【文献】
日本味と匂学会誌,2007年,Vol. 14, No. 3,p. 441-442
【文献】
食品成分表2014,女子栄養大学出版部,2014年,p. 232, 233
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、塩化カリウムのエグ味、苦味をマスキングし、塩味を増強して、より食塩の味に近い食塩低減組成物を提供すること、また、当該食塩低減組成物を用いることで、ナトリウム分の摂取量が少なく、それでいて、望ましくは食塩を用いた場合と同様の塩味を有する食塩低減組成物とその製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの鋭意研究の結果、所定量の塩化ナトリウムに対して、L−プロリン、L−ロイシン及び塩化カリウムを所定量添加する配合とすることで、塩化カリウムを利用しながら全体として食塩量を低減しつつ、使用する食塩以上の塩味を呈する食塩低減組成物とすることが可能であることを見出した。
すなわち、本願第一の発明は、
「塩化ナトリウム100重量部に対し、L−プロリン1〜15重量部と、L−ロイシンを5〜40重量部と、塩化カリウムを10〜300重量部を配合した食塩低減組成物。」、である。
【0007】
次に、請求項1の食塩低減組成物には、酒石酸を配合することによって塩化ナトリウムのエグ味を低減することができる。
すなわち、本願第二の発明は、
「さらに、酒石酸を配合した請求項1に記載の食塩低減組成物。」、である。
次に、請求項1又は2の食塩低減組成物には、シャンツァイ抽出物を配合することが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
「さらに、シャンツァイを配合した請求項1又は2に記載の食塩低減組成物。」、である。
【0008】
次に、本出願人は、上述の食塩低減組成物を加工食品に用いる製造方法についても意図している。
すなわち、本願第四の発明は、
「加工食品において、原料として使用する食塩の一部を、L−プロリン、L−ロイシン及び塩化カリウムに置換して製造する減塩加工食品の製造方法であって、
前記L−プロリン、L−ロイシン及び塩化カリウムが、塩化ナトリウム100重量部に対して、L−プロリン1〜15重量部と、L−ロイシンを5〜40重量部と、塩化カリウムを10〜300重量部の配合比で用いる、減塩加工食品の製造方法。」、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食塩低減組成物を利用することで食塩の使用量を低減させながら、実際に使用する食塩以上に相当する塩味を呈することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に限定されないことは勿論である。
本発明は、「塩化ナトリウム100重量部に対し、L−プロリン1〜15重量部と、L−ロイシンを5〜40重量部と、塩化カリウムを10〜300重量部を配合した食塩低減組成物。」、である。
本発明においては、塩化ナトリウムの存在下、当該塩化ナトリウムを含めた組成物全体として、塩味を増強させることができる。すなわち、本来ならば、より多くの塩化ナトリウムを必要とするのと同等の塩味を呈することができる。以下、本発明を具体的に説明する。
【0011】
─各成分の説明─
本発明では、塩化カリウムと、L−プロリン、L−ロイシンの3つの成分を塩化ナトリウムと併用することを必須とする。これらの成分はいずれも市販されているものが使用できる。
塩化カリウムは塩味を有するもので、代替塩となる物質としては最も一般的なものであるが、エグ味、苦味を有し、食塩の代替物として添加すると、これら塩化カリウム特有の食味を付加してしまう。一方、L−プロリンは多量に添加すると甘みを呈するという特性を有する。また、L−ロイシンは、微妙に苦味を有するという特性を有する。L−プロリンもL−ロイシンのいずれも生体成分を構成するアミノ酸の一種である。
【0012】
L−プロリン又はL−ロイシンのいずれも、遊離のアミノ酸の場合のみならず、その生理学的に許容し得る塩であっても良い。また、特定の蛋白質を加水分解した加水分解物において、結果的にこれらのアミノ酸を含有するようにすればよいことは勿論である。
本発明においては塩化カリウムを利用しながら全体として食塩量を低減しつつ、使用する食塩以上の塩味を呈する食塩低減組成物とすることが可能である。
本発明においては酒石酸も併用することが好ましい。ここで、酒石酸とは、酸味のある果実、特に葡萄、ワインに多く含まれる有機化合物であり、やや渋みと収斂味のある酸味がある。本発明の食塩低減組成物において、この酒石酸を用いることで塩化カリウムのエグ味を効果的に低減することができる。
【0013】
また、本発明においてはシャンツァイ(香菜)も併用することが好ましい。シャンツァイ(香菜)は、コリアンダーとも称され、ハーブの一種であり独特の風味を有する。また、カレーを含め、種々の料理に用いられる。本発明の食塩低減組成物において、シャンツァイも併用することで、塩化カリウムの有するエグ味を効果的にマスキングすることが可能となる。
このように酒石酸やシャンツァイを併用することで塩化カリウムの有するエグ味を低減させ、本発明の食塩低減組成物の効果を一層増強することができる。
【0014】
─各成分の含有量─
本発明の食品低減組成物においては、塩化ナトリウムを100重量部とした場合に、L−プロリンを1〜15重量部、L−ロイシンを5〜40重量部、塩化カリウムを10〜300重量部を含有する。
また、好ましくは、塩化ナトリウム100重量部に対して、L−プロリンは5〜10重量部、L−ロイシンは10〜30重量部、そして塩化カリウムは10〜100重量部である。
【0015】
L−プロリンについては量が少ないと塩味増強効果が減少する。その一方、L−プロリンについては、量が多くなりすぎると甘みが目立つようになってしまう。L−ロイシンについては、配合量が多すぎると溶解が困難になるという問題がある。
塩化カリウムについては、配合量が少ないと塩味増強効果が十分でなく、配合量が多すぎると塩化カリウム特有の苦み・エグ味を呈するようになる。
尚、塩化ナトリウム、L−プロリン、L−ロイシン、塩化カリウムについては、その形態は特に限定されない。すなわち、粉末状や液状のいずれも使用することができる。最終的なに喫食時の濃度が本願請求項1に記載するような重量比になればよい。
【0016】
本発明においては、さらに、酒石酸を配合することが好ましい。酒石酸を含有さえることによって、塩化カリウムのエグ味を低減することができる。酒石酸は、粉末状や液状のタイプを用いるのが一般的である。但し、添加量が多すぎると酸味が強くなりすぎエグ味低減効果以外の点で不適となる。
また、酒石酸の添加量については特に限定されないが、上記の塩化ナトリウムを100重量部、L−プロリンを1〜15重量部、L−ロイシンを5〜40重量部、塩化カリウムを10〜300重量部の基本配合に対して0.05〜1.5重量部となるように添加することが好ましい。
【0017】
また、本発明においては、シャンツァイ(香菜)についても配合することが好ましい。ここで、シャンツァイ(香菜)とは、コリアンダーとも称されるハーブの一種である。本シャンツァイについては、これを蒸留法等によって抽出した抽出物を用いてもよいし、乾燥物を微粒粉末化したような粉状タイプであってもよい。尚、抽出したコリアンダーを利用する場合においては、抽出物の濃度は特に限定されないが、例えば、蒸留法による抽出物であると生のシャンツァイ100重量部に対して抽出液が100〜300重量部程度の濃度とする例が挙げられる。
【0018】
─減塩の効果─
本発明に示すように、塩化ナトリウム100重量部に対して、L−プロリン1〜15重量部と、L−ロイシンを5〜40重量部と、塩化カリウムを10〜300重量部を配合した食塩低減組成物とすることで、当該食塩低減組成物は、塩化ナトリウムのみ200重量部に相当する塩味を呈することができる。従って、ナトリウム量を概ね50%低減することができる。
【0019】
─本発明の食塩低減組成物の食品中での形態─
本発明においては上記のように、塩化ナトリウムの存在下でL−プロリン、L−ロイシン及び塩化カリウムの3種の物質を混合して食塩低減組成物とする。そして、当該食塩低減組成物を用いることで、食塩の塩味を増強することができる。
具体的な使用方法としては特に限定されず、喫食時に各成分が上記配合比となるように各食品を構成しておけばよい。すなわち、液体に溶解している状態であってもよいし、粉末等の固形の状態であってもよい。また、摂取時の形態についても液体・個体は特に限定されない。
【0020】
また、この場合、本願では塩化ナトリウム100重量部に対して各構成成分の重量比を示しているが、たとえば、塩化ナトリウム150重量部に対して、L−プロリンを1〜15重量部、L−ロイシンを5〜40重量部、塩化カリウム10〜300重量部配合を配合された状態となる場合、塩化ナトリウム150重量部のうち、100重量部の部分については、上記配合を満たすため、本発明の食品低減組成物となる。そして、本発明の食品低減組成物に別途、塩化ナトリウム50重量部を追加したものと考えることができる。従って、本発明の構成を充足する態様であることはいうまでもない。
【0021】
すなわち、本発明にいう食塩低減組成物においては、含有する全塩化ナトリウム量のうち、少なくとも一部について本発明の配合割合を充足すればよい。
また、本願発明の食塩低減組成物を加工食品等に用いる場合には、当該食塩低減組成物を加工食品の原料の食塩に置き換えて用いればよいが、食塩低減組成物として混合済みの物を用いる以外に、その製造過程でこれら4種の物質を別々に添加して、結果的に加工食品中に本発明の食塩低減組成物が含有されるようにして、機能させることもできる。
【0022】
具体的に麺類やパン類等の穀物加工品を例に取ると、生地を練るための練り水に、前記配合比で混合された食塩低減組成物を同時添加する方法以外に、例えば、塩化カリウムだけを練り水に溶解しておき、その他の物質は、先に小麦粉等原料粉にそのまま粉体で混合しておいて、結果的に併用する等の方法も可能である。また、酒石酸、シャンツアイについても同様に混合することが可能である。
また、前記4種の物質をそれぞれ粉体で混合して食品低減組成物とする場合には、より均一に混合するために、リボンミキサー等を用いてよく混合すること、及び粒度等によってムラが生じないように、微粉末化し粒度を揃えておくか、適宜油脂などを加えて分級しないようにするのがよい。あるいは、これら4種の物質を水に溶解して均一化し、これを噴霧乾燥等によって乾燥して、粉末又は顆粒状の混合物(食塩低減組成物)とすることもできる。
【0023】
また、本発明の食塩低減組成物は、前記のように、塩化ナトリウムと、L−プロリン、L−ロイシン及び塩化カリウムを前記配合比で混合して、そのまま食塩低減組成物として用いることもできる。また、さらにその他の配合することもできる。
例えば、商品形態を食卓塩とする場合、通常の食卓塩中の食塩の一部のみを本発明の食塩低減組成物と置換して、本発明の食塩低減組成物と食塩との混合品とすることもできる。また、その他、塩味増強効果や、塩化カリウムのマスキング効果が知られている物質、例えば、塩化マグネシウムやクエン酸三カリウム等を少量添加することもできる。あるいは、造粒するために、デキストリン等の賦形剤を配合して、各種造粒法によって粒状化することもできる。
【0024】
本発明の食塩低減組成物は、食塩の代わりに用いられ、前記の食卓塩の他、加工食品の原料として用いられる。加工食品としては、食塩を用いるあらゆる食品、例えば、醤油、味噌、ソース等の調味料や、ダシのもとや麺つゆ、タレ、ルー、ドレッシング等の食品の味付けに用いる調味食品の他、麺類やパン、スナック菓子等の穀類加工品、ハムソーセージ、魚肉練製品等の蓄肉魚肉加工品、スープ、漬物、惣菜類等、食塩を用いるあらゆる食品に使用できる。使用方法としては、前記各加工食品の製造方法の常法において、使用される食塩に替えて用いればよい。
【0025】
例えば、即席麺に用いられる粉末スープの場合、原料となる各種粉末エキス、粉末醤油、調味料、香料、甘味料、食塩等とともに、本発明の塩化ナトリウムと、L−プロリン、L−ロイシン、塩化カルシウムのそれぞれの4種の物質を、それぞれ塩化ナトリウム100重量部に対して、L−プロリンを1〜15重量部とL−ロイシンを5〜40重量部と、塩化カリウムを10〜300重量部添加し、粉体混合する等の製造方法が例示できる。
【0026】
また、このように配合したものを水等に溶解した後、これを噴霧乾燥して一体化、粉末化する方法や、加水及び賦形剤等を付加しスラリー状にし、押出し造粒等によって一体化、顆粒化することもできる。また、前記各種粉末エキス、調味料等とともに本発明の食塩低減組成物を混合しながら、流動層造粒法によって顆粒化して、一体化した顆粒状のスープとすることもできる。
【実施例】
【0027】
以下、比較実験等を示して本発明を実施するための最良の形態について詳述するが、本発明は以下の実験結果をもとに限定的に解釈されるべきものではない。
【0028】
[実験例1](L−プロリン量を変化させた場合)
塩化ナトリウム100重量部に、L−プロリン30重量部、L−ロイシン10重量部、塩化カリウム100重量部を基本配合として、L−プロリンの量を変化させた場合に、塩味増強効果がどのように変化するかを調べた。
具体的には、塩化ナトリウム100g(ダイヤソルト株式会社製)に、表2記載のように、L−ロイシン10g(MCフードスペシャリチティーズ株式会社製)、塩化カリウム100g(三栄源エフエフアイ株式会社製)を粉体でよく混合して、これにL−プロリンを表2に記載のように0〜20gとなるように量を変えてさらに混合し、複数のサンプルとした。
【0029】
該サンプルを熱湯900mlに溶解して、熟練のスープ開発者5名に対して盲検試験によって官能評価した。試験方法は、塩味の増強効果について(×(無)、○(可)、◎(良)、◎◎(最良))の四段階で評価した。また、L−プロリンの量を増加させると甘みを呈してくるためこの点も評価対象とした(─:甘み無、+、++、+++に従って、甘みが大となる)。また、塩味増強効果と甘みの評価を合わせた総合評価として、(×(不可)、○(可)、◎(良)、◎◎(最良))の四段階で評価した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1の結果からも明らかなようにL−プロリンが0.5g以下であると塩味増強効果が得られない。また、効果のある範囲の含量は、塩化ナトリウム100gに、L−ロイシン10g、塩化カリウム100gに対してL−プロリンの配合量が1g〜15gであることが分かった。また、好ましくは、5g〜10gである。
尚、L−プロリンを20g入れた場合、甘みを比較的に強く呈してしまい、甘みと塩味増強効果及び総合評価においては、好ましくはないことが判明した。
【0032】
[実験例2](L−ロイシン量を変化させた場合)
塩化ナトリウム100重量部に、L−プロリン30重量部、L−ロイシン10重量部、塩化カリウム100重量部を基本配合として、L−ロイシンの量を変化させた場合に、塩味増強効果がどのように変化するかを調べた。
【0033】
具体的には、塩化ナトリウム100gに、表1記載のように、L−ロイシン10g、塩化カリウム100gを粉体でよく混合して、これにL−ロイシンを表2に記載のように0〜50gとなるように量を変えてさらに混合しサンプルとした。
該サンプルを熱湯900mlに溶解して、熟練のスープ開発担当者5名に対して盲検試験によって官能評価した。試験方法は、塩味の増強効果について(×(無)、○(可)、◎(良)、◎◎(最良))の四段階で評価した。また、L−ロイシンを添加する場合、溶解性が問題になることから、溶解性の点についても評価対象とした(×:不良(溶解性)、○:可(溶解性)、◎(溶解性):良好)。また、塩味増強効果とL−ロイシンの溶解性の評価を合わせた総合評価として、(×(不可)、○(可)、◎(良)、◎◎(最良))の四段階で評価した。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2の結果からも明らかなようにL−ロイシンは5g以上で塩味増強効果が得られた。また、L−ロイシンの場合、その溶解性が問題となるが、溶解性が許容される範囲の含量は、塩化ナトリウム100gに、L−ロイシン10g、塩化カリウム100gを湯900mlに溶解した水溶液に対して、L−プロリンの配合量が5g〜40gであることが分かった。また、好ましくは、10g〜30gであることが分かった。
【0036】
[実験例3](塩化カリウム量を変化させた場合)
塩化ナトリウム100重量部に、L−プロリン30重量部、L−ロイシン10重量部、塩化カリウム100重量部を基本配合として、塩化カリウムの量を変化させた場合に、塩味増強効果がどのように変化するかを調べた。
具体的には、塩化ナトリウム100gに、表1記載のように、L−プロリン30g、L−ロイシン10gを粉体でよく混合して、これに塩化カリウムを表3に記載のように0〜400gとなるように量を変えて混合しサンプルとした。
該サンプルを熱湯900mlに溶解して、熟練のスープ開発担当者5名に対して盲検試験によって官能評価した。試験方法は、塩味の増強効果について(×(無)、○(可)、◎(良)、◎◎(最良))の四段階で評価した。また、塩化カリウムの量を増加させるとエグ味を呈してくるためこの点も評価対象とした(─:エグ味 無、+、++、+++に従って、エグ味が大となる)。また、塩味増強効果と塩化カリウムの呈するエグ味の評価を合わせた総合評価として、(×(不可)、○(可)、◎(良)、◎◎(最良))の四段階で評価した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3の結果からも明らかなように塩化カリウムを添加すると塩味増強効果が得られることが明らかである。一方、塩化カリウムの含量が多すぎると塩化カリウムのエグ味が強くなることが分かった。塩化カリウムの塩味増強に関する効果のある範囲の含量は、塩化ナトリウム100gに、L−ロイシン10g、L−プロリン10gに対して、塩化カリウムの配合量が10g〜300gであることが分かった。また、好ましくは、10g〜100gであることが分かった。
【0039】
[実験例4]酒石酸を添加した場合
塩化ナトリウム100重量部に、L−プロリン30重量部、L−ロイシン10重量部、塩化カリウム100重量部を基本配合として、これにさらに酒石酸を添加した場合、及びこの添加量を変化させた場合に、塩化カリウムのエグ味低減効果がどのように変化するかを調べた。
具体的には、塩化ナトリウム100gに、表1記載のように、L−プロリン30g、L−ロイシン10g、塩化カリウム100gを粉体でよく混合して、これに酒石酸(東海物産株式会社製)を添加した場合、及び本酒石酸の添加量を変化させた場合のサンプルについて酒石酸によるエグ味低減効果を評価する試験を行った。
【0040】
該サンプルを熱湯900mlに溶解して、スープ開発担当者5名に対して盲検試験によって官能評価した。試験方法は、塩味の増強効果について(×(無)、○(可)、◎(良)、◎◎(最良))の四段階で評価した。また、酒石酸の量を増加させると酸味を呈してくるためこの点も評価対象とした(─:酸味 無、+、++、+++、++++に従って、酸味が大となる)。また、上記の評価を合わせた総合評価として、(×(不可)、○(可)、◎(良))の三段階で評価した。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
表4の結果からも明らかなように酒石酸を添加すると、本発明の食塩低減組成物において効果的にエグ味低減効果を得ることができることが分かった。
【0042】
[実験例5]シャンツアイ抽出物を添加した場合
塩化ナトリウム100重量部に、L−プロリン30重量部、L−ロイシン10重量部、塩化カリウム100重量部を基本配合として、これにシャンツァイ抽出物を添加した場合、及びこの添加量を変化させた場合に、塩化カリウムのエグ味低減効果がどのように変化するかを調べた。
具体的には、塩化ナトリウム100gに、表1記載のように、L−プロリン30g、L−ロイシン10g、塩化カリウム100g、酒石酸0.1gを粉体でよく混合した。
次に、シャンツァイ抽出物は以下のように抽出した。すなわち、生のシャンツァイ原料に対して水蒸気蒸留を行い、生のシャンツァイ100重量部に対して蒸留後の水溶液を200重量部となるように調製し、シャンツァイ抽出物を完成させた。
【0043】
上記のように抽出したシャンツァイ抽出物を用いてこれを表3に記載のように、無し、0.05g〜2gとなるように量を変えて混合し、試験サンプルとした。
該試験サンプルをそれぞれ熱湯900mlに溶解して、熟練のスープ開発担当者○○名に対して盲検試験によって官能評価した。試験方法は、塩化ナトリウムのエグ味低減効果について(×(無)、○(可)、◎(良))の三段階で評価した。また、シャンツァイ抽出物の量を増加させると、特有のシャンツァイ臭を呈してくるためこの点も評価対象とした(─:甘み無、+、++、+++に従って、シャンツァイ臭が大となる)。また、上記の評価を合わせた総合評価として、(×(不可)、○(可)、◎(良))の三段階で評価した。結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5の結果からも明らかなようにシャンツァイ抽出物を利用する場合、本試験例での抽出方法によるシャンツァイ抽出物を利用する場合、0.05〜2重量部の範囲で本発明の食塩低減組成物において効果的にエグ味低減効果を得ることができることが分かった。但し、シャンツアイ抽出物の添加量が2重量%であると、特有のシャンツァイ臭を呈し、エグ味低減効果との総合評価では、やや劣ることが判明した。