(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る光源装置の実施態様1では、半導体レーザを有する光源と、前記光源からの光が入射する入射領域の少なくとも一部の領域に散乱体層及び蛍光体層を有し、前記光源からの光を透過させる蛍光体ホイールと、を備え、前記散乱体層が前記蛍光体層よりも光の入射側に配置されている。
【0012】
本実施態様によれば、散乱体層が蛍光体層よりも光の入射側に配置されているので、光源から出射された高密度の光が、直接蛍光体層に入射される虞がないので、蛍光体層の発光効率低下を効果的に抑制することができる。また、散乱体層及び蛍光体層が蛍光体ホイール上に設けられているので、更なる光学部材を配置する必要がなく、低コストで製造可能なコンパクトな光源装置を提供できる。更に、この散乱体層により、光源装置から出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを抑制することもできる。
なお、本実施態様においては、蛍光体ホイールに基板を有する場合も、基板を有さずに、散乱体層や蛍光体層を形成する部材が構造部材となる場合もあり得る。
【0013】
本発明に係る光源装置の実施態様2では、上記の実施態様1において、 前記蛍光体ホイールは基板を有し、前記散乱体層が前記基板よりも光の入射側に配置され、前記蛍光体層が前記基板よりも光の出射側に配置されている。
【0014】
本実施態様によれば、蛍光体ホイールが基板を有し、散乱体層が基板よりも光の入射側に配置され、蛍光体層が基板よりも光の出射側に配置されているので、確実に、蛍光体の波長変換効率が低下するのを抑制することができる。特に、散乱体層と蛍光体層との間が、基板の厚み寸法分だけ離間しているので、散乱体層と蛍光体層とが隣接している場合に比べて、散乱体層の散乱角度を小さく抑えることができ(つまり散乱を弱めることができ)、よって、光損失(エネルギーロス)を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る光源装置の実施態様3では、上記の実施態様2において、前記散乱体層及び前記蛍光体層が前記基板よりも光の出射側に配置されている。
【0016】
本実施態様によれば、散乱体層及び蛍光体層が基板よりも光の出射側に配置されているので、散乱体層からの散乱光を確実に蛍光体層へ入射させることができる。また、蛍光体層の後に、集光レンズを近接して配置することも可能なので、光の取出し効率を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る光源装置の実施態様4では、上記の実施態様1から3の何れかにおいて、前記蛍光体層は複数からなり、前記複数の蛍光体層は、異なる波長帯域の光を出力し、前記散乱体層が、前記複数の蛍光体層に対応して異なる散乱の強さを有する。
【0018】
本実施態様によれば、散乱体層が、異なる波長帯域の光を出力する複数の蛍光体層に対応して異なる散乱の強さを有するので、蛍光体層の出力光の波長帯域に応じた適切な散乱の強さを設定することができる。よって、光源の出力、散乱体層における光損失(エネルギーロス)、蛍光体層の波長変換効率等において最適な光源装置を提供できる。
【0019】
本発明に係る光源装置の実施態様5では、上記の実施態様4において、前記複数の蛍光体層として、赤色光を含む波長帯域の光を出力する第1の蛍光体層と、前記赤色光を含む波長帯域の光よりも短い波長帯域の光を出力する第2の蛍光体層とを備えており、前記第1の蛍光体層に対応する前記散乱体層における散乱が、前記第2の蛍光体層に対応する前記散乱体層における散乱よりも強くなっている。
【0020】
本実施態様によれば、赤色光を含む波長帯域の第1の蛍光体層に対応する散乱体層の散乱が、それより短い波長帯域の第2の蛍光体層に対応する散乱体層の散乱よりも強くなっているので、最も高密度の光に対する影響を受けやすい赤色光を含む波長帯域の第1の蛍光体層を保護して、波長変換効率の低下を抑制するとともに、それよりも短い波長帯域の第2の蛍光体層に対応する散乱体層について、光損失(エネルギーロス)を抑制することができる。
【0021】
本発明に係る光源装置の実施態様6では、上記の実施態様1から5の何れかにおいて、前記入射領域の他の一部の領域は前記散乱体層を有し、前記蛍光体層を有さないようになっている。
【0022】
本実施態様によれば、光源からの光が蛍光体層を透過しない領域においても、散乱体層を有することによって、光源からの高密度な光が、直接光源装置から出射されるのを防ぐととともに、光源装置から出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを適切に抑制することもできる。
【0023】
本発明に係る光源装置の実施態様7では、上記の実施態様1から6の何れかにおいて、前記散乱体層は、光の入射側もしくは光の出射側の少なくとも一方に誘電体多層膜を有する。
【0024】
本実施態様によれば、散乱体層は、光の入射側もしくは光の出射側の少なくとも一方に誘電体多層膜を有するので、所望の波長帯域の光を反射等によるロスを抑制して蛍光体層に入射させ、その他の波長帯域の光を入射させないようにすることができる。更に、蛍光体層から光源側に出射した蛍光体光を出射側に反射させることができ、これにより効率よく蛍光体光を利用することができる。
【0025】
本発明に係るプロジェクタの第1の実施形態では、上記の実施態様1〜7の何れかの実施形態の光源装置と、画像データに基づいて、前記光源装置から出射された複数の波長帯域の光を順次変調して画像を形成する光変調手段と、前記画像を拡大して投射する投射手段と、を備えている。
【0026】
本実施態様によれば、光源に用いられる蛍光体層の発光効率低下を効果的に抑制することができ、かつ低コストで製造可能なコンパクトなプロジェクタを提供できる。更に、出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを抑制することもできる。
次に、本発明の実施態様に係る光源装置及びこの光源装置を備えたプロジェクタについて、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0027】
(本発明の実施態様に係る光源装置の概要の説明)
はじめに、
図1(a)、(b)を用いて、本発明の実施態様に係る光源装置(蛍光体ホイール)の概要を従来の光源装置(蛍光体ホイール)と比較して説明する。
図1(a)、(b)には、蛍光体層34(134)を有する蛍光体ホイール30(130)であって、半導体レーザを有する光源からの光が入射して透過する基板36(136)を有する透過型の蛍光体ホイール30(130)が示されている。そして、蛍光体層34(134)が基板36(136)に対して光源と反対側、つまり出射側に配置されている。なお、
図1(a)、(b)では、光源からの光を点線で模式的に示してある。
【0028】
図1(b)に示す従来の蛍光体ホイール130においては、光源からの光が蛍光体ホイール130の基板136に入射し、基板136内を透過した光が、基板136の出射側に配置された蛍光体層134に入射する。そして、蛍光体層134で波長変換された光が出力される。このとき、半導体レーザを有する光源からの光は光密度が高く、蛍光体層134が高温となるため、波長変換効率が低下するという問題が起きる。更に、主に半導体レーザの特性により、光源装置から出射される光の色ムラや輝度ムラが生じたり、スペックルノイズが生じたりする問題も起きる。
【0029】
一方、
図1(a)に示す本発明の光源装置の一実施形態における蛍光体ホイール30においては、半導体レーザを有する光源からの光が、蛍光体ホイール30の入射側に配置された散乱体層32に入射し、散乱体層32によって高密度の入射光は散乱して、光密度が低くなった散乱光となって、基板36内を透過する。そして基板36内を透過した光が、基板36の出射側に配置された蛍光体層34に入射して、蛍光体層34で波長変換された光が出力される。
つまり、本実施形態では、散乱体層32によって、光源からの高密度な光ではなく、光密度が適度に低下された散乱光が蛍光体層34に入射するので、蛍光体層34の発光効率低下を効果的に抑制することができる。また、散乱体層32及び蛍光体層34が蛍光体ホイール30上に設けられているので、更なる光学部材を配置する必要がなく、低コストで製造可能なコンパクトな光源装置を提供できる。更に、この散乱体層32により、光源装置から出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを抑制することもできる。
【0030】
(本発明の実施態様に係る光源装置の各実施形態の説明)
次に、
図2〜7を用いて、本発明の実施態様に係る光源装置の各実施形態の説明を行う。
<
図2に示す実施形態の説明>
はじめに、
図2を用いて、本発明の光源装置の1つの実施形態の説明を行う。
図2に示すように、光源装置2は、光源10と、集光レンズ20と、蛍光体ホイール30と、受光レンズとを備える。光源10は、複数の半導体レーザ12及びそれに対応した複数のコリメートレンズ14が、筐体16の中に設けられている。また、蛍光体ホイール30は、集光レンズ20を介して入射する光源10からの光を透過させる透過型の蛍光体ホイールである。
【0031】
蛍光体ホイール30は、光を透過する材料からなる基板36を有し、基板36は、
図2では外周領域の光の入射領域のみを示しているが、例えば、
図6に示すように、駆動モータ50により回転軸52を中心に回転する円板状の形状を有する。更に詳細に述べれば、蛍光体ホイール30の回転軸は、集光レンズ20の光軸と略平行であり、蛍光体ホイール30の入射側及び出射側の表面が、集光レンズ20の光軸と略垂直になるように配置されている。
【0032】
本実施形態においては、集光レンズ20を介して光源10からの光が入射する基板36の入射領域の少なくとも一部の領域に、散乱体層32及び蛍光体層34を有しており、散乱体層32が蛍光体層34よりも光の入射側に配置されている。更に詳細に述べれば、基板36に対して、光の入射側(光源10に近い側)に散乱体層32が配置され、光の出射側(光源10から遠い側)に蛍光体層34が配置されている。
光源10からの光が入射する基板36の入射領域の少なくとも一部の領域とは、例えば、
図7に示すような、同心円状に形成された3つの領域のうちの1つの領域を例示することができる。つまり、青色光が入射すると赤色光を含む波長帯域の光を出力する赤蛍光体層34Rを有する領域や、青色光が入射すると緑色光を含む波長帯域の光を出力する緑蛍光体層34Gを有する領域を挙げることができる。ただし、これに限られるものではなく、任意の波長帯域の光が入射したときに、任意の波長帯域の光を出力する蛍光体層を備えることができる。
【0033】
次に、このような構成の光源装置2における光の進み具合を、
図2を用いて説明する。なお、
図2では、光の進み具合を矢印で模式的に示している。各半導体レーザ12から出射された光は、各々の半導体レーザ12に対応したコリメートレンズ14によって平行光となり、集光レンズ20へ入射する。そして、光は集光レンズ20で集光されて、蛍光体ホイール30へ入射する。
蛍光体ホイール30へ入射した光は、蛍光体ホイール30の入射側に配置された散乱体層32によって、散乱されて散乱光となり、基板36内を透過して蛍光体層34に入射する。そして、蛍光体層34内で所定の波長帯域へ波長変換された光が、受光レンズ40に入射する。受光レンズ40によって、再び平行光とされ、光源装置2から出力される。
【0034】
以上のように、本実施形態では、散乱体層32が蛍光体層34よりも光の入射側に配置されているので、光源10から出射された高密度の光が、直接蛍光体層34に入射される虞がないので、蛍光体層34の発光効率低下を効果的に抑制することができる。また、散乱体層32及び蛍光体層34が蛍光体ホイール36上に設けられているので、低コストで製造可能なコンパクトな光源装置2を提供できる。更に、この散乱体層32により、光源装置2から出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを抑制することもできる。
【0035】
更に、本実施形態では、蛍光体ホイール30が基板36を有し、散乱体層32が基板36よりも光の入射側に配置され、蛍光体層34が基板36よりも光の出射側に配置されているので、確実に、蛍光体の波長変換効率が低下することを抑制することができる。特に、散乱体層32と蛍光体層34との間が、基板36の厚み寸法分だけ離間しているので、散乱体層32と蛍光体層34とが隣接している場合に比べて、散乱体層における散乱角度を小さく抑えることができ(つまり散乱を弱めることができ)、よって、光損失(エネルギーロス)を抑制することができる。
以下に、光源装置2を構成する各部材の説明を行う。
【0036】
[光源10]
本実施形態の光源10として、主に青色光を出力する光源を例示することができる。その場合には、半導体レーザ12の波長は、370〜500nmの光を発することが好ましく、420〜500nmの光を発することが更に好ましい。
[蛍光体ホイール30の基板36]
光を透過させる透明な円板状の基板36の素材は、光の透過率が高い素材であれば任意の材料を用いることができ、例えば、ガラス、樹脂、サファイア等を使用することができ、なかでもサファイアが好ましい。
[散乱体層32]
散乱体層32としては、SiO
2やTiO
2、Ba
2SO
4等の粒子からなる散乱材を含む層を例示することができる。このような層を、コーティング等によって基板36の表面に設けることができる。また、入射面または出射面に凹凸面を設けることによって、散乱体層32を形成することもできる。なお、これに限られず、光を散乱する機能を有する層であれば、任意の材料、構成を採用することができる。また散乱体の粒径については0.1〜100μmの範囲が好ましく、さらに1〜50μmの範囲がより好ましい。
【0037】
本実施形態の散乱体層32は、用途に応じて、任意の散乱の強さを設定することができる。よって、光源からの光の強度、蛍光体層34の特性(例えば、光密度が高い光が入射したときの波長変換効率に対する影響度や視感度の強弱等)、散乱体層32及び蛍光体層34の間の距離等に応じて、最適な散乱の強さを定めることが好ましい。
例えば、散乱体層32及び蛍光体層34が離れて配置されている場合には、散乱体層32及び蛍光体層34が隣接している場合に比べて、散乱角度を小さくすることができる(つまり、散乱を弱めることができる)ので、光損失(エネルギーロス)を抑制することができる。
図2に示す実施形態においては、蛍光体の種類および蛍光体ホイール30の基板36の厚み寸法に応じて、散乱体層32の散乱の強さ、つまりは散乱の角度を定めることができる。
なお、
図2に示す実施形態においては、散乱体層32だけが示されているが、後述するように、散乱体層32の表面に誘電体多層膜を有することもできる。
【0038】
[蛍光体層34]
蛍光体層34として、上述のように光源から青色光が入射した場合に、赤色光を出力する蛍光体層や緑色光を出力する蛍光体層を例示することができる。このような層を、コーティング等によって基板36の表面に設けることができる。
赤色光を出力する蛍光体層34Rでは、約600〜800nmの波長帯域の赤色の蛍光を発生させることが好ましい。具体的な材料の一例としては、(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu、CaAlSiN
3:Eu、SrAlSiN
3:Eu、K
2SiF
6:Mnなどを挙げることができる。
緑色光を出力する蛍光体層34Gでは、約500〜560nmの波長帯域の緑色の蛍光を発生させることが好ましい。具体的な材料の一例としては、β−Si
6−ZAl
ZO
ZN
8−Z:Eu、Lu
3Al
5O
12:Ce、Ca
8MgSi
4O
16C
l2:Eu、Ba
3Si
6O
12N
2:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si
2O
2N
2:Euなどを挙げることができる。
【0039】
[受光レンズ40]
蛍光体ホイール30から出射した光は、受光レンズ40により平行光にされて、光源装置2から出射されるが、蛍光体の発光が略ランバーシアンであることから、受光レンズ40はできる限り高いNAであることが好ましい。
【0040】
<
図3に示す実施形態の説明>
次に、
図3を用いて、本発明の光源装置のその他の実施形態の説明を行う。
図3は、特に、散乱体層32、蛍光体層34及び基板36を有する蛍光体ホイール30のその他の実施形態を示す模式図である。その他の実施形態においても、蛍光体ホイール30は、駆動モータにより回転軸を中心に回転する円板状の基板36を有し、散乱体層32が蛍光体層34よりも光の入射側に配置されている。
図3(a)に示す実施形態では、散乱体層32及び蛍光体層34が、基板36よりも光の出射側(つまり光源から遠い側)に配置されている。つまり、光源10に近い側から、基板36、散乱体層32及び蛍光体層34の順に配置されている。散乱体層32及び蛍光体層34は、コーティング等によって設けることができる。なお、基板36の出射側に凹凸形状を設けて散乱体層32を形成することもできるが、この場合には、凹凸形状に対して蛍光体層34を適切に設けられるようにする必要がある。
【0041】
以上のように、
図3(a)に示す実施形態では、散乱体層32及び蛍光体層34が基板36よりも光の出射側に配置されているので、散乱体層32からの散乱光を確実に蛍光体層34へ入射させることができる。また、蛍光体層34の後に、集光レンズ40を近接して配置することも可能なので、光の取出し効率を向上させることができる。
【0042】
図3(b)に示す実施形態では、散乱体層32及び蛍光体層34が基板36よりも光の入射側(つまり光源に近い側)に配置されている。つまり、光源10に近い側から、散乱体層32、蛍光体層34及び基板36の順に配置されている。散乱体層32及び蛍光体層34は、コーティング等によって設けることができる。
以上のように、
図3(b)に示す実施形態では、散乱体層32及び蛍光体層34が基板36よりも光の入射側に配置されているので、散乱体層32からの散乱光を確実に蛍光体層34へ入射させることができる。
なお、
図3に示す実施形態においても、散乱体層32だけが示されているが、後述するように、散乱体層32の表面には誘電体多層膜を有することができる。
【0043】
<
図4に示す実施形態の説明>
次に、
図4を用いて、本発明の光源装置のその他の実施形態の説明を行う。
図4は、特に、誘電体多層膜を有する散乱体層32の実施形態を示す模式図である。
図4(a)に示す実施形態では、散乱体層32の光の入射側(つまり光源に近い側)に誘電体多層膜60が設けられている。なお、誘電体多層膜60は、散乱体層32の形状に合わせて同心円状に形成されている。
この場合、例えば、赤色光を出力する赤蛍光体層34Rに対応する場合には、青色光を透過し、赤色光を反射する誘電体多層膜60Rを形成するのが好ましい。同様に、緑色光を出力する緑蛍光体層34Gに対応する場合には、青色光を透過し、緑色光を反射する誘電体多層膜60Gを形成するのが好ましい。つまり、誘電体多層膜60は、光源からの青色光を透過し、かつそれぞれの蛍光体層34の出力光の色に応じた波長の光を反射する膜とすることで、光源からの光が散乱体層32の表面で反射されることなく入射できるようにするとともに、その他の波長帯域の光を入射させないようにすることができる。更に、蛍光体層34から光源10側に出射した蛍光体光が、散乱体層32を逆行して誘電体多層膜60Gに達したとき、受光レンズ40側に反射させることができ、これにより効率よく蛍光体光を利用することができる。
【0044】
図4(b)に示す実施形態では、散乱体層32の光の出射側(つまり光源から遠い側)に誘電体多層膜60が設けられている。なお、誘電体多層膜60は、散乱体層32の形状に合わせて同心円状に形成されている。
この場合においても、例えば、赤色光を出力する赤蛍光体層34Rに対応する場合には、青色光を透過し、赤色光を反射する誘電体多層膜60Rが形成される。同様に、緑色光を出力する緑蛍光体層34Gに対応する場合には、青色光を透過し、緑色光を反射する誘電体多層膜60Gが形成される。つまり、誘電体多層膜60は、青色光を透過し、かつそれぞれの蛍光体層34の出力光の色に応じた波長の光を反射する膜とすることで、光源からの光が蛍光体層34や基板36の表面で反射されることなく入射できるようにするとともに、その他の波長帯域の光を入射させないようにすることができる。更に、蛍光体層34から光源10側に出射した蛍光体光を、受光レンズ40側に反射させることができ、これにより効率よく蛍光体光を利用することができる。
【0045】
図4(c)に示す実施形態では、散乱体層32の光の入射側(つまり光源に近い側)及び光の出射側(つまり光源から遠い側)の両面に誘電体多層膜60が設けられている。なお、誘電体多層膜60は、散乱体層32の形状に合わせて同心円状に形成されている。
この場合には、上記の作機能を十分に発揮することができるので、光源からの光が、散乱体層32や蛍光体層34や基板36の表面で反射されることなく入射できるようにするとともに、その他の波長帯域の光を入射させないようにすることができる。更に、蛍光体層34から光源10側に出射した蛍光体光を、受光レンズ40側に反射させることができ、これにより効率よく蛍光体光を利用することができる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、散乱体層32は、光の入射側もしくは光の出射側の少なくとも一方に誘電体多層膜60を有するので、所望の波長帯域の光を、反射等によるロスを抑制して蛍光体層34に入射させ、その他の波長帯域の光を入射させないようにすることができる。更に、蛍光体層から光源側に出射した蛍光体光を出射側に反射させることができ、これにより効率よく蛍光体光を利用することができる。
なお、
図4(a)〜(c)に示す誘電体多層膜60を有する散乱体層32のうち、任意の散乱体層32を
図2及び
図3に示す任意の蛍光体ホイールに適用することができる。
【0047】
<
図5に示す実施形態の説明>
次に、
図5を用いて、本発明の光源装置のその他の実施形態の説明を行う。
図5は、特に、基板を有さない蛍光体ホイールの実施形態を示す模式図である。
図5(a)に示す実施形態では、散乱体層32が基板の代わりの構造部材の機能を果たし、その散乱体層32の出射側(つまり光源から遠い側)の表面に、蛍光体層34が設けられている。更に詳細に述べれば、散乱体層32の母材として、例えば、硬い材料を用いる場合にはガラス等を用い、比較的柔らかい材料を用いる場合にはシリコーン等を用いて、それらの母材に上記のような散乱材を含ませることによって、散乱体層32を形成する。散乱体層32は円板状の形状を有しているが、散乱材を含ませる領域は全体である必要はなく、少なくとも、光源からの光が入射する同心円状の入射領域に含ませればよい。また、蛍光体層34は、光源からの光が入射する領域に同心円状に形成されればよく、コーティング等で散乱体層32の出射側の表面に形成することができる。また、上記のように、散乱体層32の表面に誘電体多層膜を設けることもできる。
【0048】
図5(b)に示す実施形態では、蛍光体層34が基板の代わりの構造部材の機能を果たし、その蛍光体層34の入射側(つまり光源に近い側)の表面に、散乱体層32が設けられている。更に詳細に述べれば、散乱体層32の母材として、例えば、硬い材料を用いる場合にはガラス等を用い、比較的柔らかい材料を用いる場合にはシリコーン等を用いて、それらの母材に上記のような蛍光体を含ませることによって、蛍光体層34を形成する。蛍光体層34は円板状の形状を有しているが、蛍光体を含ませる領域は全体である必要はなく、少なくとも、光源からの光が入射する同心円状の入射領域に含ませればよい。また、散乱体層32は、光源からの光が入射する領域に同心円状に形成されればよく、コーティング等で蛍光体層34の入射側の表面に形成することができる。また、上記のように、散乱体層32の表面に誘電体多層膜を設けることもできる。
【0049】
図5(c)に示す実施形態では、蛍光体層34が基板の代わりの構造部材の機能を果たし、その蛍光体層34の入射側(つまり光源に近い側)の表面に凹凸形状を設けるような加工を施して、散乱体層32を形成している。更に詳細に述べれば、散乱体層32の母材として、例えばガラスを用い、それらの母材に上記のような蛍光体を含ませることによって、蛍光体層34を形成する。そして、この母材の入射側の面に、ブラスト等による物理的処理や、処理液による化学的な処理により、凹凸加工を施して、散乱体層32を形成している。
図5(a)〜(c)の何れの実施形態においても、基板を有さずに同様な機能を果たす蛍光体ホイールを実現できるので、製造コストを低減可能なコンパクトな光源装置を提供できる。
なお、本実施形態を別の表現で表せば、散乱体層の機能を果たす基板、蛍光体層の機能を果たす基板、または散乱体層及び蛍光体層の機能を果たす基板を有する蛍光体ホイールということもできる。
【0050】
<
図6に示す実施形態の説明>
次に、
図6を用いて、本発明の光源装置のその他の実施形態の説明を行う。
図6は、特に、誘電体多層膜及びフィルタを有する蛍光体ホイールの実施形態を示す模式図である。
図6には、蛍光体ホイール30の全体が示されており、回転軸52を介して駆動モータ50に接続されている。駆動モータ50として、例えば、ブラシレス直流モータを用いることができ、回転軸52と集光レンズ20の光軸とが略平行になるように配置されている。また、回転軸52に対して蛍光体ホイール30の面が略垂直となるように固定されている。これにより、蛍光体ホイール30の受光面を集光レンズ20の光軸と略垂直になるように配置することができる。
駆動モータ50の回転速度は、例えば、プロジェクタの光源装置として用いる場合であれば、再生する動画のフレームレート(1秒当たりのフレーム数。単位は[fps])に基づく回転速度となる。例えば、60[fps]の動画を再生可能とする場合、駆動モータ50(つまり蛍光体ホイール30)の回転速度は、毎秒60回転の整数倍に定めるとよい。
【0051】
図6に示す蛍光体ホイール30は、
図2に示す蛍光体ホイール30の入射側(つまり光源に近い側)に配置された散乱体層32の部分に、
図4(a)に示す入射側の面に誘電体多層膜60を有する散乱体層32を適用し、更に、蛍光体ホイール30の出射側(つまり光源から遠い側)の面に、フィルタ(誘電体多層膜)62が設けられている。つまり、光源10に近い側から、誘電体多層膜60、散乱体層32、基板36、蛍光体層34及びフィルタ(誘電体多層膜)62がこの順に配置されている。その他の点については、
図6に示す実施形態は、
図2に示す実施形態と同様なので、異なる点のみについて以下に説明を行う。
フィルタ(誘電体多層膜)62は、用途に応じて、所定の波長以下の光にのみを透過させるショートパスフィルタ、所定の波長以上の光にのみを透過させるロングパスフィルタ、及び所定の波長帯域の光にのみを透過させるバンドパスフィルタのうちの任意のフィルタを用いることができる。
【0052】
例えば、赤色光を出力する蛍光体層34に対応する場合には、フィルタ(誘電体多層膜)62として、赤色光を含む所望の波長帯域の光を透過し、青色光を含むその他の波長帯域の光を反射する誘電体多層膜(ロングパスフィルタ)が形成される。同様に、緑色光を出力する蛍光体層34に対応する場合には、フィルタ(誘電体多層膜)62として、緑色光を含む所望の波長帯域の光を透過し、青色光を含むその他の波長帯域の光を反射する誘電体多層膜(バンドパスフィルタ)が形成される。つまり、フィルタ(誘電体多層膜)62は、それぞれの蛍光体層34の出力光の色に応じた波長帯域の光を透過し、その他の波長帯域の光を反射する。よって、蛍光体層34の出力光以外の波長の光が混在して光源装置から出力されることを未然に防ぐことができるので、彩度の高い光を出力可能な光源装置を提供できる。また、フィルタ(誘電体多層膜)62により、蛍光体層34に戻された青色光は、蛍光体層34内で波長変換されるので、蛍光体層34における波長変換効率を高めることもできる。
【0053】
<
図7に示す実施形態の説明>
次に、
図7を用いて、本発明の光源装置のその他の実施形態の説明を行う。
図7は、特に、領域によって異なる波長帯域の光を出力する蛍光体ホイールの実施形態を示す模式図である。
図7(a)には、光源からの光の入射領域に、散乱体層32が同心円状に形成された蛍光体ホイール30の入射側の面を示し、
図7(b)には、同様に、蛍光体層34が同心円状に形成された蛍光体ホイール30の出射側の面を示す。
蛍光体ホイール30には、”R”で示す赤蛍光体領域、”G”で示す緑蛍光体領域、及び”B”で示す青透過領域が設けられている。赤蛍光体領域Rには、入射側に、散乱体層32Rが形成されており、出射側に、青色光が入射すると赤色光を含む波長帯域の光を出力する赤蛍光体層34Rが形成されている。同様に、緑蛍光体領域Gには、入射側に、散乱体層32Gが形成されており、出射側に、青色光が入射すると緑色光を含む波長帯域の光を出力する緑蛍光体層34Gが形成されている。青色透過領域Bには、入射側に、散乱体層32Bが形成されているが、出射側には蛍光体が形成さていない。
なお、何れの透過領域においても、散乱体層32の面に
図4に示すような誘電体多層膜を設けることができる。
【0054】
図7に示す蛍光体ホイール30では、赤蛍光体層34R及び緑蛍光体層34Gのように、蛍光体層は複数からなり、複数の蛍光体層は、異なる波長帯域の光を出力する。このとき、散乱体層32が、複数の蛍光体層に対応して異なる散乱の強さを有するようになっている。具体的には、赤蛍光体層34Rに対応する散乱体層32Rの散乱の強さと、緑蛍光体層34Gに対応する散乱体層32Gの散乱の強さとが異なっている。
つまり、蛍光体が出力する光の波長帯域によって、光密度が高い光が入射したときの波長変換効率の低下の影響度や、視感度が異なるので、それぞれの状況に応じた適切な散乱の強さを定めることができる。なお、散乱が強くなると、光損失(エネルギーロス)が大きくなるので、必要以上に強い散乱を適用する必要はない。
【0055】
以上のように、本実施形態では、散乱体層32が、異なる波長帯域の光を出力する複数の蛍光体層34に対応して異なる散乱の強さを有するので、各蛍光体層34の出力光の波長帯域に応じた適切な散乱の強さを設定することができる。よって、光源の出力、散乱体層における光損失(エネルギーロス)、蛍光体層の波長変換効率等において最適な光源装置を提供できる。
【0056】
特に、赤色光を含む波長帯域の光を出力する赤蛍光体層34Rに対応する散乱体層32Rの散乱の強さと、緑色光を含む波長帯域の光を出力する緑蛍光体層34Gに対応する散乱体層32Gの散乱の強さとを比較すると、散乱体層32Rにおける散乱が散乱体層32Gにおける散乱よりも強くなっている。これは、赤蛍光体層34Rでは、高密度の光が入射したときの波長変換効率の低下が顕著なので、光源からの光をより強く分散させることが好ましいからである。
このことは、緑蛍光体層34Gに対応する散乱体層32Gに限られず、赤色光を含む波長帯域の光よりも短い波長帯域の光を出力する任意の蛍光体層対応する散乱体層32にも、適用されることが好ましい。例えば、赤散乱体層32Rの散乱が、黄蛍光体層に対応する散乱体層の散乱よりも強くなるようにするのが好ましい。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、赤色光を含む波長帯域の赤蛍光体層34Rに対応する散乱体層32Rにおける散乱が、それより短い波長帯域の蛍光体層に対応する散乱体層(例えば、散乱体層32G)にける散乱よりも強くなっているので、最も高密度の光に対する影響を受けやすい赤色光を含む波長帯域の赤蛍光体層34Rを保護して、波長変換効率の低下を抑制するとともに、それよりも短い波長帯域の蛍光体層に対応する散乱体層について、光損失(エネルギーロス)を抑制することができる。
なお、何れの散乱体層においても、散乱体層32により、光源装置2から出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを抑制することができる。
【0058】
次に、
図7に示す青色透過領域Bでは、蛍光体が形成さていない。よって、光源からの青色光は、蛍光体層で減衰されることなく、光源装置から出力されることになり、そのままでは、高密度の光が光源装置から出力される虞がある。しかし、本実施形態では、入射側に散乱体層32Bが形成されているので、光を適切に散乱させることができ、高密度の光が光源装置から出力されることを防ぐことができる。更に、光源装置から出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを抑制することもできる。
つまり、光源からの光が蛍光体層を透過しない領域Bにおいても、散乱体層32Bを有することによって、光源からの高密度な光が、直接光源装置から出射されるのを防ぐととともに、光源装置から出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを適切に抑制することもできる。
【0059】
図7に示す実施形態においては、赤蛍光体層34Rに対応する散乱体層34Rの散乱の強さをS(R)、緑蛍光体層34Gに対応する散乱体層34Gの散乱の強さをS(G)、青色透過領域Bの散乱体層32Bの散乱の強さをS(B)とすると、
赤の散乱の強さS(R)> 青の散乱の強さS(B)> 緑の散乱の強さS(G)
の関係を有する。
このような散乱の強さの設定は、最も高密度の光に対する影響を受けやすい赤色光を含む波長帯域の赤蛍光体層34Rを保護する必要があるため、赤の散乱が最も強く、青色光は、蛍光体層で減衰されることないので、散乱体層32Bによる所定の減衰が必要であり、青の散乱が2番目に強くなっている。
なお、緑色光は、最も視感度が高い光なので、赤色光を含む波長帯域より短い波長帯域の蛍光体層に対応する散乱体層どうしの比較においては、緑蛍光体層に対応する散乱体層の散乱を、他の波長帯域の蛍光体層に対応する散乱体層の散乱よりも強くすることが好ましい。
【0060】
蛍光体ホイール30における、赤・緑蛍光体領域及び青色透過領域の割合は、任意に決定することができる。例えば、プロジェクタとして要求される白色の色度及び各蛍光体等の効率などから算出することができる。ここでは緑及び赤蛍光体領域緑をそれぞれ150度、青透過領域を60度としている。また、本実施形態では、緑・赤・青の3領域としているが、4つ以上の領域としてもよい。青色と黄色による白色光領域や、緑・赤・青の領域を増やしてそれぞれ2つずつとしてもよい
【0061】
(本発明のプロジェクタの説明)
次に、
図8を用いて、上述の実施形態で示した光源装置2を、いわゆる1チップ方式のDLPプロジェクタにおける光源装置として用いる場合を説明する。なお、
図8は、上述の実施形態で示した光源装置2を備えたプロジェクタ4の構成を示すための模式図であって、光源装置2やプロジェクタ4を上から見た模式的な平面図である。
図8において、光源装置2から出射された光は、光空間変調器であるDMD(Digital Micromirror Device)素子70で反射され、投射手段である投射レンズ80によって集光されて、スクリーンSCに投影される。DMD素子70は、スクリーンに投影された画像の各画素に相当する微細なミラーをマトリックス状に配列したものであり、各ミラーの角度を変化させてスクリーンへ出射する光を、マイクロ秒単位でオン/オフすることができる。
また、各ミラーをオンにしている時間とオフにしている時間の比率によって、投射レンズへ入射する光の階調を変化させることにより、投影する画像の画像データに基づいた階調表示が可能になる。
【0062】
なお、本実施形態では、光変調手段としてDMD素子を用いているが、これに限られるものではなく、用途に応じて、その他任意の光変調素子を用いることができる。また、本発明に係る光源装置2及びこの光源装置2を用いたプロジェクタ4は、上述した実施形態に限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明に含まれる。
【0063】
以上のように、本実施形態におけるプロジェクタ4は、上述の実施形態に示す光源装置2と、画像データに基づいて、光源装置2から出射された複数の波長帯域の光を順次変調して画像を形成する光変調手段70と、画像を拡大して投射する投射手段80とを備えている。
よって、本実施形態によれば、光源10に用いられる蛍光体層の発光効率低下を効果的に抑制することができ、かつ低コストで製造可能なコンパクトなプロジェクタ4を提供できる。更に、出射される光の色ムラ、輝度ムラ及びスペックルノイズを抑制することもできる。
【0064】
本発明の実施の形態を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。