特許第6491903号(P6491903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6491903
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】基板洗浄装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 644C
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-30489(P2015-30489)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-152382(P2016-152382A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】磯野 佳宣
(72)【発明者】
【氏名】丸山 徹
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−219930(JP,A)
【文献】 特開平10−289889(JP,A)
【文献】 特開2003−077881(JP,A)
【文献】 特開2003−092278(JP,A)
【文献】 特開2008−270753(JP,A)
【文献】 特開2014−216393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0277702(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を複数のローラで保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させつつ、基板に洗浄液を供給して基板を洗浄する基板洗浄装置において、
基板の回転速度が設定された回転速度より低下する状態になる基板とローラとの間に発生するスリップを検知するスリップ検知手段と、
前記ローラを所定の押し付け力で基板に押し付けるローラ押し付け機構と、
前記スリップ検知手段が基板とローラとの間のスリップを検知した際に、前記ローラ押し付け機構による押し付け力を増加させる制御部とを備えたことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記スリップ検知手段は、基板の周縁部にあるノッチが前記ローラに当たることでローラに発生する振動を検出する振動センサからなることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記スリップ検知手段は、基板の周縁部にあるノッチを検出可能な光センサからなることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記スリップ検知手段は、基板の周縁部に接触して回転する従動ローラと、従動ローラの回転速度を測定する速度センサからなることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記ローラ押し付け機構は、エアシリンダまたは電動シリンダからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記スリップ検知手段から受信した信号が所定の閾値を下回った時に前記ローラ押し付け機構による押し付け力を増加させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
基板の周縁部を複数のローラで保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させつつ基板に洗浄液を供給して基板を洗浄する基板洗浄方法において、
複数の回転するローラを所定の押し付け力で基板に押し付けて基板を設定された回転速度で回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させて洗浄し、
前記洗浄中に、基板の回転速度が前記設定された回転速度より低下する状態になる基板とローラとの間に発生するスリップの有無を監視し、
前記スリップが発生した際に、基板に対する前記ローラの押し付け力を増加させて基板の洗浄を継続することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項8】
基板の周縁部にあるノッチが前記ローラに当たることでローラに発生する振動を検出する振動センサによって前記スリップを検知することを特徴とする請求項7記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
基板の周縁部にあるノッチを検出可能な光センサによって基板の回転を監視することで、前記スリップを検知することを特徴とする請求項7記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
基板の周縁部に接触して回転する従動ローラの回転を速度センサによって監視することで、前記スリップを検知することを特徴とする請求項7記載の基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の基板の周縁部を複数のローラで保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させつつ基板に洗浄液を供給して基板を洗浄する基板洗浄装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウェハ等の基板の表面に成膜、エッチング、研磨などの各種処理が施される。これら各種処理のためには、基板の表面を清浄に保つ必要があるので、基板の洗浄処理が行われる。基板の洗浄処理には、基板の周縁部を複数のローラによって保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を押し当てて洗浄する洗浄機が広く用いられている。
【0003】
上述したように、基板を複数のローラで挟み回転させる洗浄機においては、洗浄部材によって基板の表面に所定の圧力を加えつつ基板の表面を擦ることにより、基板の表面の汚れ(パーティクル等)を落とすようにしているため、基板とローラとの間にスリップが発生して基板の回転速度が設定回転速度より低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−289889号公報
【特許文献2】特開平11−219930号公報
【特許文献3】特開2003−77881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板を複数のローラで挟み回転させる洗浄機において、基板とローラとの間にスリップが発生するかどうかは、ローラの接触部の摩耗の他、洗浄部材の回転速度および押付力、薬液の種類、基板周縁部の材料により変わる。基板とローラとの間のスリップを検知する方法はいくつか知られているが、従来はスリップが検知された後、ローラの接触部の交換やローラの押し付け力(クランプ力)の調整をマニュアルで行っている。種々の条件が変わるたびにそのような作業を行うことはきわめて煩雑であった。また、ローラのクランプ力を強めた状態で処理を継続すると、ローラの接触部の摩耗が進み、寿命が短くなる問題がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、洗浄中に基板とローラとの間に発生するスリップの有無を監視し、スリップが発生した場合に基板に対するローラの押し付け力を自動的に調整することができる基板洗浄装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の基板洗浄装置は、基板の周縁部を複数のローラで保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させつつ、基板に洗浄液を供給して基板を洗浄する基板洗浄装置において、基板の回転速度が設定された回転速度より低下する状態になる基板とローラとの間に発生するスリップを検知するスリップ検知手段と、前記ローラを所定の押し付け力で基板に押し付けるローラ押し付け機構と、前記スリップ検知手段が基板とローラとの間のスリップを検知した際に、前記ローラ押し付け機構による押し付け力を増加させる制御部とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、基板とローラとの間のスリップを検知した際に、基板へのローラの押し付け力(クランプ力)を増加させることにより、基板とローラとの間のスリップを解消することができる。したがって、基板の回転速度を直ちに設定回転速度に復帰させることができる。
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、前記スリップ検知手段は、基板の周縁部にあるノッチが前記ローラに当たることでローラに発生する振動を検出する振動センサからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記スリップ検知手段は、基板の周縁部にあるノッチを検出可能な光センサからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記スリップ検知手段は、基板の周縁部に接触して回転する従動ローラと、従動ローラの回転速度を測定する速度センサからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記ローラ押し付け機構は、エアシリンダまたは電動シリンダからなることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様によれば、前記制御部は、前記スリップ検知手段から受信した信号が所定の閾値を下回った時に前記ローラ押し付け機構による押し付け力を増加させることを特徴とする。
本発明によれば、スリップ検知手段の信号が所定の閾値より低下したときに、基板とローラとの間にスリップが発生したと判定し、基板へのローラの押し付け力(クランプ力)を増加させる。これにより、スリップを解消することができる。
【0010】
本発明の基板洗浄方法は、基板の周縁部を複数のローラで保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させつつ基板に洗浄液を供給して基板を洗浄する基板洗浄方法において、複数の回転するローラを所定の押し付け力で基板に押し付けて基板を設定された回転速度で回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させて洗浄し、前記洗浄中に、基板の回転速度が前記設定された回転速度より低下する状態になる基板とローラとの間に発生するスリップの有無を監視し、前記スリップが発生した際に、基板に対する前記ローラの押し付け力を増加させて基板の洗浄を継続することを特徴とする。
本発明によれば、基板とローラとの間のスリップを検知した際に、基板へのローラの押し付け力(クランプ力)を増加させることにより、基板とローラとの間のスリップを解消することができる。したがって、基板の回転速度を直ちに設定回転速度に復帰させることができる。
【0011】
本発明の好ましい態様は、基板の周縁部にあるノッチが前記ローラに当たることでローラに発生する振動を検出する振動センサによって前記スリップを検知することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、基板の周縁部にあるノッチを検出可能な光センサによって基板の回転を監視することで、前記スリップを検知することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、基板の周縁部に接触して回転する従動ローラの回転を速度センサによって監視することで、前記スリップを検知することを特徴とする。
【0012】
本発明の基板洗浄装置の調整方法の実施形態によれば、基板の周縁部を複数のローラで保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させつつ基板に洗浄液を供給して基板を洗浄する基板洗浄装置の調整方法において、前記洗浄部材が基板に接触していない状態で、基板に対する前記ローラの押し付け力を変更しながら、基板の回転状態を監視する。
本発明の実施形態によれば、前記ローラの押し付け力を次第に大きくしていき、基板の回転が始まるときの前記ローラの押し付け力を求める。
【0013】
本発明の基板洗浄装置の調整方法の第2の実施形態によれば、基板の周縁部を複数のローラで保持しつつローラを回転駆動することにより基板を回転させ、回転する基板に洗浄部材を接触させつつ、基板に洗浄液を供給して基板を洗浄する基板洗浄装置の調整方法において、前記洗浄部材を基板に接触させた状態で、基板に対する前記ローラの押し付け力を変更しながら、基板の回転状態を監視する。
本発明の実施形態によれば、前記ローラの押し付け力を次第に小さくしていき、基板とローラとの間のスリップが始まるときの前記ローラの押し付け力を求める。
本発明の基板洗浄装置の実施形態によれば、基板の周縁部を保持し基板を回転させる複数のローラと、基板の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルと、前記複数のローラにより回転される基板の表面に接触して基板表面を洗浄する洗浄部材と、基板に対する前記複数のローラの押しつけ力を制御するコントローラと、受光部と投光部とからなる光センサとを備え、前記光センサは、回転している基板のノッチを検出可能な位置に光軸が設けられ、基板のノッチが前記光軸を通過するときに前記受光部が前記投光部からの光を受光し、電気的信号を生成して前記コントローラに該電気的信号を出力する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)洗浄中に、散発的に生じる基板とローラとの間のスリップを検知したときに、その場でローラの押し付け力(クランプ力)を強め、基板とローラとの間のスリップを解消し、洗浄を継続することで、洗浄性能を維持することができる。
(2)処理条件に応じて頻繁に手動でローラの押し付け力(クランプ力)を調整するといった作業が必要でないため、ダウンタイムを削減できる。
(3)基板とローラとの間のスリップが発生しない限り、標準のローラの押付け力で処理するため、押し付け力を増加させたまま処理を継続してローラの摩耗が進行するという問題を解消することができる。
(4)装置のセッティング時あるいは基板の洗浄処理の開始前などに、基板の回転状態を監視しながら基板に対するローラの押し付け力(クランプ力)を調整することができる。したがって、基板を設定回転速度で回転させるためのクランプ力を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本説明に係る基板洗浄装置の全体構成を示す模式的斜視図である。
図2図2は、基板のスリップを検知してローラの押し付け力を制御する構成を備えた基板洗浄装置を示す模式図である。
図3図3は、図2に示すように構成された基板洗浄装置によるクランプ力の補正方法を示すグラフである。
図4図4は、基板のスリップを検知する検知手段の他の態様を示す模式的斜視図である。
図5図5は、基板のスリップを検知する検知手段の更に他の態様を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る基板洗浄装置および方法の実施形態を図1乃至図5を参照して説明する。
図1は、本説明に係る基板洗浄装置の全体構成を示す模式的斜視図である。図1に示すように、基板洗浄装置1は、半導体ウェハ等の基板Wの周縁部を保持し基板Wをその軸心の周りに回転させる複数のローラ1と、ローラ1により回転される基板Wの表面に接触する洗浄部材2とを備えている。図示例では、4個のローラ1が設置されており、各ローラ1はスピンドル3に連結されている。4個のローラ1のうち、例えば、2個のローラ1はスピンドル3を介してモータ4に連結されていて回転駆動されるようになっており、基板Wに回転力を与え、他の2個のローラ1は基板Wの回転を支承するベアリングの働きをしている。なお、全てのローラ1をモータに連結して、全てのローラ1が基板Wに回転力を付与するように構成してもよい。
【0017】
洗浄部材2は、円柱状で基板Wの直径とほぼ同じ長さを有した長尺状のPVAからなるロールスポンジによって構成され、図示されないホルダーにより保持されている。洗浄部材2は基板Wの回転軸心と直交する回転軸心の周りに回転するように構成されている。なお、洗浄部材は、基板Wの直径より小さい直径を有し基板Wの回転軸心と平行な回転軸心の周りに回転するペンシル型洗浄部材であってもよい。また、基板Wの裏面側に、基板Wの裏面を洗浄する洗浄部材を配置し、表板Wの表裏面を同時に洗浄するように構成してもよい。
【0018】
図1に示すように、左側の2つのローラ1は第1ステージ5−1により支持されており、右側の2つのローラ1は第2ステージ5−2により支持されている。第1ステージ5−1には、第1エアシリンダ6−1が連結されており、第2ステージ5−2には、第2エアシリンダ6−2が連結されている。また、第2ステージ5−2には加速度センサからなる振動センサ8が取り付けられている。
【0019】
図1に示すように構成された基板洗浄装置は、以下のように動作する。
第1ステージ5−1と第2ステージ5−2とがそれぞれ第1エアシリンダ6−1と第2エアシリンダ6−2によって離間する方向に移動した状態で、基板Wが供給されると、第1エアシリンダ6−1と第2エアシリンダ6−2が作動して第1ステージ5−1と第2ステージ5−2とが前進し、基板Wの周縁部は4つのローラ1により保持される。すなわち、図1に示すように、基板Wは4つのローラ1により水平に保持された状態になる。この状態でモータ4を駆動してローラ1を回転駆動し、基板Wに回転力を付与し、モータ4に連結されていないローラ1によって基板Wの回転を支承する。
【0020】
このように基板Wを回転させた状態で、図示されない洗浄液供給ノズルから基板Wの表面(上面)に洗浄液を供給しつつ、洗浄部材2を回転させながら下降させて回転中の基板Wの表面に所定の荷重で洗浄部材2を接触させる。これによって、洗浄液の存在下で基板Wの表面を洗浄部材2によりスクラブ洗浄する。
基板Wが回転している間、基板Wの周縁部にはノッチ(V字型の切れ込み)nが形成されているため、ノッチnがローラ1に当たると、ローラ1が振動する。ローラ1の振動に伴い、ローラ1を支持している第1ステージ5−1と第2ステージ5−2とが振動する。この振動は、第2ステージ5−2に設置された加速度センサからなる振動センサ8によって検出することができる。
【0021】
次に、振動センサ8によって検出した振動から基板Wとローラ1との間に発生したスリップを検知し、スリップが検知されたときに基板Wに対するローラ1の押し付け力(クランプ力)を増加させる構成について説明する。なお、基板とローラとの間に発生するスリップについて、基板のスリップと短縮して表記する場合もある。
図2は、基板Wのスリップを検知してローラ1の押し付け力を制御する構成を備えた基板洗浄装置を示す模式図である。図2に示すように、第2ステージ5−2に設置された振動センサ8はコントローラ(制御部)10に接続されている。第2ステージ5−2を前後進させる第2エアシリンダ6−2は電空レギュレータ11に接続されており、電空レギュレータ11はコントローラ(制御部)10に接続されている。図2においてローラ1、第1ステージ5−1、第2ステージ5−2、第1エアシリンダ6−1および第2エアシリンダ6−2の構成は、図1に示すとおりである。
【0022】
図3は、図2に示すように構成された基板洗浄装置によるクランプ力の補正方法を示すグラフである。基板Wの洗浄中に、振動センサ8によって検出された振動は、内部にアンプや演算部等を備えたコントローラ(制御部)10によって増幅された後に実効値変換される。その結果、コントローラ10は図3の上段に示すようなRMS波形を得る。発明者らは、上記のシステムによって得られるRMS波形をモニタリングすると、基板のスリップが生じたときにRMS波形の値が小さくなることを確認した。そこで、コントローラ10は、RMS波形を監視し、図3の上段に示すように、RMS波形が所定の閾値を下回ったら、基板Wの回転速度が設定回転速度より低下して基板Wのスリップが発生したと判定し、電空レギュレータ11に圧力制御信号を送信する。電空レギュレータ11は、コントローラ10から送信された圧力制御信号に基づいて、図3の下段に示すように、上昇させたクランプエアー圧を第2エアシリンダ6−2に供給し、基板Wに対するローラ1の押し付け力(クランプ力)を増加させる。第2エアシリンダ6−2は、ローラ1を所定の押し付け力で基板Wに押し付けるローラ押し付け機構を構成している。ローラ押し付け機構は、エアシリンダに代えて電動シリンダであってもよい。コントローラ10は、クランプ力を増加させた後に、図3の上段に示すように、RMS波形が閾値を上回ったら、基板Wの回転速度が設定回転速度に回復したと判定し、電空レギュレータ11に圧力制御信号を送信する。電空レギュレータ11は、コントローラ10から送信された圧力制御信号に基づいて、図3の下段に示すように、元の圧力に低下させたクランプエアー圧を第2エアシリンダ6−2に供給し、基板Wに対するローラ1の押し付け力(クランプ力)を標準設定値に戻す。
【0023】
このように、本発明によれば、基板Wのスリップが検知されたときに、ローラ1のクランプ力を増加させて基板Wをスリップ状態から設定された回転速度に閉ループ制御(CLC制御)によって回復させることができる。基板Wの洗浄中、RMS波形を常時監視し、クランプ力の補正を常に行うことにより、散発的に生ずる基板のスリップを直ちに解消することができる。
【0024】
図4は、基板Wのスリップを検知する検知手段の他の態様を示す模式的斜視図である。図4においては、洗浄部材2、第1ステージ5−1,第2ステージ5−2、第1エアシリンダ6−1,第2エアシリンダ6−2等は図示を省略している。
図4に示す実施形態では、基板Wの周縁部に形成されたノッチnを検出する光センサ20が設置されている。光センサ20は、光を投光する投光部21と、投光部21からの光を受光する受光部22とから構成されている。投受光部21,22は保持部23により保持されている。また、投受光部21,22はコントローラ(制御部)10に接続されている。
【0025】
光センサ20は、回転している基板Wのノッチnを検出可能な位置に光軸を合わせてあり、投光部21からの光は通常遮光状態であり、基板Wのノッチnが光軸を通過する時にのみ受光部22は投光部21からの光を受光し、光を電気的信号に変換し、コントローラ10に出力する。コントローラ10は、光センサ20からの信号に基づいて基板Wの回転速度が設定回転速度より低下したことを検知して基板Wのスリップが発生したと判定し、電空レギュレータ11(図2参照)に圧力制御信号を送信する。電空レギュレータ11は、コントローラ10から送信された圧力制御信号に基づいて上昇させたクランプエアー圧を第2エアシリンダ6−2(図2参照)に供給し、基板Wに対するローラ1の押し付け力(クランプ力)を増加させる。その後、光センサ20により基板Wの回転速度の監視を引き続き行い、基板Wの回転速度が設定回転速度に回復したら、基板Wへのローラ1の押し付け力(クランプ力)を標準設定値に戻す。
【0026】
図5は、基板Wのスリップを検知する検知手段の更に他の態様を示す模式的斜視図である。図5においては、洗浄部材2、第1ステージ5−1,第2ステージ5−2、第1エアシリンダ6−1,第2エアシリンダ6−2等は図示を省略している。
図5に示す実施形態では、基板Wの周縁部に接触して回転する従動ローラ30が設置されている。従動ローラ30には、従動ローラ30と一体に回転するスピンドル31が固定されており、スピンドル31の下端部を囲むように回転速度センサ32が設置されている。図5に示す実施形態では、従動ローラ30を基板Wの周縁部に接触させ、基板Wの回転を利用して従動ローラ30を回転させ、従動ローラ30の回転速度を回転速度センサ32で測定するようにしている。回転速度センサ32はコントローラ(制御部)10に接続されている。コントローラ10は、回転速度センサ32からの信号に基づいて基板Wの回転速度が設定回転速度より低下したことを検知して基板Wのスリップが発生したと判定し、電空レギュレータ11(図2参照)に圧力制御信号を送信する。電空レギュレータ11は、コントローラ10から送信された圧力制御信号に基づいて上昇させたクランプエアー圧を第2エアシリンダ6−2(図2参照)に供給し、基板Wに対するローラ1の押し付け力(クランプ力)を増加させる。その後、回転速度センサ32により基板Wの回転速度の監視を引き続き行い、基板Wの回転速度が設定回転速度に回復したら、基板Wへのローラ1の押し付け力(クランプ力)を標準設定値に戻す。
【0027】
次に、図1乃至図5に示すような構成を備えた基板洗浄装置を用いて、装置のセッティング時あるいは基板の洗浄処理の開始前などに、ローラ1の押し付け力(クランプ力)を調整する方法について説明する。
図1において、洗浄部材2が基板Wに接触していない状態においてローラ1の押し付け力(クランプ力)を次第に強めて基板Wの回転が始まるクランプ力を求め、この基板Wの回転が始まるクランプ力を基にして基板を設定回転速度で回転させるためのクランプ力を最適化することができる。この場合、基板Wの回転開始は、振動センサ8、光センサ20、回転速度センサ32により検知可能であり、クランプ力はコントローラ(制御部)10により演算することができる。
【0028】
また、洗浄部材2を基板Wに接触させ、基板Wを設定回転速度で回転させた状態においてローラの押し付け力(クランプ力)を徐々に弱くしていき、基板Wがスリップし始めるときのクランプ力を求める。そして、この基板Wがスリップし始めるときのクランプ力を基にして、クランプ力を段階的に少しずつ増加させていき、基板Wがスリップしなくなるときの最小のクランプ力を求めることができる。この場合、基板Wのスリップは、上述したように、振動センサ8、光センサ20、回転速度センサ32により検知可能であり、最小のクランプ力はコントローラ(制御部)10により演算することができる。
【0029】
図1乃至図5に示す実施形態においては、基板Wを水平の状態で回転させる構成としたが、基板Wを垂直の状態で回転させるようにしてもよい。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 ローラ
2 洗浄部材
3 スピンドル
4 モータ
5−1 第1ステージ
5−2 第2ステージ
6−1 第1エアシリンダ
6−2 第2エアシリンダ
8 振動センサ
10 コントローラ(制御部)
11 電空レギュレータ
20 光センサ
21 投光部
22 受光部
23 保持部
30 従動ローラ
31 スピンドル
32 回転速度センサ
n ノッチ
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5