【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係るタンパク質量の測定装置は、
被測定物の表面に付着しているタンパク質の量を測定する測定装置であって、
前記被測定物に光を照射するための投光部と、
前記照射された光が、前記タンパク質が付着した前記被測定物の表面で反射した反射光を受光するための受光部と、
前記受光部で受光された反射光の分光スペクトルを得るための分光器と、
前記分光スペクトルとタンパク質の量との相関関係に基づいて、前記被測定物の表面のタンパク質量を算出するための算出部と、を備え、
前記投光部は、200〜450nmの波長帯の光を含む光を前記被測定物に照射するように構成され、
前記投光部及び前記受光部は、前記受光部で受光される前記反射光が多重反射光となるように構成される。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、鏡面反射光を用いる場合に比べて、多重反射光を用いることで、タンパク質をより精度よく測定できることを見出した。
すなわち、表面にタンパク質が付着した被測定物に照射した光の反射光の分光スペクトルからタンパク質量を測定する際、反射光を鏡面反射光とすることで、分光スペクトルから得られる情報量が多いため、感度良くタンパク質量を測定できると考えられていた。
しかしながら、実際には、上記反射光を多重反射光として測定したところ、鏡面反射光を用いて測定する場合に比べて、精度良くタンパク質量を測定できることを見出した。
これは、鏡面反射光には、タンパク質量の測定に必要な情報以外の情報が多く含まれてしまい、本来の情報が隠れてしまう。その分、タンパク質量測定の精度に影響があると考えられる。また、試料に複数回反射光があたるので、試料の吸収量が増加し、精度良く測定出来ると考えられる。
なお、本明細書において多重反射光とは、2回以上反射した反射光のことをいい、例えば、照射対象物に照射され、照射対象物の表面で反射した後に、球面状の内壁面を有する反射体で1回以上反射して、特定の方向からの光を受光するように構成された受光部によって均一になって受光できる反射光を含む。また、鏡面反射光とは、前記入射角の大きさと前記反射角の大きさが等しい反射光のことをいう。
【0009】
上記タンパク質量の測定装置によれば、受光部で受光される反射光が多重反射光となるように投光部及び受光部が構成される。すなわち、多重反射光を受光部で受光するように構成されるので、多重反射光から得られる分光スペクトルを用いてタンパク質量を測定することができ、被測定物の表面に付着しているタンパク質の量を精度良く測定できる。
また、タンパク質は、200〜450nmの波長帯に顕著な吸収ピークを有するので、200〜450nmの波長帯の光を含む光を投光部により被測定物に照射することで、タンパク質を精度よく測定することができる。
照射する光の波長帯は、230〜300nmであることがより好ましい。
なお、タンパク質は、生菌の栄養となるため、生菌数の増殖の指標となる。したがって、上記測定装置によれば、被測定物の表面に付着しているタンパク質の量を精度良く測定できるので、生菌の増殖を精度良く予測可能となる。
【0010】
幾つかの実施形態では、前記タンパク質量の測定装置は、光拡散剤が塗布された球面状の内壁面を有する反射部をさらに備え、
前記受光部は、前記反射部の前記内壁面で反射した前記反射光を受光することが可能であるように構成される。
この場合、測定装置は、球面状の内壁面を有し、この内壁面には光拡散剤が塗布された反射部を備えるので、被測定物に照射されて反射した光がこの内壁面で多重反射される。このため、受光部は、内壁面で多重反射して均一になった反射光を受光することができ、被測定物に付着したタンパク質が微量である場合でもタンパク質量を測定することが可能となる。また、球面状の内壁面を有する測定装置を用いることで、試料からの反射光全て(鏡面反射光及び拡散反射光)を球面状の内壁面で拡散反射させ、球内部での光の強度分布を均一にすることで、試料の表面状態に左右されないで測定することが可能となる。
【0011】
幾つかの実施形態では、前記被測定物は、ステンレス鋼、フッ素樹脂及びウレタン系樹脂のうち少なくとも1種を材料とする。
この場合、食品に接触する設備、装置、器具、容器等によく用いられるステンレス鋼、フッ素樹脂又はウレタン樹脂等を材料とする被測定物について、その表面に付着したタンパク質の測定をすることができ、測定物に付着した生菌を検出することができる。
【0012】
本発明の少なくとも一実施形態に係るタンパク質量の測定方法は、
被測定物に光を照射するための投光部と、前記照射された光が、タンパク質が付着した前記被測定物の表面で反射した反射光を受光するための受光部と、を備える装置を用いて前記被測定物の表面に付着している前記タンパク質の量を測定する測定方法であって、
前記投光部により前記被測定物に光を照射して、前記照射された光が前記被測定物の表面で反射した反射光を前記受光部に受光させる照射受光ステップと、
前記受光部で受光した前記反射光を分光して前記反射光の分光スペクトルを得る分光ステップと、
前記分光スペクトルとタンパク質の量との相関関係に基づいて、前記被測定物の表面のタンパク質量を算出する算出ステップと、を備え、
前記照射受光ステップでは、200〜450nmの波長帯の光を含む光を前記被測定物に照射し、かつ、前記受光部で受光される前記反射光が多重反射光となるように、前記光の照射及び前記反射光の受光を行う。
【0013】
上記タンパク質量の測定方法によれば、受光部で受光される反射光が多重反射光となるように光の照射及び反射光の受光が行われる。すなわち、多重反射光を受光部で受光するので、多重反射光から得られる分光スペクトルを用いてタンパク質を測定することができ、被測定物の表面に付着しているタンパク質の量を精度良く測定できる。
また、タンパク質は、200〜400nmの波長帯に顕著な吸収ピークを有するので、200〜450nmの波長帯の光を含む光を投光部により被測定物に照射することで、タンパク質を精度よく測定することができる。なお、タンパク質は、生菌の栄養となるため、生菌数の増殖の指標となる。したがって、上記測定方法によれば、被測定物の表面に付着しているタンパク質の量を精度良く測定できるので、生菌の増殖を精度良く予測可能となる。
照射する光の波長帯は、230〜300nmであることがより好ましい。
【0014】
幾つかの実施形態では、前記装置は、光拡散剤が塗布された球面状の内壁面を有する反射部をさらに備え、
前記照射受光ステップでは、前記投光部により前記被測定物に光を照射して、前記照射された光が前記被測定物の表面で反射した反射光又は前記照射された光が前記被測定物の表面及び前記反射部の前記内壁面で反射した反射光を前記受光部に受光させる。
この場合、遮蔽部によって、被測定物のうち投光部により光を照射する部位及び前記受光部に外部の光が当たらないように遮蔽するため、測定装置において、照射された光およびその反射光以外の光が低減されるため、タンパク質量の測定精度が向上する。
また、該遮蔽部は球面状の内壁面を有し、この内壁面には光拡散剤が塗布されるので、被測定物に照射されて反射した光がこの内壁面で多重反射される。このため、受光部は、内壁面で多重反射して均一になった反射光を受光することができ、被測定物に付着したタンパク質が微量である場合でもタンパク質量を測定することが可能となる。また、球面状の内壁面を有する測定装置を用いることで、試料からの反射光全て(鏡面反射光及び拡散反射光)を球面状の内壁面で拡散反射させ、球内部での光の強度分布を均一にすることで、試料の表面状態に左右されないで測定することが可能となる。
【0015】
幾つかの実施形態では、前記被測定物は、ステンレス鋼、フッ素樹脂及びウレタン系樹脂のうち少なくとも1種を材料とする。
この場合、食品に接触する設備、装置、器具、容器等によく用いられるステンレス鋼、フッ素樹脂又はウレタン樹脂等を材料とする被測定物について、その表面に付着したタンパク質の測定をすることができ、測定物に付着した生菌を検出することができる。