特許第6491635号(P6491635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491635
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】反射防止膜および深紫外発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20190318BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20190318BHJP
【FI】
   G02B1/115
   H01L33/60
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-256148(P2016-256148)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-109657(P2018-109657A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2017年12月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】丸山 司
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−264902(JP,A)
【文献】 特開2002−311209(JP,A)
【文献】 特開2012−244170(JP,A)
【文献】 特開2001−13304(JP,A)
【文献】 特開2002−250801(JP,A)
【文献】 特開平7−244202(JP,A)
【文献】 特許第5270922(JP,B2)
【文献】 特開2002−311206(JP,A)
【文献】 特開2004−302113(JP,A)
【文献】 特開平11−167003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10− 1/18
H01L33/60
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な窓材上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する反射防止膜であって、
前記窓材上に設けられる、第1屈折率を有する第1層と、
該第1層上の、第2屈折率を有する第2層と、
該第2層上の、第3屈折率を有する第3層と、の3層構造からなり、
波長280nmにおいて、
前記第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、
前記第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも大きく、
前記第3屈折率は、1.3以上1.6以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも小さく、
前記第1屈折率、前記第2屈折率および前記第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成され
前記第1層の光学膜厚nd、前記第2層の光学膜厚nd、前記第3層の光学膜厚ndが、前記中心発光波長λに対して、
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.26λ≦nd≦0.28λ
を満足することを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
前記第1屈折率を有する層の材料がAlであり、前記第2屈折率を有する層の材料がHfOであり、前記第3屈折率を有する層の材料がSiOである、請求項に記載の反射防止膜。
【請求項3】
透明な窓材上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する反射防止膜であって、
前記窓材上に設けられる、第1屈折率を有する第1層と、
該第1層上の、第2屈折率を有する第2層と、
該第2層上の、第3屈折率を有する第3層と、を備え、
波長280nmにおいて、
前記第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、
前記第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも大きく、
前記第3屈折率は、1.3以上1.6以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも小さく、
前記第1屈折率、前記第2屈折率および前記第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成され、
前記2.0以上2.7以下の第2屈折率を有する第4層と、
該第4層上の、前記1.3以上1.6以下の第3屈折率を有する第5層と、をさらに備え、
前記第4層および前記第5層は、前記窓材および第1層の間に設けられることを特徴とする反射防止膜。
【請求項4】
前記第1層の光学膜厚nd、前記第2層の光学膜厚nd、前記第3層の光学膜厚nd、前記第4層の光学膜厚ndおよび前記第5層の光学膜厚ndが、前記中心発光波長λに対して、
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.28λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
を満足する、請求項に記載の反射防止膜。
【請求項5】
前記第1屈折率を有する層の材料がAlであり、前記第2屈折率を有する層の材料がHfOであり、前記第3屈折率を有する層の材料がSiOである、請求項またはに記載の反射防止膜。
【請求項6】
透明な窓材上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する反射防止膜であって、
前記窓材上に設けられる、第2屈折率を有する第1層と、
該第1層上の、第1屈折率を有する第2層と、
該第2層上の、第3屈折率を有する第3層と、
該第3層上の、前記第2屈折率を有する第4層と、
該第4層上の、前記第3屈折率を有する第5層と、を備え、
波長280nmにおいて、
前記第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、
前記第2屈折率は、前記第1屈折率よりも大きく、かつ、2.0以上2.7以下であり、
前記第3屈折率は、前記第1屈折率よりも小さく、かつ、1.3以上1.6以下であり、
前記第1屈折率、前記第2屈折率および前記第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成されることを特徴とする反射防止膜。
【請求項7】
前記第1層の光学膜厚nd、前記第2層の光学膜厚nd、前記第3層の光学膜厚nd、前記第4層の光学膜厚ndおよび前記第5層の光学膜厚ndが、前記中心発光波長λに対して、
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
を満足する、請求項に記載の反射防止膜。
【請求項8】
前記第1屈折率を有する層の材料がAlであり、前記第2屈折率を有する層の材料がHfOであり、前記第3屈折率を有する層の材料がSiOである、請求項またはに記載の反射防止膜。
【請求項9】
中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外LEDチップと、
前記深紫外LEDチップの光取出し側に設けられる透明な窓材と、を備える深紫外発光デバイスにおいて、
前記窓材の、少なくとも前記深紫外LEDチップと反対側の面に、請求項1〜のいずれか1項に記載の反射防止膜が設けられることを特徴とする深紫外発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜および該反射防止膜を備える深紫外発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
波長200〜350nmの光は深紫外光と呼ばれ、中でも波長260〜340nmの深紫外光は、感光性を有する樹脂の硬化や、物質の検出や組成分析等のセンシング、水や物質表面の殺菌や消毒といった様々な用途に使用されている。このような深紫外光を発光する発光装置として、深紫外発光デバイス(DUV−LED)が知られている。
【0003】
ここで、発光波長が可視広域となる青色発光デバイスなどでは、青色LEDチップをシリコン樹脂(シリコーン)やエポキシ樹脂など樹脂材料により被覆して封止することが一般的である。しかしながら、深紫外光は樹脂を構成する高分子鎖を切断するため、深紫外LEDチップを被覆して封止すると、樹脂材料が劣化してしまう。
【0004】
そこで、深紫外発光デバイスにおいては、例えば図1に示すSMD(Surface Mount Device)構造のように、深紫外LEDチップ1は容器としてのセラミックキャリアCおよび透明な石英などからなる窓材Wにより封止され、容器内は中空とされる。なお、図1における容器内の中空の空間は深紫外LEDチップ1の腐蝕を防止するため、窒素などの不活性ガスで満たされている。また、図1において、電極E1,E2は深紫外LEDチップ1に電気的に接続している。このような中空型構造の紫外発光デバイスが、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−244170号公報
【特許文献2】特開平10−268106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、深紫外LEDチップ1から放射される深紫外光は、容器内の中空空間を経て窓材Wを透過し、さらに空気中へと進む。ここで、深紫外光が窓材Wを通過する際、窓材Wの屈折率と、空気の屈折率との差から、窓材Wの界面では所定の割合で反射光が生ずる。すなわち、図2(A),(B)に模式的に示すように、深紫外光Lが窓材Wに入射する際、窓材Wの深紫外LEDチップ側の界面で反射光Rが生じ、さらに、深紫外光Lが窓材Wから空気中に透過する際にも、窓材Wの空気側の界面で再反射光Rが生じる。なお、図の簡略化のため、入射光の屈折については図2(B)に示しておらず、後述の図3(B)においても同様である。
【0007】
深紫外光Lの波長λを280nmとし、窓材Wが石英(屈折率:1.49)からなる場合の、深紫外光Lの透過率を具体的に説明する。図2(A)に示すように深紫外光Lが窓材Wに垂直入射する際、入射と透過のそれぞれにおいて反射率は約4%であるため、最終的な透過率は約92%となる。また、深紫外LEDチップ1による配光分布に関しては、一般的に半値角(2θ1/2)が120〜150度程度であるため、深紫外光Lが窓材Wに斜め入射する場合の反射率も考慮する必要がある。図2(B)に示すように深紫外光Lが窓材Wに45度の角度で斜め入射する場合、入射と透過のそれぞれにおいて反射率は約9%であるため、最終的な透過率は約82%となる。
【0008】
一般的に深紫外LEDチップから大きな発光出力を得ることは容易ではなく、これまで、深紫外LEDチップからの発光出力を改善する試みは種々行われてきた。本発明者は、深紫外発光デバイスとしての最終的な発光出力を増大させるため、上述した紫外光の反射による損失に着目し、図3(A),(B)に示すように、窓材Wへの深紫外光Lの入射面および透過面に反射防止膜Fおよび/または反射防止膜Fを設けることを想起した。深紫外光Lが窓材Wに45度の角度で斜め入射する場合の損失を、例えば1%ずつとすることができれば、最終的な透過率は98%となるため、深紫外発光デバイスとしての発光出力を従来技術の深紫外発光デバイスよりも大幅に増大できることが見込まれる。
【0009】
さて、従来より、低屈折率膜と、高屈折率膜とを交互に積層してなる反射膜は知られている。深紫外線の反射防止膜としては、露光器(ステッパ)において用いられる多層反射防止膜が例えば特許文献2に開示されている。特許文献2において用いられる高屈折率層の材料はフッ化ランタン(LaF3)などのフッ化物であり、低屈折率層の材料もフッ化マグネシウム(MgF2)またはクライオライト(Na3AlF6)などのフッ化物である。なお、特許文献2においては、低屈折率膜が、入射媒質と反対側の層であり、空気などの気体、すなわち外部と接する面となる。
【0010】
フッ化マグネシウム(MgF2)またはクライオライト(Na3AlF6)などのフッ化物は吸湿性があることが知られるものの、露光機の場合、鏡筒内が窒素などの不活性ガスで充填されるなどするため、これらフッ化物の吸湿性については問題となり難い。これに対して、深紫外発光デバイスは用途によっては水分を含む空気中に曝され得るし、高温多湿環境下に置かれることもあるため、反射防止膜の耐湿性(耐環境性)は必須である。したがって、特許文献2などで知られる反射防止膜を深紫外発光デバイスにそのまま適用することはできない。また、前述のとおり、深紫外LEDチップの配向分布を踏まえれば、斜め入射時の損失を考慮する必要もある。なお、露光器(ステッパ)において用いられるレーザーの配向分布は非常に狭く、特許文献2などの露光器(ステッパ)用に合わせた反射防止膜は、配向分布の広い深紫外発光デバイスにそのまま適用することはできない。
【0011】
そこで、本発明は、耐湿性に優れ、かつ、深紫外光の斜め入射に対しても反射率の小さい、深紫外発光デバイスの用途に供して好適な反射防止膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。そして、耐湿性に優れた酸化物よりなる層を適切な順序で設けることで、深紫外発光デバイスの用途に特に適した、耐湿性に優れ、かつ、斜め入射に対しても反射率の小さい反射防止膜が得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)透明な窓材上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する反射防止膜であって、
前記窓材上に設けられる、第1屈折率を有する第1層と、
該第1層上の、第2屈折率を有する第2層と、
該第2層上の、第3屈折率を有する第3層と、の3層構造からなり、
波長280nmにおいて、
前記第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、
前記第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも大きく、
前記第3屈折率は、1.3以上1.6以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも小さく、
前記第1屈折率、前記第2屈折率および前記第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成され
前記第1層の光学膜厚nd、前記第2層の光学膜厚nd、前記第3層の光学膜厚ndが、前記中心発光波長λに対して、
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.26λ≦nd≦0.28λ
を満足することを特徴とする反射防止膜。
【0015】
)前記第1屈折率を有する層の材料がAlであり、前記第2屈折率を有する層の材料がHfOであり、前記第3屈折率を有する層の材料がSiOである、前記(1)に記載の反射防止膜。
【0016】
)透明な窓材上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する反射防止膜であって、
前記窓材上に設けられる、第1屈折率を有する第1層と、
該第1層上の、第2屈折率を有する第2層と、
該第2層上の、第3屈折率を有する第3層と、を備え、
波長280nmにおいて、
前記第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、
前記第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも大きく、
前記第3屈折率は、1.3以上1.6以下であり、かつ、前記第1屈折率よりも小さく、
前記第1屈折率、前記第2屈折率および前記第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成され、
前記第2屈折率を有する第4層と、
該第4層上の、前記第3屈折率を有する第5層と、をさらに備え、
前記第4層および前記第5層は、前記窓材および第1層の間に設けられることを特徴とする反射防止膜。
【0017】
)前記第1層の光学膜厚nd、前記第2層の光学膜厚nd、前記第3層の光学膜厚nd、前記第4層の光学膜厚ndおよび前記第5層の光学膜厚ndが、前記中心発光波長λに対して、
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.28λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
を満足する、前記()に記載の反射防止膜。
【0019】
)前記第1屈折率を有する層の材料がAlであり、前記第2屈折率を有する層の材料がHfOであり、前記第3屈折率を有する層の材料がSiOである、前記()または()に記載の反射防止膜。
【0020】
)透明な窓材上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する反射防止膜であって、
前記窓材上に設けられる、第2屈折率を有する第1層と、
該第1層上の、第1屈折率を有する第2層と、
該第2層上の、第3屈折率を有する第3層と、
該第3層上の、前記第2屈折率を有する第4層と、
該第4層上の、前記第3屈折率を有する第5層と、を備え、
波長280nmにおいて、
前記第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、
前記第2屈折率は、前記第1屈折率よりも大きく、かつ、2.0以上2.7以下であり、
前記第3屈折率は、前記第1屈折率よりも小さく、かつ、1.3以上1.6以下であり、
前記第1屈折率、前記第2屈折率および前記第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成されることを特徴とする反射防止膜。
【0021】
)前記第1層の光学膜厚nd、前記第2層の光学膜厚nd、前記第3層の光学膜厚nd、前記第4層の光学膜厚ndおよび前記第5層の光学膜厚ndが、前記中心発光波長λに対して、
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
を満足する、前記()に記載の反射防止膜。
【0022】
)前記第1屈折率を有する層の材料がAlであり、前記第2屈折率を有する層の材料がHfOであり、前記第3屈折率を有する層の材料がSiOである、前記()または()に記載の反射防止膜。
【0029】
)中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外LEDチップと、
前記深紫外LEDチップの光取出し側に設けられる透明な窓材と、を備える深紫外発光デバイスにおいて、
前記窓材の、少なくとも前記深紫外LEDチップと反対側の面に、前記(1)〜()のいずれか1項に記載の反射防止膜が設けられることを特徴とする深紫外発光デバイス。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、耐湿性に優れ、かつ、深紫外光の斜め入射に対しても反射率の小さい、深紫外発光デバイスの用途に供して好適な反射防止膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一般的な中空型構造の深紫外発光デバイスを説明する模式図である。
図2】深紫外光が透明な窓材を通過する際の反射を説明する模式図であり、(A)は垂直入射を、(B)は斜め入射を示す。
図3】深紫外光が透明な窓材を通過する際の反射を説明する模式図であり、(A)は垂直入射を、(B)は斜め入射を示す。
図4】本発明による第1実施形態の反射防止膜を説明する模式図である。
図5】本発明による第1実施形態の、第1変形態様の反射防止膜を説明する模式図である。
図6】本発明による第1実施形態の、第2変形態様の反射防止膜を説明する模式図である。
図7】本発明による第2実施形態の反射防止膜を説明する模式図である。
図8】本発明による第3実施形態の反射防止膜を説明する模式図である。
図9】本発明による第4実施形態の反射防止膜を説明する模式図である。
図10】本発明による第1実施形態の反射防止膜を備える深紫外発光デバイスの模式図である。
図11】発明例1の分光反射率を示すグラフであり、(A)は垂直入射に対する分光反射率であり、(B)は45度斜め入射に対する分光反射率である。
図12参考例2−1および参考例2−2の分光反射率を示すグラフであり、(A)は垂直入射に対する分光反射率であり、(B)は45度斜め入射に対する分光反射率である。
図13】発明例3−1および発明例3−2の分光反射率を示すグラフであり、(A)は垂直入射に対する分光反射率であり、(B)は45度斜め入射に対する分光反射率である。
図14】発明例11,参考例12−1,発明例13−1の分光反射率を示すグラフであり、(A)は垂直入射に対する分光反射率であり、(B)は45度斜め入射に対する分光反射率である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。また、各図において、説明の便宜上、窓材および各層の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している。以下、第1屈折率乃至第3屈折率の値を波長280nmにおける屈折率により表すが、260nm以上340nm以下において屈折率の値が大きく変わることは無いため、本発明に従う反射防止膜は、特許請求の範囲の記載に基づき、中心発光波長が260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光に対して適用されることは当業者に当然に理解される。
【0033】
(第1実施形態:反射防止膜10)
図4に示すように、第1実施形態による反射防止膜10は、透明な窓材W上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する。ここで、反射防止膜10は、窓材W上に設けられる、第1屈折率を有する第1層110と、第1層110上の、第2屈折率を有する第2層120と、第2層120上の、第3屈折率を有する第3層130と、を備える。そして、波長280nmにおいて、第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、かつ、第1屈折率よりも大きく、第3屈折率は、1.3以上1.6以下であり、かつ、第1屈折率よりも小さい。さらに、第1屈折率、第2屈折率および第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成される。そして、反射防止膜10において、第3層130が、窓材Wに向けた光が入射する面または窓材Wから出る光を放射する面となる。反射防止膜10は、各層110,120,130が酸化物により構成されるため、反射防止膜10は耐湿性に優れる。さらに、各層110,120,130が上記屈折率の条件を満足するため、深紫外光の斜め入射に対しても反射防止膜10の反射率が小さい。以下、各構成の詳細を順次説明する。
【0034】
<窓材>
窓材Wは、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光に対して透明である。なお、ここで言う透明とは、波長260nm以上340nm以下の範囲内において、透過率が80%以上であることをいう。本発明に従う反射防止膜は、窓材Wの屈折率中心発光波長λに対して屈折率が1.40以上1.80以下である窓材Wに供して好適である。さらに、窓材Wは耐湿性に優れることが好ましく、20℃の水に対する溶解度が9.80×10−5[g/100g−HO]以下であることが好ましく、常温の水に対して不溶であることが特に好ましい。このような窓材Wの具体例として、石英(Quartz Single Crystals; 屈折率: 1.49)、溶融石英(Fused Silica; 屈折率: 1.49)、サファイア(Al2O3; 屈折率: 1.71)を例示することができる。
【0035】
<第1層110>
第1層110は、窓材W上に設けられ、第1屈折率を有し、第1屈折率は、波長280nmにおいて、1.6以上2.0以下とし、1.6以上1.8以下であることがより好ましい。耐湿性に優れ、かつ、上記屈折率を満足する第1屈折率を有する層の材料として、酸化アルミニウム(Al)を用いることが特に好ましいが、酸化マグネシウム(MgO)などを用いることもできるし、酸化アルミニウム(Al)を質量%で90%以上含む混合物を用いてもよい。ただし、このような混合物は上記屈折率を満足するものとする。
【0036】
<第2層120>
第2層120は、第1層110上に設けられ、第2屈折率を有し、第2屈折率は、波長280nmにおいて、2.0以上2.7以下とし、2.0以上2.5以下であることがより好ましい。耐湿性に優れ、かつ、上記屈折率を満足する第2屈折率を有する層の材料として、酸化ハフニウム(HfO)を用いることが特に好ましいが、酸化スカンジウム(III)(Sc)などを用いることもできるし、酸化ハフニウム(HfO)を質量%で90%以上含む混合物を用いてもよい。ただし、このような混合物は上記屈折率を満足するものとする。
【0037】
<第3層130>
第3層130は、第2層120上に設けられ、第3屈折率を有し、第3屈折率は、波長280nmにおいて、1.3以上1.6以下とし、1.4以上1.5以下であることがより好ましい。耐湿性に優れ、かつ、上記屈折率を満足する第3屈折率を有する層の材料として、二酸化ケイ素(SiO)を用いることが特に好ましい。なお、上記屈折率を満足すれば、第3屈折率を有する層の材料には、二酸化ケイ素以外にも、多少の不純物が含まれてもよい。
【0038】
<光学膜厚>
ここで、深紫外光に対する反射率をより確実に低減するため、第1層110の光学膜厚nd、第2層120の光学膜厚nd、第3層130の光学膜厚ndが、中心発光波長λに対して、下記条件を満足することが好ましい。
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.26λ≦nd≦0.28λ
なお、光学膜厚ndとは、各層の屈折率(n)と、物理膜厚(d)との積(n×d)を意味する。
【0039】
ここで、上述した各層110,120,130は一般的な手法により成膜することができ、例えば真空蒸着法、RFスパッタリング法、イオンプレーティング法などのPVD法により順次成膜すればよい。また、CVD法でも各層を成膜することができる。製造コストおよび加工精度の点では、真空蒸着法を用いることがより好ましい。真空蒸着法には、電子ビーム式および抵抗加熱式のいずれも適用可能である。また、後述の第1変形態様、第2変形態様、第2実施形態、第3実施形態および第4実施形態においても、同様の一般的な手法により各層を成膜することができる。
【0040】
さて、第1実施形態に従う反射防止膜は上述の第1層110、第2層120および第3層130の3層構造からなることが、製造コストおよび反射防止膜としての構造の単純化の点では好ましい。しかしながら、以下の第1変形態様および第2変形態様において述べるように、さらに第4層141,142および第5層151,152を備えることも好ましい。
【0041】
(第1実施形態の第1変形態様:反射防止膜11)
図5に示すように、第1実施形態の第1変形態様による反射防止膜11では、前述の反射防止膜10に対し、2.0以上2.7以下の第2屈折率を有する第4層141と、第4層141上の、1.6以上2.0以下の第1屈折率を有する第5層151と、をさらに備える。そして、第4層141および第5層151は、第1層110および第2層120の間に設けられる。すなわち、第1変形態様による反射防止膜11では、窓材Wの側から順に、第1層110、第4層141、第5層151、第2層120および第3層130が設けられ、第3層130が窓材Wに向けた光が入射する面または窓材Wから出る光を放射する面となる。
【0042】
<第4層141>
第4層141は、波長280nmにおいて、本第1実施形態の第2層120について既述の第2屈折率を満足すれば、第2層120と同じ材料であっても、異なる材料であっても構わない。ただし、製造コストおよび反射防止膜としての構造の単純化の観点から、第4層141と第2層120は同じ材料であることが好ましく、いずれも酸化ハフニウムであることが好ましい。
【0043】
<第5層151>
また、第5層151についても、波長280nmにおいて、本第1実施形態の第1層110について既述の第1屈折率を満足すれば、第1層110と同じ材料であっても、異なる材料であっても構わない。ただし、製造コストおよび反射防止膜としての構造の単純化の観点から、第5層151と第1層110は同じ材料であることが好ましく、いずれも酸化アルミニウムであることが好ましい。
【0044】
<光学膜厚>
また、反射率をより確実に低減するため、第1層110の光学膜厚nd、第2層120の光学膜厚nd、第3層130の光学膜厚nd、第4層141の光学膜厚ndおよび第5層151の光学膜厚ndが、中心発光波長λに対して、下記条件を満足することが好ましい。
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.28λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
【0045】
すなわち、第1変形態様においては、各層の光学膜厚が、窓材Wの側から順に、
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.28λ
を満足することが好ましい。また、反射率を低減し、かつ、反射防止膜としての構造の単純化するため、第1変形態様においては、反射防止膜11を上述の5層構造から構成することが好ましい。
【0046】
(第1実施形態の第2変形態様:反射防止膜12)
図6に示すように、第1実施形態の第2変形態様による反射防止膜12では、前述の反射防止膜10に対し、2.0以上2.7以下の第2屈折率を有する第4層142と、第4層142上の、1.3以上1.6以下の第3屈折率を有する第5層152と、をさらに備える。そして、第4層142および第5層152は、窓材Wおよび第1層110の間に設けられる。すなわち、第2変形態様による反射防止膜12では、窓材Wの側から順に、第4層142、第5層152、第1層110、第2層120および第3層130が設けられ、第3層130が窓材Wに向けた光が入射する面または窓材Wから出る光を放射する面となる。
【0047】
<第4層142>
第4層142は、波長280nmにおいて、本第1実施形態の第2層120について既述の第2屈折率を満足すれば、第2層120と同じ材料であっても、異なる材料であっても構わない。ただし、製造コストおよび構造の単純化の観点から、第4層142と第2層120は同じ材料であることが好ましく、いずれも酸化ハフニウムであることが好ましい。
【0048】
<第5層152>
また、第5層152についても、波長280nmにおいて、本第1実施形態の第3層130について既述の第3屈折率を満足すれば、第3層130と同じ材料であっても、異なる材料であっても構わない。ただし、製造コストおよび構造の単純化の観点から、第5層152と第3層130は同じ材料であることが好ましく、いずれも二酸化ケイ素であることが好ましい。
【0049】
<光学膜厚>
また、反射率をより確実に低減するため、第1層110の光学膜厚nd、第2層120の光学膜厚nd、第3層130の光学膜厚nd、第4層142の光学膜厚ndおよび第5層152の光学膜厚ndが、中心発光波長λに対して、下記条件を満足することが好ましい。
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.28λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
【0050】
すなわち、第2変形態様においては、各層の光学膜厚が、窓材Wの側から順に、
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.28λ
を満足することが好ましい。また、反射率を低減し、かつ、反射防止膜としての構造の単純化するため、第2変形態様においては、反射防止膜12を上述の5層構造から構成することが好ましい。
【0051】
次に、本発明による反射防止膜の第2、第3および第4の実施形態について説明する。これら実施形態は、第1実施形態と各層の屈折率については同じであり、各層の順序および好適な光学膜厚が異なる。以下、屈折率およびそれを有する層の材料の点で第1実施形態と重複する部分については、説明を省略する。
【0052】
(第2実施形態:反射防止膜20)
図7に示すように、第2実施形態による反射防止膜20は、透明な窓材W上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する。ここで、反射防止膜20は、窓材W上に設けられる、第2屈折率を有する第1層210と、第1層210上の、第1屈折率を有する第2層220と、第2層220上の、第3屈折率を有する第3層230と、第3層230上の、第2屈折率を有する第4層240と、第4層240上の、第3屈折率を有する第5層250と、を備える。そして、第1、第2および第3屈折率については前述の第1実施形態と同様である。すなわち、波長280nmにおいて、第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、かつ、第1屈折率よりも大きく、第3屈折率は、1.3以上1.6以下であり、かつ、第1屈折率よりも小さい。さらに、第1屈折率、第2屈折率および第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成される。そして、反射防止膜20において、第5層250が窓材Wに向けた光が入射する面または窓材Wから出る光を放射する面である。反射防止膜20は、各層210,220,230,240,250が酸化物により構成されるため、反射防止膜20は耐湿性に優れる。さらに、各層210,220,230,240,250が上記屈折率の条件を満足するため、深紫外光の斜め入射に対しても反射防止膜20の反射率が小さい。
【0053】
<光学膜厚>
ここで、深紫外光に対する反射率をより確実に低減するため、第1層210の光学膜厚nd、第2層220の光学膜厚nd、第3層230の光学膜厚nd、第4層240の光学膜厚ndおよび第5層250の光学膜厚ndが、中心発光波長λに対して、下記条件を満足することが好ましい。
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
また、本第2実施形態においては、反射防止膜20を上述の5層構造から構成することが好ましい。
【0054】
(第3実施形態:反射防止膜30)
図8に示すように、第3実施形態による反射防止膜30は、透明な窓材W上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する。ここで、反射防止膜30は、窓材W上に設けられる、第1屈折率を有する第1層310と、第1層310上の、第2屈折率を有する第2層320と、第2層320上の、第3屈折率を有する第3層330と、第3層330上の、第1屈折率を有する第4層340と、第4層340上の、第3屈折率を有する第5層350と、を備える。そして、そして、第1、第2および第3屈折率については前述の第1実施形態と同様である。すなわち、波長280nmにおいて、第1屈折率が1.6以上2.0以下であり、第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、かつ、第1屈折率よりも大きく、第3屈折率は、1.3以上1.6以下であり、かつ、第1屈折率よりも小さい。さらに、第1屈折率、第2屈折率および第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成される。そして、反射防止膜30において、第5層350が窓材Wに向けた光が入射する面または窓材Wから出る光を放射する面である。反射防止膜30は、各層310,320,330,340,350が酸化物により構成されるため、反射防止膜30は耐湿性に優れる。さらに、各層310,320,330,340,350が上記屈折率の条件を満足するため、深紫外光の斜め入射に対しても反射防止膜30の反射率が小さい。
【0055】
<光学膜厚>
ここで、深紫外光に対する反射率をより確実に低減するため、第1層310の光学膜厚nd、第2層320の光学膜厚nd、第3層330の光学膜厚nd、第4層340の光学膜厚ndおよび第5層350の光学膜厚ndが、中心発光波長λに対して、下記条件を満足することが好ましい。
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
0.24λ≦nd≦0.26λ
また、本第3実施形態においては、反射防止膜30を上述の5層構造から構成することが好ましい。
【0056】
(第4実施形態:反射防止膜40)
図9に示すように、第4実施形態による反射防止膜40は、透明な窓材W上に設けられ、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光の反射を防止する。ここで、反射防止膜40は、窓材W上に設けられる、第2屈折率を有する第1層410と、第1層410上の、第3屈折率を有する第2層420と、第2層420上の、第2屈折率を有する第3層430と、第3層430上の、第3屈折率を有する第4層440と、を備える。そして、そして、第2および第3屈折率については前述の第1実施形態と同様である。すなわち、波長280nmにおいて、第2屈折率は、2.0以上2.7以下であり、第3屈折率は、1.3以上1.6以下である。さらに、第2屈折率および第3屈折率を有する層の材料は互いに異なる酸化物から構成される。そして、反射防止膜40において、第4層440が窓材Wに向けた光が入射する面または窓材Wから出る光を放射する面である。反射防止膜40は、各層410,420,430,440が酸化物により構成されるため、反射防止膜40は耐湿性に優れる。さらに、各層410,420,430,440が上記屈折率の条件を満足するため、深紫外光の斜め入射に対しても反射防止膜40の反射率が小さい。
【0057】
<光学膜厚>
ここで、深紫外光に対する反射率をより確実に低減するため、第1層410の光学膜厚nd、第2層420の光学膜厚nd、第3層430の光学膜厚ndおよび第4層440の光学膜厚ndが、中心発光波長λに対して、下記条件を満足することが好ましい。
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.34λ≦nd≦0.38λ
0.05λ≦nd≦0.15λ
0.30λ≦nd≦0.34λ
【0058】
特に、第2屈折率を有する層の材料がHfOであり、第3屈折率を有する層の材料がSiOであり、光学膜厚nd、nd、nd、ndが、中心発光波長λに対して、下記条件を満足することが好ましい。
0.48λ≦nd≦0.52λ
0.35λ≦nd≦0.37λ
0.05λ≦nd≦0.15λ
0.30λ≦nd≦0.34λ
また、本第4実施形態においては、反射防止膜40を上述の4層構造から構成することが好ましい。
【0059】
実施例においても後述するが、上述した反射防止膜10,11,12,20,30,40を窓材Wに設けたときに、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光に対する、窓材Wと反射防止膜との界面での反射率を垂直入射の場合に1%以下、45度斜め入射の場合に2%以下とすることができる。そこで、窓材Wの表裏面に本発明に従う反射防止膜を設ければ、深紫外光の透過率を垂直入射の場合に99%以上かつ、45度斜め入射の場合に98%以上とすることができる。
【0060】
また、既述のとおり、本発明による反射防止膜であれば、耐湿性に優れるため、水分を含む空気に曝して使用することも可能である。したがって、本発明による反射防止膜は、深紫外発光デバイスの用途に供して好適である。また、本発明による反射防止膜は、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光に対して好適であるのは既述のとおりであるが、中心発光波長λが270nm以上290nm以下の範囲内の深紫外光および300nm以上320nm以下の範囲内の深紫外光に対しても、勿論好適である。
【0061】
なお、本発明による反射防止膜の各層の屈折率などの光学定数および膜厚は、市販の反射分光膜厚計などを用いて測定することができる。
【0062】
(第5実施形態:深紫外発光デバイス)
本発明の第5実施形態に従う深紫外発光デバイスは、図10に模式的に示すように、中心発光波長λが260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外LEDチップ1と、深紫外LEDチップ1の光取出し側に設けられる透明な窓材Wと、を備える。そして、窓材Wの、少なくとも深紫外LEDチップ1と反対側の面に反射防止膜10が設けられる。
【0063】
なお、深紫外発光デバイスにおいて、図10に示すように、反射防止膜10は、窓材Wの、深紫外LEDチップ1側の面にも設けられることが好ましい。また、窓材Wの表裏面側とも、図10に示す反射防止膜10に替えて、既述の反射防止膜11,12,20,30,40のいずれを用いてもよい。窓材Wの表裏面に、同種の反射防止膜(例えば、表(おもて)面側に反射防止膜10とし、裏面側に反射防止膜10)を設けることが製造上好ましいが、層構造の異なる反射防止膜(例えば、表(おもて)面側に反射防止膜10とし、裏面側に反射防止膜11)が設けられても構わない。
【0064】
深紫外LEDチップ1は一般的なものを用いることができる。例えばサファイア基板2上にAlGaNなどのIII族窒化物半導体からなる半導体層3をエピタキシャル成長させ、n型層にはn型電極4を、p型層にはp型電極5を蒸着法などにより形成し、個片化することで深紫外LEDチップ1を得ることができる。
【0065】
こうして得られる深紫外LEDチップ1の各電極4,5上のそれぞれに金スタッドパンプ6,7をワイヤーボンダなどを用いて作製し、次いで、金スタッドパンプ付きの深紫外LEDチップ1を、AlNなどからなるセラミックス製のキャリアCにマウントすればよい。なお、マウントに際しては例えば超音波接合法を用いることができる。なお、図10に示すように、キャリアCの裏面には、キャリアCを貫通する配線電極E1,E2が設けられている。こうして深紫外LEDチップ1がマウントされたキャリアCを、上述した反射防止膜10をあらかじめ表裏面に設けた窓材Wと接合することによって、深紫外発光デバイスを得ることができる。窓材WとキャリアCとの接合にあたっては、種々の接合材料Bを用いることができ、例えばAuSn等を接合材料Bに用いたメタライズ融着や、ナノ銀粒子などを接合材料Bとする融着の他、UV硬化樹脂およびエポキシ樹脂材料などを接合材料Bとして用いることができる。
【0066】
図10に示す深紫外発光デバイスには、耐湿性に優れ、かつ、深紫外光の斜め入射に対しても反射率の小さな反射防止膜が設けられている。したがって、本発明に従う深紫外発光デバイスは、耐湿性に優れ、かつ、窓材Wを透過する際の深紫外光の損失が少ないため、光出力が大きい。
【0067】
なお、図10では窓材Wの形状が平坦面であるとして図示しているが、本発明に適用可能な窓材Wの形状は平坦面に限られず、所謂砲弾型などとして知られる湾曲した球面であってもよい。また、図10はSMD構造を模式的に示したものであるが、CAN型パッケージの窓材(レンズ)表面に、前述の第1〜第4実施形態に従う反射防止膜を形成した深紫外発光デバイスが本発明に含まれることは勿論である。また、窓材Wの、深紫外LEDチップ1と反対側の面への反射防止膜10の形成に際して、キャリアCとの接合前に予め反射防止膜を成膜しておくことが好ましいが、深紫外LEDチップ1と反対側の面については、キャリアCとの接合後に反射防止膜を成膜しても構わない。
【実施例1】
【0068】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
(発明例1)
発明例1に従う反射防止膜を、第1実施形態の反射防止膜10に従い、下記表1のとおりに窓材上に作製した。なお、各層の成膜にあたっては、電子ビーム式の真空蒸着法により行った。中心発光波長λを280nmとし、物理膜厚が下記表1の光学膜厚となるよう、厚みを調整して成膜した。また、窓材には平坦な合成石英を用いた。
【0070】
【表1】
※1:但し、窓材側から層No.を1、2、・・・とする。括弧内に実施形態において対応する構成を記載する。以下の表においても同じ。
【0071】
<反射率評価>
発明例1の分光反射率を、図11のグラフに示す。図11(A)は垂直入射の場合の分光反射率であり、図11(B)は、45度斜め入射の場合の分光反射率である。260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光に対して、反射率が小さいことが確認できる。なお、図11(A),(B)には参照用に合成石英の反射率を併せて示している。また、波長280nmの深紫外光に対しての反射率から求めた透過率(%)を、表1に併せて示す。後述の表2〜9においても、同様にして求めた透過率(%)を示す。
【0072】
参考例2−1)
参考例2−1に従う反射防止膜を、第1実施形態の第1変形態様による反射防止膜11に従い、下記表2のとおりに作製した。なお、各層の成膜にあたっては、発明例1と同様に行った。
【0073】
【表2】
【0074】
参考例2−2)
参考例2−2に従う反射防止膜を、第1実施形態の第1変形態様による反射防止膜12に従い、下記表3のとおりに作製した。参考例2−1とは、5番目の層(最上層)の光学膜厚のみが異なる。なお、各層の成膜にあたっては、発明例1と同様に行った。
【0075】
【表3】
【0076】
(発明例3−1)
発明例3−1に従う反射防止膜を、第1実施形態の第2変形態様による反射防止膜12に従い、下記表4のとおりに作製した。なお、各層の成膜にあたっては、発明例1と同様に行った。
【0077】
【表4】
【0078】
(発明例3−2)
発明例3−2に従う反射防止膜を、第1実施形態の第2変形態様による反射防止膜12に従い、下記表5のとおりに作製した。発明例3−1とは、5番目の層(最上層)の光学膜厚のみが異なる。なお、各層の成膜にあたっては、発明例1と同様に行った。
【0079】
【表5】
【0080】
<反射率評価>
参考例2−1および参考例2−2の分光反射率を、図12のグラフに示す。同様に、発明例3−1および発明例3−2の分光反射率を、図13のグラフに示す。図12(A),図13(A)は垂直入射の場合の分光反射率であり、図12(B),図13(B)は、45度斜め入射の場合の分光反射率である。最上層の光学膜厚のみを変化させた参考例2−1と、参考例2−2とを比較すると、反射率のピーク位置は20〜30nm程度移動するものの、いずれも低反射率を示すことが確認できた。同様に、最上層の光学膜厚のみを変化させた発明例3−1と、発明例3−2とを比較すると、反射率のピーク位置は20〜30nm程度移動するものの、いずれも低反射率を示すことが確認できた。
【0081】
(発明例4)
発明例4に従う反射防止膜を、第2実施形態による反射防止膜20に従い、下記表6のとおりに作製した。なお、各層の成膜にあたっては、発明例1と同様に行った。
【0082】
【表6】
【0083】
参考例5)
参考例5に従う反射防止膜を、第3実施形態による反射防止膜30に従い、下記表7のとおりに作製した。なお、各層の成膜にあたっては、発明例1と同様に行った。
【0084】
【表7】
【0085】
参考例6)
参考例6に従う反射防止膜を、第4実施形態による反射防止膜40に従い、下記表8のとおりに作製した。なお、各層の成膜にあたっては、発明例1と同様に行った。
【0086】
【表8】
【0087】
<耐湿性評価>
発明例1,参考例2−1,2−2,発明例3−1,3−2,4,参考例5,6に係る反射防止膜が合成石英からなる窓材の両面に設けられた深紫外発光デバイスを作製し、以下の評価条件1〜3により、耐湿性を評価する試験をそれぞれ独立して行った。
[1]評価条件1として、85℃、湿度85%RHの加湿環境下に1000時間置く加湿保存試験を行った。
[2]評価条件2として、85℃、湿度20%RH以下の高温環境下に1000時間置く高温保存試験を行った。
[3]評価条件3として、常温・常湿の室温環境(温度:23〜29℃、湿度:25〜35%RH、)下で1000時間連続通電する連続通電試験を行った。
評価条件1〜3のいずれにおいても、1000時間経過後の発光出力は試験開始前の発光出力と同程度であった。このことから、窓材上に設けた反射防止膜の透過率に変化はないことが確認され、いずれの反射防止膜でも十分な耐湿性を備えることが確認された。
【0088】
以上のとおり、発明例1,参考例2−1,2−2,発明例3−1,3−2,4,参考例5,6による反射防止膜はいずれも耐湿性を有していることが確認できた。さらに、これら発明例のいずれも、波長280nmの深紫外光においては、垂直入射に対して99%以上の透過率を有し、かつ、45度斜め入射に対しても98%以上の透過率を有することが確認できた。
【実施例2】
【0089】
実施例1では窓材の材料を合成石英としていたところ、実施例2では窓材の材料をサファイアに替えた。なお、サファイアに反射防止膜を設けない場合、波長280nmの深紫外光の、サファイアへ垂直入射する際の透過率は約86.2%であり、45度斜め入射する際の透過率は約71.6%である。
【0090】
(発明例11,13−1,13−2,14、参考例12−1,12−2,15,16)
発明例1,2−1,2−2,3−1,3−2,4,5,6において、窓材の材料を合成石英(屈折率:1.49)としていたところ、窓材の材料をサファイア(屈折率:1.71)に替えた以外は、発明例1,参考例2−1,参考例2−2,発明例3−1,3−2,4,参考例5,6とそれぞれ同様にして、発明例11,参考例12−1,12−2,発明例13−1,13−2,14,参考例15,16に係る反射防止膜を作製した。
【0091】
実施例1と同様に、発明例11,参考例12−1,12−2,発明例13−1,13−2,14,参考例15,16に係る反射防止膜を測定した。波長280nmの深紫外光に対しての反射率から求めた透過率(%)を、表9に示す。また、代表例として、発明例11,参考例12−1,発明例13−1に係る反射防止膜の分光反射率を図14のグラフに示す。図14(A)は垂直入射の場合の分光反射率であり、図14(B)は、45度斜め入射の場合の分光反射率である。反射防止膜を設けない場合に比べて、260nm以上340nm以下の範囲内の深紫外光に対して、反射率が小さいことが確認できる。なお、図14(A),(B)には参照用にサファイアの反射率を併せて示している。
【0092】
【表9】
【0093】
以上の結果から、本発明に従う反射防止膜は、サファイアからなる窓材に供しても有効であることが確認された。窓材がサファイアの場合、垂直入射および45度入射の双方について透過率が98%を超える発明例11および発明例14が特に好適であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、耐湿性に優れ、かつ、深紫外光の斜め入射に対しても反射率の小さい、深紫外発光デバイスの用途に供して好適な反射防止膜を提供することができるため、有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 深紫外LEDチップ
10,11,12,20,30,40 反射防止膜
110,210,310 第1層
120,220,320 第2層
130,230,330 第3層
141,142,240,340,440 第4層
151,152,250,350,450 第5層
C キャリア
E1,E2 電極
L 深紫外光
R1,R2 反射光
W 窓材
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