(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
位置検出装置、位置検出方法、および、蒸着装置の一実施形態を説明する。
[EFEM]
図1および
図2を参照して、前段モジュールの一例であるEFEM(Equipment Front End Module)10の構成を説明する。以下では、EFEM10の構成のなかで、表面撮影部および裏面撮影部の構成を主に説明する。
【0018】
図1が示すように、EFEM10は、ステージ10S、表面撮影部を構成する複数のマークカメラ11、および、裏面撮影部を構成する複数のロードカメラ12を備える。複数のロードカメラ12は、例えば、基板を収容する筐体13の外側に位置する。以下では、EFEM10が、3台のマークカメラ11と、3台のロードカメラ12とを備える例を説明する。
【0019】
ステージ10Sは、ストッカーに収容された処理前の基板を1枚ずつ支持する。ステージ10Sの支持する基板は、非透過性の処理基板Wと、光透過性の校正用基板W0とを含む。処理基板Wは、例えば、光反射性の薄膜に覆われたガラス基板や、基板そのものが非透過性を有するシリコン基板である。校正用基板W0は、例えば、石英基板やアルミナ基板である。処理基板Wおよび校正用基板W0は、それぞれ表面WFと裏面WRとを含む。校正用基板W0の有する熱膨張率は、高温下での熱膨張が抑えられる観点において、3ppm/℃以下であることが好ましい。
【0020】
EFEM10は、表面WFを上方に向けて基板を配置する。表面WFは、3個の基板マークWmを有する。基板マークWmは、例えば、表面WFのなかで高い光反射性を有した薄膜のパターン、あるいは、表面WFのなかで高い光吸収性を有した薄膜のパターンである。基板マークWmは、表面WFと対向する平面視において、例えば、矩形状や十字状などを有する。処理基板Wの基板マークWmは、表面WFの特定位置と、蒸着マスクの開口とを合わせるために用いられる。校正用基板W0の基板マークWmは、3台のマークカメラ11間の相対位置を算出するために用いられる。校正用基板W0の基板マークWmは、3台のロードカメラ12間の相対位置を算出するために用いられる。
【0021】
各マークカメラ11は、例えば、CCDカメラであり、各基板マークWmに1台ずつ対応づけられる。各マークカメラ11は、ステージ10Sに支持される基板W,W0よりも上方(表側)に位置する。1台のマークカメラ11の光軸1Aの位置は、他のマークカメラ11の光軸1Aの位置に対して固定されている。各マークカメラ11は、基板W,W0の表面WFと対向し、別々の基板マークWmを撮影する(表面撮影する)。
【0022】
各マークカメラ11の撮影した画像は、表面画像IM1である。画像処理部20は、校正用基板W0の表面画像IM1を校正処理に用いる。また、画像処理部20は、処理基板Wの表面画像IM1を表面位置の特定処理に用いる。
【0023】
各ロードカメラ12は、例えば、CCDカメラであり、各基板マークWmに1台ずつ対応づけられる。各ロードカメラ12は、ステージ10Sに支持される基板W,W0よりも下方(裏側)に位置する。1台のロードカメラ12の光軸2Aの位置は、他のロードカメラ12の光軸2Aの位置に対して固定されている。各ロードカメラ12は、基板W,W0の裏面WRと対向し、別々の部分を撮影する(裏面撮影する)。
【0024】
各ロードカメラ12の撮影した画像は、第1裏面画像IM2である。校正用基板W0の第1裏面画像IM2は、校正用基板W0を通した基板マークWmの画像である透過画像を含む。画像処理部20は、校正用基板W0の第1裏面画像IM2を校正処理に用いる。処理基板Wの第1裏面画像IM2は、処理基板Wの外周部Wpを含む。画像処理部20は、処理基板Wの第1裏面画像IM2を裏面位置の特定処理に用いる。
【0025】
図2(a)を参照して、マークカメラ11の撮影する領域を説明し、
図2(b)を参照して、ロードカメラ12の撮影する領域を説明する。
図2(a)(b)は、各基板W,W0の表面WFと対向する平面視での基板の平面構造と、各カメラ11,12の撮影する領域とを示す。なお、処理基板Wと校正用基板W0とでは、形状、大きさ、基板マークの配列が共通しているため、
図2(a)(b)では、説明の便宜上、円板状の校正用基板W0を例示し、また、各マークカメラ11が撮影する領域と、各ロードカメラ12が撮影する領域とを、校正用基板W0に重ねて示す。
【0026】
図2(a)が示すように、ステージ10Sに校正用基板W0を載置するロボットは、仮想的な配置領域WA(
図2(a)における二点鎖線の大円)を定める。配置領域WAは、校正用基板W0を配置するべき目標の領域である。ステージ10Sに校正用基板W0を載置するロボットは、配置領域WAと、校正用基板W0の輪郭E(
図2(a)の実線)とがほぼ一致するように、校正用基板W0を配置する。
【0027】
校正用基板W0の表面WFは、3個の基板マークWmを備える。3個の基板マークWmは、校正用基板W0の周方向に並び、校正用基板W0の外周部Wpよりも基板の中心寄りに位置している。なお、処理基板Wの表面WFもまた同様に、3個の基板マークWmを備える。
【0028】
各マークカメラ11は、画像を撮影する領域を、撮影領域1Z(
図2(a)における二点鎖線の小円)として定める。各撮影領域1Zは、配置領域WAの周方向にほぼ等配されている。マークカメラ11の光軸1Aは、撮影領域1Zの中心に位置する。各撮影領域1Zは、基板マークWmを1個ずつ含む。なお、基板W,W0の搬送において、搬送後の位置と、その目標位置との差異は、搬送精度であり、基板W,W0の搬送精度は、所定の範囲内に設定されている。マークカメラ11の撮影領域1Zは、こうした搬送精度の範囲よりも十分に大きい。
【0029】
各ロードカメラ12は、画像を撮影する領域を、撮影領域2Z(
図2(b)における二点鎖線の小円)として定める。各撮影領域2Zは、配置領域WAの周方向にほぼ等配されている。ロードカメラ12の光軸2Aは、撮影領域2Zの中心に位置する。各撮影領域2Zは、別々の基板マークWmの透過画像(
図2(b)における破線の矩形)を1個ずつ含む。また、各撮影領域2Zは、外周部Wpにおける平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界を含む。
【0030】
上述したように、EFEM10には位置検出装置が搭載され、位置検出装置は、表面撮影部を校正する複数のマークカメラ11、裏面撮像部を校正する複数のロードカメラ12、および、画像処理部20を含む。
【0031】
[校正処理:EFEM10]
画像処理部20は、中央演算処理装置、および、メモリを備えて、校正処理、表面位置の特定処理、裏面位置の特定処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、画像処理部20は、各種処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。つまり画像処理部20は、1)ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、2)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(マイクロコンピュータ)、あるいは、3)それらの組み合わせ、を含む回路として構成される。画像処理部20は、3つの基板マークWmの位置を、相対座標系の座標である相対座標として記憶している。
【0032】
図3が示すように、画像処理部20は、校正処理において、校正用基板W0の表面画像IM1に対する画像解析を行う(ステップS11)。すなわち、画像処理部20は、基板マークWmを検出するためのエッジ検出などを表面画像IM1に施し、マークカメラ11のカメラ座標系において、光軸1Aに対する基板マークWmの相対位置を算出する。なお、画像処理部20は、カメラ座標系における光軸1Aの位置を、例えば、表面画像IM1の中心とする。
【0033】
次いで、画像処理部20は、校正用基板W0の第1裏面画像IM2に対する画像解析を行う(ステップS12)。すなわち、画像処理部20は、エッジ検出などを第1裏面画像IM2に施し、ロードカメラ12のカメラ座標系において、光軸2Aに対する基板マークWmの相対位置を算出する。なお、画像処理部20は、カメラ座標系での光軸2Aの位置を、例えば、第1裏面画像IM2の中心とする。
【0034】
次いで、画像処理部20は、マークカメラ11のカメラ座標系での基板マークWmの位置、および、その基板マークWmの相対座標を用い、上記相対座標系において、マークカメラ11の光軸位置を算出する。また、画像処理部20は、ロードカメラ12のカメラ座標系での基板マークWmの位置、および、その基板マークWmの相対座標を用い、ロードカメラ12の光軸位置を、上記相対座標系で算出する(ステップS13)。すなわち、画像処理部20は、3つのマークカメラ11の光軸1A間における相対位置、および、3つのロードカメラ12の光軸2A間における相対位置を算出する。画像処理部20は、カメラ間の相対位置の一例として、各マークカメラ11の光軸位置、および、各ロードカメラ12の光軸位置を記憶する。画像処理部20は、校正処理を行う都度、各マークカメラ11の光軸位置、および、各ロードカメラ12の光軸位置を更新する。
【0035】
このように、表面撮影部でのカメラ間の相対位置と、裏面撮影部でのカメラ間の相対位置とが、共通する基板マークWmの撮影によって算出される。一方、これら表面撮影部でのカメラ間の相対位置と、裏面撮影部でのカメラ間の相対位置とは、以下の形態でも得られる。すなわち、各マークカメラ11が、第1の校正用基板の基板マークWmを撮影し、各ロードカメラ12が、第2の校正用基板の基板マークWmを撮影し、これらの撮影結果から、各別の相対位置を算出することも可能ではある。但し、各別の校正用基板を撮影する形態では、校正用基板間での基板マークWmの位置の誤差や、校正用基板間での搬送誤差などが、表裏の撮影結果に各別に含まれてしまう。この点、共通する基板マークWmを表裏で一度に撮影する形態であれば、表面撮影部でのカメラ間の相対位置と、裏面撮影部でのカメラ間の相対位置とに、上述した誤差が含まれることが抑えられる。
【0036】
[表面位置の特定処理:EFEM10]
画像処理部20は、表面位置の特定処理において、処理基板Wの各表面画像IM1を用い、パターン中心の位置を算出する。すなわち、画像処理部20は、エッジ検出などを各表面画像IM1に施し、マークカメラ11のカメラ座標系において、基板マークWmの位置を算出する。次いで、画像処理部20は、上記各マークカメラ11の光軸位置と、カメラ座標系での基板マークWmの位置とから、基板マークWm間の相対位置を算出する。そして、画像処理部20は、パターン中心を中心とする仮想円が、各基板マークWmの相対位置を通るように、上記相対座標系において、パターン中心の位置を算出する。
【0037】
[裏面位置の特定処理:EFEM10]
次に、処理基板Wを用いた裏面位置の特定処理を説明する。
図4(a)は、裏面WRと対向する方向から見た処理基板Wの平面図であり、
図4(b)は、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界と、光軸2Aとの相対位置を示す図である。なお、
図4(a)(b)では、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界を説明する便宜上、3台のロードカメラ12のなかの1台のみを図示する。
【0038】
図4が示すように、処理基板Wの外周部Wpは、平坦部Wp1とベベル部Wp2とを備える。平坦部Wp1は、処理基板Wの側面に沿う平面に沿って広がる平坦状の部分である。各ベベル部Wp2は、処理基板Wの厚さ方向に沿う断面(
図4(b)参照)において、曲率中心がベベル部Wp2に対して処理基板Wの中心側に位置する曲率を有する。
【0039】
ロードカメラ12の撮影領域2Zは、平坦部Wp1の一部と、その一部につながるベベル部Wp2とを含む。ロードカメラ12の光軸2Aは、例えば、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界の近傍に位置する。外周部Wpに照射される光は、処理基板Wに対するロードカメラ12側(裏面側)から、ロードカメラ12の光軸2Aに沿って進行する平行光でもよいし、ロードカメラ12の光軸2Aとは異なる方向に進行する平行光であってもよい。外周部Wpに照射される光の光軸と、ロードカメラ12の光軸2Aとが一致するテレセントリック光学系をロードカメラ12が備える場合、ロードカメラ12は、例えば、テレセントリック光学系を用い、外周部Wpに光を照射する。処理基板Wの外周部Wpに照射される光の光軸と、ロードカメラ12の光軸2Aとが異なる場合、外周部Wpに光を照射する照射部は、ロードカメラ12とは別体であり、処理基板Wに対して、ロードカメラ12と同じ側に位置する。
【0040】
ロードカメラ12は、撮影領域2Zから反射される光による画像を形成する。ロードカメラ12の撮影する第1裏面画像IM2は、平坦部Wp1で反射された光による第1像IM21と、その平坦部Wp1につながるベベル部Wp2で反射された光による第2像IM22とを含む。
【0041】
例えば、裏面WRと直交する方向に沿って裏面WRに平行光が照射されるとき、平坦部Wp1に入射する光の入射角はほぼ0°であり、平坦部Wp1から射出される正反射光の反射角もほぼ0°である。そのため、裏面WRと直交する光軸を有したロードカメラ12は、非常に高い明度で第1像IM21を生成する。これに対して、ベベル部Wp2は曲面であるため、ベベル部Wp2に入射した光の入射角は、0°から処理基板Wの輪郭Eに向けて連続的に変わり、ベベル部Wp2から射出される正反射光の反射角は、0°よりもさらに大きく変わる。そのため、裏面WRと直交する光軸を有したロードカメラ12は、第1像IM21と比べて非常に低い明度で第2像IM22を生成する。結果として、第1裏面画像IM2では、第1像IM21と第2像IM22との間で、コントラストに大きな差異が生じる。
【0042】
画像処理部20は、第1裏面画像IM2に対して、コントラストに基づくエッジ検出を行い、第1像IM21と第2像IM22との境界を抽出する。そして、画像処理部20は、抽出された第1像IM21と第2像IM22との境界、すなわち、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界を、処理基板Wの外形の一部(境界部分)として特定する。画像処理部20は、第1像IM21と第2像IM22との境界の位置を相対座標系で算出し、それによって、処理基板Wの外形を特定する。
【0043】
図5は、ロードカメラ12が撮影した画像の一例である。
図5が示すように、第1裏面画像IM2は、処理基板Wの像IMWと、処理基板Wの背景像IMBとを含む。処理基板Wの像IMWのなかで、相対的に明度の高い部分が、平坦部Wp1の像、すなわち、第1像IM21である。これに対して、処理基板Wの像IMWのなかで、相対的に明度の低い部分が、ベベル部Wp2の像、すなわち、第2像IM22である。処理基板Wの背景像IMBにおける明度は、第1像IM21の明度よりも低く、かつ、第2像IM22の明度よりも高い。
【0044】
ここで、処理基板Wの輪郭Eとは、処理基板Wにおいて最も外側に位置する点を結んだ外形線であり、ベベル部Wp2の外形線でもある。上述したように、このベベル部Wp2は、通常、所定の曲率を有した曲面で構成される。ベベル部Wp2の曲面は、処理基板Wの輪郭Eに向けて、処理基板Wの像IMWの明度を徐々に低くし、ベベル部Wp2の像である第2像IM22と、処理基板Wの背景像IMBとの境界を、不明りょうとする。そして、第2像IM22と背景像IMBとの境界から処理基板Wの輪郭Eを検出する際には、その位置の精度に大きな誤差を生じさせてしまう。特に、処理基板Wの位置に数μmの精度が求められる検出では、上述した境界での不明りょうさが非常に大きな誤差となる。
【0045】
これに対して、ベベル部Wp2と平坦部Wp1との境界は、処理基板Wにおいて面方向が変わる境界であり、例えば、平坦部Wp1と対向する方向からの撮影では、それが明確に検出される境界でもある。それゆえに、第1像IM21と第2像IM22との境界が、処理基板Wの外形として特定される上記構成であれば、その外形を用いた処理基板Wの位置の検出において、検出の精度を向上することが可能となる。
【0046】
画像処理部20は、裏面位置の特定処理において、処理基板Wの各第1裏面画像IM2を用い、第1裏面中心の位置を算出する。すなわち、画像処理部20は、エッジ検出などを各第1裏面画像IM2に施し、ロードカメラ12のカメラ座標系において、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界部分の位置を算出する。次いで、画像処理部20は、各ロードカメラ12の光軸位置と、カメラ座標系での境界部分の位置とから、境界部分間の相対位置を算出する。そして、画像処理部20は、第1裏面中心を中心とする仮想円が、各境界部分を通るように、上記相対座標系において、第1裏面中心の位置を算出する。
【0047】
[蒸着装置]
図6を参照して、上記EFEM10を搭載した蒸着装置30を説明する。なお、蒸着装置30は、EFEM10と蒸着チャンバー34とを備えていればよい。
図6が示すように、蒸着装置30は、搬送チャンバー31を備え、搬送チャンバー31には、ゲートバルブを介して搬出入チャンバー32が接続されている。搬送チャンバー31は、基板W,W0を搬送する搬送ロボットを備える。搬出入チャンバー32は、搬送チャンバー31の外部から搬送チャンバー31に基板W,W0を搬入し、かつ、搬送チャンバー31から搬送チャンバー31の外部に基板W,W0を搬出する。搬出入チャンバー32には、ゲートバルブを介してEFEM10が接続されている。EFEM10は、搬出入チャンバー32に校正用基板W0を搬送し、かつ、搬出入チャンバー32から校正用基板W0を搬入する。EFEM10は、搬出入チャンバー32に成膜前の処理基板Wを搬送し、かつ、搬出入チャンバー32から成膜後の処理基板Wを搬入する。
【0048】
搬送チャンバー31には、2つの蒸着チャンバー34、反転チャンバー35、および、スパッタチャンバー36が接続されている。各チャンバーは、ゲートバルブを介して搬送チャンバー31に接続されている。蒸着チャンバー34は、真空蒸着法によって処理基板Wに所定の薄膜を形成する。反転チャンバー35は、反転チャンバー35に搬入された処理基板Wを反転させる。反転チャンバー35での反転は、鉛直方向における処理基板Wの表面WFと裏面WRとの位置を、処理基板Wが反転チャンバー35に搬入されたときと、反転チャンバー35から搬出されるときとの間において、反対にすることである。スパッタチャンバー36は、スパッタ法によって処理基板Wに所定の薄膜を形成する。
【0049】
蒸着装置30は、制御装置30Cを備え、制御装置30Cは、上述した画像処理部20を含み、蒸着装置30が備える各チャンバー31,32,34,35,36の駆動を制御する。制御装置30Cは、例えば、搬送ロボットの駆動を制御して、搬送チャンバー31に接続された1つのチャンバーから他のチャンバーに、搬送チャンバー31を介して搬送ロボットに処理基板Wを搬送させる。制御装置30Cは、例えば、各蒸着チャンバー34における成膜処理、および、スパッタチャンバー36における成膜処理に関わる機構の駆動を制御することによって、各蒸着チャンバー34、および、スパッタチャンバー36に所定の薄膜を形成させる。
【0050】
[蒸着チャンバーの構成]
図7から
図9を参照して、蒸着チャンバー34の構成を説明する。以下では、蒸着チャンバー34の構成のなかで、校正処理に用いられる構成、および、処理基板Wに蒸着を行うための機構である蒸着機構の構成を主に説明する。
【0051】
図7が示すように、蒸着チャンバー34は、昇華させた蒸着材料を放出する蒸着源41と、複数の蒸着カメラ42と、基板W,W0を支持する基板ホルダー43と、蒸着マスクMを支持するマスクホルダー44と、駆動源45と、駆動機構46とを備える。蒸着チャンバー34において、蒸着源41、基板ホルダー43、および、マスクホルダー44を収容する筐体47は、排気系に接続されて所定の圧力まで減圧される。なお、以下では、3台の蒸着カメラ42を備える例を説明する。
【0052】
蒸着源41は、蒸着材料を加熱することによって、蒸着材料42Mによる薄膜を処理基板Wの表面WFに形成する。蒸着源41には、例えば、抵抗加熱式の蒸着源、誘導加熱式の蒸着源、および、電子ビームを備える蒸着源などを用いることができる。蒸着材料42Mは、蒸着源41によって加熱されることによって蒸発する材料であり、処理基板Wの表面WFに形成される薄膜の材料である。蒸着材料42Mは、例えば有機物であるが、無機物であってもよい。
【0053】
3台の蒸着カメラ42は、例えば、CCDカメラであり、各基板マークに1台ずつ対応づけられる。各蒸着カメラ42は、基板ホルダー43に支持される基板W,W0よりも上方(裏側)で、かつ、筐体47の外側に固定されている。1台の蒸着カメラ42の光軸4Aの位置は、他の蒸着カメラ42の光軸4Aの位置に対して固定されている。各蒸着カメラ42は、基板W,W0の裏面WRと対向し、別々の部分を撮影する(裏面撮影する)。
【0054】
各蒸着カメラ42の撮影した画像は、第2裏面画像IM4である。校正用基板W0の第2裏面画像IM4は、校正用基板W0を通した基板マークWmの透過画像を含む。画像処理部20は、校正用基板W0の第2裏面画像IM4を校正処理に用いる。処理基板Wの第2裏面画像IM4は、処理基板Wの外周部Wpを含む。画像処理部20は、処理基板Wの第2裏面画像IM4を裏面位置の特定処理に用いる。
【0055】
基板ホルダー43は、3台の蒸着カメラ42と蒸着源41との間に位置する。基板ホルダー43は、仮想的な配置領域WAを定める。配置領域WAは、基板W,W0の配置されるべき目標の領域である。基板ホルダー43は、反転チャンバー35から蒸着チャンバー34に搬入される基板W,W0を支持する。基板ホルダー43は、蒸着チャンバー34から反転チャンバー35に基板W,W0を搬出可能とする。基板ホルダー43は、処理基板Wの表面WFを蒸着源41側(
図7の下側)に向けて表面WFの外周部Wpを支持し、処理基板Wの裏面WRと3台の蒸着カメラ42とを対向させる。
【0056】
この際、例えば、基板ホルダー43などの障害物が存在するため、表面WFに位置する基板マークWmは、表面WFと対向する側からは撮影され難い。また、表面WFに位置する基板マークWmは、処理基板Wが非透過性を有するため、処理基板Wが収容された状態では、裏面WRと対向する側からも撮影され難い。すなわち、基板ホルダー43が基板W,W0を支持する状態では、基板マークWmの位置を検出することが困難となっている。
【0057】
マスクホルダー44は、3台の蒸着カメラ42と蒸着源41との間に位置する。マスクホルダー44は、仮想的な配置領域MAを定める。配置領域MAは、蒸着マスクMの配置されるべき目標の領域である。マスクホルダー44は、蒸着マスクMの外周部を支持し、基板W,W0の表面WFと蒸着マスクMとを対向させる。蒸着マスクMは、基板Wの表面WFに所定のパターンを形成するための開口を有する。マスクホルダー44は、基板W,W0に対する蒸着源41側に蒸着マスクMを配置する。蒸着マスクMは、処理基板Wでの周方向の全体で、処理基板Wからはみ出す大きさを有する。蒸着マスクMは、処理基板Wからはみ出した部分に、3個のマスクマークMmを有する。なお、蒸着マスクMが有するマスクマークMmは、蒸着カメラ42による撮影によって、蒸着マスクの中心位置を特定することが可能となっている。
【0058】
駆動源45は、駆動機構46を駆動するための動力を出力する。駆動機構46は、駆動源45の動力を受けて、基板ホルダー43を水平方向に移動させる。また、駆動機構46は、駆動源45の動力を受けて、マスクホルダー44と基板ホルダー43とを基板W,W0の周方向に回転させる。駆動機構46は、基板ホルダー43の独立した回転と、マスクホルダー44の独立した回転と、基板ホルダー43とマスクホルダー44とを一体とした回転とを切り換える。また、駆動機構46は、駆動源45の動力を受けて、マスクホルダー44と基板ホルダー43とを昇降させる。駆動機構46は、基板ホルダー43の独立した昇降と、マスクホルダー44の独立した昇降と、基板ホルダー43とマスクホルダー44とを一体とした昇降とを切り換える。
【0059】
例えば、基板ホルダー43の独立した水平方向での移動や、基板ホルダー43の独立した回転は、処理基板Wのパターン中心と、蒸着マスクMの中心であるマスク中心との整合に用いられる。マスクホルダー44の独立した回転は、蒸着マスクMを所定の位置に配置するために用いられる。基板ホルダー43とマスクホルダー44とを一体とした回転は、処理基板Wの表面に蒸着材料を蒸着させるときに用いられる。
【0060】
例えば、基板ホルダー43の独立した昇降は、基板W,W0の搬入および搬出や、蒸着用の所定位置への処理基板Wの配置に用いられる。マスクホルダー44の独立した昇降は、蒸着マスクMの搬入および搬出や、蒸着用の所定位置への蒸着マスクMの配置に用いられる。基板ホルダー43とマスクホルダー44とを一体とした昇降は、処理基板Wおよび蒸着マスクMを一体として回転させる際の移動に用いられる。
【0061】
図8は、各蒸着カメラ42の撮影する領域を示す。なお、処理基板Wと校正用基板W0とでは、各蒸着カメラ42の撮影する領域に対する相対的な位置がほぼ等しいため、
図8では、説明の便宜上、各蒸着カメラ42が撮影する領域を校正用基板W0に重ねて示す。
【0062】
図8が示すように、校正用基板W0は、配置領域WAに配置され、蒸着マスクMは、配置領域MAに配置される。マスクマークMmの位置は、校正用基板W0の輪郭Eよりも外側に位置する。マスクマークMmは、校正用基板W0の裏面WRと対向する平面視において矩形状を有するが、矩形状とは異なる形状、例えば、十字状などを有してもよい。
【0063】
各蒸着カメラ42は、画像を撮影する領域を撮影領域4Z(
図8における二点鎖線の小円)として定める。各撮影領域4Zは、配置領域WAの周方向にほぼ等配されている。蒸着カメラ42の光軸4Aは、撮影領域4Zの中心に位置する。各撮影領域4Zは、別々のマスクマークMmと、別々の基板マークWmの透過画像とを含む。また、撮影領域4Zは、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界を含む。
【0064】
[校正処理:蒸着チャンバー34]
図9が示すように、画像処理部20は、校正処理において、校正用基板W0の第2裏面画像IM4に対する画像解析を行う(ステップS21)。すなわち、画像処理部20は、エッジ検出などを各第2裏面画像IM4に施し、蒸着カメラ42のカメラ座標系において、光軸4Aに対する基板マークWmの相対位置を算出する。なお、画像処理部20は、カメラ座標系における光軸4Aの位置を、例えば、第2裏面画像IM4の中心とする。
【0065】
次いで、画像処理部20は、蒸着カメラ42のカメラ座標系での基板マークWmの位置、および、その基板マークWmの相対座標を用い、上記相対座標系において、蒸着カメラ42の光軸位置を算出する(ステップS22)。すなわち、画像処理部20は、3つの蒸着カメラ42の光軸4A間における相対位置を算出する。画像処理部20は、カメラ間の相対位置の一例として、各蒸着カメラ42の光軸位置を記憶する。画像処理部20は、校正処理を行う都度、各蒸着カメラ42の光軸位置を更新する。
【0066】
[裏面位置の特定処理:蒸着チャンバー34]
画像処理部20は、裏面位置の特定処理において、蒸着マスクMの各第2裏面画像IM4を用い、マスク中心の位置を算出する。すなわち、画像処理部20は、エッジ検出などを各第2裏面画像IM4に施し、蒸着カメラ42のカメラ座標系において、マスクマークMmの位置を算出する。次いで、画像処理部20は、各蒸着カメラ42の光軸位置と、カメラ座標系でのマスクマークMmの位置とから、マスクマークMm間の相対位置を算出する。そして、画像処理部20は、マスク中心を中心とする仮想円が、各マスクマークMmの相対位置を通るように、上記相対座標系において、マスク中心の位置を算出する。
【0067】
画像処理部20は、裏面位置の特定処理において、処理基板Wの各第2裏面画像IM4を用い、第2裏面中心の位置を算出する。すなわち、画像処理部20は、エッジ検出などを各第2裏面画像IM4に施し、蒸着カメラ42のカメラ座標系において、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界部分の位置を算出する。次いで、画像処理部20は、各蒸着カメラ42の光軸位置と、カメラ座標系での境界部分の位置とから、境界部分間の相対位置を算出する。そして、画像処理部20は、第2裏面中心を中心とする仮想円が、各境界部分を通るように、上記相対座標系において、第2裏面中心の位置を算出する。
【0068】
[作用]
図10を参照して、制御装置30Cが行う校正処理、表面位置の特定処理、裏面位置の特定処理、および、位置合わせ処理を説明する。
[校正処理:制御装置30C]
制御装置30Cは、校正処理において、まず、EFEM10の配置領域WAに校正用基板W0を配置させる。次いで、制御装置30Cは、基板マークWmを含む表面画像IM1を、各マークカメラ11に撮影させる。また、制御装置30Cは、基板マークWmの透過画像を含む第1裏面画像IM2を、各ロードカメラ12に撮影させる。続いて、制御装置30Cは、校正用基板W0を蒸着チャンバー34に搬入し、基板マークWmの透過画像、および、マスクマークMmを含む第2裏面画像IM4を、蒸着カメラ42に撮影させる。
【0069】
そして、制御装置30Cは、表面画像IM1と、基板マークWmの相対座標とを用い、カメラ間の相対位置である、各マークカメラ11の光軸位置を算出する。また、制御装置30Cは、第1裏面画像IM2と、基板マークWmの相対座標とを用い、カメラ間の相対位置である、各ロードカメラ12の光軸位置を算出する。制御装置30Cは、第2裏面画像IM4と、基板マークWmの相対座標とを用い、カメラ間の相対位置である、各蒸着カメラ42の光軸位置を算出する。
【0070】
制御装置30Cは、これら各マークカメラ11の光軸位置P1、各ロードカメラ12の光軸位置P2、および、各蒸着カメラ42の光軸位置P3を記憶する。なお、制御装置30Cは、所定枚数の処理基板Wの処理が行われる都度、上記校正処理を行う。
【0071】
[表面位置の特定処理]
制御装置30Cは、表面位置の特定処理において、まず、配置領域WAに処理基板Wを配置させる。次いで、制御装置30Cは、基板マークWmを含む表面WFの表面画像IM1を、各マークカメラ11に撮影させる。
【0072】
そして、制御装置30Cは、表面画像IM1と、各マークカメラ11の光軸位置とを用い、パターン中心を中心とする仮想円が、各基板マークWmを通るように、上記相対座標系において、パターン中心の位置を算出する。
【0073】
[裏面位置の特定処理]
制御装置30Cは、裏面位置の特定処理において、まず、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界を含む第1裏面画像IM2を、各ロードカメラ12に撮影させる。次いで、制御装置30Cは、処理基板Wを蒸着チャンバー34に搬入し、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界、および、マスクマークMmを含む第2裏面画像IM4を、各蒸着カメラ42に撮影させる。
【0074】
そして、制御装置30Cは、第1裏面画像IM2と、各ロードカメラ12の光軸位置とを用い、第1裏面中心を中心とする仮想円が、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界を通るように、上記相対座標系において、第1裏面中心の位置を算出する。また、制御装置30Cは、第2裏面画像IM4と、各蒸着カメラ42の光軸位置とを用い、第2裏面中心を中心とする仮想円が、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界を通るように、上記相対座標系において、第2裏面中心の位置を算出する。また、制御装置30Cは、第2裏面画像IM4と、各蒸着カメラ42の光軸位置とを用い、マスク中心を中心とする仮想円が、各マスクマークMmを通るように、上記相対座標系において、マスク中心の位置を算出する。
【0075】
なお、裏面位置の特定処理は、上述した表面位置の特定処理とともに、EFEM10の配置領域WAに配置された処理基板Wに対して行うことが可能である。この際に、EFEM10における各マークカメラ11による基板マークWmの撮影と、各ロードカメラ12による平坦部Wp1およびベベル部Wp2の撮影とは、同時に行ってもよいし、各別のタイミングで行ってもよい。2つの撮影を各別のタイミングで行うときには、各マークカメラ11による撮影を各ロードカメラ12による撮影よりも先に行ってもよいし、各ロードカメラ12による撮影を各マークカメラ11による撮影よりも先に行ってもよい。2つの撮影を各別のタイミングで行うときには、2つの撮影の間に処理基板Wを回転させてもよい。
【0076】
また、各マークカメラ11による基板マークWmの撮影は、同時に行ってもよいし、各別のタイミングで行ってもよいし、各ロードカメラ12による平坦部Wp1およびベベル部Wp2の撮影も、同時に行ってもよいし、各別のタイミングで行ってもよい。加えて、1つのカメラによって撮影を行うごとに処理基板Wを回転させてもよい。特に、基板マークWmの位置は、処理基板Wごとに異なることがあり、また、処理基板Wの位置を1つの位置に固定した状態では、全ての基板マークWmを撮影することができないことがある。この場合には、1つの基板マークWmを撮影するごとに、処理基板Wを回転させればよい。処理基板Wを回転させつつ複数の基板マークを撮影する場合には、複数の基板マーク間における相対位置を基板Wの回転角度によって把握することができる。なお、処理基板Wの回転角度は、回転角度を検出する検出部によって検出することが可能であり、検出部には、例えばエンコーダーを用いることができる。
【0077】
[位置合わせ処理]
制御装置30Cは、例えば、n枚目(nは1以上の整数)の処理基板Wの撮影によるパターン中心、および、第1裏面中心を用い、パターン中心と第1裏面中心とのずれ量(Δx,Δy,Δθ)を算出する。次いで、制御装置30Cは、n枚目の処理基板Wを蒸着チャンバー34に搬入する。そして、制御装置30Cは、n枚目の処理基板Wの第2裏面中心に上記ずれ量を反映させて、反映後の第2裏面中心をマスク中心に合わせるための補正量を算出する。制御装置30Cは、この補正量に相当する駆動量で駆動機構46を駆動させるべく、駆動源45を駆動するための駆動信号SIGを出力する。
【0078】
このように、上述した蒸着装置30によれば、マークカメラ11のカメラ座標系、ロードカメラ12のカメラ座標系、および、蒸着カメラ42のカメラ座標系という3つの各別のカメラ座標系を、単一の校正用基板W0によって校正することが可能である。これにより、各カメラ座標系において相互に座標の変換を行うことが可能である。言い換えれば、各カメラ座標系において相互に座標の変換を行う際に、座標の変換に伴う位置のずれを抑えることが可能である。
【0079】
以上説明したように、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)裏面撮影による処理基板Wの位置の検出精度を、表面撮影による処理基板Wの位置の検出精度、すなわち、基板マークWmの撮影による検出精度と同じ程度にまで高められる。結果として、裏面撮影の結果のみが得られる処理の環境、例えば、上述した蒸着処理の行われる環境であっても、表面撮影の結果による位置の精度と同じ程度に、基板Wの位置の検出精度を高められる。
【0080】
(2)特に、パターン位置に従って基板の搬送が行われるスパッタ成膜と、裏面位置に従って基板の搬送が行われる蒸着成膜との間で、各処理状態の整合を図ることが可能ともなる。
【0081】
(3)EFEM10で裏面撮影が行われ、かつ、蒸着チャンバー34でも裏面撮影が行われ、EFEM10での第1裏面位置と、蒸着チャンバー34での第2裏面位置とを整合させるように、処理基板Wが蒸着チャンバー34に搬送される。結果として、EFEM10で得られる上記(1)に準じた効果を、蒸着チャンバー34で得ることが可能ともなる。
【0082】
(4)特に、蒸着成膜やプラズマ成膜などの加熱を伴う処理は、その処理の環境下に置かれたカメラの光軸を経時的に変位させてしまう。この点、上述した構成であれば、蒸着チャンバー34における蒸着カメラ42間の相対位置が、校正処理ごとに更新されるため、(3)に準じた効果を長期間にわたり得ることが可能ともなる。
【0083】
(5)校正用基板W0の形状やサイズが、処理基板Wとほぼ等しいため、処理基板Wの搬送系と校正用基板W0の搬送系との共通化を図ることが可能となる。これにより、例えば、所定枚数の処理基板Wが処理されるごとに、搬送系の稼働状態を大幅に変えることなく、校正用基板W0を用いた校正処理を行うことが可能である。結果として、蒸着装置の稼働効率の低下を抑えつつ、校正処理の頻度を確保することが可能ともなる。
【0084】
(6)校正用基板W0の熱膨張率が3ppm/℃以下であれば、校正用基板W0に生じる熱膨張が十分に小さい範囲に抑えられ、結果として、校正用基板W0の熱膨張に起因した検出の誤差を低減することが可能ともなる。
【0085】
(7)第1像IM21と第2像IM22との境界をコントラストに基づいて検出し、検出された境界を用いて、処理基板Wの裏面位置が検出される。そのため、処理基板Wの輪郭Eから裏面位置が検出される構成と比べて、裏面位置の検出精度を高めることが可能となる。
【0086】
(8)特に、処理基板Wが非透過性を有する構成では、裏面WRと対向する側から基板マークWmを光学的に検出できないため、上述した点において有用性が高い。
【0087】
(9)蒸着マスクMに対する処理基板Wの位置精度を向上可能であるから、処理基板Wと蒸着マスクMとの相対位置に関わる処理において、その処理精度を高めることが可能ともなる。
【0088】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
[位置の特定処理]
・位置検出装置が処理基板Wの位置の特定に用いる境界は、処理基板Wの外周部Wpのなかの1箇所であってもよいし、1箇所以上であってもよい。
例えば、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界の形状は、微視的には、ベベル部Wp2の加工ごと、すなわち、処理基板Wごとに異なり、各処理基板Wにおいて固有の形状である場合がある。外周部Wpのなかの1箇所の境界から処理基板Wの位置を特定する構成では、まず、平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界の形状を、処理基板Wの全体にわたり、全周形状として予め収集する。そして、抽出された平坦部Wp1とベベル部Wp2との境界の形状が、全周形状のなかのどの部位であるかを特定することによって、処理基板Wの位置を特定する。
【0089】
なお、第1裏面中心を算出するときと、第2裏面中心を算出するときとでは、外周部Wpのなかで略同一のベベル部Wp2を含む部分を撮影することが好ましい。これにより、処理基板Wの位置を検出する精度をより高めることができる。なお、制御装置30Cは、処理基板Wが備えるノッチなどの特徴点の位置と、処理基板Wの回転角度とに基づき、ロードカメラ12の撮影領域2Zと蒸着カメラ42の撮影領域4Zとに、外周部Wpにおける略同一のベベル部Wp2を含む部分を位置させることができる。
【0090】
[校正用基板W0]
・校正用基板W0は、基板マークWmとして、例えば、校正用基板W0を貫通する貫通孔を備えることも可能である。基板マークWmが貫通孔である構成であっても、上記(1)〜(9)に準じた効果は得られる。
【0091】
なお、基板マークWmが薄膜パターンである構成であれば、基板マークWmの厚みが薄いため、表面観察による基板マークWmの位置と、裏面観察による基板マークWmの透過画像の位置とが、ほぼ一致する。そのため、基板マークWmが薄膜パターンである構成は、基板マークWmが貫通孔である構成よりも、表裏における基板マークWmの検出精度、ひいては、基板の位置の検出精度を高められる。
【0092】
・校正用基板W0は、例えば、光反射性の基板マークWmと、その周囲を覆う反射防止膜とを備えることも可能である。筐体13,47の外側に位置し、かつ、テレセントリック光学系を備えるカメラ12,42では、通常、筐体13,47の内側に位置するカメラや、テレセントリック光学系を備えないカメラと比べて、校正用基板W0と対物レンズとの距離、すなわち、カメラの作動距離が大きく、対物面からの光以外の光が対物レンズに入射しやすい。
【0093】
この点、反射防止膜を備える校正用基板W0であれば、光反射性の各基板マークWmと、その周囲とを覆う反射防止膜が、対物面での反射を抑える。結果として、作動距離が大きいカメラ12,42であっても、各基板マークWmを明確に撮影することが可能となる。
【0094】
[蒸着装置]
・蒸着装置は、EFEM10に表面撮影部のみを備え、蒸着チャンバー34に裏面撮影部を備えることも可能である。表面撮影部と裏面撮影部とが別々の筐体13,47に搭載される構成であっても、上記(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0095】
なお、EFEM10が表面撮影部と裏面撮影部とを備える構成であれば、表面撮影部のカメラと裏面撮影部のカメラとが1つの基板マークWmを一度に撮影することが可能である。そのため、基板マークWmの相対位置が、環境の変化によって変位することを抑えること、ひいては、基板の位置の検出精度をさらに高めることが可能ともなる。
【解決手段】画像処理部20は、表面撮影部の各カメラ11が基板マークWmを撮影した結果から、表面撮影部のカメラ11間の相対位置を算出し、当該カメラ11間の相対位置と、表面撮影部の各カメラ11が処理基板Wを撮影した結果とを用い、表面撮影による処理基板Wの位置を算出し、かつ、裏面撮影部の各カメラ12が基板マークWmの透過画像を撮影した結果から、裏面撮影部のカメラ12間の相対位置を算出し、当該カメラ12間の相対位置と、裏面撮影部の各カメラ12が処理基板Wを撮影した結果とを用い、裏面撮影による処理基板Wの位置を算出する。