特許第6494098号(P6494098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494098
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】薬剤包装物
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/03 20060101AFI20190325BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20190325BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   A61J1/03 370
   B65D75/36
   B65D83/04 D
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-75061(P2015-75061)
(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-193124(P2016-193124A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】田村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼間 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】真弓 俊彦
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/052422(WO,A1)
【文献】 特開平09−077131(JP,A)
【文献】 特開平10−167349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/03
B65D 75/36
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が膜体で覆われた樹脂性のポケットに、薬剤を収容する薬剤包装物において、
前記ポケットは、前記開口部の周囲が、該開口部の内側に折れ曲がって形成された内向き縁部を備え、前記ポケットは、前記開口部周りを含め全体において、外側に突出したシート状の部分が存在せず、前記膜体は、前記内向き縁部に、貼り付けられていることを特徴とする薬剤包装物。
【請求項2】
請求項1記載の薬剤包装物において、前記ポケットは、中空の円柱状、楕円柱状、球状、もしくは、楕円体状に形成されていることを特徴とする薬剤包装物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の薬剤包装物において、前記膜体は、外縁が、前記内向き縁部に貼り付けられていることを特徴とする薬剤包装物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤包装物において、前記ポケットは複数あって、前記ポケットは、外側に膨らんだ形状に形成された側壁部を介して、互いに連結されていることを特徴とする薬剤包装物。
【請求項5】
請求項4記載の薬剤包装物において、前記ポケットは、平面状に並べられていることを特徴とする薬剤包装物。
【請求項6】
請求項1又は2記載の薬剤包装物において、前記ポケットは、複数あって、互いに非連結であり、一枚の前記膜体が、全ての前記ポケットの前記開口部を覆うことを特徴とする薬剤包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を包装する包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
PTP(Press Through Package)包装は、医薬品の錠剤やカプセル剤の包装の主流として、用いられている。
PTP包装は、薬剤を収容する複数のポケットが形成されたシート状の樹脂に、各ポケットの開口部を覆うアルミニウムシートが貼り付けられている。樹脂及びアルミシートは、吸湿性の低い素材であることから、PTP包装は、薬剤の吸湿を防止できる。また、PTP包装の特長として、ポケットから薬剤を取り出す際、包装の非密封化が押し出した感触により認識可能であると共に、内部に薬剤が残っているかどうかや、内部の薬剤の特徴が容易に認識可能である点も挙げられる。
【0003】
ところで、薬剤の飲み忘れや飲み過ぎを回避すべく、飲むべき薬剤を管理できる服薬カレンダーの普及等により、PTP包装は、1日、あるいは、1回に服用すべき単位で、小片に、分割されることがある。
分割された個々の小片(以下、単に「小片」とも言う)は、人が飲み込める大きさとなることから、誤飲を誘引する。実際に、高齢者等が小片を誤飲したという複数の報告が、毎年なされている。
更に、PTP包装は、ポケット間のシート状の領域で切り離されるので、小片の外周部には、樹脂からなるシート状の部位が存在する。小片を誤飲した際、そのシート状の部位(例えば、切り離されて鋭利になった角部)で食道等の消化管が損傷するおそれがある。
【0004】
そこで、誤飲を防止するPTP包装や、仮に誤飲された際にも、消化管の損傷を抑制できるPTP包装が求められ、その具体例が特許文献1〜3に記載されている。
特許文献1、2に記載のPTP包装は、分割された小片が小さくなるのを抑制して、誤飲を防止するものであり、特許文献3に記載のPTP包装は、小片が、誤飲されたとしても、消化管の損傷を抑制する構造を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−239648号公報
【特許文献2】特開2014−80211号公報
【特許文献3】特開2012−246033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載のPTP包装は、小片が誤飲された場合に、消化管の損傷を抑制することができない。
また、特許文献3に記載のPTP包装は、小片の外周部に形成される樹脂からなるシート状の部位を小さくすることはできるが、完全に取り除くことはできず、消化管の損傷を確実に抑制することはできない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、分割された小片が誤飲されたとしても、消化管の損傷を安定的に抑制できる薬剤包装物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る薬剤包装物は、開口部が膜体で覆われた樹脂性(樹脂製)のポケットに、薬剤を収容する薬剤包装物において、前記ポケットは、前記開口部の周囲が、該開口部の内側に折れ曲がって形成された内向き縁部を備え、前記ポケットは、前記開口部周りを含め全体において、外側に突出したシート状の部分が存在せず、前記膜体は、前記内向き縁部に、貼り付けられている。
【0008】
本発明に係る薬剤包装物において、前記ポケットは、中空の円柱状、楕円柱状、球状、もしくは、楕円体状に形成されているのが好ましい。
【0009】
本発明に係る薬剤包装物において、前記膜体は、外縁が、前記内向き縁部に貼り付けられているのが好ましい。
【0010】
本発明に係る薬剤包装物において、前記ポケットは複数あって、前記ポケットは、外側に膨らんだ形状に形成された側壁部を介して、互いに連結されているのが好ましい。
【0011】
本発明に係る薬剤包装物において、前記ポケットは、平面状に並べられているのが好ましい。
【0012】
本発明に係る薬剤包装物において、前記ポケットは、複数あって、互いに非連結であり、一枚の前記膜体が、全ての前記ポケットの前記開口部を覆うのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る薬剤包装物は、ポケットが、開口部の周囲が、開口部の内側に折れ曲がって形成された内向き縁部を備え、膜体は、内向き縁部に、貼り付けられているので、ポケットには、開口部周りに、膜体の貼り付け領域用に、外側に突出したシート状の部位を設ける必要がない。従って、分割された小片が誤飲されたとしても、消化管の損傷を安定的に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第1の実施の形態に係る薬剤包装物の側面図及び一部側断面図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ、同薬剤包装物の平面図及び一部平断面図である。
図3】(A)〜(C)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態に係る薬剤包装物の側面図、一部側断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)、図2(A)、(B)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る薬剤包装物10は、開口部11が膜体12で覆われた樹脂性のポケット13に、薬剤14を収容するものである。以下、詳細に説明する。
【0016】
薬剤包装物10に収容される薬剤14は、図1(A)、(B)、図2(A)、(B)に示すように、錠剤であり、円柱状に形成されているがこれに限定されない。例えば、薬剤14は、錠剤ではなく、カプセル剤であってもよいし、形状も、楕円柱状、球状、楕円体状等、円柱状以外のものであってもよい。
【0017】
薬剤包装物10は、複数(本実施の形態では、10個)のポケット13を備え、各ポケット13には、1つの薬剤14が収容されている。複数のポケット13は、平面状に並べられ(即ち、複数のポケット13は、仮想平面上に配され)、それぞれ、隣り合うポケット13に連結されている(即ち、ポケット13は、互いに連結されている)。そのため、薬剤包装物10を用いることで、所定の数の薬剤14をひとまとめにして、管理することが可能である。
隣り合うポケット13の連結部15は、隣り合うポケット13が分割された際に、半分に分れるように形成され、分割されたそれぞれのポケット13において、連結部15があった箇所に孔が開くのを防止する。
【0018】
各ポケット13は、隣接するポケット13に一部が連結される側壁部16を有し、防湿性のある樹脂によって中空の円柱状に形成されている。ポケット13の内側には、薬剤14を収容するための内側空間部17が設けられている。
ポケット13の大きさや形状は、収容する薬剤14に応じて決定され、例えば、中空の楕円柱状、球状、楕円体状等、円柱状以外の形状のポケットを採用することもできる。なお、ポケットは、他のポケットと、形状や大きさが同じでなくてもよい。
【0019】
本実施の形態では、図1(B)に示すように、側壁部16が、外側に膨らんだ形状に形成されている。
ポケット13の素材には、透光性を有する樹脂が用いられているので、内側空間部17に収容された薬剤14は、ポケット13の外側から視認可能である。樹脂としては、熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂を採用でき、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルデン、ポリオレフィンを用いることができるが、これに限定されない。
【0020】
ポケット13は、図1(B)、図2(B)に示すように、下側(一側)に、円形の開口部11が形成され(即ち、ポケット13は、開口部11が下側に配されている)、開口部11の周囲が、開口部11の内側に折れ曲がって形成された内向き縁部18を備えている。内向き縁部18は、環状であり、側壁部16の下端に連続して形成されている。膜体12は、内向き縁部18の外面側(下面側)に貼り付けられて、開口部11全体を覆い、ポケット13内(内側空空間部17)を密封している。従って、内向き縁部18は、ポケット13において、膜体12が貼り付けられる接着面を確保していることとなる。
開口部11は、円形以外であってもよい。また、本実施の形態では、内向き縁部18が、円環状であるが、他の形状であってもよく、例えば、楕円環状にすることもできる。
【0021】
薬剤包装物10は、図1(A)、(B)、図2(A)、(B)に示すように、複数のポケット13と同数(即ち、複数)の膜体12を備え、各ポケット13には、別個の膜体12が取り付けられている。
各膜体12は、図1(B)、図2(B)に示すように、開口部11より一回り大きい円形であり、膜体12の外縁19が、内向き縁部18に貼り付けられ、張られた状態でポケット13に固定されている。従って、膜体12は、内向き縁部18の外側に配された部分が存在しない。
【0022】
本実施の形態において、膜体12は、防湿性のあるアルミニウム箔であり、薬剤14に関する情報、例えば、薬剤14の名称が、印字されている。
薬剤14は、指等によってポケット13と共に下向きに押されることで、膜体12に下向きの力を与え、膜体12は、薬剤14から与えられる力によって破られる。そして、膜体12が破られることにより、薬剤14は、内側空間部17から押し出される。
【0023】
ここで、ポケット13は、開口部11周りを含め全体において、外側に突出したシート状の部分が存在しない。よって、薬剤包装物10が、連結部15で切り離されて、1つのポケット13を有する複数の小片に分割されたとしても、各小片のポケット13には、外側に突出したシート状の部分が存在しないことになる。
そのため、人が、薬剤包装物10を分割した小片を、たとえ誤飲したとしても、小片が消化管を損傷するのを安定的に抑制可能である。
更に、各膜体12は、内向き縁部18から外側に突出していないため、誤飲された小片が消化管を損傷するのを確実に抑制する点で好適である。
【0024】
ここまで、隣り合うポケット13が連結された薬剤包装物10を説明したが、隣り合うポケット13は、必ずしも連結されている必要はない。
以下、隣り合うポケット31が非連結である図3(A)〜(C)に示す本発明の第2の実施の形態に係る薬剤包装物30について説明する。
薬剤包装物30は、図3(A)〜(C)に示すように、複数の樹脂性のポケット31を備えている。各ポケット31は、中空の楕円体状であり、下側に、図3(B)に示すように、楕円形状の開口部32が形成され、開口部32の周囲に、開口部32の内側に向かって折れ曲がった内向き縁部33が設けられている。内向き縁部33は楕円環状である。
【0025】
各ポケット31は、図3(A)〜(C)に示すように、隣り合うポケット31からそれぞれ距離を有して配置され、互いに非連結である。
薬剤包装物30は、アルミニウム箔からなる一枚の膜体34を備えている。一枚の膜体34は、矩形状に形成され、ポケット31それぞれの内向き縁部33の外面側に貼り付けられて、全てのポケット31の開口部32を覆っている。そして、各ポケット31の内側には、図3(B)に示すように、楕円体状の薬剤35が収容されている。
【0026】
薬剤包装物30も、薬剤包装物10と同様に、各ポケット31には、外側に突出したシート状の部分が存在せず、1つのポケット31を有する複数の小片に分割されたとしても、各ポケット31には、外側に突出したシート状の部分が存在しない。従って、薬剤包装物30も、仮に、分割された小片が誤飲されたとしても、消化管の損傷を安定的に抑制可能である。なお、膜体34は、ポケット31に比べて、剛性がはるかに低く(膜体34の剛性は、例えば、ポケット31の剛性の20%以下)、消化管を損傷するリスクは、極小であると考えられる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、薬剤包装物は、複数のポケットを備えている必要はなく、1つのポケットのみを備えたものであってもよい。
また、1つのポケットに複数の薬剤を収容してもよい。
そして、膜体は、アルミニウム箔である必要はなく、ポケットより剛性が低く、防湿性のあるものであればよい。
【符号の説明】
【0028】
10:薬剤包装物、11:開口部、12:膜体、13:ポケット、14:薬剤、15:連結部、16:側壁部、17:内側空間部、18:内向き縁部、19:外縁、30:薬剤包装物、31:ポケット、32:開口部、33:内向き縁部、34:膜体、35:薬剤
図1
図2
図3