(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物が、イソシアネート基を有する化合物と、1分子中に(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物と、の反応物を含む請求項4又は請求項5に記載のアンダーフィル材。
前記1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ以上含む化合物の含有率が、前記(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の全量に対して30質量%以上である請求項2〜請求項7のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
電子部品における配線基板と対向する側の面及び前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方の面に、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を付与する付与工程と、
前記付与工程の後に、前記電子部品と前記配線基板とを接続部を介して接続し、且つ前記アンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有する、
前記電子部品と前記配線基板とが前記接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0026】
本明細書において「室温」とは、25℃を意味する。
本明細書において「室温で液体」とは、25℃で流動性を示す状態であることを意味する。
本明細書において「液体」とは、流動性及び粘性を示し、且つ粘性を示す尺度である粘度が25℃において、0.0001Pa・s〜1000Pa・sである物質を意味する。
【0027】
本明細書において「アンダーフィル材の粘度」とは、25℃に保たれたアンダーフィル材について、レオメーターを用いて5.0s
−1のせん断速度で測定したときの値と定義する。詳細には、「粘度」は、せん断粘度として、コーンプレート(直径40mm、コーン角0°)を装着した回転式のレオメーターを用いて、温度25℃で測定される。
【0028】
また、本明細書において「アンダーフィル材」とは、セラミック、ガラスエポキシ樹脂、ガラスイミド樹脂、ポリイミドフィルム等を基板とする配線基板上に電子部品をバンプ接続してなる電子部品装置(フリップチップ)において、バンプ接続した電子部品と配線基板との間隙(ギャップ)に充填され、電子部品と配線基板との接続部を温度及び湿度並びに機械的な外力から保護する材料を意味する。
【0029】
本明細書において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の双方、又はアクリロイル基若しくはメタクリロイル基のいずれかを意味する。
本明細書において(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の双方、又はアクリロイルオキシ基若しくはメタクリロイルオキシ基のいずれかを意味する。
【0030】
以下、本発明のアンダーフィル材、電子部品装置の製造方法及び電子部品装置について順に説明する。
【0031】
[アンダーフィル材]
まず、本発明のアンダーフィル材について説明する。
本発明のアンダーフィル材は、電子部品における配線基板と対向する側の面及び配線基板における電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方の面に、アンダーフィル材を付与する付与工程と、付与工程の後に、電子部品と配線基板とを接続部を介して接続し、且つアンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有し、電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法に用いられるアンダーフィル材であり、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、(B)反応開始剤及び(C)無機充填剤を含有し、且つ(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物を含む。
【0032】
本発明のアンダーフィル材は、上記構成を採ることにより、アンダーフィル材の硬化時間の短縮が可能で、ボイドの発生が抑制され、且つ電子部品との接着性に優れる硬化物を得ることができる。該硬化物により、電子部品装置の接続信頼性が向上し得る。
その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
本発明のアンダーフィル材に含まれる(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、ラジカル重合反応により硬化する。ラジカル重合反応はエポキシ開環反応と比較して反応速度が速い。そのため、本発明のアンダーフィル材はエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有する従来のアンダーフィル材と比較して、反応速度が速く、硬化時間を短縮することが可能であると推察される。アンダーフィル材の硬化時間が短縮することにより、アンダーフィル材等から発生する揮発分が原因となるボイドの発生を抑制することができるものと考えられる。電子部品と配線基板との間にボイドが発生しにくくなることで、電子部品装置の電気的な接続信頼性が向上すると推察される。
また、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が、1分子中にエチレン性不飽和二重結合に加えてウレタン結合を有することにより、基材との接着性を向上することができると推察される。更に、基材との接着性が向上することにより、アンダーフィル材と電子部品装置との間に剥離が生じるのを抑制し、電子部品と配線基板との接続性が損なわれることを抑制し、電子部品装置の電気的な接続信頼性を向上することができると考えられる。また、ウレタン結合を有することにより、硬化物の強度が向上し、耐リフロー性が向上することで、電子部品装置の電気的な接続信頼性が向上するものと考えられる。
【0033】
上述の通り、本発明のアンダーフィル材は、先塗布型のアンダーフィル材である。
本発明のアンダーフィル材の粘度は、25℃で0.01Pa・s〜1000Pa・sであることが好ましく、0.1Pa・s〜500Pa・sであることがより好ましく、1.0Pa・s〜100Pa・sであることが更に好ましい。本発明におけるアンダーフィル材の粘度の測定方法は上述の通りである。
【0034】
また、アンダーフィル材の揺変指数は、0.1〜100であることが好ましく、0.5〜50であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましい。尚、本発明におけるアンダーフィル材の揺変指数の測定方法は、以下の通りである。
25℃に保たれたアンダーフィル材について、レオメーターを用いて5.0s
−1のせん断速度及び0.5s
−1のせん断速度でそれぞれ測定したときの値の比(せん断速度が0.5s
−1で測定したときの粘度)/(せん断速度が5.0s
−1で測定したときの粘度)を揺変指数とする。詳細には、「揺変指数」は、せん断粘度として、コーンプレート(直径40mm、コーン角0°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、温度25℃で測定される。
【0035】
以下、本発明のアンダーフィル材に含有される必須及び任意の各成分について説明する。
【0036】
<(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物>
本発明のアンダーフィル材は、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(以下、「成分(A)」とも称する)を含有し、該(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物(以下、「化合物(A1)」とも称する)を含む。
(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
((A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物)
(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物が有するエチレン性不飽和二重結合としては、(B)反応開始剤を用いてラジカル反応が可能である官能基であれば特に制限されず、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
1分子中のエチレン性不飽和二重結合の数は特に限定されず、1以上であり、反応性の観点から、2以上であることが好ましく、アンダーフィル材の硬化物の柔軟性の観点から10以下であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。
【0038】
化合物(A1)は、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合とを有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基とウレタン結合とを有する化合物であることがより好ましい。
【0039】
化合物(A1)中のウレタン結合の数は特に限定されず、アンダーフィル材の硬化物の電子部品に対する接着性の観点から、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。
【0040】
化合物(A1)は、アンダーフィル材の硬化物の柔軟性の観点から、(ポリ)エーテル鎖を少なくとも1種有していてもよい。(ポリ)エーテル鎖としては、炭素数1〜18のアルキレンオキシ基又は炭素数3〜18のシクロアルキレンオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキレンオキシ基又は炭素数3〜14のシクロアルキレンオキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜12のアルキレンオキシ基又は炭素数3〜12のシクロアルキレンオキシ基であることが更に好ましい。(ポリ)エーテル鎖の繰り返し単位の数は1〜50であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましい。(ポリ)エーテル鎖は1種でも、2種以上存在してもよい。
【0041】
化合物(A1)としては、例えば、イソシアネート基を有する化合物と、1分子中にエチレン性不飽和二重結合及び水酸基を有する化合物と、の反応により得られる化合物を用いることができる。反応性の観点から、イソシアネート基を有する化合物と、1分子中に(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物と、の反応物であることが好ましい。
【0042】
化合物(A1)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの反応生成物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの反応生成物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートとの反応生成物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートとの反応生成物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートとトルエンジイソシアネートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとトルエンジイソシアネートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物等が挙げられる。
【0043】
化合物(A1)としては、反応性及び電子部品に対する接着性の観点から、2つのウレタン構造が炭化水素基により連結されたジウレタン構造を有し、各末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基が(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
2つのウレタン構造を連結する炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましい。また、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素の炭素数は、1〜14であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましい。
【0044】
上述の(メタ)アクリロイル基の各々は、アンダーフィル材の硬化物の柔軟性の観点から、少なくとも1種の(ポリ)エーテル鎖を介してジウレタン構造と結合していてもよい。(ポリ)エーテル鎖としては、炭素数1〜18のアルキレンオキシ基又は炭素数3〜18のシクロアルキレンオキシ基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキレンオキシ基又は炭素数3〜14のシクロアルキレンオキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜12のアルキレンオキシ基又は炭素数3〜12のシクロアルキレンオキシ基であることが更に好ましい。各(ポリ)エーテル鎖の繰り返し単位の数は1〜50であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましい。
上述の(メタ)アクリロイル基の各々は、炭素数の異なる少なくとも2種の(ポリ)エーテル鎖を介してジウレタン構造と結合していることが好ましい。
【0045】
これらの中でも、化合物(A1)としては、反応性及び電子部品に対する接着性の観点から、下記一般式(I−1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0047】
一般式(I−1)中、R
11はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R
12はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基を表し、R
13は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基を表し、pはそれぞれ0〜50の整数を表し、qはそれぞれ0〜50の整数を表す。
【0048】
一般式(I−1)において、R
12で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基は、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
炭素数1〜18の2価の炭化水素基の炭素数には置換基の炭素数は含まれない。
【0049】
R
12で表される炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基は、炭素数1〜14の2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ビニレン基、エチリデン基、ビニリデン基、プロペニレン基、ブタジエニレン基等が挙げられる。炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基又はヘキシレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基又はブチレン基がより好ましい。
【0050】
R
12で表される炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基は、炭素数3〜14の2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、炭素数5〜12の2価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
炭素数3〜18の2価の脂環式脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0051】
R
12で表される炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基は、炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基の具体的としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。
【0052】
中でも、一般式(I−1)におけるR
12は、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましい。
【0053】
一般式(I−1)におけるR
12が有してもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等が挙げられる。R
12は置換基を有さないことが好ましい。
【0054】
一般式(I−1)において、R
13で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基は、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
一般式(I−1)におけるR
13は、一般式(I−1)におけるR
12と同義であり、好ましい範囲も同じである。R
13は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基から選ばれる2価の炭化水素基であることがより好ましく、ヘキシレン基であることが更に好ましい。
【0055】
一般式(I−1)において、pはそれぞれ独立に0〜50の整数を表し、アンダーフィル材の硬化物の柔軟性の観点からは、0〜30の整数を表すことが好ましく、0〜20の整数を表すことが更に好ましい。
一般式(I−1)において、qはそれぞれ独立に0〜50の整数を表し、アンダーフィル材の硬化物の柔軟性の観点からは、0〜30の整数を表すことが好ましく、0〜20の整数を表すことが更に好ましい。
【0056】
一般式(I−1)で表される化合物としては、R
11がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
12がそれぞれ独立に炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基であり、R
13が炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基であり、pがそれぞれ独立に0〜50の整数を表し、qがそれぞれ独立に0〜50の整数を表す化合物が好ましい。
【0057】
一般式(I−1)で表される化合物としては、R
11がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
12がそれぞれ独立に炭素数1〜14の2価の脂肪族炭化水素基であり、R
13が炭素数1〜14の2価の脂肪族炭化水素基であり、pがそれぞれ独立に0〜30の整数を表し、qがそれぞれ独立に0〜30の整数を表す化合物がより好ましい。
【0058】
一般式(I−1)で表される化合物としては、R
11がいずれもメチル基であり、R
12がそれぞれ独立に炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基であり、R
13が炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基であり、pがそれぞれ独立に0〜20の整数を表し、qがそれぞれ独立に0〜20の整数を表す化合物が更に好ましい。
【0059】
市販で入手可能な化合物(A1)としては、例えば、一般式(I−1)においてR
11がいずれもメチル基であり、R
12がいずれもエチレン基であり、pがいずれも4であり、qがいずれも1であり、R
13がへキシレン基である化合物(新中村化学工業株式会社、商品名「UA−11」)、R
11がいずれもメチル基であり、R
12がいずれもイソプロピレン基であり、pがいずれも1であり、qがいずれも9であり、R
13がヘキシレン基である化合物(新中村化学工業株式会社、商品名「UA−13」)が挙げられる。
また、市販で入手可能な化合物(A1)としては、「UA−4200」、「U−200PA」、「UA−306H」、「U−6LPA」(いずれも新中村化学工業株式会社、商品名)等も挙げられる。
【0060】
化合物(A1)の分子量は、アンダーフィル材の硬化物の強度及び柔軟性の観点から、100〜10000であることが好ましく、200〜5000であることがより好ましく、300〜3000であることが更に好ましい。
【0061】
アンダーフィル材中の化合物(A1)の含有率は、成分(A)の全量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7.5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。化合物(A1)の含有率が5質量%以上であると、本発明のアンダーフィル材により得られる硬化物は電子部品との接着性に優れる傾向がある。この含有率は、通常50質量%以下であってもよく、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
(その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物)
本発明のアンダーフィル材は、成分(A)として、化合物(A1)を含有していれば、本発明の効果が達成される範囲内で、電子部品装置の製造用途に用いられるアンダーフィル材に使用されている他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有していてもよい。
その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
成分(A)として化合物(A1)及びその他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む場合は、化合物(A1)とその他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との含有比(化合物(A1):その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物)は、アンダーフィル材の硬化性の観点から、質量基準で、50:50〜5:95であることが好ましく、45:65〜7.5:92.5であることがより好ましく、40:60〜10:90であることが更に好ましい。
【0064】
その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、本発明のアンダーフィル材が室温で液状となるように、室温(25℃)で液状のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を用いてもよいし、室温(25℃)で固形のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と室温(25℃)で液状のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物とを併用してもよい。
【0065】
その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を1つのみ有する化合物であっても、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物であってもよい。尚、以下では、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を1つのみ有する場合を単官能と称し、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ有する場合を二官能と称し、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を3つ以上有する場合を多官能と称する場合がある。
【0066】
その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の例としては、(メタ)アクリル化合物、アリルナジイミド化合物及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる1以上の化合物が挙げられ、(メタ)アクリル化合物又はアリルナジイミド化合物が好ましく、(メタ)アクリル化合物がより好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル化合物としては、反応性の観点から、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。アンダーフィル材の硬化物の柔軟性の観点からは、1分子中に10以下の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、1分子中に8つ以下の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に6つ以下の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0068】
(メタ)アクリル化合物は、ボイド性及びアンダーフィル材の硬化物の強度の観点から、脂環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
また、電子部品装置に対する接着性の観点から、エポキシ基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリル化合物を使用してもよい。例えば、エポキシ基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリル化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ダイマージオールモノアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート、アクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等の単官能アクリル化合物、
ペンテニルジアクリレート、テトラヒドロフルフリルジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールF型ジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジアクリレート等の二官能アクリル化合物、
トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート化物等の多官能アクリル化合物、
上記した単官能アクリル化合物、二官能アクリル化合物又は多官能アクリル化合物が有するアクリロイル基を、メタクリロイル基に置換したメタクリル化合物などが挙げられる。
【0070】
アリルナジイミド化合物としては、下記一般式(I−4)で表されるアリルナジイミド化合物が挙げられる。
【0072】
一般式(I−4)中、R
41は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基を表す。
【0073】
一般式(I−4)において、R
41で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基は、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基であることが好ましい。一般式(I−4)におけるR
41は、一般式(I−1)におけるR
12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0074】
一般式(I−4)で示されるアリルナジイミド化合物としては、例えば、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン(丸善石油化学株式会社、商品名:BANI−M)、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)(丸善石油化学株式会社、商品名:BANI−X)等が市販品として入手可能である。
【0075】
マレイミド化合物としては、下記一般式(I−5)又は(I−6)で表されるマレイミド化合物が挙げられる。
【0077】
一般式(I−5)中、R
51は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基を表す。
【0079】
一般式(I−6)中、nは0又は1以上の整数であり、0又は1〜10の整数であることがより好ましく、0又は1〜5の整数であることが更に好ましい。
【0080】
一般式(I−5)において、R
51で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基は、炭素数1〜18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基であることが好ましい。一般式(I−5)におけるR
51は、一般式(I−1)におけるR
12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0081】
一般式(I−5)で示されるマレイミド化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、商品名:BMI−1000)、m−フェニレンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、商品名:BMI−3000)、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド(大和化成工業株式会社、商品名:BMI−4000)、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、商品名:BMI−5100)、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、商品名:BMI−7000)、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社、商品名:BMI−TMH)が市販品として入手可能である。
【0082】
一般式(I−6)で示されるマレイミド化合物としては、例えば、ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工業株式会社、商品名:BMI−2000)が市販品として入手可能である。
【0083】
本発明における成分(A)は、電子部品装置に対する接着性及びアンダーフィル材の硬化物のボイド性の観点から、その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、上記化合物のうち、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物を含むことが好ましい。
【0084】
1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ以上含む化合物の含有率は、成分(A)の全量に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。エチレン性不飽和二重結合を2つ以上含む化合物の含有量が30質量%以上であると、アンダーフィル材の接着性及びボイド性が向上する傾向がある。
1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ以上含む化合物の含有率は、成分(A)の全量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0085】
1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ以上含む化合物としては、上述の二官能(メタ)アクリル化合物であることがより好ましく、(A2)トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートであることが更に好ましい。
1分子中にエチレン性不飽和二重結合を2つ以上含む化合物として(A2)トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートを使用する場合、(A2)トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートの含有率は、成分(A)の全量に対して、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートの含有量が20質量%以上であると、アンダーフィル材のボイド性及び硬化物の強度が向上する傾向がある。
トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートの含有率は、成分(A)の全量に対して、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
【0086】
<(B)反応開始剤>
本発明のアンダーフィル材は、反応開始剤を含有する。
本発明において使用可能な反応開始剤は特に制限されず、電子部品装置の製造用途に用いられるアンダーフィル材において、一般的に使用されている反応開始剤を用いることができる。ここで、本発明における反応開始剤とは、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の硬化反応を、熱、光等のエネルギー付与により生じるラジカルにより開始させ得る化合物を意味する。また、本発明のアンダーフィル材が室温で液状となるように、室温(25℃)で固体又は液体のどちらか一方の反応開始剤を用いてもよいし、両方を併用してもよい。
【0087】
本発明における反応開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物、水溶性触媒、過酸化物、過硫酸塩と還元剤とを組み合わせてなるレドックス触媒等が挙げられる。中でも保管安定性の観点から、反応開始剤は有機過酸化物であることが好ましい。
【0088】
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−へキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−へキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。
【0089】
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等が挙げられる。
【0090】
水溶性触媒としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0091】
本発明の反応開始剤の含有率は、成分(A)の全量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、アンダーフィル材の硬化性の観点からは0.5質量%〜10質量%であることがより好ましい。反応開始剤の含有率が0.1質量%以上であると、硬化反応がより充分に進行し、20質量%以下であると、アンダーフィル材の保管安定性がより向上する傾向にある。
【0092】
<(C)無機充填剤>
本発明のアンダーフィル材は、無機充填剤を含有する。
本発明において使用可能な無機充填剤は、電子部品装置の製造用途に用いられるアンダーフィル材に、一般的に使用されている無機充填剤であれば特に制限されるものではない。無機充填剤としては、球状シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、これらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。更に、難燃効果を有する無機充填剤として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等を使用することができる。これらの無機充填剤は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
中でも、無機充填剤はシリカであることが好ましく、微細間隙への流動性及び浸透性の観点からは、球状シリカであることがより好ましい。球状シリカの製造方法は特には制限されず、溶融法によって得られる溶融シリカであってもよく、爆燃法によって得られる爆燃シリカであってもよい。また、これらの無機充填剤は、必要に応じて表面をカップリング剤処理したものを用いてもよい。
本発明において、シリカが球形であるとは、真球度が0.7以上の条件を満たすことをいう。真球度の測定方法としては、例えば、電子顕微鏡で画像処理を行い、観察される粒子の面積と周囲長から、(真球度)={4π×(面積)÷(周囲長)
2}で算出される値とする方法を用いることができる。
【0094】
無機充填剤の表面を処理するためのカップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムジルコニウム化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、アルキルシランをカップリング剤として用いることが好ましい。
【0095】
本発明における無機充填剤の体積平均粒子径は、本発明の効果が達成される範囲内であれば特に制限されない。無機充填剤の体積平均粒子径は、0.10μm〜10μmであることが好ましく、0.15μm〜7.5μmであることがより好ましく、0.20μm〜5.0μm以下であることが更に好ましい。
無機充填剤の体積平均粒子径が10μm以下であれば、アンダーフィル材の微細間隙への浸透性及び流動性が向上してボイドの発生及びアンダーフィル材の未充填がより起こり難くなる傾向がある。更に、電子部品と配線基板との接続部に無機充填剤が噛み込み難く、接続不良がより発生し難くなる傾向がある。また、無機充填剤の体積平均粒子径が0.1μm以上であれば、アンダーフィル材が過剰に増粘し難くなる傾向がある。
【0096】
本発明において、無機充填剤の「体積平均粒子径」とは、下記の方法を用いて粒径を階級、体積を度数とし、度数の累積で表記された積算分布において、積算分布が50%となる粒径を意味する。無機充填剤の粒径を測定する方法としては、例えば、レーザー回折、動的光散乱、小角X線散乱等の装置を用い、同時に多数の粒子を測定する方法、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて画像化し、粒子1つ1つの粒径を測定する方法などが挙げられる。液相遠心沈降、フィールドフロー分別、粒子径排除クロマトグラフィ、流体力学クロマトグラフィ等の方法を用い、粒径を測定する前に100μm以上の粒子を分離する前処理を行ってもよい。また、測定試料がアンダーフィル材の硬化物である場合は、例えば、マッフル炉等で800℃以上の高温で処理した後に残渣として得られる灰分を上記の方法で測定することができる。
【0097】
本発明における無機充填剤の最大粒子径は、本発明の効果が達成される範囲内であれば特に制限されない。無機充填剤の最大粒子径は、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。無機充填剤の最大粒子径が40μm以下であると、アンダーフィル材の微細間隙への浸透性及び流動性が向上してボイドの発生及びアンダーフィル材の未充填がより起こり難くなり、電子部品と配線基板の接続部に無機充填剤が噛み込み難くなり接続不良が発生し難くなる傾向がある。
【0098】
本発明における無機充填剤の最小粒子径は、本発明の効果が達成される範囲内であれば特に制限されない。無機充填剤の最小粒子径は、0.075μm以上であることが好ましく、0.080μm以上であることがより好ましく、0.090μm以上であることが更に好ましい。無機充填剤の最小粒子径が0.075μm以上であれば、アンダーフィル材が過剰に増粘し難くなる傾向がある。
【0099】
本発明における無機充填剤の含有率は、本発明の効果が達成される範囲内であれば特に制限されない。無機充填剤の含有率が、アンダーフィル材の全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。無機充填剤の含有率が10質量%以上であると、アンダーフィル材の硬化物の強度がより向上し、耐温度サイクル性等の信頼性がより向上する傾向がある。無機充填剤の含有率は、アンダーフィル材の全量に対して、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
【0100】
無機充填剤の含有率の測定方法としては、例えば、硬化前又は硬化後のアンダーフィル材をマッフル炉等で800℃以上の高温で処理した後に残渣として得られる灰分量から算出する方法を用いることができる。
【0101】
<各種添加剤>
本発明のアンダーフィル材は、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、(B)反応開始剤及び(C)無機充填剤に加えて、必要に応じて、更に、各種添加剤を含んでもよい。
【0102】
添加剤としては、カップリング剤、フラックス剤、可とう剤、揺変付与剤、界面活性剤、イオントラップ剤等の各種の添加剤が挙げられる。本発明のアンダーフィル材は、以下の添加剤に限定することなく必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含有してもよい。
【0103】
(カップリング剤)
本発明のアンダーフィル材は、樹脂成分及び無機充填剤の濡れ性向上の観点から必要に応じてカップリング剤を含有してもよい。本発明において使用可能なカップリング剤は、本発明の効果が達成される範囲内であれば特に制限されるものではない。
【0104】
カップリング剤としては、1級アミノ基、2級アミノ基又は3級アミノ基を有するシラン化合物から選択される少なくとも一種のシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウムジルコニウム化合物などが挙げられる。
【0105】
本発明のアンダーフィル材は、カップリング剤を、1種単独で含有してもよいし、2種類以上を含有してもよい。
【0106】
本発明のアンダーフィル材がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有率は、無機充填剤〔(C)成分〕の0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜2.5質量%であることがより好ましい。カップリング剤の含有率が0.05質量%以上であれば、本発明のアンダーフィル材の硬化物と配線基板又は電子部品との接着性がより向上する傾向があり、カップリング剤の含有率が5質量%以下であれば成形性がより向上し、ボイドの発生がより低減される傾向がある。
【0107】
(フラックス剤)
本発明のアンダーフィル材は、フラックス機能を付与するために必要に応じてフラックス剤を含有してもよい。
本発明におけるフラックス剤としては、従来から当技術分野で用いられてきたハロゲン化水素酸アミン塩等を用いてもよい。その他、本発明における好ましいフラックス剤としては、電気特性の観点から、ヒドロキシ安息香酸等のフェノール性水酸基とカルボキシ基とを有する化合物、トリメリット酸等のカルボキシ基を含む酸無水物、アビチエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、2−フランカルボン酸、リンゴ酸等の有機酸、1分子にアルコール性水酸基を2個以上含有する化合物などが挙げられる。
【0108】
本発明のアンダーフィル材は、フラックス剤を、1種単独で含有してもよいし、2種類以上を含有してもよい。
【0109】
本発明のアンダーフィル材がフラックス剤を含有する場合、フラックス剤の含有率は、フラックス機能が発現する量であれば特に制限はない。フラックス剤の含有率は、アンダーフィル材の全量に対して0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがより好ましい。フラックス剤の含有率が0.1質量%以上であれば、本発明のアンダーフィル材と配線基板及び電子部品における接続部との濡れ性が高まり、配線基板及び電子部品との接続性がより向上する傾向がある。フラックス剤の含有率が10質量%以下であれば、ボイドの発生がより低減され、耐マイグレーション性等の信頼性が向上する傾向がある。
【0110】
(可とう剤)
本発明のアンダーフィル材は、耐熱衝撃性向上及び電子部品に対する応力低減等の観点から、必要に応じて可とう剤を含有してもよい。可とう剤としては特に制限はない。
【0111】
本発明における可とう剤としては、ゴム粒子が好ましい。ゴム粒子としては、電子部品装置の製造用途に用いられるアンダーフィル材に、一般的に使用されているゴム粒子を用いることができる。
【0112】
好適なゴム粒子の例としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(AR)等のゴム粒子が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐湿性の観点からは、アクリルゴムを含むゴム粒子が好ましく、コアシェル型アクリルゴム粒子がより好ましい。
【0113】
また、好適なゴム粒子の他の例としては、シリコーンゴム粒子が挙げられる。
シリコーンゴム粒子としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等の直鎖状のポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子;該シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの、乳化重合等で得られる固形シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂等の有機重合体のシェルとを含むコア−シェル重合体粒子などが挙げられる。これらのシリコーンゴム粒子の形状は無定形であっても球形であってもよく、アンダーフィル材の成形性の観点からその粘度を低く抑えるためには、球形のシリコーンゴム粒子を用いることが好ましい。
シリコーンゴム粒子は、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、信越化学工業株式会社等から市販品が入手可能である。
【0114】
可とう剤としてゴム粒子を用いる場合、該ゴム粒子の体積平均粒子径は、アンダーフィル材を充分変性するためには微細であることが好ましい。ゴム粒子の体積平均粒子径は0.05μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.1μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。ゴム粒子の体積平均粒子径が0.05μm以上であるとアンダーフィル材への分散性がより向上する傾向がある。ゴム粒子の体積平均粒子径が10μm以下であると、低応力化改善効果がより向上する傾向があり、アンダーフィル材としての微細間隙への浸透性及び流動性が向上し、ボイド及び未充填を招き難くなる傾向がある。
【0115】
ゴム粒子の体積平均粒子径は、前記無機充填剤と同様の方法を用いて測定される。
【0116】
本発明のアンダーフィル材が可とう剤を含有する場合、可とう剤の含有率は、アンダーフィル材の全量に対し1質量%〜30質量%であることが好ましく、2質量%〜20質量%であることがより好ましい。可とう剤の含有率が1質量%以上であると可とう剤の含有により得られる低応力化改善効果がより向上する傾向があり、可とう剤の含有率が30質量%以下であるとアンダーフィル材の所期の粘度が維持され、成形性が保持される傾向がある。
【0117】
(揺変付与剤)
本発明のアンダーフィル材は、形状保持性を向上させる観点から、必要に応じて揺変付与剤を含有してもよい。揺変付与剤としては、ひまし油に水素を添加することにより得られる水素添加ひまし油化合物、ポリエチレンを酸化処理し極性基を導入することにより得られる酸化ポリエチレン化合物、植物油脂肪酸とアミンより合成されるアマイドワックス化合物、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリマー、微粉末シリカ等が挙げられる。
【0118】
アンダーフィル材が揺変付与剤を含有することによって、ボイドの巻き込みを抑制することができる。すなわち、配線基板又は電子部品にアンダーフィル材を付与したときに、アンダーフィル材が形状を保持できずに流動してしまう場合はボイドを巻き込みやすくなる傾向がある。しかし、揺変付与剤を含有することによって、アンダーフィル材が流動し難くなり、ボイドの巻き込みを抑制する傾向がある。
【0119】
揺変付与剤の中でも、取扱い性、成形性及びボイド性の観点から、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリマー、微粉末シリカ等のシリカ粒子が好ましく、形状保持性の観点から、微粉末シリカであることがより好ましい。
【0120】
長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーの塩としては、例えば、ANTI−TERRA−U100(ビックケミー・ジャパン株式会社商品名)が市販品として入手可能であり、不飽和ポリカルボン酸ポリマーとしては、例えば、BYK−P105(ビックケミー・ジャパン株式会社商品名)が市販品として入手可能である。
【0121】
微粉末シリカの体積平均粒子径は5nm以上100nm未満であることが好ましく、5nm〜50nmであることがより好ましい。
【0122】
微粉末シリカとしては、シリコーンオイル又はカップリング剤で表面を処理したシリカ粒子を用いてもよい。
シリカ粒子の表面を処理するためのカップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムジルコニウム化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、アルキルシランをカップリング剤として用いることが好ましい。
【0123】
シリコーンオイル又はカップリング剤で表面を処理した微粉末シリカとしては、体積平均粒子径が12nmで、ジメチルシランで表面処理をした「R974」(日本アエロジル株式会社商品名)、体積平均粒子径が12nmで、トリメチルシランで表面処理をした「RX200」(日本アエロジル株式会社商品名)、体積平均粒子径が12nmでジメチルシロキサンで表面処理をした「RY200」(日本アエロジル株式会社商品名)、体積平均粒子径が14nmでジメチルシロキサンで表面処理をした「R202」(日本アエロジル株式会社商品名)、体積平均粒子径が12nmでアミノシランで表面処理をした「RA200H」(日本アエロジル株式会社商品名)、体積平均粒子径が12nmでアルキルシランで表面処理をした「R805」(日本アエロジル株式会社商品名)、体積平均粒子径が12nmでメタクリロキシシランで表面処理をした「R7200」(日本アエロジル株式会社商品名)、体積平均粒子径が50nmでありフェニルシランで表面処理をした「YA050C−SP3」(株式会社アドマテックス商品名)等が市販品として入手可能である。
【0124】
本発明において、微粉末シリカの「体積平均粒子径」は、無機充填剤の体積平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
【0125】
本発明のアンダーフィル材は、揺変付与剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0126】
本発明のアンダーフィル材が揺変付与剤を含有する場合、揺変付与剤の含有率は、アンダーフィル材の全量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましい。揺変付与剤の含有率が0.1質量%以上であれば揺変付与剤の含有に期待される所期の効果が発揮され易くなり、揺変付与剤の含有率が20質量%以下であれば、アンダーフィル材の粘度変動が抑制され、成形性がより向上する傾向がある。
【0127】
(界面活性剤)
本発明のアンダーフィル材は、フィレット性を向上させる観点から必要に応じて界面活性剤を含有してもよい。
本発明において使用可能な界面活性剤は、電子部品装置の製造用途に用いられるアンダーフィル材において、一般的に使用されている非イオン性の界面活性剤であれば特に制限されるものではない。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン界面活性剤、アルキルアルカノールアミド界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤、アラルキル変性シリコーン界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン界面活性剤、ポリアクリル界面活性剤などが挙げられ、中でもポリエーテル変性シリコーン界面活性剤及びアラルキル変性シリコーン界面活性剤が、アンダーフィル材の表面張力低減に効果的である傾向にあるため好ましい。
これらの界面活性剤は、市販品として、BYK−307、BYK−333、BYK−377、BYK−323(ビックケミー・ジャパン株式会社商品名)等が入手可能である。
【0128】
更に、界面活性剤として、シリコーン変性エポキシ樹脂を添加することができる。シリコーン変性エポキシ樹脂はエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができる。シリコーン変性エポキシ樹脂は、室温(25℃)で液状であることが好ましい。ここでエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に少なくとも1個有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
これらのオルガノシロキサンとしては、東レ・ダウコーニング株式会社、商品名BY16−799、BY16−871、BY16−004、信越化学工業株式会社、商品名X−22−1821、KF−8010等が、市販品として入手可能である。
【0129】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したオルガノシロキサンの重量平均分子量は500〜5000の範囲であることが好ましく、1000〜3000の範囲であることがより好ましい。オルガノシロキサンの重量平均分子量が500以上であれば樹脂との相溶性が過剰に向上することが抑制され添加剤としての効果が発揮され易い傾向にある。オルガノシロキサンの重量平均分子量が5000以下であれば樹脂との相溶性が悪化せずシリコーン変性エポキシ樹脂の硬化物からの分離及び染み出しが発生し難く、接着性及び外観を損なわない傾向にある。
【0130】
シリコーン変性エポキシ樹脂を得るために用いるエポキシ樹脂としては、アンダーフィル材中の成分(A)に相溶するものであれば特に制限されるものではなく、電子部品用アンダーフィル材に一般的に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン変性エポキシ樹脂を得るために用いるエポキシ樹脂は、室温(25℃)で液状のものが好ましい。
【0131】
(イオントラップ剤)
本発明のアンダーフィル材は、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤を含有してもよい。
【0132】
本発明において使用可能なイオントラップ剤は、電子部品装置の製造用途に用いられるアンダーフィル材において、一般的に使用されているイオントラップ剤であれば特に制限されるものではない。イオントラップ剤としては、下記一般式(II−1)又は(II−2)で表される化合物等が挙げられる。
【0133】
Mg
1−xAl
x(OH)
2(CO
3)
x/2・mH
2O 一般式(II−1)
(一般式(II−1)中、xは0<x≦0.5であり、mは正数である。)
【0134】
BiO
x(OH)
y(NO
3)
z 一般式(II−2)
(一般式(II−2)中、xは0.9≦x≦1.1、yは0.6≦y≦0.8、zは0.2≦z≦0.4である。)
【0135】
イオントラップ剤は市販品として入手可能である。例えば、一般式(II−1)で表される化合物としては、協和化学工業株式会社の「DHT−4A」(商品名)が挙げられる。また、一般式(II−2)で表される化合物としては、東亞合成株式会社の「IXE500」(商品名)が挙げられる。
【0136】
また、上記以外のイオントラップ剤として、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等から選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。
イオントラップ剤は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
本発明のアンダーフィル材がイオントラップ剤を含有する場合、イオントラップ剤の含有率は、成分(A)の全量に対して、0.1質量%〜5.0質量%であることが好ましく、1.0質量%〜3.0質量%以下であることがより好ましい。また、イオントラップ剤の平均粒子径は0.1μm〜3.0μmであることが好ましく、最大粒子径は10μm以下であることが好ましい。
尚、イオントラップ剤の平均粒子径及び最大粒子径は、前記無機充填剤と同様の方法を用いて測定される。
【0138】
本発明のアンダーフィル材は、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、難燃剤、希釈剤などを必要に応じて使用することができる。
【0139】
<アンダーフィル材の製造方法>
本発明のアンダーフィル材は、上記各種成分を分散し混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法として、成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等を用いて混合及び混練し、必要に応じて脱泡することによって、本発明のアンダーフィル材を得ることができる。
【0140】
[電子部品装置の製造方法]
本発明の電子部品装置の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と称する)は、電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置において、電子部品における配線基板と対向する側の面及び前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方の面に、本発明のアンダーフィル材を付与する付与工程と、付与工程の後に、前記電子部品と前記配線基板とを接続部を介して接続し、且つ前記アンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有する。
【0141】
本発明の製造方法は、電子部品における配線基板と対向する側の面及び配線基板における電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に本発明のアンダーフィル材を付与した後で、電子部品と配線基板との接続部を介した接続とアンダーフィル材の硬化とを行う先塗布方式を適用した製造方法である。電子部品と配線基板との接続及びアンダーフィル材の硬化は、一括して行ってもよいし、別個に行なってもよい。製造工程の簡略化の観点からは、電子部品と配線基板との接続及びアンダーフィル材の硬化は一括して行うことが好ましい。
【0142】
本発明の製造方法は、先塗布方式を適用した電子部品装置の製造方法であり、付与工程において所定の組成を有する本発明のアンダーフィル材を用いることにより、アンダーフィル材の硬化時間の短縮が可能で、ボイドの発生が抑制され、且つ電子部品との接着性に優れることから、電気的な接続信頼性に優れる電子部品装置を製造することができる。この理由について、本発明者らは以下のように考える。
【0143】
すなわち、本発明者らが得た知見によれば、アンダーフィル材が(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含むことにより、先塗布方式を適用した電子部品装置の製造方法におけるアンダーフィル材の硬化時間が短縮され、ボイドの発生が抑制される傾向にある。
【0144】
一方、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を使用すると、アンダーフィル材が電子部品との接着性に劣る傾向がある。アンダーフィル材が電子部品との接着性に劣る傾向があると、電子部品装置の製造工程においてリフロー処理が行なわれた際にアンダーフィル材と電子部品との間に剥離が生じやすくなる傾向があり、その剥離箇所を起因として電子部品と配線基板との電気的な接続性が損なわれ、電気的な接続信頼性に優れる電子部品装置を製造することが難しくなる。
本発明においては、アンダーフィル材が、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物を含有する。かかる構成により、本発明においては、アンダーフィル材の硬化時間の短縮、それによるボイド発生の抑制及び電子部品との高接着性が達成される。これは、アンダーフィル材が、(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物を含有することにより、アンダーフィル材の硬化物の接着性が向上するためであると本発明者らは考えている。
【0145】
以下、本発明の製造方法が有する各工程について説明する。
【0146】
<付与工程>
本発明の製造方法における付与工程は、電子部品における配線基板と対向する面及び配線基板における電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方の面にアンダーフィル材を付与する工程である。
【0147】
付与工程におけるアンダーフィル材としては、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、(B)反応開始剤及び(C)無機充填剤を含有し、且つ(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物を含むアンダーフィル材が用いられる。
付与工程に用いるアンダーフィル材は、本発明のアンダーフィル材であり、その詳細については上述の通りである。
【0148】
配線基板は、基材上に接続用の電極を含む導体配線が形成されてなる。配線基板を構成する基材の種類は特に制限されず、FR−4(Flame Retardant−4)、FR−5(Flame Retardant−5)等の繊維基材を含む有機基板、繊維基材を含まないビルドアップ型の有機基板、ポリイミド、ポリエステル等の有機フィルム、アルミナ、ガラス、シリコン等の無機材料などを含む基材が挙げられる。尚、無機材料としては、シリコン等の半導体チップも含まれる。導体配線の種類は、特に限定されず、電子部品における配線基板に適用しうる導体配線を用いることができる。配線基板における導体配線は、セミアディティブ法、サブトラクティブ法等の手法により形成されていてもよい。
【0149】
電子部品は特に制限されず、樹脂等によってパッケージングされていない半導体チップそのもの、CSP(Chip Scale Package)、BGA(Ball Grid Array)等と呼ばれている半導体パッケージなどを用いることができる。
【0150】
配線基板は後記する接続工程において接続部を介して電子部品と接続される。
接続部の材質は特に制限されず、はんだ等に通常使用される材質から選択することができる。環境問題の観点から、Cuはんだ、Auはんだ、無鉛はんだ等を使用してもよい。バンプは電子部品側に形成されていても、基板側に形成されていてもよい。バンプと回路電極との接続には、Ag−Cu系はんだ、Sn−Cu系はんだ、Sn−Bi系はんだ等のはんだを使用してもよい。
【0151】
アンダーフィル材を配線基板又は電子部品に付与する方法は特に制限されない。例えば、エアーディスペンサー、ジェットディスペンサー、スクリュー型ディスペンサー、オーガータイプディスペンサー等のディスペンサーを用いる方法、注型を用いる方法、スクリーン印刷等の印刷を用いる方法などが挙げられる。アンダーフィル材を付与する際の巻き込みボイドを低減する観点からは、ディスペンサーを用いる方法が好ましい。
【0152】
アンダーフィル材を配線基板又は電子部品に付与する際の態様は特に制限されない。アンダーフィル材を配線基板に付与する場合は、電子部品の搭載位置の全体に付与する態様、電子部品の搭載位置に対応する四角形の対角線に沿った2本の線からなるクロス形状に付与する態様、1つのクロス形状に更に他のクロス形状を45°ずらして重ねた形状に付与する態様、電子部品の搭載位置の中心に一点で付与する態様等が挙げられる。信頼性の観点からアンダーフィル材のクリーピング等を抑制するためには、クロス形状又は1つのクロス形状に更に他のクロス形状を45°ずらして重ねた形状で付与することが好ましい。配線基板に基板電極が設けられている場合は、基板電極が設けられた箇所を含む電子部品の搭載位置にアンダーフィル材を付与することが好ましい。
【0153】
アンダーフィル材を配線基板又は電子部品に付与する際の温度は、アンダーフィル材の性質等に応じて選択することができる。アンダーフィル材及び基板表面の温度は、それぞれ25℃〜150℃であることが好ましく、吐出安定性の観点からは25℃〜100℃であることがより好ましい。
【0154】
ディスペンサーのニードル径は特に制限されず、アンダーフィル材を付与する際の気泡の巻き込みの程度及び吐出安定性を考慮して選択することが好ましい。具体的には、本発明の製造方法においてアンダーフィル材を吐出する場合には、0.1mm〜1.0mmの径のニードルを用いることが好ましく、0.2mm〜0.5mmの径のニードルを用いることがより好ましい。
【0155】
<接続工程>
本発明における接続工程は、付与工程の後に、電子部品と配線基板とを接続部を介して接続し、且つ本発明のアンダーフィル材を硬化する工程である。
【0156】
本発明の製造方法における接続工程は、より具体的には、電子部品と配線基板とを接続部を介して対向している状態で加圧して、電子部品と配線基板との間隙に本発明のアンダーフィル材を充填し、且つ電子部品と基板とを接続部を介して接触させる加圧工程と、電子部品と配線基板とが接続部を介して接触している状態で熱処理して、電子部品と配線基板とを接続部を介して接続し、且つ本発明のアンダーフィル材を硬化する熱処理工程と、を含むことが好ましい。
また、加圧工程及び熱処理工程以外に、接続工程は、露光工程、超音波、マイクロ波、ラジオ波等により衝撃を与える工程などの他の工程を含んでいてもよい。
以下、接続工程について、付与工程及び熱処理工程を含む態様を例に詳細に説明する。
【0157】
<<加圧工程>>
加圧工程は、電子部品と配線基板とが接続部を介して対向している状態で加圧して、電子部品と配線基板との間隙に本発明のアンダーフィル材を充填し、且つ電子部品と基板とを接続部を介して接触させる工程である。
【0158】
加圧工程において、電子部品と配線基板とが接続部を介して対向している状態で加圧して、電子部品と配線基板とを接続部を介して接触させる方法としては特に制限はない。電子部品と配線基板とを接続部を介して接触させる方法の例としては、フリップチップボンダーを使用する方法が挙げられる。
【0159】
加圧工程においては加熱が行なわれてもよい。加圧工程においては、加圧と加熱とが同時に行なわれてもよいし、加圧及び加熱のいずれか一方を先に開始してもよいし、加圧及び加熱のいずれか一方を先に終了してもよい。
【0160】
加圧工程におけるアンダーフィル材の温度(以下、適宜「充填温度」ともいう。)は、電子部品と配線基板との間隙にアンダーフィル材を充分に充填しうる粘度を維持しうる温度であれば特に限定されない。充填温度は、例えば、25℃〜150℃であり、40℃〜125℃であることが好ましく、50℃〜100℃であることがより好ましい。アンダーフィル材の充填温度が25℃以上であると、アンダーフィル材の流動性が充分に得られる傾向にある。アンダーフィル材の充填温度が150℃以下であると、アンダーフィル材の硬化反応の進行に伴う粘度の上昇が抑制されて充分な流動性を確保できる傾向にある。加圧工程におけるアンダーフィル材の充填温度は、アンダーフィル材の良好な流動性が得られる範囲であれば一定であっても、変化してもよい。
【0161】
加圧工程においては、アンダーフィル材が液状を維持できる粘度において、アンダーフィル材が増粘してもよい。ここで、アンダーフィル材が液状であるとは、アンダーフィル材の粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。ここで、アンダーフィル材の粘度の測定方法は上述の通りである。
【0162】
加圧工程において、電子部品と配線基板とに付与される圧力の大きさは、一般的なフリップチップの実装工程と同様に、バンプの数又は高さのばらつき、加圧による接続部又は接続部を受ける配線基板上の配線の変形量等を考慮して設定することができる。具体的には、例えば、接続部1個あたりが受ける荷重が0.01g〜100g程度になるように設定することが好ましい。
【0163】
<<熱処理工程>>
熱処理工程は、電子部品と配線基板とが接続部を介して接触している状態で熱処理して、電子部品と配線基板とを接続部を介して接続し、且つ本発明のアンダーフィル材を硬化する工程である。
【0164】
熱処理の方法は、特に制限されない。例えば、フリップチップボンダーと配線基板又は電子部品との接触部を加熱する方法、リフロー炉を用いる方法等が挙げられる。電子部品の位置ずれを起こし難いという観点からは、フリップチップボンダーと配線基板又は電子部品との接触部を加熱する方法が好ましい。
【0165】
熱処理工程は、電子部品と配線基板との接続部を介した接続を確保する観点から、接続部を構成する材料の融点以上であり、且つアンダーフィル材が熱硬化しうる温度で行われることが好ましい。すなわち、配線基板上の配線等と電子部品との間で接続部が形成され、且つアンダーフィル材が熱硬化して接続部の補強が可能となる温度で行われることが好ましい。
【0166】
熱処理(加熱)温度は、150℃〜300℃であることが好ましく、200℃〜280℃であることがより好ましく、220℃〜260℃であることが更に好ましい。この熱処理により、アンダーフィル材が硬化する。
【0167】
熱処理は、生産性の向上の観点からは、短時間で行われることが好ましい。具体的には、熱処理工程における昇温速度が10℃/秒以上であることが好ましく、20℃/秒以上であることがより好ましく、30℃/秒以上であることが更に好ましい。昇温速度の上限は特には制限されないが、一般に200℃/秒以下であってもよい。
【0168】
熱処理時間は、接続部を構成する材料及びアンダーフィル材に含有される成分の種類により異なり、配線基板上の配線等と電子部品との間で接続部が形成され、且つアンダーフィル材が熱硬化して接続部の補強が可能となる時間であれば特に制限はない。
【0169】
生産性の向上の観点からは、熱処理時間は、短時間であるほど好ましい。接続部がはんだである場合には、熱処理時間は60秒以下であることが好ましく、45秒以下であることがより好ましく、30秒以下であることが更に好ましい。銅−銅又は銅−金の金属接続の場合は、熱処理時間は30秒以下であることが好ましい。熱処理時間の下限は特には制限されないが、一般に0.1秒以上であってもよい。
【0170】
熱処理工程において、アンダーフィル材の硬化物中のボイドの発生を抑制する観点から、アンダーフィル材の200℃でのゲル化時間は5.0秒以下であることが好ましい。200℃でのゲル化時間の下限は特には制限されないが、一般に1秒以上であってもよい。
【0171】
アンダーフィル材の200℃でのゲル化時間は、JIS K6910(2007年度)又はISO 10082(1999)に準拠して測定される。具体的には、200℃の熱板上に0.5gのアンダーフィル材を滴下し、スパチュラで広がりすぎないようにかき混ぜる。滴下した後、アンダーフィル材の粘度が上がり、スパチュラを上に持ち上げたときに糸引き無くアンダーフィル材が切断されるまでの時間をゲル化時間とする。
【0172】
熱処理工程においては、上記の熱処理を行なった後に、必要に応じてアンダーフィル材の硬化を充分なものとするため、更に、100℃〜200℃の範囲で、0.1時間〜10時間の熱処理(後加熱処理)を行なってもよい。
【0173】
<<露光工程>>
接続工程は、必要に応じてアンダーフィル材の硬化をより充分なものとするため、加圧工程及び熱処理工程以外の他の工程として露光工程を含んでいてもよい。露光工程は、熱処理工程における熱処理と共に行なってもよいし、熱処理工程が終了した後に別工程として行なってもよい。
【0174】
露光工程における露光処理を熱処理工程における熱処理と共に行う場合、熱処理及び露光処理はこれらの処理の開始及び終了を同時としてもよいし、いずれか一方の処理を先に開始してもよいし、いずれか一方の処理を後に終了してもよい。
【0175】
露光工程における露光処理は、露光によりアンダーフィル材を硬化させうる処理であれば特に制限されない。露光処理に適用される光源、露光波長、露光時間等の各種の露光条件及び露光装置は、アンダーフィル材に含有される成分に応じて、適宜選択することができる。
【0176】
<<製造方法の実施形態の例>>
以下、本発明の製造方法の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
尚、以下に示す実施形態は、配線基板の電子部品と対向する側の面に本発明のアンダーフィル材を付与する態様の一例である。また、バンプは電子部品側に設けられており、当該バンプを介して電子部品と配線基板とが接続される。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0177】
図1は、先塗布方式による電子部品装置の製造方法の工程を説明する図である。
本実施形態では、
図1に示す通り、はんだバンプ(接続部)2を備える半導体チップ(電子部品)1、接続パッド3及びソルダーレジスト4を備える配線基板5並びにアンダーフィル材6を使用している。
【0178】
まず、
図1(a)に示すように、配線基板5の接続パッド3の設けられた側(配線基板5の半導体チップ1と対向する側)の面に、アンダーフィル材6を付与する(付与工程)。次いで、
図1(b)に示すように、半導体チップ1と配線基板5とをはんだバンプ2を介して対向させ、加圧することで、半導体チップ1と配線基板5との間隙にアンダーフィル材6を充填し、且つ半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とをはんだバンプ2を介して接触させる(加圧工程)。
【0179】
次いで、半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とがはんだバンプ2を介して加圧され接触している状態で熱処理を行って、半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とをはんだバンプ2を介して接続し、且つアンダーフィル材6を硬化する(熱処理工程)。
以上の工程を経ることで、本発明の電子部品装置が製造される。
【0180】
[電子部品装置]
本発明の製造方法により製造される電子部品装置及び本発明のアンダーフィル材を用いて製造される電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド及びフレキシブル配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材(配線基板)に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載し、必要な部分を本発明のアンダーフィル材で封止して得られる電子部品装置などが挙げられる。
【0181】
電子部品装置としては、特にリジッド及びフレキシブル配線板並びにガラス上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした半導体装置が対象となる。具体的な例としては、フリップチップBGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、COF(Chip On Film)等の半導体装置が挙げられる。本発明のアンダーフィル材は信頼性に優れたフリップチップ用のアンダーフィル材として好適である。
本発明のアンダーフィル材は、硬化時間を短縮することが可能であり、且つボイドの発生を抑制できることから、バンプのピッチ幅の狭いフリップチップボンディング用途にも好適に用いることができる。本発明のアンダーフィル材は、例えば、バンプのピッチ幅が10μm〜200μmのバンプ接続に特に好適である。
【0182】
本発明のアンダーフィル材の使用が特に好適なフリップチップの分野としては、配線基板と半導体素子を接続するバンプ材質が、Sn−Ag−Cuはんだ等の鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体素子である。従来の鉛はんだと比較して物性的に脆い鉛フリーはんだバンプ接続をしたフリップチップに対しても良好な信頼性を維持できる。
【実施例】
【0183】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0184】
[実施例1〜16及び比較例1〜3]
(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物
(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物
・アクリル化合物1:前記一般式(I−1)において、R
11がいずれもメチル基であり、R
12がいずれもエチレン基であり、pがいずれも4であり、qがいずれも1であり、R
13がヘキシレン基である化合物(新中村化学工業株式会社、商品名「UA−11」)
・アクリル化合物2:前記一般式(I−1)において、R
11がいずれもメチル基であり、R
12がいずれもイソプロピレン基であり、pがいずれも1であり、qがいずれも9であり、R
13がヘキシレン基である化合物(新中村化学工業株式会社、商品名「UA−13」)
・アクリル化合物3:理論分子量が1300であり、1分子中にウレタン結合を有する二官能アクリル化合物(新中村化学工業株式会社、商品名「UA−4200」)
・アクリル化合物4:理論分子量が2700であり、1分子中にウレタン結合を有する二官能アクリル化合物(新中村化学工業株式会社、商品名「U−200PA」)
・アクリル化合物5:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社、商品名「UA−306H」)
・アクリル化合物6:理論分子量が800であり、1分子中にウレタン結合を有する六官能アクリル化合物(新中村化学工業株式会社、商品名「U−6LPA」)
【0185】
その他のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物
・アクリル化合物7:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート(新中村化学工業株式会社、商品名「A−DCP」)
・アクリル化合物8:トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社、商品名「DCP」)
【0186】
・アクリル化合物9:ビスフェノールA型エチレンオキサイド変性ジアクリレート(新中村化学工業株式会社、商品名「ABE−300」)
・アクリル化合物10:ビスフェノールA型エチレンオキサイド変性ジアクリレート(日立化成株式会社、商品名「FA−321A」)
・アクリル化合物11:ビスフェノールA型エチレンオキサイド変性ジメタクリレート(日立化成株式会社、商品名「FA−320M」)
・アクリル化合物12:4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成株式会社、商品名「4−HBAGE」)
・アリルナジイミド化合物:ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン(丸善石油化学株式会社、商品名「BANI−M」)
【0187】
(B)反応開始剤
・反応開始剤:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ株式会社、商品名「Perkadox BC−FF」)
【0188】
(C)無機充填剤
・無機充填剤:体積平均粒子径0.5μm、最大粒子径5μm、表面をカップリング剤処理した球状シリカ粒子(株式会社アドマテックス、商品名「SE−2050−SEJ」)
【0189】
(その他の樹脂、硬化剤等)
・エポキシ樹脂:エポキシ当量160g/eqのビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社、商品名「YDF−8170C」)
・エポキシ硬化剤:無水酸当量234g/eqの環状酸無水物(三菱化学株式会社、商品名「YH306」)
・硬化触媒:2−エチル−4−メチルイミダゾール
【0190】
(その他の各種添加剤)
・フラックス剤:アジピン酸
・可とう剤:カルボキシ基末端ブタジエン−アクリロニトリル−メタクリル酸−ジビニルベンゼン共重合体(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社、商品名「CTBNX 1009SP」)
・カップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・揺変付与剤:体積平均粒子径12nmのシリカ粒子(日本アエロジル株式会社、商品名「R−805」)
【0191】
上記の成分をそれぞれ表1〜表3に示す質量部で配合し、三本ロール及びらいかい機にて混練分散した後、真空脱泡して、実施例及び比較例のアンダーフィル材を作製した。尚、表中の配合単位は質量部である。表1に示す無機充填剤の含有率は、アンダーフィル材の全質量に対する含有率(質量%)である。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【0195】
実施例及び比較例によって得たそれぞれのアンダーフィル材を、以下に示す各試験によって評価した。評価結果を表4〜表6に示す。
【0196】
(1)ゲル化時間
200℃の熱板上に0.5gのアンダーフィル材を滴下し、スパチュラで広がりすぎないようにかき混ぜた。滴下した後、アンダーフィル材の粘度が上がり、スパチュラを上に持ち上げた時に糸引き無くアンダーフィル材が切断されるまでの時間をゲル化時間(秒)とした。
【0197】
(2)粘度
レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社、商品名「AR2000」)を用い、25℃に保たれたアンダーフィル材について、せん断速度が5.0s
−1で測定したときの値を粘度(Pa・s)とした。尚、レオメーターとして、コーンプレート(直径40mm、コーン角0°)を装着したものを用い、温度25℃で測定した。
【0198】
(3)接着性
シリコンウエハ上にSiN膜を成膜し、その表面にアンダーフィル材を直径3mm高さ3mmに成形した試験片を作製し、ボンドテスター(DAGE社、商品名「DS100」)を用いて、ヘッドスピード50μm/sec、25℃の条件でせん断応力をかけ、試験片がSiN膜から剥離する強度(MPa)を測定した。測定値を接着性とした。
【0199】
(4)ボイド性
配線基板(サイズ:14mm×14mm×0.30mm、コア層:E−679FG(日立化成株式会社商品名)、ソルダーレジスト:AUS−308(太陽ホールディングス株式会社商品名)及び基板メッキ:Ni(5.0μm)+Pd(0.30μm)+Au(0.35μm))のチップ搭載部に、ディスペンサー(ニードル径0.3mm)を用いて、アンダーフィル材を1つのクロス形状にし、更に他のクロス形状を45°ずらして重ねた形状になるように約3mg塗布した。50℃に加熱したステージ上にアンダーフィル材を塗布した配線基板を置き、チップ(サイズ:7.3mm×7.3mm×0.15mm、バンプ:銅(高さ30μm)、はんだ(材質:SnAg、高さ:15μm)及びバンプピッチ:80μm、バンプ数:328)を搭載し、加重:7.5N、温度/時間:260℃/5秒の条件で熱圧着を行い、その後、165℃、30分の条件でアンダーフィル材を硬化することで半導体装置を得た。
【0200】
それぞれのアンダーフィル材について、上記の方法にて半導体装置を作製し、超音波探傷装置(日立建機株式会社、商品名「AT−5500」)を用いて観察を行い、ボイドの有無を、下記の4段階の評価基準にて区分けし、ボイド性とした。
−評価基準−
A:ボイド面積が全面積の1%以下
B:ボイド面積が全面積の1%を超え5%以下
C:ボイド面積が全面積の5%を超え20%以下
D:ボイド面積が全面積の20%を超える
【0201】
(5)耐リフロー性
上記方法にて作製した半導体装置を、120℃で12時間加熱乾燥した後、30℃、70%RHの条件下で192時間吸湿させた。その後、遠赤外線加熱方式のリフロー炉(予熱150℃〜180℃で50秒、ピーク温度:260℃、250℃以上の加熱時間40秒)中を3回通した後、超音波探傷装置を用いて観察を行った。その後、アンダーフィル材とチップ及び基板との剥離の有無並びにアンダーフィル材のクラックの有無を確認し、(不良パッケージ数)/(評価パッケージ数)を耐リフロー性とした。
【0202】
【表4】
【0203】
【表5】
【0204】
【表6】
【0205】
実施例1〜16はいずれも、(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、(B)反応開始剤及び(C)無機充填剤を含有し、(A)成分として(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合を有する化合物を含有するアンダーフィル材を使用している。
【0206】
表4〜表6に示される評価結果から以下のことが分かる。
実施例1〜16と、成分(A)を含まないアンダーフィル材を使用した比較例1を比較すると、実施例1〜16では、ゲル化時間が短く、硬化時間の短縮が可能であり、ボイドの発生が少ないことが分かる。これは実施例1〜16のアンダーフィル材が(A)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と(B)反応開始剤とを含有しているためであると考えられる。
【0207】
実施例1〜16と比較例2又は3を比較すると、実施例1〜16では、アンダーフィル材の接着性が高く、耐リフロー性が優れていることが分かる。これは実施例1〜16のアンダーフィル材が(A1)1分子中にエチレン性不飽和二重結合とウレタン結合とを有する化合物を含有しているためであると考えられる。
【0208】
また、実施例1〜9は実施例10〜15と比較すると優れた接着性を有する傾向にある。これは実施例1〜9がエポキシ基を有するアクリル化合物12を含有しているためであると考えられる。
また、実施例10〜12を比較すると、実施例12、実施例11、実施例10の順で接着性が向上している。これは、アンダーフィル材に含まれる(A2)アクリル化合物7の含有量が実施例12、実施例11、実施例10の順で多く、硬化物の硬化収縮性が向上したためであると考えられる。
【0209】
以上の結果から、本発明の製造方法は、本発明のアンダーフィル材が用いられることで、アンダーフィル材の硬化時間の短縮が可能であり、且つ電子部品との接着性に優れ、電気的な接続信頼性に優れる電子部品装置が得られる先塗布方式を適用した製造方法であることが分かる。また、本発明を適用して得られた電子部品装置は優れた電気的な接続信頼性を有することが分かる。