特許第6492645号(P6492645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492645
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20190325BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H05K7/20 D
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-263577(P2014-263577)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-122813(P2016-122813A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】市川 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】七條 聡
(72)【発明者】
【氏名】島津 武仁
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−244548(JP,A)
【文献】 特開2008−207221(JP,A)
【文献】 特開2011−235300(JP,A)
【文献】 特開2013−258399(JP,A)
【文献】 特開2007−335793(JP,A)
【文献】 特開2010−258403(JP,A)
【文献】 特開2004−327982(JP,A)
【文献】 特開2000−269392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が上面に載置された基板と、
放熱部材と、
前記基板の下面と前記放熱部材の上面とを接合する金属接合層とを含み、
前記放熱部材の上面の面積は、前記基板の下面の面積よりも大きく、
前記金属接合層は、前記基板の下面全体と接触するとともに、前記基板の下面よりも大きい面積を有し、
前記金属接合層の熱伝導率は前記放熱部材の熱伝導率よりも高く、
前記金属接合層の厚さが20〜200nmであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属接合層が、前記放熱部材の前記上面の全面を被覆していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子が、発光ダイオードまたはパワー半導体素子であり、前記金属接合層は、融点350℃以上の金属材料から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属接合層が、少なくとも、Au、Ag、Al、Cu、W、Si、Rh、Ruおよびそれらの合金からなる群から選択される金属を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属接合層が、AuまたはAu合金から成ることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属接合層が、前記基板の下面側に位置する第1の金属層と、前記放熱部材の上面側に位置する第2の金属層とから成ることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板は、ガラスエポキシ材料、樹脂材料およびセラミック材料から成る群から選択される1つから成り、
前記セラミック材料は、アルミナ、AlN、SiC、GaNまたはLTCCであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
1)基板の上面に半導体素子を載置する工程と、
2)前記基板の下面に第1の金属層を形成する工程と、
3)放熱部材の上面に、前記基板の下面より大きい面積を有する第2の金属層を形成する工程と、
4)前記第1の金属層と前記第2の金属層とを接触させてそれらを接合する工程と、を含み、
前記第1の金属層と前記第2の金属層とから成る金属接合層が、前記放熱部材の熱伝導率よりも高く、前記金属接合層の厚さが20〜200nmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体素子が、発光ダイオードまたはパワー半導体素子であり、
前記金属接合層は、融点350℃以上の金属材料から成ることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
工程2)および工程3)において、前記第1の金属層および前記第2の金属層は、スパッタリング法により成膜されることを特徴とする請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1の金属層と前記第2の金属層とが同じ金属材料から成り、
工程2)および工程3)は同一工程として行われることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記金属接合層が、少なくとも、Au、Ag、Al、Cu、W、Si、Rh、Ruおよびそれらの合金からなる群から選択される金属を含み、
工程2)、工程3)および工程4)は、真空チャンバ内で行われることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1の金属層の表面および前記第2の金属層の表面が、AuまたはAu合金から成り、
工程4)は大気中で行われることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記基板は、ガラスエポキシ材料、樹脂材料およびセラミック材料から成る群から選択される1つから成り、
前記セラミック材料は、アルミナ、AlN、SiC、GaNまたはLTCCであることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に放熱効率の高い半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力の半導体素子(例えば、車載用の半導体発光素子)を含む半導体部品では、使用時に半導体素子で発生する熱を効率よく放熱することが重要である。そこで、熱伝導率の高い材料から形成された放熱部材に半導体部品を取り付けて、放熱性を向上させている。
半導体部品において、半導体素子を載置する基板には、熱伝導性に優れたセラミック基板が利用できる(特許文献1〜3)。半導体部品を放熱部材に取り付ける際には、半導体部品のセラミック基板を放熱部材に接合する。その際の接合方法としては、例えば、はんだ(特許文献1、2)や、銀ペースト(特許文献3)を用いることが知られている。
また、複数の部材を接合する別の方法として、常温接合法が知られている(特許文献4)。常温接合法では、真空下で各部材の接合面に金属膜を形成し、その金属膜を互いに接触させることによって複数の部材を接合することができる。この常温接合法を、半導体部品と放熱部材との接合に使用することにより、放熱性能、熱拡散性能等が向上すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−194275号公報
【特許文献2】特開2013−055218号公報
【特許文献3】特開2010−166019号公報
【特許文献4】特開2008−207221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に開示された接合方法では、はんだや銀ペーストの熱伝導率が十分に高いとはいえず、半導体部品から放熱部材への放熱効率が十分ではなかった。
特許文献4に開示された常温接合法では、半導体部品と放熱部材とを、熱伝導率の高い金属材料によって接合するので、特許文献1〜3に比べると、半導体部品から放熱部材への放熱効率は高い。しかしながら、半導体素子の高出力化に伴う発熱量の増加により、放熱効率のさらなる向上が求められている。
そこで、本発明に係る実施形態は、半導体部品から放熱部材への放熱効率の高い半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る半導体装置は、半導体素子が上面に載置された基板と、放熱部材と、前記基板の下面と前記放熱部材の上面とを接合する金属接合層とを含み、前記放熱部材の上面の面積は、前記基板の下面の面積よりも大きく、前記金属接合層は、前記基板の下面全体と接触するとともに、前記基板の下面よりも大きい面積を有し、前記金属接合層の熱伝導率は前記放熱部材の熱伝導率よりも高いことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、
1)基板の上面に半導体素子を載置する工程と、
2)前記基板の下面に第1の金属層を形成する工程と、
3)放熱部材の上面に、前記基板の下面より大きい面積を有する第2の金属層を形成する工程と、
4)前記第1の金属層と前記第2の金属層とを接触させてそれらを接合する工程と、を含み、
前記第1の金属層と前記第2の金属層とから成る金属接合層が、前記放熱部材の熱伝導率よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る実施形態の半導体装置によれば、発光素子を載置する基板と放熱部材との接合に、放熱部材よりも熱伝導率の高い金属接合層を使用し、且つその金属接合層の面積を基板の面積より大きくすることにより、発光素子で発生した熱を金属接合層によって広げてから放熱部材に移動させることができるので、放熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置を、外部放熱部材に載置した状態を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す半導体装置および外部放熱部材の部分拡大上面図である。
図3図3は、図2のA−A線における半導体装置の概略断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る半導体装置の放熱経路を説明するための部分拡大断面図である。
図5図5は、実施の形態1に係る半導体装置の変形例を示す断面図である。
図6図6(a)〜(f)は、半導体装置に含まれる金属接合層の様々な態様を示す部分拡大断面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の別の変形例を示す断面図である。
図8図8(a)〜(c)は、半導体装置の製造工程を説明するための断面図である。
図9図9(a)、(b)は、半導体装置の製造工程を説明するための断面図である。
図10図10(a)、(b)は、半導体装置の製造工程を説明するための断面図である。
図11図11は、図6(a)〜(f)に図示した金属接合層を形成するための金属膜の積層の態様を示す部分拡大断面図である。
図12図12は、金属接合層の断面TEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」および、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分または部材を示す。
【0010】
<実施の形態1>
本実施の形態では、半導体素子が発光素子である半導体装置(即ち、半導体発光装置)を例にとって説明する。
図1〜3には、本実施の形態に係る半導体装置(半導体発光装置)1と、半導体装置1が載置される外部放熱部材(ヒートシンク)50とが図示されている。半導体発光装置1は、半導体部品(発光部品)10と、放熱部材(ヒートスプレッダ)20と、金属接合層30とを含んでいる。
【0011】
図2図3に示すように、発光部品10は、基板11と、その上面11aに載置された半導体素子(発光素子)12とを含んでいる。基板11としては、放熱性の良好な絶縁材料の本体に、発光素子12に通電するための金属配線を設けたものが使用できる。本実施の形態では、本体にセラミック材料を使用したセラミック基板が使用されている。
【0012】
ヒートスプレッダ20は、発光素子12で発生する熱を放熱するための板状部材であり、ヒートスプレッダ20単独で、またはヒートシンクと組み合わせて、放熱効率を向上させることができる。ヒートスプレッダ20の上面20aの面積は、基板11の下面11b全体の面積よりも大きくされている(図1図2参照)。なお、本実施の形態では、発光部品10を取り付ける放熱部材としてヒートスプレッダ20を例示しているが、ヒートシンク50を放熱部材として使用してもよい。その場合には、発光部品10は、ヒートスプレッダ20なしで、ヒートシンク50に直接取り付けられる。
【0013】
ヒートスプレッダ20の上面20aには、その上面20aの少なくとも一部を被覆する金属接合層30が設けられている。この金属接合層30により、発光部品10はヒートスプレッダ20に接合される。より詳細には、金属接合層30は、発光部品10の基板11の下面11bを、ヒートスプレッダ20の上面20aに接合する。金属接合層30の面積は、発光部品10の基板11の下面11bの面積より大きい。そして、発光部品10を金属接合層30上に配置する際には、金属接合層30の形成されている領域内に、基板11の下面11bが全て入るように配置される。これにより、基板11の下面11b全体が、金属接合層30に接触する。金属接合層30の熱伝導率は、ヒートスプレッダ20の熱伝導率よりも高い。
金属接合層30が上述の特徴を有することにより、半導体発光装置1の放熱効率を向上させることができる。
【0014】
放熱効率が向上する理由は定かではないが、以下のようなメカニズムによるものであると考えられる。
図4に示すように、発光素子12で発生した熱は、基板11の中を広がって金属接合層30に伝わり、さらにヒートスプレッダ20へと移動する。熱は、ヒートスプレッダ20のうち、基板11の直下領域20uに集中しやすい。放熱効率を高めるためには、直下領域20uよりも外側の領域(外縁領域20x)への熱伝導を促進することが有効である。
【0015】
本実施の形態に係る半導体発光装置1では、金属接合層30の面積が基板11の下面11b全体の面積より大きいので、金属接合層30の上に発光部品10を配置すると、金属接合層30の外周の少なくとも一部分は、基板11の外側に延在する(この延在する部分を「外延部分30x」と称する)。
基板11(例えば点P)から、ヒートスプレッダ20の外縁領域20x(例えば点P)までの放熱経路には、金属接合層30の外延部分30xを通らない第1の放熱経路Tと、外延部分30xを通る第1の放熱経路Tとがある。
第1の放熱経路Tでは、まず、点Pから、金属接合層30をその厚さ方向(−z方向)に通り抜けて、ヒートスプレッダ20の直下領域20uに進む(経路t1a)。その後に、ヒートスプレッダ20内を横方向(−x方向)に進んで、点Pに到達する(経路t1b)。
一方、第2の放熱経路Tでは、まず、点Pから金属接合層30に進んだ後、金属接合層30内をその厚さ方向と直交する方向(図4の−x方向)に進んで、外延部分30xまで達する(経路t2a)。その後、金属接合層30の厚さ方向(−z方向)に進んで、点Pに到達する(経路t2b)。
【0016】
この2つの放熱経路を比較すると、第1の放熱経路T1の経路t1aと第2の放熱経路Tの経路t2bは、いずれもヒートスプレッダ20内を、ほぼ同じ距離だけ、垂直下向き(−z方向)に進むので、熱伝導しやすさ(熱伝導性)に違いはない。
一方、第1の放熱経路T1の経路t1bと第2の放熱経路Tの経路t2aは、ほぼ同じ距離だけ、横方向(−x方向)に進むが、経路t1bは金属接合層30内を通り、経路t2aはヒートスプレッダ20を通るため、熱伝導性が異なってくる。上述したように、金属接合層30の熱伝導率がヒートスプレッダ20の熱伝導率よりも高いので、金属接合層30内を通る経路t2aのほうが、ヒートスプレッダ20内を通る経路t1bよりも、熱伝導性に優れている。
即ち、第2の放熱経路Tのほうが、第1の放熱経路Tよりも、放熱効率が高い。本実施の形態に係る半導体発光装置1は、金属接合層30が外延部分30xを備えており、且つ金属接合層30の熱伝導率がヒートスプレッダ20の熱伝導率よりも高いので、基板11からヒートスプレッダ20の外縁領域20xまでの間に、放熱効率の高い第2の放熱経路Tが形成される。これにより、外縁領域20xへの熱伝導が促進され、半導体発光装置1の放熱効率を向上することができる。
【0017】
図1図4に示す半導体発光装置1では、金属接合層30は、ヒートスプレッダ20の上面20aのうち、縁部20eを除く範囲に形成されている(つまり、上面20aの縁部20eは金属接合層30で覆われていない)。より好ましくは、図5に示す半導体発光装置2のように、ヒートスプレッダ20の上面20aの全面を金属接合層30で被覆する。これにより、金属接合層30の外延部分30xの面積がさらに広くなるので、半導体発光装置2の放熱効率をさらに向上することができる。
【0018】
金属接合層30の厚さは、1nm以上10μm以下であるのが好ましい。膜厚がこの範囲にあると、金属接合層30を通る放熱経路の放熱効率を高めることができ、且つ、基板11とヒートスプレッダ20との間の適切な結合強度を得ることができる。半導体発光装置1の生産性を考慮すると、厚さは20nm〜200nmであるのが好ましい。
【0019】
金属接合層30は、単一の金属膜から構成することができる(図6(a)参照)。また、金属接合層30は、複数の金属膜を積層して構成することもできる(図6(b)〜図6(f)参照)。複数の金属膜を含む金属接合層30は、さらに、奇数の金属膜を含む金属接合層30(図6(b)〜図6(c))と、偶数の金属膜を含む金属接合層30とがある(図6(d)〜図6(f))。
【0020】
図6(b)には、3層の金属膜30a、30b、30cから成る金属接合層30が示されている。この例では、基板11の下面11b側と、ヒートスプレッダ20の上面20a側に、厚さの厚い2層の金属膜30a、30cが設けられ、それらの間に厚さの薄い1層の金属膜30bが設けられている。この形態では、2層の金属膜30a、30cを、熱伝導率の高い金属材料(例えばAgなど)から形成し、1層の金属膜30bを、接合性が良好な高い金属材料(例えばAuなど)から形成することにより、熱伝導率が高く、且つ接合性の良好な金属接合層30を得ることができる。
【0021】
図6(c)には、同じく3層の金属膜30d、30e、30fから成る金属接合層30が示されている。この例では、基板11の下面11b側と、ヒートスプレッダ20の上面20a側に、厚さの薄い2層の金属膜30d、30fが設けられ、それらの間に厚さの厚い1層の金属膜30eが設けられている。この形態では、2層の金属膜30d、30fを、基板11およびヒートスプレッダ20と接合性の良好な金属材料(例えばCrなど)から形成し、1層の金属膜30eを、熱伝導率の高い金属材料(例えばAgなど)から形成することにより、熱伝導率が高く、且つ接合性の良好な金属接合層30を得ることができる。
【0022】
図6(d)には、2層の金属膜から成る金属接合層30が示されている。この例では、基板11の下面11b側の金属膜を第1の金属層31、ヒートスプレッダ20の上面20a側の金属膜を第2の金属層32と称する。この形態では、第1の金属層31、第2の金属層32の両方とも、熱伝導率と接合性がいずれも比較的良好な金属材料(例えばAuなど)から形成することにより、熱伝導率と接合性が比較的良好な金属接合層30を得ることができる。
【0023】
図6(e)には、4層の金属膜31a、31b、32c、32dから成る金属接合層30が示されている。この例では、基板11の下面11b側と、ヒートスプレッダ20の上面20a側に、厚さの厚い2層の金属膜(第1の金属膜31a、第4の金属膜32d)が設けられ、それらの間に厚さの薄い2層の金属膜(第2の金属膜31b、第3の金属膜32c)が設けられている。この形態では、第1の金属膜31a、第4の金属膜32dを、熱伝導率の高い金属材料(例えばAgなど)から形成し、それらの間の第2の金属膜31b、第3の金属膜32cを、接合性が良好で耐酸化性の高い金属材料(例えばAuなど)から形成することにより、熱伝導率が高く、且つ接合性の良好な金属接合層30を得ることができる。
図6(e)の金属接合層30は、基板11の下面11b側に設けた第1の金属層31を、2層の金属膜(第1の金属膜31a、第2の金属膜31b)から形成し、ヒートスプレッダ20の上面20a側に設けた第2の金属層32を、2層の金属膜(第3の金属膜32c、第4の金属膜32d)から形成し、その後に第2の金属膜31bと第3の金属膜32cとを接合することより形成することができる。
【0024】
図6(f)には、同じく4層の金属膜31e、31f、32g、32hから成る金属接合層30が示されている。この例では、基板11の下面11b側と、ヒートスプレッダ20の上面20a側に、厚さの薄い2層の金属膜31e、32hが設けられ、それらの間に厚さの厚い2層の金属膜31f、31gが設けられている。この形態では、2層の金属膜31e、32hを、基板11およびヒートスプレッダ20と接合性の良好な金属材料(例えばCrなど)から形成し、それらの間の2層の金属膜31f、31gを、熱伝導率の高い金属材料(例えばAgなど)から形成することにより、熱伝導率が高く、且つ接合性の良好な金属接合層30を得ることができる。
図6(f)の金属接合層30は、基板11の下面11b側に設けた第1の金属層31を、2層の金属膜31e、31fから形成し、ヒートスプレッダ20の上面20a側に設けた第2の金属層32を、2層の金属膜32g、32hから形成し、その後に金属膜31f、32gを接合することより形成することができる。
【0025】
なお、図6(a)〜図6(c)のような金属接合層30の形態と、図6(d)〜図6(f)のような金属接合層30の形態との相違は、主に、製造方法の相違に起因する。詳細は後述するが、図6(a)〜図6(c)のような金属接合層30は、基板11の下面11bに形成した金属膜と、ヒートスプレッダ20の上面20a側に形成した金属膜とを、真空下で接触させて接合することによって形成できる。一方、図6(d)〜図6(f)のような金属接合層30は、基板11の下面11bに形成した第1の金属層31と、ヒートスプレッダ20の上面20a側に形成した第2の金属層32とを、大気中(つまり、酸素含有雰囲気下)で接触させて接合することによって形成できる。
【0026】
なお、「金属接合層30の熱伝導率」とは、図6(a)のように金属接合層30が単一の金属膜から形成されている場合には、その金属膜を形成する金属材料の熱伝導率のことを意味する。金属接合層30が、複数の金属膜の積層体から形成される場合には、金属接合層30の熱伝導率は、金属接合層30全体の熱伝導率のことを意味する。よって、複数の金属膜のうちの1つが、熱伝導率の低い金属材料から形成されていたとしても、その他の金属膜が熱伝導率の高い金属材料から形成されていれば、金属接合層30全体としての熱伝導率を高くすることができる。
【0027】
また、本実施の形態では、「金属接合層30の熱伝導率はヒートスプレッダ20の熱伝導率よりも高い」と規定されている。この規定は、金属接合層30が複数の金属膜から形成されている場合には、金属接合層30全体としての熱伝導率が、ヒートスプレッダ20の熱伝導率よりも高いことを意図している。つまり、当該規定は、金属接合層30に含まれる全ての金属材料が、ヒートスプレッダ20の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有していることを意図するものではない。よって、複数の金属膜のうちの一部が、ヒートスプレッダ20よりも小さい熱伝導率を有する金属材料から形成されていたとしても、他の金属膜が、ヒートスプレッダ20よりも大きい熱伝導率を有する金属材料から形成されることにより、金属接合層30全体としてヒートスプレッダ20よりも高い熱伝導率を有する場合には、「金属接合層30の熱伝導率はヒートスプレッダ20の熱伝導率よりも高い」との規定を満たし、本実施の形態において金属接合層30として使用するのに何ら問題ない。
【0028】
複数の金属膜から成る金属接合層30全体の熱伝導率は、金属接合層30の熱抵抗の測定値から求めることができる。例えば、図3のような半導体装置1において、(1)基板11の上面11aから、ヒートスプレッダ20の上面20aまでの熱抵抗R1を測定し、(2)基板11の熱抵抗R2(規定値)を用いることにより、金属接合層30の熱抵抗Rm=R1−R2を求めることができる。また、本明細書においては、金属接合層30の厚さt30(m)を、金属接合層30の熱抵抗Rm(k/W)と、金属接合層30の総面積A(m2)で除すること(計算式:t30/(Rm×A))により金属接合層30全体の熱伝導率(W・m-1・K-1)を求めることができる。
【0029】
また、本明細書においては、複数の金属膜から成る金属多層膜の熱伝導率Tの計算式は、以下のように規定する。
熱伝導率Tαの金属αから成る金属層と、熱伝導率Tβの金属βから成る金属層とを、膜厚比a:bで積層した金属多層膜の熱伝導率Tは、以下の式(1)で求めることができる。
T=Tα×Tβ×(a+b)/(a×Tβ+b×Tα)・・・(1)
【0030】
なお、上述の式(1)は、以下の手順により求めた。
熱伝導率Tαの金属αから成る金属層と、熱伝導率Tβの金属βから成る金属層とを、膜厚比a:bで積層した金属多層膜の熱伝導率Tの計算式を検討する。
金属多層膜全体の熱抵抗Rmは、金属αの熱抵抗Rαと金属βの熱抵抗Rβを用いてRm=Rα+Rβとなる。これは、Rm=tα/(Tα×A)+tβ/(Tβ×A)・・・(1−1)と記載される。
(tα:金属αの厚み、tβ:金属βの厚み、A:金属多層膜の面積)
また、金属多層膜全体の熱伝導率Tは、T=t30/(Rm×A)・・・(1−2)の関係がある。
よって、上記(1-2)に、(1-1)を代入すると、T=t30/(tα/Tα+tβ/Tβ)となり、まとめると、T=Tα×Tβ×t30/(tα×Tβ+tβ×Tα)となる。
ここで、tαに膜厚a、tβに膜厚b、t30に膜厚a+bを代入すると、
T=Tα×Tβ×(a+b)/(a×Tβ+b×Tα)・・・(1)となる。
【0031】
なお、後述するように、金属接合層30が段差を有する場合(図10参照)、外延部分30xの厚さt32を「金属接合層30の厚さt30」とし、外延部分30xを含む金属接合層30の面積を「総面積A」とする。上述の式(1)で算出される熱伝導率は、図11(b)、(c)における第2の金属層32の熱伝導率に相当する。
【0032】
式(1)に具体的な数値を代入して、金属接合層30の熱伝導率を求める。図6(b)のように3層積層されている金属接合層30の熱伝導率を求める。2つの層(金属膜30a、30c)はAg(熱伝導率427W・m-1・K-1)から形成されており、それらの間の1つの層(金属膜30b)はAu(熱伝導率315W・m-1・K-1)から形成されている。金属膜30a、30cの膜厚を合計した膜厚と、金属膜30bの膜厚との比率は5:1とする(つまり、Agの膜厚がAuの5倍厚い)。
金属接合層30の熱伝導率Tの近似値は、
T=315×427×6/(1×427+5×315)=403.1W・m-1・K-1
となる。つまり、この金属接合層30は、Cu(398W・m-1・K-1)よりも熱伝導率が高い。よって、AgとAuから成る金属接合層30を、Cuから成る放熱部材と組み合わせて使用することができる。
【0033】
再び図1および図2を参照すると、半導体発光装置1をヒートシンク50に固定する際には、例えば半導体発光装置1のヒートスプレッダ20とヒートシンク50とにねじ穴を設けて、ねじで固定することもできる。この場合には、ヒートスプレッダ20とヒートシンク50との間の熱伝導性を高めるために、放熱グリース80等を介在させるのが好ましい。また、半導体発光装置1をヒートシンク50に固定する際には、はんだ付けすることもできる。
【0034】
金属接合層30に使用する金属材料としては、融点350℃以上のものが好ましい。半導体発光装置1をヒートシンク50にはんだ付けする場合、はんだリフロー(280〜340℃に加熱する)の際に金属接合層30が溶融するのを回避できるので、発光部品10とヒートスプレッダ20との接合不良等の発生を抑制することができる。
【0035】
再び図3を参照すると、本実施の形態に係る半導体発光装置1では、発光部品10は、発光素子12と、基板11の他に、波長変換部材13と光反射性成形体15とを含んでいてもよい。波長変換部材13は、発光素子12からの光を波長変換するための部材であり、例えば、青色発光を黄色光に変換する蛍光体を含有する板状部材を使用することができる。光反射性成形体15は、光を反射する材料(例えば、酸化チタン粒子などの光反射物質を含む白色の樹脂材料)から形成されている。光反射性成形体15で発光素子12の側面および波長変換部材13の側面を覆うことにより、横方向(x方向)に進む光を反射して、横方向への光の漏れを抑制することができる。
【0036】
また、図7に示す半導体発光装置3のように、別のタイプの発光部品210を使用することもできる。発光部品210は、基板11の上面11aに載置された発光素子12と、発光素子12の上面および側面を覆う波長変換層213と、発光素子12および波長変換層213を覆う樹脂成形体214と、を含んでいる。波長変換層213は、例えば、青色発光を黄色光に変換する蛍光体等を含有する材料から形成することができる。樹脂成形体214の表面は、凸状レンズのように半球状に成形されており、発光素子12からの光の配向を制御することができる。樹脂成形体214は、透光性樹脂材料から形成されている。
【0037】
次に図8図10を参照しながら、本実施の形態に係る半導体発光装置1の製造方法について説明する。
【0038】
<工程1)発光部品10の準備>
配線が設けられた基板11の上面11aに、発光素子12を載置する(図8(a)参照)。なお、発光素子12は、1つまたは複数(図8(a)では3つ)載置することができる。発光部品10が波長変換部材13および光反射性成形体15を含む場合には、それらを順次形成する。まず、発光素子12の上に、波長変換部材13を透明な接着材等で固定する(図8(b)参照)。次いで、発光素子12の側面および波長変換部材13の側面を、光反射性成形体15で覆う(図8(c)参照)。
【0039】
<工程2)第1の金属層31の形成>
スパッタリング法により、発光部品10の基板11の下面11bに、第1の金属層31を形成する(図9(a)参照)。まず、発光部品10をスパッタリング装置70の真空チャンバ71内に配置する。このとき、基板11の下面11bがスパッタリングターゲット72と対向するように、発光部品10の位置および向きを調節する。図9(a)では、スパッタリングターゲット72が真空チャンバ71の上側に配置されているので、発光部品10は、スパッタリングターゲット72の直下において、基板11の下面11bが上向きになるように配置される。なお、発光部品10を所定の位置および方向に保持するための保持部材73を用いてもよい。
【0040】
<工程3)第2の金属層32の形成>
スパッタリング法により、ヒートスプレッダ20の上面20aに、第2の金属層32を形成する(図9(b)参照)。このとき、第2の金属層32の面積が、少なくとも基板11の下面11bより大きい面積となるように、第2の金属層32を形成する。
まず、ヒートスプレッダ20をスパッタリング装置70の真空チャンバ71内に配置する。このとき、ヒートスプレッダ20の上面20aがスパッタリングターゲット72と対向するように、ヒートスプレッダ20の位置および向きを調節する。発光部品10への成膜と同様に、ヒートスプレッダ20は、スパッタリングターゲット72の直下において、ヒートスプレッダ20の上面20aが上向きになるように配置される。
なお、ヒートスプレッダ20を所定の位置および方向に保持するための保持部材74を用いてもよい。この図では、保持部材74は、ヒートスプレッダ20の上面20aの一部(例えば縁部20e)を押さえているため、保持部材74で押さえられた上面20aの縁部20eには、第2の金属層32が成膜されない。
【0041】
<工程4)金属層31、32の接合工程>
スパッタリング装置70の真空チャンバ71内において、発光部品10の基板11の下面11bに形成された第1の金属層31と、ヒートスプレッダ20の上面20aに形成された第2の金属層32とを、常温で接触させる(図10(a)参照)。真空チャンバ71内で成膜した後、そのまま真空下に置かれていた第1の金属層31および第2の金属層32は、表面エネルギーが高く、それらを常温で接触させるだけで原子拡散が生じて、互いを接合させることができる。この接合により、第1の金属層31と第2の金属層32との間の境界線がほぼ消失して、例えば図6(a)に示すような1層の金属膜から成る金属接合層30が形成される。
なお、第1の金属層31と第2の金属層32とを接触させる際には、発光部品10の基板11の下面11bが、ヒートスプレッダ20の上面20aに形成された第2の金属層32の所望の位置に配置されるように、発光部品10とヒートスプレッダ20とを位置合わせする。
【0042】
第1の金属層31および第2の金属層32が、耐酸化性に優れ、且つ拡散係数が大きい金属材料(例えばAuやAu合金)から形成されている場合には、それらの金属層31、32を大気中(酸素含有雰囲気下)で接合させることもできる。具体的には、第1の金属層31および第2の金属層32を真空チャンバ71内で成膜し、その後に発光部品10およびヒートスプレッダ20を真空チャンバ71から大気中に取り出す。そして大気中において、常温で、発光部品10の基板11の下面11bに形成された第1の金属層31と、ヒートスプレッダ20の上面20aに形成された第2の金属層32とを接触させる。これにより、第1の金属層31と第2の金属層32とを互いを接合させることができる。但し、大気中に取り出したことにより、第1の金属層31および第2の金属層32の表面エネルギーが低下するため、第1の金属層31と第2の金属層32との間の境界線は消失しない。そのため、例えば図6(d)に示すように、第1の金属層31と第2の金属層32とが識別可能な状態で、金属接合層30が形成される。
【0043】
各雰囲気下での接合の効果をまとめると、真空下で金属層31、32を接合すると、それら金属層31、32の間の接合力を高めることができる。
一方、大気中で金属層31、32を接合すると、接合の際の発光部品10とヒートスプレッダ20との位置合わせの操作がしやすい。よって、ヒートスプレッダ20に対する発光部品10の位置精度を高くすることが容易になり、不良品発生率の抑制、歩留まりの向上が期待できる。
【0044】
工程1)〜4)により、発光部品10とヒートスプレッダ20とを金属接合層30で接合した半導体発光装置1を得ることができる(図10(b)参照)。なお、上述の方法により形成された金属接合層30は、2つの厚さを有する。一方は、発光部品10の直下領域における、相対的に厚い部分の膜厚t33(第1の金属層31の膜厚t31と第2の金属層32の膜厚t32との合計)である。他方は、外延部分30xにおける、相対的に薄い部分の膜厚t32(第2の金属層32の膜厚t32と一致)である。このように厚さの異なる部分を有する金属接合層30の場合第2の金属層32の膜厚t32を、金属接合層30の厚さt30とする。主に放熱性に寄与するのが、金属接合層30の外延部分30xであることから、外延部分30xの厚さ(つまり、膜厚t32)を、金属接合層30の膜厚t30として取り扱うこととした。
【0045】
また、上述した図6(a)〜図6(f)に図示する金属接合層30は、工程2)第1の金属層31の形成工程、工程3)第2の金属層32の形成工程、および工程4)金属層31、32の接合工程の条件を以下のように変更することによって形成することができる。
【0046】
図6(a)、図6(d)の金属接合層30について)
まず、発光部品10の基板11の下面11bに第1の金属層31を形成し、ヒートスプレッダ20の上面20aに第2の金属層32を、それぞれ形成する(図11(a)参照)。このとき、第1の金属層31と第2の金属層32とを、同一の金属材料から形成する。次の金属膜の接合工程において、第1の金属層31と第2の金属層32とを真空下で接触させれば、図6(a)に示すように、単一の金属膜から成る金属接合層30が形成される。一方、第1の金属層31と第2の金属層32とを大気中で接触させれば、図6(d)に示すように、2層の金属層31、32から成る金属接合層30が形成される。
【0047】
図6(b)、図6(e)の金属接合層30について)
まず、発光部品10の基板11の下面11bに、第1の金属膜31a、第2の金属膜31bをこの順に積層して、第1の金属層31を形成する(図11(b)参照)。ヒートスプレッダ20の上面20aに、第4の金属膜32d、第3の金属膜32cをこの順に積層して、第2の金属層32を形成する(図11(b)参照)。このとき、第2の金属膜31bと第3の金属膜32cとを、同一の金属材料から形成する。次の金属膜の接合工程において、第1の金属層31と第2の金属層32とを真空下で接触させれば、第2の金属膜31bと第3の金属膜32cが接合して単一の金属膜30bとなり、図6(b)に示すように、3層の金属膜30a、30b、30cから成る金属接合層30が形成される。一方、第1の金属層31と第2の金属層32とを大気中で接触させれば、図6(e)に示すように、4層の金属膜31a、31b、32c、33dから成る金属接合層30が形成される。
【0048】
なお、図6(e)のような金属接合層30の場合、第1の金属膜31a、第4の金属膜32dを、熱伝導率の高い金属材料(Ag)から形成し、第2の金属膜31b、第3の金属膜32cを、接合性が良好な高い金属材料(Au)から形成することにより、熱伝導率が高く、且つ接合性の良好な金属接合層30を得ることができる。なお、外延部分30xでは、第2の金属層32の第3の金属膜32cが表面に露出する。第3の金属膜32cを形成するAuは、第4の金属膜32dを形成するAgに比べて反射率が低い。そこで、第3の金属膜32cを極めて薄くする(例えば20nm以下)ことにより、光反射における第3の金属膜32cの影響を極めて低くすることができる。これにより、外延部分30xを光反射部材として利用することができる。
【0049】
図6(c)、図6(f)の金属接合層30について)
まず、発光部品10の基板11の下面11bに、第1の金属膜31e、第2の金属膜31fをこの順に積層して、第1の金属層31を形成する(図11(c)参照)。ヒートスプレッダ20の上面20aに、第4の金属膜32h、第3の金属膜32gをこの順に積層して、第2の金属層32を形成する(図11(c)参照)。このとき、第2の金属膜31fと第3の金属膜32gとを、同一の金属材料から形成する。次の金属膜の接合工程において、第1の金属層31と第2の金属層32とを真空下で接触させれば、第2の金属膜31fと第3の金属膜32gが接合して単一の金属膜30eとなり、図6(c)に示すように、3層の金属膜30d、30e、30fから成る金属接合層30が形成される。一方、第1の金属層31と第2の金属層32とを大気中で接触させれば、図6(f)に示すように、4層の金属膜31e、31f、32g、33hから成る金属接合層30が形成される。
【0050】
図12は、図11(c)のように第1の金属層31、第2の金属層32を積層し、大気中で接合した場合の金属接合層30(つまり、図6(f)に示す金属接合層30)の断面TEM像である。第1の金属層31中の第1の金属膜31eと、第2の金属層32中の第4の金属膜32hは、Cr膜(膜厚0.5nm)である。第1の金属層31中の第2の金属膜31fと、第2の金属層32中の第3の金属膜32gは、Au膜(膜厚5nm)である。第2の金属膜31fと第3の金属膜32gとの間の界面は消失しておらず、2つの層として認識することができる。
【0051】
第1の金属層31と、第2の金属層32とを形成する順は変更することができる。例えば、先にヒートスプレッダ20の上面20aに、第2の金属層32を形成し、後で発光部品10の基板11の下面11bに、第1の金属層31を形成してもよい。
さらに、第1の金属層31と第2の金属層32とが同じ金属材料から成る場合には、それらの成膜を同一工程として行ってもよい。つまり、ヒートスプレッダ20と発光部品10を真空チャンバ71内に並べて配置した状態で、スパッタリングターゲット72をスパッタすることにより、第1の金属層31の成膜と第2の金属層32の成膜とを同一工程で行うことができる。第1の金属層31および第2の金属層32が複数の金属膜から形成されている場合(例えば、図11(b)、図11(c)など)も、複数の金属膜の層構成、各金属膜の膜厚等が同一であれば、それらの成膜を同一工程の中で同時に行うことができる。
【0052】
図5に示すように、ヒートスプレッダ20の上面20a全体に金属接合層30を形成する場合には、図9(b)に図示した保持部材74に代えて、ヒートスプレッダ20の上面20aの縁部20eを押さえない(つまり、ヒートスプレッダ20の上面20aを全く覆わない)形態の保持部材74を使用することができる。また、ヒートスプレッダ20が真空チャンバ71内で安定して配置できる場合には、保持部材74を使用せずに、ヒートスプレッダ20に第2の金属層32を形成してもよい。
【0053】
なお、上述の第1の金属層31および第2の金属層32の形成工程では、スパッタリング法により成膜している。しかしながら、スパッタリング法に限らず、既知の成膜方法(例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法など)を用いることもできる。スパッタリング法、真空チャンバを使用するCD法、真空蒸着法、イオンプレーティング法は、その後の真空下での金属層31、32の接合工程を行うことができる点で有利である。
【0054】
以下に、実施の形態1に係る半導体装置の各構成部材に適した材料を説明する。
【0055】
(基板11)
基板11は、絶縁性の本体に、金属配線を設けたものが使用される。基板11に適した材料としては、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックなどの絶縁材料が挙げられる。特に、放熱性に優れたセラミック材料が好適である。基板11に適したセラミック材料としては、例えば、アルミナ、AlN、SiC、GaN、LTCCなどが挙げられる。特に、加工性が良く、熱伝導率に優れたAlNが特に好適である。
【0056】
(半導体素子12)
本実施の形態に係る半導体装置に好適な半導体素子12としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、パワー半導体素子等が挙げられる。これらの半導体素子12は、使用時に発熱するため、放熱性に優れた本実施の形態に係る半導体装置に使用することにより、半導体素子の誤作動の低減や、長寿命化等の効果を奏し得る。
【0057】
(放熱部材20)
本明細書において、放熱部材とは、半導体素子が載置される基板よりも高い熱伝導率を有する部材のことを意味する。
放熱部材20には、ヒートスプレッダ、ヒートシンク等が含まれる。放熱部材20は、半導体部品10で発生した熱を外気に放熱するため、熱伝導率の高い材料から形成される。また、放熱効率を高めるために、フィンなどの突起を設けて表面積を増加させる場合もあり、ダイカスト用合金等の鋳造性のよい金属材料も好適である。使用できる具体的な材料としては、ADC12(アルミニウムダイカスト用Al-Si-Cu系合金)、Al、Cuなどの金属材料が挙げられる。
【0058】
(金属接合層30)
金属接合層30は、その全体として、ヒートスプレッダ20等の放熱部材よりも熱伝導率の高い部材である。よって、金属接合層30に好適な材料としては、放熱部材に使用される材料よりも熱伝導率の高い金属材料が挙げられる。具体的には、金属接合層30は、Au、Ag、Al、Cu、W、Si、Rh、Ruおよびそれらの合金からなる群から選択される金属を含むことが好ましく、AuまたはAu合金からなる金属を含むことがより好ましい。本明細書において「金属材料」には、金属、半金属、合金が含まれる。
具体的な金属材料の例としては、放熱部材としてADC12(熱伝導率96.3W/mk)を使用する場合には、ADC12より熱伝導率の高い金属材料、例えばAu、Ag、Al、Cu、W、Si、Rh、Ru等が好適である。放熱部材としてAl(熱伝導率237W・m-1・K-1)を使用する場合には、Alより熱伝導率の高い金属材料、例えばAu、Ag、Cu等が好適である。放熱部材としてCu(熱伝導率389W・m-1・K-1)を使用する場合には、Cuより熱伝導率の高い金属材料、例えばAg等が好適である。
【0059】
なお、上述したように、金属接合層30を複数の金属膜から形成する場合いは、そのうちの一部の金属膜については、放熱部材に使用される材料よりも熱伝導率の低い金属材料を使用することもできる。例えば、放熱部材としてCuを使用する場合に、Cuより熱伝導率の高いAg膜の表面に、Cuより熱伝導率の低いAu薄膜を積層して成る金属接合層30とすることもできる。
【0060】
以上、本発明に係るいくつかの実施の形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
例えば、実施の形態において、半導体装置として半導体発光装置を例にとって説明しているが、本発明の半導体装置には、半導体メモリ、パワー半導体等の様々な半導体装置が含まれるものと理解されるべきである。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
半導体素子が上面に載置された基板と、
放熱部材と、
前記基板の下面と前記放熱部材の上面とを接合する金属接合層とを含み、
前記放熱部材の上面の面積は、前記基板の下面の面積よりも大きく、
前記金属接合層は、前記基板の下面全体と接触するとともに、前記基板の下面よりも大きい面積を有し、
前記金属接合層の熱伝導率は前記放熱部材の熱伝導率よりも高いことを特徴とする半導体装置。
(態様2)
前記金属接合層が、前記放熱部材の前記上面の全面を被覆していることを特徴とする態様1に記載の半導体装置。
(態様3)
前記金属接合層の厚さが1nm以上10μm以下であることを特徴とする態様1または2に記載の半導体装置。
(態様4)
前記金属接合層は、融点350℃以上の金属材料から成ることを特徴とする態様1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
(態様5)
前記金属接合層が、少なくとも、Au、Ag、Al、Cu、W、Si、Rh、Ruおよびそれらの合金からなる群から選択される金属を含むことを特徴とする態様1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。
(態様6)
前記金属接合層が、AuまたはAu合金から成ることを特徴とする態様1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。
(態様7)
前記金属接合層が、前記基板の下面側に位置する第1の金属層と、前記放熱部材の上面側に位置する第2の金属層とから成ることを特徴とする態様1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置。
(態様8)
1)基板の上面に半導体素子を載置する工程と、
2)前記基板の下面に第1の金属層を形成する工程と、
3)放熱部材の上面に、前記基板の下面より大きい面積を有する第2の金属層を形成する工程と、
4)前記第1の金属層と前記第2の金属層とを接触させてそれらを接合する工程と、を含み、
前記第1の金属層と前記第2の金属層とから成る金属接合層が、前記放熱部材の熱伝導率よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(態様9)
前記金属接合層は、融点350℃以上の金属材料から成ることを特徴とする態様8に記載の製造方法。
(態様10)
工程2)および工程3)において、前記第1の金属層および前記第2の金属層は、スパッタリング法により成膜されることを特徴とする態様8または9に記載の製造方法。
(態様11)
前記第1の金属層と前記第2の金属層とが同じ金属材料から成り、
工程2)および工程3)は同一工程として行われることを特徴とする態様8〜10のいずれか1つに記載の製造方法。
(態様12)
前記金属接合層が、少なくとも、Au、Ag、Al、Cu、W、Si、Rh、Ruおよびそれらの合金からなる群から選択される金属を含み、
工程2)、工程3)および工程4)は、真空チャンバ内で行われることを特徴とする態様8〜11のいずれか1つに記載の製造方法。
(態様13)
前記第1の金属層の表面および前記第2の金属層の表面が、AuまたはAu合金から成り、
工程4)は大気中で行われることを特徴とする態様8〜11のいずれか1つに記載の製造方法。
【符号の説明】
【0061】
1、2 半導体装置(半導体発光装置)
10 半導体部品(発光部品)
11 基板
12 半導体素子(発光素子)
20 放熱部材(ヒートスプレッダ)
30 金属接合層
30x 外延部分
50 外部放熱部材
70 スパッタリング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12