(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に挙げる実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。幅に対する長さの倍率の上限は、特に限定されないが、通常5000倍以下としてもよい。
【0014】
また、「偏光板」及び「1/4波長板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0015】
また、ある膜の面内レターデーションとは、別に断らない限り、(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、その膜の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。また、nyは、その膜の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。さらに、dは、その膜の厚みを表す。面内レターデーションは、市販の位相差測定装置(例えば、フォトニックラティス社製「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。面内レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、543nmである。
【0016】
また、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する。
【0017】
また、「紫外線」とは、波長が1nm以上400nm以下の光のことを意味する。
また、「可視光領域」とは、450nm〜700nmの波長範囲を表す。
【0018】
また、偏光板の透過軸、位相差層の遅相軸等のような、光学素子の光学軸の角度は、別に断らない限り、厚み方向から見た角度のことを意味する。
【0019】
また、構成要素の方向が「平行」又は「垂直」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0020】
[1.第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る車載用の液晶表示装置を模式的に示す分解斜視図である。使用の態様において、この液晶表示装置を構成する部材は通常は接触した状態とされるが、
図1では図示のためこれらを分解して示している。
【0021】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る車載用の液晶表示装置10は、車載用の液晶表示素子100と、この液晶表示素子100の画面121に設けられた光制御素子としてのコレステリック樹脂層210を備える。また、液晶表示素子100は、光源110及び液晶パネル120を備える。
【0022】
液晶パネル120は、光源110に近い順に、光源側偏光板130、液晶セル140及び視認側偏光板150を備える。
【0023】
光源側偏光板130は、矢印A
130で示す方向に透過軸を有する直線偏光板であり、矢印A
130で示す方向に振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を遮ることができる構成を有している。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。
【0024】
液晶セル140は、図示しない電極から印加される電圧に応じて配向が変化しうる液晶性化合物を含む光学素子であり、印加される電圧に応じて光源側偏光板130を透過した直線偏光を旋光させうる構成を有している。
【0025】
視認側偏光板150は、矢印A
150で示す方向に透過軸を有する直線偏光板であり、矢印A
150で示す方向に振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を遮ることができる構成を有している。また、本実施形態において、矢印A
150で示す視認側偏光板150の透過軸の方向と、矢印A
130で示す光源側偏光板130の透過軸の方向とは、垂直になっている。
【0026】
さらに、本実施形態では、液晶パネル120の視認側偏光板150側の表面が画面121を形成している。したがって、液晶表示素子100は、光源110から発せられた光が、光源側偏光板130、液晶セル140及び視認側偏光板150をこの順に透過し、この透過した光によって画面121に映像が表示される構成を有している。また、この液晶表示素子100は、画面121に表示される映像を、矢印A
150で示す方向に振動方向を有する直線偏光によって表示できる構成を有している。
【0027】
光制御素子としてのコレステリック樹脂層210は、コレステリック規則性を有する樹脂層である。コレステリック樹脂層210が有するコレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
【0028】
コレステリック樹脂層210は、円偏光分離機能を有する。すなわち、コレステリック樹脂層210は、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射させる性質を有する。
【0029】
コレステリック樹脂層210が円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂層210におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。広い波長範囲において円偏光分離機能を発揮しうるコレステリック樹脂層210は、例えば、(i)らせん構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂層、(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層、などが挙げられる。本実施形態では、コレステリック樹脂層210が、可視光領域において前記の円偏光分離機能を有している例を示して説明する。
【0030】
コレステリック樹脂層210は、可視光領域における光線透過率の平均値が、所定の範囲に収まる。すなわち、コレステリック樹脂層210に垂直に非偏光が入射したとき、その非偏光の可視光領域における光線透過率の平均値が、所定の範囲に収まる。この可視光領域における光線透過率の平均値の具体的な範囲は、通常60%以上、好ましくは62%以上、より好ましくは65%以上、且つ、通常75%以下、好ましくは73%以下、より好ましくは70%以下である。前記のコレステリック樹脂層210の可視光領域における光線透過率の平均値は、例えば、コレステリック樹脂層210の厚みにより調整しうる。
【0031】
コレステリック樹脂層210が前記のような可視光領域における光線透過率の平均値を有するので、液晶表示素子100の画面121で映像を表示する光Lのうち、コレステリック樹脂層210に対して垂直又は垂直に近い方向で透過する光L
Fは、コレステリック樹脂層210を、前記範囲のように高い平均透過率で透過できる。しかし、液晶表示素子100の画面121で映像を表示する光Lのうち、コレステリック樹脂層210に対して斜め方向で透過する光L
Sは、前記の光L
Fよりも低い平均透過率でしかコレステリック樹脂層210を透過できない。このような透過方向による光の透過率の違いは、光の透過方向の違いによる反射帯域のシフト、偏光状態の変化、及び、見かけ上の厚みの増加等により生じているものと考えられる。
【0032】
図2は、本発明の第一実施形態に係る液晶表示装置10を、車両300に設けた様子を模式的に示す模式図である。
図2に示すように、液晶表示装置10は、通常、車両300のインストルメントパネル(図示省略)に設けられる。この場合、ドライバー等のユーザー310は、液晶表示装置10を直接に見て、画面121に表示された映像を視認する。通常、ユーザー310は画面121を正面から見る。したがって、ユーザー310は、画面121から出てコレステリック樹脂層210を透過する光のうち、コレステリック樹脂層210に対して垂直又は垂直に近い方向で透過する光L
Fを視認する。この光L
Fは、コレステリック樹脂層210を高い平均透過率で透過できるので、ユーザー310は、画面121に表示される映像を明確に視認できる。よって、画面121の視認性は良好である。
【0033】
また、画面121から出てコレステリック樹脂層210を透過する光のうち、コレステリック樹脂層210に対して斜め方向で透過する光L
Sは、車両300のフロントガラス320に入射し、そのフロントガラス320で反射する。反射した光L
Sの強度が強いと、この光L
Sは、フロントガラス320への映り込みの原因となりうる。しかし、本実施形態においては、この光L
Sは、コレステリック樹脂層210を低い平均透過率でしか透過できないので、ユーザー310は、この光L
Sによって表示さえる映像を明確には視認できない。よって、画面121に表示される映像のフロントガラス320への映り込みは抑制される。
【0034】
以上のように、本発明の第一実施形態に係る液晶表示装置10は、コレステリック樹脂層210の厚みを調整する等により光線透過率を適宜の範囲に制御するという比較的簡便な構成でありながら、画面121の視認性を大きく損なうこと無く、フロントガラス320への映り込みを抑制できる。したがって、ユーザー310は、フロントガラス320に映り込んだ映像によって運転を妨げられることが無く、快適なドライビングが可能となる。
【0035】
[2.第二実施形態]
上述した第一実施形態では、コレステリック樹脂層のみによって光制御素子を構成したが、光制御素子にはコレステリック樹脂層以外の層を設けてもよい。例えば、コレステリック樹脂層に位相差層を組み合わせてもよい。以下、このような例を、第二実施形態として説明する。
【0036】
図3は、本発明の第二実施形態に係る車載用の液晶表示装置を模式的に示す分解斜視図である。使用の態様において、この液晶表示装置を構成する部材は通常は接触した状態とされるが、
図3では図示のためこれらを分解して示している。
【0037】
図3に示すように、本発明の第二実施形態に係る車載用の液晶表示装置20は、コレステリック樹脂層210の視認側偏光板150側に位相差層420が設けられていること以外は、第一実施形態に係る液晶表示装置10と同様である。したがって、この液晶表示装置20は、コレステリック樹脂層210を単独で光制御素子として用いる代わりに、位相差層420及びコレステリック樹脂層210を視認側偏光板150に近い方からこの順に備える光制御素子400を用いた構成を有する。
【0038】
位相差層420は、面内で一様な面内レターデーションを有する層である。本実施形態に係る位相差層420が有する具体的な面内レターデーションの大きさは、1/4波長である。ここで、位相差層420が1/4波長の面内レターデーションを有する、とは、位相差層420の面内レターデーションが、その測定波長である543nmの1/4の値から、通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲にあるか、または、中心値の3/4の値から通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲にあることを示す。
【0039】
また、位相差層420は、矢印A
420で示すように、視認側偏光板150の透過軸と位相差層420の遅相軸とが略45°の角度をなすように設けられている。本実施形態では、視認側偏光板150が奥で且つ位相差層420が手前となる向きで見た場合に、視認側偏光板150の透過軸に対して位相差層420の遅相軸がなす角度が、反時計回りに略45°となっている。ここで略45°とは、通常は45°±5°のことを意味する。
【0040】
このような位相差層420は、視認側偏光板150を透過した光Lの偏光状態を、直線偏光から円偏光に変換する機能を有する。そして、本実施形態に係るコレステリック樹脂層210は、位相差層420を透過した円偏光を透過させ、それとは反対の向きの円偏光の一部又は全部を反射させうる円偏光分離機能を有するように設けられている。
【0041】
これにより、液晶表示素子100の画面121で映像を表示する光Lのうち、コレステリック樹脂層210に対して垂直又は垂直に近い方向で透過する光L
Fは、コレステリック樹脂層210を透過しうる円偏光又はそれに近い楕円偏光となっているので、第一実施形態よりも高い平均透過率で透過できる。しかし、液晶表示素子100の画面121で映像を表示する光Lのうち、コレステリック樹脂層210に対して斜め方向で透過する光L
Sは、前記の光L
Fよりも低い平均透過率でしかコレステリック樹脂層210を透過できない。このような透過方向による光の透過率の違いは、斜め方向で透過する光L
Sでは視認側偏光板150の透過軸と位相差層420の遅相軸とがなす角度が見かけ上略45°からずれることにより、位相差層420を透過した光L
Sの偏光状態が円偏光から大きく離れるからと考えられる。
【0042】
図4は、本発明の第二実施形態に係る液晶表示装置20を、車両300に設けた様子を模式的に示す模式図である。
図4に示すように、液晶表示装置20は、通常、車両300のインストルメントパネル(図示省略)に設けられる。この場合、第一実施形態と同様に、ユーザー310は、コレステリック樹脂層210に対して垂直又は垂直に近い方向で光制御素子400を透過する光L
Fを見て、画面121に表示された映像を視認する。本実施形態では、この光L
Fは第一実施形態よりも高い平均透過率でコレステリック樹脂層210を透過するので、ユーザー310は、画面121に表示される映像を特に明確に視認でき、画面121の視認性は良好である。
【0043】
また、第一実施形態と同様に、コレステリック樹脂層210に対して斜め方向で光制御素子400を透過する光L
Sは、フロントガラス320への映り込みの原因となりうる。しかし、本実施形態では、この光L
Sは低い平均透過率でしかコレステリック樹脂層210を透過できないので、ユーザー310は、この光L
Sによって表示される映像を明確には視認できず、画面121に表示される映像のフロントガラス320への映り込みは抑制される。
【0044】
以上のように、本発明の第二実施形態に係る液晶表示装置20は、比較的簡便な構成でありながら、画面121の視認性を大きく損なうこと無く、フロントガラス320への映り込みを抑制できる。特に、光制御素子400を垂直又は垂直に近い方向で透過する光L
Fの強度を第一実施形態に係る液晶表示装置10よりも向上させられるので、ユーザー310が液晶表示装置20を直接に見たときの映像の視認性を特に向上させることができる。
また、本発明の第二実施形態に係る液晶表示装置20によれば、本発明の第一実施形態に係る液晶表示装置10と同様の利点を得ることができる。
【0045】
[3.第三実施形態]
光制御素子は、コレステリック樹脂層の視認側偏光板とは反対側(視認者側)に、任意の層を備えていてもよい。この任意の層としては、反射防止層及びハードコート層などが挙げられる。以下、このような例を、第三実施形態として説明する。
【0046】
図5は、本発明の第三実施形態に係る車載用の液晶表示装置を模式的に示す分解斜視図である。使用の態様において、この液晶表示装置を構成する部材は通常は接触した状態とされるが、
図5では図示のためこれらを分解して示している。
【0047】
図5に示すように、この例に示す液晶表示装置30は、コレステリック樹脂層210の視認側偏光板150とは反対側にハードコート層530及び反射防止層540が設けられていること以外は、第二実施形態に係る液晶表示装置20と同様である。したがって、この液晶表示装置30は、光制御素子400の代わりに、位相差層420、コレステリック樹脂層210、ハードコート層530及び反射防止層540を視認側偏光板150に近い方からこの順に備える光制御素子500を用いた構成を有する。
【0048】
ハードコート層530は、高い硬度を有する層である。具体的には、ハードコート層530は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験(試験板はガラス板)で1H以上の硬度を示すことが好ましく、4H以上となることが好ましい。これにより、光制御素子500の傷付きを防止することができる。
【0049】
反射防止層540は、外光の反射を防止するための層である。外光の反射を防止するために、反射防止層540は、ハードコート層530よりも小さい屈折率を有することが好ましい。具体的には、ハードコート層530は1.60〜1.70の屈折率を有することが好ましく、反射防止層540は1.40未満の屈折率を有することが好ましい。より詳しくは、反射防止層540の屈折率は、好ましくは1.25以上、より好ましくは1.30以上であり、好ましくは1.39以下、より好ましくは1.38以下である。
【0050】
本発明の第三実施形態に係る液晶表示装置30は、比較的簡便な構成でありながら、反射防止層540が外光の反射を防止できるので、画面121への外光の映り込みを防止できる。そのため、車両のユーザーは外光の映り込みに妨げることなく画面121の映像を視認できるので、視認性を更に改善することができる。
また、本発明の第三実施形態に係る液晶表示装置30によれば、本発明の第二実施形態に係る液晶表示装置20と同様の利点を得ることができる。
【0051】
[4.変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、更に変更して実施してもよい。
例えば、液晶表示素子及び光制御素子に、上述した以外に任意の層を設けてもよい。このような任意の層の具体例としては、粘着層、防汚層、ガスバリア層などが挙げられる。
また、所望の映像を適切に表示できる限り、各光学要素の遅相軸、透過軸等の光軸の方向は変更して実施してもよい。
【0052】
さらに、位相差層の遅相軸は、視認側偏光板の透過軸に対して時計回り又は反時計回りに略45°の角度をなす場合、視認側偏光板を透過した直線偏光を円偏光に変換できる。したがって、位相差層の遅相軸が視認側偏光板の透過軸に対して前記の実施形態に係る位相差層420の遅相軸とは逆回りで略45°の角度をなしている場合も、その位相差層を透過することにより直線偏光を円偏光に変換できる。この場合、コレステリック樹脂層が反射させうる円偏光の向きは、光制御素子の可視光領域における光線透過率の平均値が上述した範囲に収まるように、適切に設定しうる。
【0053】
[5.材料等]
以下、上述した光制御素子に設けられる層の材料及び製造方法等について説明する。
【0054】
[5.1.コレステリック樹脂層]
コレステリック樹脂層は、例えば、基材フィルム上に光硬化性の液晶組成物の膜を設け、この液晶組成物の膜を硬化して得ることができる。この際、液晶組成物としては、例えば、液晶性化合物を含有し、基材フィルム上に膜を形成した際にコレステリック液晶相を呈しうる組成物を用いうる。
【0055】
ここで、液晶組成物が含む液晶性化合物としては、重合性を有する液晶性化合物を用いうる。かかる重合性を有する液晶性化合物を、コレステリック規則性を呈した状態で重合させることにより、前記の液晶組成物の膜を硬化させ、コレステリック規則性を呈したまま硬化した非液晶性のコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0056】
このような液晶組成物の中でも好適な例としては、下記式(1)で表される化合物、及び特定の棒状液晶性化合物を含有する液晶組成物が挙げられる。
【0057】
R
1−A
1−B−A
2−R
2 (1)
式(1)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、任意の連結基が介在していてもよい(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基を表す。
【0058】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。さらに、前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は、炭素原子数1個〜2個のアルキル基、及びアルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0059】
R
1及びR
2として好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0060】
また、R
1及びR
2の少なくとも一方は、反応性基であることが好ましい。R
1及びR
2の少なくとも一方として反応性基を有することにより、前記式(1)で表される化合物が硬化時にコレステリック樹脂層中に固定され、より強固な層を形成することができる。ここで反応性基とは、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができる。
【0061】
式(1)において、A
1及びA
2はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換基で1つ以上置換されていてもよい。A
1及びA
2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0062】
A
1及びA
2として特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一性がより高くなる。
【0063】
式(1)において、Bは、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−からなる群より選択される。
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−O−(C=O)−及び−CH=N−N=CH−が挙げられる。
【0064】
式(1)で表される化合物は、少なくとも一種類が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、式(1)で表される化合物は、複数の光学異性体を組み合わせて用いることが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマーの混合物、複数種類のジアステレオマーの混合物、又は、エナンチオマーとジアステレオマーとの混合物を用いてもよい。式(1)で表される化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0065】
式(1)で表される化合物が液晶性を有する場合には、屈折率異方性Δnが高いことが好ましい。屈折率異方性Δnが高い液晶性化合物を式(1)で表される化合物として用いることによって、それを含む液晶組成物の屈折率異方性Δnを向上させることができ、円偏光を反射可能な波長範囲が広いコレステリック樹脂層を作製することができる。式(1)で表される化合物の少なくとも一種の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。ここで、屈折率異方性Δnは、セナルモン法により測定しうる。例えば、硬化樹脂層を光学顕微鏡(ECLIPSE E600POL(透過・反射タイプ)に鋭敏色板、1/4波長板、セナルモンコンペンセータ、GIFフィルター546nmを装着、ニコン社製)を用いて消光位(θ)を観察することから面内レタデーション(Re)をRe=λ(546nm)×θ/180の計算式により算出し、別に求めた液晶層の厚み(d)から計算式Δn=Re/dによりΔnを算出できる。
【0066】
式(1)で表される化合物として特に好ましい具体例としては、例えば下記の化合物(A1)〜(A9)が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0069】
前記の式(1)で表される化合物と組み合わせて用いうる棒状液晶性化合物としては、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶性化合物を用いうる。このような棒状液晶性化合物としては、例えば、式(2)で表される化合物を挙げることができる。
R
3−C
3−D
3−C
5−M−C
6−D
4−C
4−R
4 式(2)
【0070】
式(2)において、R
3及びR
4は、反応性基であり、それぞれ独立して、(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。これらの反応性基を有することにより、液晶組成物を硬化させた際に、実用に耐えうる膜強度を有した硬化物を得ることができる。ここで、実用に耐えうる膜強度とは、鉛筆硬度(JIS K5400)で、通常HB以上、好ましくはH以上である。膜強度をこのように高くすることにより、傷をつきにくくできるので、ハンドリング性を高めることができる。
【0071】
式(2)において、D
3及びD
4は、単結合、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
【0072】
式(2)において、C
3〜C
6は、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−からなる群より選択される基を表す。
【0073】
式(2)において、Mは、メソゲン基を表す。具体的には、Mは、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2個〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−等の結合基によって結合された基を表す。
【0074】
前記メソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R
5、−O−C(=O)−R
5、−C(=O)−O−R
5、−O−C(=O)−O−R
5、−NR
5−C(=O)−R
5、−C(=O)−NR
5R
7、または−O−C(=O)−NR
5R
7が挙げられる。ここで、R
5及びR
7は、水素原子又は炭素数1個〜10個のアルキル基を表す。R
5及びR
7がアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
6−C(=O)−、−C(=O)−NR
6−、−NR
6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R
6は、水素原子または炭素数1個〜6個のアルキル基を表す。
【0075】
前記「置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2個〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3個〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2個〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2個〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0076】
また、前記の棒状液晶性化合物は、非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、式(2)において、メソゲン基Mを中心として、R
3−C
3−D
3−C
5−と−C
6−D
4−C
4−R
4が異なる構造のことをいう。棒状液晶性化合物として非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0077】
棒状液晶性化合物の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。屈折率異方性Δnが0.30以上の棒状液晶性化合物を用いると、棒状液晶性化合物の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高い屈折率異方性Δnを有する棒状液晶性化合物を用いることにより、高い光学的性能(例えば、円偏光の選択反射性能)を有するコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0078】
棒状液晶性化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(B1)〜(B9)が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0080】
(式(1)で表される化合物の合計重量)/(棒状液晶性化合物の合計重量)で示される重量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.65以下、特に好ましくは0.45以下である。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、液晶組成物の膜において配向均一性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、配向均一性を高くできる。また、液晶組成物の液晶相の安定性を高くできる。さらに、液晶組成物の屈折率異方性Δnを高くできるので、所望の光学的性能(例えば、円偏光の選択反射性能)を有するコレステリック樹脂層を安定して得ることができる。ここで、合計重量とは、1種類を用いた場合にはその重量を示し、2種類以上を用いた場合には合計の重量を示す。
【0081】
また、式(1)で表される化合物と棒状液晶性化合物とを組み合わせて用いる場合、式(1)で表される化合物の分子量が600未満であることが好ましく、棒状液晶性化合物の分子量が600以上であることが好ましい。これにより、式(1)で表される化合物が、それよりも分子量の大きい棒状液晶性化合物の隙間に入り込むことができるので、配向均一性を向上させることができる。
【0082】
液晶組成物は、硬化物膜の機械的強度の向上及び耐久性の向上のために、架橋剤を含みうる。架橋剤は、例えば、液晶組成物の膜の硬化時に反応したり、硬化後の熱処理によって反応を促進したり、湿気により自然に反応が進行したりすることによって、硬化物膜の架橋密度を高めることができる。架橋剤としては、例えば、紫外線、熱、湿気等で反応しうるものを用いうる。中でも、架橋剤としては、配向均一性を悪化させないものが好ましい。
【0083】
架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いてもよい。触媒を用いることにより、コレステリック樹脂層の膜強度及び耐久性向上に加えて、生産性を向上させることができる。
【0084】
架橋剤の量は、液晶組成物の膜を硬化して得られるコレステリック樹脂層における架橋剤の量が0.1重量%〜15重量%となるようにすることが好ましい。架橋剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、架橋密度を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶組成物の膜の安定性を高めることができる。
【0085】
また、液晶組成物は、光硬化性を有するために、通常は、光開始剤を含有する。光開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。光開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて公知の光増感剤又は重合促進剤としての三級アミン化合物を用いて、硬化性をコントロールしてもよい。
【0086】
光開始剤の量は、液晶組成物中0.03重量%〜7重量%であることが好ましい。光開始剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合度を高くできるので、コレステリック樹脂層の膜強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶性化合物の配向を良好にできるので、液晶組成物の液晶相を安定にできる。
【0087】
液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有しうる。界面活性剤としては、例えば、配向を阻害しないものを適宜選択して使用しうる。このような界面活性剤としては、例えば、疎水基部分にシロキサン又はフッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社のPolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社のフタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社のサーフロンのKH−40;等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0088】
界面活性剤の量は、液晶組成物を硬化して得られるコレステリック樹脂層における界面活性剤の量が0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。界面活性剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、空気界面における配向規制力を高くできるので、配向欠陥を防止できる。また、上限値以下にすることにより、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込むことによる配向均一性の低下を防止できる。
【0089】
液晶組成物は、任意にカイラル剤を含有しうる。通常、コレステリック樹脂層のねじれ方向は、使用するカイラル剤の種類及び構造により適宜選択できる。ねじれを右方向とする場合には、右旋性を付与するカイラル剤を用い、ねじれ方向を左方向とする場合には、左旋性を付与するカイラル剤を用いることで、実現できる。カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、国際公開第98/00428号、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。また、カイラル剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0090】
カイラル剤の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。カイラル剤の具体的な量は、液晶組成物中で、通常1重量%〜60重量%である。
【0091】
液晶組成物は、必要に応じてさらに任意の成分を含有しうる。この任意の成分としては、例えば、溶媒、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。また、これらの任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの任意成分の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。
【0092】
液晶組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を混合することにより製造することができる。
【0093】
前記の光硬化性の液晶組成物を用意した後で、基材フィルム上にその液晶組成物の膜を設ける。通常、液晶組成物を基材フィルムの表面に塗布することにより、液晶組成物の膜を設ける。
【0094】
また、基材フィルムには、液晶組成物の膜を設ける前に、配向膜を設けてもよい。配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド等の重合体を含む樹脂により形成しうる。また、これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。配向膜は、例えば、前記の重合体を含む溶液を塗布し、乾燥させ、ラビング処理を施すことにより製造しうる。配向膜の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。基材フィルムが配向膜を有する場合には、通常、配向膜上に液晶組成物の膜を設ける。
【0095】
さらに、液晶組成物を塗布する前に、必要に応じて、基材フィルムの表面にコロナ放電処理及びラビング処理等の表面処理を施してもよい。
【0096】
液晶組成物の塗布は、公知の方法、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等により実施することができる。
【0097】
基材フィルム上に液晶組成物の膜を設けた後で、必要に応じて、配向処理を行ってもよい。配向処理は、例えば液晶組成物の膜を50℃〜150℃で0.5分間〜10分間加温することにより行いうる。配向処理を施すことにより、膜中の液晶組成物を良好に配向させることができる。
【0098】
その後、液晶組成物の膜を硬化させるために、硬化処理を行う。硬化処理は、例えば、1回以上の光照射と加温処理との組み合わせにより行うことができる。
加温条件は、例えば、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは140℃以下の温度において、通常1秒以上、好ましくは5秒以上、また、通常3分以下、好ましくは120秒以下の時間としうる。
また、光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、例えば、波長200nm〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行うことができる。この際、照射される光のエネルギーは、例えば、0.01mJ/cm
2〜50mJ/cm
2としうる。
【0099】
0.01mJ/cm
2〜50mJ/cm
2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返すことにより、らせん構造のピッチの大きさを連続的に大きく変化させた、反射帯域の広い円偏光分離機能を有するコレステリック樹脂層を得ることができる。さらに、上記の微弱な紫外線照射等による反射帯域の拡張を行った後に、50mJ/cm
2〜10,000mJ/cm
2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させることにより、機械的強度の高いコレステリック樹脂層を得ることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)で行ってもよい。
【0100】
前記のような液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限られず、塗布及び硬化を複数回繰り返して行ってもよい。これにより、2層以上を含むコレステリック樹脂層を形成できる。ただし、上記の例において説明した液晶組成物を用いることにより、1回のみの液晶組成物の塗布及び硬化によっても、良好に配向した棒状液晶性化合物を含み、かつ5μm以上といった厚みのコレステリック樹脂層を容易に形成することができる。
【0101】
コレステリック樹脂層の厚みは、可視光領域における平均透過率を前記の範囲に収める観点から、5μm以下にすることが好ましい。更に詳しくは、コレステリック樹脂層の厚みは、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2.0μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4.7μm以下、特に好ましくは4.5μm以下である。
【0102】
[5.2.位相差層]
位相差層は、例えば、樹脂により形成された延伸フィルムを用いうる。通常、樹脂は、ポリマーを含む。位相差層の材料となる樹脂が含むポリマーの例を挙げると、鎖状オレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィンポリマー及びシクロオレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィンポリマーが特に好ましい。また、樹脂は、1種類のポリマーを単独で含むものを用いてもよく、2種類以上のポリマーを任意の比率で組み合わせて含むものを用いてもよい。
また、樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。
さらに、位相差層としては、単層構造のフィルムを用いてもよく、複層構造のフィルムを用いてもよい。
好適な位相差層の例を挙げると、市販の長尺の斜め延伸フィルム、横延伸フィルムなどが挙げられる。またその具体例としては、日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」、「横延伸ゼオノアフィルム」を挙げることができる。
【0103】
[5.3.反射防止層]
反射防止層の材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料;樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料;テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料;などが挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、反射防止層としては、例えば、特許4556613号公報、特許4300522号公報、特許4556664号公報などに記載のものを用いてもよい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。さらに、以下の説明において、光学軸がなす角度は、別に断らない限り、液晶表示素子の画面を正面から見る向きにおける角度を表す。
【0105】
[コレステリック樹脂層の光の透過率の測定方法]
コレステリック樹脂層の光の透過率は、透過率測定器(日本分光社製「V−7200」)を用いて測定した。
【0106】
[製造例1]
(1−1.液晶組成物の製造)
下記表1に示す割合で試薬を混合して、コレステリック樹脂層を形成するための液晶組成物を製造した。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示す各試薬の内容は、以下の通りである。
カイラル剤:BASF社製「LC756」
光重合開始剤:チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」
界面活性剤:ネオス社製「フタージェント209F」
【0109】
さらに、表1に示す光重合性液晶性化合物1及び光重合性非液晶性化合物の分子構造は、下記の通りである。
【0110】
【化3】
【0111】
【化4】
【0112】
(1−2.コレステリック樹脂層の製造)
基材フィルムとして、面内の屈折率が等方性で長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「PETフィルムA4100」;厚み100μm)を用意した。この基材フィルムの一方の面にラビング処理を施した。次に、ラビング処理を施した面に、用意した液晶組成物を、ダイコーターを使用して塗布した。これにより、基材フィルムの片面に、未硬化状態の液晶組成物の膜を形成した。
【0113】
得られた液晶組成物の膜に、100℃で5分間、配向処理を施した。その後、25℃まで冷却し、当該膜に対して空気雰囲気下で、10mJ/cm
2の微弱な紫外線による照射処理及びそれに続く100℃で1分間の加温処理からなるプロセスを、2回繰り返した。その後、液晶組成物の膜に、窒素雰囲気下で800mJ/cm
2の紫外線を照射して、液晶組成物の膜を完全に硬化させた。これにより、基材フィルムの片面に、厚み4.7μmのコレステリック樹脂層を形成して、基材フィルム及びコレステリック樹脂層を備える複層フィルムを得た。
前記のコレステリック樹脂層の450nm〜700nmの波長範囲における光線透過率の平均値を測定したところ、およそ61%であった。
【0114】
[製造例2]
コレステリック樹脂層の厚みを3.0μmにしたこと以外は製造例1と同様にして、基材フィルム及びコレステリック樹脂層を備える複層フィルムを得た。
このコレステリック樹脂層の450nm〜700nmの波長範囲における光線透過率の平均値は、73%であった。
【0115】
[製造例3]
コレステリック樹脂層の厚みを5.2μmにしたこと以外は製造例1と同様にして、基材フィルム及びコレステリック樹脂層を備える複層フィルムを得た。
このコレステリック樹脂層の450nm〜700nmの波長範囲における光線透過率の平均値は、55%であった。
【0116】
[実施例1]
光源、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板をこの順に備える液晶表示素子(IO−DATA社製「LCD−AD201XGB」;Innolux社製のTN型液晶パネル「MT200LW01」を備えるもの。)を用意した。
【0117】
用意した液晶表示素子の視認側偏光板の液晶セルとは反対側の面に、アクリル粘着剤(巴川製紙所社製「ノンキャリアTD06A」)を厚み25μmで塗布して、粘着層を形成した。この粘着層に、製造例1で製造した複層フィルムをコレステリック樹脂層側の面で貼り合わせた後、コレステリック樹脂層から基材フィルムを剥離した。これにより、光源、光源側偏光板、液晶セル、視認側偏光板及びコレステリック樹脂層をこの順で備える液晶表示装置を得た。
【0118】
この液晶表示装置を、視認側偏光板の透過軸が水平方向(0°方向)に対して反時計回りに135°の角度をなす向きで、車両のインスツルメントパネルの中央部に配置した。
この液晶表示装置を、外光が無い状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座席からフロントガラスへの映り込みを観察した。その結果、どの視点からも液晶表示装置の画面のフロントガラスへの映り込みが大幅に低減されていることが確認された。また、液晶表示装置の画面を直視観察した際には、視認性の低下は殆ど無かった。
【0119】
[実施例2]
製造例1で製造した複層フィルムの代わりに製造例2で製造した複層フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を製造して車両のインスツルメントパネルの中央部に配置した。
この液晶表示装置を、外光が無い状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座席からフロントガラスへの映り込みを観察した。その結果、どの視点からも液晶表示装置の画面のフロントガラスへの映り込みが低減されていることが確認された。また、液晶表示装置の画面を直視観察した際には、視認性の低下は殆ど無かった。
【0120】
[実施例3]
実施例1と同様の液晶表示素子を用意した。用意した液晶表示素子の視認側偏光板の液晶セルとは反対側の面に、アクリル粘着剤(巴川製紙所社製「ノンキャリアTD06A」)を厚み25μmで塗布して、粘着層を形成した。この粘着層に、位相差層として位相差フィルム(日本ゼオン社製「横延伸ゼオノアフィルム」;面内レターデーション140nm)を貼り合わせた。この際、位相差フィルムの遅相軸は、視認側偏光板の透過軸に対して反時計回りに45°の角度をなす向きで貼り合わせた。さらに、この位相差フィルムの表面に前記の粘着剤を塗布して粘着層を形成した。この粘着層に、製造例2で製造した複層フィルムをコレステリック樹脂層側の面で貼り合わせた後、コレステリック樹脂層から基材フィルムを剥離した。これにより、光源、光源側偏光板、液晶セル、視認側偏光板、位相差フィルム及びコレステリック樹脂層をこの順で備える液晶表示装置を得た。
【0121】
この液晶表示装置を、視認側偏光板の透過軸が水平方向(0°方向)に対して反時計回りに135°の角度をなし、且つ、位相差フィルムの遅相軸が水平方向に平行になる向きで、車両のインスツルメントパネルの中央部に配置した。
この液晶表示装置を、外光が無い状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座席からフロントガラスへの映り込みを観察した。その結果、どの視点からも液晶表示装置の画面のフロントガラスへの映り込みが低減されていることが確認された。また、液晶表示装置の画面を直視観察した際には、視認性の低下は全く無かった。
【0122】
[実施例4]
(4−1.ハードコート層の形成材料の製造)
6官能ウレタンアクリレートオリゴマー30部、ブチルアクリレート40部、イソボロニルメタクリレート30部、及び、2,2−ジフェニルエタン−1−オン10部を、ホモジナイザーで混合して、混合液を得た。この混合液に、五酸化アンチモン微粒子の40%メチルイソブチルケトン溶液を、五酸化アンチモン微粒子の重量がハードコート層の形成材料の全固形分の50重量%となる量だけ混合して、ハードコート層の形成材料を製造した。前記の五酸化アンチモン微粒子は、平均粒子径が20nmであり、五酸化アンチモンのパイロクロア構造の表面に現れているアンチモン原子1個当りに水酸基が1つの割合で結合しているものである。
【0123】
(4−2.低屈折率層の形成材料の製造)
含フッ素モノマーであるフッ化ビニデリン70重量部及びテトラフルオロエチレン30重量部をメチルイソブチルケトンに溶解して溶液を得た。次に、この溶液に、含フッ素モノマーの固形分100重量部に対して、中空シリカのイソプロパノール分散ゾル(触媒化成工業社製、固形分20重量%、平均一次粒子径約35nm、外殻厚み約8nm)を中空シリカの固形分で30重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(信越化学社製)を3重量部、光ラジカル発生剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製「イルガキュア184」)を5重量部、それぞれ添加して、低屈折率層の形成材料を製造した。
【0124】
(4−3.液晶表示装置の製造)
製造例2で製造した複層フィルムにおいて、コレステリック樹脂層から基材フィルムを剥離した。その後、コレステリック樹脂層の表面にコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理を施した面に、温度25℃、湿度60%RHの環境下で、ダイコーターを用いてハードコート層の形成材料を塗布し、80℃の乾燥炉の中で5分間乾燥させて、被膜を形成した。この被膜に、紫外線を積算照射量300mJ/cm
2で照射して、厚み6μmのハードコート層を形成した。このハードコート層の屈折率は1.62であった。また、ハードコート層の表面の鉛筆硬度は4Hを越えるものであった。
【0125】
次に、このハードコート層の表面に、温度25℃、湿度60%RHの環境下でワイヤーバーコーターを用いて低屈折率層の形成材料を塗布し、1時間放置して乾燥させて、被膜を形成した。この被膜に、120℃で10分間、酸素雰囲気下において熱処理を施し、次いで出力160W/cm、照射距離60mmの条件で紫外線を照射して、反射防止層として厚み100nmの低屈折率層(屈折率1.37)を形成した。これにより、コレステリック樹脂層、ハードコート層及び低屈折率層をこの順で備える複層フィルムを得た。
【0126】
実施例1と同様の液晶表示素子を用意した。用意した液晶表示素子の視認側偏光板の液晶セルとは反対側の面に、アクリル粘着剤(巴川製紙所社製「ノンキャリアTD06A」)を厚み25μmで塗布して、粘着層を形成した。この粘着層に、実施例4で製造した前記の複層フィルムをコレステリック樹脂層側で貼り合せて、光源、光源側偏光板、液晶セル、視認側偏光板、コレステリック樹脂層、ハードコート層及び低屈折率層をこの順で備える液晶表示装置を得た。
【0127】
この液晶表示装置を、視認側偏光板の透過軸が水平方向(0°方向)に対して反時計回りに135°の角度をなす向きで、車両のインスツルメントパネルの中央部に配置した。
この液晶表示装置を、外光が無い状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座製からフロントガラスへの映り込みを観察した。その結果、どの視点からも液晶表示装置の画面のフロントガラスへの映り込みは低減されていることが確認された。
また、この液晶表示装置を、外光を明るくした状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座製から外光の液晶表示装置の画面への映り込みを観察した。その結果、どの視点から見ても外光の液晶表示装置の画面への映り込みは無かった。
また、液晶表示装置の画面を直視観察した際には、視認性の低下は全く無かった。
【0128】
[実施例5]
実施例3と同様にして、液晶表示素子の視認側偏光板の液晶セルとは反対側の面に、粘着層、位相差フィルム及び粘着層をこの順に設けた。そして、露出している粘着層の表面に、実施例4で製造した複層フィルム(コレステリック樹脂層、ハードコート層及び低屈折率層をこの順で備えるもの)を、コレステリック樹脂層側で貼り合わせた。これにより、光源、光源側偏光板、液晶セル、視認側偏光板、位相差フィルム、コレステリック樹脂層、ハードコート層及び低屈折率層をこの順で備える液晶表示装置を得た。
【0129】
この液晶表示装置を、視認側偏光板の透過軸が水平方向(0°方向)に対して反時計回りに135°の角度をなし、且つ、位相差フィルムの遅相軸が水平方向に平行になる向きで、車両のインスツルメントパネルの中央部に配置した。
この液晶表示装置を、外光が無い状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座製からフロントガラスへの映り込みを観察した。その結果、どの視点からも液晶表示装置の画面のフロントガラスへの映り込みは低減されていることが確認された。
また、この液晶表示装置を、外光を明るくした状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座製から外光の液晶表示装置の画面への映り込みを観察した。その結果、どの視点から見ても外光の液晶表示装置の画面への映り込みは無かった。
また、液晶表示装置の画面を直視観察した際には、視認性の低下は殆ど無かった。
【0130】
[比較例1]
製造例1で製造した複層フィルムの代わりに製造例3で製造した複層フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を製造して車両のインスツルメントパネルの中央部に配置した。
この液晶表示装置を、外光が無い状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座席からフロントガラスへの映り込みを観察した。その結果、どの視点からも液晶表示装置の画面のフロントガラスへの映り込みは幾分低減されていることが確認された。しかし、液晶表示装置の画面を直視観察した際に、視認性の低下が見られた。
【0131】
[比較例2]
位相差フィルムを貼り合せる際、位相差フィルムの遅相軸が視認側偏光板の透過軸に対して時計回りに45°の角度をなす向きで貼り合わせたこと、これにより車両のインスツルメントパネルに液晶表示装置を配置したときに位相差フィルムの遅相軸が水平方向に垂直になるようにしたこと、並びに、製造例2で製造した複層フィルムの代わりに製造例3で製造した複層フィルムを用いたこと以外は実施例3と同様にして、液晶表示装置を製造して車両のインスツルメントパネルの中央部に配置した。
この液晶表示装置を、外光が無い状態で表示させ、車両の運転席、助手席及び後部座席からフロントガラスへの映り込みを観察した。その結果、液晶表示装置の画面からの光は抑えられ暗い状態であり、液晶表示装置の画面を直視観察した際に、視認性の大幅な低下が見られた。