特許第6493217号(P6493217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493217
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 127/18 20060101AFI20190325BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190325BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20190325BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C09J127/18
   C09J11/06
   C09J4/00
   C09J5/06
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-546626(P2015-546626)
(86)(22)【出願日】2014年10月31日
(86)【国際出願番号】JP2014079118
(87)【国際公開番号】WO2015068659
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年8月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-229229(P2013-229229)
(32)【優先日】2013年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077849
【弁理士】
【氏名又は名称】須山 佐一
(72)【発明者】
【氏名】船木 篤
(72)【発明者】
【氏名】杉山 徳英
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−057811(JP,A)
【文献】 特開昭57−059972(JP,A)
【文献】 特開平07−062313(JP,A)
【文献】 特開平08−259703(JP,A)
【文献】 特開昭53−125491(JP,A)
【文献】 特開2012−017431(JP,A)
【文献】 特開平08−134422(JP,A)
【文献】 特表2010−539295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量(Mw)が6×10〜3×10であり、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマーと、ラジカル発生剤と、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物とを含む接着剤であって、
前記含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレンに由来する構造単位及びプロピレンに由来する構造単位を少なくとも含み、前記テトラフルオロエチレンに由来する構造単位に対する前記プロピレンに由来する構造単位の含有比(P/TFE)が、質量基準で0.2〜1.0である接着剤
【請求項2】
揮発性成分の含有率が、50質量%以下である請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
金属接着用である請求項1または2記載の接着剤。
【請求項4】
第一の部材と第二の部材との間に、請求項1〜のいずれか1項記載の接着剤を配置して積層体を得る工程と、
得られた積層体を加熱処理する工程と、を含む第一の部材と第二の部材の接着方法。
【請求項5】
第一の部材と第二の部材との間に、請求項1〜のいずれか1項記載の接着剤を配置して積層体を得る工程と、
得られた積層体を加熱処理して第一の部材と第二の部材とが接着された接着体を得る工程と、を含む接着体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と接着性に優れる接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車・車輛産業分野、船舶産業分野、航空・宇宙産業分野、土木・建築分野などを初めとして幅広い分野で金属部材等の接合に構造用接着剤が用いられている。構造用接着剤として、エポキシ系樹脂をベースとしエラストマー等で変性又は複合された硬化型エポキシ接着剤は上記の分野で広く活用されている。しかし構造物の使用形態から接着部に熱が加わり高温にさらされる場合、従来公知の硬化型エポキシ接着剤では耐熱性が不充分であった。そこで硬化型エポキシ接着剤の耐熱性向上が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、耐熱性に優れる樹脂として含フッ素ポリマーが知られているが、一般的には充分な接着性を得ることが困難である。これに関連して含フッ素ポリマーの接着性を改良して接着剤に適用する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、パーフルオロアルキルジヨーダイドの存在下で、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の共重合を行って得られる両末端にヨウ素原子が結合したポリマーを、トリアリルイソシアヌレート等の共存下にパーオキサイド架橋させることにより、硬化物が形成可能とされている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−163474号公報
【特許文献2】特開2004−256820号公報
【特許文献3】特公昭61−12924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
接着剤の用途の多様化に伴い、従来公知の耐熱性接着剤よりも、更に優れた耐熱性と接着性とを有する接着剤が求められている。しかしながら、特許文献1に記載の接着剤では、例えばスポット溶接と接着剤とを併用した工法(ウェルドボンド工法)に用いられる場合、スポット溶接温度の上昇に伴う耐熱性の要求を必ずしも満足するものではなかった。また、特許文献2に記載の接着剤では、接着性と耐熱性の点で、更なる改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、耐熱性と接着性に優れる接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
本発明の第一の態様は、重量平均分子量(Mw)が6×10〜3×10であり、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマーと、ラジカル発生剤とを含む接着剤である。 本発明の第二の態様は、第一の部材と第二の部材との間に、前記接着剤を配置して積層体を得る工程と、得られた積層体を加熱処理する工程と、を含む第一の部材と第二の部材の接着方法である。
本発明の第三の態様は、第一の部材と第二の部材との間に、前記接着剤を配置して積層体を得る工程と、得られた積層体を加熱処理して第一の部材と第二の部材とが接着された接着体を得る工程と、を含む接着体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性と接着性に優れる接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「工程」の語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
<接着剤>
本発明の接着剤は、重量平均分子量(Mw)が6×10〜3×10であり、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー(以下、単に「含フッ素ポリマー」ともいう)の少なくとも1種と、ラジカル発生剤の少なくとも1種とを含む。
接着剤は、特定の重量平均分子量を有し、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマーと、ラジカル発生剤とを含むことで、優れた耐熱性及び接着性を示す。接着剤は、特に金属との接着性に優れ、金属同士の接着において特に優れた耐熱性及び接着性を示す。
【0012】
含フッ素ポリマー
接着剤に含まれる含フッ素ポリマーの重量平均分子量(Mw)は6×10〜3×10である。重量平均分子量が6×10未満では、充分な接着性が得られない傾向がある。また重量平均分子量が3×10を超えると、接着剤の粘度が上昇して作業性が低下する傾向がある。含フッ素ポリマーの重量平均分子量は、接着性と作業性の観点から、6×10〜2.5×10であることが好ましく、8×10〜2.5×10であることがより好ましく、8×10〜2×10であることがさらに好ましく、1.4×10〜2×10であることが最も好ましい。なお、含フッ素ポリマーがVdFに由来する構造単位およびHFPに由来する構造単位を含む重合体の場合、その接着性や作業性の観点からして、該重量平均分子量が8×10以上であることが特に好ましい。
【0013】
含フッ素ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、接着性と耐熱性の観点から、1.00〜1.40であることが好ましく、1.00〜1.35であることがより好ましい。分子量分布がこの範囲であると耐熱性及び接着性がより向上する傾向がある。
【0014】
含フッ素ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、通常用いられるGPCを用いて測定することができる。具体的には以下のようにして、東ソー社製のHLC−8220GPC等を用いてGPCを測定することができる。カラムとしては、東ソー社製のTSKguardcolum MP(XL)(内径6mm、長さ4cm)1本とTSKgel MultiporeHXL−M(内径7.8mm、長さ30cm)2本を直列に繋げたものを用いることができる。含フッ素ポリマーをテトラヒドロフランで希釈して1.0〜1.5質量%溶液としたものを測定試料とし、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、1ml/minの速度で、カラムオーブン及びインレットオーブンの温度を40℃として溶離させる。示差屈折率検出部のポラリティーをマイナスにして検出してGPCを測定する。含フッ素ポリマーの重量平均分子量と数平均分子量は、ポリメチルメタクリレート分子量換算で算出される。
【0015】
含フッ素ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量(以下、まとめて単に分子量ともいう)は、常法により制御して調整することができる。具体的には例えば、後述する含フッ素ポリマーの製造方法において、仕込むヨウ素化合物の量を少なくすることで分子量を大きくすることができる。また逆に仕込むヨウ素化合物の量を多くすることで分子量を小さくすることができる。
【0016】
含フッ素ポリマーは、両末端にヨウ素原子を有し、少なくとも1つのフッ素原子を有する含フッ素モノマー(以下、単に「含フッ素モノマー」ともいう)に由来する構造単位を少なくとも1種含む重合体であれば特に制限はされない。ここで含フッ素モノマーに由来する構造単位とは、含フッ素ポリマーに含まれる部分構造であって、当該含フッ素モノマーが他のモノマーと重合反応することで形成される部分構造を意味する。また、両末端にヨウ素原子を有するとは、モノマーの重合性基によって形成される主鎖の両端のそれぞれに存在する炭素原子にヨウ素原子が結合していることを意味する。
含フッ素ポリマーは、両末端のそれぞれにヨウ素原子を1つずつ有し、主鎖に少なくとも1つのフッ素原子を有する直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーとは、含フッ素ポリマーを構成するモノマーが有する重合性基から形成される部分構造が直鎖状であることを意味し、モノマーの重合性基以外の部分構造に由来する側鎖が存在してもよい。
【0017】
含フッ素ポリマーは、単一種の含フッ素モノマーを重合して得られるホモポリマーであっても、2種以上のモノマーを重合して得られる共重合体であってもよい。含フッ素ポリマーが共重合体の場合、共重合体を形成するモノマーの少なくとも1種が少なくとも1つのフッ素原子を有していればよい。
【0018】
含フッ素モノマーは、少なくとも1つのフッ素原子と重合性基(好ましくは、エチレン性不飽和基)を有していれば、特に制限はされない。含フッ素モノマーの具体例としては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEともいう)、フッ化ビニリデン(以下、VdFともいう)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPともいう)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEともいう)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン等を挙げることができる。これらのうち、PAVEとしては下記一般式(I)で示される化合物を挙げることができる。
CF=CFOR (I)
式中、Rは、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基若しくはω−ヒドロパーフルオロアルキル基又はポリ(パーフルオロアルキレンオキシ)フルオロアルキル基を示す。ポリ(パーフルオロアルキレンオキシ)フルオロアルキル基は下記一般式(Ia)で示されることが好ましい。
−(RO) (Ia)
式中、Rは炭素数1〜4のパーフルオロアルキレン基を示し、Rは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。pは1〜3の数を示す。pが2以上の場合、複数存在するRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
含フッ素ポリマーは、フッ素原子を含まないモノマーに由来する構造単位を含んでいてもよい。フッ素原子を含まないモノマーは、含フッ素モノマーと共重合可能であれば特に制限はされない。フッ素原子を含まないモノマーとして具体的には、エチレン(以下、Eともいう)、プロピレン(以下、Pともいう)、ブテン等の炭素数2〜4のオレフィン類を挙げることができる。
【0020】
含フッ素ポリマーは、接着性と耐熱性の観点から、TFE、VdF、HFP及びPAVEからなる群より選択される1種以上のモノマーに由来する構造単位を含む重合体であることが好ましく、TFE、VdF、HFP及びPAVEからなる群より選択される2種以上のモノマーに由来する構造単位を含む重合体であることがより好ましく、VdFに由来する構造単位及びHFPに由来する構造単位を含む重合体であることが更に好ましい。また、TFEに由来する構造単位及びPに由来する構造単位を含む重合体も好ましい。
含フッ素ポリマーが、VdFに由来する構造単位及びHFPに由来する構造単位を含む場合、VdFに由来する構造単位に対するHFPに由来する構造単位の含有比(HFP/VdF)は、接着性と耐熱性の観点から、質量基準で0.4〜1.0であることが好ましく、0.5〜0.8であることがより好ましく、0.6〜0.7であることが更に好ましい。含フッ素モノマーがTFEに由来する構造単位及びPに由来する構造単位を含む場合、TFEに由来する構造単位に対するPに由来する構造単位の含有比(P/TFE)は、質量基準で0.2〜1.0であることが好ましく、0.3〜0.4であることが更に好ましい。
含フッ素ポリマーの組成は、NMR等公知の方法で測定してもよく、重合開始後に連続的に仕込む混合ガスモノマーの組成と等しいとみなしてもよい。
なお、重合開始前に仕込んだ各モノマーの組成および各モノマーの反応性比に基づいて、生成する含フッ素ポリマーの組成を算出し、その組成と等しい比率となるように、前記混合ガスモノマーの組成を決めることができる。
【0021】
含フッ素ポリマーに含まれるフッ素原子の含有率は特に制限されない。含フッ素ポリマー中のフッ素原子の含有率は、接着性と耐熱性の観点から、含フッ素ポリマーの総質量中に10質量%以上であることが好ましく、20〜75質量%であることがより好ましく、30〜75質量%であることが更に好ましい。
【0022】
含フッ素ポリマーの具体例としては、VdFに由来する構造単位及びHFPに由来する構造単位を含み、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー;TFEに由来する構造単位、VdFに由来する構造単位及びHFPに由来する構造単位を含み、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー;TFEに由来する構造単位及びHFPに由来する構造単位を含み、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー;TFEに由来する構造単位及びPAVEに由来する構造単位を含み、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー;VdFに由来する構造単位及びPAVEに由来する構造単位を含み、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー;TFEに由来する構造単位及びPに由来する構造単位を含み、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー等を挙げることができる。
接着剤は、含フッ素ポリマーを1種単独で又は2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0023】
含フッ素ポリマーの製造方法
両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマーは、例えば、特公昭61−12924号公報に記載の製造方法で製造することができる。具体的には、ヨウ素化合物の存在下に含フッ素モノマーを含むモノマー組成物をラジカル重合することで、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマーを製造することができる。ヨウ素化合物としては、例えば、ヨウ素(I)、下記一般式(II)で示される化合物等を挙げることができる。これらのヨウ素化合物は、例えば、連鎖移動剤として作用すると考えられる。
I−R−I (II)
式中、Rは炭素数1〜8のパーフルオロアルキレン基又はポリ(パーフルオロアルキレンオキシ)フルオロアルキレン基を示す。ポリ(パーフルオロアルキレンオキシ)フルオロアルキレン基は、下記一般式(IIa)で示されることが好ましい。
−(R21O)22− (IIa)
式中、R21及びR22はそれぞれ独立して炭素数1〜4のパーフルオロアルキレン基を示す。qは1〜4の数を示す。qが2以上の場合、複数存在するR21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
一般式(II)で示される化合物として具体的には、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン等を挙げることができる。
【0025】
含フッ素ポリマーの製造に用いる含フッ素モノマーを含むモノマー組成物の構成は、目的等に応じて適宜選択することができる。
また、モノマー組成物に対するヨウ素化合物の使用量は特に制限されない。例えばモノマー組成物の総質量に対して0.05〜20質量%とすることができる。
【0026】
含フッ素ポリマーの製造では、ラジカル開始剤を用いることが好ましい。ラジカル開始剤としては、特に制限はなく通常用いられるラジカル開始剤から適宜選択することができる。ラジカル開始剤として具体的には、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(以下、IPPともいう)、tert−ブチルパーオキシピバレート(以下、PBPVともいう)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などを挙げることができる。
ラジカル開始剤を用いる場合、ラジカル開始剤の使用量は必要に応じて適宜選択することができる。
【0027】
ラジカル重合は、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法のいずれで行ってもよい。溶液重合法及び懸濁重合法の場合、溶媒としては、連鎖移動定数の低いパーフルオロアルカン、ハイドロフルオロアルカン等を好ましく用いることができる。また乳化重合に用いる乳化剤としては、フッ素系の乳化剤が好ましく用いられる。
ラジカル重合は、例えば、30〜100℃の反応温度で1〜20時間の反応時間で行うことができる。
【0028】
接着剤に含まれる含フッ素ポリマーの含有量は、目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、含フッ素ポリマーの含有率は接着剤の総質量中に、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。接着剤に含まれる含フッ素ポリマーの含有率の上限値は特に制限されない。例えば、接着剤の総質量中に99.9質量%以下とすることができる。
【0029】
接着剤は、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー以外のその他の含フッ素ポリマーを更に含んでいてもよい。その他の含フッ素ポリマーとしては、ヨウ素原子を含まない含フッ素ポリマー、ヨウ素原子を1つだけ含む含フッ素ポリマー、ヨウ素原子を末端以外の部分に有する含フッ素ポリマー、ヨウ素原子を3以上含む含フッ素ポリマー等を挙げることができる。その他の含フッ素ポリマーは、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマーの製造中に副生する含フッ素ポリマーであってもよい。
接着剤がその他の含フッ素ポリマーを含む場合、その含有率は接着剤の総質量中に、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。含有率の下限値は例えば、1質量%とすることができる。
【0030】
ラジカル発生剤
接着剤は、ラジカル発生剤の少なくとも1種を含む。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中でも、接着剤は、耐熱性及び接着性の観点から、有機過酸化物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0031】
有機過酸化物としては例えば、ビス(パーフルオロベンゾイル)パーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、過酢酸、m−クロロ過安息香酸等が挙げられる。これらの中でも、ビス(パーフルオロベンゾイル)パーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tertert−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の中性の有機過酸化物が好ましく用いられる。
【0032】
無機過酸化物としては例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等を挙げることができる。
アゾ化合物としては例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0033】
接着剤におけるラジカル発生剤の含有率は例えば、含フッ素ポリマーの総質量に対して例えば0.1〜10質量%とすることができ、0.5〜5.0質量%であることが好ましい。
【0034】
エチレン性不飽和基を2以上有する化合物
接着剤は、含フッ素ポリマー及びラジカル発生剤に加えて、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物(以下、「架橋助剤」ともいう)の少なくとも1種を含むことが好ましい。エチレン性不飽和基を2以上有する化合物を含むことで、耐熱性及び接着性がより向上する傾向がある。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、マレイミド基等を挙げることができる。また、架橋助剤は、エチレン性不飽和基に代えてアルキニル基を有する化合物であってもよい。
【0035】
架橋助剤としては例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタルアミド等が挙げられる。架橋助剤は1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
【0036】
接着剤が架橋助剤を含む場合、架橋助剤の含有率は例えば、ポリマーの総質量に対して例えば1〜40質量%とすることができ、10〜30質量%であることが好ましい。
【0037】
その他の成分
接着剤は、含フッ素ポリマー及びラジカル発生剤に加えて、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、溶剤、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、無機質充填剤、接着促進剤、シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのその他の成分は、それぞれ1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
【0038】
揮発性成分
接着剤は揮発性成分を含んでいてもよい。接着剤が揮発性成分を含む場合、その含有率は特に制限されない。揮発性成分の含有率の上限値は、接着性と耐熱性の観点から、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。揮発性成分の含有率の下限値は、例えば、1質量%以上とすることができる。
ここで揮発性成分の含有率は、接着剤を150℃、0.1MPaの環境下に1時間置いた場合の質量減少量から算出される。
【0039】
接着対象
接着剤の接着対象は特に制限されない。接着対象として具体的には、鉄、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム等の金属、合金及び金属酸化物等の金属系材料;ガラス、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、酸化ケイ素等のシリコン系材料;ポリカーボネート等のプラスティック、炭素繊維等の炭素系材料等を挙げることができる。中でも接着対象は、金属、合金及び金属酸化物等の金属系材料であることが好ましい。すなわち、接着剤は金属接着用であることが好ましい。
【0040】
接着対象の形状は、接着可能な形状であれば特に制限されない。接着対象として具体的には、金属板等を挙げることができる。
【0041】
接着方法
接着剤は、接着対象である第一の部材と第二の部材の間に、接着剤を配置して積層体を得る工程と、得られた積層体を加熱処理する工程とを含む第一の部材と第二の部材との接着方法に適用することができる。
接着対象である第一の部材と第二の部材の材質は特に制限されず、既述の接着対象として例示した材質から適宜選択することができる。また、第一の部材と第二の部材の材質は同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
積層体を得る工程は、例えば、第一の部材と第二の部材の少なくとも一方の面上に、接着剤を付与することと、接着剤が付与された一方の部材の接着剤が付与された面と他方の部材とを接触させることとを含むことができる。接着剤が第一の部材と第二の部材の両方に付与される場合、接着剤が付与された面同士を接触させることが好ましい。
【0043】
接着剤の付与方法は特に制限されず、通常用いられる付与方法から適宜選択することができる。例えば、スプレー塗布、はけ塗り、浸漬、ローラー塗布、フローコーター塗布、ダイコーター塗布等の付与方法を挙げることができる。
接着剤の付与量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。接着剤の付与量は、例えば、1g/m以上とすることができ、1〜100g/mであることが好ましい。
【0044】
積層体の加熱処理の条件は特に制限されず、ポリマーの構成、接着対象等に応じて適宜選択することができる。加熱処理の条件は、例えば、60〜200℃で、0.5時間〜6時間とすることができる。加熱処理は、1回で行ってもよく、温度を変えながら複数回行ってもよい。耐熱性と接着性の観点から、温度を変えながら複数回行うことが好ましい。
また加熱処理の際には、積層体に圧力を加えることが好ましい。圧力は第一の部材、接着剤及び第二の部材の積層方向に加えられる。加える圧力は、目的、部材の材質等に応じて適宜選択することができる。圧力は例えば、0.1MPa〜1MPaとすることができる。
接着方法に用いられる接着剤が、前記含フッ素ポリマーと、ラジカル発生剤とを含むことで、接着方法で得られる第一の部材と第二の部材とが接着された接着体は、部材間の接着強度と耐熱性に優れる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0046】
[分子量の測定方法]
東ソー社製のHLC−8220GPCを用いてGPC測定し、標品であるポリメチルメタクリレート分子量換算値として含フッ素ポリマーの重量平均分子量と数平均分子量を算出した。GPC測定条件の詳細は以下の通りである。
カラム:TSKguardcolum MP(XL)(内径6mm、長さ4cm、東ソー社製)1本と、TSKgel MultiporeHXL−M(内径7.8mm、長さ30cm、東ソー社製)2本を直列に繋げたもの。
測定試料:1.0〜1.5質量%テトラヒドロフラン溶液。50μL
溶離液:テトラヒドロフラン、1ml/min.
カラム及びインレット温度:40℃
検出:示差屈折率検出器、ポラリティーをマイナスにして検出。
【0047】
[接着強度の測定方法]
厚さ0.5mm、幅1.0cm、長さ6.0cmの金属試験片の長辺方向の端とその端から0.5cmの間の長辺に挟まれた領域に、調製した接着剤サンプルを薄く均一に塗布した。そして同じ材質、寸法の金属試験片の長辺方向の端が塗布部位とだけ重なるように重ね、重なった部位(接着面)をクリップで固定して積層体を得た。得られた積層体をオーブン中、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で2時間保持して加熱処理した。その後、室温まで戻しクリップを外して、両金属片が接着された接着体を作製し、これを試験サンプルとした。
試験サンプルの長辺方向の両端を引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンRTC−1210)の冶具に固定し、200mm/minの速さで両端を長辺方向に引張り、接着面が剥離したときの最大の強度を測定した。
なお、金属試験片の材質は、アルミニウムを用いた。
なお、接着強度は、130N以上であると好ましく、160N以上であるとより好ましい。この範囲であると、優れた接着性を示すといえる。
【0048】
[耐熱性試験]
耐熱性試験は、接着強度の測定方法で作製した試験サンプルを、200℃の環境下に30日間200gの荷重を掛けて放置した後、剥離の有無を目視で調べて、下記評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:全く剥離が認められなかった。
B:部分的に剥離が発生していた。
C:完全に剥離した。
【0049】
[合成例1]
内容積200mlの撹拌機付き耐圧容器を脱気し、トリデカフルオロヘキサン(CF(CFH;以下、C6Hともいう)の195g、ジヨードパーフルオロブタン(I(CFI;以下、C4I2ともいう)の1.5g、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の23.5g、フッ化ビニリデン(VdF)の8.2gを仕込んだ。内温を66℃に保持して、tert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)の2.5%C6H溶液を4.5ml仕込み、重合を開始させた。圧力が一定になるように、HFP/VdF=22/78モル比の混合ガスモノマーを連続的に仕込んだ。仕込んだ混合ガスが25.0gとなったところで内温を室温まで冷却し未反応モノマーをパージして重合を終了させ、含フッ素ポリマー1の26.6gを得た。含フッ素ポリマー1の、VdFに由来する構造単位に対するHFPに由来する構造単位の含有比(HFP/VdF)は質量基準で0.66であった。
【0050】
得られた含フッ素ポリマー1について、上記分子量の測定方法により、数平均分子量と重量平均分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は11090で、数平均分子量(Mn)は8660であり、分子量分布Mw/Mnは1.28であった。
【0051】
[合成例2]
内容積200mlの撹拌機付き耐圧容器を脱気し、C6Hの195g、C4I2の0.8g、HFPの23.5g、VdFの8.2gを仕込んだ。内温を66℃に保持して、PBPVの2.5%C6H溶液を4.5ml仕込み、重合を開始させた。圧力が一定になるように、HFP/VdF=22/78モル比の混合ガスモノマーを連続的に仕込んだ。仕込んだ混合ガスが20.0gとなったところで内温を室温まで冷却し未反応モノマーをパージして重合を終了させ、含フッ素ポリマー2の19.5gを得た。含フッ素ポリマー2における含有比HFP/VdFは質量基準で0.66であった。
【0052】
得られた含フッ素ポリマー2について、上記分子量の測定方法により、数平均分子量と重量平均分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は19540で、数平均分子量(Mn)は16220であり、分子量分布Mw/Mnは1.20であった。
【0053】
[合成例3]
内容積200mlの撹拌機付き耐圧容器を脱気し、C6Hの195g、C4I2の3.0g、HFPの23.5g、VdFの8.2gを仕込んだ。内温を40℃に保持して、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)の2.5%C6H溶液を6.0ml仕込み、重合を開始させた。圧力が一定になるように、HFP/VdF=22/78モル比の混合ガスモノマーを連続的に仕込んだ。仕込んだ混合ガスが25.0gとなったところで内温を室温まで冷却し未反応モノマーをパージして重合を終了させ、含フッ素ポリマーC1の27.9gを得た。含フッ素ポリマーC1における含有比HFP/VdFは質量基準で0.66であった。
【0054】
得られた含フッ素ポリマーC1について、上記分子量の測定方法により、数平均分子量と重量平均分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は5450で、数平均分子量(Mn)は4720であり、Mw/Mnは1.15であった。
【0055】
[合成例4]
内容量200mlの撹拌機付き耐圧容器を脱気し、過硫酸アンモニウムの0.6g、リン酸水素ナトリウムの2.4g、パーフルオロオクタン酸アンモニウムの1.5g、ターシャリーブタノールの12.2g、硫酸第1鉄7水和物の0.017g、エチレンジアミン四酢酸の0.022gを脱塩水85gに溶解させた液を仕込み、C4I2の1.5gを仕込み、TFEの9.8g、Pの0.8gを仕込んだ。内温を25℃に保持して、ロンガリットの1質量%水溶液を0.5ml仕込んで重合を開始させ。その後15分おきにロンガリットの1質量%水溶液を0.5ml仕込み、計14ml仕込んだ。圧力が一定になるよう、P/TFE=44/56モル比の混合ガスモノマーを連続的に仕込んだ。仕込んだ混合ガスが15.0gとなったところで内温を室温まで冷却し未反応モノマーをパージして重合を終了させ、含フッ素ポリマー4の15.9gを得た。
含フッ素ポリマー4の、TFEに由来する構造単位に対するPに由来する構造単位の含有比(P/TFE)は質量基準で0.33であった。
得られた含フッ素ポリマー4について、上記分子量の測定方法により、数平均分子量と重量平均分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は8510で、数平均分子量(Mn)は6450であり、分子量分布Mw/Mnは1.32であった。
【0056】
[合成例5]
C4I2の仕込み量を3.0gとした以外は合成例4と同等に重合し、含フッ素ポリマー5の16.6gを得た。含フッ素ポリマー5における含有比P/TFEは質量基準で0.33であった。
得られた含フッ素ポリマー5について、上記分子量の測定方法により、数平均分子量と重量平均分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は6260で、数平均分子量(Mn)は5010であり、分子量分布Mw/Mnは1.25であった。
【0057】
[合成例6]
C4I2の仕込み量を4.5gとした以外は合成例4と同等に重合し、含フッ素ポリマーC2の19.0gを得た。含フッ素ポリマーC2における含有比P/TFEは質量基準で0.33であった。
得られた含フッ素ポリマーC2について、上記分子量の測定方法により、数平均分子量と重量平均分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は3470で、数平均分子量(Mn)は2940であり、分子量分布Mw/Mnは1.18であった。
【0058】
[実施例1]
【0059】
合成例1で得られた含フッ素ポリマー1の1.0gに、ラジカル発生剤としてビス(パーフルオロベンゾイル)パーオキサイド(PFBPO)の0.04g、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)の0.13gを添加混合して接着剤サンプル1を調製した。
【0060】
得られた接着剤サンプル1について、上記の方法で接着強度を測定したところ、165Nであった。
また耐熱性試験の評価結果は、Aであった。
【0061】
[実施例2]
合成例1で得られた含フッ素ポリマー1の1.0gに、ラジカル発生剤としてPFBPOの0.04g、TAICの0.26gを添加混合して接着剤サンプル2を調製した。
【0062】
得られた接着剤サンプル2について、上記の方法で接着強度を測定したところ、189Nであった。
また耐熱性試験の評価結果は、Aであった。
【0063】
[実施例3]
合成例2で得られた含フッ素ポリマー2の1.0gに、ラジカル発生剤としてPFBPOの0.04g、TAICの0.26gを添加混合して接着剤サンプル3を調製した。
【0064】
得られた接着剤サンプル3について、上記の方法で接着強度を測定したところ、205Nであった。
また耐熱性試験の評価結果は、Aであった。
【0065】
[実施例4]
合成例4で得られた含フッ素ポリマー4の1.0gに、ラジカル発生剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)の0.04g、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)の0.20gを添加混合して接着剤サンプル4を調製した。
得られた接着剤サンプル4について、上記の方法で接着強度を測定したところ、210Nであった。
また耐熱性試験の評価結果は、Aであった。
【0066】
[実施例5]
合成例5で得られた含フッ素ポリマー5の1.0gに、ラジカル発生剤としてBPOの0.04g、架橋助剤としてTAICの0.20gを添加混合して接着剤サンプル5を調製した。
得られた接着剤サンプル5について、上記の方法で接着強度を測定したところ、190Nであった。
また耐熱性試験の評価結果は、Aであった。
【0067】
[比較例1]
合成例3で得られた含フッ素ポリマーC1の1.0gに、ラジカル発生剤としてPFBPOの0.04g、TAICの0.26gを添加混合して接着剤サンプルC1を調製した。
【0068】
得られた接着剤サンプルC1について、上記の方法で接着強度を測定したところ、120Nであった。
また耐熱性試験の評価結果は、Aであった。
【0069】
[比較例2]
合成例6で得られた含フッ素ポリマーC2の1.0gに、ラジカル発生剤としてBPOの0.04g、TAICの0.20gを添加混合して接着剤サンプルC2を調製した。
得られた接着剤サンプルC2について、上記の方法で接着強度を測定したところ、110Nであった。
また耐熱性試験の評価結果は、Aであった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
特定の重量平均分子量を有し、両末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマーと、ラジカル発生剤とを含む接着剤は、耐熱性と接着性に優れた接着剤として、産業上の有用性が高い。
なお、2013年11月5日に出願された日本特許出願2013−229229号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。