(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1分子中に少なくとも2個の一級チオール基を有するチオール化合物(i)、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)を反応させて得られる、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有するチオアセタール化合物(a)と、少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(b)を反応させて得られる、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)、分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(II)を含有してなる熱硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個の一級チオール基を有するチオール化合物(i)、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)を反応させて得られる、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有するチオアセタール化合物(a)と、少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(b)を反応させて得られる、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)、分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(II)を含有してなる熱硬化性樹脂組成物である。
以下、各成分について順に説明する。
【0012】
(分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I))
分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)は、1分子中に少なくとも2個の一級チオール基を有するチオール化合物(i)、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)を反応させて得られる、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有するチオアセタール化合物(a)と、少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(b)を反応させて得られる。
ここで、チオアセタールとは、RCH(SR’)
2のような構造を有するもので、アゾメチンとは、シッフ塩基(−N=CH−)を意味する。
【0013】
1分子中に少なくとも2個の一級チオール基を有するチオール化合物(i)[以下、チオール化合物(i)と略称することがある。]は、好ましくは、1分子中に3個又は4個のチオール基を有するチオール化合物であり、より好ましくは1分子中に3個の一級チオール基を有するチオール化合物である。
該チオール化合物(i)は、好ましくは下記一般式(ia)、(ib)、(ic)で表される。
【0014】
【化1】
(一般式(ia)、(ib)、(ic)中、A
1は、芳香族又は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素又は複素環である。)
【0015】
チオール化合物(ia〜ic)としては、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール、トリチオシアヌル酸、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
これらの中で、反応時の反応性が高く、より高耐熱性化できるトリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート等が好ましい。低熱膨張性及び誘電特性の観点からは、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)が好ましい。
【0017】
1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)[以下、単に芳香族アルデヒド化合物(ii)と称することがある。]は、好ましくは、1分子中に2個又は3個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物であり、より好ましくは1分子中に2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物である。
該芳香族アルデヒド化合物(ii)は、芳香族炭化水素基を有しており、その限りにおいて、脂肪族炭化水素基を併せ持っていてもよい。例えば、分子内に芳香族炭化水素基−脂肪族炭化水素基−芳香族炭化水素基という構造を有していている場合も、芳香族アルデヒド化合物(ii)に含まれる。
芳香族アルデヒド化合物(ii)は、好ましくは下記一般式(ii)で表される。
【0018】
【化2】
(一般式(ii)中、A
11は、下記一般式(11)又は(12)で表される基である。)
【0019】
【化3】
(一般式(11)中、R
11は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。p1は0〜4の整数である。)
【0020】
【化4】
(一般式(12)中、R
12及びR
13は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
12は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(13)で表される基である。q1及びr1は各々独立に0〜4の整数である。)
【0021】
【化5】
(一般式(13)中、R
14及びR
15は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
13は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s1及びt1は各々独立に0〜4の整数である。)
【0022】
R
11が表す脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、R
11としては炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
p1は0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p1が2以上の整数である場合、複数のR
11同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
R
12及びR
13が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R
11の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基、エチル基、さらに好ましくはエチル基である。
A
12が表す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
A
12が表す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
A
12としては、上記選択肢の中でも、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述の通りである。
q1及びr1は各々独立に0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は2である。q1又はr1が2以上の整数である場合、複数のR
12同士又はR
13同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
R
14及びR
15が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R
12及びR
13の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
A
13が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基としては、A
12が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
A
13としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2〜5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述の通りである。
s1及びt1は0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s1又はt1が2以上の整数である場合、複数のR
14同士又はR
15同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(13)は、下記一般式(13’)で表されることが好ましい。
【0025】
【化6】
(一般式(13’)中のA
13、R
14、R
15、s1及びt1は、一般式(13)中のものと同じである。)
【0026】
なお、A
11としては、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、前記一般式(11)で表される基であることが好ましく、下記一般式(11’)で表される基であることがより好ましい。
【0027】
【化7】
(一般式(11’)中、R
11及びp1は、一般式(11)中のものと同じである。)
【0028】
芳香族アルデヒド化合物(ii)としては、テレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、2,2´−ビピリジン−4,4´−ジカルボキシアルデヒド等が挙げられる。これらの中で、例えば、より低熱膨張化が可能であり、反応時の反応性が高く、溶剤溶解性にも優れ、商業的にも入手しやすいテレフタルアルデヒドが好ましい。
【0029】
少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(b)[以下、単にシロキサン化合物(b)と称することがある。]は、分子両末端それぞれに1個以上の一級アミノ基を有することが好ましく、分子両末端それぞれに1個の一級アミノ基を有することがより好ましく、分子両末端のみにそれぞれ1個の一級アミノ基を有することがさらに好ましい。
シロキサン化合物(b)は、直鎖状のシロキサン骨格を有し、好ましくは、分子中にジメチルシリコーン骨格を有する。
シロキサン化合物(b)のアミノ基当量は、好ましくは200〜7000、より好ましくは300〜6000、さらに好ましくは400〜4000、特に好ましくは600〜3000である。
【0030】
シロキサン化合物(b)としては、市販品を用いることができ、「KF−8010」(アミノ基当量430)、「X−22−161A」(アミノ基当量800)、「X−22−161B」(アミノ基当量1500)、「KF−8012」(アミノ基当量2200)、「KF−8008」(アミノ基当量5700)、「X−22−9409」(アミノ基当量700)、「X−22−1660B−3」(アミノ基当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY−16−853U」(アミノ基当量460)、「BY−16−853」(アミノ基当量650)、「BY−16−853B」(アミノ基当量2200)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられ、これらは1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中で、例えば、合成時の反応性、及び低熱膨張性の観点から、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、X−22−1660B−3、BY−16−853Bが好ましく、相溶性に優れ、高弾性率化できるX−22−161A、X−22−161Bがより好ましく、X−22−161Bがさらに好ましい。
【0031】
(分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)の製造方法)
始めに、1分子中に少なくとも2個の一級チオール基を有するチオール化合物(i)と、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)を有機溶媒中で脱水縮合反応[以下、脱水縮合反応1と称する。]させることにより、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有するチオアセタール化合物(a)を得る。次いで、前記化合物と、少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(b)を有機溶媒中で脱水縮合反応[以下、脱水縮合反応2と称する。]させることにより、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)を得ることができる。
該反応方法によれば、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)の分子中における、チオアセタールの分子量制御が容易であり、これを含有する樹脂組成物の接着強度向上や高弾性率化特に有効である。
【0032】
各脱水縮合反応に使用し得る有機溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤;γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは、1種類を単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
これらの中で、例えば、溶解性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトンが好ましく、揮発性が高くプリプレグ及び樹脂付フィルムの製造時に残溶剤として残りにくいプロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエンがより好ましい。
また、前記反応は脱水縮合反応であるため副生成物として水が生成される。この副生成物である水を除去する目的で、例えば、芳香族系溶剤との共沸により副生成物である水を除去しながら反応することが好ましい。
【0033】
各脱水縮合反応には、必要により任意に反応触媒を使用することができ、反応触媒としては、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは、1種類を単独で又は2種以上を混合して使用できる。脱水縮合反応を効率よく進行させるという観点から、酸性触媒が好ましく、p−トルエンスルホン酸がより好ましい。
【0034】
(脱水縮合反応1)
始めに、チオール化合物(i)と芳香族アルデヒド化合物(ii)を有機溶媒中で脱水縮合反応させることにより、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有するチオアセタール化合物(a)[以下、単にチオアセタール化合物(a)と称することがある。]を得る。
ここで、チオール化合物(i)と芳香族アルデヒド化合物(ii)の使用量は、例えば、芳香族アルデヒド化合物(ii)のアルデヒド基数〔芳香族アルデヒド化合物(ii)の使用量/芳香族アルデヒド化合物(ii)のアルデヒド基当量〕が、チオール化合物(i)の一級チオール基数〔チオール化合物(i)の使用量/チオール化合物(i)の一級チオール基当量〕の1.1〜5倍になるように使用することが好ましく、1.5〜5倍になるように使用することがより好ましく、2〜4倍になるように使用することがさらにこのましい。1.1倍以上とすることにより、反応を十分に進行させ、且つ生成物がホルミル基を有するようになり、また、5倍以下とすることにより、金属との高接着性などの特性を発現するのに必要なチオアセタール数を確保できる。
【0035】
また、脱水縮合反応1における有機溶媒の使用量は、例えば、チオール化合物(i)、芳香族アルデヒド化合物(ii)の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることがさらに好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性が不足することなく、また2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要することがない。
【0036】
上記の原料、有機溶媒、必要により反応触媒を反応器に仕込み、必要により加熱又は保温しながら0.1〜10時間攪拌し脱水縮合反応させることにより、チオアセタール化合物(a)が得られる。
反応温度は、例えば、70〜150℃が好ましく、副生成物である水を除去しながら反応することが好ましく、100〜130℃がより好ましい。70℃以上とすることにより、反応速度が遅くなることがなく、150℃以下とすることにより、反応溶媒に高沸点の溶媒を必要とせず、プリプレグ又は樹脂付フィルムを製造する際、残溶剤が残りにくく、耐熱性が低下することがない。
【0037】
(脱水縮合反応2)
次いで、前記脱水縮合反応1により得られたチオアセタール化合物(a)と、少なくとも2個のアミノ基を有するシロキサン化合物(b)とを有機溶媒中で脱水縮合反応させることにより、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)を得ることができる。
ここで、チオアセタール化合物(a)とシロキサン化合物(b)の使用量は、例えば、シロキサン化合物(b)の一級アミノ基数〔シロキサン化合物(b)の使用量/シロキサン化合物(b)の一級アミノ基当量〕が、チオアセタール化合物(a)のアルデヒド基数〔チオアセタール化合物(a)の使用量/チオアセタール化合物(a)のアルデヒド基当量〕の1〜10倍の範囲になるように使用されることが好ましい。1倍以上とすることにより、溶媒への溶解性が低下することなく、また、10倍以下とすることにより、チオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)を含有する熱硬化性樹脂の接着性が低下することがない。
【0038】
また、脱水縮合反応2における有機溶媒の使用量は、例えば、チオアセタール化合物(a)、シロキサン化合物(b)の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることがさらに好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性が不足することなく、また2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要することがない。
【0039】
上記の原料、有機溶媒、必要により反応触媒を反応器に仕込み、必要により加熱又は保温しながら0.1〜10時間攪拌し脱水縮合反応させることにより、チオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)が得られる。
反応温度は、例えば、70〜150℃が好ましく、副生成物である水を除去しながら反応することが好ましく、100〜130℃がより好ましい。70℃以上とすることにより、反応速度が遅くなることがなく、150℃以下とすることにより、反応溶媒に高沸点の溶媒を必要とせず、プリプレグ又は樹脂付フィルムを製造する際、残溶剤が残りにくく、耐熱性が低下することがない。
【0040】
上記の脱水縮合反応1及び2を経て得られたチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)は、IR測定を行うことにより確認することができる。IR測定により、−CH
2−S−に起因する1440cm
−1付近のピークとアゾメチン基(−N=CH−)に起因する1620cm
−1のピークが出現することを確認し、また、一級アミノ基に起因する3440cm
−1及び3370cm
−1付近のピークが存在することを確認することにより、良好に反応が進行し、所望の化合物が得られていることを確認することができる。
【0041】
また、芳香族アゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、8,000〜400,000が好ましく、15,000〜250,000がより好ましいく、30,000〜70,000がさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が8,000以上であれば、低硬化収縮性、低熱膨張性が低下するおそれが少なく、400,000以下であれば、相溶性及び弾性率が低下するおそれが少ない。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものであり、例えば、以下条件で行うことができる。
測定装置としては、例えば実施例に記載の装置やオートサンプラー(AS−8020、東ソー株式会社製)、カラムオーブン(860−C0、日本分光株式会社製)、RI検出器(830−RI、日本分光株式会社製)、UV/VIS検出器(870−UV、日本分光株式会社製)、HPLCポンプ(880−PU、日本分光株式会社製)を使用することが可能である。
また、使用カラムとしては、例えば、東ソー株式会社製のTSKgel SuperHZ2000及び2300を使用でき、測定条件としては、例えば、測定温度40℃、流量0.5ml/min、溶媒をテトラヒドロフランとすることで、測定可能である。
【0042】
(分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(II))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(II)[以下、単にマレイミド化合物(II)と称することがある。]を含有してなるものである。
マレイミド化合物(II)は、下記一般式(II)で表されるマレイミド化合物が好ましい。
【0043】
【化8】
(一般式(II)中、A
31は、下記一般式(31)、(32)、(34)又は(35)で表される基である。)
【0044】
【化9】
(一般式(31)中、R
31は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。p2は0〜4の整数である。)
【0045】
【化10】
(一般式(32)中、R
32及びR
33は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
32は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(33)で表される基である。q2及びr2は各々独立に0〜4の整数である。)
【0046】
【化11】
(一般式(33)中、R
34及びR
35は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
33は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s2及びt2は各々独立に0〜4の整数である。)
【0047】
【化12】
(一般式(34)中、n2は0〜10の整数である。)
【0048】
【化13】
(一般式(35)中、R
36及びR
37は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である。u2は1〜8の整数である。)
【0049】
R
31が表す脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、R
31としては炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
p2は0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p2が2以上の整数である場合、複数のR
31同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
R
32及びR
33が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R
31の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基、エチル基、さらに好ましくはエチル基である。
A
32が表す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
A
32が表す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
A
32としては、上記選択肢の中でも、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述の通りである。
q2及びr2は各々独立に0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は2である。q2又はr2が2以上の整数である場合、複数のR
32同士又はR
33同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
R
34及びR
35が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R
32及びR
33の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
A
33が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基としては、A
32が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
A
33としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2〜5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述の通りである。
s2及びt2は0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s2又はt2が2以上の整数である場合、複数のR
34同士又はR
35同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(33)は、下記一般式(33’)で表されることが好ましい。
【0052】
【化14】
(一般式(33’)中のA
33、R
34、R
35、s2及びt2は、一般式(33)中のものと同じである。)
【0053】
なお、A
31としては、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、前記一般式(32)で表される基であることが好ましく、下記一般式(32’)で表される基であることがより好ましい。
【0054】
【化15】
(一般式(32’)中のA
32、R
32、R
33、q2及びr2は、一般式(32)中のものと同じである。)
【0055】
前記一般式(34)中、n2は、入手容易性の観点から、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3である。
前記一般式(35)中、R
36及びR
37が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、R
31の脂肪族炭化水素基の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
u2は1〜8の整数であり、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは1である。
【0056】
一般式(II)で表される基の中のA
31としては、耐熱性、接着性、ガラス転移温度(Tg)、低熱膨張性、弾性率、低硬化収縮性及び高周波特性の観点から、下記式のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0058】
マレイミド化合物(II)としては、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3´−ジメチル−5,5´−ジエチル−4,4´−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
【0059】
これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3´−ジメチル−5,5´−ジエチル−4,4´−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、溶剤への溶解性の観点から、3,3´−ジメチル−5,5´−ジエチル−4,4´−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、安価であるという観点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンがさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中のマレイミド化合物(II)の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物の固形分(但し、無機充填材を除く。)の総和100質量部に対して、好ましくは30〜80質量部、より好ましくは35〜65質量部である。この範囲であれば、弾性率及び低熱膨張性が向上するため好ましい。
【0060】
(他の成分)
(酸性置換基を有するアミン化合物(III))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに酸性置換基を有するアミン化合物(III)を含有してなるものであってもよい。アミン化合物(III)が有する酸性置換基の数は、好ましくは1つ又は2つであり、より好ましくは1つである。
ここで、酸性置換基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸性置換基を有するアミン化合物(III)は、水酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基から選択される少なくとも1つを有することが好ましい。
酸性置換基を有するアミン化合物(III)としては、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらの中で、溶解性や合成の収率の観点から、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の観点から、m−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましく、低熱膨張性の観点から、p−アミノフェノールがさらに好ましい。
【0061】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が酸性置換基を有するアミン化合物(III)を含有してなる場合、その含有量としては、熱硬化性樹脂組成物中の固形分(但し、無機充填材を除く。)の総和100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは0.7〜15質量部である。この範囲とすることで、耐熱性及び低熱膨張性が向上する。
【0062】
以上の、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)、マレイミド化合物(II)及び酸性置換基を有するアミン化合物(III)は、それぞれそのまま熱硬化性樹脂組成物に含有されていてもよいし、必要に応じて例えば加熱又は保温することによって各成分の少なくとも一部を反応させてから用いてもよいし、さらに、必要に応じて熱硬化性樹脂組成物に他の成分と共に含有させた後に、例えば加熱又は保温することによって各成分の少なくとも一部を反応させてもよい。ここで、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)とマレイミド化合物(II)とが反応したものを、分子構造中にチオアセタールを有する変性イミド樹脂(J)と称することがあり、また、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)とマレイミド化合物(II)と酸性置換基を有するアミン化合物(III)とが反応したものを、酸性置換基とチオアセタールを有する変性イミド樹脂(K)と称することがある。
なお、この場合の熱硬化性樹脂組成物中のマレイミド化合物(II)の含有量は、ゲル化の防止と耐熱性の観点から、マレイミド化合物(II)のマレイミド基の当量が、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)及び酸性置換基を有するアミン化合物(III)の一級アミノ基の当量を超える量であることが好ましい。なお、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)の含有量は、酸性置換基を有するアミン化合物(III)の含有量の7〜35倍程度であることが、耐熱性の観点から好ましい。
加熱する場合、温度は70〜200℃とすることが好ましく、反応時間は0.5〜10時間とすることが好ましい。
【0063】
上記反応の際に使用し得る有機溶媒としては、特に制限されないが、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらは、1種類を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であることや揮発性が高くプリプレグ又は樹脂付フィルムの製造時に残溶剤として残りにくいという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドがより好ましい。
有機溶媒の使用量は、溶解性と反応時間の観点から、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)、マレイミド化合物(II)及び酸性置換基を有するアミン化合物(III)の合計量100質量部当たり、25〜1000質量部とすることが好ましく、40〜700質量部とすることがより好ましい。
【0064】
(熱可塑性エラストマー(IV))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに熱可塑性エラストマー(IV)を含有してなるものであってもよい。
熱可塑性エラストマー(IV)としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマーやその誘導体等が挙げられる。これらは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分からなり立っており、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性に寄与している。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、耐熱性、絶縁信頼性の点で、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン由来の構造単位(下記参照)を有する熱可塑性エラストマーであれば特に制限はない。
【0066】
スチレン系熱可塑性エラストマーが有するスチレン由来の構造単位以外の構造単位としては、ブタジエン由来の構造単位、イソプレン由来の構造単位、マレイン酸由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位等が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記ブタジエン由来の構造単位及び前記イソプレン由来の構造単位は、水素添加されていることが好ましい。水素添加されている場合、ブタジエン由来の構造単位はエチレン単位とブチレン単位とが混合した構造単位となり、イソプレン由来の構造単位はエチレン単位とプロピレン単位とが混合した構造単位となる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、耐熱性、導体との接着性、ガラス転移温度、熱膨張係数、弾性率、及び高周波特性の観点から、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS、SBBS)、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)から選択される少なくとも1種類であることが好ましく、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS、SBBS)がより好ましい。
なお、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物としては、炭素−炭素二重結合の水素添加率が通常90%以上(好ましくは95%以上)であるSEBSと、ブタジエンブロック中の1,2−結合部位の炭素−炭素二重結合が部分的に水素添加されたSBBS(全体の炭素−炭素二重結合に対する水素添加率はおよそ60〜85%)とがある。これらの中でも、SEBSがより好ましい。
【0067】
また、熱可塑性エラストマー(IV)としては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基などが挙げられる。これら反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、樹脂への相溶性が向上し、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができ、結果として、基板の反りを顕著に低減することが可能となる。
また、上記分子末端又は分子鎖中に有する反応性官能基は、金属箔との密着性の観点から、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基が好ましく、耐熱性、絶縁信頼性の観点から、エポキシ基、水酸基、アミノ基がより好ましい。
【0068】
熱硬化性樹脂組成物が熱可塑性エラストマー(IV)を含有してなる場合、その含有量は、樹脂の相溶性が良く、硬化物の低硬化収縮性、低熱膨張性を効果的に発現できるという観点から、熱硬化性樹脂組成物の固形分(但し、無機充填材を除く。)の総和100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、2〜30質量部がより好ましく、5〜30質量部がさらに好ましい。
【0069】
(熱硬化性樹脂(V))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに熱硬化性樹脂を含有してなるものであってもよい。熱硬化性樹脂(V)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を混合して使用できる。これらの中で、成形性及び電気絶縁性の観点から、エポキシ樹脂、シアネート樹脂が好ましい。
【0070】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。ここで、エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類され、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂やナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂;トリアジン骨格含有エポキシ樹脂;フルオレン骨格含有エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;これらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などに分類される。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を混合して使用できる。
これらの中で、耐熱性及び難燃性の観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂が好ましい。
【0071】
また、シアネート樹脂としては、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマー等を挙げることができる。これらの中で、耐熱性及び難燃性の観点から、ノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を混合して使用できる。
熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(V)を含有してなる場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の固形分(但し、無機充填材を除く。)の総和100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、1〜20質量部がさらに好ましい。
【0072】
(硬化促進剤(VI))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(VI)を含有してなるものであってもよい。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、硬化促進剤としては、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2−エチル−4−メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N−メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、リン酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の三級ホスフィン;前記三級ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム、テトラp−トリルボレート等のホウ素原子に結合したフェニル基がないテトラ置換ホスホニウム及びテトラ置換ボレート;テトラフェニルホスホニウムとフェノール化合物との塩などが挙げられる。
イミダゾール類及びその誘導体とポリイソシアネート化合物を反応することにより得られるイミダゾール誘導体(イソシアネートマスクイミダゾール)、イミダゾール基がエポキシ樹脂と反応することにより得られるイミダゾール誘導体が、好ましい。
硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂100質量部当たり、0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることがより好ましく、0.1〜1質量部とすることが特に好ましい。硬化促進剤の使用量を0.1質量部以上とすることにより優れた耐熱性、銅箔接着性が得られ、また10質量部以下とすることにより耐熱性、経日安定性及びプレス成形性が低下しない。
【0073】
熱硬化性樹脂がシアネート樹脂を含む場合、硬化促進剤としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属触媒類が用いられ、具体的には、2−エチルヘキサン酸塩やナフテン酸塩等の有機金属塩化合物及びアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。配合量は、シアネート樹脂1(g)に対して1〜300ppmとすることが好ましく、2〜200ppmとすることがより好ましく、2〜150ppmとすることがさらに好ましい。硬化促進剤の配合量が、1ppm未満では反応性及び硬化性が不十分となる傾向があり、300ppmを超えると反応の制御が難しくなったり、硬化が速くなりすぎて成形性が悪くなる傾向がある。
【0074】
(無機充填材(VII))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに無機充填材(VII)を含有してなるものであってもよい。無機充填材(VII)としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラス等が挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。無機充填材は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)が挙げられる。これらの中で、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性の観点から、溶融シリカが好ましい。
【0075】
無機充填材として溶融シリカを用いる場合、その平均粒子径に特に制限はないが、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2μm、特に好ましくは0.2〜1μmである。溶融シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、高充填した際の流動性を良好に保つことができ、また、10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らして粗大粒子に起因する不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0076】
無機充填材の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中の固形分の総和(但し、無機充填材を除く。)100質量部に対して、好ましくは0〜300質量部、より好ましくは50〜270質量部、さらに好ましくは100〜250質量部、特に好ましくは150〜230質量部である。無機充填材の配合量をこの範囲とすることで、プリプレグ及び樹脂付フィルムの成形性と低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0077】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、樹脂組成物として熱硬化性の性質を損なわない程度に、熱可塑性樹脂、有機充填材、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等を含有していてもよい。これらは、1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0078】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
【0079】
(有機充填材)
有機充填材の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる均一構造の樹脂フィラー、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層とを持つコアシェル構造の樹脂フィラー等が挙げられる。
【0080】
(難燃剤)
難燃剤としては、リン系難燃剤、金属水和物、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。環境問題の観点から、リン系難燃剤及び金属水和物が好ましく、ハロゲン系難燃剤に関しては、通常、廃棄又は燃焼させない電子部品用途への使用に限定される。
無機系のリン系難燃剤としては、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシド等が挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、芳香族リン酸エステル、1置換ホスホン酸ジエステル、2置換ホスフィン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物等が挙げられる。
金属水和物としては、水酸化アルミニウムの水和物、水酸化マグネシウムの水和物等が挙げられる。
ハロゲン系難燃剤としては、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤等が挙げられる。
【0081】
(紫外線吸収剤等)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系及びヒンダードアミン系の酸化防止剤が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンジルケタール系、及びチオキサントン系の光重合開始剤が挙げられる。蛍光増白剤としては、例えばスチルベン誘導体の蛍光増白剤が挙げられる。接着性向上剤としては、尿素シラン等の尿素化合物;シラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤などが挙げられる。
また、配合時、無機充填材をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤で前処理、又はインテグラルブレンド処理することも好ましい。
【0082】
(有機溶媒)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグ又は樹脂付フィルムを製造し易くする観点から、有機溶剤を含有させてワニスの状態にしてもよく、またワニスの状態にすることが好ましい。なお、本明細書では、該ワニスを樹脂ワニスと称することがある。
該有機溶剤としては、特に制限されないが、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤を含む、窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤を含む硫黄原子含有溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤を含むエステル系溶剤などが挙げられる。
有機溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤が好ましく、ケトン系溶剤がより好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンがさらに好ましく、メチルエチルケトンが特に好ましい。
最終的に得られるワニスの固形分(不揮発分)濃度は、ワニス全体の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ワニス中の樹脂組成物の含有量を40〜90質量%にすることで、塗工性を良好に保ち、熱硬化性樹脂組成物が適量付着したプリプレグ及び樹脂付フィルムを得ることができる。
【0083】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、前記した本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸する方法又は基材に含浸もしくは吹付けた後、押出し、スリット等の方法で塗工(まとめて、「含浸又は塗工」と表記することがある。)してなるものである。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工し、例えば加熱等により半硬化(Bステージ化)することにより得られる。該基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル及びポリテトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。他の用途では、例えば、繊維強化基材であれば、炭素繊維を用いることが可能である。
【0084】
これらの基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。基材の厚さは、例えば、約0.02〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
【0085】
本発明のプリプレグは、例えば、該基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて得ることができる。
【0086】
[樹脂付フィルム]
本発明の樹脂付フィルムは、前記熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗工して得られる。具体的には、本発明の樹脂付フィルムは、熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体表面に形成されているものである。前記熱硬化性樹脂組成物を、支持体フィルムに塗布し、乾燥することによって有機溶剤を揮発させ、半硬化(Bステージ化)させて樹脂組成物層を形成することができる。但し、この半硬化状態は、熱硬化性樹脂組成物を硬化する際に、絶縁樹脂層とそれを形成する回路パターン基板の接着力が確保される状態で、また、回路パターン基板の埋めこみ性(流動性)が確保される状態であることが好ましい。塗工方法(塗工機)としては、ダイコーター、コンマコータ、バーコータ、キスコータ、ロールコーター等が利用でき、絶縁樹脂層の厚みによって適宜使用される。乾燥方法としては、加熱又は熱風吹きつけなどを用いることができる。
【0087】
熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布した後の乾燥条件は、例えば、該熱硬化性樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が通常の10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、絶縁樹脂組成物層が形成される。乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することが好ましい。
【0088】
樹脂付フィルムにおいて形成される絶縁樹脂組成物層の厚さは、通常、回路基板が有する導体層の厚さ以上とする。導体層の厚さは、例えば、5〜70μmが好ましく、多層プリント配線板の軽薄短小化のために、5〜50μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。
【0089】
樹脂付フィルムにおける支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等からなるフィルム;離型紙;銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。なお、支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してもよい。
【0090】
支持体の厚さは、例えば、10〜150μmが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。熱硬化性樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、例えば1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、異物混入を防止することができる。
樹脂付フィルムは、ロール状に巻き取って貯蔵することもできる。
【0091】
本発明の樹脂付フィルムを用いて積層板を形成し、多層プリント配線板を製造する方法の形態としては、例えば、樹脂付フィルムを、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。回路基板に用いられる基板としては、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる積層板及び該積層板から製造される多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0092】
上記ラミネートにおいて、樹脂付フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて樹脂付フィルム及び回路基板をプレヒートし、樹脂付フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の樹脂付フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネート条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは0.1〜1.1MPaとし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0093】
樹脂付フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁樹脂層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150〜220℃で20〜180分、より好ましくは160〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0094】
絶縁樹脂層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
【0095】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁樹脂層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、まず、硬化した絶縁樹脂組成物層の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法等を用いることができる。
【0096】
[積層板]
本発明の積層板は、前述の本発明のプリプレグ又は樹脂付フィルムを用いて、積層成形して、形成することができる。本発明のプリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅又はアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。
積層板を製造する際の成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、積層板を製造することもできる。
【0097】
[多層プリント配線板]
本発明に係る多層プリント配線板は、前記積層板の表面に回路を形成して製造される。例えば、本発明に係る積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し回路基板を得ることができる。そして、前述のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化する。その後、ドリル加工、レーザー加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
【0098】
[半導体パッケージ]
本発明に係る半導体パッケージは、前記多層プリント配線板の所定の位置に半導体チップやメモリ等を搭載し製造される。
【実施例】
【0099】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例で得られた銅張積層板は、以下の方法で性能を測定・評価した。
【0100】
(1)樹脂板の硬化収縮率
各例で得た樹脂板を切り取り5mm角の樹脂板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。樹脂板を前記装置にZ方向に装着後、荷重5g、昇温速度45℃/分とし、20℃(5分保持)〜260℃(2分保持)〜20℃(5分保持)の温度プロファイルにて測定した。樹脂板の初期寸法と昇温開始前の20℃及び昇温後の20℃での寸法変化量から樹脂板の硬化収縮率を評価した。
【0101】
(2)高周波特性(誘電率及び誘電正接)
各例で得た銅張積層板をエッチング除去した後、縦60mm、横2mmのサイズに切断して、雰囲気温度25℃で、10GHzにおけるDk及びDfを空胴共振器法により得られる共振周波数と無負荷Q値から算出した。測定器にはアジレントテクノロジー社製ベクトル型ネットワークアナライザE8364B、株式会社関東電子応用開発製CP531(10GHz共振器)及びCPMA−V2(プログラム)をそれぞれ使用して行った。
【0102】
(3)銅付きはんだ耐熱性の評価
各例で得た銅張積層板から25mm角の評価基板を作製し、温度288℃のはんだ浴に、120分間評価基板をフロートし、外観を目視にて観察することにより、銅付きはんだ耐熱性を下記評価基準に従って評価した。
A:膨れなし
C:膨れあり
【0103】
(4)銅箔接着性(銅箔ピール強度)
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより3mm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(90°ピール強度)を測定した。
なお、配線板としては、0.7KN/m以上のピール強度が好ましい。
【0104】
(5)ガラス転移温度(Tg)
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における熱膨張曲線の異なる接線の交点で示されるTgを求め、耐熱性を評価した。
【0105】
(6)熱膨張率
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析をおこなった。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率(線膨張率)の値とした。
【0106】
(7)曲げ弾性率
各例で得た銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた縦50mm、横25mmの評価基板を作製し、株式会社オリエンテック製の5トンテンシロンを用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmで測定した。
なお、配線板としては、28GPa以上の曲げ弾性率が好ましい。
【0107】
各例では、以下の製造実施例で製造した化合物(I−1)〜(I−2)、(J−1)、(K−1)を用いた。
【0108】
製造実施例1:分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、1分子中に少なくとも2個の一級チオール基を有するチオール化合物(i)としてトリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)(i−1)「TMMP」(SC有機化学株式会社製)13.4g、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する芳香族アルデヒド化合物(ii)としてテレフタルアルデヒド(ii)「TPAL」(東レ・ファインケミカル株式会社製)17.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテル46.5gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、1分子中に少なくとも1個のアルデヒド基を有するチオアセタール化合物(a)であるチオアセタール化合物含有溶液(固形分濃度:60質量%)を得た。
次に、上記反応溶液に、少なくとも2個の一級アミノ基を有するシロキサン化合物(b)としてシロキサン化合物(b)「X−22−161B」(信越化学工業株式会社製、アミノ基当量1500)325.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル513.3gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−1)含有溶液(Mw:40000、固形分濃度:90質量%)を得た。
なお、IR測定により、アゾメチン基(−N=CH−)に起因する1620cm
−1のピークが出現することを確認し、また、一級アミノ基に起因する3440cm
−1及び3370cm
−1付近のピークが存在することを確認した。
【0109】
製造実施例2:分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(i−2)「PEMP」(SC有機化学株式会社製)15.4g、テレフタルアルデヒド(ii)「TPAL」(東レ・ファインケミカル株式会社製)21.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテル56.5gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、チオアセタール化合物含有溶液(固形分濃度:60質量%)を得た。
次に、上記反応溶液に、シロキサン化合物(b)「X−22−161B」(信越化学工業株式会社製、アミノ基当量1500)413.8g、プロピレングリコールモノメチルエーテル645.7gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮により脱水し、チオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−2)含有溶液(Mw:50000、固形分濃度:90質量%)を得た。
なお、IR測定により、アゾメチン基(−N=CH−)に起因する1620cm
−1のピークが出現することを確認し、また、一級アミノ基に起因する3440cm
−1及び3370cm
−1付近のピークが存在することを確認した。
【0110】
製造実施例3:分子構造中にチオアセタールを有する変性イミド樹脂(J−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、チオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−1)含有溶液(固形分濃度:90質量%)77.8g、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(c−2)246.9g、プロピレングリコールモノメチルエーテル425.3gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、チオアセタールを有する変性イミド樹脂(J−1)含有溶液(Mw:7000、固形分濃度:60質量%)を得た。
なお、該変性イミド樹脂(J−1)は、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)と、マレイミド化合物(II)とを予め反応させたものに相当する。
【0111】
製造実施例4:分子構造中に酸性置換基とチオアセタールを有する変性イミド樹脂(K−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、チオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I−1)含有溶液(固形分濃度:90質量%)94.7g、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(c−2)225.6g、p−アミノフェノール2.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル427.4gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、酸性置換基と芳香族アゾメチンを有する変性イミド樹脂(K−1)含有溶液(Mw:5000、固形分濃度:60質量%)を得た。
なお、該変性イミド樹脂(K−1)は、分子構造中にチオアセタールとアゾメチンを有するアミノ変性シロキサン化合物(I)と、分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(II)と、酸性置換基を有するアミンン化合物(III)とを予め反応させたものに相当する。
【0112】
ここで、上記製造実施例において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40)[東ソー株式会社製、商品名])を用いて3次式で近似した。GPCの条件は、以下に示す。
装置:(ポンプ:L−6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(検出器:L−3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(カラムオーブン:L−655A−52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])
カラム;TSKgel SuperHZ2000+TSKgel SuperHZ2300(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:20mg/5mL
注入量:10μL
流量:0.5mL/分
測定温度:40℃
【0113】
実施例1〜19、比較例1〜6
各成分を表1〜4に示す配合割合(質量部:但し、溶液の場合は固形分換算値である。)で混合し、溶媒にメチルエチルケトンを用いて固形分(不揮発分)濃度65質量%のワニスを作製した。次に、このワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸及び塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量48質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを4枚重ね、12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
また、上記ワニスを、16μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムに、乾燥後の樹脂厚が35μmとなるようにフィルムアプリケーター(テスター産業株式会社製、PI−1210)を用いて塗布し、160℃で10分加熱乾燥し、半硬化物の樹脂粉を得た。
この樹脂粉をポリ四フッ化エチレン樹脂製の型枠(縦:4cm、横:3cm)に投入し、12μmの電解銅箔の光沢面を上下に配置し、圧力2.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行った後、電解銅箔を除去して、厚み1mmの樹脂板を得た。
得られた銅張積層板及び樹脂板を用いて試験又は評価した結果を表1〜4に示した。
【0114】
以下、表1〜4中の各成分について説明する。
マレイミド化合物(II)
(II−1)ビス(4−マレイミドフェニル)メタン〔ケイ・アイ化成株式会社製;商品名:BMI〕
(II−2)2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン〔大和化成工業株式会社製;商品名:BMI−4000〕
【0115】
酸性置換基を有するアミン化合物(III)
p−アミノフェノール〔関東化学株式会社製〕
【0116】
熱可塑性エラストマー(IV)
(IV−1)タフテック(登録商標)H1043:水添スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔旭化成ケミカルズ株式会社製〕
(IV−2)エポフレンド(登録商標)CT−310:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔株式会社ダイセル製〕
(IV−3)タフテック(登録商標)M1913:カルボン酸変性水添スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔旭化成ケミカルズ株式会社製〕
【0117】
熱硬化性樹脂(V)
(V−1)ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製;商品名:NC−7000L、より詳細には、α−ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〕
(V−2)ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製;商品名:NC−3000H〕
【0118】
硬化促進剤(VI)
(VI−1):イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬株式会社製、商品名:G−8009L、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2−エチル−4−メチルイミダゾールの付加反応物〕
(VI−2):トリフェニルホスフィントリフェニルボラン〔北興化学株式会社製、商品名:TPP−S〕
【0119】
無機充填材:溶融シリカ(株式会社アドマテックス製:商品名:SC2050−KNK、平均粒子径:0.5μm、表面処理:ビニルシランカップリング剤(1質量%/固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分濃度70質量%、密度2.2g/cm
3)
芳香族アミン化合物:4,4´−ジアミノ−3,3´−ジエチルジフェニルメタン〔日本化薬株式会社製、商品名:KAYAHARD A−A〕
芳香族アルデヒド化合物:テレフタルアルデヒド〔東レ・ファインケミカル株式会社製、TPAL〕
シロキサン化合物:X−22−161B〔信越化学工業株式会社製、アミノ基当量1500〕
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
表1〜4から明らかなように、実施例の熱硬化性樹脂組成物では、硬化収縮率が小さく、且つ低硬化収縮性に優れ、さらに耐熱性、熱膨張率、銅箔接着性、弾性率及び高周波特性に優れている。
一方、比較例の熱硬化性樹脂組成物では、樹脂板の硬化収縮率が大きく、また、積層板の特性においても、熱膨張率、銅箔接着性、弾性率及び高周波特性において実施例と比較し、いずれかの特性に劣っている。