【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて更に詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
<ケイ素含有ポリマーの製造>
[実施例1]
下記式(7)の反応により、実施例1のケイ素含有ポリマー[1a]を製造した。
【0060】
【化15】
【0061】
具体的には、アルゴン雰囲気下、300mL反応フラスコに、ジオール化合物として1,4−シクロヘキサンジオール(東京化成工業(株)製、8.1g)と、溶媒としてテトラヒドロフラン(200.0g:THF)と、を仕込んだ。これに塩基としてトリエチルアミン(東京化成工業(株)製、14.6g:TEA)を加え、混合物を得た。
【0062】
この混合物を0℃まで冷却させ、シラン化合物としてジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、10.0g)を更に滴下した。滴下後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ、14.5gのケイ素含有ポリマー[1a]を得た。得られたケイ素含有ポリマーの重量平均分子量は3700、数平均分子量は1300であった。
【0063】
更に、得られたケイ素含有ポリマー[1a](1.0g)に対してシクロオクタン(関東化学(株)製、9.0g)を加え、この溶液をスピナーにより、シリコン基板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜をホットプレート上、150℃で1分間、250℃で5分間ベークすることで、膜厚200nmの絶縁体膜[1b]を形成できた。
【0064】
[実施例2]
下記式(8)の反応により、実施例2のケイ素含有ポリマー[2a]を製造した。
【0065】
【化16】
【0066】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、300mL反応フラスコに、1,1’−ビスシクロヘキサンジオール(東京化成工業(株)製、13.9g)と、溶媒としてTHF(200.0g)と、を仕込み、塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、14.6g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、10.0g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ19.3gのケイ素含有ポリマー[2a]を得た。得られたポリマーの重量平均分子量は7400、数平均分子量は2000であった。
【0067】
更に、得られたケイ素含有ポリマー[2a](1.0g)に対してトルエン(関東化学(株)製、12.3g)を加え、この溶液をスピナーにより、シリコン基板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜をホットプレート上、150℃で1分間、250℃で5分間ベークすることで、膜厚200nmの絶縁体膜[2b]を形成できた。
【0068】
[実施例3]
下記式(9)の反応により、実施例3のケイ素含有ポリマー[3a]を製造した。
【0069】
【化17】
【0070】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、50mL反応フラスコに、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(東京化成工業(株)製、1.7g)と、THF(20.0g)と、を仕込み、塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、1.5g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、1.0g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ1.8gのケイ素含有ポリマー[3a]を得た。得られたケイ素含有ポリマーの重量平均分子量は1700、数平均分子量は800であった。
【0071】
更に、得られたケイ素含有ポリマー[3a](1.0g)に対してプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート(関東化学(株)製、9.0g)を加え、この溶液をスピナーにより、シリコン基板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜をホットプレート上、150℃で1分間、250℃で5分間ベークすることで、膜厚200nmの絶縁体膜[3b]を形成できた。
【0072】
[実施例4]
下記式(10)の反応により、実施例4のケイ素含有ポリマー[4a]を製造した。
【0073】
【化18】
【0074】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、50mL反応フラスコに、1,3−ジヒドロシクロペンタン(東京化成工業(株)製、0.35g)と、溶媒としてTHF(10.00g)と、を仕込み、塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、0.73g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、0.50g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ0.33gのケイ素含有ポリマー[4a]を得た。得られたケイ素含有ポリマーの重量平均分子量は1000、数平均分子量は500であった。
【0075】
[実施例5]
下記式(11)の反応により、実施例5のケイ素含有ポリマー[5a]を製造した。
【0076】
【化19】
【0077】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、200mL反応フラスコに1,7−ヘプタンジオール(東京化成工業(株)製、4.0g)と、溶媒としてTHF(85.0g)と、を仕込み、これに塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、6.2g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、4.2g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ5.8gのケイ素含有ポリマー[5a]を得た。得られたケイ素含有ポリマーの重量平均分子量は2100、数平均分子量は450であった。
【0078】
更に、得られたケイ素含有ポリマー[5a](2.0g)に対し、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート(関東化学(株)製、8.0g)を加え、この溶液をスピナーにより、シリコン基板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜をホットプレート上、150℃で1分間、250℃で5分間ベークすることで、膜厚200nmの絶縁体膜[5b]を形成できた。
【0079】
[実施例6]
下記式(12)の反応により、実施例6のケイ素含有ポリマー[6a]を製造した。
【0080】
【化20】
【0081】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、200mL反応フラスコに1,10−デカンジオール(東京化成工業(株)製、6.4g)と、溶媒としてTHF(100.0g)と、を仕込み、これに塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、7.3g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、5.0g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ8.8gのケイ素含有ポリマー[6a]を得た。得られたケイ素含有ポリマーの重量平均分子量は5400、数平均分子量は1100であった。
【0082】
更に、得られたケイ素含有ポリマー[6a](2.0g)に対し、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート(関東化学(株)製、8.5g)を加え、この溶液をスピナーにより、シリコン基板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜をホットプレート上、150℃で1分間、250℃で5分間ベークすることで、膜厚200nmの絶縁体膜[6b]を形成できた。
【0083】
[実施例7]
下記式(13)の反応により、実施例7のケイ素含有ポリマー[7a]を製造した。
【0084】
【化21】
【0085】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、200mL反応フラスコに1,12−ドデカンジオール(東京化成工業(株)製、7.3g)と、溶媒としてTHF(100.0g)と、を仕込み、これに塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、7.3g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、5.0g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ11.38gのケイ素含有ポリマー[7a]を得た。得られたケイ素含有ポリマーの重量平均分子量は4500、数平均分子量は1000であった。
【0086】
更に、得られたケイ素含有ポリマー[7a](2.0g)に対し、シクロヘキサノン(関東化学(株)製、8.5g)を加え、この溶液をスピナーにより、シリコン基板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜をホットプレート上、150℃で1分間、250℃で5分間ベークすることで、膜厚200nmの絶縁体膜[7b]を形成できた。
【0087】
[比較例1]
下記式(14)の反応を試みたが、オリゴマーやモノマーが生成するのみであり、ケイ素含有ポリマーを製造できなかった。
【0088】
【化22】
【0089】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、50mL反応フラスコにエチレングリコール(関東化学(株)製、0.48g)と、溶媒としてTHF(7.50g)と、を仕込み、これに塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、1.96g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロジメチルシラン(東京化成工業(株)製、1.00g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ0.51gの生成物を得たが、得られた生成物は、重量平均分子量が110、数平均分子量が110であった。
【0090】
[比較例2]
下記式(15)の反応を試みたが、オリゴマーやモノマーが生成するのみであり、ケイ素含有ポリマーを製造できなかった。
【0091】
【化23】
【0092】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、50mL反応フラスコに1,2−シクロヘキサンジオール(東京化成工業(株)製、0.81g)と、溶媒としてTHF(20.00g)を仕込み、これに塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、1.46g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、1.00g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ1.10gの生成物を得たが、得られた生成物は、重量平均分子量が260、数平均分子量が150であった。
【0093】
[比較例3]
下記式(16)の反応を試みたが、オリゴマーやモノマーが生成するのみであり、ケイ素含有ポリマーを製造できなかった。
【0094】
【化24】
【0095】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、50mL反応フラスコに1,3−シクロヘキサンジオール(東京化成工業(株)製、0.81g)と、溶媒としてTHF(20.00g)と、を仕込み、これに塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、1.46g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、1.00g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ1.08gの生成物を得たが、得られた生成物は、重量平均分子量が420、数平均分子量が20であった。
【0096】
[比較例4]
下記式(17)の反応を試みたが、オリゴマーやモノマーが生成するのみであり、ケイ素含有ポリマーを製造できなかった。
【0097】
【化25】
【0098】
具体的には、基本的には実施例1と同様のプロセスに従い、アルゴン雰囲気下、50mL反応フラスコに1,3−アダマンタンジオール(東京化成工業(株)製、1.18g)と、溶媒としてTHF(20.00g)を仕込み、これに塩基としてTEA(東京化成工業(株)製、1.46g)を加え、0℃まで冷却させた。これにジクロロメチルビニルシラン(東京化成工業(株)製、1.00g)を滴下した後、室温まで昇温させ24時間攪拌した。その後、減圧濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を除去し、減圧下で濃縮させ1.08gの生成物を得たが、得られた生成物は、重量平均分子量が140、数平均分子量が80であった。
【0099】
<評価試験>
[平均分子量測定]
上記の実施例1〜7及び比較例1〜4に記載の重合平均分子量や数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)により測定した結果である。使用した装置、条件等は以下のとおりである。
・GPC装置:HLC−8320GPC (東ソー(株)製)
・GPCカラム:Shodex[登録商標] KF−801, KF−802, KF−803L(昭和電工(株)製)
・カラム温度:40℃
・溶媒: テトラヒドロフラン(THF)
・流量:1.0ml/min
・標準試料:ポリスチレン(昭和電工(株)製)
【0100】
[リーク電流密度、絶縁破壊電圧、及び比誘電率]
実施例1〜3に記載のケイ素含有モノマー[1a]〜[3a]により成膜された絶縁体膜[1b]〜[3b]について、リーク電流密度、絶縁破壊電圧、及び比誘電率を測定した。リーク電流密度、絶縁破壊電圧、及び比誘電率は、水銀プローブ(CVmap3093A(4Dimensions社製))による評価結果であり、1MV/cmの電界を加えたときの値を測定した。結果を表2に示す。
【0101】
表2において、実施例4については成膜を省略したため「省略」と示してある。また、比較例1〜4では、ケイ素含有ポリマーを製造できず成膜も不可能であったため「不可」と示してあり、また、成膜が不可であるため、リーク電流密度、絶縁破壊電圧、及び比誘電率を測定することができず「×」と示してある。
【0102】
【表2】
【0103】
以上より、実施例1〜7によれば、ケイ素(Si)−酸素(O)−炭素(C)の結合を有し、かつ分子内に芳香環を含まないケイ素含有ポリマー[1a]〜[7a]を得ることができた。そして、実施例1〜3及び5〜7のケイ素含有ポリマー[1a]〜[3a]及び[5a]〜[7a]によれば、常法に従って絶縁体膜[1b]〜[3b]及び[5b]〜[7b]を好適に形成できることが確かめられた。尚、実施例4のケイ素含有ポリマー[4a]についても、常法に従って絶縁体膜を形成できるものと推察される。
【0104】
また、実施例1〜3による絶縁体膜[1b]〜[3b]のなかでも、実施例2〜3による絶縁体膜[2b]〜[3b]においてリーク電流を効果的に抑制できることが分かった。また、実施例2による絶縁体膜[2b]において、最も高い絶縁破壊電圧が得られることが分かった。更に、実施例3による絶縁体膜[3b]において、最も小さい比誘電率が得られることが分かった。
【0105】
また、実施例1〜7のケイ素含有ポリマー[1a]〜[7a]は、新規な構成を有するものである。このため、ケイ素含有ポリマー[1a]〜[7a]によれば、既存の材料には無い特性を発揮でき、種々の用途に応じて独自性の高い機能を発揮できるものと推察される。例えば、耐熱性や絶縁性に優れ、かつ、分子内に芳香環を含まないために透明性に優れた膜を成膜できる可能性がある。