特許第6492617号(P6492617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6492617二酸化マンガン及び二酸化マンガン混合物並びにそれらの製造方法及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492617
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】二酸化マンガン及び二酸化マンガン混合物並びにそれらの製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/02 20060101AFI20190325BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20190325BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20190325BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190325BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C01G45/02
   H01M4/48
   B01J20/06 A
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-256019(P2014-256019)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-108212(P2016-108212A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-264441(P2013-264441)
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-68210(P2014-68210)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-233153(P2014-233153)
(32)【優先日】2014年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-243513(P2014-243513)
(32)【優先日】2014年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】末次 和正
(72)【発明者】
【氏名】三浦 比呂志
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/023597(WO,A1)
【文献】 特開平03−252055(JP,A)
【文献】 特表2011−520744(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102795671(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
C01G 25/00−47/00
C01G 49/10−99/00
C25B 1/00−9/20
C25B 13/00−15/08
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の容積が0.07cm/g以上で、細孔直径2nm以上5nm以下の細孔の容積が0.004cm/g未満であることを特徴とする二酸化マンガン。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化マンガン及び電解二酸化マンガンを含むことを特徴とする二酸化マンガン混合物。
【請求項3】
細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の容積が0.003cm/g以上であることを特徴とする請求項に記載の二酸化マンガン混合物。
【請求項4】
細孔直径2nm以上5nm以下の細孔の容積が0.004cm/g未満であることを特徴とする請求項又は請求項に記載の二酸化マンガン混合物。
【請求項5】
細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の面積が0.1m/g以上であることを特徴とする請求項〜請求項のいずれかの項に記載の二酸化マンガン混合物。
【請求項6】
アルカリ電位が270mV以上350mV未満であることを特徴とする請求項〜請求項のいずれかの項に記載の二酸化マンガン混合物。
【請求項7】
嵩密度が1.6g/cm以上であることを特徴とする請求項〜請求項のいずれかの項に記載の二酸化マンガン混合物。
【請求項8】
低価数のMn酸化物を1mol/L以上8mol/L以下の濃厚な酸で不均化反応することにより生成させることを特徴とする請求項1に記載の二酸化マンガンの製造方法。
【請求項9】
低価数のMn酸化物が四三酸化マンガン(Mn)であることを特徴とする請求項に記載の二酸化マンガンの製造方法。
【請求項10】
低価数のMn酸化物が三酸化二マンガン(Mn)であることを特徴とする請求項に記載の二酸化マンガンの製造方法。
【請求項11】
が硫酸であることを特徴とする請求項〜請求項10のいずれかの項に記載の二酸化マンガンの製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の二酸化マンガンを、当該二酸化マンガンと電解二酸化マンガンの合計に対して、0.5重量%以上10重量%以下の割合で電解二酸化マンガンと混合することを特徴とする請求項〜請求項のいずれかの項に記載の二酸化マンガン混合物の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の二酸化マンガンを、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中に添加しながら電解し、電解二酸化マンガンと共電析させることを特徴とする請求項〜請求項のいずれかの項に記載の二酸化マンガン混合物の製造方法。
【請求項14】
請求項〜請求項のいずれかの項に記載の二酸化マンガン混合物を含むことを特徴とする電池用正極活物質。
【請求項15】
請求項1に記載の二酸化マンガンを含むことを特徴とする吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化マンガン及び二酸化マンガン混合物並びにそれらの製造方法及び用途に関するものであり、より詳しくは、例えばマンガン乾電池、特にアルカリマンガン乾電池において、正極活物質として使用される二酸化マンガン混合物及びその製造方法並びにその用途、二酸化マンガン混合物に用いられる二酸化マンガン及びその製造方法、並びに二酸化マンガンの吸着剤用途に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化マンガンは、たとえばマンガン乾電池またはアルカリマンガン乾電池の正極活物質として知られており、保存性に優れ、かつ安価であるという利点を有する。特に、二酸化マンガンを正極活物質として用いるアルカリマンガン乾電池は、重負荷での放電特性に優れていることから電子カメラ、携帯用テープレコーダー、携帯情報機器、さらにはゲーム機や玩具にまで幅広く使用され、近年急速にその需要が伸びてきている。
【0003】
しかし、アルカリマンガン乾電池は、放電電流が大きくなるに従い正極活物質である二酸化マンガンの利用率が低下し、また放電電圧が低下した状態では使用できないため、実質的な放電容量が大きく損なわれるという課題があった。すなわち、大電流を使用(ハイレート放電)する機器にアルカリマンガン乾電池を用いると、充填されている正極活物質である二酸化マンガンが十分に活用されず、使用可能な時間が短いという欠点を有していた。
【0004】
そこで短時間に大電流を取り出すハイレート放電条件においても、高容量、長寿命を発現できる優れた二酸化マンガン、所謂ハイレート放電特性に優れた二酸化マンガンが望まれていた。
【0005】
これまで、ハイレート放電特性改善のため、40重量%KOH水溶液中で水銀/酸化水銀参照電極を基準として測定したときの電位(以下、アルカリ電位)が高い電解二酸化マンガンを製造することが検討されてきた(特許文献1〜3、非特許文献1)。
【0006】
また、同じくハイレート放電特性改善のために、3〜5nmの微細孔域の容積が0.005cm/gから0.011cm/gの電解二酸化マンガンを用いることが開示されている(特許文献4)。更に、このような微細孔容積を増やす方法として、100℃を超える高温、加圧下で電解二酸化マンガンを合成する方法も開示されている(特許文献5)。
【0007】
しかしながら、これらのアルカリ電位が高い電解二酸化マンガンや大きな微細孔容積を有する電解二酸化マンガンであっても、ハイレート放電特性は十分なものではなかった。
【0008】
その一方、二酸化マンガン、例えば、過マンガン酸イオン(Mn7+)とマンガンイオン(Mn2+)の反応で合成したδ型MnOが吸着剤として使用されることが開示されている(特許文献6、7)。
【0009】
しかしながら、まだ十分な吸着特性は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−141643号公報
【特許文献2】米国特許6,527,941号公報
【特許文献3】特開2009−135067号公報
【特許文献4】特開2009−289728号公報
【特許文献5】特表2005−520290号公報
【特許文献6】特開2008−18312号公報
【特許文献7】特開2009−254932号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】古河電工時報,第43号,P.91〜102(1967年5月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、特にハイレート放電特性に優れるアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される二酸化マンガンであって、特にアルカリ電解液中で、従来にない大きな細孔容積を有する二酸化マンガン混合物及びその製造方法並びにその用途を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、特にアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される二酸化マンガンについて鋭意検討を重ねた結果、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の容積が0.07cm/g以上の二酸化マンガンと電解二酸化マンガンを混合した二酸化マンガン混合物が、優れたハイレート放電特性を有する正極材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔容積が0.07cm/g以上であることを特徴とする二酸化マンガン、当該二酸化マンガン及び電解二酸化マンガンを含むことを特徴とする二酸化マンガン混合物である。
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明の二酸化マンガンは、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔(以下、「メソポア」と称する場合がある)の容積が0.07cm/g以上であり、極めて大きなメソポアを有することを特徴とする。メソポアの容積が0.07cm/g未満では、ハイレート放電特性が不十分である。特に良好なハイレート放電特性を得るためには、0.1cm/g以上が好ましく、0.15cm/g以上がさらに好ましい。
【0016】
本発明の二酸化マンガンは、電池反応をより効率的に行うため、細孔直径2nm以上5nm以下の細孔(以下、「ミクロポア」と称する場合がある)の容積が0.004cm/g未満であることが好ましく、0.003cm/g以下がさらに好ましく、0.001cm/g未満が特に好ましい。
【0017】
本発明の二酸化マンガンは、後述するように、Mnなどの低価数のMn酸化物を濃厚な硫酸下で処理し、不均化反応することにより得られる。
【0018】
本発明の二酸化マンガン混合物は、本発明の二酸化マンガンと電解二酸化マンガンを含むものである。
【0019】
本発明の二酸化マンガン混合物は、それに含まれる本発明の二酸化マンガンが特に細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔(メソポア)の容積が0.07cm/g以上の極めて大きな容積を有する二酸化マンガンであり、この二酸化マンガンを電解二酸化マンガンに混合した混合物が、アルカリマンガン乾電池において、極めて優れたハイレート特性を有する正極材料となることを見出したことに基づいている。
【0020】
本発明の二酸化マンガン混合物は、本発明の二酸化マンガンと電解二酸化マンガンの割合を特に限定するものではないが、嵩密度をより高く維持するために、本発明の二酸化マンガンが、当該二酸化マンガンと電解二酸化マンガンの合計に対して、0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましく、2重量%以上10重量%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明の二酸化マンガン混合物に含まれる電解二酸化マンガンは、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔(メソポア)の容積が0.005cm/g未満であることが好ましく、0.004cm/g以下がさらに好ましい。
【0022】
本発明の二酸化マンガン混合物は、十分なハイレート放電特性を得るため、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔(メソポア)の容積が0.003cm/g以上であることが好ましく、0.008cm/g以上であることがより好ましく、0.01cm/g以上であることがさらに好ましく、0.02cm/g以上であることが特に好ましい。細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔(メソポア)では、電解液が浸透し易く、良好な電池反応が進行すると考えられる。このメソポアの容積の総量の上限としては、充填密度を維持し、高い電池反応性と充填性が得られ、良好なハイレート特性が発現するため、0.2cm/g以下が例示される。メソポアでは、電解液が浸透し易く、良好な電池反応が進行すると考えられる。
【0023】
本発明の二酸化マンガン混合物は、電池反応をより効率的に行うため、細孔直径2nm以上5nm以下の細孔(ミクロポア)の容積が0.004cm/g未満であることが好ましく、0.003cm/g未満であることがより好ましく、0.002cm/g未満であることがさらに好ましく、0.000cm/g以上0.001cm/g未満であることが特に好ましい。
【0024】
本発明のミクロポア範囲がハイレート特性向上にどのように寄与しているかは明確ではないが、次のように解釈している。まず、アルカリ乾電池内での電解二酸化マンガンは、下記式1のように、水と電気化学的に反応し、二酸化マンガン表面とアルカリ電解液界面では、Hと電子(e)の授受が行われている。
【0025】
MnO+HO +e → MnOOH + OH … 式1
二酸化マンガン表面と電解液(水)の界面が多いほど、反応はスムーズに進行するが、ミクロポア領域かそれ以下の細孔領域では、表面張力の影響などで細孔内部に電解液が浸透し難く、結果的にほとんど反応に寄与しない細孔となっているのではないかと推測される。
【0026】
また、電解液が浸透していない空洞のミクロポアが多いほど、電子移動も阻害されることが推測される。
【0027】
以上のような理由から、ミクロポアの容積が0.004cm/g未満であれば、より良好なハイレート特性が発揮されるため好ましいものとなると思われる。
【0028】
本発明の二酸化マンガン混合物では、100nmを超えるような細孔の容積は、メソポア内外へ電解液をスムーズに移送できる程度であれば良く、3cm/g以下であることが例示でき、これにより、本発明の二酸化マンガン混合物は高い充填性を有しやすい。
【0029】
本発明の二酸化マンガン混合物は、メソポアの面積が0.1m/g以上であることが好ましく、0.2m/g以上であることがより好ましく、0.5m/g以上であることがさらに好ましく、0.6m/g以上であることが特に好ましい。
【0030】
上述したように、メソポアには電解液が浸透し易く、広い細孔表面積を有することにより、式1に示す電池反応が良好に進行すると考えられる。メソポアの細孔面積の上限としては、充填密度を維持し、高い電池反応性と充填性が得られ、良好なハイレート放電特性が発現するため、30m/g以下が例示される。
【0031】
本発明の二酸化マンガン混合物は、アルカリ電位が270mV以上350mV未満であることが好ましい。アルカリ電位が270mV以上350mV未満では、アルカリマンガン乾電池の正極材料に用いた場合、電池の開回路電圧が上昇し、使用可能な放電電圧下限までの放電時間を長くすることができる。アルカリ電位は270mV以上330mV以下がより好ましく、280mV以上320mV以下であることがさらに好ましく、290mV以上310mV以下であることが特に好ましい。アルカリ電位は、40重量%KOH水溶液中で水銀/酸化水銀参照電極を基準として測定する。
【0032】
本発明の二酸化マンガン混合物は、充填性を高く維持するため、嵩密度(bulk density)が1.6g/cm以上であることが好ましく、1.8g/cm以上であることがより好ましく、2.0g/cm以上であることがさらに好ましい。一方で嵩密度は極端に高い必要はなく、例えば、3.0g/cm以下、さらには2.5g/cm以下を挙げることができる。
【0033】
本発明の二酸化マンガン混合物は、CuKα線を光源とする通常のXRD測定パターンにおいて、2θが22±1°付近の(110)面の回折線の半価全幅(FWHM)については特に限定するものではないが、充填密度をより高くして放電容量をより高めるため、1.6°以上3.2°以下が好ましく、1.7°以上3.0°以下がより好ましく、2.1°以上2.8°以下がさらに好ましい。この様なFWHMであることにより、充填性が高くなり放電容量が高まる。
【0034】
本発明の二酸化マンガン混合物の平均結晶子径は、FWHM及び(110)ピーク位置からシェラーの式を用いて換算することによって得られ、好ましいFWHMの範囲(1.6°以上3.2°以下)では、20〜50Åである。
【0035】
本発明の二酸化マンガン混合物は、BET比表面積については特に限定するものではないが、充填密度をより高くして放電容量をより高めるため、12m/g以上40m/g以下であることが好ましく、14m/g以上32m/g以下であることがより好ましく、20m/g以上30m/g以下であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の二酸化マンガン混合物は、X線回折の(110)/(021)ピーク強度比が0.5以上1.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.55以上1.0以下、さらに好ましくは0.6以上0.96以下である。
【0037】
二酸化マンガン混合物のX線回折における(110)面は前述したとおり22±1°付近に、また(021)面は37±1°付近に現れるが、これらは二酸化マンガン結晶の主要なX線回折ピークである。
【0038】
次に、本発明の二酸化マンガン混合物の製造方法について説明する。
【0039】
本発明の二酸化マンガン混合物は、本発明の二酸化マンガンと電解二酸化マンガンによって構成される。
【0040】
まず、本発明の二酸化マンガンは、低価数のMn酸化物を濃厚な酸で処理し、不均化反応を経ることによって得ることができる。
【0041】
低価数のMn酸化物は、例えば、2価のマンガンイオンを含有する溶液とアルカリ溶液を混合し、得られた混合溶液を酸化することで得られた四三酸化マンガン(Mn)、三二酸化マンガン(三酸化二マンガン(Mn))又はこれらの混合物などのマンガン酸化物を挙げることができる。尚、混合溶液の酸化は、空気、酸素等の酸化剤を使用してもよい。
【0042】
式2〜式3には、低価数のMn酸化物として、四三酸化マンガン(Mn)を用いた場合の不均化反応式を示す。
【0043】
Mn+8H → Mn2++2Mn3++4HO … 式2
2Mn3++2HO → MnO+Mn2++4H … 式3
また、式4〜式(5)には、低価数のMn酸化物として、三二酸化マンガン(Mn)を用いた場合の不均化反応式を示す。
【0044】
Mn+6H → 2Mn3++3HO … 式4
2Mn3++2HO → MnO+Mn2++4H … 式5
本発明の二酸化マンガンは、低価数のMn酸化物を、濃厚な酸液に浸漬した後、加温下で、一定時間攪拌した後に、ろ過分離する方法で得ることができ、酸としては、例えば、硫酸、硝酸等が用いられ、酸液の濃度としては、例えば、1mol/L以上8mol/L以下等が挙げられ、加温は、例えば、40℃以上90℃以下で行い、撹拌時間は、例えば、1時間以上72時間以下で行う。
【0045】
一方、電解二酸化マンガンは、例えば、電解液として硫酸−硫酸マンガン混合溶液を使用し、例えば、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中の硫酸濃度が25g/Lを超え55g/L以下とし、電解電流密度が0.5A/dm以上1.0A/dm以下とし、電解温度が90℃以上98℃以下として電解することで製造することができる。また、電解槽に配置する電極として、電解二酸化マンガンが析出する陽極には鉛電極、銅電極、カーボン電極等が使用できるが、強度が高く、安定性が高いチタン電極が好適に用いられる。また、陰極にはカーボン電極が使用できる。
【0046】
電解二酸化マンガンの製造方法で、電解液として硫酸−硫酸マンガン混合溶液を使用すると、硫酸マンガン水溶液を電解液とする電解方法とは異なり、電解期間中の硫酸濃度を制御することが可能となる。これにより、長期間電解を行なった場合であっても硫酸濃度を任意に設定できるため、安定的に電解二酸化マンガンを製造できるだけでなく、得られる電解二酸化マンガンの細孔の状態が均一になり易い。
【0047】
電解二酸化マンガンの製造方法で用いられる硫酸−硫酸マンガン混合溶液は、硫酸濃度として25g/Lを超え55g/L以下の範囲に制御されることが好ましく、32g/L以上45g/L以下であることがより好ましい。
【0048】
また、電解期間中に硫酸濃度を任意に変えること、特に、電解終了時の硫酸濃度を電解開始時の硫酸濃度よりも高く制御することも有効である。この場合の電解開始時の硫酸濃度としては、30g/Lを超え40g/L以下が好ましく、30g/Lを超え35g/L以下がより好ましい。また、電解終了時の硫酸濃度としては、32g/L以上55g/L以下が好ましく、35g/Lを超え50g/L以下がより好ましく、40g/Lを超え45g/L以下がさらに好ましい。
【0049】
このように硫酸濃度を任意に変える効果は明確ではないが、前半に比較的低濃度の硫酸濃度である条件下で電解することにより、電極基材への腐食ダメージが直接軽減されるだけでなく、前半で結晶子径が大きくBET比表面積が低く充填性が高い二酸化マンガンを得、引き続き後半に比較的高濃度の硫酸濃度である条件下で電解することにより、既に電解二酸化マンガン析出層に覆われているため電極基材がより腐食ダメージを受け難く、さらに電位が高まり、ハイレート特性に優れた電解二酸化マンガンが得られ易くなる。
【0050】
電解二酸化マンガンの製造方法では、電解開始から電解終了まで電解中の硫酸濃度を徐々に変化させるのではなく、前半の電解、後半の電解とで硫酸濃度を切替えることが好ましい。
【0051】
前半の電解と、後半の電解の比率に制限はないが、例えば低硫酸濃度と高硫酸濃度での電解時間の比が1:9〜9:1、特に3:7〜7:3の範囲が好ましい。なお、ここでいう硫酸濃度とは、硫酸マンガンの二価の陰イオンは除いた値である。
【0052】
電解二酸化マンガンの製造方法では、電解電流密度について特に限定するものではないが、適切なBET比表面積を維持するため、0.5A/dm以上1.0A/dm以下であることが好ましい。これにより、効率的、かつ安定的に本発明の電解二酸化マンガンを製造しやすくなる。より安定的に本発明の電解二酸化マンガンを得るために、電解電流密度は0.55A/dm以上0.88A/dm以下であることがより好ましく、0.58A/dm以上0.8A/dm未満であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明における電解補給液中のマンガンイオン濃度に限定はないが、例えば、40〜60g/Lが例示でき、40〜50g/Lが好ましい。なお、マンガンイオン濃度については硫酸マンガン液のICP発光分光分析法により測定することができる。
【0054】
電解温度は90℃以上98℃以下が例示できる。電解温度が高いほど、電解二酸化マンガンの製造効率が上がるため、電解温度は少なくとも93℃を越えることが好ましい。
【0055】
本発明の二酸化マンガン混合物の製造方法としては、上記した方法で得られた二酸化マンガンを0.5重量%以上10重量%以下の割合で上記した方法で得られた電解二酸化マンガンと混合する方法、上記した方法で得られた二酸化マンガンを、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中に添加しながら電解し、上記した方法で得られた電解二酸化マンガンと共電析させる方法等が挙げられる。
【0056】
二酸化マンガンと電解二酸化マンガンの混合方法としては、例えば、物理混合、湿式混合等の方法が例示される。混合の割合は、二酸化マンガンが0.5重量%以上10重量%以下であり、好ましくは2重量%以上10重量%以下である。0.5重量%未満であると、ハイレート放電特性が十分ではなく、10重量%を超えると、密度が低くなるため、充填性が低くなる。
【0057】
電解二酸化マンガンを電解合成する際に用いられる硫酸−硫酸マンガン混合溶液中に本発明の二酸化マンガンを粉状若しくはスラリー状で継続的に添加し、共電析させることも有効である。ここに、共電析とは、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中に本発明の二酸化マンガンを連続的に添加することにより、電解二酸化マンガンが電解析出する際に、電解二酸化マンガン電着物内に本発明の二酸化マンガンが同時に取り込まれることである。
【0058】
アルカリマンガン電池の正極活物質として使用する方法には特に制限はなく、周知の方法で添加物と混合して用いることができる。
【0059】
例えば、二酸化マンガン混合物に導電性を付与するためにカーボン等を加えた混合粉末を調製し、これを円盤状またはリング状に加圧成型した粉末成型体として電池正極とすることができる。
【0060】
また、本発明の二酸化マンガンは、吸着剤として使用される二酸化マンガン、例えば過マンガン酸イオン(Mn7+)とマンガンイオン(Mn2+)の反応で合成したδ型MnOよりも、極めて大きなメソポアを有するため、例えば、水中の有価金属イオン、重金属イオン、陰イオンを吸着分離する特性にも優れる。この有価金属イオンとしては、例えば、Pt、Pdなどの白金族やLiなどのアルカリ金属類等が挙げられ、また、重金属イオンとしては、例えば、Pb、Cd、Hg、Zn、Cu、Ni、Cr、As、Se、Sb、Mo等が挙げられ、さらに、陰イオンとしては、塩素酸イオンや臭素酸イオンなどのハロゲン酸イオンが挙げられる。
【0061】
本発明の二酸化マンガンは、このままの粉状でも吸着剤として作用するが、バインダーと混合して成形し、造粒したものであっても、吸着剤として用いることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の二酸化マンガン混合物は、アルカリ電池の正極材料として用いた場合に電気化学的な反応性に優れ、ハイレート放電特性に優れ、さらに、本発明の二酸化マンガンにより、本発明の二酸化マンガン混合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】ハイレート放電特性用の評価セルである。
図2】実施例1で得られた四三酸化マンガン(Mn)のXRDパターンである。
図3】実施例1の二酸化マンガン、合成例1の電解二酸化マンガン、実施例2〜4の二酸化マンガン混合物のXRDパターンである。
図4】実施例1の二酸化マンガン、実施例2〜4の二酸化マンガン混合物、比較例1の電解二酸化マンガンの細孔面積(累積)分布図である。
図5】実施例5で得られた三酸化二マンガン(Mn)のXRDパターンである。
図6】実施例5〜8の二酸化マンガンのXRDパターンである。
図7】実施例5〜8の二酸化マンガンの細孔面積(累積)分布図である。
図8】実施例9〜12の二酸化マンガン混合物のXRDパターンである。
図9】実施例9〜12の二酸化マンガン混合物、比較例1の電解二酸化マンガンの細孔面積(累積)分布図である。
図10】比較例2の二酸化マンガンのXRDパターンである。
図11】実施例8と比較例2の二酸化マンガンの細孔面積(累積)分布図である。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
<二酸化マンガン、二酸化マンガン混合物のアルカリ電位の測定>
二酸化マンガン、二酸化マンガン混合物のアルカリ電位は、40重量%KOH水溶液中で次のように測定した。
【0066】
二酸化マンガン(二酸化マンガン混合物)3gに導電剤としてカーボンを0.9g加えて混合粉体とし、この混合粉体に40重量%KOH水溶液4mlを加え、二酸化マンガン(二酸化マンガン混合物)とカーボンとKOH水溶液の混合物スラリーとした。この混合物スラリーの電位を水銀/酸化水銀参照電極を基準として、二酸化マンガン(二酸化マンガン混合物)のアルカリ電位を測定した。
【0067】
<二酸化マンガン、二酸化マンガン混合物の細孔の容積、面積及び嵩密度の測定>
二次細孔、ミクロポア及びメソポアの容積、面積及び嵩密度は水銀圧入法(ポアサイザー9510,マイクロメリティクス社製)により求めた。
【0068】
測定の前処理として試料を80℃で静置乾燥した。その後、水銀の圧力範囲を大気圧から414MPaまで段階的に変化させて測定を行なった。この測定により細孔分布(容積分布及び面積分布)を求め、細孔直径2nm以上200nm以下の細孔を「二次細孔」とし、この内、細孔直径2nm以上5nm以下の細孔を「ミクロポア」とし、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔を「メソポア」とした。
【0069】
また、嵩密度は大気圧で水銀を導入した際の水銀量から求めた。
【0070】
<XRD測定における半価全幅(FWHM)の測定>
二酸化マンガン、二酸化マンガン混合物の2θが22±1°付近の回折線の半価全幅(FWHM)を、一般的なX線回折装置(マックサイエンス社製MXP−3)を使用して測定した。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件は毎秒0.04°、計測時間は3秒、および測定範囲は2θとして5°から80°の範囲で測定した。
【0071】
<(110)/(021)の算出>
FWHMと同様にして得られたXRDパターンにおいて、2θが22±1°付近の回折線を(110)面に対応するピークとし、37±1°付近の回折線を(021)面に対応するピークとした。(110)面のピーク強度を(021)面のピーク強度で除することにより(110)/(021)を求めた。
【0072】
<BET比表面積の測定>
二酸化マンガン、二酸化マンガン混合物のBET比表面積はBET1点法の窒素吸着により測定した。測定装置にはガス吸着式比表面積測定装置(フローソーブIII,島津社製)を用いた。測定に先立ち、150℃で40分間加熱することで測定試料を脱気処理した。
【0073】
<ハイレート放電特性の評価>
二酸化マンガン混合物が80重量%、導電材が5重量%及び40重量%KOH水溶液が15重量%となるよう秤量し、混合して正極合剤を作製した。当該正極合剤を二酸化マンガン混合物換算で1.0gとなるように秤量し、成形し、負極に亜鉛ワイヤーを使用して、図1に示したハイレート放電特性用の評価用セルにより放電特性を評価した。評価用セルは室温で1時間静置後、放電試験を行った。放電条件は、100mA/gの電流で10秒間放電した後、50秒間電流を休止するパルス放電のサイクルを1回とし、終止電圧0.9Vまでのサイクル回数で評価したものをハイレート放電特性とし、放電容量は比較例1の測定結果を100%とし、それに対する相対値で求めた。
【0074】
<有価金属イオンに対する吸着特性の評価>
パラジウム(Pd)を8.8mg/Lを含む水溶液100mLを入れた三角フラスコ、リチウム(Li)8.0mg/Lを含む水溶液100mLを入れた三角フラスコに、各々マンガン酸化物100mgを加え、常温で16時間撹拌した後に、マンガン酸化物をディスポーザブルフィルター(25HP020AN,アドバンテック東洋製)でろ過分離し、水溶液中のPd濃度およびLi濃度を測定することにより評価した。
【0075】
<重金属イオンに対する吸着特性の評価>
鉛(Pb)を10.1mg/Lを含む水溶液100mLを入れた三角フラスコに、マンガン酸化物100mgを加え、常温で16時間撹拌した後に、マンガン酸化物をディスポーザブルフィルター(25HP020AN,アドバンテック東洋製)でろ過分離し、水溶液中のPb濃度を測定することにより評価した。
【0076】
実施例1
マンガンイオン濃度90g/Lの硫酸マンガン水溶液を攪拌し、これに空気を吹き込みながら1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してマンガン酸化物を含む硫酸マンガン水溶液を得た。得られたマンガン酸化物は四三酸化マンガン(Mn)の単相であった。
【0077】
得られた四三酸化マンガン(Mn)のXRDパターンを図2に示す。
【0078】
得られた四三酸化マンガン(Mn)51gを、3mol/L硫酸溶液260gが入ったビーカーに浸漬し、60℃で4時間撹拌し、黒色沈殿物のスラリー液を得た。このスラリー液をメンブランフィルターでろ過した後、ろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れて、1時間水洗する操作を2回繰り返した。次に再度メンブランフィルターでろ過した後、再びろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れた後、スラリーpHが5.6になるまで1mol/LのNaOH溶液で中和し、ろ過、乾燥してマンガン酸化物を得た。得られたマンガン酸化物は二酸化マンガン(γMnO)に帰属されるXRDパターンを示した。この二酸化マンガンの物性を表1に、XRDパターンを図3に、細孔面積(累積)分布図を図4に示した。
【0079】
【表1】
合成例1
硫酸−硫酸マンガン混合溶液の入った電解槽内に、マンガンイオン濃度45g/Lの補給硫酸マンガン液を連続的に添加しながら電解し、二酸化マンガンの電析する陽極にはチタン電極を用い、陰極にはカーボン電極を用いて、電解二酸化マンガンを製造した。電解中は、電解電流密度を0.59A/dm、電解温度を96℃とした。なお、補給硫酸マンガン液は電解槽内の硫酸濃度が35.0g/Lとなるよう添加し、14日間電解し、電解終了時の電解電圧は、2.6Vであった。
【0080】
得られた電着物を電極から剥離後、平均粒子径40μmとなるように粉砕した後、水洗中和、乾燥して、電解二酸化マンガンを得た。得られた電解二酸化マンガンは、γ相であった。この電解二酸化マンガンの物性を表1に、XRDパターンを図3に示した。
【0081】
実施例2
実施例1で得られた二酸化マンガン0.5gと合成例1で得られた電解二酸化マンガン4.5gをメノウ乳鉢にとり、乳棒でかき混ぜることにより、二酸化マンガン混合物を得た。得られた二酸化マンガン混合物の物性及びハイレート放電特性の評価結果を表2に、XRDパターンを図3に、細孔面積(累積)分布図を図4に示した。
【0082】
【表2】
実施例3
実施例1で得られた二酸化マンガン0.2gと合成例1で得られた電解二酸化マンガン4.8gとした以外は、実施例2に従って、二酸化マンガン混合物を得た。得られた二酸化マンガン混合物の物性及びハイレート放電特性の評価結果を表2に、XRDパターンを図3に、細孔面積(累積)分布図を図4に示した。
【0083】
実施例4
実施例1で得られた二酸化マンガン0.1gと合成例1で得られた電解二酸化マンガン4.9gとした以外は、実施例2に従って、二酸化マンガン混合物を得た。得られた二酸化マンガン混合物の物性及びハイレート放電特性の評価結果を表2に、XRDパターンを図3に、細孔面積(累積)分布図を図4に示した。
【0084】
比較例1
合成例1で得られた電解二酸化マンガンのハイレート放電特性の評価結果を表2に、XRDパターンを図3(合成例1)に、細孔面積(累積)分布図を図4図9に示した。
【0085】
実施例5
合成例1で得られた電解二酸化マンガンを600℃で4時間焼成し、三酸化二マンガン(Mn)を得た。得られた三酸化二マンガン(Mn)のXRDパターンを図5に示した。
【0086】
得られた三酸化二マンガン(Mn)50.6gを、3mol/L硫酸溶液260gが入ったビーカーに浸漬し、60℃で4時間撹拌し、黒色沈殿物のスラリー液を得た。このスラリー液をメンブランフィルターでろ過した後、ろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れて、1時間水洗する操作を2回繰り返した。次に再度メンブランフィルターでろ過した後、再びろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れた後、スラリーpHが5.6になるまで1mol/LのNaOH溶液で中和し、ろ過、乾燥してマンガン酸化物を得た。得られたマンガン酸化物はα相とγ相の両方を含む二酸化マンガンに帰属されるXRDパターンを示した。この二酸化マンガンの物性を表3に、XRDパターンを図6に、細孔面積(累積)分布図を図7に示した。
【0087】
【表3】
実施例6
実施例1で得られた四三酸化マンガン(Mn)50.3gを、1mol/L硫酸溶液260gが入ったビーカーに浸漬し、80℃で16時間撹拌し、黒色沈殿物のスラリー液を得た。このスラリー液をメンブランフィルターでろ過した後、ろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れて、1時間水洗する操作を2回繰り返した。次に再度メンブランフィルターでろ過した後、再びろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れた後、スラリーpHが5.6になるまで1mol/LのNaOH溶液で中和し、ろ過、乾燥してマンガン酸化物を得た。得られたマンガン酸化物は二酸化マンガン(γMnO)に帰属されるXRDパターンを示した。この二酸化マンガンの物性を表3に、XRDパターンを図6に、細孔面積(累積)分布図を図7に示した。
【0088】
実施例7
実施例1で得られた四三酸化マンガン(Mn)51.1gを、5mol/L硫酸溶液260gが入ったビーカーに浸漬し、60℃で4時間撹拌し、黒色沈殿物のスラリー液を得た。このスラリー液をメンブランフィルターでろ過した後、ろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れて、1時間水洗する操作を2回繰り返した。次に再度メンブランフィルターでろ過した後、再びろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れた後、スラリーpHが5.6になるまで1mol/LのNaOH溶液で中和し、ろ過、乾燥してマンガン酸化物を得た。得られたマンガン酸化物は二酸化マンガン(γMnO)に帰属されるXRDパターンを示した。この二酸化マンガンの物性を表3に、XRDパターンを図6に、細孔面積(累積)分布図を図7に示した。
【0089】
実施例8
実施例1で得られた四三酸化マンガン(Mn)50.0gを、3mol/L硫酸溶液260gが入ったビーカーに浸漬し、40℃で24時間撹拌し、黒色沈殿物のスラリー液を得た。このスラリー液をメンブランフィルターでろ過した後、ろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れて、1時間水洗する操作を2回繰り返した。次に再度メンブランフィルターでろ過した後、再びろ過物を500mLの純水が入ったビーカーに入れた後、スラリーpHが5.6になるまで1mol/LのNaOH溶液で中和し、ろ過、乾燥してマンガン酸化物を得た。得られたマンガン酸化物は二酸化マンガン(γMnO)に帰属されるXRDパターンを示した。この二酸化マンガンの物性を表3に、XRDパターンを図6に、細孔面積(累積)分布図を図7図11に示した。
【0090】
実施例9
実施例5で得られた二酸化マンガン0.2gと合成例1で得られた電解二酸化マンガン4.8gとした以外は、実施例2に従って、二酸化マンガン混合物を得た。得られた二酸化マンガン混合物の物性及びハイレート放電特性の評価結果を表4に、XRDパターンを図8に、細孔面積(累積)分布図を図9に示した
【0091】
【表4】
実施例10
実施例6で得られた二酸化マンガン0.2gと合成例1で得られた電解二酸化マンガン4.8gとした以外は、実施例2に従って、二酸化マンガン混合物を得た。得られた二酸化マンガン混合物の物性及びハイレート放電特性の評価結果を表4に、XRDパターンを図8に、細孔面積(累積)分布図を図9に示した。
【0092】
実施例11
実施例7で得られた二酸化マンガン0.2gと合成例1で得られた電解二酸化マンガン4.8gとした以外は、実施例2に従って、二酸化マンガン混合物を得た。得られた二酸化マンガン混合物の物性及びハイレート放電特性の評価結果を表4に、XRDパターンを図8に、細孔面積(累積)分布図を図9に示した。
【0093】
実施例12
実施例8で得られた二酸化マンガン0.2gと合成例1で得られた電解二酸化マンガン4.8gとした以外は、実施例2に従って、二酸化マンガン混合物を得た。得られた二酸化マンガン混合物の物性及びハイレート放電特性の評価結果を表4に、XRDパターンを図8に、細孔面積(累積)分布図を図9に示した。
【0094】
実施例13
実施例8で得られた二酸化マンガンを用いて、有価金属イオンおよび重金属イオンの吸着特性を評価した。その評価結果を表5に示す。
【0095】
【表5】
比較例2
過マンガン酸カリウム(KMnO)0.1mol/Lの水溶液に、硫酸マンガン(MnSO)0.6mol/Lの水溶液を常温下で2mL/分の速度で添加し、添加終了後、2時間の熟成反応を行った。反応終了後、ろ過、水洗を行い、その後、105℃で16時間乾燥した後にマンガン酸化物を得た。得られたマンガン酸化物は、過マンガン酸イオン(Mn7+)とマンガンイオン(Mn2+)の反応で合成した際に得られる二酸化マンガン(δMnO)に帰属されるXRDパターンを示した。
【0096】
この二酸化マンガンのミクロポア(細孔直径2nm以上5nm以下の細孔)とメソポア(細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔)の容積は、それぞれ0.011cm/gと0.020cm/gであった。この二酸化マンガンのXRDパターンを図10に、細孔面積(累積)分布図を図11に示した。
【0097】
得られた二酸化マンガンを用いて、有価金属イオンおよび重金属イオンの吸着特性を評価した。その評価結果を表5に示す。
【0098】
表5から、本発明の二酸化マンガンは、有価金属イオンや重金属イオンの吸着特性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の二酸化マンガン混合物は大きな反応表面積を有するため、放電特性、特にハイレート放電特性に優れたアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1:亜鉛負極
2:正極合剤
3:上部固定具
4:KOH水溶液
5:多孔板
6:セパレーター
7:Ni板
8:Niリード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11