて、ダイボンド材が塗布された、互いに分離した配線上に、一対の電極が対向するように、適所に発光素子をフリップチップで載置する。
【0034】
その後、発光素子及び/又は基板を加熱することにより、発光素子と基板上の配線とを、半田接合すると同時に、熱硬化性樹脂の硬化により半田接合を補助する。この場合の加熱は、発光素子側から又は基板側からのいずれでも、双方からでもよい。加熱温度は、半田が溶融し、熱硬化性樹脂が硬化する温度程度とすることが好ましい。具体的には、140〜250℃程度が挙げられる。加熱時間は、数分から数秒程度が挙げられる。この加熱の際には、発光素子を加圧して基板に押し付けてもよい。加圧は、加熱と同時に行うことが好ましい。加圧する場合の加圧の程度は特に限定されないが、例えば、0.1MPa程度以上が挙げられる。
次いで、加熱及び/又は加圧を終了する。この際、発光素子側から又は基板側から、あるいは双方から積極的に冷却する、冷風を吹き付けるなどを行ってもよい。
【0035】
このような一連の工程によって、ダイボンド材が、発光素子の一対の電極と基板の配線との間に配置されるとともに、配線間の基板露出面をも被覆するため、発光素子のダイボンドと、発光素子からの光照射による基板の保護とを、同時に行うことが可能となる。
【0036】
以下に、本発明のダイボンド材及び発光装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施例1
透光性の熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を準備した。
エポキシ樹脂100重量部に、半田(Sn−Bi系半田、粒径10μm程度)を15重量部と、光反射材としてTiO
2(粒径0.5μm)とを20重量部均一に混合してダイボンド材を得た。
【0037】
実施形態1
本発明の発光装置を
図1Aに示す。
この発光装置は、半導体層の積層構造の一面側に一対の電極が配置された発光素子1と、実装基板2として、表面に互いに分離した一対の配線3が形成された基板によって構成されている。基板は、ガラスエポキシ樹脂から形成されており、一対の配線3は、膜厚35μm程度のCuによって形成されている。
【0038】
実装基板の一対の配線3には、発光素子1の一対の電極がそれぞれ対向するように、発光素子がフリップチップ実装されている。この実装は、配線3と、発光素子1の一対の電極との間に配置された上述したダイボンド材4によってボンディングされている。
ダイボンド材4中に分散した半田5は、配線3上で適度に連結し、配線3と電極とを電気的に接続するとともに、配線3間の基板の露出面上には、半田5が配置していないか、半田5の粒子(粒径:10μm程度)が、配線3及び電極の双方に接触していても、連結されていない状態で配置されている。
また、配線3間の基板の露出面上及び配線3と電極との間には、光反射材6が粒子状(粒径:0.5μm程度)で配置されている。
さらに、配線3上であって電極との間、配線3間、さらに、発光素子1の周辺には、半田及び光反射材が分散した熱硬化性樹脂が硬化し、配線と電極とを接着した状態で配置している。
【0039】
上述した発光装置は、例えば、
図2A〜
図2Dに示すように製造することができる。
まず、互いに分離した配線3がその表面に形成された実装基板2を準備する。
図2Aに示すように、この実装基板2の発光素子1の実装部位であって、配線3上及び配線3間に、ダイボンド材4を例えば、ディスペンサにより塗布する。この場合のダイボンド材4の塗布厚は、0.1mm程度である。
次いで、
図2Bに示すように、半導体積層構造の同一面側に一対の電極が配置された発光素子1を、実装基板2の配線3上に、フリップチップ実装するために、その一対の電極が配線3に対向するように載置する。
続いて、
図2Cに示すように、発光素子及び/又は基板を加熱することにより、発光素子と基板上の配線とを、半田接合する。また、この際、同時に、熱硬化性樹脂の硬化により半田接合を補助する。この場合の加熱は、例えば、190℃にて、10分間とする。また、この加熱の際には、例えば、0.1MPa程度の加重を発光素子に負荷する。
その後、
図2Dに示すように、加熱及び/又は加圧を終了し、常温で放置する。
【0040】
このような一連の工程によって、ダイボンド材が、発光素子の一対の電極と基板の配線との間に配置されるとともに、配線間の基板露出面をも被覆するため、発光素子のダイボンドと、発光素子からの光照射による基板の保護とを、同時に行うことが可能となる。
【0041】
実施形態2
本発明の発光装置を
図1Bに示す。
この発光装置は、半導体層の積層構造の一面側の電極1aと、実装基板の配線3との間に配置された半田5が、電極1aのほぼ全面を覆うように配置されている以外は、実質的に実施形態1の発光装置と同様の構成を有する。
【0042】
実施形態3
本発明の発光装置を
図1Cに示す。
この発光装置は、内部に配線13を備え、かつ、底面に配線13を露出する開口を中央部分に備えた基板12を、
図1Aの実装基板2に代えて用い、さらに、レンズ機能を備えたモールド材8を、発光素子1、ダイボンド材4等を被覆するように開口内全面に形成した以外は、実質的に実施形態1の発光装置と同様の構成を有する。
【0043】
このように、本発明のダイボンド材は、透光性の熱硬化性樹脂中に半田が分散していることにより、ダイボンド材として異方性を有することができるため、種々の形状の発光素子、種々の形状又は配線パターンを有する実装基板に対して、容易かつ簡便にダイボンドすることができる。
【0044】
本発明のダイボンド材は、透光性の熱硬化性樹脂を用いることにより、樹脂による光吸収を最小限に止め、かつ、光反射材を熱硬化性樹脂中に混合、拡散することにより、半田による光吸収をも最小限に止めることができる。また、
図1AのMに示すように、光反射材6により、光を反射させることが可能となる。従って、このようなダイボンド材を発光素子のダイボンド材として使用した場合に、光の取り出し効率を最大限に発揮させることができる。さらに、ダイボンド材に含まれる半田により、発光素子の実装基板への接合を行うと同時に、熱硬化性樹脂による硬化によって、より発光素子の実装基板への実装を補強することができる。これにより、実装基板に形成された配線への発光素子の確実なボンディングを簡便かつ確実に行うことが可能となる。
【0045】
また、このようなダイボンド材を、発光素子の実装基板への実装に用いる場合、実装基板上の配線間で露出している表面に配置させることにより、実装基板自体の光照射による劣化を効果的に防止することができる。これにより、実装基板の劣化を伴わずに、長期にわたる安定した実装を維持するができ、発光装置の品質を維持しながら高寿命化を実現することができる。