特許第6490470号(P6490470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490470半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490470
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20190318BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20190318BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01L21/285 C
   H01L21/28 301R
   C23C16/455
【請求項の数】5
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-65955(P2015-65955)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186969(P2016-186969A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−024667(JP,A)
【文献】 特開2014−060228(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/112114(WO,A1)
【文献】 特開2013−076157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205−21/3215
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 23/522−23/532
H01L 21/28−21/288
H01L 21/44−21/445
H01L 29/40−29/51
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、前記金属元素を含む無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、を時分割して所定回数行うことにより前記基板上にシード層を形成する工程と、
前記シード層が露出した基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する工程と、
を時分割して所定回数行うことにより、前記シード層上に金属含有窒化膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シード層を形成する工程は、さらに前記窒素含有ガスを供給して排気する工程を有し、
前記シード層を形成する工程では、前記有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、前記窒素含有ガスを供給し排気する工程と、を時分割して所定回数行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板上に前記金属元素を含むシード層を形成する工程では、前記有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、を1回ずつ行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板を収容する処理室と、
前記基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガス、前記金属元素を含む無機系金属含有ガスおよび窒素含有ガスを供給するガス供給系と、
前記ガス供給系を制御して、前記処理室に収容された基板に対して前記有機系金属含有ガスを供給し排気する処理と、前記基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する処理と、を時分割して所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含むシード層を形成する処理と、前記シード層が露出した基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する処理と、前記基板に対して、前記窒素含有ガスを供給し排気する処理と、を時分割して所定回数行うことにより、前記シード層上に金属含有窒化膜を形成する処理と、を行うよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室に収容された基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガスを供給し排気する手順と、
前記基板に対して、前記金属元素を含む無機系金属含有ガスを供給し排気する手順と、を時分割して所定回数行うことにより、前記基板上にシード層を形成する手順と、
前記シード層が露出した基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する手順と、
前記基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する手順と、
を時分割して所定回数行うことにより、前記シード層上に金属含有窒化膜を形成する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体装置の高集積化及び高性能化に伴い、電極や配線等として、様々な種類の金属含有膜が用いられている。その中でも、ゲート電極やDRAM(Dynamic Random Access Memory)のキャパシタ電極では、耐酸化性、電気抵抗率、仕事関数等の観点から金属炭化物系や金属窒化物系の金属含有膜が用いられることが多い(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−6783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリの高集積化や高性能化に伴い、従来よりも薄い金属含有膜が必要となっている。しかしながら、金属含有膜は、薄膜化に伴いその抵抗率が大きくなることが多い。これは薄膜の結晶粒径が小さくなってしまう場合があることや表面が酸化されてしまう場合があることに起因する。金属含有膜の抵抗は高くなることは望ましくなく、より低い抵抗率が求められている。
【0005】
本発明の目的は、金属含有膜の抵抗率の上昇を抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、前記金属元素を含む無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
を時分割して所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含むシード層を形成する工程と、
前記シード層が露出した基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する工程と、
を時分割して所定回数行うことにより、前記シード層上に金属含有窒化膜を形成する工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属含有膜の抵抗率の上昇を抑制することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1に示す基板処理装置が有するコントローラの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態におけるシーケンスを示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態におけるシーケンスを示す図である。
図6】本発明の第3の実施形態におけるシーケンスを示す図である。
図7】本発明の第4の実施形態におけるシーケンスを示す図である。
図8】本発明の他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図9】本発明のさらに他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
金属含有膜の抵抗率が高くなってしまう一因に、下地上に形成される金属含有膜の結晶粒径が小さくなってしまうということが考えられる。発明者らは、鋭意研究を行い、金属含有膜を形成する前に下地上に通常の金属含有膜より低い核密度を有するシード層(低核密度膜)を形成することにより、下地上に直接金属含有膜を形成する場合と比較して、シード層の上に直接形成させる金属含有膜の結晶粒径を大きくすることができることを見出した。金属含有膜の形成時は、シード層として形成された層を構成する核を種(シード)として金属含有膜が形成される(シーディング)ため、シード層の核密度が低いと金属含有膜の結晶粒径が大きくなると考えられる。金属含有膜の結晶粒径を大きくすることにより、下地上に直接金属含有膜を形成する場合と比較して、金属含有膜の抵抗率を低くすることが可能となる。
【0010】
低核密度のシード層は、主たる構成元素が同一であるような組成を有する層であってもよいし、金属含有膜と同じ金属元素を有するが主たる構成元素は完全同一ではないような層であってもよく、金属含有膜とは異なる金属元素を有する層であってもよい。低核密度のシード層を形成するためには、金属含有膜を形成する際に用いる金属原料より成膜速度が速くなるような金属原料を、シート層を形成する際の原料として用いるとよい。
【0011】
例えば、金属元素としてチタン(Ti)を有するチタン窒化膜(TiN膜)を金属含有膜として形成するとき、無機系Ti含有ガスおよび窒化ガスを用いる場合や、有機系Ti含有ガスおよび窒化ガスを用いる場合があるが、いずれの場合も成膜レートが0.02〜0.03Å/サイクルであるため、高密度に核が形成されやすい。一方、発明者らは、無機系Ti含有ガス、有機系Ti含有ガスおよび窒化ガスを用いてTiN膜を形成することにより、その成膜レートを2〜3Å/サイクルと速くすることが可能となることを見出した。成膜レートを速くすることにより低密度の核を形成することが可能となるため、シード層としてTiN膜を形成する場合は、無機系Ti含有ガス、有機系Ti含有ガスおよび窒化ガスを用いてTiN膜を形成することが好ましい。金属含有膜と同じ金属元素を有するが主たる構成元素は完全同一ではないような層としてシード層を形成する場合は、シード層として例えば無機系Ti含有ガスおよび有機系Ti含有ガスを用いてTi膜を形成することにより、同様に低核密度のシード層を形成することができる。すなわち、TiN膜と同じTiを有する層としてシード層を形成する場合、シード層として無機系Ti含有ガスおよび有機系Ti含有ガスを用いてTi膜を形成することができる。詳細は以下に説明する。
【0012】
<本発明の第1の実施形態>
以下、本発明の好適な第1の実施形態について図1および図2を用いて説明する。基板処理装置10は、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程である基板処理工程において使用される装置の一例として構成されている。
【0013】
(1)処理炉の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0014】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は耐熱性材料(例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等)からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0015】
処理室201内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。このように、反応管203には3本のノズル410,420,430と、3本のガス供給管310,320,330とが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは3種類のガス(処理ガス、原料)を供給することができるように構成されている。
【0016】
ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。例えば、反応管203の下方に、反応管203を支持する金属製のマニホールドを設け、各ノズルを、マニホー ルドの側壁を貫通するように設けてもよい。この場合、マニホールドに、後述する排気管231をさらに設けてもよい。この場合であっても、排気管231を、マニホールドではなく、反応管203の下部に設けてもよい。このように、処理炉202の炉口部を金属製とし、この金属製の炉口部にノズル等を取り付けてもよい。
【0017】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332および開閉弁であるバルブ314,324,334が設けられている。ガス供給管310,320,330のバルブ314,324,334より下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520,530がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520,530には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522,523および開閉弁であるバルブ514,524,534が設けられている。
【0018】
ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430が連結接続されている。ノズル410,420,430は、L字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、反応管203の内壁とウエハ200との間に形成される円環状の空間に、反応管203の内壁に沿って上方(ウエハ200の積載方向上方)に向かって立ち上がるように(つまりウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように)設けられている。すなわち、ノズル410,420,430は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
【0019】
ノズル410,420,430の側面にはガスを供給する(噴出させる)ガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。ガス供給孔410a,420a,430aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔410a,420a,430aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、反応管203の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量を均一化することが可能となる。
【0020】
このように、本実施形態におけるガス供給の方法は、反応管203の内壁と複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430にそれぞれ開口されたガス供給孔410a,420a,430aからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させており、反応管203内におけるガスの主たる流れをウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、各ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後に残留するガス(残ガス)は、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0021】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、第1の元素を含む第1の原料ガス(第1の原料)としての無機系原料ガスが、MFC312,バルブ314,ノズル410を介して処理室201内に供給される。無機系原料ガスとしては、例えば、第1の元素として金属元素であるチタン(Ti)を含み、かつ炭素(C)非含有の金属原料ガス、すなわち、無機系金属含有ガスである無機系金属原料ガス(無機系金属化合物、無機系チタン含有ガス、無機系チタン原料ガス)であって、ハロゲン系金属含有ガス(金属ハロゲン化物、ハロゲン系金属原料、ハロゲン系チタン含有ガス、ハロゲン系チタン原料ガス、ハロゲン系チタン原料とも称する)としての四塩化チタン(TiCl)が用いられる。Tiは遷移金属元素に分類される。ハロゲン系原料とはハロゲン基を含む原料である。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。
【0022】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、第1の元素を含む第2の原料ガス(第2の金属含有ガス、第2の原料)としての有機系原料ガスが、MFC322,バルブ324,ノズル420を介して処理室201内に供給される。有機系原料ガスとしては、例えば、第1の元素として金属元素であるTiを含み、かつCを含む(C含有)金属原料ガス、すなわち、有機系金属含有ガスである有機系金属原料ガス(有機金属化合物、有機系チタン含有ガス、有機系チタン原料ガス)としてのテトラキスジエチルアミノチタン(Ti[(CN]、略称:TDEAT)が用いられる。ここで、有機系金属原料としての有機系ガスは、アミン系ガスよりも広義であり、アミン系ガスは有機系ガスに含まれる。例えば、シクロペンタン(C10)は有機系であるがアミン系ではない。
【0023】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、窒素(N)を含む反応ガス(リアクタント)としてのN含有ガスが、MFC332,バルブ334,ノズル430を介して処理室201内に供給される。N含有ガスとしては、金属元素非含有のN含有ガス、例えば、アンモニア(NH)ガスを用いることができる。
【0024】
ガス供給管510,520,530からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N)ガスが、それぞれMFC512,522,532、バルブ514,524,534、ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。ガス供給管510,520,530から供給する不活性ガスは、後述する基板処理工程において、パージガス、希釈ガス、或いは、キャリアガスとして作用する。
【0025】
処理ガスとしてTiClやTDEATのように常温常圧下で液体状態である化合物を用いる場合は、液体状態のTiClやTDEATを気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、TiClガスやTDEATガスとして処理室201内に供給することとなる。
【0026】
主に、ガス供給管310,320,330,MFC312,322,332,バルブ314,324,334により処理ガス供給系が構成される。ノズル410,420,430を処理ガス供給系に含めて考えてもよい。処理ガス供給系を、単にガス供給系と称することもできる。
【0027】
ガス供給管310,320から上述のような原料ガスとしての金属含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310,320,MFC312,322,バルブ314,324により原料ガス供給系としての金属含有ガス供給系が構成される。ノズル410,420を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。
【0028】
ガス供給管310から原料ガスとして無機系原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管310,MFC312,バルブ314により無機系原料ガス供給系が構成される。ノズル410を無機系原料ガス供給系(無機系原料供給系)に含めて考えてもよい。ガス供給管320から無機系金属含有ガスである無機系金属原料ガスを流す場合、無機系原料ガス供給系を無機系金属含有ガス供給系としての無機系金属原料ガス供給系(無機系金属原料供給系)と称することもできる。ガス供給管320からハロゲン系金属含有ガスを流す場合、無機系金属原料ガス供給系をハロゲン系金属含有ガス供給系(ハロゲン系金属原料ガス供給系、ハロゲン系金属原料供給系、ハロゲン系原料ガス供給系、ハロゲン系原料供給系)と称することもできる。ガス供給管310からハロゲン系金属原料ガスとしてTiClガスを流す場合、ハロゲン系金属原料ガス供給系をTiClガス供給系と称することもできる。TiClガス供給系をTiCl供給系と称することもできる。
【0029】
ガス供給管320から原料ガスとして有機系原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管320,MFC322,バルブ324により有機系原料ガス供給系(有機系原料供給系)が構成される。ノズル420を有機系原料ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管320から有機系金属含有ガスとしての有機系金属原料ガスを流す場合、有機系原料ガス供給系を有機系金属含有ガス供給系としての有機系金属原料ガス供給系(有機系金属原料供給系)と称することもできる。ガス供給管320から有機系金属含有ガスとしてTDEATガスを流す場合、有機系金属原料ガス供給系をTDEATガス供給系と称することもできる。TDEATガス供給系をTDEAT供給系と称することもできる。
【0030】
ガス供給管330から反応ガスとしてN含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管330,MFC332,バルブ334により反応ガス供給系としてのN含有ガス供給系が構成される。ノズル430をN含有ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管330からN含有ガスとしてNHガスを流す場合、反応ガス供給系をNHガス供給系と称することもできる。NHガス供給系をNH供給系と称することもできる。
【0031】
また、主に、ガス供給管510,520,530,MFC512,522,523,バルブ514,524,534により不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系をキャリアガス供給系と称することもできる。この不活性ガスは、パージガスとしても作用することから不活性ガス供給系をパージガス供給系と称することもできる。
【0032】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0033】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0034】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0035】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420および430と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0036】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0037】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0038】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,512,522,532,バルブ314,324,334,514,524,534,APCバルブ243、圧力センサ245、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0039】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピに従って、MFC312,322,332,512,522,532による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,514,524,534の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作およびAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0040】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0041】
(2)基板処理工程(成膜工程)
半導体装置(デバイス)の製造方法の一工程として、基板上に、例えばゲート電極やキャパシタ電極を構成する金属窒化膜を形成する工程の一例について図4を用いて説明する。金属窒化膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0042】
本実施形態の好適な成膜シーケンス(単にシーケンスとも称する)は、ウエハ200に対して、金属元素(例えばTi)を含む有機系金属含有ガス(例えばTDEATガス)を供給する工程と、上記ウエハ200に対して上記金属元素を含む無機系金属含有ガス(例えばTiClガス)を供給する工程と、を時分割して所定回数行うことにより前記ウエハ200上にシード層(例えばチタン膜(Ti膜))を形成する工程と、上記シード層が露出した基板に対して、無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する工程と、を時分割して所定回数行うことにより、シード層上に金属含有窒化膜(例えばチタン窒化膜(TiN膜))を形成する工程とを有する。
【0043】
具体的には図4に示すシーケンスのように、TDEATガスを供給する工程とTiClガスを供給する工程とを時分割して所定回数(n回)行うことによりTi膜を形成する工程と、TiClガスを供給する工程とNHガスとを時分割して所定回数(n回)行うことによりTi膜の上にTiN膜を形成する工程とを有する。
【0044】
本明細書において、「処理(もしくは工程、サイクル、ステップ等と称する)を所定回数行う」とは、この処理等を1回もしくは複数回行うことを意味する。すなわち、処理を1回以上行うことを意味する。図4は、各処理(サイクル)をnサイクル、nサイクルずつ繰り返す例を示している。n、nの値は、最終的に形成されるTi膜、TiN膜において必要とされる膜厚に応じて適宜選択される。すなわち、上述の各処理を行う回数は、目標とする膜厚に応じて決定される。
【0045】
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0046】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0047】
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0048】
また、本明細書において金属膜という用語は、金属原子を含む導電性の物質で構成される膜を意味し、これには、導電性の金属窒化膜(メタルナイトライド膜)、導電性の金属酸化膜(メタルオキサイド膜)、導電性の金属酸窒化膜(メタルオキシナイトライド膜)、導電性の金属複合膜、導電性の金属合金膜、導電性の金属シリサイド膜(メタルシリサイド膜)、導電性の金属炭化膜(メタルカーバイド膜)、導電性の金属炭窒化膜(メタルカーボナイトライド膜)等が含まれる。なお、Ti膜は導電性の金属膜であって金属単体膜であり、TiN膜は導電性の金属膜であって金属窒化膜である。
【0049】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してマニホールド209の下端開口を閉塞した状態となる。
【0050】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。続いて、回転機構267によりボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0051】
(シード層形成ステップ)
続いて、低核密度膜であるシード層として用いられるTi層を形成するステップを実行する。シード層形成ステップは、以下に説明する有機系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップを含む。
【0052】
(有機系金属含有ガス供給ステップ)
バルブ324を開き、ガス供給管320内に有機系金属含有ガスであるTDEATガスを流す。ガス供給管320内を流れたTDEATガスは、MFC322により流量調整される。流量調整されたTDEATガスは、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対してTDEATガスが供給されることとなる。すなわちウエハ200の表面はTDEATガスに暴露されることとなる。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にNガスを流す。ガス供給管520内を流れたNガスは、MFC522により流量調整される。流量調整されたNガスはTDEATガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。なお、このとき、ノズル410,430内へのTDEATガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管310,ガス供給管330,ノズル410,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0053】
このときAPCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜10000Paの範囲内の(所定の)圧力、好ましくは1〜500Paの範囲内の(所定の)圧力、より好ましくは40〜60Paの範囲内の(所定の)圧力とする。圧力が10000Paより高いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合があり、圧力が1Paより低いと、TDEATガスの反応速度を十分に得られない可能性がある。なお、本明細書では、数値の範囲として、例えば1〜10000Paと記載した場合は、1Pa以上10000Pa以下を意味する。すなわち、数値の範囲内には1Paおよび10000Paが含まれる。圧力のみならず、流量、時間、温度等、本明細書に記載される全ての数値について同様である。
【0054】
MFC322で制御するTDEATガスの供給流量は、例えば1〜10000sccmの範囲内の(所定の)流量、好ましくは1〜1000sccmの範囲内の(所定の)流量、より好ましくは1〜100sccmの範囲内の(所定の)流量とする。流量が10000sccmより多いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合があり、流量が1sccmより少ないとTDEATガスの反応速度を十分に得られない可能性がある。
【0055】
MFC512,522,532で制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば10〜20000sccmの範囲内の(所定の)流量、好ましくは400〜15000sccmの範囲内の(所定の)流量、より好ましくは300〜600sccmの範囲内の(所定の)流量とする。流量が20000sccmより多いとTDEATガスの反応速度を十分に得られない可能性があり、流量が10sccmより少ないと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合がある。
【0056】
TDEATガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.1〜120秒の範囲内の(所定の)時間、好ましくは0.5〜30秒の範囲内の(所定の)時間、より好ましくは8〜12秒の範囲内の(所定の)時間とする。供給時間が60秒より長くなると、C、N等有機物およびアミン等が多く取り込まれてしまう可能性があり、供給時間が0.1秒より短くなると成膜レートが低くなる可能性がある。
【0057】
ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば200〜600℃の範囲内の(所定の)温度、好ましくは250〜550℃の範囲内の(所定の)温度、より好ましくは360〜400℃の範囲内の(所定の)温度となるよう設定する。600℃以上ではTDEATガスの熱分解が促進されてしまうことにより、成膜レートが高くなりすぎて膜厚の制御性が悪化して均一性が悪化したり、不純物が多量に取り込まれて抵抗率が高くなってしまう場合がある。一方、200℃未満では反応性が低くなり膜形成が困難となる可能性がある。処理室201内に流れているガスは、TDEATガスとNガスのみであり、TDEATガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜、ここでは第1のTiN膜)上に、第1のTi含有層が形成される。
【0058】
有機系金属含有ガス形成ステップで形成されるTi含有層は、Ti単一原子のみを含むTi層となる場合もあるが、各原料由来のその他の原子を含む場合もあり、TDEATガスを用いる有機系含有ガス供給ステップでは、C、N等有機物およびアミンが含まれる場合がある。したがって、Ti含有層はTDEATの吸着層であるTDEAT層を含む。TDEAT層は、TDEAT分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層も含む。すなわち、TDEAT層は、TDEAT分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。TDEAT層を構成するTDEAT分子はC,N,Hの結合が一部切れたものも含む。
【0059】
(残留ガス除去ステップ)
その後、バルブ324を閉じてTDEATガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応のTDEATガスを処理室201内から排除する。なお、このときバルブ514,524,534は開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留するTDEATガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0060】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップにおいて悪影響が生じることはない。処理室201内に供給するNガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、その後のステップにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、Nガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0061】
(ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ)
バルブ314を開き、ガス供給管310内にハロゲン系金属含有ガスであるTiClガスを流す。ガス供給管310内を流れたTiClガスは、MFC312により流量調整される。流量調整されたTiClガスは、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTiClガスが供給されることとなる。すなわちウエハ200の表面はTiClガスに暴露されることとなる。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にNガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管510内を流れたNガスは、MFC512により流量調整される。流量調整されたNガスはTiClガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。なお、このとき、ノズル420,430内へのTiClガスの侵入を防止するために、バルブ524,534を開き、ガス供給管520,ガス供給管530内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管320,ガス供給管330,420,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0062】
このときAPCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜70000Paの範囲内の(所定の)圧力、好ましくは1〜1333Paの範囲内の(所定の)圧力、より好ましくは20〜50Paの範囲内の(所定の)圧力とする。圧力が70000Paより高いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合があり、圧力が0.01Paより低いと、TiClガスの反応速度を十分に得られない可能性がある
【0063】
MFC312で制御するTiClガスの供給流量は、例えば1〜10000sccmの範囲内の(所定の)流量、好ましくは150〜2000sccmの範囲内の(所定の)流量、より好ましくは300〜600sccmの範囲内の(所定の)流量とする。流量が10000sccmより多いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合があり、流量が1sccmより少ないとTiClガスの反応速度を十分に得られない可能性がある。
【0064】
MFC512,522,532で制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば1〜20000sccmの範囲内の(所定の)流量、好ましくは500〜15000sccmの範囲内の(所定の)流量、より好ましくは600〜800sccmの範囲内の(所定の)流量とする。流量が20000sccmより多いとTiClガスの反応速度を十分に得られない可能性があり、流量が1sccmより少ないと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合がある。
【0065】
TiClガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.1〜120秒の範囲内の(所定の)、好ましくは1〜30秒の範囲内の(所定の)、より好ましくは2〜4秒の範囲内の(所定の)時間とする。供給時間が120秒より長くなると、Cl等が多く取り込まれてしまう可能性があり、供給時間が0.1秒より少なくなると成膜レートが低くなる可能性がある。
【0066】
ヒータ207の温度は、有機系金属含有ガス供給ステップと同様の温度に設定する。処理室201内に流しているガスはTiClガスとNガスのみであり、TiClガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上に形成された第1のTi含有層の少なくとも一部とTiClガスが反応(置換反応)し、Ti層がシード層として形成される。
【0067】
ハロゲン系金属含有ガス供給ステップで形成されたTi層は主たる構成元素がTiであり、Ti単一原子のみを含むTi層となる場合もあるが、各原料由来のその他の原子を含むこともある。すなわち、有機系金属含有ガス供給ステップで形成された第1のTi含有層にC,N,Hが含まれており、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップでTiClガスが置換反応しなかったC,N,Hが残留してTi層の構成要素となる場合もあるし、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップでClが取り込まれてTi層の構成要素となる場合もある。このように、ハロゲン系金属含有ガスが有するリガンドより大きなリガンドであるC,N,Hを含むリガンドを有する有機系金属含有ガスを用いる有機系金属含有ガス供給ステップを行ってTi層を形成することにより、C,N,Hを含むリガンドがTi層に取り込まれ、成膜レートが速くなり、結晶粒径の大きな膜、すなわち低核密度の膜としてのTi層を形成することが可能となる。なお、Ti層は主たる構成元素がTiではあるが、各原料由来のその他の原子を含むことがあるため、TiN層、TiC層、TiCN層等とも称することができる。
【0068】
(残留ガス除去ステップ)
Ti層が形成された後、バルブ314を閉じ、TiClガスの供給を停止する。そして、有機系金属含有ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内、Ti層が形成されたウエハ200が存在する空間に残留する未反応もしくはTi層の形成に寄与した後のTiClガスを処理室201内から排除する。このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよい点は、有機系金属含有ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様である。
【0069】
(所定回数実施)
上述の有機系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップを順に時分割して行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、すなわち、有機系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップの処理を1サイクルとして、これらの処理をnサイクル(nは1以上の整数)だけ実行することにより、ウエハ200上に、核密度が低いシード層としてTi層を形成する。上述のサイクルは、1回の実行で十分に目的を達成できる場合があるが複数回繰り返してもよい。
【0070】
サイクルを複数回行う場合、少なくとも2サイクル目以降の各ステップにおいて、「ウエハ200に対してガスを供給する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層に対して、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味し、「ウエハ200上に所定の層を形成する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層の上、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面の上に所定の層を形成する」ことを意味している。この点は、後述する例においても同様である。
【0071】
(金属窒化膜形成ステップ)
続いて、上述の各ステップで形成されたシード層(Ti層)の上に金属窒化膜(TiN膜)を形成するステップを実行する。金属窒化膜形成ステップは、以下に説明するハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップ、N含有ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップを含む。
【0072】
(ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ)
先述のハロゲン系金属含有ガス供給ステップと同様の処理手順および処理条件により、ハロゲン系金属含有ガスとして用いられているTiClガスを処理室201内に供給する。このとき、処理室201内に流しているガスはTiClガスとNガスのみであり、TiClガスの供給により、ウエハ200上に、第2のTi含有層が形成される。1サイクル目のハロゲン系金属含有ガス供給ステップでは第2のTi含有層はシード層の上に直接に(ダイレクトに)形成される。第2のTi含有層は、Ti単体からなるTi単体層であってもよいし、Clを含むTi層であってもよいし、TiClの吸着層であってもよいし、それらの複合層であってもよい。
【0073】
Clを含むTi層とは、Tiにより構成されClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるClを含むTi薄膜をも含む総称である。Tiにより構成されClを含む連続的な層を、Clを含むTi薄膜という場合もある。Clを含むTi層を構成するTiは、Clとの結合が完全に切れていないものの他、Clとの結合が完全に切れているものも含む。
【0074】
TiClの吸着層は、TiCl分子で構成される連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、TiClの吸着層は、TiCl分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。TiClの吸着層を構成するTiCl分子は、TiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、TiClの吸着層は、TiClの物理吸着層であってもよいし、TiClの化学吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
【0075】
(残留ガス除去ステップ)
続いて、先述のハロゲン系金属含有ガス供給ステップの後の残留ガス供給ステップと同様の処理により処理室201内に残留するTiClガスを処理室201内から排除する。
【0076】
(N含有ガス供給ステップ)
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ334を開き、ガス供給管330内にN含有ガスであるNHガスを流す。ガス供給管330内を流れたNHガスは、MFC332により流量調整される。流量調整されたNHガスは、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給される。処理室201内に供給されたNHガスは熱で活性化された後、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、熱で活性化されたNHガスが供給されることとなる。すなわちウエハ200の表面は熱で活性化されたNHガスに暴露されることとなる。このとき同時にバルブ534を開き、ガス供給管530内にNガスを流す。ガス供給管530内を流れたNガスは、MFC532により流量調整される。NガスはNHガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410,420内へのNHガスの侵入を防止するために、バルブ514,524を開き、ガス供給管510,520内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管310,320,ノズル410,420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0077】
NHガスを流すときは、APCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば0.01〜70000Paの範囲内の(所定の)圧力、好ましくは1〜1330Paの範囲内の(所定の)圧力、より好ましくは50〜100Paの範囲内の(所定の)圧力とする。圧力70000Paより高いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合があり、圧力が0.01Paより低いと、十分な成膜レートが得られない可能性がある。
【0078】
MFC332で制御するNHガスの供給流量は、例えば10〜50000sccmの範囲内の(所定の)流量、好ましくは300〜10000sccmの範囲内の(所定の)流量、より好ましくは1000〜8000sccmの範囲内の(所定の)流量とする。流量は、多いほど原料ガスに由来する不純物のTiN膜中への取り込みを減らすことができるため好ましいが、50000sccmより多いと後述する残留ガス除去ステップで十分に残留ガスを除去することができない可能性がある。流量が0.1slmより少ないと十分に反応が出来ない可能性がある。
【0079】
MFC512,522,532で制御するNガスの流量は、それぞれ例えば10〜20000sccmの範囲内の(所定の)流量、好ましくは400〜15000sccmの範囲内の(所定の)流量、より好ましくは400〜7500sccmの範囲内の(所定の)流量とする。流量が20000sccmより多いと成膜レートが低くなりすぎる可能性があり、流量が10sccmより少ないとNHガスが十分にウエハ200へ供給されない可能性がある。
【0080】
NHガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.001〜300秒の範囲内の(所定の)時間、好ましくは0.1〜60秒の範囲内の(所定の)時間、より好ましくは10〜25秒の範囲内の(所定の)時間とする。供給時間は長いほど原料ガスに由来する不純物のTiN膜中への取り込みを減らすことができるため好ましいが、300秒より長いとスループットが悪化する可能性がある。供給時間が0.001秒より短いと、TiClガスと十分に反応出来ない可能性がある。
【0081】
ヒータ207の温度は、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0082】
このとき処理室201内に流しているガスは、NHガスとNガスのみである。NHガスは、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップでウエハ200上に形成された第2のTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNHガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiとNとを含むTiN層が金属層が形成される。1サイクル目では、TiN層は核密度が低いシード層(Ti層)の上に直接形成される。TiN層には、NHガスと置換反応せずに残留するClも含まれる場合がある。
【0083】
(残留ガス除去ステップ)
TiN層を形成した後、バルブ334を閉じて、NHガスの供給を停止する。そして、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内、すなわちTiN層が形成されたウエハ200が存在する空間に残留する未反応のNHガス、反応副生成物、TiN層の形成に寄与した後のNHガス等を処理室201から排除する。このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよい点は、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様である。
【0084】
(所定回数実施)
上述のハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップ、N含有ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップを順に時分割して行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、すなわち、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップ、N含有ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップの処理を1サイクルとして、これらの処理をnサイクル(nは1以上の整数)だけ実行することにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.1〜10nm)のTiN膜を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。ハロゲン系金属含有ガスのみを金属含有ガスとして用いて形成するTiN層より大きな結晶粒径を有するTi層の上に、直接にTiN層を形成することにより、先に形成されたTi層の核を種(シード)としてTiN層が形成されるため、TiN層の結晶粒径をTi層の結晶粒径と同様に大きくすることができる。すなわち、TiN層の核密度を低くすることが可能となる。上述の各サイクルで形成されるTiN層の結晶粒径は、直接接する下地の結晶粒径と同様の大きさとなる(下地の結晶粒径の大きさに引きずられる)ため、上記の処理手順により形成されたTiN膜は、シード層としてのTi層と同様の低核密度を有する膜となる。
【0085】
(パージおよび大気圧復帰)
バルブ514,524,534を開き、ガス供給管510,520,530のそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0086】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0087】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0088】
(A)ウエハ200に通常の金属膜より核密度が低いシード層(Ti層)を形成することで、シード層を形成しない場合と比較して、シード層の上に直接形成される金属膜(TiN膜)の結晶粒径を大きくすることができ、シード層を形成しない場合と比較して薄膜化に伴う金属膜の抵抗率の上昇を抑制することができる金属膜を提供することができる。
(B)シード層を形成する際、有機系金属含有ガスを無機系金属含有ガスより先に供給してシード層を形成することにより(有機ファースト)、層の表面ラフネスを改善することができる。
【0089】
<本発明の第2の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、シード層を形成する工程において、有機系金属含有ガス供給ステップとハロゲン系金属含有ガス供給ステップとを順に時分割して所定回数行う例について説明した。第2の実施形態について、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分について以下に説明する。
【0090】
第1の実施形態に対して、第2の実施形態においては、図5に示すように、シード層を形成する工程においてハロゲン系金属含有ガス供給ステップと有機系金属含有ガス供給ステップとを順に時分割して所定回数行う。より具体的には、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、有機系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップの処理を1サイクルとして、これらの処理をnサイクル(nは1以上の整数)だけ実行することにより、ウエハ200上に、核密度が低いシード層(Ti層)を形成する。
【0091】
以上のように、第1の実施形態においては、有機系金属含有ガス供給ステップを行った後にハロゲン系金属含有ガス供給ステップを行ったのに対して、第2の実施形態においては、ハロゲン系金属含有ガスの供給ステップを行った後に有機系金属含有ガス供給ステップを行う。
【0092】
本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0093】
(A)ウエハ200に通常の金属膜より核密度が低いシード層(Ti層)を形成することで、シード層を形成しない場合と比較して、シード層の上に直接形成される金属膜(TiN膜)の結晶粒径を大きくすることができ、シード層を形成しない場合と比較して薄膜化に伴う金属膜の抵抗率の上昇を抑制することができる金属膜を提供することができる。
【0094】
<本発明の第3の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、シード層を形成する工程において、有機系金属含有ガス供給ステップとハロゲン系金属含有ガス供給ステップとを順に時分割して所定回数行う例について説明した。第3の実施形態について、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分について以下に説明する。
【0095】
第1の実施形態に対して、第3の実施形態においては、図6に示すように、シード層を形成する工程において、有機系金属含有ガス供給ステップ、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップに加えて、N含有ガス供給ステップを順に時分割して所定回数行う。より具体的には、有機系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、N含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップを順に時分割して行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上に、核密度が低いシード層(TiN層)を形成する。N含有ガス供給ステップは、シード層の上に直接金属含有膜を形成する際に行うN含有ガス供給ステップと同様の手順および処理条件を用いて行う。
【0096】
(本実施形態による効果)
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0097】
(A)ウエハ200に通常の金属膜より核密度が低いシード層(TiN層)を形成することで、シード層を形成しない場合と比較して、シード層の上に直接形成される金属膜(TiN膜)の結晶粒径を大きくすることができ、シード層を形成しない場合と比較して薄膜化に伴う金属膜の抵抗率の上昇を抑制することができる金属膜を提供することができる。
(B)シード層を形成する際、有機系金属原料ガスを無機系金属原料ガスより先に供給してシード層を形成することにより(有機ファースト)、層の表面ラフネスを改善することができる。
【0098】
<本発明の第4の実施形態>
本発明の第3の実施形態では、シード層を形成する工程において、有機系金属含有ガス供給ステップと、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップと、N含有ガス供給ステップとを順に時分割して所定回数行う例について説明した。第4の実施形態について、第3の実施形態と同様の部分については説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分について以下に説明する。
【0099】
第3の実施形態に対して、第4の実施形態においては、図7に示すように、シード層を形成する工程において、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップと、有機系金属含有ガス供給ステップと、N含有ガス供給ステップとを順に時分割して所定回数行う。より具体的には、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、有機系金属含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、N含有ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップの処理を1サイクルとして、これらの処理をnサイクル(nは1以上の整数)だけ実行することにより、ウエハ200上に、核密度が低いシード層(TiN層)を形成する。
【0100】
以上のように、第3の実施形態においては、シード層を形成する工程において、有機金属含有ガス供給ステップ、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、N含有ガス供給ステップとの順番で各ステップが行われたのに対して、第4の実施形態では、シード層を形成る工程において、ハロゲン系金属含有ガス供給ステップ、有機金属含有ガス供給ステップ、N含有ガス供給ステップとの順番で各ステップが行われる、
(本実施形態による効果)
本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0101】
(A)ウエハ200に通常の金属膜より核密度が低いシード層(TiN層)を形成することで、シード層を形成しない場合と比較して、シード層の上に直接形成される金属膜(TiN膜)の結晶粒径を大きくすることができ、シード層を形成しない場合と比較して薄膜化に伴う金属膜の抵抗率の上昇を抑制することができる金属膜を提供することができる。
【0102】
<本発明の他の実施形態>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0103】
上述の実施形態では、ウエハ200に対して無機系金属含有ガスの供給と有機系金属含有ガスの供給とを時分割して所定回数行うことによりウエハ200上にシード層を形成する例について説明した。このとき、無機系金属含有ガスの供給回数と有機系金属含有ガスの供給回数とを同じ回数にしてもよいし、異なる回数としてもよい。有機系金属含有ガスの供給回数を無機系金属含有ガスの供給回数より多くすると、より多くのC,N,Hを含むリガンドがシード層に取り込まれるため、よりシード層の結晶粒径を大きくすること子が可能となる。すなわち、より低核密度のシード層を形成することが可能となる。具体的には、1回のサイクルに含まれる無機系金属含有ガスの供給回数1回に対して、有機系金属含有ガスの供給回数を2回以上とする。
【0104】
上述の実施形態では、ウエハ200に対して無機系金属含有ガスの供給、有機系金属含有ガスの供給、窒素含有ガスの供給を時分割して所定回数行うことによりウエハ200上に金属窒化膜を形成する例について説明した。このとき、無機系金属含有ガスの供給回数、有機系金属含有ガスの供給回数、窒素含有ガスの供給回数とを同じ回数にしてもよいし、異なる回数としてもよい。回数を変える(調整、制御)することにより、得られる金属窒化膜の抵抗率を変調(コントロール、制御、調整、チューニング)することが可能となる。例えば、有機系金属含有ガスの供給回数を無機系金属含有ガスの供給回数より多くすると、より多くのCが金属窒化膜に取り込まれるため、より金属窒化膜の抵抗率を下げることが可能となる。無機系金属含有ガスの供給回数を有機系金属含有ガスの供給回数より多くすると、金属窒化膜に取り込まれるCが少なくなるため、より金属窒化膜の抵抗率を上げることが可能となる。窒素含有ガスの供給回数を無機系金属含有ガスもしくは有機系金属含有ガスの供給回数より多くすると、より窒化が促進され、より金属窒化膜の抵抗率を上げることが可能となる。
【0105】
上述の実施形態では、ウエハ200に形成されたシード層の上に直接金属膜を形成する工程において、ハロゲン系金属含有ガスとN含有ガスとを時分割して所定回数ずつ供給する例について説明した。これに対して、ウエハ200に形成されたシード層の上に直接金属膜を形成する工程において、ハロゲン系金属含有ガスとN含有ガスとを同時に供給してもよい。
【0106】
上述の実施形態では、ウエハ200に形成されたシード層の上に直接金属膜を形成する工程において、ハロゲン系金属含有ガスとN含有ガスとを時分割して所定回数ずつ供給する例について説明した。これに対して、ウエハ200に形成されたシード層の上に直接金属膜を形成する工程において、ハロゲン系金属原料ガスの代わりに有機系金属含有ガスを用いてもよい。さらに、有機系含有ガスとN含有ガスとを同時に供給してもよい。
【0107】
上述の実施形態では、金属元素としてTiを用いる例について説明した。本発明は上述に限定されず、Ti以外の元素として、タンタル(Ta)、タングステン(W)、コバルト(Co)、イットリウム(Y)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)等の元素を含む含む窒化膜、酸化膜、炭化膜、ホウ化膜のいずれかの膜、もしくはこれらの複合膜を形成する場合にも好適に適用可能である。
【0108】
上述の元素を含む膜を形成する場合、原料ガスとしてチタン(Ti)含有ガスの他にも、タンタル(Ta)含有ガス、タングステン(W)含有ガス、コバルト(Co)含有ガス、イットリウム(Y)含有ガス、ルテニウム(Ru)含有ガス、アルミニウム(Al)含有ガス、ハフニウム(Hf)含有ガス、ジルコニウム(Zr)含有ガス、モリブデン(Mo)含有ガス、シリコン(Si)含有ガス等を用いることが可能である。
【0109】
上述の元素を含む膜を形成する場合、無機系含有ガスとしてのハロゲン系原料ガスとしては、例えば、TiClの他に、四フッ化チタニウム(TiF)、五塩化タンタル(TaCl)、五フッ化タンタル(TaF)、六塩化タングステン(WCl)、六フッ化タングステン(WF)、二塩化コバルト(CoCl)、二塩化コバルト(CoF)、三塩化イットリウム(YCl)、三フッ化イットリウム(YF)、三塩化ルテニウム(RuCl)、三フッ化ルテニウム(RuF)、三塩化アルミニウム(AlCl)、三フッ化アルミニウム(AlF)、四塩化ハフニウム(HfCl)、四フッ化ハフニウム(HfF)、四塩化ジルコニウム(ZrCl)、四フッ化ジルコニウム(ZrF)、テトラクロロシランすなわちシリコンテトラクロライドもしくは四塩化ケイ素(SiCl、略称:STC)、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)、ヘキサクロロジシランすなわち六塩化二ケイ素(SiCl、略称:HCDS)等を用いることも可能である。
【0110】
上述の元素を含む膜を形成する場合、有機系含有ガスとしては、例えば、TDEATの他に、例えばテトラキスジメチルアミノチタン(Ti[N(CH、略称:TDMAT)、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC、略称:PET)、トリメチルアルミニウム((CHAl、略称:TMA)、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf[N(CH)CHCH、略称:TEMAH)、テトラキスジメチルアミノハフニウム(Hf[N(CH、TDMAH)、テトラキスジエチルアミノハフニウム(Hf[N(C)、略称:TDEAH)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr[N(CH)CHCH、略称:TEMAZ)、テトラキスジメチルアミノジルコニウム(Zr[N(CH、TDMAZ)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(Zr[N(C)、略称:TDEAZ)、トリスジメチルアミノシクロペンタジエニルジルコニウム((C)Zr[N(CH))、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)、ビス(ターシャリブチルアミノ)シラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)、ビス(ターシャリブチルイミノ)ビス(ターシャリブチルアミノ)タングステン((CNH)W(CN)、)、タングステンヘキサカルボニル(W(CO))、ビス(エチルシクロペンタジエニル)コバルト(C1418Co)、コバルトヘキサカルボニル(CoCO))、トリス(ブチルシクロペンタジエニル)イットリウム(Y(CCH(CHCH)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(C1418Ru)等を用いることが可能である。
【0111】
上述の元素を含む膜を形成する場合、反応ガスとしては、例えば、NHの他に、窒素(N)、亜酸化窒素(NO)や、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等のN−H結合を含むガスを用いることができる。また、N−H結合を含むガスとしては、上述のガスの他にも、有機ヒドラジン系ガス、例えば、モノメチルヒドラジン((CH)HN、略称:MMH)ガス、ジメチルヒドラジン((CH、略称:DMH)ガス、トリメチルヒドラジン((CH(CH)H、略称:TMH)ガス等のメチルヒドラジン系ガスや、エチルヒドラジン((C)HN、略称:EH)ガス等のエチルヒドラジン系ガスを用いることができる。また、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)ガス、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)ガス、モノエチルアミン(CNH、略称:MEA)ガス等のエチルアミン系ガス、トリメチルアミン((CHN、略称:TMA)ガス、ジメチルアミン((CHNH、略称:DMA)ガス、モノメチルアミン(CHNH、略称:MMA)ガス等のメチルアミン系ガス、トリプロピルアミン((CN、略称:TPA)ガス、ジプロピルアミン((CNH、略称:DPA)ガス、モノプロピルアミン(CNH、略称:MPA)ガス等のプロピルアミン系ガス、トリイソプロピルアミン([(CHCH]N、略称:TIPA)ガス、ジイソプロピルアミン([(CHCH]NH、略称:DIPA)ガス、モノイソプロピルアミン((CHCHNH、略称:MIPA)ガス等のイソプロピルアミン系ガス、トリブチルアミン((CN、略称:TBA)ガス、ジブチルアミン((CNH、略称:DBA)ガス、モノブチルアミン(CNH、略称:MBA)ガス等のブチルアミン系ガス、または、トリイソブチルアミン([(CHCHCHN、略称:TIBA)ガス、ジイソブチルアミン([(CHCHCHNH、略称:DIBA)ガス、モノイソブチルアミン((CHCHCHNH、略称:MIBA)ガス等のイソブチルアミン系ガスを用いることができる。すなわち、アミン系ガスとしては、例えば、(CNH3−x、(CHNH3−x、(CNH3−x、[(CHCH]NH3−x、(CNH3−x、[(CHCHCHNH3−x(式中、xは1〜3の整数)の組成式で表されるガスのうち、少なくとも1種類のガスを用いることが可能である。有機ヒドラジン系ガスやアミン系ガスを用いると、反応性を高めることができるとともに、Cを膜中に取り込むことができるためC濃度の制御により膜の仕事関数を調整することができる。
【0112】
例えば、適用可能なシード層および金属膜としては、Ti膜、TiN膜、TiC膜、TiCN膜の他にも、例えば、Doped−TiCN膜、タンタル膜(Ta膜)タンタル窒化膜(TaN膜)、タンタル炭化膜(TaC膜)、タンタル炭窒化膜(TaCN膜)、Doped−TaCN膜、タングステン膜(W膜)、タングステン窒化膜(WN膜)、タングステン炭化膜(WC膜)、タングステン炭窒化膜(WCN膜)、Doped−WCN膜、コバルト膜(Co膜)、コバルト窒化膜(CoN膜)、コバルト炭化膜(CoC膜)、コバルト炭窒化膜(CoCN膜)、Doped−CoCN膜、イットリウム膜(Y膜)、イットリウム窒化膜(YN膜)、イットリウム炭化膜(YC膜)、イットリウム炭窒化膜(YCN膜)、Doped−YCN膜、ルテニウム膜(Ru膜)、ルテニウム窒化膜(RuN膜)、ルテニウム炭化膜(RuC膜)、ルテニウム炭窒化膜(RuCN膜)、Doped−RuCN膜、アルミニウム膜(Al膜)、アルミニウム窒化膜(AlN膜)、アルミニウム炭化膜(AlC膜)、アルミニウム炭窒化膜(AlCN膜)、Doped−AlCN膜、ハフニウム膜(Hf膜)、ハフニウム窒化膜(HfN膜)、ハフニウム炭化膜(HfC膜)、ハフニウム炭窒化膜(HfCN膜)、Doped−HfCN膜、ジルコニウム膜(Zr膜)、ジルコニウム窒化膜(ZrN膜)、ジルコニウム炭化膜(ZrC膜)、ジルコニウム炭窒化膜(ZrCN膜)、Doped−ZrCN膜、モリブデン膜(Mo膜)、モリブデン窒化膜(MoN膜)、モリブデン炭化膜(MoC膜)、モリブデン炭窒化膜(MoCN膜)、Doped−MoCN膜、シリコン膜(Si膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン炭化膜(SiC膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、Doped−SiCN膜、シリコン炭酸窒化膜(SiOCN膜)等の膜が挙げられる。
【0113】
また、上述の実施形態では、不活性ガスとして、Nガスを用いる例について説明しているが、これに限らず、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0114】
上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置であって、1つの反応管内に処理ガスを供給するノズルが立設され、反応管の下部に排気口が設けられた構造を有する処理炉を用いて成膜する例について説明したが、他の構造を有する処理炉を用いて成膜する場合にも本発明を適用可能である。例えば、同心円状の断面を有する2つの反応管(外側の反応管をアウタチューブ、内側の反応管をインナチューブと称する)を有し、インナチューブ内に立設されたノズルから、アウタチューブの側壁であって基板を挟んでノズルと対向する位置(線対称の位置)に開口する排気口へ処理ガスが流れる構造を有する処理炉を用いて成膜する場合にも本発明を適用可能である。また、処理ガスはインナチューブ内に立設されたノズルから供給されるのではなく、インナチューブの側壁に開口するガス供給口から供給されるようにしてもよい。このとき、アウタチューブに開口する排気口は、処理室内に積層して収容された複数枚の基板が存在する高さに応じて開口していてもよい。また、排気口の形状は穴形状であってもよいし、スリット形状であってもよい。
【0115】
また、上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を成膜する場合にも、好適に適用できる。これらの場合においても、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処
理条件とすることができる。
【0116】
例えば、図8に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内にガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート332aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート332bと、が接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様の原料ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様の反応ガス供給系が接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内にガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0117】
また例えば、図9に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート432aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート432bと、が接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様の原料ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様の反応ガス供給系が接続されている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0118】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができる。
【0119】
これらの各種薄膜の形成に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0120】
また、本発明は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0121】
以下、本発明の望ましい形態について付記する。
【0122】
〔付記1〕
基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、前記金属元素を含む無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
を時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含むシード層を形成する工程と、
前記シード層が形成された基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する工程と、
を時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数行うことにより、前記シード層をシードとして前記基板上に金属含有窒化膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法もしくは基板処理方法。
【0123】
〔付記2〕
付記1に記載の方法であって、
前記シード層の核密度を第1の核密度とし、前記基板上にシード層を用いずに前記金属含有窒化膜を形成した場合における前記金属含有窒化膜の核密度を第2の核密度としたとき、前記第1の核密度は前記第2の核密度より低い。
【0124】
〔付記3〕
付記1乃至2のいずれかに記載の方法であって、
前記シード層を形成する工程は、前記有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程とを順に時分割して所定回数行う。
【0125】
〔付記4〕
付記1乃至2に記載の方法であって、
前記シード層を形成する工程は、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と前記有機系金属含有ガスを供給し排気する工程とを順に時分割して所定回数行う。
【0126】
〔付記5〕
付記1乃至4のいずれかに記載の方法であって、
前記シード層を形成する工程は、さらに前記窒素含有ガスを供給して排気する工程を有する。
【0127】
〔付記6〕
付記1乃至5のいずれかに記載の方法であって、
前記有機系金属含有ガスは、エチル基およびメチル基の少なくともいずれか一方を含み、前記無機系含有ガスはハロゲン基を含む。
【0128】
〔付記7〕
付記1乃至6のいずれかに記載の方法であって、
前記金属元素は、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、コバルト(Co)、イットリウム(Y)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)のいずれかである。
【0129】
〔付記8〕
付記1乃至7のいずれかに記載の方法であって、前記基板上に前記金属元素を含むシード層を形成する工程では、有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、を1回ずつ行う。
【0130】
〔付記9〕
基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、前記金属元素を含む無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
を時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含むシード層を形成する工程と、
前記シード層が形成された基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する工程と、
前記基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する工程と、
を同時に所定回数行うことにより、前記シード層をシードとして前記基板上に金属含有窒化膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法もしくは基板処理方法。
【0131】
〔付記10〕
基板を収容する処理室と、
前記基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガスおよび前記金属元素を含む無機系金属含有ガス、窒素含有ガスを供給するガス供給系と、
前記ガス供給系を制御して、前記処理室に収容された基板に対して前記有機系金属含有ガスを供給し排気する処理と、前記基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する処理と、を時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含むシード層を形成する処理と、 前記シード層が形成された基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する処理と、前記基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する処理と、を時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数行うことにより、前記シード層をシードとして前記基板上に金属含有窒化膜を形成する処理と、を行うよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【0132】
〔付記11〕
基板に対して、金属元素を含む有機系金属含有ガスを供給し排気する手順と、
前記基板に対して、前記金属元素を含む無機系金属含有ガスを供給し排気する手順と、
を時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数行うことにより前記基板上にシード層を形成する手順と、
前記シード層が形成された基板に対して、前記無機系金属含有ガスを供給し排気する手順と、
前記基板に対して、窒素含有ガスを供給し排気する処理と、
を時分割して(非同期、間欠的、パルス的に)所定回数行うことにより、前記シード層をシードとして前記基板上に金属含有窒化膜を形成する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラムおよび該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【符号の説明】
【0133】
10・・・基板処理装置
200・・・ウエハ
201・・・処理室
202・・・処理炉
図1
図2
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図7
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図9