(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る位置計測装置の構成を例示する模式図である。
本実施形態に係る位置計測装置1は、アーム型の三次元測定装置である。位置計測装置1は、多関節アーム15の先端に取り付けられた測定ヘッド10と、所定の座標系での座標を取得する座標取得部20と、第1領域R1及び第2領域R2を記憶する領域記憶部30と、各種の処理を実行する制御部40と、を備える。
【0019】
測定ヘッド10の先端には棒状の測定プローブ11が設けられる。測定プローブ11の先端には球状の測定子11aが設けられる。この測定子11aを対象物OBの検出箇所に接触させることで、接触点の座標を求めることができる。
【0020】
また、測定ヘッド10にはハンドル12が設けられる。ハンドル12は使用者が測定ヘッド10を持つ際の握り部分である。ハンドル12にはボタン12aが設けられる。使用者は、ボタン12aを押下することで、そのときの測定子11aの座標を得ることができる。
【0021】
多関節アーム15は、例えば定盤100の上に設置される。多関節アーム15は、測定ヘッド10を支持するとともに、ハンドル12を持った使用者の動きに応じて測定ヘッド10を様々の位置、方向に移動できるよう構成される。多関節アーム15は、例えば6軸を中心に回転動作可能になっている。多関節アーム15には各軸に対する角度センサ151が設けられている。ハンドル12を持った使用者が測定ヘッド10を移動させることで、各軸に対する角度センサ151から各軸に対する角度が出力される。
【0022】
座標取得部20は、角度センサ151から出力される角度の値などに基づき、測定ヘッド10により指定された検出箇所の座標を演算して出力する。本実施形態では、X,Y,Zの三次元座標系による座標を演算する。具体的には、測定ヘッド10の測定子11aが対象物OBの検出箇所に接触した際に角度センサ151から出力される角度やアームの長さ等を用いて測定子11aの接触点のX,Y,Zの座標を演算する。
【0023】
領域記憶部30は、X,Y,Z座標系での第1領域R1と第2領域R2とを記憶する部分である。領域記憶部30は、例えばコンピュータPCの記憶領域に設けられる。第1領域R1は、対象物OBの位置を測定するための領域である。第2領域R2は、第1領域R1とは重複しない領域である。
図1に表した例では、第2領域R2は定盤100上の所定の二次元領域(XY平面での領域)として設定される。
【0024】
第1領域R1及び第2領域R2は、測定ヘッド10を用いて設定することができる。例えば、第1領域R1を構成する複数のポイントW1〜W4の位置を測定ヘッド10で指定する。これにより、複数のポイントW1〜W4によって構成される領域を第1領域R1として登録する。
【0025】
例えば、第1領域R1が直方体領域である場合、定盤100上の3つのポイントW1〜W3と、高さ方向(Z軸方向)を決めるポイントW4とを指定することで、直方体領域の第1領域R1が設定される。なお、領域は直方体に限らず、円柱などの他の形状であってもよい。それぞれの形状を規定するためのポイントを指定することで、第1領域R1が設定される。
【0026】
同様に、第2領域R2についても登録しておく。例えば、第2領域R2が矩形領域である場合、定盤100上の2つのポイントV11及びV12を指定する。これにより、2つのポイントV11及びV12を対角とした矩形領域の第2領域R2が設定される。第2領域R2の登録では、第2領域R2と対応付けされたコマンドも登録しておく。
【0027】
制御部40は、座標取得部20で取得した座標に基づき各種の処理を実行する。座標取得部20及び制御部40は、例えばコンピュータで実行されるプログラム処理によって実現される。測定によって得られた座標はディスプレイ45に表示される。使用者は、測定ヘッド10を用いて対象物OBの位置を検出する検出箇所の指定を行うとともに、ディスプレイ45に表示される内容に沿って測定を進めていく。
【0028】
本実施形態において、制御部40は、後述する位置測定処理部と、コマンド処理部とを備える。制御部40は、測定ヘッド10によって指定された座標が第1領域R1内であるか、第2領域R2内であるかに応じて処理の切り替えを行う。
【0029】
図2は、本実施形態に係る位置計測装置のブロック構成図である。
測定ヘッド10から座標取得部20には測定子11aが対象物OBなどに接触したことを表す接触信号が出力される。この接触信号は、ボタン12aを押下したタイミングでも出力される。
【0030】
座標取得部20は、角度センサ151から出力される角度の情報を受ける。座標取得部20は、測定ヘッド10から出力された接触信号を受けたタイミングで角度センサ151から出力される角度の情報を受ける。そして、角度の情報などを用いて測定子11aのX,Y,Z座標系における座標を演算し、制御部40へ出力する。
【0031】
領域記憶部30には、予め第1領域R1を特定するための座標データと、第2領域R2を特定するための座標データとが記憶される。第1領域R1及び第2領域R2は、位置計測装置1の設定によって変更可能である。
【0032】
制御部40は、位置測定処理部41及びコマンド処理部42を備える。位置測定処理部41及びコマンド処理部42は、コンピュータPCで実行されるプログラム処理によって実現してもよい。
【0033】
制御部40は、座標取得部20から出力された座標が第1領域R1内である場合に位置測定処理部41による処理を選択する。また、制御部40は、座標取得部20から出力された座標が第2領域R2内である場合にコマンド処理部42による処理を選択する。
【0034】
位置測定処理部41は、対象物OBの位置を測定する処理を実行する。すなわち、位置測定処理部41は、座標取得部20から出力された座標を、対象物OBの検出箇所での測定結果として登録する処理を行う。コンピュータPCでは、対象物OBの三次元位置を測定するためのプログラムが実行される。位置測定処理部41は、このプログラムにおける測定結果の入力として、座標取得部20から出力された座標の値を入力する処理を行う。
【0035】
一方、コマンド処理部42は、第2領域R2に対応付けされたコマンドを受け付けて実行する処理を行う。第2領域R2とコマンドとの対応付けは、予めコンピュータPCなどに登録されている。コマンド処理部42は、座標取得部20から出力された座標を対象物OBの検出箇所での測定結果として取り扱うのではなく、所定のコマンドを実行するためのトリガーとして利用する。例えば、第2領域R2に対応付けされたコマンドが、「取り消し」コマンドであった場合、コマンド処理部42は、コンピュータPCに対して「取り消し」コマンドを送る。
【0036】
このように、本実施形態に係る位置計測装置1では、測定ヘッド10によって指定された検出箇所が第1領域R1内にある場合には対象物OBの位置を測定する処理が行われ、検出箇所が第2領域R2内である場合にはコンピュータPCに対するコマンドを実行する処理が行われる。すなわち、本実施形態に係る位置計測装置1によれば、測定ヘッド10の位置に応じて、対象物OBの位置測定と、コンピュータPCに対するコマンド実行とを容易に切り替えることができるようになる。これにより、使用者はコンピュータPCを参照しなくても測定ヘッド10の測定子11aを第2領域R2内に接触させるだけでコンピュータPCに対するコマンドを送ることができるようになる。
【0037】
次に、本実施形態に係る位置計測装置1による位置計測方法について、2つの例を挙げて説明する。
図3は、第1の位置計測方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS101に表したように、測定ヘッド10による測定が指示されたか否かを判断する。例えば、タッチプローブ型の測定子11aが何らかに接触したか、またはハンドル12のボタン12aが押下された場合、位置測定の指示があったと判断する。位置測定の指示がない場合には測定ヘッド10の移動中であるとして処理を終了する。
【0038】
位置測定の指示がされた場合には、ステップS102に表したように、座標の演算を行う。座標は、検出箇所が指定されたタイミングで角度センサ151から得られる角度の情報などに基づき座標取得部20によって演算される。
【0039】
次に、ステップS103に表したように、領域判定を行う。領域判定では、検出箇所の座標が第1領域R1内であるか、第2領域内であるか、それ以外であるかを判断する。制御部40は、座標取得部20で演算して得た座標がX,Y,Z座標系で予め設定された第1領域R1内に属するか、第2領域R2内に属するか、それ以外であるかを判断する。座標が第1領域R1でも第2領域R2でもない場合には処理を終了する。座標が第1領域R1内に属する場合には、ステップS104に表した位置測定処理を行う。位置測定処理では、座標取得部20で演算して得た座標を対象物OBの検出箇所での座標として処理する。
【0040】
一方、座標が第2領域R2内に属する場合には、ステップS105に表したコマンド送信処理を行う。コマンド送信処理では、第2領域R2に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送信する。
【0041】
このような処理によって、使用者は、測定ヘッド10により指定する位置に応じて対象物OBの位置の測定と、コンピュータPCへのコマンド送信処理とを的確に切り替えることができるようになる。
【0042】
図4は、第2の位置計測方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS201に表したように、測定ヘッド10の座標を計算する。座標は、角度センサ151から得られる角度の情報などに基づき座標取得部20によって演算される。
【0043】
次に、ステップS202に表したように、計算した座標が第1領域R1内であるか、第2領域内であるか、それ以外であるかを判断する。制御部40は、座標取得部20で演算して得た座標がX,Y,Z座標系で予め設定された第1領域R1内に属するか、第2領域R2内に属するか、それ以外であるかを判断する。座標が第1領域R1でも第2領域R2でもない場合には処理を終了する。
【0044】
座標が第1領域R1内に属する場合には、ステップS203に表したように、測定ヘッド10による測定が指示されたか否かを判断する。例えば、タッチプローブ型の測定子11aが何らかに接触したか、またはハンドル12のボタン12aが押下された場合、位置測定の指示があったと判断する。位置測定の指示がない場合には測定ヘッド10の移動中であるとして処理を終了する。
【0045】
測定ヘッド10によって位置測定の指示がされた場合には、ステップS204に表した位置測定処理を行う。位置測定処理では、座標取得部20で演算して得た座標を対象物OBの検出箇所での座標として処理する。
【0046】
一方、ステップS202において、座標が第2領域R2内に属すると判断した場合、ステップS205に表したように、測定ヘッド10による位置測定の指示がされたか否かを判断する。位置測定の指示がない場合には測定ヘッド10の移動中であるとして処理を終了する。
【0047】
測定ヘッド10によって位置測定の指示がされた場合には、ステップS206に表したコマンド送信処理を行う。コマンド送信処理では、第2領域R2に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送信する。
【0048】
このような処理によって、使用者は、測定ヘッド10により指定する位置に応じて対象物OBの位置の測定と、コンピュータPCへのコマンド送信処理とを的確に切り替えることができるようになる。
【0049】
次に、位置計測方法の具体例について説明する。
図5(a)及び(b)は、位置計測方法の具体例を示す模式図である。
先ず、予め、第1領域R1及び第2領域R2を領域記憶部30に記憶しておく。第1領域R1及び第2領域R2のそれぞれは、例えばX,Y,Z座標系における領域として登録される。ここで、第1領域R1については、測定の対象物OBよりも大きな領域に設定しておく。また、第2領域R2については、領域の登録とともにコマンドの対応付けを行っておく。
【0050】
位置計測を行うには、先ず、定盤100の第1領域R1内に対象物OBを載置する。そして、
図5(a)に表したように、測定ヘッド10の測定子11aを対象物OBの位置を検出する箇所(検出箇所)に接触させる。測定子11aが対象物OBに接触すると、接触信号が座標取得部20に送られる。座標取得部20では、接触信号を受けたタイミングで多関節アーム15に取り付けられた角度センサ151の角度を受けて、検出箇所の座標を演算する。
【0051】
制御部40は、座標取得部20で演算して得た座標を受けて、この座標が第1領域R1内に属していることを判断する。これにより、制御部40は、位置測定処理部41を選択し、座標を対象物OBの位置計測結果としてコンピュータPCに登録する処理を行う。
【0052】
次に、測定ヘッド10の測定子11aが対象物OBの別の検出箇所と接触した場合、先と同様に、座標取得部20で演算して得た座標が第1領域R1内であるとして、制御部40は、位置測定処理部41を選択し、その座標を対象物OBの位置計測結果としてコンピュータPCに登録する処理を行う。座標取得部20で演算して得た座標が第1領域R1内である限り、その座標は対象物OBの位置計測結果として取り扱われる。
【0053】
図5(b)に表したように、使用者が測定ヘッド10を移動して、測定子11aで定盤100上の第2領域R2を測定したとする。これにより、測定ヘッド10から座標取得部20に接触信号が送られ、座標取得部20では検出箇所の座標を演算する。
【0054】
制御部40は、座標取得部20で演算して得た座標を受けて、この座標が第2領域R2内に属していることを判断する。これにより、制御部40は、コマンド処理部42を選択し、第2領域R2に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送る処理を行う。コンピュータPCは、コマンド処理部42から送られたコマンドを受けて、このコマンドに基づく処理を実行する。
【0055】
このように、使用者は測定ヘッド10で指定する検出箇所の位置によって、対象物OBを測定するモードと、コンピュータPCを制御するモードとの切り替えを行うことができる。したがって、コンピュータPCのディスプレイ45の表示を参照しなくても、コンピュータPCに対する制御を行うことが可能になる。
【0056】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の説明を行う。
図6(a)及び(b)は、第2実施形態を説明する模式図である。なお、
図6(a)及び(b)では、説明の便宜上、座標取得部20、領域記憶部30、制御部40及びコンピュータPCは省略される。
【0057】
図6(a)に表した例では、第2領域R2に複数のボタン設定領域R21〜R25が設けられる。なお、
図6(a)に表した例では5つのボタン設定領域R21〜R25が設けられているが、5つに限定されない。
【0058】
複数のボタン設定領域R21〜R25のそれぞれは、互いに重ならない二次元領域である。
図6(a)に表した例では、XY平面に沿った二次元領域として複数のボタン設定領域R21〜R25が設定される。ボタン設定領域R21〜R25を決める座標は、領域記憶部30に記憶される。各ボタン設定領域R21〜R25の大きさや形状は自由に設定可能である。
【0059】
これら複数のボタン設定領域R21〜R25には、それぞれコマンドが対応付けされる。例えば、5つのボタン設定領域R21〜R25がある場合、それぞれに対応付けすることで5つのコマンドを登録することができる。
【0060】
5つのボタン設定領域R21〜R25とコマンドとの対応付けは、予めコンピュータPCなどに登録されている。ボタン設定領域R21〜R25とコマンドとの対応付けは、自由に行うことができる。例えば、使用者の位置から比較的近いボタン設定領域R21には、頻繁に使用されるコマンドを対応付けする。また、確実に送信したいコマンドについては、範囲の広いボタン設定領域R25に対応付けする。ボタン設定領域R21〜R25とコマンドとの対応付けは、使用者の好みに応じて設定してもよい。また、計測装置固有の設定を行って統一的なインタフェースを構築してもよい。
【0061】
使用者は、複数のボタン設定領域R21〜R25の中から、コンピュータPCに送りたいコマンドが割り当てられたものを選択し、そこに測定ヘッド10の測定子11aを接触させる。測定子11aを接触させると、座標取得部20によって測定子11aの座標が演算され、制御部40に送られる。
【0062】
制御部40は、座標取得部20から送られた測定子11aの座標が第2領域R2内に属すると判断した場合にコマンド処理部42を選択する。コマンド処理部42は、測定子11aの座標が複数のボタン設定領域R21〜R25のいずれかに属するかを判断し、そのボタン設定領域R21〜R25に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送信する。
【0063】
これにより、使用者は、複数のボタン設定領域R21〜R25のうち、送りたいコマンドが対応付けされたものに測定ヘッド10の測定子11aを接触させることで、そのコマンドをコンピュータPCに送ることができるようになる。
【0064】
一例として、ボタン設定領域R21に「測定プログラムのスタート/ストップ」、ボタン設定領域R22に「画面拡大」、ボタン設定領域R23に「画面縮小」、ボタン設定領域R24に「印刷」、ボタン設定領域R25に「取り消し」のコマンドを割り当てたとする。使用者が測定プログラムをスタートさせたい場合、測定ヘッド10の測定子11aでボタン設定領域R21を触る。これにより、コマンド処理部42からコンピュータPCへボタン設定領域R21に割り当てられた「測定プログラムのスタート/ストップ」のコマンドが送信され、コンピュータPCで測定プログラムの実行が開始される。測定プログラムの実行中にボタン設定領域R21を測定子11aで触ると、測定プログラムは停止する。
【0065】
同様に、例えばディスプレイ45の表示を拡大したい場合には、測定子11aでボタン設定領域R22を触る。これにより、コマンド処理部42からコンピュータPCへ「画面拡大」のコマンドが送信される。測定子11aでボタン設定領域R22を1回ずつ触ると、段階的に画面表示が拡大される。一方、測定子11aでボタン設定領域R23を触ると、コマンド処理部42からコンピュータPCへ「画面縮小」のコマンドが送信され、画面表示が縮小される。また、印刷を行いたい場合には、測定子11aでボタン設定領域R24を触る。これにより、コマンド処理部42からコンピュータPCへ「印刷」のコマンドが送信され、印刷出力が行われる。
【0066】
このように、各ボタン設定領域R21〜R25にコマンドを割り当てておくことで、測定ヘッド10を利用したコマンド送信を行うことができるようになる。コンピュータPCが離れた位置にある場合でも、使用者はコンピュータPCの位置まで移動することなく手元の測定ヘッド10を用いてコンピュータPCを制御することが可能になる。
【0067】
なお、複数のボタン設定領域R21〜R25の区別をしやすくするため、例えば定盤100に各ボタン設定領域R21〜R25の境界線やラベルを設けておいてもよい。これにより、定盤100の上に、コマンドを送信するためのボタンが設定されたかのように、選択に迷うことなく利用することが可能となる。
【0068】
また、ボタン設定領域R21〜R25は、必ずしも定盤100の上でなくてもよい。例えば、定盤100から離れたXY平面や、XZ平面、YZ平面など、どのような二次元領域であってもよい。
【0069】
図6(b)に表した例では、第2領域R2が三次元領域になっている。第2領域R2には、複数のボタン設定領域R26〜R30が設けられる。なお、
図6(b)に表した例では5つのボタン設定領域R26〜R30が設けられているが、5つに限定されない。
【0070】
複数のボタン設定領域R26〜R30のそれぞれは、互いに重ならない三次元領域である。ボタン設定領域R26〜R30を決める座標は、領域記憶部30に記憶される。各ボタン設定領域R26〜R30の大きさや形状は自由に設定可能である。また、例えばボタン設定領域R30のように、定盤100から離れた空間を設定してもよい。複数のボタン設定領域R26〜R30とコマンドとの対応付けは、予めコンピュータPCなどに登録されている。
【0071】
使用者は、複数のボタン設定領域R26〜R30の中から、コンピュータPCに送りたいコマンドが割り当てられたものを選択し、そこに測定ヘッド10の測定子11aを配置する。そして、この状態でハンドル12に設けられたボタン12aを押下する。ボタン12aを押下すると、座標取得部20によってそのときの測定子11aの座標が演算され、制御部40に送られる。
【0072】
制御部40は、座標取得部20から送られた測定子11aの座標が第2領域R2内に属すると判断した場合にコマンド処理部42を選択する。コマンド処理部42は、測定子11aの座標が複数のボタン設定領域R26〜R30のいずれかに属するかを判断し、そのボタン設定領域R26〜R30に対応付けされたコマンドをコンピュータPCに送信する。
【0073】
これにより、使用者は、複数のボタン設定領域R26〜R30のうち、送りたいコマンドが対応付けされたものに測定ヘッド10の測定子11aを配置してボタン12aを押下することで、そのコマンドをコンピュータPCに送ることができるようになる。
【0074】
図6(b)に表した例では、測定ヘッド10の移動範囲内において、空間のあらゆる場所にコマンドを送信するための仮想的なボタンを配置することが可能である。このため、三次元的なレイアウトで仮想的なボタンを配置でき、多種多様なユーザインタフェースを実現することが可能になる。
【0075】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。
図7(a)及び(b)は、第3実施形態を説明する模式図である。なお、
図7(a)及び(b)では、説明の便宜上、座標取得部20、領域記憶部30、制御部40及びコンピュータPCは省略される。
【0076】
図7(a)及び(b)では、測定ヘッド10の位置及び向きを基準に第2領域R2が設定される例が示される。例えば、
図7(a)に表したように、測定ヘッド10の測定子11aが第1領域R1以外の位置に配置されている状態で、使用者によってボタン12bが押下されたとする。座標取得部20は、ボタン12bが押下された際の測定ヘッド10の位置(座標)と、測定プローブ11の先端の向きとを求める。
【0077】
次に、制御部40は、座標取得部20で求めた測定ヘッド10の位置及び向きを基準として第2領域R2を設定する。
図7(a)に表した例では、測定ヘッド10の右側に第2領域R2が設定される。すなわち、第2領域R2は、測定ヘッド10を基準にした右側の所定領域に設定される。
【0078】
第2領域R2が設定された状態で、使用者は測定ヘッド10の測定子11aを第2領域R2に配置してボタン12aを押下する。これにより、第2領域R2と対応付けされたコマンドがコンピュータPCに送信される。
【0079】
その後、使用者が測定ヘッド10の測定子11aを第1領域R1に配置して対象物OBに接触させると、対象物OBの位置の測定が行われる。この際、先に設定した第2領域R2は解除してもよい。
【0080】
次に、
図7(b)に表したように、使用者の立ち位置が変わり、測定ヘッド10の位置が
図7(a)に示す位置とは大きく変わったとする。この状態で、使用者によってボタン12bが押下されたとする。座標取得部20は、ボタン12bが押下された際の測定ヘッド10の位置(座標)と、測定プローブ11の先端の向きとを求める。
【0081】
次に、制御部40は、座標取得部20で求めた測定ヘッド10の位置及び向きを基準として第2領域R2を設定する。
図7(b)に表した例では、測定ヘッド10の右側に第2領域R2が設定される。この際、
図7(a)に表した例とは異なる位置に第2領域R2が設定される。つまり、第2領域R2は、測定ヘッド10の位置及び向きに応じて配置が変化することになる。
【0082】
新たな位置に第2領域R2が設定された状態で、使用者は測定ヘッド10の測定子11aを第2領域R2に配置してボタン12aを押下する。これにより、第2領域R2と対応付けされたコマンドがコンピュータPCに送信される。
【0083】
このように、本実施形態では、測定ヘッド10の位置及び向きに応じて第2領域R2の配置が決定される。つまり、第2領域R2と測定ヘッド10との相対的な位置が一定になるように第2領域R2が設定される。これにより、使用者は測定ヘッド10の姿勢との関係で第2領域R2の位置を的確に把握することができる。例えば、測定ヘッド10の右側の所定位置に常に第2領域R2が設定されるとすると、使用者は測定ヘッド10をどのような姿勢で利用しても、測定ヘッド10の右側の所定位置に第2領域R2があると認識して、コマンド送信処理を行うことが可能になる。
【0084】
なお、上記の例では測定ヘッド10の右側に第2領域R2が設定される例を示したが、これ以外の位置であっても同様である。また、測定ヘッド10の位置及び向きを基準として複数のボタン設定領域が設定されてもよい。また、使用者がボタン12aを押下したタイミングで第2領域R2を設定する例を示したが、ボタン12aの押下以外のタイミングで第2領域R2を設定するようにしてもよい。例えば、測定子11aが第1領域R1内から外に出た後、一定時間その位置で停止していた場合が挙げられる。この場合、対象物OBを測定するモードからコンピュータPCを制御するモードに切り替わったことを示す報知(例えば、測定ヘッド10やコンピュータPCのスピーカからのブザー音や、測定ヘッド10に装着されたLED等の表示手段の点灯)を行ってもよい。
【0085】
また、第2領域R2を指示してコンピュータPCにコマンドを送るタイミングは、ボタン12aの押下や、ボタン12aを押下しなくても測定子11aが第2領域R2内にある状態で一定時間その位置で停止していた場合が挙げられる。コマンドを送信した場合、先と同様な報知を行ってもよい。
【0086】
また、第2領域R2は、使用者の位置及び向きを基準として設定されてもよい。例えば、図示しないカメラによって使用者の顔や体の位置及び向きを検知し、この検知した位置及び向きを基準として第2領域R2を設定してもよい。これにより、使用者が顔や体の向きを変えながら測定作業をする場合であっても、変化する使用者の位置及び向きに応じて第2領域R2が設定される。例えば、使用者の右側に第2領域R2が設定される場合には、使用者がどのような位置及び向きで作業していても、常に体の右側に第2領域R2が設定されることになり、的確にコマンド送信処理を行うことが可能になる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る位置計測装置1及び位置計測方法によれば、次のような効果がある。例えば、使用者は、コンピュータPCのディスプレイ45を参照しなくても、コンピュータPCに対してコマンドを送信することが可能となる。また、測定ヘッド10を用いた検出箇所の座標によって処理を切り替えるため、処理を切り替えるための特別なハードウェアを追加する必要はない。また、使用者の好みに応じたレイアウトでコマンドを実行する仮想的なボタンを定義することが可能になる。また、測定の対象物OBの近くに第2領域R2を設定しておけば、離れた位置に配置されたコンピュータPCまで出向いてコマンドを入力する動作が不要になり、作業効率が向上する。さらに、位置計測と同じ操作でコンピュータPCに対するコマンドを実行できることから、特別な訓練や慣れを必要とせず容易に処理の切り替えを実行することが可能になる。
【0088】
このように、本実施形態に係る位置計測装置1及び位置計測方法によれば、測定ヘッド10を用いて位置計測処理とコマンド処理とを的確に切り替えて所望の処理を実行することが可能になる。
【0089】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。