特許第6492877号(P6492877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492877
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】酸化物焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/495 20060101AFI20190325BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C04B35/495
   C23C14/34 A
   C23C14/34 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-69912(P2015-69912)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188164(P2016-188164A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】原 慎一
(72)【発明者】
【氏名】尾身 健治
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/132872(WO,A1)
【文献】 特開平08−085866(JP,A)
【文献】 特開2004−059965(JP,A)
【文献】 特開2012−127005(JP,A)
【文献】 特開2005−256175(JP,A)
【文献】 特開2002−338354(JP,A)
【文献】 特開2005−133105(JP,A)
【文献】 特開2014−194072(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0126800(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102659405(CN,A)
【文献】 特開平02−302397(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/077198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体密度が95%以上であり、バルク抵抗が0.5Ωcm以上1000Ω・cm以下であり、ターゲット面の面積が500cm以上であり、X線回折でNbO相に帰属される酸化ニオブ(IV)が存在しないことを特徴とする酸化ニオブ焼結体。
【請求項2】
形状が円筒形であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ニオブ焼結体。
【請求項3】
形状が平板形であり、ターゲット面の面積が1000cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ニオブ焼結体。
【請求項4】
常圧焼結法で酸化ニオブ焼結体を製造する方法であって、昇温時の雰囲気を酸化性雰囲気とし、降温時の雰囲気を非酸化性雰囲気に切り替えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化ニオブ焼結体の製造方法。
【請求項5】
非酸化性雰囲気に切り替える温度が900℃〜1450℃であることを特徴とする請求項4に記載の酸化ニオブ焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率膜などの薄膜形成用スパッタリングターゲットに使用される酸化物焼結体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型ディスプレイや建材ガラスにおいて屈折率調整用として高屈折率膜が採用されつつある。しかし、高屈折率材料は酸素欠損のない化学量論組成において電気的に絶縁(10Ω・cm以上)であり、例えば高屈折率材料である酸化ニオブターゲットは、常圧焼結法ではDC放電が可能なターゲットの導電性が得られないため、高温、加圧、非酸化雰囲気条件下で焼結体を還元し、焼結体の導電性を高めるため、ホットプレス(HP)法で製造しなければならなかった(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、HP法を用いた場合、大型のターゲットの製造においては巨大なプレス機構が必要となり、現実的なプロセスではなく、ターゲットは小型で平板型などの単純形状に限定され、大面積や円筒型などの複雑形状を得ることができなかった。
【0003】
このため、特許文献3では、大気雰囲気中で焼成して得られた焼結体を熱間静水圧プレス(HIP)処理することで、焼結体の表面抵抗を下げ、HP法を使用しないため、大面積や複雑形状の焼結体が製造できる提案がなされている。しかし、HIP法は、高圧高温で処理するため高圧容器を含む高価で大掛りな装置が必要であり、多大なコストがかかり経済的ではないだけでなく、非酸化雰囲気の圧力を高め、酸素原子とニオブ原子の結合を弱めて還元するため、必要以上に酸化ニオブ焼結体が還元される問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−256175号公報
【特許文献2】特開2004−059965号公報
【特許文献3】特開2002−338354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、酸化ニオブからなる高密度でDC放電可能な酸化物焼結体を安価に提供することであり、HP法やHIP法によらず安価な設備で容易に得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、化学量論組成において電気的に絶縁である酸化ニオブ(V)からなる焼結体の導電性と製造プロセスについて鋭意検討を行った結果、常圧焼結法の手法を用いて高密度で導電性のある焼結体を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)焼結体密度が95%以上であり、バルク抵抗が1000Ω・cm以下であり、ターゲット面の面積が500cm以上であり、X線回折でNbO相に帰属される酸化ニオブ(IV)が存在しないことを特徴とする酸化ニオブ焼結体。
(2)形状が円筒形であることを特徴とする(1)に記載の酸化ニオブ焼結体。
(3)形状が平板形であり、ターゲット面の面積が1000cm以上であることを特徴とする(1)に記載の酸化ニオブ焼結体。
(4)常圧焼結法で酸化ニオブ焼結体を製造する方法であって、昇温時の雰囲気を酸化性雰囲気とし、降温時の雰囲気を非酸化性雰囲気に切り替えることを特徴とする酸化ニオブ焼結体の製造方法。
(5)非酸化性雰囲気に切り替える温度が900℃〜1450℃であることを特徴とする(4)に記載の酸化ニオブ焼結体の製造方法。
に関するものである。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、酸化ニオブからなる焼結体であって、焼結体密度が95%以上であり、バルク抵抗値が1000Ω・cm以下であり、ターゲット面の面積が500cm以上であり、X線回折でNbO相に帰属される酸化ニオブ(IV)が存在しないことを特徴とする酸化物焼結体である。
【0010】
本発明の焼結体密度は、相対密度で95%以上であることを特徴とする。焼結体密度が低いと、スパッタリングターゲットとして用いた場合にアーキング発生の頻度が高くなるため、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
【0011】
また、本発明の酸化物焼結体は、スパッタリングターゲットとして使用する場合、安定的にDC放電を行うため、バルク抵抗が1000Ω・cm以下であることが必要であり、250Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0012】
本発明の酸化物焼結体中の酸素欠損量は、焼結体の抵抗と相関が高く、バルク抵抗が低いことは、焼結体中の酸素欠損が多く存在することを意味する。酸素欠損が多いターゲットでは、スパッタリング時にスパッタガスとして酸素を多く導入する必要があるため、酸素の導入によって成膜レートが急激に低下するという問題が生じる。このため、バルク抵抗値の下限としては0.05Ω・cmが好ましく、より好ましくは0.5Ωcmで、さらに好ましくは1Ω・cmである。
【0013】
また、本発明の酸化物焼結体は、HP法を使用しないために、そのターゲット面の面積が500cm以上とすることが可能である。ここで言うターゲット面の面積とは、スパッタリングされる側の焼結体表面の面積を言う。なお、複数の焼結体から構成される多分割ターゲットの場合、それぞれの焼結体の中でスパッタリングされる側の焼結体表面の面積が最大のものを多分割ターゲットにおけるターゲット面の面積とする。焼結対の形状は特に制限はなく、平板形状、円筒形状のいずれであっても問題ない。平板形状の焼結体であれば、ターゲット面の面積が1000cm以上のものも製造可能であり、2000cm以上のものも製造可能である。
【0014】
さらに、本発明の酸化物焼結体の結晶相は、XRDで酸化ニオブ(IV)相が存在しないことを特徴とする。酸化ニオブ(V)(密度4.542g/cm)と酸化ニオブ(IV)(密度5.916g/cm)は密度差が大きく、酸化ニオブ(IV)が生成されると体積変化で焼結体中に内部応力やマイクロクラックが内在し、特に大型の焼結体では割れ易く、歩留りよく焼結体を製造することができない。また、このような焼結体を用いて、スパッタリングで高パワーを投入した場合、放電中に割れが発生し易く、成膜工程の生産性を低下させる原因となるため、好ましくない。
【0015】
なお、ターゲットへの投入負荷は、投入電力を平板型ターゲットではエロージョン面積で、円筒型ターゲットではプラズマが発生する面積で割った電力密度(W/cm)で規格化される。通常、平板型ターゲットの生産における一般的な電力密度は1〜5W/cm程度であるが、本発明においては10W/cm以上の高パワー条件においても割れのない、高品質なターゲット材となる酸化物焼結体が得られる。
【0016】
本発明の酸化ニオブ焼結体の製造方法は、酸化ニオブ(V)粉末を成形した後、得られた成形体を酸化性雰囲気で常圧焼結し、焼結体の冷却を非酸化性雰囲気とすることを特徴とする。酸化ニオブ(V)を常圧焼結する場合、非酸化性雰囲気では焼結体が低密度となるため、少なくとも昇温時(室温から焼成温度まで)は酸化性雰囲気とする。一方、降温時(焼成温度から室温まで)は焼結体のバルク抵抗に影響するため、焼結体の冷却は非酸化性雰囲気で行う。酸化ニオブ(V)は通常室温付近において電気的に絶縁の化学量論組成が安定相であるが、高温下では化学量論組成に対して酸素欠損を有する導電相が安定相であると考えられ、冷却にともない雰囲気から酸素が供給され、低温で安定の化学量論組成になると考えられる。すなわち、降温時の雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気に切り替えることで、高温安定の導電相が酸化するのを防止し、容易に導電性焼結体を得ることが可能となる。
【0017】
本発明の焼成に用いる酸化性雰囲気とは、3%以上の酸素濃度を有する雰囲気であり、コストの面から大気雰囲気が好ましい。また、冷却時に用いる非酸化性雰囲気とは、0.1%以下の酸素濃度を有する雰囲気であって、水素などの還元作用を有する還元雰囲気は含まない。これらの雰囲気は、大気や酸素、及び窒素やアルゴンなどのガスを適宜フローすることで調整することが出来る。
【0018】
さらに、非酸化性雰囲気に切り替える温度で焼結体のバルク抵抗を調整することが可能である。これは、高温下での酸素欠損量がその温度によって異なり、温度が高いほど酸素欠損量が多いためであると考えられ、処理温度(雰囲気の切替温度)が高いほど焼結体のバルク抵抗は低い値を示す。雰囲気の切り替えを行う場合、確実に行うため切替温度で保持してガス置換を行うことが好ましく、保持する時間は、焼成炉の大きさ、雰囲気を調整するガス流量によって適宜最適な時間を設定する。具体的には、酸素濃度計を用いて焼成の加熱前にガスの置換に必要な時間を確認する等により、保持時間を設定する。
【0019】
以下、本発明の酸化物焼結体の製造方法について、工程毎に説明する。
【0020】
(1)原料調整工程
原料粉末は酸化ニオブ(V)粉末を用いる。原料粉末の純度は99.9%以上が好ましく、より好ましくは99.99%以上である。不純物が含まれると、焼成工程における異常粒成長の原因となる。
【0021】
原料粉末は成形性の改善のため、圧密、粉砕や造粒処理することが好ましい。圧密、粉砕処理としては特に限定されるものではないが、ジルコニア、アルミナ、ナイロン樹脂等のボールやビーズを用いた乾式、湿式のメディア撹拌型ミルや機械撹拌式ミル等の方法が例示される。具体的には、ボールミル、ビーズミル、アトライタ、振動ミル、遊星ミル、ジェットミル、二軸遊星撹拌式混合機等が挙げられる。湿式法のボールミルやビーズミル、アトライタ、振動ミル、遊星ミル、ジェットミル等を用いる場合には、粉砕後のスラリーを乾燥する必要がある。この乾燥方法は特に限定されるものではないが、例えば、濾過乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等が例示でき、乾燥と同時に造粒することもできる。
【0022】
最終的に得られる酸化ニオブ(V)粉末としては、BET比表面積が4〜15m/gのものを使用することが好ましい。BET比表面積が4m/g未満であると焼結体密度が上がり難く、15m/gを超えると成形性が悪化し、凝集等により粉末の取り扱いも困難になる。なお、成形性を考慮して、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー、メチルセルロース、ワックス類、オレイン酸等の成形助剤を原料粉末に添加しても良い。
【0023】
(2)成形工程
成形方法は、原料粉末を目的とした形状に成形できる成形方法を適宜選択することが可能であり、特に限定されるものではない。プレス成形法、鋳込み成形法、射出成形法等が例示できる。
【0024】
成形圧力は成形体にクラック等の発生がなく、取り扱いが可能な強度を有する成形体であれば特に限定されるものではないが、成形密度は可能な限り高めた方が好ましい。そのために冷間静水圧プレス(CIP)成形等の方法を用いることも可能である。CIP圧力は充分な圧密効果を得るため1ton/cm以上が好ましく、さらに好ましくは2ton/cm以上、とりわけ好ましくは2〜3ton/cmである。
【0025】
(3)焼成工程
次に得られた成形体を少なくとも昇温時(室温から焼成温度まで)は酸化性雰囲気で常圧焼結し、焼結体の降温時の雰囲気を非酸化性雰囲気に切り替える。昇温時の酸化性雰囲気は、3%以上の酸素濃度を有する雰囲気であり、降温時に用いる非酸化性雰囲気とは、0.1%以下の酸素濃度を有する雰囲気であって、窒素やアルゴンなどのガスをフローすることで調整することが出来る。酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気への切替温度は、目標とする焼結体のバルク抵抗に応じて設定することができるが、DC放電可能なスパッタリングターゲットを得るためには、900℃〜1450℃が好ましい。切替温度での保持時間は焼成炉の大きさや流量によって適宜設定されるが、0.5〜5時間程度で雰囲気の切替を完了するように設計した方が、生産性の面で好ましい。焼成設備としては、電気炉、ガス炉及びマイクロ波炉等が例示できる。焼成温度は1150〜1450℃とすることが好ましい。焼成温度が1150℃未満では高密度化が不十分となるおそれがあり、1450℃を超える温度では焼結体の異常粒成長などが顕著となり、焼結体密度が低下するおそれがある。
【0026】
なお、水分やバインダーを含む成形体の場合、特に大型の成形体では水分やバインダー成分が揮発する際に、急激な体積膨張を伴うと成形体が割れることがある。このため、水分やバインダー成分が揮発している温度領域、例えば100〜400℃の温度域においては昇温速度を20〜100℃/時間とすることが好ましい。
【0027】
(4)ターゲット化工程
得られた焼結体は、平面研削盤、円筒研削盤、旋盤、切断機、マシニングセンター等の機械加工機を用いて、板状、円状、円筒状等の所望の形状に研削加工する。さらに、必要に応じて無酸素銅やチタン等からなるバッキングプレート、バッキングチューブにインジウム半田等を用いて接合(ボンディング)することにより、本発明の焼結体をターゲット材としたスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0028】
本発明によれば従来から知られた常圧焼結法を利用して焼結体を製造できるため、大型のターゲットを製造することが可能となる。平板型スパッタリングターゲットの場合、ターゲット面の面積1000cm以上の大型の焼結体を作製することができ、さらに複雑な形状である円筒型スパッタリングターゲットも作製することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の酸化ニオブ焼結体は高密度でDC放電可能な導電性を有し、大型スパッタリングターゲットに利用することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における各測定は以下のように行った。
(1)焼結体の密度
焼結体の相対密度は、JIS R 1634に準拠して、アルキメデス法によりかさ密度を測定し、真密度で割って相対密度を求めた。焼結体の真密度は、4.542(g/cm)を用いた。
(2)X線回折試験
鏡面研磨した焼結体試料の2θ=20〜70°の範囲のX線回折パターンを測定した。
走査方法 :ステップスキャン法(FT法)
X線源 :CuKα
パワー :40kV、40mA
ステップ幅:0.01°
(3)抵抗率の測定
焼結体の任意の部分より切り出し、厚み方向に切断した断面の中心で測定した10サンプルの平均値を測定データとした。
試料サイズ:10mm×20mm×1mm
測定方法:4探針法
測定装置:ロレスタHP MCP−T410(三菱油化製)
(4)スパッタリング評価
得られた平板形状の焼結体を101.6mmΦ×6mmt(円筒形状の焼結体は外径148mm×内径136mm×長さ254.1mm)に加工した後、無酸素銅製のバッキングプレート(バッキングチューブ)にインジウムハンダによりボンディングしてスパッタリングターゲットとした。このターゲットを用いて投入パワーを変化させてスパッタリングを行い、DC放電の安定性およびアーキング計測の評価を行なった。
(スパッタリング条件)
ガス :アルゴン+酸素(3%)
圧力 :0.6Pa
電源 :DC
投入パワー:500W(6.2W/cm、14.0W/cm
900W(11.1W/cm
放電時間 :各120min
アーキング計測条件(しきい電圧):スパッタ電圧−50V。
【0031】
(実施例1)
BET比表面積9.74m/gの酸化ニオブ(V)粉末を3ton/cmの圧力で冷間静水圧プレス(CIP)成形を行い、約390mm×770mm×12mmtの成形体を作製した。
【0032】
次にこの成形体をアルミナセッターの上に設置して、抵抗加熱式電気炉内に設置し、以下の条件で焼成を実施した。焼成は焼成温度にて保持完了後、焼成雰囲気を大気雰囲気から窒素雰囲気に変更するために窒素フローを実施し、炉内を窒素雰囲気にした。
(焼成条件)
昇温速度 :100℃/hr
昇温雰囲気 :大気雰囲気
焼成温度 :1400℃
焼成時間 :3hr
降温速度 :100℃/hr
雰囲気切替温度での保持時間:1hr
降温雰囲気 :窒素雰囲気
焼結体サイズ323mm×637mm×10mmt(2057cm)の割れのない焼結体が得られた。焼結体特性及びスパッタリング評価結果を表1に示す。
【0033】
実施例2〜5)
焼成条件の降温時における雰囲気切り替え温度を変更した以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0034】
(実施例6)
成形体サイズを約250×600×12mmtとした以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0035】
(実施例7)
成形体サイズを約400×1300×12mmtとした以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0036】
(実施例8)
酸化ニオブ(V)粉末のBET比表面積を4.23m/gとした以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0037】
(実施例9)
成形体サイズを外径180mm×内径157mm×長さ300mmの円筒形状に変更した以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0038】
(実施例10)
成形体サイズを外径180mm×内径157mm×長さ300mmの円筒形状に変更した以外は、実施例4と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
焼成温度にて保持完了後、焼成雰囲気を大気雰囲気から変更しなかった以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0040】
(比較例2)
焼成条件の昇温雰囲気を窒素雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製した。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価の結果を表1に示す。
【0041】
(比較例3)
比較例1と同様の方法で作製した焼結体をアルミナセッターの上に設置して、熱間静水圧プレス(HIP)装置内に設置し、以下の条件でHIP処理を実施した。
(HIP処理条件)
昇温速度 :100℃/hr
昇温雰囲気:アルゴン雰囲気
圧力 :2000気圧
加熱温度 :1200℃
加熱時間 :3hr
降温速度 :100℃/hr
降温雰囲気:アルゴン雰囲気
焼結体サイズ323mm×637mm×10mmt(2057cm)の割れのない焼結体が得られた。焼結体の焼結体特性及びスパッタリング評価結果を表1に示す。
【0042】
(比較例4)
BET比表面積9.74m/gの酸化ニオブ(V)粉末をカーボン製のホットプレス用型(150mm×640mm)に充填し、以下の条件で焼成した。このときのホットプレス圧力は50kg/cmとした。
(焼成条件)
昇温速度 :100℃/hr
昇温雰囲気:真空
焼成温度 :1400℃
焼成時間 :3hr
降温速度 :100℃/hr
降温雰囲気:真空
型と同等のサイズの焼結体が得られたが、割れが生じていた。焼結体の焼結体特性を表1に示す。
【0043】
【表1】