【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、「戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)(特別重点技術領域「次世代蓄電池」、研究開発題目「新規正極活物質の探索」)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水熱反応工程では、温度100℃〜250℃、圧力1MPa〜10MPaの条件下で水熱反応を行う、請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム複合酸化物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池の用途がモバイル機器から自動車、定置用電源等へと多様化しており、従来のリチウムイオン二次電池に代わる安価で高エネルギー密度を有する次世代二次電池の開発が期待されている。次世代二次電池の中でも特にマグネシウム二次電池は、(i)充放電で二電子反応を利用できるため高容量が期待できる、(ii)負極に使用可能なマグネシウムは安全性に優れていることに加えて電位が比較的低いため、電池の高電圧作動が可能になる、(iii)マグネシウムは産地偏在のリスクが少なく安価である、等の多くの利点があり、研究開発が進みつつある。
【0003】
開発当初、マグネシウム二次電池の正極活物質としてはTiS
2、ZrS
2、RuO
2、Co
3O
4、V
2O
5等が用いられていたが、近年では、スピネル型構造を有するマグネシウム複合酸化物が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、Mg(M
1−xA
x)
2O
4(式中、xは0≦x≦0.2の範囲の数である。また、Mは遷移金属であり、Aは典型元素、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属である。)で表されるマグネシウム化合物を正極活物質として含むマグネシウム二次電池が開示されている。
また、特許文献2には、例えば、MgMn
(2−x)M1
(x)O
4(式中、M1は、Fe、Co、Niから選ばれる1種以上の元素であり、xは0.4≦x<2の範囲の数である。)で表される正極活物質を含むマグネシウム二次電池が開示されている。
【0005】
また、非特許文献1には、MgCo
2O
4又はMgNi
2O
4を正極活物質として含むマグネシウム二次電池が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1、2及び非特許文献1では、固相法又は共沈法によりマグネシウム複合酸化物を得ている。しかし、本発明者らの検討によれば、固相法又は共沈法により結晶性に優れたマグネシウム複合酸化物を得ることは困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、結晶性に優れたマグネシウム複合酸化物を得ることが可能なマグネシウム複合酸化物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 次式:Mg
xM
3−xO
4(式中、MはCo、Ni、及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、0.5≦x≦1.5である。)で表されるマグネシウム複合酸化物の製造方法であって、
水溶性マグネシウム化合物及び元素Mを含む水溶性化合物を含有する水溶液のpHをアルカリ性に調整するpH調整工程と、
前記水溶液を加熱して水熱反応を進行させる水熱反応工程と、
水熱反応後の沈殿物を焼成して前記マグネシウム複合酸化物を得る焼成工程と、
を含むマグネシウム複合酸化物の製造方法。
【0011】
<2> 前記pH調整工程では、前記水溶液のpHを9.0〜12.0に調整する、<1>に記載のマグネシウム複合酸化物の製造方法。
【0012】
<3> 前記水熱反応工程では、温度100℃〜250℃、圧力1MPa〜10MPaの条件下で水熱反応を行う、<1>又は<2>に記載のマグネシウム複合酸化物の製造方法。
【0013】
<4> 前記式中の元素MがCoである、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のマグネシウム複合酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、結晶性に優れたマグネシウム複合酸化物を得ることが可能なマグネシウム複合酸化物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0017】
<マグネシウム複合酸化物の製造方法>
本実施形態のマグネシウム複合酸化物の製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」という。)で製造されるマグネシウム複合酸化物は、次式:Mg
xM
3−xO
4で表される。
上記式中のMは、Co、Ni、及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。元素Mは、上記の元素の1種のみであってもよく、2種又は3種を組み合わせてもよい。ある実施態様では、上記式中のMはCoである。
上記式中のxは0.5〜1.5の範囲である。マグネシウム複合酸化物の結晶構造の観点から、xの値は0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.95〜1.1の範囲であることがより好ましい。
【0018】
上記式で表されるマグネシウム複合酸化物を製造する本実施形態の製造方法は、水溶性マグネシウム化合物及び元素Mを含む水溶性化合物を含有する水溶液のpHをアルカリ性に調整するpH調整工程と、上記水溶液を加熱して水熱反応を進行させる水熱反応工程と、水熱反応後の沈殿物を焼成して上記マグネシウム複合酸化物を得る焼成工程と、を含む。以下、本実施形態の製造方法について詳細に説明する。
【0019】
pH調整工程では、まず、水溶性マグネシウム化合物及び元素Mを含む水溶性化合物を含有する水溶液を準備する。
【0020】
水溶性マグネシウム化合物としては、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等が挙げられる。水溶性マグネシウム化合物は水和物であってもよい。水溶性マグネシウム化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
元素Mを含む水溶性化合物としては、特に制限されるものではないが、水溶性コバルト化合物、水溶性ニッケル化合物、及び水溶性マンガン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
水溶性コバルト化合物としては、硝酸コバルト、酢酸コバルト、リン酸コバルト、硫酸コバルト、フッ化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト等が挙げられる。水溶性コバルト化合物は水和物であってもよい。水溶性コバルト化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性ニッケル化合物としては、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、硫酸ニッケル、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル等が挙げられる。水溶性ニッケル化合物は水和物であってもよい。水溶性ニッケル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性マンガン化合物としては、硝酸マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、フッ化マンガン、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン等が挙げられる。水溶性マンガン化合物は水和物であってもよい。水溶性マンガン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記水溶液中の水溶性マグネシウム化合物と元素Mを含む水溶性化合物との混合割合は、目的とするマグネシウム複合酸化物における各元素比と同様の元素比になるようにすればよい。
【0023】
上記水溶液の溶媒は、水のみであってもよく、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、アセトン、シクロヘキサノン、2−メチルピロリドン、エチルメチルケトン、2−エトキシエタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、マグネシウム複合酸化物を微粒子化する観点から、ポリエチレングリコールが好ましい。
上記水溶液中の水と水溶性有機溶媒との質量比は特に制限されない。例えば、水と水溶性有機溶媒との質量比は40:1〜4:1であることが好ましい。
【0024】
水及び水溶性有機溶媒の添加順序は特に制限されない。水溶性マグネシウム化合物及び元素Mを含む水溶性化合物を含有する水溶液に対して水溶性有機溶媒を添加してもよく、水溶性マグネシウム化合物及び元素Mを含む水溶性化合物を水溶性有機溶媒と混合した後に水を添加してもよい。
【0025】
pH調整工程では、次に、上記水溶液のpHをアルカリ性に調整する。上記水溶液のpHをアルカリ性に調整するには、例えば、上記水溶液にアンモニア水、水酸化ナトリウム等を添加すればよい。
上記水溶液のpHは、9.0〜12.0に調整することが好ましく、10.0〜11.5に調整することがより好ましく、10.5〜11.0に調整することが更に好ましい。なお、上記水溶液のpHにより、得られるマグネシウム複合酸化物の組成を調整することができる。
【0026】
pH調整後の上記水溶液中における水溶性マグネシウム化合物及び元素Mを含む水溶性化合物の合計の含有量は、特に制限されないが、0.1mol/L〜0.6mol/Lであることが好ましく、0.2mol/L〜0.5mol/Lであることがより好ましい。
【0027】
次に、水熱反応工程では、pH調整後の上記水溶液を加熱して水熱反応を進行させる。
水熱反応は、通常の水熱反応装置(例えば、市販のオートクレーブ)を用いて行うことができる。水熱反応の条件は、特に制限されないが、雰囲気温度100℃〜250℃、雰囲気圧力1MPa〜10MPaの条件で6時間〜72時間とすることが好ましい。
【0028】
次に、焼成工程では、水熱反応後の沈殿物を焼成して上記マグネシウム複合酸化物を得る。焼成前には、水熱反応後の沈殿物を濾過し、洗浄した後に乾燥させることが好ましい。洗浄には、水、水とアルコールとの混合溶媒等を用いることができる。
焼成条件は、特に制限されないが、200℃〜350℃で2時間〜48時間とすることが好ましい。焼成雰囲気は、大気雰囲気、酸化雰囲気等とすることができる。
この焼成工程により、結晶性に優れたマグネシウム複合酸化物を得ることができる。
【0029】
<マグネシウム二次電池>
本実施形態の製造方法で製造されるマグネシウム複合酸化物は、マグネシウム二次電池の正極活物質として好適に用いることができる。そこで以下では、本実施形態の製造方法で製造されるマグネシウム複合酸化物を正極活物質として用いるマグネシウム二次電池について説明する。本実施形態のマグネシウム二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水電解液とを有する。
【0030】
(正極)
本実施形態のマグネシウム二次電池における正極は、上記のマグネシウム複合酸化物を正極活物質として含有する正極合剤ペーストを集電体上に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて圧延することにより作製することができる。
【0031】
集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス、銅等が挙げられる。また、集電体の形状としては、箔、メッシュ等が挙げられる。
【0032】
正極合剤ペーストは、正極活物質と、必要に応じて結着剤、導電助剤等とを有機溶媒に添加して混合することにより調製することができる。
結着剤としては、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム等が挙げられる。結着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属繊維等が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等が挙げられる。導電助剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
集電体に対する正極合剤ペーストの塗布量は、マグネシウム二次電池の用途等に応じて適宜決定することが好ましい。
【0034】
(負極)
本実施形態のマグネシウム二次電池における負極は、マグネシウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質を含む。
【0035】
負極活物質としては、金属マグネシウム及びマグネシウム合金が挙げられる。マグネシウム合金としては、Mg−Al合金、Mg−Zn合金、Mg−Mn合金、Mg−Ni合金、Mg−Sb合金、Mg−Sn合金、Mg−In合金等が挙げられる。
また、負極活物質としては、マグネシウムと合金化するアルミニウム、亜鉛、リチウム、シリコン、スズ等の材料を用いることもできる。また、負極活物質としては、マグネシウムイオンを電気化学的に吸蔵及び放出可能な黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料を用いることもできる。
【0036】
本実施形態のマグネシウム二次電池における負極は、金属マグネシウム、マグネシウム合金等の負極活物質を電極に適した形状(板状等)に成形して作成することができる。
【0037】
また、負極は、上記の負極活物質を含有する負極合剤ペーストを集電体上に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて圧延することにより作製することもできる。集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス、銅等が挙げられる。また、集電体の形状としては、箔、メッシュ等が挙げられる。
【0038】
負極合剤ペーストは、負極活物質と、必要に応じて結着剤、導電助剤等とを有機溶媒に添加して混合することにより調製することができる。結着剤、導電助剤、及び有機溶媒としては、正極と同様の材料を用いることができる。
【0039】
(セパレータ)
本実施形態のマグネシウム二次電池におけるセパレータは、正極と負極との間に介在するように設けられ、正極と負極とを絶縁する。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス、セラミックス等が挙げられる。セパレータの形状としては多孔質体等が挙げられる。
【0040】
(非水電解液)
本実施形態のマグネシウム二次電池における非水電解液は、非水溶媒と、溶質である支持塩とを含む。
【0041】
非水溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル1,3−ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、イオン液体等が挙げられる。
支持塩としては、Mg(ClO
4)
2、MgBr
2、Mg(SO
2CF
3)
2、Mg(BF
4)
2、Mg(CF
3SO
3)
2、Mg(PF
6)
2等が挙げられる。
【0042】
(マグネシウム二次電池の形状等)
マグネシウム二次電池の形状は特に制限されず、コイン型、円筒型、積層型等のいずれにも適用し得る。また、マグネシウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)は、非双極型(内部並列接続型)であっても双極型(内部直列接続型)であってもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
硫酸マグネシウム七水和物1.1954g、硫酸コバルト七水和物2.7266g、及びポリエチレングリコール5gを混合し、イオン交換水40mLを加えて原料を溶解して水溶液を得た。この水溶液にアンモニア水を加えてpHを10.5に調整し、室温で5時間撹拌した。次に、pH調整後の水溶液をオートクレーブ中、200℃、約1.6MPaの条件下で36時間加熱し、水熱反応を進行させた。室温まで冷却後、生成した沈殿物を吸引濾過してイオン交換水で洗浄し、100℃の乾燥機で24時間乾燥させて前駆体を得た。得られた前駆体を自動乳鉢で混合した後、大気中、300℃で24時間焼成することにより、マグネシウムコバルト複合酸化物を得た。焼成時の昇温速度は5℃/分とした。
【0045】
得られたマグネシウムコバルト複合酸化物について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により化学組成を分析したところ、Mg
1.06Co
1.94O
4の組成式であることが確認された。
得られたマグネシウムコバルト複合酸化物について、粉末X線回折装置(PANalytical製、X’Pert Pro)により結晶構造を分析した。粉末X線回折結果を
図1(a)に示す。また、得られたマグネシウムコバルト複合酸化物について、放射光X線回折装置(BL02B2、SPring−8)により結晶構造を分析し、更にX線回折パターンに基づいてリートベルト解析を行い、結晶学的特性を調べた。放射光X線回折結果を
図2に示す。得られたマグネシウムコバルト複合酸化物は、結晶性に優れ、空間群Fd−3mのスピネル型構造に帰属されるものであった。
【0046】
[実施例2]
アンモニア水を加えて水溶液のpHを11.0に調整したほかは、実施例1と同様にしてマグネシウムコバルト複合酸化物を得た。
【0047】
得られたマグネシウムコバルト複合酸化物について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により化学組成を分析したところ、Mg
0.98Co
2.02O
4の組成式であることが確認された。
得られたマグネシウムコバルト複合酸化物について、粉末X線回折装置(PANalytical製、X’Pert Pro)により結晶構造を分析した。粉末X線回折結果を
図1(b)に示す。得られたマグネシウムコバルト複合酸化物は、結晶性に優れ、空間群Fd−3mのスピネル型構造に帰属されるものであった。
【0048】
[比較例1]
炭酸ナトリウム23.134gを二次蒸留水800mLに溶解し、水溶液を70℃に加熱した。水溶液中に、1.0mol/L硝酸マグネシウム水溶液61.78mLと1.0mol/L硝酸コバルト水溶液117.74mLとを添加し、70℃で30分間撹拌した。水溶液中のナトリウムとマグネシウム及びコバルトとのモル比は、Na/(Mg+Co)=2.5であった。撹拌後、沈殿物を吸引濾過し、70℃の水で洗浄した後、大気中、100℃で24時間乾燥させることにより、前駆体を得た。得られた前駆体を自動乳鉢で24時間混合した後、大気中、300℃で24時間焼成することにより、マグネシウムコバルト複合酸化物を得た。焼成時の昇温速度は5℃/分とした。
【0049】
得られたマグネシウムコバルト複合酸化物について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)島津製作所製、ICPE−9000)により化学組成を分析したところ、Mg
0.852Co
2.148O
4の組成式であることが確認された。
得られたマグネシウムコバルト複合酸化物について、放射光X線回折装置(BL02B2、SPring−8)により結晶構造を分析し、更にX線回折パターンに基づいてリートベルト解析を行い、結晶学的特性を調べた。放射光X線回折結果を
図3に示す。得られたマグネシウムコバルト複合酸化物は、空間群Fd−3mのスピネル型構造に帰属されるものの、結晶性は実施例1よりも劣っていた。