(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493683
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ラクトン構造含有ポリマーを含む電子線レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20190325BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20190325BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
G03F7/11 503
H01L21/30 541P
C08F220/26
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-553483(P2015-553483)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2014082284
(87)【国際公開番号】WO2015093323
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-262054(P2013-262054)
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】境田 康志
(72)【発明者】
【氏名】水落 龍太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/018928(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/017790(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/081619(WO,A1)
【文献】
特開2000−221689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトン環を有する単位構造とヒドロキシ基を有する単位構造とを含むポリマーを含み、更に多核フェノールを含有する、電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
ポリマーが更にアリール基又はアリールアルキル基を有する単位構造を含むポリマーである、請求項1に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
ポリマーがラクトン(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマーである、請求項1又は請求項2に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
ポリマーがラクトン(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレート又はベンジル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマーである、請求項1又は請求項2に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
ポリマーが式(1−1)の単位構造と式(1−2)の単位構造とを含む式(1)のポリマー、又は式(2−1)の単位構造と式(2−2)の単位構造と式(2−3)の単位構造とを含む式(2)のポリマー:
【化1】
〔式中、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、L
2及びL
4はそれぞれ炭素原子数1〜10のヒドロキシアルキル基を示し、L
5はフェニル基又はベンジル基を示し、L
1及びL
3はそれぞれ式(L1−1)又は式(L1−2):
【化2】
(式中、点線は式(1−1)及び式(2−1)で示されるエステル基との化学結合を示す。)を示す。〕である、請求項1又は請求項2に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
多核フェノールが、式(b−1):
【化3】
(式(b−1)中、R
11はそれぞれベンゼン環の水素原子の置換基であって、ヒドロキシ基、ハロゲン基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜25のアリールアルキル基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニル基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニルアミノ基、炭素原子数7〜10のアリールオキシアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基又はそれらの組み合わせからなる有機基を示し、R
12は単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2〜4価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2〜4価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m1は1〜5の整数であり、n1は0≦n1≦5−m1を満たす整数であり、qは2〜4の整数である。)、式(b−2):
【化4】
(式(b−2)中、R
13及びR
14はそれぞれ式(b−1)中のR
11と同じであり、R
15は単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2〜6価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2〜6価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m2及びm3はそれぞれ1〜5の整数であり、n2及びn3は0≦n2≦5−m2及び0≦n3≦5−m3を満たす整数であり、k及びsはそれぞれ1〜3の整数である。)、式(b−3):
【化5】
(式(b−3)中、R
16、R
17及びR
18はそれぞれ式(b−1)中のR
11と同じであり、R
19及びR
20はそれぞれ単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m5は1〜4の整数であり、m4及びm6はそれぞれ1〜5の整数であり、n5は0≦n5≦4−m5を満たす整数であり、n4及びn6は0≦n4≦5−m4及び0≦n6≦5−m6を満たす整数であり、tは1〜4の整数である。)で表される各化合物、又はそれらの組み合わせである、請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
更に架橋性化合物を含有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
更に酸化合物を含有する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布し、加熱することにより得られる半導体装置製造のリソグラフィープロセスに利
用される、電子線レジスト下層膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布し加熱し電子線レジスト下層膜を形成し、その上に電子線レジストを被覆し、この電子線レジスト下層膜と電子線レジストを被覆した基板に電子線を照射し、現像し、ドライエッチングにより基板上に画像を転写して集積回路素子を形成する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線リソグラフィーを用いたデバイス作製工程に用いられ、電子線によって及ぼされる悪影響を低減し、良好なレジストパターンを得るのに有効な電子線リソグラフィー用レジスト下層膜組成物、並びに該電子線リソグラフィー用レジスト下層膜組成物を用いるレジストパターン形成法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術として以下のものが挙げられる。
ハロゲン原子を含有するポリマーを含む電子線レジスト下層膜形成組成物が開示されている(特許文献1参照)。
炭素と炭素の不飽和多重結合を有するポリマーを含む電子線硬化のレジスト下層膜形成組成物が開示されている(特許文献2参照)。
電子線硬化のケイ素含有レジスト下層膜形成組成物が開示されている(特許文献3参照)。
イオン液体を含む電子線レジスト上層用帯電防止膜形成組成物が開示されている(特許文献4参照)。
ラクトン構造を含むポリマーを含むUVリソグラフィー用反射防止膜形成組成物が開示されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2008/105266パンフレット
【特許文献2】特開2008−076551
【特許文献3】特開2008−256966
【特許文献4】特開2010−020046
【特許文献5】国際公開WO2003/017002パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子線リソグラフィーを用いたデバイス作製工程では、下地基板や電子線によって及ぼされる悪影響によって、電子線リソグラフィー用レジストのパターンが裾引き形状やアンダーカット形状になり、ストレート形状の良好なレジストパターンを形成することができない、また電子線照射量に対するマージンを充分に得ることができない等の問題が生じることがある。そのため、電子線リソグラフィー工程では、反射防止能を有するレジスト下層膜(反射防止膜)は不要であるが、これらの悪影響を低減して、ストレート形状の良好なレジストパターンを形成し、充分な電子線照射量に対するマージンを得ることを可能にする電子線リソグラフィー用レジスト下層膜が必要となってくる。
【0005】
また、電子線リソグラフィー用レジスト下層膜は、成膜後、上にレジストが塗布されるため、反射防止膜と同様に、レジスト層とのインターミキシングが起こらないこと(レジスト溶剤に不溶であること)、そして塗布時又は加熱乾燥時に電子線レジスト下層膜材料から上塗りレジスト中への低分子拡散物がないことが必須の特性である。
【0006】
さらに、電子線リソグラフィーを用いる世代では、レジストパターン幅が非常に微細になるため、電子線リソグラフィー用レジストは薄膜化が望まれる。そのため、有機反射防止膜のエッチングによる除去工程にかかる時間を大幅に減少させる必要があり、薄膜で使用可能な電子線リソグラフィー用レジスト下層膜、或いは電子線リソグラフィー用レジストとのエッチング速度の選択比が大きい電子線リソグラフィー用レジスト下層膜が要求される。
【0007】
本発明は、半導体装置製造の電子線リソグラフィープロセスに用いるための電子線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を提供することである。また本発明は、下地基板や電子線によって及ぼされる悪影響を低減して、ストレート形状の良好なレジストパターンを形成し、充分な電子線照射量に対するマージンを得ることを可能にし、レジスト層とのインターミキシングが起こらず、レジストに比較して大きなドライエッチング速度を有する電子線リソグラフィー用レジスト下層膜を提供することにある。さらに、本発明は該電子線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を用いた電子線リソグラフィー用レジストのパターンの形成法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は第1観点として、ラクトン環を有する単位構造とヒドロキシ基を有する単位構造とを含むポリマーを含む電子線レジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、ポリマーが更にアリール基又はアリールアルキル基を有する単位構造を含むポリマーである、第1観点に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、ポリマーがラクトン(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマーである、第1観点又は第2観点に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、ポリマーがラクトン(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレート又はベンジル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマーである、第1観点又は第2観点に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、ポリマーが式(1−1)の単位構造と式(1−2)の単位構造とを含む式(1)のポリマー、又は式(2−1)の単位構造と式(2−2)の単位構造と式(2−3)の単位構造とを含む式(2)のポリマー:
【化1】
〔式中、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、L
2及びL
4はそれぞれ炭素原子数1〜10のヒドロキシアルキル基を示し、L
5はフェニル基又はベンジル基を示し、L
1及びL
3はそれぞれ式(L1−1)又は式(L1−2):
【化2】
(式中、点線は式(1−1)及び式(2−1)で示されるエステル基との化学結合を示す。)を示す。〕である、第1観点又は第2観点に記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、更に多核フェノールを含有する、第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、多核フェノールが、式(b−1):
【化3】
(式(b−1)中、R
11はそれぞれベンゼン環の水素原子の置換基であって、ヒドロキシ基、ハロゲン基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜25のアリールアルキル基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニル基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニルアミノ基、炭素原子数7〜10のアリールオキシアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基又はそれらの組み合わせからなる有機基を示し、R
12は単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2〜4価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2〜4価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m1は1〜5の整数であり、n1は0≦n1≦5−m1を満たす整数であり、qは2〜4の整数である。)、式(b−2):
【化4】
(式(b−2)中、R
13及びR
14はそれぞれ式(b−1)中のR
11と同じあり、R
15は単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2〜6価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2〜6価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m2及びm3はそれぞれ1〜5の整数であり、n2及びn3は0≦n2≦5−m2及び0≦n3≦5−m3を満たす整数であり、k及びsはそれぞれ1〜3の整数である。)、式(b−3):
【化5】
(式(b−3)中、R
16、R
17及びR
18はそれぞれ式(b−1)中のR
11と同じであり、R
19及びR
20はそれぞれ単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m5は1〜4の整数であり、m4及びm6はそれぞれ1〜5の整数であり、n5は0≦n5≦4−m5、n4及びn6は0≦n4≦5−m4及び0≦n6≦5−m6を満たす整数であり、tは1〜4の整数である。)で表される各化合物、又はそれらの組み合わせである、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第8観点として、更に架橋性化合物を含有する、第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第9観点として、更に酸化合物を含有する、第1観点乃至第8観点のいずれか一つに記載の電子線レジスト下層膜形成組成物、
第10観点として、第1観点乃至第9観点のいずれか一つに記載の電子線レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布し、加熱することにより得られる半導体装置製造のリソグラフィープロセスに利用される、電子線レジスト下層膜の形成方法、及び
第11観点として、第1観点乃至第9観点のいずれか一つに記載の電子線レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布し加熱し電子線レジスト下層膜を形成し、その上に電子線レジストを被覆し、この電子線レジスト下層膜と電子線レジストを被覆した基板に電子線を照射し、現像し、ドライエッチングにより基板上に画像を転写して集積回路素子を形成する、半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物によって得られたレジスト下層膜は、下地基板や電子線によって及ぼされる悪影響を低減することにより、ストレート形状の良好なレジストパターンを形成し、充分な電子線照射量に対するマージンを得ることができる。また、本レジスト下層膜は、上層に形成されるレジスト膜と比較して大きなドライエッチング速度を有し、ドライエッチング工程によって加工対象である下地基板に容易にレジストパターンを転写することができる。
さらに、本発明の電子線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を用いて形成した下層膜は、レジスト膜や下地膜との密着性にも優れるものである。
【0010】
本発明の電子線リソグラフィー用レジスト下層膜は、フォトリソグラフィープロセスにおいて使用されるレジスト下層膜(反射防止膜)が基板より生じる反射光を防止するためのものであるのとは対照的に、反射光を防止する効果を必要とすることなく、電子線リソグラフィー用レジスト膜の下に形成することで電子線照射時に鮮明なレジストパターンの形成を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で得られたラインアンドスペースが50nmのレジストパターンの電子顕微鏡写真。倍率は150000倍。
【
図2】実施例1で得られたラインアンドスペースが40nmのレジストパターンの電子顕微鏡写真。倍率は150000倍。
【
図3】実施例1で得られたラインアンドスペースが30nmのレジストパターンの電子顕微鏡写真。倍率は150000倍。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明はラクトン環を有する単位構造とヒドロキシ基を有する単位構造とを含むポリマーを含む電子線レジスト下層膜形成組成物に関するものである。
【0013】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物は、基本的に上記ポリマー及び溶剤からなり、多核フェノール、架橋性化合物、架橋触媒として酸化合物、更に界面活性剤を含有することができる。
【0014】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物の固形分は、0.01〜50質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%である。固形分とは電子線レジスト下層膜形成組成物から溶剤成分を取り除いたものである。
【0015】
ラクトン環を有する構造としては、五員環構造をとるγ(ガンマ)−ブチロラクトン環を有する単位構造、六員環構造をとるδ(デルタ)−バレロラクトン環を有する単位構造が挙げられる。
【0016】
ヒドロキシ基を有する単位構造としては、ヒドロキシアルキル基が好ましく挙げられる。アルキル基としては、直鎖又は分岐を有する炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルのような直鎖アルキル基、i−プロピル、i−ブチル、2−エチルヘキシルのような分枝アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルのような脂環式アルキル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ−n−プロピル基、ヒドロキシ−n−ブチル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシ−2−エチルヘキシル基、ヒドロキシシクロペンチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基が挙げられる。
【0017】
本発明では、ポリマーが更にアリール基又はアリールアルキル基を有する単位構造を含むポリマーとすることができる。アリール基としては、炭素原子数6〜40の芳香族基であり、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基が挙げられ、また、ピリジル、キノリニル、キノキサリニル基等のヘテロ環式芳香族基も挙げられる。アリールアルキル基としては、上記アリール基と上記アルキル基とが結びついた有機基であり、例えばベンジル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いられるポリマーは、ラクトン(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマーを用いることができる。
また、ポリマーがラクトン(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレート又はベンジル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマーを用いることができる。ここで用いられるラクトン構造、ヒドロキシアルキル構造は上記の構造を挙げることができる。
【0019】
これらの共重合体は、例えば式(1−1)の単位構造と式(1−2)の単位構造とを含む式(1)のポリマーや、式(2−1)の単位構造と式(2−2)の単位構造と式(2−3)の単位構造とを含む式(2)のポリマーが挙げられる。
式(1)及び式(2)中、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、L
2及びL
4はそれぞれ炭素原子数1〜10のヒドロキシアルキル基を示し、L
5はフェニル基又はベンジル基を示す。ヒドロキシアルキル基は上記の例示を挙げることができる。
L
1及びL
3はそれぞれ式(L1−1)又は式(L1−2)を示す。式(L1−1)及び式(L1−2)中、点線は式(1−1)及び式(2−1)で示されるエステル基との化学結合を示す。
【0020】
上記樹脂の分子量は、使用する塗布溶剤、溶液粘度、膜形状等により変動するが、重量平均分子量として1000〜1000000、好ましくは1000〜200000、更に好ましくは1000〜100000である。
【0021】
上記樹脂に用いられるγ−ラクトンは五員環構造を有するラクトンであり、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の置換、非置換のγ−ラクトンが挙げられる。またδ−ラクトンは六員環構造を有するラクトンであり、例えばδ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン等の置換、非置換のδ−ラクトンが挙げられる。
【0022】
式(1)及び式(2)のポリマーに用いられる式(1−1)の単位構造及び式(2−1)の単位構造は、例えばアクリル酸、ハロゲン化アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系モノマーと、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン、α−ブロモ−δ−バレロラクトン等のラクトンを反応させることにより製造することができる。また、アクリル酸、ハロゲン化アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系ポリマーと、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン、α−ブロモ−δ−バレロラクトン等のラクトンを反応させることにより製造することができる。
【0023】
本願発明で用いられる式(2)のポリマーは、γ−ブチロラクトンメタクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとベンジルメタクリレートとの共重合体を挙げることができる。
【0024】
式(1)のポリマーは、式(1−1)の単位構造と式(1−2)の単位構造とを、式(1)のポリマー中に含まれる全単位構造中で5〜45:25〜60のモル%の割合で含有することができる。
【0025】
式(2)のポリマーは、式(2−1)の単位構造と式(2−2)の単位構造と式(2−3)の単位構造とを、式(2)のポリマー中に含まれる全単位構造中で5〜45:25〜60:10〜45のモル%の割合で含有することができる。
【0026】
式(1)又は式(2)のポリマーは、電子線レジスト下層膜形成組成物中の固形分中で20質量%以上、例えば20〜100質量%、30〜100質量%、50〜99質量%、60〜98質量%、又は80〜98質量%である。
【0027】
式(1)及び式(2)のポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体あるいはグラフト共重合体のいずれであってもよい。本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーは、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の方法により合成することができる。その形態は溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の種々の方法が可能である。
【0028】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物に使用されるポリマーは、更に非架橋性のモノマーを共重合させることも可能であり、これによりドライエッチング速度、反射率等の微調整が行える。このような共重合モノマーとしては以下のものが挙げられる。例えば、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、クロトン酸エステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物である。
【0029】
アクリル酸エステル類としては、例えばアルキル基の炭素原子数が1〜10のアルキルアクリレートが挙げられる。
【0030】
メタクリル酸エステル類としては、例えばアルキル基の炭素原子数が1〜10のアルキルメタクリレートが挙げられる。
【0031】
アクリルアミド類としては、例えばアクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アリールアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアリールアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
メタクリルアミド類としては、例えばメタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N−アリールメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、N,N−ジアリールメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0033】
ビニルエーテル類としては、例えばアルキルビニルエーテル、ビニルアリールエーテルが挙げられる。
【0034】
ビニルエステル類としては、例えばビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテートが挙げられる。
【0035】
スチレン類としては、例えばスチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ハロゲン化スチレン、カルボキシスチレンが挙げられる。
【0036】
クロトン酸エステル類としては、例えばクロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、グリセリンモノクロトネート等のクロトン酸アルキルが挙げられる。
【0037】
また、イタコン酸ジアルキル類、マレイン酸あるいはフマル酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル等が挙げられる。
【0038】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物は、多核フェノールを含有することができる。添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状等により変動するが、固形分に対して、0.001〜40質量%、0.01〜30質量%、0.1〜25質量%、又は0.1〜10質量%である。これら多核フェノールは自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、式(1)又は式(2)のポリマー中の架橋性官能基(例えば、ヒドロキシ基)に、多核フェノールが架橋反応を起こす事ができる。
【0039】
本発明に用いられる多核フェノールは、分子内に2乃至30個のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物である。また多核フェノールは、分子内に2乃至10個のフェノール基を有する化合物である。本発明に用いられる多核フェノールとは、フェノール基を有しそのフェノール基には少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシ基を有している。本発明に用いられる多核フェノールは、フェノール基を有する部分から構成されることも、フェノール基を有する部分とフェノール基以外の部分との組み合わせから構成されることも可能である。
【0040】
多核フェノールは式(b−1)、(b−2)、(b−3)、又はそれらの組み合わせが用いられる。
【0041】
式(b−1)中、R
11はそれぞれベンゼン環の水素原子の置換基であって、ヒドロキシ基、ハロゲン基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜25のアリールアルキル基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニル基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルキルカルボニルアミノ基、炭素原子数7〜10のアリールオキシアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基又はそれらの組み合わせからなる有機基を示し、R
12は単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2〜4価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2〜4価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m1は1〜5の整数であり、n1は0≦n1≦5−m1を満たす整数であり、qは2〜4の整数である。
【0042】
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、ハロゲン基としてはフッ素基、塩素基、臭素基、及びヨウ素基が挙げられる。
【0043】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−i−プロピル−シクロプロピル基、2−i−プロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。特にメチル基、エチル基等の直鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等が好ましい。
【0044】
上記R
12、R
15、R
19、R
20に用いられる炭化水素基は、上記アルキル基が2価、2〜4価、又は2〜6価の価数を持った有機基である。
【0045】
アリール基としては、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、及び9−フェナントリル基が挙げられる。
【0046】
アリールアルキル基としては、ベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、o−クロルベンジル基、m−クロルベンジル基、p−クロルベンジル基、o−フルオロベンジル基、p−フルオロベンジル基、o−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、フェネチル基、o−メチルフェネチル基、m−メチルフェネチル基、p−メチルフェネチル基、o−クロルフェネチル基、m−クロルフェネチル基、p−クロルフェネチル基、o−フルオロフェネチル基、p−フルオロフェネチル基、o−メトキシフェネチル基、p−メトキシフェネチル基、p−ニトロフェネチル基、p−シアノフェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、o−ビフェニリルメチル基、m−ビフェニリルメチル基、p−ビフェニリルメチル基、1−アントリルメチル基、2−アントリルメチル基、9−アントリルメチル基、1−フェナントリルメチル基、2−フェナントリルメチル基、3−フェナントリルメチル基、4−フェナントリルメチル基、9−フェナントリルメチル基、α−ナフチルエチル基、β−ナフチルエチル基、o−ビフェニリルエチル基、m−ビフェニリルエチル基、p−ビフェニリルエチル基、1−アントリルエチル基、2−アントリルエチル基、9−アントリルエチル基、1−フェナントリルエチル基、2−フェナントリルエチル基、3−フェナントリルエチル基、4−フェナントリルエチル基、及び9−フェナントリルエチル基が挙げられる。
【0047】
上記R
12、R
15、R
19、R
20に用いられるアリールアルキル基は、上記アリールアルキル基が2価、2〜4価、又は2〜6価の価数を持った有機基である。
【0048】
アルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、シクロプロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、s−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、シクロブチルカルボニル基、1−メチル−シクロプロピルカルボニル基、2−メチル−シクロプロピルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、1−メチル−n−ブチルカルボニル基、2−メチル−n−ブチルカルボニル基、3−メチル−n−ブチルカルボニル基、1,1−ジメチル−n−プロピルカルボニル基、1,2−ジメチル−n−プロピルカルボニル基、2,2−ジメチル−n−プロピルカルボニル基、1−エチル−n−プロピルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、1−メチル−シクロブチルカルボニル基、2−メチル−シクロブチルカルボニル基、3−メチル−シクロブチルカルボニル基、1,2−ジメチル−シクロプロピルカルボニル基、2,3−ジメチル−シクロプロピルカルボニル基、1−エチル−シクロプロピルカルボニル基、2−エチル−シクロプロピルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、1−メチル−n−ペンチルカルボニル基、2−メチル−n−ペンチルカルボニル基、3−メチル−n−ペンチルカルボニル基、4−メチル−n−ペンチルカルボニル基、1,1−ジメチル−n−ブチルカルボニル基、1,2−ジメチル−n−ブチルカルボニル基、1,3−ジメチル−n−ブチルカルボニル基、2,2−ジメチル−n−ブチルカルボニル基、2,3−ジメチル−n−ブチルカルボニル基、3,3−ジメチル−n−ブチルカルボニル基、1−エチル−n−ブチルカルボニル基、2−エチル−n−ブチルカルボニル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピルカルボニル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピルカルボニル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピルカルボニル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、1−メチル−シクロペンチルカルボニル基、2−メチル−シクロペンチルカルボニル基、3−メチル−シクロペンチルカルボニル基、1−エチル−シクロブチルカルボニル基、2−エチル−シクロブチルカルボニル基、3−エチル−シクロブチルカルボニル基、1,2−ジメチル−シクロブチルカルボニル基、1,3−ジメチル−シクロブチルカルボニル基、2,2−ジメチル−シクロブチルカルボニル基、2,3−ジメチル−シクロブチルカルボニル基、2,4−ジメチル−シクロブチルカルボニル基、3,3−ジメチル−シクロブチルカルボニル基、1−n−プロピル−シクロプロピルカルボニル基、2−n−プロピル−シクロプロピルカルボニル基、1−i−プロピル−シクロプロピルカルボニル基、2−i−プロピル−シクロプロピルカルボニル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピルカルボニル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピルカルボニル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピルカルボニル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピルカルボニル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピルカルボニル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピルカルボニル基、及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピルカルボニル基等が挙げられる。
【0049】
アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、i−プロピルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、i−ブチルカルボニルオキシ基、s−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、シクロブチルカルボニルオキシ基、1−メチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2−メチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、1−メチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2−メチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、3−メチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,1−ジメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1,2−ジメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、2,2−ジメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、1−メチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、2−メチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、3−メチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、1,2−ジメチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2,3−ジメチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2−エチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、1−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、2−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、3−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、4−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、1,1−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,2−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,3−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2,2−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2,3−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、3,3−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1−エチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2−エチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−2−メチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、1−メチル−シクロペンチルカルボニルオキシ基、2−メチル−シクロペンチルカルボニルオキシ基、3−メチル−シクロペンチルカルボニルオキシ基、1−エチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、2−エチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、3−エチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、1,2−ジメチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、1,3−ジメチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、2,2−ジメチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、2,3−ジメチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、2,4−ジメチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、3,3−ジメチル−シクロブチルカルボニルオキシ基、1−n−プロピル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2−n−プロピル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、1−i−プロピル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2−i−プロピル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基、及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
アルキルカルボニルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、i−プロピルカルボニルアミノ基、シクロプロピルカルボニルアミノ基、n−ブチルカルボニルアミノ基、i−ブチルカルボニルアミノ基、s−ブチルカルボニルアミノ基、t−ブチルカルボニルアミノ基、シクロブチルカルボニルアミノ基、1−メチル−シクロプロピルカルボニルアミノ基、2−メチル−シクロプロピルカルボニルアミノ基、n−ペンチルカルボニルアミノ基、1−メチル−n−ブチルカルボニルアミノ基、2−メチル−n−ブチルカルボニルアミノ基、3−メチル−n−ブチルカルボニルアミノ基、1,1−ジメチル−n−プロピルカルボニルアミノ基、及び1,2−ジメチル−n−プロピルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0051】
アリールオキシアルキル基としては、フェニルオキシメチル基、o−メチルフェニルオキシエチル基、m−メチルフェニルオキシメチル基、p−メチルフェニルオキシプロピル基、o−クロルフェニルオキシメチル基、m−クロルフェニルオキシエチル基、p−クロルフェニルオキシイソプロピル基、o−フルオロフェニルオキシエチル基、p−フルオロフェニルオキシブトキシ基、o−メトキシフェニルオキシ−n−ペンチル基、p−メトキシフェニルオキシ−t−ブチル基、p−ニトロフェニルオキシメチル基、p−シアノフェニルオキシ−s−ブチル基、α−ナフチルオキシメチル基、β−ナフチルオキシエチル基、o−ビフェニリルオキシメチル基、m−ビフェニリルオキシメチル基、p−ビフェニリルオキシメチル基、1−アントリルオキシメチル基、2−アントリルオキシメチル基、9−アントリルオキシメチル基、1−フェナントリルオキシメチル基、2−フェナントリルオキシメチル基、3−フェナントリルオキシメチル基、4−フェナントリルオキシメチル基、及び9−フェナントリルオキシメチル基が挙げられる。
【0052】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、1−メチル−n−ブトキシ基、2−メチル−n−ブトキシ基、3−メチル−n−ブトキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、1,2−ジメチル−n−プロポキシ基、2,2−ジメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−n−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1−メチル−n−ペンチルオキシ基、2−メチル−n−ペンチルオキシ基、3−メチル−n−ペンチルオキシ基、4−メチル−n−ペンチルオキシ基、1,1−ジメチル−n−ブトキシ基、1,2−ジメチル−n−ブトキシ基、1,3−ジメチル−n−ブトキシ基、2,2−ジメチル−n−ブトキシ基、2,3−ジメチル−n−ブトキシ基、3,3−ジメチル−n−ブトキシ基、1−エチル−n−ブトキシ基、2−エチル−n−ブトキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ基、及び1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0053】
式(b−1)の化合物としては以下に例示される。
【化6】
【化7】
【0054】
式(b−2)中、R
13及びR
14はそれぞれ式(b−1)中のR
11と同じあり、R
15は単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2〜6価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2〜6価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m2及びm3はそれぞれ1〜5の整数であり、n2及びn3は0≦n2≦5−m2及び0≦n3≦5−m3を満たす整数であり、k及びsはそれぞれ1〜3の整数である。
【0055】
式(b−2)の化合物としては以下に例示される。
【化8】
【化9】
【0056】
式(b−3)中、R
16、R
17及びR
18はそれぞれ式(b−1)中のR
11と同じであり、R
19及びR
20はそれぞれ単結合、又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素原子数7〜25の2価のアリールアルキル基、若しくはスルホニル基を示し、m5は1〜4の整数であり、m4及びm6はそれぞれ1〜5の整数であり、n5は0≦n5≦4−m5を満たす整数であり、n4及びn6は0≦n4≦5−m4及び0≦n6≦5−m6の整数であり、tは1〜4の整数である。
【0057】
式(b−3)の化合物としては以下に例示される。
【化10】
【0058】
また、多核フェノールとしては以下の環状化合物も使用することができる。
【化11】
【0059】
本願発明に用いられる多核フェノールは、式(b−2)が好ましく、例えば式(b−2−11)で示されるビスフェノールSを好ましく使用することができる。
【0060】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物は、上塗りする電子線レジストとのインターミキシングを防ぐ意味で、塗布後加熱により架橋させることが好ましく、本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物は更に架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メチロール基、メトキシメチル基といった架橋形成置換基を有するメラミン系化合物、置換尿素系化合物、エポキシ基を有する高分子化合物等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコウリル又はメトキシメチル化メラミン等の化合物であり、特に好ましくは、テトラメトキシメチルグリコールウリル又はヘキサメトキシメチロールメラミンである。架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状等により変動するが、固形分に対して、0.001〜40質量%、0.01〜30質量%、0.1〜25質量%、又は1〜10質量%である。これら架橋剤は、自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、前記本発明のレジスト下層膜形成組成物に使用するポリマー中に架橋形成置換基が存在する場合は、それらの架橋形成置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0061】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物は、架橋反応を促進するための触媒として、酸化合物を添加することができる。酸化合物としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等の酸性化合物、又は/及び2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2−ニトロベンジルトシラート等の熱酸発生剤を配合する事が出来る。酸化合物の配合量は固形分当たり、0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%である。
【0062】
本発明の電子線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、リソグラフィー工程で上層に被覆されるレジストとの酸性度を一致させる為に、電子線照射により酸を発生する酸発生剤を添加する事が出来る。好ましい酸発生剤としては、例えばビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系酸発生剤類、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系酸発生剤類、ベンゾイントシレート、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸系酸発生剤類等が挙げられる。上記酸発生剤の添加量は固形分当たり0.02〜3質量%、好ましくは0.04〜2質量%である。
【0063】
上記ポリマー等を溶解させ電子線レジスト下層膜形成組成物を作成するための溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、又は2種以上の組合せで使用される。
【0064】
さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。これらの溶剤の中で、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノンがレベリング性の向上に対して好ましい。
【0065】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物には、上記以外に必要に応じて更なるレオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0066】
レオロジー調整剤は、主に電子線レジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特に加熱(ベーク)工程において、基板のホール内部への電子線レジスト下層膜形成組成物の充填性を高めるために添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジ−n−ブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジ−n−ブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、又はn−ブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、電子線レジスト下層膜形成組成物の全組成物に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0067】
接着補助剤は、主に基板あるいは電子線レジストと電子線レジスト下層膜の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないように添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア等の尿素、又はチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、電子線レジスト下層膜形成組成物の全組成物に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0068】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性を更に向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、メガフアックF171、F173(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明の全組成物当たり通常0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0069】
本発明における電子線用レジスト下層膜の上層に塗布される電子線レジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト等がある。
【0070】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物を使用して形成したレジスト下層膜を有するポジ型レジストの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、更に好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0071】
半導体装置に製造に使用される半導体基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンウエハ基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、低誘電率材料(low−k材料)被覆基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物が塗布され塗布膜が形成される。
【0072】
本発明では、電子線レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布し、加熱することにより電子線リソグラフィー用レジスト下層膜が形成される。
【0073】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物より形成される電子線レジスト下層膜の膜厚としては、基板表面上で、例えば1〜2000nmであり、1〜100nmであり、1〜20nm、又は5〜15nmである。
【0074】
また塗布後に加熱する条件としては、80〜350℃で0.5〜120分間である。その後レジスト下層膜上に直接、又は必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料を下層膜上に成膜した後、電子線レジストを塗布し、所定のマスクを通して電子線の照射を行い、現像、リンス、乾燥することにより良好なレジストパターンを得ることができる。必要に応じて電子線の照射後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行うこともできる。そして、電子線レジストが前記工程により現像除去された部分の電子線レジスト下層膜をドライエッチングにより除去し、所望のパターンを基板上に形成することができる。
【0075】
電子線レジストの電子線照射は、例えば電子線照射装置を用い照射することができる。
【0076】
本発明では、転写パターンを形成する加工対象膜を有する基板上に、電子線レジスト下層膜形成組成物を塗布し加熱して電子線レジスト下層膜を形成し、その上に電子線レジストを被覆し、この電子線レジスト下層膜と電子線レジストを被覆した基板に電子線を照射し、現像し、ドライエッチングにより基板上に画像を転写して集積回路素子を形成することにより半導体装置が製造される。
【0077】
本発明の電子線レジスト下層膜形成組成物を適用する半導体デバイスは、基板上に、パターンを転写する加工対象膜(加工対象基板)と、レジスト下層膜と、レジストが順に形成された構成を有する。このレジスト下層膜は、下地基板や電子線によって及ぼされる悪影響を低減することにより、ストレート形状の良好なレジストパターンを形成し、充分な電子線照射量に対するマージンを得ることができる。また、本レジスト下層膜は、上層に形成されるレジスト膜と比較して大きなドライエッチング速度を有し、ドライエッチング工程によって加工対象である下地膜に容易にレジストパターンを転写することができる。
【実施例】
【0078】
(合成例1)
10g(0.057モル)のベンジルメタクリレート、19.2g(0.133モル)のヒドロキシプロピルメタクリレート、及び10.8g(0.063モル)のγ−ブチロラクトンメタクリレートを、128gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し80℃まで昇温した。
その後、1.6gの2,2’−アゾビスイソ酪酸メチルを30.4gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ、窒素加圧下に添加し、80℃で24時間反応させポリマーを得た。得られたポリマー(樹脂)の重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で10000であった。
【0079】
(合成例2)
10g(0.057モル)のベンジルメタクリレート、19.2g(0.133モル)のヒドロキシプロピルメタクリレート、及び10.8g(0.063モル)のγ−ブチロラクトンメタクリレートを、120gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し60℃まで昇温した。
その後、0.4gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを39.6gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ、窒素加圧下に添加し、60℃で24時間反応させポリマーを得た。得られたポリマー(樹脂)の重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で87000であった。
【0080】
(合成例3)
10g(0.057モル)のベンジルメタクリレート、10g(0.069モル)のヒドロキシプロピルメタクリレート、及び10.3g(0.061モル)のγ−ブチルラクトンメタクリレートを、84.848gの乳酸エチルに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し70℃まで昇温した。
その後、0.364gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを36gの乳酸エチルに溶解させ、窒素加圧下に添加し、70℃で24時間反応させポリマーを得た。得られたポリマー(樹脂)の重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で22000であった。
【0081】
(合成例4)
10g(0.057モル)のベンジルメタクリレート、10g(0.069モル)のヒドロキシプロピルメタクリレート、及び10.3g(0.061モル)のγ−ブチロラクトンメタクリレートを、90.909gの乳酸エチルに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し70℃まで昇温した。
その後、0.909gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを29.394gの乳酸エチルに溶解させ、窒素加圧下に添加し、70℃で24時間反応させポリマーを得た。得られたポリマー(樹脂)の重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で12000であった。
【0082】
(合成例5)
10g(0.057モル)のベンジルメタクリレート、19.2g(0.133モル)のヒドロキシプロピルメタクリレート、及び10.8g(0.063モル)のγ−ブチロラクトンメタクリレートを、120gの乳酸エチルに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し60℃まで昇温した。
その後、0.4gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを39.6gの乳酸エチルに溶解させ、窒素加圧下に添加し、60℃で24時間反応させポリマーを得た。得られたポリマー(樹脂)の重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で82000であった。
【0083】
(合成例6)
10g(0.057モル)のベンンジルメタクリレート、27.778g(0.193モル)のヒドロキシプロピルメタクリレート、及び17.778g(0.104モル)のγ−ブチロラクトンメタクリレートを、155.556gの乳酸エチルに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し70℃まで昇温した。
その後、0.667gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを66gの乳酸エチルに溶解させ、窒素加圧下に添加し、70℃で24時間反応させポリマーを得た。得られたポリマー(樹脂)の重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で25000であった。
【0084】
(比較合成例1)
10g(0.057モル)のベンジルメタクリレート、及び19.2g(0.133モル)のヒドロキシプロピルメタクリレートを、128gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し80℃まで昇温した。
その後、1.6gの2,2’−アゾビスイソ酪酸メチルを30.4gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ、窒素加圧下に添加し、80℃で24時間反応させポリマーを得た。得られたポリマー(樹脂)の重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で20000であった。
【0085】
(実施例1)
合成例1で得られた樹脂1g、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル0.05g、架橋触媒としてピリジニウムp−トルエンスルホン酸0.003g、パターン形状調整剤としてビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン0.006g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル88.96gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gに溶解させ電子線レジスト下層膜形成組成物を得た。
シリコンウエハ上にスピナーを用い、上記の電子線レジスト下層膜形成組成物を塗布した。ホットプレート上で205℃1分間の加熱を行い、10nmの膜厚を有する電子線レジスト下層膜を形成した。そのレジスト下層膜上に電子線レジスト(東京応化工業(株)製、商品名:OEBR−CAP164A3 M3)をスピンコートし、100℃で60秒間の加熱を行い、電子線レジストを形成した。
その後、電子線露光装置((株)エリオニクス製、ELS−3700)を用い、所定の条件で描画した。描画はポイントビーム方式で電子線を照射した。描画後、100℃で60秒間の加熱(PEB)を行い、冷却後、現像及びリンス処理を行いレジストパターンを形成した。目標の線幅を30〜50nmのラインアンドスペース(L/S)として解像性の確認を行った(
図1〜
図3を参照)。いずれもパターン倒れがなくレジストパターンが解像していることがわかった。その後、ドライエッチングでレジスト下層膜にパターンを転写した後、更に基板の加工を行った。
【0086】
(実施例2)
実施例1において、合成例1で得られた樹脂1gの代わりに合成例2で得られた樹脂1gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
目標の線幅を30〜50nmのラインアンドスペース(L/S)として解像性の確認を行い、実施例1と同様の結果が得られたことを確認した。
【0087】
(実施例3)
実施例1において、合成例1で得られた樹脂1gの代わりに合成例3で得られた樹脂1gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
目標の線幅を30〜50nmのラインアンドスペース(L/S)として解像性の確認を行い、実施例1と同様の結果が得られたことを確認した。
【0088】
(実施例4)
実施例1において、合成例1で得られた樹脂1gの代わりに合成例4で得られた樹脂1gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
目標の線幅を30〜50nmのラインアンドスペース(L/S)として解像性の確認を行い、実施例1と同様の結果が得られたことを確認した。
【0089】
(実施例5)
実施例1において、合成例1で得られた樹脂1gの代わりに合成例5で得られた樹脂1gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
目標の線幅を30〜50nmのラインアンドスペース(L/S)として解像性の確認を行い、実施例1と同様の結果が得られたことを確認した。
【0090】
(実施例6)
実施例1において、合成例1で得られた樹脂1gの代わりに合成例6で得られた樹脂1gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
目標の線幅を30〜50nmのラインアンドスペース(L/S)として解像性の確認を行い、実施例1と同様の結果が得られたことを確認した。
【0091】
(比較例1)
実施例1において、合成例1で得られた樹脂1gの代わりに比較合成例1で得られた樹脂1gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
目標の線幅の30〜50nmのラインアンドスペース(L/S)ではパターン倒れが発生し、鮮明なパターンの形成ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
下地基板や電子線によって及ぼされる悪影響を低減して、ストレート形状の良好なレジストパターンを形成し、レジスト層とのインターミキシングが起こらず、レジストに比較して大きなドライエッチング速度を有する電子線リソグラフィー用レジスト下層膜を提供する。