(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、スパッタ装置及びスパッタ装置の駆動方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態のスパッタ装置は、スパッタ法により基板などに薄膜を形成する。また、成膜対象となる基板は、フィルム状の基板(以下、フィルム基板)である。
【0016】
フィルム基板は、樹脂を主成分とする。また、本実施形態のフィルム基板は、正方形状を有し、フィルム基板における一辺の長さは、例えば500mm〜600mmである。また、フィルム基板の厚さは、例えば、1mm以下である。
【0017】
[スパッタ装置の構成]
図1を参照してスパッタ装置の構成の一例を説明する。
図1が示すように、スパッタ装置10では、搬出入室11及びスパッタ用のチャンバとしてのスパッタ室13が一列に連結されている。搬出入室11及びスパッタ室13はそれぞれ真空槽である。搬出入室11の搬出入口側には室内外を区分するゲートバルブ12が取り付けられ、搬出入室11とスパッタ室13との間にも各室を区分するゲートバルブ14が取り付けられている。
スパッタ装置10には、連結方向に沿って延びる搬送部としての搬送レーン30が搬出入室11からスパッタ室13に渡って設けられている。
【0018】
搬出入室11は、成膜前の成膜面1fを有する基板1が固定された基板キャリア40をスパッタ装置10の外部から搬入し、成膜後の成膜面1fを有する基板1を含む基板キャリア40をスパッタ装置10の外部に搬出する。本実施形態では、基板1と基板キャリア40とによって第1の対象が構成される。
【0019】
スパッタ室13の一側面には、搬出入室11とスパッタ室13との連結方向に沿って2つの排気部15が取り付けられ、連結方向における2つの排気部15の間に、冷却部16が設けられている。排気部15は、例えばターボ分子ポンプであって、スパッタ装置10の備える制御装置100によって制御される。また、冷却部16は、冷却源としてのクライオポンプを備え、制御装置100によって制御される。
【0020】
制御装置100は、CPU、ROM、RAM、その他の記憶装置を有するコンピュータを含む。制御装置100は、ROMや記憶装置に記憶されているプログラムをCPUで演算処理することにより、所定の処理を行う。本実施形態では、制御装置100は、スパッタ法に関する処理や、スパッタ装置10において基板キャリア40などを搬出入する処理などを行う。
【0021】
スパッタ室13の一側面とは反対側の他側面には、成膜部20が配置され、成膜部20は、成膜材料を主成分とするターゲット22を備えている。スパッタ室13において、ターゲット22と搬送レーン30との間のうち、搬送レーン30よりもターゲット22に近い位置にコリメータ60を含むコリメータキャリア50が配置される。スパッタ室13は、ターゲット22のスパッタによって、基板1の表面に所定の薄膜、例えば、銅膜などの金属膜や金属化合物膜などを形成する。
【0022】
図2が示すように、搬送レーン30は、スパッタ装置10の底壁に配置され、その上部に基板キャリア40やコリメータキャリア50を配置させて搬送する。搬送レーン30は、連結方向に沿って延びるレール31と、レール31に沿って所定の間隔で取り付けられる複数のローラ32と、ローラ32を正回転及び逆回転させるモータ33とを備えている。
【0023】
レール31は、スパッタ室13の外部であって、搬出入室11の外部と、スパッタ室13の内部において基板1に対する成膜処理が行われる搬送位置とを結ぶ経路である搬送経路に沿って延びている。搬送レーン30は、第1の対象と第2の対象とを共通する搬送経路で搬送する。モータ33は、制御装置100に接続された電動モータであって、その回転速度及び回転方向が制御装置100によって制御される。
【0024】
搬送レーン30は、基板キャリア40をほぼ鉛直方向に沿って立たせた状態で搬送し、これにより、基板キャリア40に固定された成膜前、成膜中あるいは成膜後の基板1をほぼ鉛直方向に沿って立たせた状態で搬送する。また、搬送レーン30は、コリメータキャリア50をほぼ鉛直方向に沿って立たせた状態で搬送し、これにより、使用前あるいは使用後のコリメータ60をほぼ鉛直方向に沿って立たせた状態で搬送する。
【0025】
スパッタ装置10は、外部から搬出入室11に基板キャリア40やコリメータキャリア50を搬入すると、搬出入室11における搬送レーン30に基板1やコリメータキャリア50を搬送可能に配置する。そして、スパッタ装置10は、搬出入室11からスパッタ室13に向けて搬送レーン30に沿って基板キャリア40やコリメータキャリア50を搬送する。または、スパッタ装置10は、スパッタ室13から搬出入室11に向けて搬送レーン30に沿って基板キャリア40やコリメータキャリア50を搬出する。そして、スパッタ装置10は、基板キャリア40やコリメータキャリア50を搬出入室11から外部に搬出する。
【0026】
基板キャリア40は、枠形状を有した枠体41内に固定具42を介して基板1を固定している。なお、基板キャリア40は、キャリアに基板1を保持できる構成であって、例えば、キャリアの枠体と基板1との間にホルダなどの部材を介して基板1を保持する構成であってもよい。
【0027】
基板キャリア40は、搬送レーン30によって支持されるとともに、搬送レーン30によって搬送される基部43を備えている。基部43は、ローラ32による支持及び搬送が可能な形状に形成されている。基板キャリア40は、基部43が搬送レーン30に支持されることでほぼ鉛直方向に沿って立つとともに、ほぼ鉛直方向に沿って立った状態で搬送される。こうして基板キャリア40がほぼ鉛直方向に沿って立つことを通じて、基板キャリア40に固定される基板1もほぼ鉛直方向に立った状態で支持及び搬送される。
【0028】
図3が示すように、コリメータキャリア50は、枠形状を有した枠体51を備え、その枠体51内にホルダ55を介してコリメータ60を固定している。なお、コリメータキャリア50は、ホルダ55を介さずにコリメータ60を固定することができる構成であってもよい。また、基板キャリア40とコリメータキャリア50とは、同様の構成であってもよい。この場合には、ホルダ55をコリメータ60と基板1との違いを吸収する構成とすれば、ホルダ55を介してコリメータ60を基板キャリア40に固定することもできる。なお、本実施形態では、コリメータ60と、ホルダ55と、コリメータキャリア50とによって第2の対象が構成される。
【0029】
コリメータキャリア50は、搬送レーン30によって支持されるとともに、搬送レーン30によって搬送される基部53を備えている。基部53は、基板キャリア40の基部43と同様に、ローラ32による支持及び搬送が可能な形状に形成されている。コリメータキャリア50は、基部53が搬送レーン30に支持されることでほぼ鉛直方向に沿って立つとともに、ほぼ鉛直方向に沿って立った状態で搬送される。こうしてコリメータキャリア50がほぼ鉛直方向に沿って立つことを通じて、コリメータキャリア50に固定されるコリメータ60もほぼ鉛直方向に沿って立った状態で支持及び搬送される。
【0030】
ホルダ55は、コリメータ60をコリメータキャリア50に固定する部材であって、枠形状の枠体56を有している。ホルダ55は、その枠体56の一部に設けられる取付部57を介してコリメータキャリア50の上部枠52へ取り付けられる。ホルダ55は、枠内にコリメータ60を固定するための複数の固定具58,59を備え、複数の固定具58,59はコリメータ60をホルダ55に固定する。
【0031】
コリメータ60は、ターゲット22から放出されるスパッタ粒子の進行方向と、基板1の法線方向とが形成する角度である放出角度を所定の範囲内に整えるものであって、枠部61と、枠部61に囲まれる枠内部の全体に配置される調整部62とを備える。枠部61は、調整部62をコリメータキャリア50に固定する部分である。調整部62は、ターゲット22から放出されたスパッタ粒子のうち、放出角度が所定の範囲内であるスパッタ粒子を選択的に通過させる複数の通路を備えている。放出角度が所定の範囲内であるスパッタ粒子によれば、所定の特性を有する薄膜を基板1に成膜することができる。
【0032】
また、コリメータ60には、スパッタ粒子のうち、放出角度が所定の範囲外であるスパッタ粒子が接触することで付着し、付着したスパッタ粒子がコリメータ60から離脱してパーティクルを形成する。パーティクルは基板1の成膜面に付着する場合があるため、コリメータ60には、1枚の基板1に対する成膜処理、もしくは、複数枚の基板1に対する成膜処理毎に、コリメータ60に付着した成膜材料を除去するためのメンテナンスが行われる。つまり、スパッタ室13では、コリメータ60に対するメンテナンスが行われる都度、スパッタ室13からコリメータ60が取り外され、また、メンテナンスが行われたコリメータ60がスパッタ室13に取り付けられる。
【0033】
図4が示すように、スパッタ室13において、成膜部20が対向する位置には、スパッタ室13内に接続部17を介して支持される温調ステージ18が配置されている。温調ステージ18は、板状に形成され、接続部17を介して冷却源を含む冷却部16に接続されている。接続部17は、金属などの熱伝導性の高い材料からなり、スパッタ室13の壁部に設けられた挿通部に対して摺動可能に設けられている。なお、温調ステージ18の冷却源は、クライオポンプの他、温調ステージ18に極低温の冷媒を導入して冷却する機構などでもよい。
【0034】
冷却部16のクライオポンプは、図示しない冷凍機ユニットなどを備え、例えば−150℃〜−100℃の極低温に到達する極低温面を有する。接続部17は、その一端が、クライオポンプの極低温面に接続され、他端が温調ステージ18の底面に接続されている。このため、温調ステージ18の熱が接続部17を介してクライオポンプに伝わることにより、温調ステージ18の温度が極低温域まで低下する。冷却部16のクライオポンプは、制御装置100によって制御される。
【0035】
成膜部20は、バッキングプレート21、ターゲット22、及び防着板23を備えている。ターゲット22は、基板1に形成される薄膜の主成分から形成され、バッキングプレート21が有する面のうち、温調ステージ18と対向する面に固定されている。バッキングプレート21には、図示しないターゲット電源が電気的に接続されている。防着板23は、スパッタ粒子が不必要な方向に進行することを抑え、例えば、基板キャリア40やコリメータキャリア50へのスパッタ粒子の付着を軽減させる。
【0036】
スパッタ室13には、スパッタ室13内にプラズマを生成するためのガスであるスパッタガスを供給するスパッタガス供給部(図示略)が接続されている。スパッタガスは、例えばアルゴンガスであるが、その他の希ガスであってもよい。
【0037】
[移動部の構成]
上述したように、コリメータのメンテナンスを作業者が行うとき、作業者には、チャンバを大気に開放すること、メンテナンス前のコリメータをチャンバから取り外して、チャンバ外に搬出すること、及び、メンテナンス後のコリメータをチャンバ内に搬入して、チャンバに取り付けるという負荷が強いられる。
【0038】
また、コリメータのメンテナンスには、基板に形成する薄膜に求められる特性、例えば基板に形成された孔におけるサイズの変更、特に、孔におけるアスペクト比の変更が伴うサイズの変更などに応じたコリメータの変更も含まれる。この場合にも、上述した負荷が作業者には強いられる。
【0039】
以下では、本実施形態において、コリメータ60のメンテナンスにおける負荷を低減させるための構成について説明する。
図2及び
図4が示すように、スパッタ室13は、ほぼ鉛直方向に延びるシリンダを有する第1の駆動部としての昇降用駆動部70と、搬送レーン30から成膜部20へ向かう方向に延びるシリンダを有する第2の駆動部としての取付用駆動部80とを備えている。昇降用駆動部70及び取付用駆動部80はそれぞれ、シリンダから伸び、また、シリンダに向けて縮むロッド71,81を備えている。昇降用駆動部70と取付用駆動部80とはそれぞれ制御装置100に接続されており、それぞれのシリンダに対してロッド71,81の伸縮する長さが制御装置100によって制御される。本実施形態では、昇降用駆動部70と取付用駆動部80とから移動部が構成される。
【0040】
昇降用駆動部70は、搬送レーン30に対して基板キャリア40が搬送される領域とは反対側である下方の領域に含まれる位置であって、かつ、複数のローラ32のうち、いずれか2つのローラ32の間の位置に設けられている。また昇降用駆動部70は、そのロッド71の先端部を、搬送レーン30の位置を含む第1の方向X1に沿って移動させることができるように配置されている。なお、第1の方向X1は、鉛直方向とほぼ平行な方向である。
【0041】
取付用駆動部80は、搬送レーン30よりも下方、かつ、搬送レーン30に対して成膜部20とは反対側の領域に含まれる位置に設けられている。また、取付用駆動部80は、ロッド81の先端部82を、搬送レーン30の位置を含む第1の方向X1に対して傾斜を有した状態で移動させることができるように、すなわち、第1の方向X1に対して交差する第2の方向Y1に沿って移動させることができるように配置されている。
【0042】
各ロッド71,81の先端部の位置は、シリンダに対してロッド71,81の伸縮する長さにより定まる。ロッド71の先端部は、ロッド71が最も縮んだ位置である待機高さL0から、搬送レーン30と同じ高さにある第1位置である搬送位置P1(搬送高さL1)を介して成膜に適した位置である成膜高さL2までの間を移動する。すなわち、昇降用駆動部70は、搬送位置P1においてコリメータキャリア50をほぼ鉛直方向に沿って移動させる。
【0043】
ロッド81の先端部82は、ロッド81が最も縮んだ位置である待機位置P0から、搬送レーン30と同じ位置である搬送位置P1を介してコリメータ60を取り付ける位置である第2位置としての取付位置P2までの間を移動する。なお、取付位置P2は、ターゲット22と搬送位置P1との間の位置であって、上述した搬送経路から外れた位置である。
【0044】
なおロッド81は、第2の方向Y1に沿って伸縮する。ロッド81の先端部が配置される位置のうち、待機位置P0の高さは待機高さL3であり、搬送位置P1の高さは搬送レーン30と同じ高さの搬送高さL1であり、取付位置P2の高さは成膜高さL2と同じ高さである。
【0045】
また、搬送位置P1から取付位置P2までの間の距離は、基板1の成膜面1fにコリメータ60に起因する成膜のむらなどが生じない距離に設定される。一方、コリメータ60の取付位置P2はターゲット22の近くに設定される。そして、取付位置P2からターゲット22までの間の距離は、搬送位置P1から取付位置P2までの間の距離よりも小さい。
【0046】
すなわち、昇降用駆動部70は、制御装置100の制御に基づくロッド71の伸縮によって、搬送レーン30の搬送位置P1に搬送された基板キャリア40を、搬送位置P1の搬送高さL1と成膜高さL2との間で昇降させる。例えば、昇降用駆動部70は、ロッド71の先端部をシリンダから離れる方向に沿って移動させることより、搬送レーン30に配置された基板キャリア40の基部43を押し上げて、基板キャリア40を搬送レーン30から離脱させるとともに、成膜高さL2まで上昇させる。また、昇降用駆動部70は、ロッド71の先端部をシリンダに近づく方向に沿って移動させることにより、基板キャリア40を成膜高さL2から搬送位置P1の搬送高さL1に下降させることで、基板キャリア40の基部43を搬送レーン30に配置させる。
【0047】
また、取付用駆動部80はロッド81の伸縮によって、搬送レーン30の搬送位置P1まで搬送されたコリメータキャリア50を、搬送位置P1と取付位置P2との間で移動させる。また、取付用駆動部80は、取付位置P2に移動させたコリメータキャリア50を、取付位置P2に保持することでスパッタ室13に取り付ける。さらに、取付用駆動部80は、コリメータキャリア50を取付位置P2に保持しているとき、搬送レーン30による基板キャリア40の搬送に干渉しない位置にロッド81が配置されるように設定されている。また、取付用駆動部80は、待機位置P0にあるロッド81の先端部82を搬送レーン30に対応する搬送位置P1に移動させる。よって、取付用駆動部80は、搬送位置P1にて搭載したコリメータキャリア50を、基部53を支持しつつ、搬送レーン30から離脱させるとともに、斜め上方に移動させて取付位置P2に設置する。また、取付用駆動部80は、ロッド81の先端部82をシリンダに向けて移動させることにより、取付位置P2から搬送位置P1にコリメータキャリア50を移動させることで、コリメータキャリア50の基部53を搬送レーン30に配置させる。これにより、コリメータキャリア50の取付位置P2での保持、及び搬送レーン30によるコリメータキャリア50の搬送を可能にする。
【0048】
なお、ロッド81の先端部82は、搬送レーン30の搬送位置P1を斜めに横切るように移動する。このため、搬送レーン30の搬送位置P1にコリメータキャリア50が配置された状態では、コリメータキャリア50の基部53を搬送レーン30から先端部82の基部支持部83に載せ替えることができない。よって、搬送レーン30と先端部82との間でのコリメータキャリア50の載せ替えでは、搬送位置P1において昇降用駆動部70がコリメータキャリア50を一旦上昇させてから、取付用駆動部80が、先端部82を待機位置P0から搬送位置P1に向けて移動させる、又は、搬送位置P1から待機位置P0に向けて移動させる。一方、取付用駆動部80のロッド81の先端部が待機位置P0から搬送位置P1に向けて移動するとき、ロッド81が搬送レーン30の搬送位置P1(搬送高さL1)よりも低い位置を横切るように取付用駆動部80が設定されている。そのため、待機位置P0と搬送位置P1との間においてロッド81が存在するか否かは、搬送レーン30による基板キャリア40やコリメータキャリア50の搬送に影響を与えない。
【0049】
[コリメータの取り付け動作及び取り外し動作]
図5(a)〜
図5(h)を参照して、スパッタ装置10にコリメータ60を取り付ける動作、及びスパッタ装置10からコリメータ60を取り外す動作について説明する。
図5(a)〜
図5(h)は、スパッタ室13の側面を模式的に示す図である。まず、
図5(a)〜
図5(h)を昇順に参照して、コリメータ60を取り付ける動作を説明し、次に、
図5(a)〜
図5(h)を降順に参照して、コリメータ60を取り外す動作を説明する。
【0050】
なお、上述したように、昇降用駆動部70は、制御装置100の制御に基づいて、基板キャリア40やコリメータキャリア50を第1の方向X1に沿って移動させる。また、取付用駆動部80は、制御装置100の制御に基づいて、コリメータキャリア50を搬送位置P1と取付位置P2とを結んだ方向であって、第2の方向Y1に沿って移動させる。そして、制御装置100は、昇降用駆動部70と取付用駆動部80とを協働させる制御によって、基板キャリア40やコリメータキャリア50を適宜目的の位置に移動させる。
【0051】
まず、スパッタ室13にコリメータ60を取り付ける動作を説明する。
図5(a)が示すように、制御装置100は、取付位置P2にコリメータ60を含むコリメータキャリア50が取り付けられていないとき、先端部82を待機位置P0に配置させている。また、制御装置100は、搬送位置P1にコリメータ60が配置されていないことから、コリメータキャリア50を搬送位置P1に搬入する。
【0052】
よって、
図5(b)が示すように、制御装置100は、各モータ33を制御して、スパッタ装置10の外部に位置するコリメータキャリア50を搬送位置P1まで搬入する(搬送工程)。
【0053】
続いて、
図5(c)が示すように、搬送位置P1にコリメータキャリア50が搬送されると、制御装置100は、搬送位置P1においてコリメータキャリア50を搬送高さL1から成膜高さL2に上昇させる(第1移動工程)。なお、コリメータキャリア50の高さは、コリメータキャリア50を昇降用駆動部70から先端部82に載せ替えることができる高さであれば、成膜高さL2より低くてもよいし、高くてもよい。
【0054】
そして、
図5(d)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50を上昇させることで空いた搬送位置P1に待機位置P0に配置されていた先端部82を移動させる。
【0055】
それから、
図5(e)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50を成膜高さL2から搬送高さL1に下降させる。この下降によって、コリメータキャリア50の基部53が先端部82の基部支持部83に配置されて、先端部82によってコリメータキャリア50がほぼ鉛直方向に沿って立つように保持される(載せ替え工程)。
【0056】
最後に、
図5(f)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50を搬送位置P1から取付位置P2まで第2の方向Y1に沿って移動させる(取付工程)。この移動によってコリメータキャリア50が取付位置P2に移動されるとともに、スパッタ室13へのコリメータ60の取付が完了される。なお、本実施形態では、第1移動工程と、載せ替え工程と、取付工程とが移動工程に含まれる。
【0057】
次に、成膜処理が行われる基板1を含む基板キャリア40の搬出入動作を説明する。
図5(g)が示すように、スパッタ室13にコリメータ60が取り付けられると、制御装置100は、搬出入室11に基板キャリア40を搬入する。そして、制御装置100は、搬出入室11に搬入した基板キャリア40をスパッタ室13の搬送位置P1に搬入する(搬入工程)。
【0058】
そして、
図5(h)が示すように、制御装置100は、搬送位置P1にて基板キャリア40を成膜高さL2にまで上昇させて保持する。そして、基板キャリア40が成膜高さL2に保持された状態で基板1への成膜が行われる。
【0059】
成膜が終了すると、
図5(g)が示すように、制御装置100は、基板キャリア40を成膜高さL2から搬送高さL1まで下降させ、
図5(f)が示すように、下降させた基板キャリア40をスパッタ室13から搬出入室11へ搬出する。これにより1枚の基板1への成膜が終了される。
【0060】
ところで、ターゲット22と基板1との間において、ターゲット22に近い位置である取付位置P2に配置されたコリメータ60には、基板1に成膜が行われる都度、スパッタ粒子が付着する。このため、1枚の基板1もしくは複数枚の基板1に対する成膜が行われると、コリメータ60に付着したスパッタ粒子を除去するメンテナンスを行うために、コリメータ60は、スパッタ室13から取り外され、かつ、スパッタ装置10外に搬出される。
【0061】
そこで、次に、スパッタ室13からコリメータ60を取り外す動作を説明する。
まず、
図5(f)が示すように、制御装置100は、基板キャリア40をスパッタ室13から搬出入室11へ搬出する。
次に、
図5(e)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50を取付位置P2から搬送位置P1まで第2の方向Y1に沿って移動させることで、スパッタ室13からコリメータ60を取り外す(取り外し工程)。
【0062】
そして、
図5(d)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50を搬送位置P1の搬送高さL1から成膜高さL2まで第1の方向X1に沿って上昇させる。この移動によって、コリメータキャリア50の基部53が先端部82の基部支持部83から離脱して、昇降用駆動部70のロッド71に配置される(載せ替え工程)。なお、コリメータキャリア50の高さは、コリメータキャリア50の基部53を先端部82から離脱させるとともに、先端部82を待機位置P0へ移動させることが可能な高さであればよい。
つまり、
図5(c)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50を離脱させた先端部82を待機位置P0まで移動させる。
【0063】
そして、
図5(b)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50を成膜高さL2から搬送高さL1に下降させる(第2移動工程)。これにより、コリメータキャリア50の基部53が搬送レーン30に配置され、搬送レーン30による搬送が可能になる。なお、本実施形態では、取り外し工程、載せ替え工程、及び、第2移動工程が、移動工程に含まれる。
【0064】
最後に、
図5(a)が示すように、制御装置100は、コリメータキャリア50をスパッタ室13の搬送位置P1からスパッタ装置10の外部に搬出する(搬送工程)。そして、コリメータ60に対するメンテナンス作業が行われる。
【0065】
なお、複数のコリメータキャリア50が準備されていれば、1つのコリメータキャリア50をスパッタ装置10の外部へ搬出した後、他のコリメータキャリア50をスパッタ装置10に搬入し、取付位置P2に取り付けることで基板1への成膜を迅速に再開することができる。また、他のコリメータキャリア50が使用されている間、スパッタ装置10から搬出したコリメータ60のメンテナンスを行うことができる。
【0066】
このように、上述したスパッタ装置10によれば、コリメータのメンテナンスに際して、作業者に強いられる負荷、すなわち、コリメータ60の取り付け及び取り外し、コリメータ60の搬出入が、軽減される。
【0067】
上記実施形態における本実施形態のスパッタ装置及びスパッタ装置の駆動方法によれば、以下に列記する効果を得ることができる。
(1)搬送レーン30によるコリメータキャリア50の搬送と、昇降用駆動部70及び取付用駆動部80によるコリメータキャリア50の位置の移動とによって、コリメータ60を取付位置P2に位置させること、及び、取付位置P2から移動させることができる。そのため、コリメータ60を取付位置P2に位置させるための作業や、取付位置P2から移動させるための作業を行う必要がなく、結果として、コリメータ60のメンテナンスに要する負荷を低減することができる。
【0068】
(2)基板1やコリメータ60がほぼ鉛直方向に沿って立てられることで、水平方向における専有面積を減らすことができるようになる。また、基板1とコリメータ60とが鉛直方向に沿って並ばないことから、コリメータ60から離脱したパーティクルが基板1上に到達することが抑制される。
【0069】
(3)第1の方向X1と第2の方向Y1とが交差するため、第1の方向X1に沿って昇降用駆動部70が搬送レーン30から移動させたコリメータキャリア50は、第1の方向X1と第2の方向Y1とが交差する位置にて、昇降用駆動部70から取付用駆動部80に載せ替えられる。
【0070】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・基板キャリア40やコリメータキャリア50は、基部43,53によって搬送レーン30や先端部82の基部支持部83に支持されるが、搬送位置や取付位置において、枠の上部などが支持装置によりさらに支持されてもよい。例えば、基板キャリアが成膜高さに配置されたとき、搬送位置の上方から下降する支持体が基板キャリアの上部を支持、固定するようにしてもよい。また、例えば、コリメータキャリアが取付位置に配置されたとき、取付位置の上方から下降する支持体がコリメータキャリアの上部を支持、固定するようにしてもよい。
・昇降用駆動部70が1つである場合について例示したが、これに限らず、スパッタ室13は、複数の昇降用駆動部を備えていてもよい。
【0071】
・取付用駆動部80が2つである場合について例示したが、これに限らず、コリメータキャリアをコリメータの配置位置に配置させることができるのであれば、取付用駆動部は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0072】
・コリメータキャリア50を昇降用駆動部70で昇降させることで、昇降用駆動部70と取付用駆動部80との間でコリメータキャリア50を授受する場合について例示した。これに限らず、昇降用駆動部を用いず、取付用駆動部のみで搬送レーンと取付用駆動部との間でコリメータキャリアを授受するようにしてもよい。つまり、取付用駆動部のロッドを第2の方向Y1に沿って移動させるだけで、取付用駆動部と搬送レーン30との間でコリメータキャリアが授受されてもよい。
【0073】
例えば、取付用駆動部の先端部にフォーク状を有するピンを設け、コリメータキャリアの基部に斜め方向の穴を設け、搬送位置に搬送されたコリメータキャリアに取付用駆動部の先端部を待機位置から近づけることで取付用駆動部の先端部がコリメータキャリアを受け取るようにしてもよい。これにより、取付用駆動部の動作だけでコリメータキャリアを搬送レーンと取付用駆動部の先端部との間での載せ替えが可能にもなる。この場合、移動部は、取付用駆動部により構成される。
【0074】
・搬送レーン30において基板1とコリメータ60とが別々に搬送される場合について例示した。これに限らず、搬送レーンにおいて一つの基板キャリアによって基板とコリメータとを一緒に搬送してもよい。
【0075】
例えば、基板キャリアの基板の成膜面側に、コリメータを着脱可能に配置させる。こうした構成では、例えば、コリメータを基板キャリアの上部からぶら下げる態様に基板キャリアに設置することで基板キャリアに対して着脱可能に配置させることができる。また、スパッタ室は、コリメータを搬送位置から取付位置まで移動させる取付用駆動部を成膜部側に設ける。そして、搬送位置に搬送された基板キャリアを上昇させてから、取付用駆動部のロッドをコリメータに設けられた受け渡し部分の下まで延出させ、次いで、基板キャリアを下降させることで、コリメータの受け渡し部分を取付用駆動部のロッドに受け渡し、かつ、基板キャリアから取り外す。そして、コリメータを受け取ったロッドをコリメータの取付位置まで移動させることで、スパッタ室にコリメータを取り付ける。なお、コリメータは、ホルダを介して基板キャリアに取り付けられてもよい。また、スパッタ室に取り付けられたコリメータは、上述した取り付け手順を降順に行うことでスパッタ室から取り外される。
・上記実施形態では、正方形状を有する基板1を例示したが、これに限らず、基板は、長方形状やその他の形状を有してもよい。
【0076】
・基板1は、例えば、紙フェノール基板、ガラスエポキシ基板、テフロン基板(テフロンは登録商標)、アルミナなどのセラミックス基板、低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板などのリジッド基板であってもよい。あるいは、基板は、これらの基板に金属で構成された配線層が形成されたプリント基板であってもよい。
・基板1は、ガラス基板など、フィルム基板などの薄型基板以外の基板であってもよい。
【0077】
・第1の対象は、基板1と、基板キャリア40とにより構成される場合について例示した。これに限らず、第1の対象は、基板のみであったり、基板とキャリア以外の部材を含んで構成されたりしてもよい。
【0078】
・第2の対象は、コリメータ60と、ホルダ55と、コリメータキャリア50とにより構成される場合について例示した。これに限らず、第2の対象は、コリメータのみであったり、コリメータとコリメータキャリアから構成されたり、コリメータ、ホルダ及びコリメータキャリア以外の部材を含んで構成されたりしてもよい。
【0079】
・スパッタ室13では、コリメータキャリア50の取り付け、及び、コリメータキャリア50の取り外しのいずれか一方のみが搬送レーン30、昇降用駆動部70、及び、取付用駆動部80を用いて行われる一方で、他方が、他の方法、例えば作業者によって行われてもよい。こうした構成であっても、コリメータのメンテナンスにおける負荷を低減することはできる。
【0080】
・基板1に対して成膜処理が行われるときには、昇降用駆動部70が基板キャリア40を搬送高さL1から成膜高さL2に上昇させなくてもよい。こうした構成では、昇降用駆動部70が基板キャリア40を上昇させずとも、基板キャリア40が、搬送レーン30上に位置する基板1の全体がターゲット22と対向する位置に配置するように構成されていることが好ましい。
【0081】
・搬送レーン30は、搬出入室11とスパッタ室13とに設けられている場合について例示した。これに限らず、搬送レーンは、スパッタ室のみに設けられていてもよい。このとき、搬出入室とスパッタ室との間では、クレーンや搬送ロボットなどの搬送レーン以外の機構によって基板キャリアやコリメータキャリアを搬送してもよい。そして、搬送レーンはスパッタ室に対する基板キャリアなどの搬出入位置と搬送位置との間で、基板キャリアなどを搬送することができる。なお、こうした構成では、搬送レーンと、クレーンなどの搬送レーン以外の機構とが、搬送部を構成する。
【0082】
・スパッタ装置10は搬出入室11とスパッタ室13とを備える場合について例示した。これに限らず、スパッタ装置は少なくともスパッタ室を備える構成であればよい。例えば、スパッタ装置は、1つのスパッタ室のみを備えていてもよいし、複数のスパッタ室を備えてもよい。また、スパッタ装置は、1つ以上の前処理室を備えてもよい。さらに、スパッタ装置は、前処理室に加えて、もしくは、前処理室に代えて他の処理室などを備えていてもよい。なお、スパッタ室、前処理室、他の処理室などが複数設けられている場合、それらの構成に応じて、各室間には、ゲートバルブを設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0083】
・スパッタ室が真空槽である場合について例示したが、これに限らず、スパッタ室の雰囲気が大気圧であってもよい。例えば、スパッタ室の雰囲気が大気圧であるときはゲートバルブを耐圧性の高くない扉などとしてもよい。