(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他の通信装置との疎通を検知し、不通状態から開通状態となった時に前記配信情報制御機能部に前記配信テーブル同期を実行させる同期トリガ部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
マルチキャスト配信管理フレームに基づき、受信装置毎にマルチキャストデータの「配信」あるいは「未配信」を設定した配信情報を保持する配信テーブルを備え、マルチシャーシLAGを構成する通信装置の前記配信テーブルを同期する配信テーブル同期方法であって、
1の通信装置の配信テーブルが保持する配信情報と他の通信装置の配信テーブルが保持する配信情報を受信装置毎に突き合わせ、互いの配信情報が違う場合、前記1の通信装置の配信テーブルの配信情報を「配信」に修正し、
前記他の通信装置の配信テーブルを修正した前記1の通信装置の配信テーブルの配信情報で上書きする、
配信テーブル同期手順を行うことを特徴とする配信テーブル同期方法。
【背景技術】
【0002】
イーサネット(登録商標)技術に代表される、OSI参照モデルにおけるレイヤ2の技術を用いたネットワークシステムが広く普及している。前記ネットワークシステムにおいて、信頼性向上と容量拡大を実現する技術としてLAG(Link Aggregation Group)技術がある。これは、装置間を複数の物理リンクで接続し、複数の物理リンクを1つの論理リンクとしてフレーム転送を実現するものである。
【0003】
LAGは、簡易な方法で信頼性の向上と容量拡大が可能であり、IEEEにおいて標準化されている。しかしながら、LAGは、経路冗長機能を実現することが可能であるが、装置冗長機能は実現できない。そこで、装置冗長機能を提供するためにマルチシャーシLAG(MC−LAG)機能が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
マルチシャーシLAG機能は、複数台の通信装置を、仮想的に1台の通信装置として動作させるものである。対向装置は、仮想的に1台の通信装置とみなした通信装置群に対してLAG機能を用いて接続することが可能である。すなわち、標準技術を搭載した対向装置に変更を加えることなく利用可能であり、容易に装置冗長構成の導入が可能である。
【0005】
対向装置からマルチシャーシLAGを構成する通信装置群に対してのトラヒックは、対向装置のLAGのデータ振り分け規則に従って送信される。LAG機能による経路冗長化技術を用いた場合、対向装置から送信されるトラヒックは物理的に1台の装置でフレームを受信するため、フレームを受信した装置が持つ転送情報に従った送信が可能であった。一方、マルチシャーシLAG機能を用いた場合、物理的に複数の通信装置を仮想的に1台として動作させているため、装置間での転送情報の共有が必要となる。
【0006】
通常、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間は、前記通信装置を相互に接続するシャーシ間回線によって直接接続されている。前記シャーシ間回線は、マルチシャーシLAGにおける故障発生状況の交換、設定情報の交換を含む管理フレームの送受信、および、対向装置から送信されたトラヒックの転送に使用される。
【0007】
しかしながら、前記シャーシ間回線において故障が発生した場合、あるいは、マルチシャーシLAGを構成する通信装置において故障が発生した場合、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間で、転送情報の共有、および、同期が不可能となる。このため、故障から回復した後に、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間で、故障発生期間に発生した設定情報に関する更新差分を共有し、さらに、同期処理を行う必要がある。
【0008】
例えば、マルチシャーシLAGを構成する複数の通信装置を用いたネットワークシステムにおいて、マルチキャスト配信を効率的に実施するためのMLDv2(Multicast Listener Discovery version 2)機能を動作させる場合を考える。以降、マルチシャーシLAGを構成する複数の通信装置を用いたネットワークシステムにおいてMLDv2に基づくマルチキャスト配信を実現することを想定して説明する。しかしながら、以降に述べる内容は、MLDv2といった特定の技術やプロトコルに制限されない。マルチシャーシLAGを構成する通信装置のそれぞれが、個別に設定情報を保持し、設定情報を同期する手法であれば、同様の議論が可能である。
【0009】
MLDv2はマルチキャスト配信管理フレームの送受信に基づいて通信装置のポートに関する設定情報を動的に変更するものである。例えば、通信装置のポートにおいて、マルチキャスト配信開始フレームを受信した場合は当該ポートからのマルチキャスト配信を開始し、マルチキャスト配信停止フレームを受信した場合は当該ポートからのマルチキャスト配信を停止する。このようにすることで、不要なマルチキャスト配信を抑制し、ネットワークシステム全体の回線利用効率を向上させることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
マルチシャーシLAGを構成する複数の通信装置間でMLDv2マルチキャスト配信を実現する方法として、マルチシャーシLAGを構成する通信装置群のいずれかの通信装置がマルチキャスト配信管理フレームを受信した場合、前記通信装置群間のシャーシ間回線を用いて、マルチシャーシLAGを構成する他の通信装置に対してマルチキャスト配信管理フレームを転送する方法がある。これにより、シャーシ間回線、あるいは、マルチシャーシLAGを構成する通信装置において故障が発生していない場合においては、マルチシャーシLAGを構成する全ての通信装置間で配信管理情報を共有することが可能となり、配信管理テーブル同期が可能となるが、シャーシ間回線、あるいは、マルチシャーシLAGを構成する通信装置において故障が発生した状態では、配信情報の共有が不可となる。
【0012】
例えば、
図1に示すように、マルチシャーシLAGを構成する通信装置(SW1、SW2)、それぞれの通信装置と異なる物理回線で接続する対向装置(3〜7)、及びシャーシ間回線8からなるネットワークシステムを考える。通信装置SWx(xは1又は2である。)は、マルチキャスト配信を行う対向装置3と接続するポートx1、マルチキャスト受信を行う対向装置(4〜7)を接続するポートx2〜x5、シャーシ間回線8を介してマルチシャーシLAGの組となる装置と接続するポートx6、及びマルチキャスト配信管理フレームに基づき配信情報を保持する配信テーブルx7を具備する。また、対向装置(3〜7)は、それぞれ2つのポート(y1、y2)を有し(yは3から7のいずれかの整数である。)、それぞれ通信装置(SW1、SW2)に物理的に異なる回線を用いて接続する。さらに、対向装置(3〜7)は、ポート(y1、y2)の2本の物理回線をLAGとして構成し、論理的に1本の回線としてフレームの送受信を行う。
【0013】
故障が発生していない状態においては、マルチシャーシLAGを構成する一方の通信装置(例えばSW1とする)がマルチキャスト配信管理フレームを受信した場合、当該フレームをマルチキャスト配信の機能を担う対向装置(
図1の例では対向装置3)に対して転送するとともに、マルチシャーシLAGの組となる装置と接続するポート(例えばポート16)、シャーシ間回線8を介して、他方の通信装置(例えばSW2)に転送することにより、配信情報を共有することが可能である。
【0014】
しかしながら、シャーシ間回線8に故障が発生した場合には、このような手法により配信テーブル情報を共有することができない。シャーシ間回線8に故障が発生した場合、例えば、通信装置SW1と通信装置SW2が独立した別の通信装置として動作する方法が考えられる。すなわち、マルチキャスト配信に関する設定もそれぞれの通信装置で独自に管理することになる。
【0015】
このような方法を採ることにより、マルチキャスト配信管理フレームとマルチキャスト配信データを扱う通信装置が同一である場合は、故障発生後に送受信したマルチキャスト配信管理フレームによる設定に基づくマルチキャスト配信を継続する。一方、マルチキャスト配信管理フレームとマルチキャスト配信データを扱う通信装置が異なる場合には、故障発生以前に共有していたマルチキャスト配信テーブルの情報に基づきマルチキャスト配信を継続する。
【0016】
このような方法を採ることにより、故障発生後に送受信されたマルチキャスト配信管理フレームに関する設定が反映されない可能性はあるものの、マルチキャスト配信を継続することは可能である。
【0017】
図2と
図3の例で説明する。対向装置4と対向装置5に対してマルチキャストデータを配信するような配信テーブルx7を通信装置(SW1、SW2)間で共有している状態においてシャーシ間回線8で故障が発生したとする。
その後、故障発生期間において、
(1)対向装置4がポート41から通信装置SW1のポート12に対してマルチキャスト配信停止フレームを送信、
(2)対向装置5がポート52から通信装置SW2のポート23に対してマルチキャスト配信停止フレームを送信、
(3)対向装置6がポート61から通信装置SW1のポート14に対してマルチキャスト配信開始フレームを送信、
(4)対向装置7がポート72から通信装置SW2のポート25に対してマルチキャスト配信開始フレームを送信、
した場合の動作について考える。
【0018】
マルチキャスト配信停止フレーム、および、マルチキャスト配信開始フレームの送受信が完了した後の通信装置SW1と通信装置SW2の配信テーブル状態、および、配信テーブルの基づくマルチキャスト配信情報を
図3に示す。なお、
図2と
図3において、マルチキャスト配信停止フレーム、および、マルチキャスト配信開始フレームの送受信が完了した後の配信テーブルの状態は、「故障回復時」の列に記載される。
【0019】
故障が発生してない状態であれば、通信装置通信装置SW1と通信装置SW2との間で配信管理フレームが共有され、配信テーブルの記載が修正され対向装置4と対向装置5に対しての状態は「未配信」、対向装置6と対向装置7に対しての状態は「配信」に同期される。
【0020】
しかしながら、シャーシ間回線で故障が発生しているため、配信管理フレームは通信装置通信装置SW1と通信装置SW2との間で共有されず、通信装置SW1と通信装置SW2は配信テーブル情報を同期できない。このため、故障発生状態から回復した後、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間で、配信テーブルの修復(同期)を行うことになる。
【0021】
しかし、故障回復後になされる配信テーブルの同期は、一定時間経過後であり、同期完了までは次のような不具合が発生することになる。
図3の例では、全てのマルチキャスト配信データは対向装置3のポート31から送信されると仮定している。この例の場合、対向装置7に対する配信が課題となる。
【0022】
対向装置4に対するマルチキャスト配信データは、故障発生時には配信状態であり、上記(1)のマルチキャスト配信停止フレームを受信した段階で配信を停止する。つまり、上記(1)のフレームにより故障期間中に配信テーブル17のポート12の状態が「配信」から「未配信」となる。これは、MLDv2で期待された動作である。一方、シャーシ間回線の故障に伴い、マルチキャスト配信停止フレームは通信装置SW2に共有されない。このため、配信テーブル27のポート22の状態は「配信」のままである。しかし、マルチキャスト配信データは対向装置3から通信装置SW1へ送信されているので当該マルチキャスト配信停止フレームにより通信装置SW1はマルチキャスト配信データを停止することができる。
【0023】
対向装置5に対するマルチキャスト配信データは、故障発生時には配信状態であり、故障状態において通信装置SW2が上記(2)のマルチキャスト配信停止フレームを受信した段階で配信停止されることが期待される。しかしながら、シャーシ間回線の故障に伴い、マルチキャスト配信停止情報は通信装置SW1に共有されない。つまり、上記(2)のフレームにより故障期間中に配信テーブル27のポート23の状態が「配信」から「未配信」となるが、配信テーブル17のポート13の状態は「配信」のままである。その結果、マルチキャスト配信データは対向装置3から通信装置SW1へ送信されているので、通信装置SW1はマルチキャスト配信データを停止できず、ポート13〜ポート51間でマルチキャスト配信データによる不必要な帯域占有が生じる。しかし、対向装置5においてマルチキャストデータは廃棄されるためマルチキャスト配信に与える影響は小さい。
【0024】
対向装置6に対するマルチキャスト配信データは、故障発生時には未配信状態であり、上記(3)のマルチキャスト配信開始フレームを受信した段階で配信を開始する。つまり、上記(3)のフレームにより故障期間中に配信テーブル17のポート14の状態が「未配信」から「配信」となる。これは、MLDv2で期待された動作である。一方、シャーシ間回線の故障に伴い、マルチキャスト配信開始フレームは通信装置SW2に共有されない。このため、配信テーブル27のポート24の状態は「未配信」のままである。しかし、マルチキャスト配信データは対向装置3から通信装置SW1へ送信されているので当該マルチキャスト配信開始フレームにより通信装置SW1はマルチキャスト配信データを配信することができる。
【0025】
対向装置7に対するマルチキャスト配信データは、故障発生時には未配信状態であり、故障状態において通信装置SW2が上記(4)のマルチキャスト配信開始フレームを受信した段階で配信開始されることが期待される。しかしながら、シャーシ間回線の故障に伴い、マルチキャスト配信開始情報は通信装置SW1に共有されない。つまり、上記(4)のフレームにより故障期間中に配信テーブル27のポート25の状態が「未配信」から「配信」となるが、配信テーブル17のポート15の状態は「未配信」のままであり、通信装置SW1はポート15から対向装置7のポート71に対して配信を開始する設定を反映させることができない。その結果、マルチキャスト配信データは対向装置3から通信装置SW1へ送信されているので、対向装置7からマルチキャスト配信開始フレームが送信されたにも関わらず、実際にはマルチキャスト配信データが配信されず、マルチキャスト配信に与える影響は大きい(
図3の“A”)。
【0026】
このため、故障から回復した場合、配信テーブル情報の同期による配信テーブルの修復が必要となる。特に、
図3の例における対向装置7に対する配信情報のように、故障発生期間にマルチシャーシLAGを構成する一方の装置が未配信状態から配信状態に遷移した情報は、故障から回復した直後に速やかに同期するような配信テーブル管理を行う必要がある。
【0027】
通信装置SW1と通信装置SW2の配信テーブルを正しく修復するためには、例えば、配信テーブルの変更履歴を保持し、通信装置通信装置SW1と通信装置SW2との間で変更履歴を突合して整合性を判断し、正しい配信テーブル状態に遷移させる方法がある。しかしながら、故障発生状態が継続する時間に配信テーブルの更新が頻発した場合や、故障発生状態継続時間が非常に長い場合などは、前記変更履歴が非常に多くなる可能性があり、整合性の判断、および同期テーブルの回復に多くの時間を要するといった課題がある。さらには、当該変更履歴を保持できない可能性もある。
【0028】
一方で、MLDv2では、対向装置に対する配信状態を確認するために、定期的にマルチキャスト配信管理フレームを送受信することが規定されている。このため、前記定期的なマルチキャスト配信管理フレームの送受信に基づく配信テーブルの修復、および、マルチシャーシLAGを構成する他装置に前記修復情報を通知することにより、故障状態から回復してから一定時間経過後にマルチシャーシLAGを構成する全ての通信装置が持つ配信テーブル情報を修復することが可能である。しかしながら、言い換えれば、一定時間が経過するまでは、配信テーブルの不整合状態が続く可能性があることを示唆している。
【0029】
つまり、従来のマルチシャーシLAGは、故障復帰後におけるそれぞれの通信装置のマルチキャストの配信テーブルを同期させることに時間を要する等の困難があり、要求されたマルチキャスト配信の開始が遅れてしまうなどの課題があった。
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間を接続するシャーシ間回線の故障やマルチシャーシLAGを構成する一方の通信装置の故障から回復した際にマルチキャストの配信テーブルを早期に同期可能な通信装置及び配信テーブル同期方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、上記課題を解決するために、マルチシャーシLAGを構成するネットワークシステムが故障状態から復旧した場合、それぞれの通信装置の配信テーブルの差分を全て配信中とする形で同期することとした。
【0031】
具体的には、本発明に係る通信装置は、マルチシャーシLAG(Link Aggregation Group)を構成する通信装置であって、
マルチキャスト配信管理フレームに基づき、受信装置毎にマルチキャストデータの「配信」あるいは「未配信」を設定した配信情報を保持する配信テーブルと、
前記配信テーブルが保持する配信情報と他の通信装置の配信テーブルが保持する配信情報を受信装置毎に突き合わせ、互いの配信情報が違う場合、前記配信テーブルの配信情報を「配信」に修正し、前記他の通信装置の配信テーブルを修正された前記配信テーブルの配信情報で上書きさせる配信テーブル同期を実行する配信情報制御機能部と、
を備えることを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る配信テーブル同期方法は、マルチキャスト配信管理フレームに基づき、受信装置毎にマルチキャストデータの「配信」あるいは「未配信」を設定した配信情報を保持する配信テーブルを備え、マルチシャーシLAGを構成する通信装置の前記配信テーブルを同期する配信テーブル同期方法であって、
1の通信装置の配信テーブルが保持する配信情報と他の通信装置の配信テーブルが保持する配信情報を受信装置毎に突き合わせ、互いの配信情報が違う場合、前記1の通信装置の配信テーブルの配信情報を「配信」に修正し、
前記他の通信装置の配信テーブルを修正した前記1の通信装置の配信テーブルの配信情報で上書きする、
配信テーブル同期手順を行うことを特徴とする。
【0033】
本発明では、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間を接続するシャーシ間回線や、マルチシャーシLAGを構成する一方の通信装置で故障が発生し、マルチキャスト配信テーブル情報の同期が不可能となった状態から回復した時に、それぞれの通信装置の配信テーブルの情報に差異があった場合、全て「配信」に修正する。本発明は、変更履歴を突き合わせる必要が無く、早期に配信テーブルを同期させることができる。あるいは、本発明は、変更履歴を保持することなく配信テーブルを同期させることができる。また、本発明は、配信テーブルの情報に差異があった場合、全て「配信」に修正するので、要求されたマルチキャスト配信の開始の遅れを最小限に留めることができる。
【0034】
なお、全て「配信」に修正することで配信の必要がない対向装置へもデータが配信される不要配信がなされることになるが、対向装置に対して定期的に送受信するマルチキャスト配信管理フレームを用いて配信テーブルをさらに修正することで不要配信を収束させることができる。
【0035】
従って、本発明は、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間を接続するシャーシ間回線の故障やマルチシャーシLAGを構成する一方の通信装置の故障から回復した際にマルチキャストの配信テーブルを早期に同期可能な通信装置及び配信テーブル同期方法を提供することができる。
【0036】
また、本発明に係る通信装置は、前記他の通信装置との疎通を検知し、不通状態から開通状態となった時に前記配信情報制御機能部に前記配信テーブル同期を実行させる同期トリガ部をさらに備える。故障回復を早期に検知し、できるだけ早く配信テーブルを同期させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間を接続するシャーシ間回線の故障やマルチシャーシLAGを構成する一方の通信装置の故障から回復した際にマルチキャストの配信テーブルを早期に同期可能な通信装置及び配信テーブル同期方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
以下の説明では、MLDv2に基づくマルチキャスト配信を例に、同期する配信テーブルとしてマルチキャスト配信テーブルを指定しているが、本実施形態は本発明の例であり、本実施形態に制限されるものではない。
【0040】
図4は、本実施形態の通信装置SWx0を説明する図である。マルチシャーシLAGは複数の通信装置の通信装置群からなり、各通信装置が持つ配信データを特定のポートから送信するために必要な配信情報を登録する配信テーブルを、通信装置SW間接続ポートを介して同期することが可能である。
【0041】
通信装置SWx0は、マルチシャーシLAGを構成する通信装置であって、
マルチキャスト配信管理フレームに基づき、受信装置毎にマルチキャストデータの「配信」あるいは「未配信」を設定した配信情報を保持する配信テーブルx08と、
前記配信テーブル(例えば208)が保持する配信情報と他の通信装置の配信テーブル(例えば108)が保持する配信情報を受信装置毎に突き合わせ、互いの配信情報が違う場合、前記配信テーブル(例えば208)の配信情報を「配信」に修正し、前記他の通信装置の配信テーブル(例えば108)を修正された前記配信テーブル(例えば208)の配信情報で上書きさせる配信テーブル同期を実行する配信情報制御機能部x00と、
を備えることを特徴とする。
【0042】
本実施形態では、複数台の装置を仮想的に1台の装置とみなして対向装置にLAG接続を提供するマルチシャーシLAG構成を採る通信装置群において、MLDv2に基づいて更新されるマルチキャスト配信情報を同期するための方法について述べる。しかしながら、本特許の適用方法は、マルチキャスト配信、さらにはMLDv2といったプロトコルに制限されることはない。
【0043】
複数台の物理装置を仮想的に1台の装置とみなし、かつ、個々の装置が設定情報を保持するシステムにおいては、
故障が発生していない場合は前記設定情報を共有することにより、個々の装置が保持する設定情報を同期することが可能であるが、
装置、あるいは、仮想的に1台の装置としてみなす複数装置群間を接続する接続回線に故障が発生し、その後、前記故障が復旧した場合に、前記複数装置が個々に保持する設定情報の不整合が生じることがある。
通信装置SWx0は、このような設定情報の不整合を修復する手段を提供するものである。
【0044】
本実施形態では、マルチシャーシLAG構成を採る通信装置群において、
シャーシ間回線を経由して受信した、マルチシャーシLAGを構成する他の通信装置(例えばSW10)の配信情報を、マルチシャーシLAGを構成する自装置(例えばSW20)が持つ配信情報と突合させ、自身の配信テーブル(例えば208)に登録されていない配信情報があった場合に、当該配信情報を自身の配信テーブルに登録するマスター装置と、
シャーシ間回線を経由して受信した通信装置(例えばSW20)の配信情報を、自身(例えばSW10)が持つ配信情報と突合させず、受信した配信情報をマルチシャーシLAGを構成する自装置の配信テーブルに上書きするスレーブ装置と、
を設定する。
本設定は、配信情報の不整合を修復する本開示のマルチシャーシLAGの特徴である。マルチシャーシLAGを構成する通信装置群において、複数の装置が、マスター装置、もしくはスレーブ装置となることは無い。例えば、通信装置SW20がマスター装置であれば、通信装置SW10はスレーブ装置であり、通信装置SW20がスレーブ装置であれば、通信装置SW10はマスター装置である。いずれの通信装置がマスターであるかスレーブであるかは予め設定しておく。マスターとスレーブの設定は、後述する具体的な実施例において、配信テーブルの設定情報の不整合を修復するために必要である。
【0045】
マルチシャーシLAGは、通信装置SW10、通信装置SW20、及び通信装置SW10と通信装置SW20の間を接続するシャーシ間回線3からなる。
それぞれの通信装置SWx0は、
対向装置接続ポートx01、対向装置接続ポートx02、対向装置接続ポートx03、通信装置SW間接続ポートx04、MC−LAG状態判定機能x05、配信テーブル情報送信処理判定機能x06、配信テーブル情報受信処理判定機能x07、同期トリガx10、配信テーブル更新処理確認機能x11、及び配信テーブル情報突合機能x12をもつ配信情報制御機能部x00と、
配信テーブルx08と、
配信状況確認機能部x09と、
を持つ。
【0046】
ここで、スレーブ装置である通信装置SW10は、配信テーブル更新処理確認機能111、および、配信テーブル情報突合機能112を使用しない。また、マスター装置である通信装置SW20は、同期トリガ210を使用しない。このため、これらの機能部を持たない異なる構成の2つの通信装置を用いてネットワークシステムを構成しても良い。あるいは、本実施形態に記載のように、通信装置がいずれの機能部も具備し、マスター装置とスレーブ装置を設定により切り替えることにより、機能を無効化しても良い。
【0047】
本実施形態の配信テーブル同期の特徴とするところは、マルチシャーシLAGを構成する通信装置SW10と通信装置SW20の配信テーブルの配信情報を、配信テーブルの配信情報の削除を行わずに同期し、のちに他の手法によって同期した配信テーブルを修正するところである。
【0048】
例えば、通信装置SW10の配信テーブル108が、ある対向装置へのポートについて「配信」の配信情報を持っており、通信装置SW20の配信テーブル208が、前記ある対向装置へのポートについて「未配信」の配信情報を持っている場合、配信テーブル108に登録されている前記ある対向装置へのポートについて「配信」の配信情報を配信テーブル208の前記ある対向装置へのポートについて新たに記録する(「配信」に修正する)。
【0049】
一方、通信装置SW10の配信テーブル108が、ある対向装置へのポートについて「未配信」の配信情報を持っており、通信装置SW20の配信テーブル208が、前記ある対向装置へのポートについて「配信」の配信情報を持っている場合、配信テーブル108に登録されている前記ある対向装置へのポートについて「未配信」の配信情報に基づき配信テーブル208の前記ある対向装置へのポートについて配信情報を「未配信」に修正するのではなく、配信テーブル208に登録された「配信」の配信情報を保持する。すなわち、本実施形態の配信テーブル同期では、双方の配信テーブルの配信情報が違う場合、マスター装置の配信テーブルに登録されている「未配信」を「配信」に修正しても、「配信」を「未配信」に修正しない。
【0050】
その後、修正されたマスター装置の配信テーブルに登録されている配信情報でスレーブ装置の配信テーブルの配信情報を上書きする。
【0051】
本実施形態の配信テーブル同期を採用すれば、通信装置故障、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間を接続するシャーシ間回線の故障、マルチシャーシLAGを構成する装置群の交換から復旧した後に発生する、通信装置SW10と通信装置SW20の配信テーブルの配信情報不整合を、互いの配信テーブルの配信情報のみを使用して同期を行うことができる。双方の配信テーブルの配信情報が違う場合、「配信」を「未配信」に修正しないため、配信テーブルの同期後、配信テーブルの「未配信」の情報でマルチキャスト配信の停止や遅延は発生しない。
【0052】
本実施形態の配信テーブル同期を採用した場合、本来は配信をしない対向装置に対してもマルチキャストデータが配信される可能性があるが、MLDv2であれば、対向装置への配信情報を定期的に問い合わせているため、配信情報の問い合わせ結果をもって配信テーブルの配信情報を修正することで、自動的に配信が停止される。
【0053】
図5及び
図6に、マルチキャストLAG(MC−LAG)を構成する通信装置SW10及び通信装置SW20の配信テーブルを同期する動作例を記載する。
図5は、通信装置SW10の配信テーブル108に登録された配信情報を通信装置SW20の配信テーブル208に同期させる動作例である。以下の文中に記載したステップs10xは、
図8のフローチャートとの対応を示す。
【0054】
MC−LAG状態判定機能105は、自装置の状態がスレーブ装置かマスター装置かを判定する機能である(ステップs100)。
【0055】
通信装置SW10は、前記他の通信装置との疎通を検知し、不通状態から開通状態となった時に配信情報制御機能部100に前記配信テーブル同期を実行させる同期トリガ110をさらに備える。
同期トリガ110は、配信テーブル108に登録されている配信情報を、マルチシャーシLAGを構成する他の通信装置の配信テーブル208と同期するかどうかを判定する。同期トリガ110が同期すると判定する条件は、装置管理者からのコマンドによる同期実行命令でもよいし、通信装置SWが自律的に配信テーブルの同期を必要と判断したものでもよい(ステップs101)。
【0056】
配信テーブル情報送信処理判定機能106は、MC−LAG状態判定機能105と、同期トリガ110の情報から、配信テーブル108に登録されている配信情報に対して、以降の動作を行う。
【0057】
配信テーブル情報送信処理判定機能106は、
MC−LAG状態判定機能105の判定が「スレーブ装置」であり、同期トリガ110が「配信テーブルの同期が必要である」と判定していれば、配信テーブル108に登録されている配信情報を通信装置SW間接続ポート104から送信する(ステップs102)。
MC−LAG状態判定機能105の判定が「マスター装置」であり、同期トリガ110が「配信テーブルの同期が不要である」と判定していれば、配信テーブル108に登録されている配信情報を通信装置SW間接続ポート104から送信しない。
【0058】
MC−LAG状態判定機能x05の判定が「マスター装置」である場合は、
図6についての動作例の中で述べる。なお、MC−LAG状態判定機能x05の判定が「マスター装置」である場合、通信装置SWx0が持つ配信テーブル情報送信処理判定機能x06は、同期トリガx10を起点に動作をすることは無い。
【0059】
通信装置SW間接続ポートx04は、マルチシャーシLAG構成の通信装置SW10と通信装置SW20とを接続するポートである。配信テーブル108に登録された配信情報は、通信装置SW間接続ポート104、シャーシ間回線3、通信装置SW間接続ポート204を経由して、配信情報受信判定機能207へ送信される(ステップs103)。
【0060】
配信テーブル情報受信処理判定機能207は、MC−LAG状態判定機能205の判定から、配信テーブル108に登録されていた配信情報を登録する方法を判定する。MC−LAG状態判定機能205の判定がマスター装置であれば(ステップs104)、配信テーブル108に登録されていた配信情報を、配信テーブル情報突合機能212へ送信する(ステップs105)。
【0061】
配信テーブル情報突合機能212は、配信テーブル208と、配信テーブル108に登録された配信情報を突合させ(ステップs106)、以降の動作を行う(ステップs107)。
ある対向装置へのポートについての配信情報が、配信テーブル108において「配信」と登録されており、配信テーブル208において「未配信」と登録されている場合、配信テーブル情報突合機能212は、配信テーブル208の前記ある対向装置へのポートについて「未配信」から「配信」に修正する(ステップs108)。
一方、ある対向装置へのポートについての配信情報が、配信テーブル108において「未配信」と登録されており、配信テーブル208において「配信」と登録されている場合、配信テーブル情報突合機能212は、配信テーブル208の前記ある対向装置へのポートについて「配信」のままとする(修正しない)(ステップs109)。
【0062】
図6は、通信装置SW20の配信テーブル208に登録された配信情報を通信装置SW10の配信テーブル108に同期させる動作例である。以下の文中に記載したステップs20xは、
図9のフローチャートとの対応を示す。
【0063】
MC−LAG状態判定機能205は、MC−LAG状態判定機能105と同等に、自装置の状態がスレーブ装置かマスター装置かを判定する機能である。MC−LAG状態判定機能205は、通信装置SW20の状態をマスター装置と判定し(s200)、配信情報送信処理判定部206へ判定状態を伝える。
【0064】
配信テーブル更新処理確認機能211は、
図5で記載した動作例による、配信テーブル208への配信情報の更新について、未更新か、更新中か、更新終了かを判定する。さらに、配信テーブル更新処理確認機能211は、配信テーブル情報送信処理判定機能206へ、判定情報を伝える。
【0065】
配信テーブル情報送信処理判定機能206は、MC−LAG状態判定機能205と、配信テーブル更新処理確認機能211から伝えられた判定情報から、配信テーブル208に登録された配信情報に対して、以下の動作を行う(ステップs201)。
【0066】
配信情報送信処理判定部206は、
MC−LAG状態判定機能205の判定が「マスター装置」であり、配信テーブル更新処理確認機能211の判定が「未更新」であった場合、通信装置SW間接続ポート204から、配信テーブル208に登録された配信情報を送信しない。
MC−LAG状態判定機能205の判定が「マスター装置」であり、配信テーブル更新処理確認機能211の判定が「更新中」であった場合、通信装置SW間接続ポート204から、配信テーブル208に登録された配信情報を送信しない。
MC−LAG状態判定機能205の判定が「マスター装置」であり、配信テーブル更新処理確認機能211の判定が「更新終了」であった場合、通信装置SW間接続ポート204から、配信テーブル208に登録された配信情報を送信する(ステップs202)。
【0067】
配信テーブル情報送信処理判定機能206から送信する、配信テーブル208に登録された配信情報は、
図5の動作例と同様、通信装置SW間接続ポート204、シャーシ間回線3、通信装置SW間接続ポート104を経由して、配信テーブル情報受信処理判定機能107へ送信される(ステップs203)。
【0068】
配信テーブル情報受信処理判定機能107は、MC−LAG状態判定機能105(ステップs204)の判定から、通信装置SW間接続ポート104から受信した、配信テーブル208に登録されていた配信情報を配信テーブル108へ登録する方法を判定する(ステップs205)。配信テーブル情報受信処理判定機能107は、MC−LAG状態判定機能105の判定が「スレーブ装置」であれば、通信装置SW間接続ポート204から受信した、配信テーブル208に登録されていた配信情報を、配信テーブル108に上書きする(ステップs206)。
【0069】
さらに通信装置SWx0は、定期的に対向装置へ配信情報を問い合わせる動作を行う。
【0070】
通信装置SWx0が持つ配信状況確認機能部x09は、対向装置接続ポート(x02、x03)に対して、配信テーブルx08に登録されている配信情報毎に視聴状況を定期的に問い合わせ、その応答が視聴中か未視聴であるかを判定し、以下の動作を行う。
【0071】
配信状況確認機能部x09は、
配信テーブルx08に登録されている配信情報について問い合わせ、対向装置接続ポート(x02,x03)からの応答を視聴中と判定した場合、配信テーブルx08に登録されている当該配信情報の更新を行わない(「配信」のままとする)。
配信テーブルx08に登録されている配信情報について問い合わせ、対向装置接続ポート(x02、x03)からの応答を未視聴と判定した場合、配信テーブルx08に登録されている当該配信情報を削除する(「配信」から「未配信」に修正する)。
【0072】
図5及び
図6の動作例で示した同期手法では、双方の配信テーブルの配信情報が違う場合、「配信」を「未配信」に修正しないため、配信の必要が無いポートに対しても配信を実施する可能性があるが、
図7の動作例の通り、定期的に配信状況の確認を行い、配信の必要がないポートへの配信情報を「配信」から「未配信」に修正することで自動的に配信が停止される。つまり、自動的に配信テーブルが適正に修正される。
【0073】
本実施形態の配信テーブル同期により、マルチシャーシLAGを構成する通信装置間で、配信の停止や遅延を発生させずに配信情報の同期を行うことが可能となる。
【0074】
[付記]
以下は、本実施形態の通信装置を説明したものである。
従来、マルチシャーシLAGを構成する2つの通信装置において、いずれかの通信装置が故障した場合、あるいは、シャーシ間回線が故障した場合、故障期間中のマルチキャストの配信テーブルの同期をとることができないため、故障からの復帰後にそれぞれの通信装置のマルチキャストの配信テーブルが不整合となる。このため、マルチキャスト受信していた配下のユーザの情報が逸失してしまう等の配信テーブルの異常が生じていた。また、配信テーブルの正常化にも時間を要すことで不要な帯域圧迫等の問題が生じていた。
本実施形態の通信装置は、上記課題に対してなされたものである。
【0075】
(1):
マルチシャーシLAG(Link Aggregation Group)を構成する通信装置であって、
マルチキャスト配信管理フレームに基づき、受信装置毎にマルチキャストデータの「配信」あるいは「未配信」を設定した配信情報を保持する配信テーブルと、
前記配信テーブルが保持する配信情報と他の通信装置の配信テーブルが保持する配信情報を受信装置毎に突き合わせ、互いの配信情報が違う場合、前記配信テーブルの配信情報を「配信」に修正し、前記他の通信装置の配信テーブルを修正された前記配信テーブルの配信情報で上書きさせる配信テーブル同期を実行する配信情報制御機能部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0076】
(2):
マルチシャーシLAG(Link Aggregation Group)を構成する通信装置であって、
マルチキャスト配信管理フレームに基づき、受信装置毎にマルチキャストデータの「配信」あるいは「未配信」を設定した配信情報を保持する配信テーブルと、
前記配信テーブルが保持する配信情報を他の通信装置へ送信し、前記他の通信装置において、送信した前記配信情報と前記他の通信装置の配信テーブルが保持する配信情報を受信装置毎に突き合わせ、互いの配信情報が違う場合に配信情報を「配信」に修正された前記他の通信装置の配信テーブルの配信情報で、前記配信テーブルを上書きする配信テーブル上書きを実行する配信情報制御機能部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0077】
(3):
前記配信情報制御機能部は、
前記他の通信装置との間でマルチキャスト配信管理フレームを定期的に送受信し、前記他の通信装置からのマルチキャスト配信管理フレームに基づいて前記配信テーブルの配信情報を修正することを特徴とする上記(1)(2)に記載の通信装置。
【0078】
本実施形態の通信装置は、マルチシャーシLAGを構成する他の通信装置との配信テーブルの同期において、相互に有する同期テーブルの情報を排他論理的(OR条件)に結合させることで、マルチキャスト受信していた配下のユーザの情報を確実に維持させることができる。