特許第6491592号(P6491592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6491592キャリブレーション装置及びキャリブレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491592
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】キャリブレーション装置及びキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/00 20060101AFI20190318BHJP
   B24B 21/18 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B24B21/00 A
   B24B21/18 Z
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-231844(P2015-231844)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-94480(P2017-94480A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 昭尋
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−192522(JP,A)
【文献】 特開2002−93755(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0235858(US,A1)
【文献】 特開昭63−229265(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202212831(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 1/00− 3/60
9/00−39/06
G01G 1/00− 9/00
21/00−23/48
H01L21/304
21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のべベル部を研磨するべベル研磨装置のキャリブレーション装置であって、
べベル研磨装置の研磨パッドからの押圧荷重を測定可能な荷重測定装置と、
前記荷重測定装置を載置可能な基部プレートと、を備えており、
前記基部プレートは、基板を載置可能な真空吸着テーブル上に固定可能である、
キャリブレーション装置。
【請求項2】
前記荷重測定装置はフォースゲージを備える、請求項1に記載のキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記荷重測定装置は、前記フォースゲージの計測軸に固定可能な荷重支持部材を備えており、前記荷重支持部材は、前記押圧荷重を受けることができる荷重支持面を備える、請求項2に記載のキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記真空吸着テーブルに対する前記荷重支持面の位置を調整可能なスペーサを備える、請求項3に記載のキャリブレーション装置。
【請求項5】
前記荷重支持部材はブラケットを備える、請求項3または4に記載のキャリブレーション装置。
【請求項6】
前記荷重支持部材は、前記ブラケットに固定される樹脂製パッドを備える、請求項5に記載のキャリブレーション装置。
【請求項7】
前記荷重測定装置は取付プレートを備えており、前記取付プレートは前記基部プレートに固定可能である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のキャリブレーション装置。
【請求項8】
前記取付プレートは、前記基部プレートに対する前記取付プレートの位置を調整可能な調整ねじを備える、請求項7に記載のキャリブレーション装置。
【請求項9】
基板を載置可能な真空吸着テーブルと、
前記真空吸着テーブルの外周に沿って配置される複数の研磨ヘッドであって、それぞれ、基板のべベル部に向けて押圧される研磨パッドを備える、複数の研磨ヘッドと、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のキャリブレーション装置と、を備えるべベル研磨装置。
【請求項10】
基板を載置可能な真空吸着テーブルと、
前記真空吸着テーブルの外周に沿って配置される複数の研磨ヘッドであって、それぞれ、基板のべベル部に向けて押圧される研磨パッドを備える、複数の研磨ヘッドと、
を備えるべベル研磨装置のキャリブレーション方法であって、
前記キャリブレーション方法は、
荷重測定装置を載置可能な基部プレートを前記真空吸着テーブルに吸着する工程と、
前記基部プレートに前記荷重測定装置を固定する工程と、
前記荷重測定装置を前記研磨ヘッドに対して位置合わせするように前記真空吸着テーブルを回転させる工程と、
前記研磨パッドからの押圧力を前記荷重測定装置の荷重支持面に加える工程と、
前記押圧力が加えられたときの前記荷重測定装置の測定値と前記研磨ヘッドの設定荷重との相関関係を求める工程と、
を備えるキャリブレーション方法。
【請求項11】
前記基部プレートに前記荷重測定装置を固定する工程は、前記荷重測定装置の荷重支持面と前記基部プレートとの間にスペーサを配置することにより、前記真空吸着テーブルに対する前記荷重支持面の位置を調整する工程を含む、請求項10に記載のキャリブレーション方法。
【請求項12】
前記基部プレートを前記真空吸着テーブルに吸着する工程は、前記荷重測定装置の取付プレートを前記基部プレートに仮固定することを含む、請求項11に記載のキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーション装置及びキャリブレーション方法に関する。特に、本発明は、基板のべベル部を研磨するべベル研磨装置のためのキャリブレーション装置及びキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハ等の基板のべベル部を研磨するべベル研磨装置では、研磨パッドまたは加圧パッドと称されるパッドを、研磨テープを介して基板のべベル部に適切な荷重で押し当てることにより、基板の研磨量や形状のコントロールを行なっている。この研磨パッドを制御するために、例えば、電空レギュレータを用いた空圧制御を行なうことができる。具体的には、電空レギュレータによって、エアシリンダに供給される空気圧を所望の圧力に調整することにより、研磨パッドの押圧力を制御し、研磨テープの研磨面を基板に対して押圧する圧力を制御する(特許文献1)。
【0003】
このように、電空レギュレータを用いてエアシリンダ内の空気圧を精度よくコントロールすることにより、研磨性能の維持が行なわれている。従って、エアシリンダ内の空気圧と研磨パッド端部における押圧荷重との相関関係を正確に把握する必要がある。その手法として、現在、管理された制御圧条件においてフォースゲージによる押圧荷重の実測を行うことにより、研磨パッドの荷重のキャリブレーションが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2012−231191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記キャリブレーション作業においては、従来、基板を保持する回転機構から、基板が載置されるステージを取り外し、その代わりにフォースゲージを装備したアタッチメント冶具を取り付けた後、研磨パッドの押圧力の一連の調整作業を行っている。しかし、ステージを取り外してアタッチメント冶具を取り付ける作業は時間を要する。また、キャリブレーションを確実に行うためには、フォースゲージが正確に位置決めされるようにアタッチメント冶具を取り付けることが必要である。さらに、再度ステージを取り付ける際には、ステージの偏芯調整やレベリング調整などのステージ調整を再度行わなければならない。これは、作業を煩雑にするだけでなく、ダウンタイムを発生させるので、単位時間あたりの基板の処理枚数の低下を招く。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、基板を載置可能なステージを取り外すことなく、簡易な方法で研磨パッドの押圧力の調整を行なうことを可能にするキャリブレーション装置を提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、基板を載置可能なステージを取り外すことなく、簡易な方法で研磨パッドの押圧力の調整を行なうことを可能にするキャリブレーション方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、基板のべベル部を研磨するべベル研磨装置のキャリブレーション装置であって、べベル研磨装置の研磨パッドからの押圧荷重を測定可能な荷重測定装置と、荷重測定装置を載置可能な基部プレートと、を備えており、基部プレートは、基板を載置可能な真空吸着テーブル上に固定可能である、キャリブレーション装置を提供
することができる。この構成によれば、既存の真空吸着テーブルの吸着機構を利用してキャリブレーション装置を基板の回転機構に取り付けることができるので、従来技術のように真空吸着テーブルを取り外す必要がない。また、従来のキャリブレーション作業に比べて、キャリブレーション装置の取り付けが容易であるので、キャリブレーション装置の取り付け時のヒューマンエラーの虞を低減することができる。さらに、従来技術における、キャリブレーション終了後の真空吸着テーブル取り付けに伴うヒューマンエラーの虞が無い。また、従来のキャリブレーション作業に比べて作業工数を削減することができるので、ダウンタイムの発生および単位時間当たりの基板の処理枚数の低下を抑制することができる。また、キャリブレーション作業による装置状態の定期確認を容易に行うことができるので、べベル研磨装置の装置状態を安定させることができる。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、荷重測定装置はフォースゲージを備える。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、荷重測定装置は、フォースゲージの計測軸に固定可能な荷重支持部材を備えており、荷重支持部材は、押圧荷重を受けることができる荷重支持面を備える。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、キャリブレーション装置は、真空吸着テーブルに対する荷重支持面の位置を調整可能なスペーサを備える。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、荷重支持部材はブラケットを備える。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、荷重支持部材は、ブラケットに固定される樹脂製パッドを備える。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、荷重測定装置は取付プレートを備えており、取付プレートは基部プレートに固定可能である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、取付プレートは、基部プレートに対する取付プレートの位置を調整可能な調整ねじを備える。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、基板を載置可能な真空吸着テーブルと、真空吸着テーブルの外周に沿って配置される複数の研磨ヘッドであって、それぞれ、基板のべベル部に向けて押圧される研磨パッドを備える、複数の研磨ヘッドと、上記いずれかに記載のキャリブレーション装置と、を備えるべベル研磨装置が提供される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、基板を載置可能な真空吸着テーブルと、真空吸着テーブルの外周に沿って配置される複数の研磨ヘッドであって、それぞれ、基板のべベル部に向けて押圧される研磨パッドを備える、複数の研磨ヘッドと、を備えるべベル研磨装置のキャリブレーション方法であって、キャリブレーション方法は、荷重測定装置を載置可能な基部プレートを真空吸着テーブルに吸着する工程と、基部プレートに荷重測定装置を固定する工程と、荷重測定装置を研磨ヘッドに対して位置合わせするように真空吸着テーブルを回転させる工程と、研磨パッドからの押圧力を荷重測定装置の荷重支持面に加える工程と、押圧力が加えられたときの荷重測定装置の測定値と研磨ヘッドの設定荷重との相関関係を求める工程と、を備えるキャリブレーション方法が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、基部プレートに荷重測定装置を固定する工程は、荷重測定装置の荷重支持面と基部プレートとの間にスペーサを配置することにより、真空吸着テーブルに対する荷重支持面の位置を調整する工程を含む。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、基部プレートを真空吸着テーブルに吸着する工程は、荷重測定装置の取付プレートを基部プレートに仮固定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用することができるべベル研磨装置の全体構成の一例を示す図である。
図2】研磨ヘッド組立体とテープ供給回収機構の内部構造の一例を概略的に示す断面図である。
図3】研磨ヘッドの加圧機構の一例を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態によるキャリブレーション装置の上方斜視図である。
図5図4のキャリブレーション装置の下方斜視図である。
図6図4のキャリブレーション装置の側断面図である。
図7】研磨ヘッド側から見た図4のキャリブレーション装置の端面図である。
図8】本発明の一実施形態によるキャリブレーション方法を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態によるキャリブレーション装置の使用状態を示す図である。
図10】本発明の一実施形態によるキャリブレーション装置の使用状態を示す図である。
図11】本発明の一実施形態によるキャリブレーション装置の使用状態を示す図である。
図12】基板の周縁部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用することができるべベル研磨装置100の全体構成の一例を示す平面図である。図1に示す装置では、その中央部に研磨対象であるウェハ等の基板Wを水平に保持し、回転させる回転保持機構3が設けられている。具体的には、回転保持機構3は、基板Wの裏面を真空吸着により保持する真空吸着テーブル4及び真空吸着テーブル4の中央部に取り付けられるシャフト5(図1には図示せず)を備えている。基板Wを真空吸着テーブル4の中心軸Cr周りに回転させるように、シャフト5は、図示されないモータにより回転させられる。尚、真空吸着テーブル4及びシャフト5には、基板Wを真空吸着テーブル4上に吸着するための負圧が導入される真空通路が形成されている。
【0022】
べベル研磨装置100は、ウェハ等の基板Wのべベル部を研磨する。図12は、真空吸着テーブル4上に水平に載置されたウェハの側面図であり、ウェハの周縁部を拡大して示す図である。図12において、デバイスは、ウェハの平坦部Dに形成され、平坦部Dは端面Gから数ミリメートル内周側の位置にある。領域Dより外側の平坦部Eにデバイスは形成されない。本明細書では、平坦部Eの外側の上斜面Fから端面Gを経て下斜面Fまでの傾斜を有する領域Bをべベル部と称する。
【0023】
図1に示すように、回転保持機構3に保持された基板Wの周囲には4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dが配置されている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの径方向外側には、研磨具である研磨テープ23を研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dに供給し、使用後の研磨テープ23を回収するテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dが設けられている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dとテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dとは隔壁20によって隔離されている。隔壁20の内部空間は研磨室21を構成し、4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよび真空吸着テーブル4は、研磨室21内に配置されている。一方、テープ供給回収機構2A,2B,
2C,2Dは隔壁20の外側(すなわち、研磨室21の外)に配置されている。それぞれの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよびテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dは同一の構成を有している。69は、べベル研磨装置100の動作制御部である。
【0024】
研磨ヘッド組立体1Aはテープ供給回収機構2Aから供給された研磨テープ23を基板Wの周縁部に当接させるための研磨ヘッド30(図1には図示せず)を備えている。図2は、研磨ヘッド組立体1Aとテープ供給回収機構2Aの内部構造を概略的に示す断面図である。図2に示すように、研磨テープ23は、研磨テープ23の研磨面が基板Wの方を向くように研磨ヘッド30に供給される。
【0025】
研磨ヘッド30は、図1に示すアーム60の一端に固定され、アーム60は、基板Wの接線に平行な軸Ctまわりに回転自在に構成されている。アーム60の他端はプーリーおよびベルトを介してモータM4に連結されている。モータM4が時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転することで、アーム60が軸Ctまわりに所定の角度だけ回転する。これにより、基板Wのべベル部の形状に合わせて研磨ヘッド30の傾斜角度を変化させ、基板Wのべベル部の所望の箇所を研磨することができる。
【0026】
尚、図2に示すように、研磨ヘッド30の前後方向位置(換言すれば、基板Wの半径方向に沿う位置)は、ベースプレート65に直接または間接的に固定されたリニアアクチュエータ67によって調整することができる。
【0027】
図3は研磨ヘッド30の加圧機構41の一例を説明する図である。この加圧機構41は、研磨ヘッド30の前面において上下に配置された2つのガイドローラ46,47の間に渡された研磨テープ23の裏面側に配置された研磨パッド50と、この研磨パッド50を保持するパッドホルダー51と、パッドホルダー51を基板Wに向かって移動させるエアシリンダ52とを備えている。
【0028】
エアシリンダ52はいわゆる片ロッドシリンダであり、2つのポートを介して2つのエア配管53が接続されている。これらエア配管53には電空レギュレータ(例えば電磁弁)54がそれぞれ設けられている。電空レギュレータ54の一次側は、エア供給源(例えばコンプレッサ)55に接続され、二次側がエアシリンダ52のポートに接続されている。電空レギュレータ54は動作制御部69からの信号によって制御され、エアシリンダ52に供給される空気圧を所望の圧力に調整することが可能になっている。換言すれば、動作制御部69は、オペレータが入力した設定値どおりの押圧力を加えることができるように電空レギュレータ54を制御する。このように、エアシリンダ52へ供給する空気圧を制御することによってエアシリンダ52のピストンロッドに連結された研磨パッド50を押し出し、研磨テープ23の研磨面を基板Wに対して押圧する圧力を制御することができる。
【0029】
本発明の一実施形態によるキャリブレーション装置200は、例えば、上記した構成を備えるべベル研磨装置100に適用することができる。図4は、本発明の一実施形態によるキャリブレーション装置200の上方斜視図である。図5は、図4のキャリブレーション装置200の下方斜視図である。図6は、キャリブレーション装置200の側断面図である。キャリブレーション装置200は、べベル研磨装置100の研磨パッド50からの押圧荷重を測定可能な荷重測定装置300と、荷重測定装置300を載置可能な基部プレート400と、を備えている。基部プレート400は、べベル研磨装置100の真空吸着テーブル4上に固定可能である。図示の例では、荷重測定装置300は、フォースゲージ301を備えている。本例では、フォースゲージ301はデジタル式フォースゲージであり、301aは、測定値がデジタル表示される表示窓である。しかし、本発明の実施形態はこれには限られない。
【0030】
図示の例では、基部プレート400は、互いに異なる直径を有する実質的に円形の板状部材を上下に同軸配置してなる形態を備えており、小径の上部プレート部401と大径の下部プレート部402とを備えている。下部プレート部402の直径は、真空吸着テーブル4と実質的に同一の直径を有することが好ましい。基部プレート400は真空吸着テーブル4上に同軸配置される必要があるので、下部プレート部402と真空吸着テーブル4とが同一の外形を有することにより、真空吸着テーブル4上に基部プレート400を吸着固定する場合の位置合わせが容易になる。下部プレート部402の裏面403は、真空吸着テーブル4に対して容易に吸着固定されるように、平坦な表面を有している。フォースゲージ301は、その本体から延びる計測軸302が、基部プレート400の周囲に配置される研磨ヘッド30の方向を向くように上部プレート部401上に載置される。図7は、研磨ヘッド30側から見たキャリブレーション装置200の端面図である。
【0031】
荷重測定装置300は、フォースゲージ301の計測軸302に固定可能な荷重支持部材303を備えることができる。図示の例では、荷重支持部材303は、ブラケット304を備えており、ブラケット304は、計測軸302に取り付けられる取り付け部304aと、研磨パッド50からの押圧荷重を受けることができるように構成された荷重支持面(符号省略)を含む荷重支持部304bと、を備える。取り付け部304aにおいて、ブラケット304は、ボルトとナットの組み合わせにより計測軸302に固定されることができる。
【0032】
また、図示の例では、荷重支持部材303は、金属製のブラケット304の荷重支持面に固定される樹脂(例えば、PEEK)製のパッド305を備えている。パッド305は、ブラケット304の荷重支持部304bの裏側から取り付け可能なボルトにより固定されることができる。金属製のブラケット304が研磨パッド50に直接接触すると、研磨パッド50のメタルコンタミネーション(換言すれば、金属汚染)が生じるおそれがある。樹脂製のパッド305は、このようなメタルコンタミネーションを防止することができるので有利である。また、樹脂製のパッド305を用いることにより、キャリブレーション作業中、荷重支持面に押圧された樹脂製の研磨パッド50が破損するおそれを最小限にすることができる。しかし、本発明の他の実施形態では、樹脂製のパッド305は省略することができる。
【0033】
尚、本明細書において、図示のようにパッド305がブラケット304の荷重支持部304bに取り付けられる場合は、パッド305が取り付けられた状態におけるパッド305の表面が、荷重支持部材303の「荷重支持面」となり、パッド305が取り付けられていない場合は、ブラケット304の表面が荷重支持部材303の「荷重支持面」となる。以下、単に「荷重支持面」という場合、この両者の場合を含むものとする。
【0034】
また、図示の例では、キャリブレーション装置200は、スペーサ306を備える。スペーサ306は、上部プレート部401と下部プレート部402との間に形成された段部404に、取り外し可能に配置することができる。スペーサ306は、その一端部が、上部プレート部401の外周面に沿う形状を有していることが好ましい。スペーサ306の他端部にブラケット304の荷重支持部304bを当接させることにより、基部プレート400、ひいては基部プレート400が固定される真空吸着テーブル4に対する、荷重支持面305aの位置を調整することができる。
【0035】
また、荷重測定装置300は、基部プレート400に固定可能な取付プレート307を備えており、取付プレート307を介してフォースゲージ301を基部プレート400に固定することができる。取付プレート307は、フォースゲージ301の本体に予め固定されていてよい。
【0036】
また、取付プレート307は、基部プレート400に対する取付プレート307の位置を調整可能な調整ねじ307aを備えていてよい。この場合、取付プレート307は、例えば、計測軸302の方向と実質的に同じ方向に伸長するスロット307bを有することができ、上部プレート部401は、スロット307bに対向して配置可能なスロットを有することができる。調整ねじ307aは、これらスロット内の所望の位置で基部プレート400に対して締め付けられることができる。
【0037】
上記のような構成を有する図示のキャリブレーション装置200を用いて、例えば、次のような方法でべベル研磨装置100のキャリブレーションを行うことができる。図8は、以下に説明するキャリブレーション方法の一例を示すフローチャートである。図9ないし図11は、それぞれ、キャリブレーション装置200の使用状態を示す斜視図、側面図、上面図である。尚、図9ないし図11において研磨テープ23は図示を省略されている。
【0038】
まず、べベル研磨装置100の回転保持機構3の回転が停止され(ステップ500)、各研磨ヘッド組立体1A、1B、1C、1Dの研磨ヘッド30の傾斜角が0度(すなわち、図2に示すような水平方向)に調整されると共に、研磨パッド50の前後方向位置が所定の研磨位置に調整される(ステップ501)。次に、真空吸着テーブル4と基部プレート400の外周が一致するように(換言すれば、真空吸着テーブル4と基部プレート400の中心軸が一致するように)、基部プレート400が真空吸着テーブル4上に吸着固定される(ステップ502)。このとき、取付プレート307の調整ねじ307aを完全に締め付けることなく、荷重測定装置300が上部プレート部401上に仮固定されていることが好ましい。次に、真空吸着テーブル4に対する荷重測定装置300の荷重支持面305aの位置を調整するため、荷重支持面305aと基部プレート400との間にスペーサ306が配置される(ステップ503)。具体的には、基部プレート400の段部404にスペーサ306の一端部が配置され、他端部がブラケット304の荷重支持部304bに当接させられる。基部プレート400の中心軸、すなわち真空吸着テーブル4の中心軸と、パッド305の荷重支持面305aとの間の距離は、例えば、150mmであってよい。この状態で調整ねじ307aを締め付けることにより、荷重測定装置300が上部プレート部401上に固定される(ステップ504)。固定後は、スペーサ306を段部404に沿ってスライドさせて取り外すことができる(ステップ505)。
【0039】
次に、荷重支持面305aを、例えば、研磨ヘッド組立体1Aの研磨パッド50に対して位置合わせするように(換言すれば、荷重支持面305aが研磨パッド50の面に対して平行になるように)、真空吸着テーブル4を、例えば、手動で回転させることができる(ステップ506)。このとき、研磨ヘッド30の研磨テープ23の張力は弱めておくことができる。
【0040】
位置合わせ後、オペレータが、べベル研磨装置100の動作制御部69に押圧力の設定値を入力し、研磨ヘッド30を動作させる(ステップ507)。これにより、フォースゲージ301の計測軸302に固定されたパッド305の荷重支持面305aに、研磨パッド50が押圧される。押圧されたパッド305について、フォースゲージ301の表示窓301aに表示される荷重の実測値が読み取られ(ステップ508)、設定値との比較により補正量が計算される(ステップ509)。そして、計算結果に基づいて、設定値が補正される(ステップ510)。すなわち、設定値に対して実測値が大きければ設定値を小さくするように補正し、設定値に対して実測値が小さければ設定値を大きくするように補正する。設定値に対して実測値が等しければ補正は行われない。
【0041】
次に、荷重支持面305aを、例えば、研磨ヘッド組立体1Bの研磨パッド50に対し
て位置合わせするように、真空吸着テーブル4を回転させる(ステップ506)。こうして、残りの研磨ヘッド組立体1B、1C、1Dに対してステップ506〜510を行うことにより、べベル研磨装置100の各研磨パッド50について、押圧力の調整を行うことができる。
【0042】
本発明の実施形態によるキャリブレーション装置200は、研磨荷重の設定の他、日常点検や定期メンテナンスにおける荷重確認に用いることができる。また、研磨荷重に影響を及ぼす構成機器の不具合、例えば、電空レギュレータの設定圧力が適正な範囲を外れてしまう等の不具合が生じた場合に、装置復旧の後、キャリブレーション装置200を用いて容易に荷重の再調整を行うことができる。
【0043】
このように、本発明の実施形態によれば、既存の真空吸着テーブル4の吸着機構を利用することにより、真空吸着テーブル4を取り外すことなく、キャリブレーション装置200を回転保持機構3に取り付けることができる。従って、従来のキャリブレーション作業に比べて、キャリブレーション装置200の取り付けが容易であるので、キャリブレーション装置200の取り付け時のヒューマンエラーの虞を低減することができる。さらに、従来技術における、キャリブレーション終了後の真空吸着テーブル4取り付けに伴うヒューマンエラーの虞が無い。
【0044】
また、従来のキャリブレーション作業に比べて作業工数を削減することができるので、ダウンタイムの発生および単位時間当たりの基板の処理枚数の低下を抑制することができる。また、キャリブレーション作業による装置状態の定期確認を容易に行うことができるので、べベル研磨装置100の装置状態を安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、基板のべベル部を研磨するべベル研磨装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
3 回転保持機構
4 真空吸着テーブル
5 シャフト
1A、1B、1C、1D 研磨ヘッド組立体
2A、2B、2C、2D テープ供給回収機構
20 隔壁
21 研磨室
23 研磨テープ
30 研磨ヘッド
41 加圧機構
46、47 ガイドローラ
50 研磨パッド
51 パッドホルダー
52 エアシリンダ
53 エア配管
54 電空レギュレータ
55 エア供給源
60 アーム
65 ベースプレート
67 リニアアクチュエータ
69 動作制御部
100 べベル研磨装置
200 キャリブレーション装置
300 荷重測定装置
301 フォースゲージ
301a 表示窓
302 計測軸
303 荷重支持部材
304 ブラケット
304a 取り付け部
304b 荷重支持部
305 パッド
305a 荷重支持面
306 スペーサ
307 取付プレート
307a 調整ねじ
307b スロット
400 基部プレート
401 上部プレート部
402 下部プレート部
403 裏面
404 段部
B べベル部
Cr、Ct 軸
M3、M4 モータ
W 基板
図1
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