【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る洗浄排液浄化方法、版洗浄方法および版洗浄装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における版洗浄装置を示す斜視図であり、図において、符号1は、版洗浄装置である。
【0030】
本実施形態に係る版洗浄装置1は、
図1に示すように、フレキシブルデバイスを製造する際に用いられるブランケット上に塗布したインクからインクの不要部分を除く除去凸版の洗浄装置とされて、除去凸版からインクの不要部分を除く版洗浄手段10と、洗浄排液を浄化・再生する浄化手段20とを有するものとされる。
【0031】
図2は、本実施形態における版洗浄手段を示す側断面図であり、
図3は、本実施形態における版洗浄手段を示す平断面図である。
版洗浄手段10は、版ステージを有する印刷機上に設置して用いられるものとされ、
図2,
図3に示すように、平板状の除去凸版Wを、除去凸版Wの主面が水平面Sに平行になるように保持する版ステージ11と、第一の凹部16が形成され、第一の凹部16が除去凸版Wに対向するとともに、除去凸版Wを覆うように設置されるチャンバ(蓋部)15と、チャンバ15の縁部に設けられたパッキン(封止部)21と、第一の凹部16内に配置された洗浄ノズル25、吸引ノズル30、及びエアナイフ(空気噴出ノズル)35と、版ステージ10に対して洗浄ノズル25を移動させるための移動機構40と、チャンバ15に設けられた洗浄液排出口50と、第二の凹部56が形成され第一の凹部16内に配置されたカバー55と、移動機構40を制御する制御部60とを備えている。なお、図においては、説明の便宜のため、吸引ノズル30及びエアナイフ35を示していなく、カバー55を2点鎖線で示している。ここで、水平面Sに平行な水平方向X、及び、水平面Sに平行であって水平方向Xに直交する直交方向(交差方向)Yをそれぞれ規定する。
【0032】
除去凸版Wは、シリコンウェハーや石英ガラス、無アルカリガラス、青板ガラス、SUS(ステンレス鋼)や銅、ニッケル等の金属や樹脂により構成される。除去凸版Wの表面はクロム等の金属をメッキしてもよく、シリカやダイヤモンドライクカーボン等の気相製膜をしても良い。
除去凸版Wの図示しない溝部は、モールディングやエレクトロフォーミング、フォトリソによるウェットエッチング/ドライエッチング、サンドブラスト、レーザー描画等で形成することができる。これらの除去凸版Wの中でも、ガラスをウェットエッチングで加工したものが広く用いられている。この理由は、加工が比較的容易であり、かつ、大面積、高解像度、高精度、凹凸形状がシャープなためである。一方で、ガラス製の除去凸版Wは物理的に脆弱なために、ドクターやブラシを使った接触式洗浄方法を用いると欠けや傷等の問題が生じる。このような除去凸版Wに対しては、スプレー等の非接触式洗浄方法を用いることが好ましい。版Wの向きを分かりやすくするために、説明の便宜上、上面に指標W1を示している。
【0033】
本発明の版洗浄装置1により除去される対象となるのは、除去凸版Wに付着した伝導性のインクである。このインクは、反転印刷用に調製されたインクであれば特に限定はないが、一例として銀、銅、ニッケル、亜鉛などの金属微粒子や、二酸化珪素、チタン酸バリウム、酸化亜鉛などの金属酸化物微粒子、フタロシアニン、キナクリドン、ジケトピロロピロールなどの有機顔料微粒子を含むインクを挙げることができる。または、金属ナノ粒子を含むインクを用いることができる。金属ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム、マンガンの金属からなるナノ粒子、または、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム、マンガン、モリブデンの金属から選択される2種類以上の金属からなる合金でもよい。用いる金属の平均粒径は、インクへの分散性の点から50nm以下であることが好ましい。粒子の安定した製造の点から、金属の平均粒径が10nm以上30nm以下であるものが一般的に用いられる。
【0034】
このインクでは、金属ナノ粒子等の粒子の径が小さくなるのにしたがって粒子の表面エネルギーが大きくなり、粒子同士の凝集と版への付着力が強くなる。また、反転オフセット印刷法では乾燥したインクを版上から除去する必要があるが、金属ナノ粒子のようなナノオーダーの粒子は一度乾燥すると、そのままでは、溶媒への再分散が難しくなる。そのため、洗浄液に浸漬するだけでは洗浄効果は得られず、インクを版から剥がしたり削ったりする物理的な作用が有効である。
【0035】
版からインクを除去するために、水等の洗浄液のみを版に噴霧する1流体スプレー(ノズル)と、空気等の気体と洗浄液とを混合した混合流体を版に噴霧する2流体スプレーとが知られている。2流体スプレーは1流体スプレーと比較して、高速な流体の衝突により局所的な高圧が発生し、高いせん断流れや対象物の振動等を誘起して対象を剥がす効果が大きい。2流体スプレーは水流が強いので、再付着防止効果が著しい。この点で、金属ナノ粒子の除去には、2流体スプレーによる洗浄が有効である。
【0036】
エレクトロニクス用途の電気回路を印刷法で形成する場合には、前記のような金属ナノ粒子を用いることが多い。数100μmの液滴を基板に打ち当てる1流体スプレー洗浄や、マイクロメートルオーダーの構造体で基板を擦るブラシ洗浄やスポンジ洗浄と比較して、2流体スプレーによる洗浄方式は、金属ナノ粒子等の微細な粒子の除去に適している。
【0037】
版ステージ11は、ステンレス鋼等で平板状に形成され、主面が水平面Sに平行になるように保持される。版ステージ11は、図示しない軌道に沿って水平面Sに平行に移動可能とされる。版ステージ11は、図示はしないが、上面部に除去凸版Wを吸着して固定するための吸着機構として真空吸着機構や静電吸着機構を備える。除去凸版Wは、版ステージ11の上面に保持される。
【0038】
チャンバ15は、例えば、ステンレス鋼等で、外形が直方体で1つの面が開口する形状に形成されている。この開口及びチャンバ15の内部空間で、第一の凹部16を構成する。チャンバ15は、版ステージ11、すなわち版ステージ11に保持された除去凸版Wに対して近接離脱できるように、鉛直方向に動作が可能である。パッキン21は、公知の構成のものを適宜選択して用いることができる。パッキン21は、チャンバ15の開口の縁部に全周にわたり設けられている。パッキン21は、除去凸版W又は版ステージ11と、チャンバ15との間を水密に封止する。これにより、水の飛沫等の漏出防止がなされている。なお、除去凸版Wの外周に当て板を設置し、この当て板にパッキン21を接触させてもよい。
【0039】
洗浄ノズル25はインク除去効率の観点から、洗浄液を高圧にして版表面に噴霧できるものが好ましく、2流体ノズル、4流体ノズル、高圧ジェットノズルなどの公知公用の加圧式ノズルが用いられるが、これらに限定されるものではない。洗浄ノズルの一例として、株式会社いけうち社製2流体ノズル、スプレーイングシステムジャパン株式会社製高圧スプレーノズルMEGシリーズなどを挙げることができる。
【0040】
または、洗浄ノズル25は筒状に形成され、空気と洗浄液とを混合した混合流体を除去凸版Wに噴霧する。ここで言う筒状とは、洗浄ノズル25の軸線に直交する平面による断面が、円形の縁部の形状だけでなく、楕円形、矩形等の多角形の縁部の形状であるものも含む意味である。本実施形態では複数の洗浄ノズル25が、直交方向Yに互いに間隔を置いて並べられた状態で備えられている。洗浄ノズル25は、負荷圧力と洗浄液の腐蝕性、温度から、次の材質を選択することができる。ステンレス、黄銅、チタン、タングステン合金等の金属や、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ウレタン、エポキシ、ABS樹脂等の樹脂や、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックや、サファイヤ、ルビー、ダイヤモンド、グラファイト等の素材を用いることができる。
【0041】
それぞれの洗浄ノズル25の先端部(端部)26に設けられた開口は、スリット状に形成されている。洗浄ノズル25の開口は、除去凸版Wに対向する。洗浄ノズル25から噴霧されるスプレーの吐出断面形状は、フラット、円環、円錐等が選択できる。除去凸版Wに対するスプレーの打力を大きくするためには、吐出断面積を小さくする方がよい。インクの洗浄ムラを抑制するためには、版ステージ11に対して洗浄ノズル25が移動する方向と直交する方向、すなわち直交方向Yにスプレーパターンを配置しなければならない。この場合、吐出断面積の小さい洗浄ノズル25を用いると、多数の洗浄ノズル25を並べて用いる必要がある。上記のことを鑑みると、水平方向Xに対してスプレーパターンが扁平した(スプレーパターンの直交方向Yの長さよりも水平方向Xの長さの方が短い)、フラット形状やスリットノズル型を用いることが好ましい。
【0042】
洗浄ノズル25は、2流体スプレーとされて、液体の圧力と気体の圧力とを調整することができ、この場合、ターンダウン比が大きいのに対し、一方で、1流体スプレーの噴霧量は、流体に作用する圧力の平方根に比例するため、噴霧量は動力の制限を受け、噴霧量のターンダウン比が小さい。これより、2流体スプレーとされる洗浄ノズル25では、洗浄性と省液化といったトレードオフの要求に対しても、動力を変更することなく調整がしやすい。
【0043】
洗浄ノズル25に供給される空気は、圧縮装置65で予め大気圧以上に加圧されるとともに、洗浄液貯留槽77から洗浄ノズル25に供給される洗浄液は、加圧装置(ポンプ)69で予め大気圧以上に加圧される。これら加圧された空気、洗浄液は互いに異なる配管を通して洗浄ノズル25に供給される。気体と洗浄液とを混合させる気液混合方式は、内部混合型、内気型もしくは外気型の外部混合型、衝突型を選択することができる。洗浄液の圧力は、0.2MPa(パスカル)から0.5MPa、気体の圧力は0.3MPaから1.0MPaを選択することができる。洗浄ノズル25からスプレーが広がる噴霧角度は、20°から130°を選択することができる。噴霧角度が大きすぎると、打力が落ちるために好ましくない。洗浄ノズル25の先端から除去凸版Wまでの距離である噴霧距離は、30mmから100mmを選択できる。噴霧距離が長過ぎると、打力が落ちるため都合が悪い。洗浄ノズル25の直交方向Yのピッチは、噴霧角度と噴霧距離とに基づいて、スプレーパターンの途切れがないように設定する。
【0044】
洗浄ノズル25は、
図2に示すように、その開口が洗浄ノズル25における水平方向Xの一方側X1に位置するとともに、水平方向Xの一方側X1に向かうにしたがって洗浄ノズル25が除去凸版Wに近づくように配置されている。洗浄ノズル25の中心軸線と水平面Sとのなす角度である仰角α1は、30°以上90°以下が好ましく、60°以上80°以下がより好ましい。仰角α1を小さくしすぎると、打力が小さくなるために好ましくない。除去凸版Wに衝突した後の流れを作って速やかに排水するために、洗浄ノズル25の軸線が水平面Sに対して若干傾斜していることが好ましい。洗浄ノズル25にチルト角をつけて洗浄ノズル25を配置しても良い。洗浄ノズル25にチルト角を付けた際の、それぞれの洗浄ノズル25が噴霧した混合流体が除去凸版Wに衝突したときの形状である衝突スプレーパターンとしては、直交方向Yに隣り合う洗浄ノズル25の衝突スプレーパターンが、互いに離間することなく連なる。このように、洗浄ノズル25にチルト角をつけることで、衝突スプレーパターンP間の隙間をなくして洗浄ムラを抑制できる。
【0045】
前記洗浄ノズル25を用いて除去凸版W表面に噴霧する洗浄液に関しては、インクを除去できる液体であれば特に限定はないが、環境負荷の低い液体が好ましく、一例として水、中性洗剤を含有する水、エタノールやアセトンなどの水溶性有機溶剤を含有する水を挙げることができる。また噴霧する洗浄液の温度に関しても、特に限定はないが洗浄液が水を主成分とする場合は5℃から90℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは25℃から80℃の範囲を挙げることができる。
【0046】
送風乾燥手段61は、洗浄ノズル25によって洗浄液を噴きつけインクの除去をおこなう前に除去凸版W上のインクを乾燥、固化するために、送風をおこなう機構とされ、特に、熱風機構とされ、送風ノズル62および送風機構63とを有することができる。
送風乾燥手段61は、除去凸版W表面に熱風を送風する機構であれば特に限定されるものではないが、噴霧ノズル方式、バーナー式、扇風式などを挙げることができ、これらの熱風送風機構を具備する各種公知公用の装置を用いることができる。
【0047】
送風乾燥手段61による熱風の送風に用いる気体には特に限定はないが、特に除去凸版W上に残留するインクに可燃物を含む場合は、窒素、アルゴンガスなどの不活性気体を用いることが好ましい。また熱風の温度は乾燥させる前記インク成分に応じて適宜設定すればよく、特に限定はないが、好ましくは40℃から200℃、さらに好ましくは60℃から150℃の範囲を挙げることができる。熱風温度が40℃以上であれば前記インク成分の乾燥を十分促進することができ、200℃以下であれば前記除去凸版Wの熱による変形を抑制することができる。
【0048】
前記熱風の送風速度に関しても特に限定はなく、除去凸版Wの大きさや印刷時間に応じて適宜設定することができるが、乾燥効率の観点から毎分1Lから100Lの範囲が好ましい。
【0049】
吸引ノズル30及びエアナイフ35も、所定の方向に延びる筒状に形成されている。吸引ノズル30及びエアナイフ35は、洗浄ノズル25と同一の材料で形成することができる。吸引ノズル30の先端部(端部)31に設けられた開口32、及び、エアナイフ35の先端部36に設けられた開口37は、それぞれ除去凸版Wに対向する。吸引ノズル30は、鉛直方向にほぼ沿うように配置されている。吸引ノズル30は、図示はしないブロワ等の吸引器に接続されている。吸引ノズル30と吸引器との間には、気体と液体とを分離するミストセパレータが設けられている。
【0050】
吸引ノズル30は開口32から、前述の混合流体等を吸引する。エアナイフ35は、洗浄ノズル25に対する吸引ノズル30とは反対側に配置されている。エアナイフ35は開口37から空気を噴出する。エアナイフ35が空気を噴出しているときの空気の吹き出し方向がそろうように、エアナイフ35の軸線が水平面Sに対して若干傾斜するようにエアナイフ35を配置してもよい。この例では、エアナイフ35はノズル25とほぼ平行となるように配置され、除去凸版Wに対して傾斜している。洗浄後の除去凸版Wの乾燥は、エアナイフ35で液切りをしながら乾燥させることができる。吸引ノズル30が吸引した混合流体等は、洗浄液排出口50へと送られて排出される。
【0051】
洗浄液排出口50はチャンバ15を貫通し、第一の凹部16及びチャンバ15の外部とそれぞれ連通する。洗浄液排出口50は、チャンバ15の任意の箇所に設置できるが、洗浄ノズル25から噴出する混合流体の下流側(水平方向Xの一方側X1)のチャンバ15の側壁の下部に設けることが好ましい。洗浄ノズル25に対して版ステージ11を水平方向Xの両側に移動させる場合、洗浄液排出口50はチャンバ15の水平方向Xの両側に設けても片側に設けても構わないが、洗浄液が除去凸版W上に滞留しないようにすることが重要である。混合流体が噴霧される勢いが強いと、その勢いで洗浄液自身が除去凸版Wの外側へ排出される。しかし、一旦勢いが弱くなった洗浄液がチャンバ15の側壁にぶつかって、再び除去凸版Wの上に戻ってくる場合が有る。洗浄液排出口50を備えることで、混合流体が噴出される勢いも用いて効果的に洗浄液を排出することができる。なお、除去凸版Wの外側へ排出された洗浄液が、再び除去凸版Wの上へ戻る逆流を防止する機構を備えるとなお好ましい。
【0052】
洗浄ノズル25から噴霧された洗浄液が除去凸版Wの上に長時間滞留すると、洗浄液中に含まれるインクが除去凸版Wに再付着する問題が起こる。インクの汚れが除去凸版Wに再付着すると往々にして元のインクよりも除去が困難になるために、噴霧された洗浄液は極力速やかに除去凸版Wの上から除く必要がある。除去凸版Wの上の洗浄液を除去する吸引ノズル30と洗浄液排出口50とを用いることによって、洗浄液を除去凸版Wの上から速やかに排出し、インクが除去凸版Wに再付着することを防止できる。本実施形態では、チャンバ15の天面に排気口52を備えることが好ましい。排気口52は、チャンバ15を貫通し第一の凹部16及びチャンバ15の外部とそれぞれ連通する。このように構成することで、チャンバ15内に飛散した洗浄液を、排気口52を通してチャンバ15外部に除去し、各ノズル25、30、35やチャンバ15の内面に、洗浄液の液滴が付着するのを抑えることができる。したがって、洗浄液により再び除去凸版Wが汚染されるのを抑制することができる。
【0053】
カバー55は、チャンバ15と同一の材料で、外形が直方体で下方の面が開口する形状に形成されている。カバー55は第二の凹部56が除去凸版Wに対向する、すなわち下方に向かって開口するように配置される。カバー55には、洗浄ノズル25及び吸引ノズル30が挿通される。第二の凹部56内には、洗浄ノズル25の先端部26、及び吸引ノズル30の先端部31が配置される。
【0054】
移動機構40は、
図3に示すように、版ステージ11に対してノズル25、30、35を一体に接続する連結部材45を、水平方向X、直交方向Y、及び、鉛直方向に平行な軸線周りの回転方向θに移動させる水平アクチュエータ41、直交アクチュエータ42、及び、回転アクチュエータ43を備えている。各アクチュエータ41、42、43としては、モータ、カムやギア等を組み合わせた公知の構成のものを用いることができる。アクチュエータ41、42、43によるノズル25、30、35の移動量は不図示のセンサにより検出される。センサの検出結果は、制御部60に送信される。移動機構40は通常、チャンバ15に取り付けられるが、取り付け位置については特に問わない。
【0055】
浄化手段20は、洗浄排液を浄化・再生するものとされ、
図1に示すように、洗浄排出液回収槽71と、固形物除去手段72と、有機物除去手段73と、イオン除去手段74と、精密ろ過手段75と、再生洗浄液貯留槽76と、洗浄液貯留槽77と、洗浄液再生検出手段78と、を有する。
【0056】
洗浄排出液回収槽71は、洗浄液排出口50から排出された洗浄排出液を貯留するものとされ、排液循環ポンプPを介して固形物除去手段72に接続されている。
【0057】
固形物除去手段72は、クロスフロー式限外ろ過装置を用いて洗浄後のインクを含む洗浄排液から固形物を除去して洗浄排液を浄化・再生するものとされ、洗浄排出液中のインク成分由来の固形物を洗浄液貯留槽77側へ透過させず、有機物除去手段73への透過液72aと微粒子(固形物)を含有する濃縮液72bとに分離する。濃縮液20は洗浄排出液回収槽71へ送られる。
なお、固形物除去手段72の上流側に、さらに、ろ過手段72cを設けることもできる。
【0058】
本実施形態における固形物除去手段72において、用いることができる限外ろ過装置はクロスフロー式限外ろ過装置であれば特に限定はないが、ポリエーテルスルホンや酢酸セルロースの中空糸状限外ろ過膜を多数束ねた中空糸モジュールや、限外ろ過膜の平膜を巻物状に配したスパイラルモジュールを挙げることができる。
【0059】
ここで一般に、クロスフロー式ろ過では、
図6に示すように、ろ過膜F表面に対して加圧した処理液F0を矢印F8に示すように透過させる際に、矢印F2に示すように、ろ過膜F表面に対して加圧した処理液F0を平行に流通させるものである。
これに対し、全ろ過式では、
図5に示すように、ろ過膜F表面に対して矢印F8に示すように透過させる際に、加圧した処理液F0を、矢印F1に示すように、ろ過膜F表面に対して垂直に流通させるものである。全ろ過式に比べて、クロスフロー式ろ過では、ろ過膜F表面への固形物F3の堆積を抑制することができるので、安定的なろ過、精製が可能となる。
【0060】
本実施形態における固形物除去手段72において、用いることができるクロスフロー式限外ろ過装置の一例として、ダイセンメンブレンシステムズ株式会社製MOLSEPシリーズやクラレアクア株式会社製キャラクターシリーズあるいは室町ケミカル株式会社製デザールシリーズなどを挙げることができる。
【0061】
固形物除去手段72において、クロスフロー式限外ろ過装置に用いられる限外ろ過膜の孔径には特に限定はないが、インクに含まれる固形物の粒子径に応じて選択すればよく、例えば粒子径20nmのナノ銀含有導電性インクを含む廃液から該ナノ銀微粒子を除去する場合は少なくとも孔径が20nm以下、好ましくは10nm以下の孔径を有する限外ろ過膜から成る限外ろ過装置を選定するとよく、画分子量30000の場合、孔径は3-5nm程度とすることができる。
【0062】
固形物除去手段72において、クロスフロー式限外ろ過装置によりインク成分を含む洗浄排液を処理することにより、インク成分由来の固形物を含む濃縮液72bと、限外ろ過装置の限外ろ過膜を透過した固形物を含まない透過液72aに分離することができる。固形物を含む濃縮液72bは洗浄排出液回収槽71に循環することにより、濃縮液72bが限外ろ過装置により連続的にろ過精製されるため、濃縮液72b中の固形物を濃縮して、最終的に廃棄する液量を大幅に低減することができる。また銀インクなどの有価成分を含有するインクを含む廃液を限外ろ過装置で濃縮することにより、廃液中の有価成分の分離回収が極めて容易とすることができる。
【0063】
有機物除去手段73は、固形物除去手段72からの透過液72aを、活性炭を用いて洗浄排液中の有機物を除去して洗浄排液を浄化・再生するものとされる。
固形物除去手段72のクロスフロー式限外ろ過装置で処理して固形物を除去した透過液72aを、さらに有機物除去手段73としての活性炭充填装置で処理することにより、透過液72a中に溶解、あるいは分散している洗浄排液中のインク由来成分を吸着除去することができる。この活性炭充填装置で除去できるインク由来成分の一例として、ノニオン性界面活性剤、ポリマーなどの有機化合物を挙げることができる。
【0064】
イオン除去手段74は、イオン交換樹脂を用いて洗浄排液中のイオンを除去して洗浄排液を浄化・再生するものとされる。
固形物除去手段72および有機物除去手段73で処理して固形物を除去しインク由来成分を吸着除去した透過液をさらに、イオン除去手段74のイオン交換樹脂充填装置で処理することにより、透過液中に溶解している廃液中のイオン性物質、塩類を除去することができる。これらのインク由来の成分の一例として、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、およびこれらの陰イオンやカルシウムイオン、マグネシウムイオン、さらにインク成分由来の各種陽イオンを挙げることができる。
【0065】
精密ろ過手段75は、前段のイオン交換樹脂からのイオン交換樹脂片(樹脂固形物)が流出した場合に、その固形物を除去できればよく、精密ろ過膜の材質に関しては特に限定はなく、公知公用のものを使用することができ、一例としてポリプロピレン、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン製の各種ろ過膜を挙げることができる。またろ過膜の孔径に関しては精密ろ過膜として一般に用いられている0.1um〜数十umの範囲にある各種孔径のろ過膜を用いることができる。なお、精密ろ過手段75を設けないこともできる。
【0066】
再生洗浄液貯留槽76は、精密ろ過手段75を用いて洗浄排液中のインク由来成分を除去した透過液を一時貯留するものとされる。なお、再生洗浄液貯留槽76を設けずに、精密ろ過手段75から排出された処理液が直接洗浄液貯留槽77に流入するようにすることもできる。
【0067】
洗浄液再生検出手段78は、再生洗浄液貯留槽76の下流位置に設けられ、再生洗浄液貯留槽76から排出された液において、インク由来成分が充分除去されているかどうかを検出するものとされる。洗浄液再生検出手段78によって、インク由来成分が充分除去されていないことが検出された場合には、再生洗浄液貯留槽76から排出される液が洗浄液貯留槽77に流入しないように、弁を閉じるように制御信号が出力される。
洗浄液再生検出手段78としては、インクの固形物由来の着色を検出評価する手段、導電率計でインクのイオン成分の濃度を検出評価する手段とすることができる。
【0068】
なお、再生洗浄液貯留槽76は、バルブを介して洗浄排出液回収槽71から固形物除去手段72へと至る管路に接続されており、再生洗浄液貯留槽76内に貯留された再生洗浄液を浄化する場合には、固形物除去手段72へと再生洗浄液を送ることが可能となっている。
【0069】
洗浄液貯留槽77は、ポンプ69を介して、洗浄液を高圧にして洗浄ノズル25に供給可能とされている。
なお、洗浄液貯留槽77は、バルブを介して洗浄排出液回収槽71から固形物除去手段72へと至る管路に接続されており、洗浄液貯留槽77内に貯留された洗浄液を浄化する場合には、固形物除去手段72へと洗浄液を送ることが可能となっている。
【0070】
版洗浄手段10において除去凸版Wを洗浄し、インク由来成分を含有した洗浄排液は、浄化手段20で処理されることで浄化・再生して洗浄液貯留槽77に送り、洗浄液として再利用することができる。
【0071】
固形物除去手段72における工程は、クロスフロー式限外ろ過装置で容易かつ迅速に透過液72aと濃縮液72bとに分離可能であり、印刷工程時間内に洗浄排液浄化処理を完了させることができる。さらに透過液72aを活性炭充填装置73、イオン交換樹脂充填装置74で処理することにより、洗浄液としてさらに高純度化することができ、連続印刷回数を増大させることができる。
【0072】
次に、以上のように構成された版洗浄装置1の版洗浄について説明する。
図4は、反転オフセット印刷法について示した工程図である。
【0073】
反転オフセット印刷法においては、剥離性表面を有するブランケットB1に、インクを塗布してインク塗膜B2を形成した後、インクを構成する溶剤の少なくとも一部を蒸発させ、ブランケットB1表面にインク塗膜B2aを形成(インク塗膜形成工程)し、そのインク塗膜B2aの形成されたブランケットB1bを除去凸版Wに密着させてパターンに不要な部分B2cを除去(除去工程)した後、ブランケットB1cを被印刷基材B5に密着させてインク塗膜B2bを被印刷基材B5に転写することで、目的とするパターンを有する印刷物B1dを得る(転写工程)。
【0074】
前記除去工程により、インクが付着した除去凸版Wが発生する。
【0075】
連続的に印刷物を製造するためには、次の印刷までに除去凸版W上の凸部分に付着したインクB2cの全てを除去する必要がある。ここで除去凸版W上にインクが残留すると、次回以降の印刷において適切な除去や転写が実施できず、印刷物にパターン欠陥を生じる恐れがある。
本実施形態では、
図1〜
図3に示すように、洗浄ノズル25を用いて洗浄液をインクが付着した除去凸版Wに噴きつけることにより、除去凸版Wの凸部分に付着したインクを除去する。この工程を版洗浄工程とする。
【0076】
以下では、版ステージ10に対する洗浄ノズル25の移動について記載するが、洗浄ノズル25と一体となって吸引ノズル30、エアナイフ35及び連結部材45も移動する。
【0077】
本実施形態の版洗浄装置1は、凸部にインクが転写された除去凸版Wの洗浄に用いる。版洗浄手段10においては、使用後の除去凸版Wを固定した版ステージ11を、所定の洗浄位置に移動させる。版ステージ11に保持された版Wに対してチャンバ15を下降させて、版ステージ11又は除去凸版Wとパッキン21との間を水密に封止(密閉)する。チャンバ15とパッキン21とを用いることによって、洗浄液の漏洩や飛沫を防ぎ、製品不良や装置故障を防ぐことができる。
【0078】
ここで、必要に応じて洗浄ノズル25から洗浄液を噴きつける前に、送風乾燥手段61の熱風機構を用いて、除去凸版W上のインクを乾燥、固化する。
【0079】
洗浄ノズル25から、空気と水とを混合した混合流体を噴霧している間に、制御部60は、移動機構40の水平アクチュエータ41を駆動させて、矢印A1で示すように版ステージ11に対して洗浄ノズル25を水平方向Xの一方側X1に相対的に移動させる。
【0080】
このとき、制御部60は、洗浄ノズル25が混合流体を除去凸版Wに噴霧する位置が、除去凸版Wの水平方向Xの他方側X2から水平方向Xの一方側X1に移動するように、移動機構40により版ステージ11に対して洗浄ノズル25を移動させる。すなわち、除去凸版Wに対して洗浄ノズル25が移動する方向である水平方向Xの一方側X1に洗浄ノズル25の先端部26が向くように、洗浄ノズル25が傾斜している。このように構成することで、洗浄ノズル25から噴霧する混合流体により、除去凸版Wにおける既に洗浄された部分に洗浄液が流れるのが防止される。
カバー55の第二の凹部56内には洗浄ノズル25の先端部26及び吸引ノズル30の先端部31が配置される。したがって、洗浄ノズル25の開口27から噴霧された混合流体は、第二の凹部56の内面に当たり上方にはいきにくい。このようにして、除去凸版Wを水平方向Xの全長にわたり洗浄する。
【0081】
制御部60は直交アクチュエータ42を駆動させて、版ステージ11に対する洗浄ノズル25の直交方向Yの位置を直交方向Yに隣り合う洗浄ノズル25のピッチの半分だけずらす。水平アクチュエータ41を駆動させて、版ステージ11に対して洗浄ノズル25を水平方向Xの他方側X2に移動させる。このようにして、除去凸版Wを水平方向Xの全長にわたり洗浄し、製品の品質の低下を招く不要なインクを除去する。除去凸版Wの上に残った洗浄液を吸引ノズル30で除去したのちに、エアナイフ35で液切りと乾燥を行う。除去凸版Wに対してチャンバ15を上昇させて、除去凸版Wからチャンバ15を離脱させて洗浄が完了する。なお、吸引ノズル30による吸引動作は、この例のように洗浄ノズル25による噴霧の終了後に行ってもよいが、洗浄ノズル25で混合流体を噴霧している最中にも行うことが、洗浄液の飛散を抑える点で好ましい。
【0082】
本実施形態の版洗浄手段10によれば、カバー55の第二の凹部56内には洗浄ノズル25の先端部26及び吸引ノズル30の先端部31が配置される。したがって、除去凸版Wからインクを除去するときに、洗浄ノズル25から噴霧された混合流体が第二の凹部56の内面に当たるため、洗浄液の飛散を抑制することができる。各ノズル25、30、35やチャンバ15の内面に、洗浄液の液滴が付着するのを抑えることができる。除去凸版Wに洗浄液含む混合流体を強力に噴霧する物理的作用により、インクを除去凸版Wの表面から剥離することができる。また、洗浄する除去凸版Wをチャンバ15で密閉するため、強力な2流体スプレーを使用したときに洗浄液が飛散して製品や製造機器の汚染を防止することができる。
【0083】
本実施形態の版洗浄手段10では印刷機上で版の洗浄を行ったため、版を取り外して洗浄する従来の機側洗浄と比較して、印刷後すぐに洗浄するので、洗浄しやすく、毎回同じ版を用いるので、版のパターンバラつきがなく、印刷物のライン/スペースの寸法精度が良く、毎回同じ版を用いるので、版の厚さのバラつきがなく、印刷ごとの印圧の変動がなく印刷精度(長寸法精度)が良く、1枚の版で印刷できるので、製版コストが低く、版を版ステージから取り外さないため、印刷精度(長寸法精度)が良いというメリットが得られた。
【0084】
本実施形態の版洗浄手段10では、洗浄液排出口50から排出された洗浄排出液は、洗浄排出液回収槽71に回収され、排液循環ポンプPにより、浄化手段20に送られる。
【0085】
浄化手段20においては、固形物除去手段72に設置したクロスフロー式限外ろ過装置により、洗浄排液中のインク成分由来の固形物を有機物除去手段73側へ透過させず、再生洗浄液貯留槽76側への透過液72aと微粒子を含有する濃縮液72bとに分離する。濃縮液72bは洗浄排出液回収槽71へ送る。
【0086】
固形物除去手段72のクロスフロー式限外ろ過装置によりインク成分を含む廃液を処理することにより、インク成分由来の固形物を含む濃縮液72bと該限外ろ過装置の限外ろ過膜を透過した固形物を含まない透過液72aに分離することができる。固形物を含む濃縮液72bが洗浄排出液回収槽71と固形物除去手段72との間を循環することにより、濃縮液および洗浄排液が限外ろ過装置により連続的にろ過精製されるため、濃縮液および洗浄排液中の固形物を濃縮して、最終的な廃液量を大幅に低減することができる。また銀インクなどの有価成分を含有するインクを含む廃液を濃縮して、有価成分の分離回収を容易にすることができる。
【0087】
固形物除去手段72で処理して固形物を除去した透過液72aは、有機物除去手段73における活性炭充填装置で処理することにより、透過液中に溶解、あるいは分散している廃液中のインク由来成分を吸着除去する。
【0088】
有機物除去手段73で処理してインク由来成分を吸着除去した処理液は、さらに、イオン除去手段74のイオン交換樹脂充填装置で処理することにより、透過液中に溶解している廃液中のイオン性物質、塩類を除去する。
【0089】
イオン除去手段74で処理した処理液は、精密ろ過手段75を介して、再生洗浄液貯留槽76に貯留される。再生洗浄液貯留槽76に貯溜された処理液は、洗浄液再生検出手段78によって、浄化処理状態を検出されて、洗浄液貯留槽77と送られ、版洗浄手段10へと供給されて再利用される。洗浄液再生検出手段78によって、再生洗浄液貯留槽76から供給された処理液(再生洗浄液)が所定の基準に満たない場合には、バルブを介して固形物除去手段72へと再生洗浄液を送るようになっている。
【0090】
本実施形態の浄化手段20においては、送風乾燥手段61によって、次の版洗浄工程におけるインクの除去を好適におこなうことを可能とするとともに、版洗浄手段10によって、除去凸版Wからインクの不要部分を除くとともに、固形物除去手段72のクロスフロー式限外ろ過装置を用いて洗浄後のインクを含む洗浄排液から固形物を除去した後に、有機物除去手段73の活性炭を用いて洗浄排液中の有機物を除去した後に、イオン除去手段74のイオン交換樹脂を用いて洗浄排液中のイオンを除去することにより、固形物、有機物を除去した後にイオンを除去可能として、排出された洗浄排液を浄化・再生することで、除去凸版Wからインクの不要部分を効率よく除去するとともに、排出された洗浄排液を浄化して、洗浄排液を再利用可能とすることができ、最終的に廃棄する液量を削減して環境負荷を低減させることが可能となる。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
<実施例1>
(印刷準備)
ブランケットとしては、約120μm厚みのポリエステルフィルムに200μm厚みのシリコーンゴムを積層した330mm×470mm角のものを用いた。インクとしては銀ナノ粒子分散導電性インク(銀の固形分として15%)を用いた。また、被印刷基材として300mm×400mm角で1.1mm厚みのガラス板を使用した。
【0093】
(印刷工程(インク塗膜形成、除去、および転写工程))
1) 前記ブランケットに前記導電性インクをスリットダイコーターにより塗布した後、室温で60秒間、乾燥後、前記ブランケット上にインク塗膜を形成した。
【0094】
2) インク塗膜が形成されたブランケットをウェットエッチング法により、線幅が40μm、長さが30cm、深さ8μmの線状のパターン(以下、細線)が600本、300μm間隔で平行に形成された除去凸版に均一に密着させ、該除去凸版凸部に密着した前記インク塗膜をブランケットから除去することにより、前記細線が形成されたインク塗膜をブランケット上に得た。
【0095】
3) ブランケット上の前記細線が形成されたインク塗膜を、前記ガラス板上に均一に密着させることで、前記インク塗膜をブランケットからガラス板に転写し、前記細線が形成された印刷物を得た。この間に要した時間は約4分であった。
【0096】
(版洗浄工程)
続いて、前記インク塗膜が付着した除去凸版に、株式会社いけうち製2流体ノズルVVEA6020S303を用いて洗浄水を噴霧し、前記除去凸版上のインクを除去した。ここで前記洗浄液には50℃に温度調整された洗浄液供給槽に貯蔵した20Lのイオン交換水(導電率0.5μS/cm)を用い、前記2流体ノズルに供給する圧縮空気の圧力は0.7MPa、洗浄水の水量は毎分6Lで前記除去凸版上を約40秒かけて3往復することにより、除去凸版表面を洗浄した。さらに版上に残留する洗浄水を、エアナイフを用いて送風乾燥し、前記除去凸版の再生を完了した。この間に要した時間は約2分であった。
【0097】
続いて、前記版洗浄で生じた約4Lの洗浄排液を洗浄排出液回収槽71に回収し、循環ポンプ69により、固形物除去手段72としてのダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製クロスフロー式限外ろ過モジュールMOLSEP FA03−FC−FUS0382(分画分子量30000)に送り、濃縮液72bと透過液72aとに分離した。濃縮液は洗浄排出液回収槽71に再送液し、前記限外ろ過モジュールで循環処理した。透過液72aは洗浄液供給槽(洗浄液貯留槽)77に送液し、再利用可能な洗浄液とした。洗浄排出液の浄化処理は約4分で完了した。
【0098】
前記印刷工程および版洗浄工程を20回連続して繰り返して、前記細線が形成された印刷物を作製した。なお、この間、前記洗浄液10Lは一度も入れ替えることなく、前記限外ろ過モジュールで浄化、精製して、洗浄液として繰り返し使用した。
【0099】
(洗浄液の浄化度評価)
版洗浄に使用した洗浄液の純度を版洗浄工程後に、笠原理化工業株式会社製の色度計TCR−5Z、およびEUTECH INSTRUMENTS社製の導電率計CyBerScan CON400を用いて毎回、検査した。前記色度計でインクの固形物由来の着色を評価し、前記導電率計でインクのイオン成分の濃度を評価した。
その結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
表1に示すように、20回の連続印刷で洗浄液の着色は全く見られなかった。
【0101】
<実施例2>
実施例1と同様に、(印刷準備)(印刷工程(インク塗膜形成、除去、および転写工程))をおこなった。
【0102】
版洗浄工程において、前記クロスフロー式限外ろ過モジュールで固形物を除去した後、オルガノ株式会社製イオン交換樹脂充填装置G−10Cで処理して透過液を得る以外は、実施例1と同様にして、印刷、版洗浄、排液浄化を20回繰り返し、排液の浄化度評価、印刷物の細線のパターン精度評価を実施した。
その結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
表2に示すように、洗浄液の着色および導電率の増大が見られず、断線数は1個以下、断線率は細線600本に対して20回連続平均で0.025%、ショートは発生せず、無欠陥品の歩留まりは85%であった。
【0104】
<実施例3>
実施例1と同様に、(印刷準備)(印刷工程(インク塗膜形成、除去、および転写工程))をおこなった。
【0105】
版洗浄工程において、除去凸版上のインクに温度80℃の窒素を毎分20Lの風量で送風乾燥し、しかる後に35℃の水を毎分4L、エア圧0.5MPaで2流体ノズルを用いて版上のインクを除去する以外は実施例1と同様にして、印刷、版洗浄、排液浄化を20回繰り返し、排液の浄化度評価、印刷物の細線のパターン精度評価を実施した。
その結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
表3に示すように、断線数は1個以下、断線率は細線600本に対して20回連続平均で0.017%、ショートは発生せず、無欠陥品の歩留まりは90%であった。また排液浄化に要する時間は約3分であった。
<実施例4>
実施例1と同様に、(印刷準備)(印刷工程(インク塗膜形成、除去、および転写工程))をおこなった。
【0107】
版洗浄工程において、除去凸版上のインクに温度100℃の窒素を毎分20Lの風量で送風乾燥し、しかる後に30℃の水を毎分3L、エア圧0.4MPaで2流体ノズルを用いて版上のインクを除去する以外は実施例3と同様にして、印刷、版洗浄し、イオン交換樹脂充填装置で処理した透過液をさらにアドバンテック東洋製活性炭カートリッジフィルターTCC−WH−S0CPで処理する以外は、実施例2と同様に排液浄化して、印刷、版洗浄、廃液浄化を20回繰り返し、排液の浄化度評価、印刷物の細線のパターン精度評価を実施した。
その結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
表4に示すように、洗浄液の着色および導電率の増大が見られず、断線数は1個以下、断線率は細線600本に対して20回連続平均で0.008%、ショートは発生せず、無欠陥品の歩留まりは95%であった。また排液浄化に要する時間は約3分であった。
【0109】
<比較例1>
実施例1と同様に、(印刷準備)(印刷工程(インク塗膜形成、除去、および転写工程))をおこなった。
【0110】
版洗浄工程において、クロスフロー式限外ろ過モジュールに替えて、アドバンテック東洋株式会社製精密ろ過膜TCR−020(ろ過精度:0.2μm)を用いる以外は、実施例1と同様にして、印刷、版洗浄、排液浄化を実施したところ、印刷毎に洗浄液の着色が増大し、印刷3回目で導電率が測定限界を超え、印刷4回目で色度が測定限界を超えたため、連続印刷を中止した。
その結果を表5に示す。
【0111】
【表5】
表5に示すように、また印刷物の細線のパターン精度も極めて低く、断線およびショート数は印刷4回目でそれぞれ35個、211個と多数検出された。
【0112】
<比較例2>
実施例1と同様に、(印刷準備)(印刷工程(インク塗膜形成、除去、および転写工程))をおこなった。
【0113】
版洗浄工程において、クロスフロー式限外ろ過モジュールに替えて、アドバンテック東洋株式会社製精密ろ過膜TCF−010(ろ過精度:0.1μm)を用いる以外は、実施例3と同様にして、印刷、版洗浄、排液浄化を実施したところ、印刷毎に洗浄液の着色が増大し、印刷4回目で導電率が測定限界を超えた。印刷6回目の排液浄化で精密ろ過膜が閉塞したため、連続印刷を中止した。
その結果を表6に示す。
【0114】
【表6】
表6に示すように、また印刷物の細線のパターン精度も極めて低く、断線およびショート数は印刷6回目でそれぞれ32個、108個と多数検出された。