(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の逆フィルタ算出部は、ゼロフォーシング規範又はMMSE規範に基づいて前記第1のチャネル応答行列から前記キャリア間隔フィルタ係数を算出することを特徴とする、請求項1又は2に記載の受信装置。
前記第2の逆フィルタ算出部は、ゼロフォーシング規範又はMMSE規範に基づいて前記第2のチャネル応答行列から前記高分解能フィルタ係数を算出することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、受信系列数(受信アンテナ数)が2の場合について説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す受信装置1は、受信系列数分の周波数変換部10(10−1及び10−2)と、受信系列数分のA/D変換部20(20−1及び20−2)と、受信系列数分の直交復調部30(30−1及び30−2)と、高分解能フィルタ部40と、キャリア間隔フィルタ部50と、キャリア間隔フィルタ係数算出部60と、高分解能フィルタ係数算出部70と、多重部80と、誤り訂正復号部90とを備える。
【0023】
周波数変換部10は、受信したOFDM信号をIF信号に周波数変換し、それぞれA/D変換部20に出力する。
【0024】
A/D変換部20は、周波数変換部10から入力されるIF信号をA/D変換してデジタルIF信号に変換し、それぞれ直交復調部30に出力する。
【0025】
直交復調部30は、A/D変換部20から入力されるデジタルIF信号を直交復調して等価ベースバンド信号を生成し、高分解能フィルタ部40に出力する。
【0026】
高分解能フィルタ部40は、直交復調部30から入力される等価ベースバンド信号をキャリア間隔よりも狭い周波数分解能を有する周波数領域信号に変換し、高分解能フィルタ係数算出部70から入力される高分解能フィルタ係数を用いて空間フィルタ処理を行う。そして、空間フィルタ処理された周波数領域信号を再び時間領域信号へと変換した受信系列数分の高分解能フィルタ信号をキャリア間隔フィルタ部50に出力する。つまり、高分解能フィルタ部40は、受信したOFDM信号と高分解能フィルタ係数の行列乗算を、OFDM信号のキャリア間隔よりも狭い周波数分解能で行い、高分解能フィルタ信号を生成する。ここで高分解能フィルタ係数は、2×2MIMOシステムにおいては2×2の行列となる。高分解能フィルタ部40の詳細については後述する。
【0027】
キャリア間隔フィルタ部50は、高分解能フィルタ部40から入力される高分解能フィルタ信号をキャリア間隔と同じ周波数分解能を有する周波数領域信号に変換し、キャリア間隔フィルタ係数算出部60及び高分解能フィルタ係数算出部70に出力する。また、キャリア間隔フィルタ部50は、該周波数領域信号をキャリア間隔フィルタ係数算出部60から入力されるキャリア間隔フィルタ係数を用いて空間フィルタ処理した受信系列数分のキャリア間隔フィルタ信号を多重部80及び高分解能フィルタ係数算出部70に出力する。つまり、キャリア間隔フィルタ部50は、高分解能フィルタ信号とキャリア間隔フィルタ係数の行列乗算を、キャリア間隔と同じ周波数分解能で行い、キャリア間隔フィルタ信号を生成する。ここでキャリア間隔フィルタ係数は、2×2MIMOシステムにおいては2×2の行列となる。キャリア間隔フィルタ部50の詳細については後述する。
【0028】
キャリア間隔フィルタ係数算出部60は、キャリア間隔フィルタ部50からキャリア間隔と同じ周波数分解能を有する周波数領域信号を入力し、推定したチャネル応答を高分解能フィルタ係数算出部70へ出力する。また、推定したチャネル応答を用いてキャリア間隔フィルタ係数を算出し、キャリア間隔フィルタ部50に出力する。キャリア間隔フィルタ係数算出部60の詳細については後述する。
【0029】
高分解能フィルタ係数算出部70は、キャリア間隔フィルタ部50からキャリア間隔の周波数領域信号及びキャリア間隔フィルタ信号を入力し、キャリア間隔フィルタ係数算出部60からチャネル応答を入力し、高分解能フィルタ係数を算出して、高分解能フィルタ部40に出力する。高分解能フィルタ係数算出部70の詳細については後述する。
【0030】
多重部80は、キャリア間隔フィルタ部50から入力される受信系列数分のキャリア間隔フィルタ信号を多重化し、多重化信号を誤り訂正復号部90に出力する。
【0031】
誤り訂正復号部90は、多重部80から入力される多重化信号に対して誤り訂正復号処理を行って受信ビット列を生成し、外部に出力する。
【0032】
[高分解能フィルタ部]
次に、高分解能フィルタ部40の詳細について説明する。
図2は、高分解能フィルタ部40の構成例を示すブロック図である。
図2に示す高分解能フィルタ部40は、受信系列数分のFFT部41(41−1及び41−2)と、空間フィルタ部42と、受信系列数分のIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部43(43−1及び43−2)とを備える。
【0033】
FFT部41は、式(1)に示すように、直交復調部30から入力される等価ベースバンド信号x
i(n)をFFTサイズMでFFT処理する。ここで、iは受信系列を示す。mは0≦m<Mを満たす、キャリア間隔の2のべき乗分の1の分解能を有する離散周波数である。
【0035】
ここで、FFTサイズMは、2のべき乗倍、且つOFDM信号のサブキャリア数の2倍以上となる値である。例えば、サブキャリア数が5617本の場合、FFTサイズは16384(2
14)以上の2のべき乗の値(例えば、32768(2
15)など)とする。サブキャリアCが2
n-1<C≦2
nである場合に、FFT部41のFFTサイズMを2
n+α(αは1以上の正の整数)とすることにより、等価ベースバンド信号x
i(n)は、OFDMのキャリア間隔の2
α分の1の分解能を有する周波数領域信号が生成される。よって、空間フィルタ部42で周波数特性歪みを補正することでキャリア間の直交性が復元され、遅延広がりがGI長を越えるマルチパスによる歪みを等化することができる。
【0036】
FFT部41の出力する受信系列数分の高分解能周波数領域信号を式(2)に示すようにベクトル表記する。ここで、上付きのTは転置を示す。
【0038】
空間フィルタ部42は、式(3)に示すように、FFT部41から入力される高分解能周波数領域信号と高分解能フィルタ係数算出部70から入力される高分解能フィルタ係数Q
mの行列乗算を、サブキャリア間隔の2のべき乗分の1の周波数間隔で行って周波数特性歪みを等化した等化信号を生成し、IFFT部43に出力する。本実施形態では、高分解能フィルタ係数Q
mは2×2の行列である。この空間フィルタ部42により、遅延広がりがGI長を越えるマルチパスによる受信特性の劣化を低減させることができるとともに、行列乗算を行うのでストリーム間干渉を低減させることができる。
【0040】
IFFT部43は、式(4)に示すように、空間フィルタ部42から入力される等化信号をFFT部41と同じFFTサイズでIFFT処理して時間領域信号に戻し、受信系列数分の高分解能フィルタ信号をキャリア間隔フィルタ部50に出力する。
【0042】
[キャリア間隔フィルタ部]
次に、キャリア間隔フィルタ部50の詳細について説明する。
図3は、キャリア間隔フィルタ部50及びキャリア間隔フィルタ係数算出部60の構成例を示すブロック図である。
図3に示すキャリア間隔フィルタ部50は、受信系列数分のGI除去部51(51−1及び51−2)と、受信系列数分のFFT部52(52−1及び52−2)と、空間フィルタ部53とを備える。
【0043】
GI除去部51は、高分解能フィルタ部40から入力される高分解能フィルタ信号からガードインターバルを除去して有効シンボル区間に相当する有効信号を抽出し、FFT部52に出力する。
【0044】
FFT部52は、式(5)に示すように、GI除去部51から入力される有効信号をFFTサイズNでFFT処理して周波数領域信号Y
i,kを生成し、空間フィルタ部53、チャネル推定部61、及び高分解能フィルタ係数算出部70に出力する。FFTサイズNは、2のべき乗倍、且つOFDM信号のサブキャリア数の2倍未満とする。例えば、サブキャリア数Kが5617本の場合、FFTサイズは8192(2
13)とする。kは0≦k<Kを満たす、キャリア間隔の分解能をもつ離散周波数である。Y
i,kはi番目の受信系列信号におけるk番目のサブキャリアの受信信号を示す。
【0046】
FFT部52の出力する受信系列数分の周波数領域信号を式(6)に示すようにベクトル表記する。ここで上付きのTは転置を示す。
【0048】
空間フィルタ部53は、式(7)に示すように、FFT部52から入力されるキャリア間隔の周波数領域信号Y
kとキャリア間隔フィルタ係数算出部60から入力されるキャリア間隔フィルタ係数G
kの行列乗算を、サブキャリア間隔と同じ周波数間隔で行って周波数特性歪みを等化した等化信号を生成し、受信系列数分のキャリア間隔フィルタ信号を高分解能フィルタ係数算出部70及び多重部80に出力する。本実施形態では、キャリア間隔フィルタ係数G
kは2×2の行列である。この空間フィルタ部53により、遅延広がりがGI長以内のマルチパスによる受信特性の劣化を低減させることができる。
【0050】
[キャリア間隔フィルタ係数算出部]
次に、キャリア間隔フィルタ係数算出部60の詳細について説明する。
図3に示すキャリア間隔フィルタ係数算出部60は、チャネル推定部61と、逆フィルタ算出部62とを備える。
【0051】
チャネル推定部61は、FFT部52から入力される受信系列数分の周波数領域信号Y
kからチャネル応答行列H
kを推定し、逆フィルタ算出部62及び高分解能フィルタ係数算出部70に出力する。チャネル推定の方法としては、送信するOFDM信号にパイロット信号を挿入し、それぞれの送信系列の信号を時空間符号化する方法が知られている。例えば、式(8)で示されるAlamoutiの符号を用いると、式(9)に示すように、受信信号に対してその逆行列を乗算することにより、チャネル応答行列H
kを推定することができる。なお、全サブキャリアにパイロット信号が多重されていない場合には、サブキャリア方向に内挿補間する。
【0053】
逆フィルタ算出部62は、チャネル推定部61から入力されるサブキャリアごとのチャネル応答行列H
kについて、その逆フィルタとなるフィルタ行列G
kをキャリア間隔フィルタ係数として算出し、空間フィルタ部53に出力する。例えば、ゼロフォーシング規範に基づくキャリア間隔フィルタ係数G
kは、式(10)で示される。ここで上付きのHは複素共役転置を示す。
【0055】
また、雑音の影響も考慮するMMSE(Minimum Mean Squared Error)規範に基づくキャリア間隔フィルタ係数G
kは、式(11)で示される。ここで、上付きの*は複素共役を示し、N
T,N
rはそれぞれ送信系列数、受信系列数を示し、ρ
0は総送信電力を1系列で送信した場合の平均S/Nを示す。また、I
Nrは(Nr×Nr)の単位行列を示す。
【0057】
[高分解能フィルタ係数算出部]
次に、高分解能フィルタ係数算出部70の詳細について説明する。
図4は、高分解能フィルタ係数算出部70の構成例を示すブロック図である。高分解能フィルタ係数算出部70は、受信系列数分のシンボル再生部71(71−1及び71−2)と、レプリカ生成部72と、レプリカ除去部73と、チャネル推定部74と、等化誤差算出部75と、プロファイル推定部76と、領域変換部77と、逆フィルタ算出部78とを備える。
【0058】
シンボル再生部71は、キャリア間隔フィルタ部50から入力されるキャリア間隔フィルタ信号に対し、QAM復調してパラレル信号を生成し、該パラレル信号を再度QAM変調して再生シンボル行列R
kを生成し、レプリカ生成部72に出力する。
【0059】
図5は、レプリカ生成部72の構成を示す図である。レプリカ生成部72は、乗算部721−1〜721−4により、チャネル推定部61から入力されるチャネル応答行列H
kと、シンボル再生部71から入力される再生シンボル行列R
kとを乗算してレプリカ行列(レプリカ信号)Sを生成し、レプリカ除去部73に出力する。レプリカ行列Sの要素は式(12)で表される。ここで、jは送信系列を示す。レプリカ行列Sの要素の数は受信系列数のべき乗となり、2×2のMIMOシステムの場合、レプリカ行列Sは2×2の行列となる。
【0061】
図6は、レプリカ除去部73の構成を示す図である。レプリカ除去部73は、減算部731−1〜731−4により、FFT部52から入力される受信系列数分の周波数領域信号から、レプリカ生成部72から入力されるレプリカ行列Sを減算したレプリカ除去行列(レプリカ除去信号)Tをチャネル推定部74に出力する。レプリカ除去行列Tの要素は式(13)で表される。レプリカ除去行列Tの要素の数は受信系列数のべき乗となり、2×2のMIMOシステムの場合、レプリカ除去行列Tは2×2の行列となる。
【0063】
図7は、チャネル推定部74の構成を示す図である。チャネル推定部74は、除算部741−1〜741−4により、レプリカ除去部73から入力されるレプリカ除去行列Tを、レプリカ生成部72から入力されるレプリカ行列Sで除算し、遅延広がりがGI長を越えるマルチパスによるチャネル応答行列Fを生成し、等化誤差算出部75に出力する。チャネル応答行列Fの要素は式(14)で表される。
【0065】
図8は、等化誤差算出部75の構成を示す図である。等化誤差算出部75は、減算部751−1,751−2により、チャネル推定部74から入力されるチャネル応答行列Fの等化誤差である等化誤差行列(等化誤差信号)Eを生成し、プロファイル推定部76に出力する。等化誤差行列Eの要素は式(15)で表される。
【0067】
図9は、プロファイル推定部76の構成を示す図である。プロファイル推定部76は、IFFT部761と、乗算部762と、加算部763と、遅延部764とを備える。プロファイル推定部76は、等化誤差算出部75から入力される等化誤差行列Eから送受信間の遅延プロファイルを推定する。
【0068】
IFFT部761は、等化誤差算出部75から入力される等化誤差信号EをIFFT処理して時間領域信号e
ij(n,t)に変換し、乗算部762に出力する。ここで、nは離散時間、tは更新時間を示す。
【0069】
乗算部762は、IFFT部761から入力される時間領域の等化誤差信号にあらかじめ定められた定数μを乗じて加算部763に出力する。
【0070】
加算部763は、乗算部762から入力される時間領域の等化誤差信号と、遅延部764から入力される単位更新時間前の遅延プロファイルP
ij(n,t)を加算して、遅延プロファイルを更新して新たな遅延プロファイルP
ij(n,t+1)を、遅延部764及び領域変換部77に出力する。
【0071】
遅延部764は、加算部763から入力される遅延プロファイルを単位更新時間遅延させて、遅延した遅延プロファイルを加算部763に出力する。以上のプロファイル推定部76の処理は、式(16)で表される。
【0073】
図10は、領域変換部77の構成を示す図である。領域変換部77は、加算部771(771−1及び771−2)と、FFT部772(772−1乃至772−4)とを備える。加算部771は、プロファイル推定部76から入力される遅延プロファイルのうち、i=jを満たす系列について式(17)で示されるデルタ関数を加算し、FFT部772に出力する。加算部771の出力、又はi=jを満たさない系列の遅延プロファイルは、それぞれFFT部772に入力される。
【0075】
FFT部772は、入力される遅延プロファイルをFFT処理して周波数領域信号であるチャネル応答行列P
mに変換し、逆フィルタ算出部78に出力する。チャネル応答行列P
mの要素は式(18)で表される。ここで、FFTサイズMは、上述したFFT部41におけるサイズと同じであり、2のべき乗倍、且つOFDM信号のサブキャリア数の2倍以上となる値である。
【0077】
逆フィルタ算出部78は、領域変換部77から入力されるチャネル応答行列P
mの逆フィルタを高分解能フィルタとして算出し、高分解能フィルタ部40に出力する。ゼロフォーシング規範に基づく逆フィルタは式(19)で示され、雑音の影響も考慮するMMSE規範に基づく逆フィルタは式(20)で示される。
【0079】
このように、受信装置1は、高分解能フィルタ部40の空間フィルタがOFDM信号のサブキャリア間隔よりも狭い周波数分解能を有するため、遅延広がりがGI長を越えるマルチパスによる受信特性の劣化を低減させることができる。また、行列乗算を行うのでストリーム間干渉を低減させることもできる。そして、キャリア間隔フィルタ部50の空間フィルタがOFDM信号のサブキャリア間隔と同じ周波数分解能を有するため、遅延広がりがGI長以内のマルチパスによる受信特性の劣化を低減させることができる。
【0080】
図11は、伝搬路の遅延広がりがGI長を越える場合のビット誤り率(BER)特性を示す図である。このシミュレーションでは、変調方式はISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting - Terrestrial)に準拠するものとし、モード3、シンボル長1008μs、GI長126μs、GI比1/8とした。キャリア変調はISDB−Tよりも多値数の多い256QAMとし、MIMO構成をとるため、パイロット信号はSPに直交符号化を施した。また、誤り訂正符号はなしであり、MIMO伝搬路行列は式(21)に示すものを用いた。ここで、D
1=0.01、D
2=0.1、D
3=0.1とした。遅延時間は、T
1=150μs、T
2=155μsとした。
図11より、従来技術と比較して、大幅に誤り率特性の改善が得られることが分かる。
【0082】
なお、上述した受信装置1として機能させるためにコンピュータを用いることができ、そのようなコンピュータは、受信装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録することができる。
【0083】
上述の実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、受信系列数が2の場合について説明したが、受信系列数が2以外の場合についても同様に本発明を適用することができる。また、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。