特許第6494377号(P6494377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494377
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ワーク加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 47/22 20060101AFI20190325BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20190325BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B24B47/22
   B24B7/04 A
   H01L21/304 622R
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-73439(P2015-73439)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193458(P2016-193458A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(74)【代理人】
【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健二
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−193156(JP,A)
【文献】 特開2011−200960(JP,A)
【文献】 特開平11−309673(JP,A)
【文献】 特開2008−264913(JP,A)
【文献】 特開2014−226749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 41/047
B24B 41/06
B24B 47/22
B24B 49/04
B24B 49/10
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを同時に研削又は研磨して所定の厚みへと加工するワーク加工装置において、
複数の前記ワークを同心円上に配列して保持する保持面を有し、該保持面と直交した回転軸心を中心に回転するチャックテーブルと、
前記保持面上のワークと対向して配設される研削又は研磨部材と共に回転する加工ホイールと、
前記加工ホイールを回転可能に支持して前記ワーク方向に送り、前記保持面上のワークに前記研削又は研磨部材を押し付ける送り機構と、
前記保持面上の前記ワークよりも回転軸心側で該保持面上に当接されて、その当接している箇所における該保持面の高さを加工中に測定する接触型の第1センサと、
前記保持面上の前記ワークよりも外周縁側で該保持面上に当接されて、その当接している箇所における該保持面の高さを加工中に測定する接触型の第2センサと、
前記各センサの測定結果に基づいて前記保持面の形状を判定し、前記加工ホイールの回転軸心と前記チャックテーブルの回転軸心の相対的な傾きを調整する制御手段と、
を備えることを特徴とするワーク加工装置。
【請求項2】
前記加工ホイールの回転軸心と前記チャックテーブルの回転軸心との相対的な傾き調整は、前記チャックテーブルの回転軸心に対して前記加工ホイールの回転軸心を傾けて行う、ことを特徴とする請求項1記載のワーク加工装置。
【請求項3】
前記加工ホイールの回転軸心と前記チャックテーブルの回転軸心との相対的な傾き調整は、前記加工ホイールの回転軸心に対して前記チャックテーブルの回転軸心を傾けて行う、ことを特徴とする請求項1記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記チャックテーブルの前記保持面は、チャックテーブル上に載置された支持基盤でなる、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記ワークが半導体ウェハである、ことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載のワーク加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体デバイスや光デバイスの製造プロセスでは、インゴットから切り出された炭化ケイ素(SiC)、サファイア、LTなどのウェハが、研削装置や研磨装置によって研削・研磨されて、所定の厚みへと薄化及び平坦化される。
【0003】
そして、薄化・平坦化されたウェハの表面に複数の回路素子を形成し、更にウェハの裏面が研削・研磨されて所定の厚みへと薄化された後、ダイシング装置などによりウェハを個々のデバイスへと分割することで、各種の半導体デバイスや光デバイスが製造される。
【0004】
また、研削装置や研磨装置による加工中に、被加工物の厚みを測定しつつ研削や研磨を遂行し、被加工物が所定の厚みに達した場合に加工を終了するようにした手段も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、1つの環状フレームの開口部内に粘着シートを介して複数の被加工物を装着し、研削や研磨を同時に実施して、全ての被加工物を所定の厚みへと薄化するようにした手段も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
その特許文献2の記載の発明は、図8及び図9に示すように、1つの環状フレームFに貼着された粘着テープTの中心に第1ウェハWaを貼着すると共に、複数(6個)の第2ウェハWbをその周りに貼着してなるウェハユニット51を形成し、そのウェハユニット51をチャックテーブル52上に配置している。また、チャックテーブル51の回転軸心O1から第2ウェハWbの最外周位置までの長さより大きい半径を有してなる加工ホイール54の外周縁が、第1ウェハWaの中心を通過するように、チャックテーブル52と加工ホイール54の位置関係を設定する。そして、接触型の厚みセンサ55で第1ウェハWaの厚みを測定しながら、第1ウェハWa及び第2ウェハWbの研削を同時に実施し、第1ウェハWaの厚みが所定厚みへ達した際に、全てのウェハWa、Wbが所定の厚みに研削されたと見なして研削送りを停止するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−21264号公報。
【特許文献2】特開2012−101293号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8及び図9に示すように、特許文献2に開示された加工の仕方は、第1ウェハWaの厚みだけを見て、第2ウェハWbの厚みは見なし測定をしている。このように複数の第2ウェハWbを同心上に配置させて加工をする場合は、ウェハWが配置されているチャックテーブル51の保持面が加工時における熱で膨張して撓み変形を起こすことも少なくない。しかしながら、特許文献2に開示された加工では、その熱膨張による変形については何ら考慮されていない。
【0009】
その熱膨張による撓み変形について更に説明をすると、本来は、加工後の第2ウェハWbの厚みは、図10の(e)に示すように、全てが均一でなければならない。しかし、加工途中の発熱により、チャックテーブル51の保持面が変形をし、例えば保持面の撓み変形が、図10の(a)に示すように回転軸心O1側が最外周位置側よりも高く、最外周位置側が下がって変形したような場合で、加工ホイール54の回転軸心O2がチャックテーブル51の回転軸心O1と平行で、かつ、加工ホイール54が水平に送られてチャックテーブル51上に押し付けられたときには、各第2ウェハWbの断面形状は、図10の(b)に示すように回転軸心O1側の厚みの方が最外周位置側の厚みよりも小さくなり、厚みが均一にならない。また、反対に、例えば図10の(c)に示すように回転軸心O1側が最外周位置側よりも低く、回転軸心O1側が凹んで変形したような場合で、加工ホイール54が水平に送られてチャックテーブル51上に押し付けられたときには、各第2ウェハWbの断面形状は、図10の(d)に示すように回転軸心O1側の厚みの方が最外周位置側の厚みよりも大きくなり、厚みが均一にならない。
【0010】
しかしながら、従来の加工装置では、加工途中の発熱などにより、チャックテーブルの保持面が熱変形を起こすことに関しての考慮は行われていなかった。そのため、製品によって仕上がり厚みにバラツキが生じるという問題があった。
【0011】
そこで、ワークの厚みのバラツキを少なくできるようにしたワーク加工装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、複数のワークを同時に研削又は研磨して所定の厚みへと加工するワーク加工装置において、複数の前記ワークを同心円上に配列して保持する保持面を有し、該保持面と直交した回転軸心を中心に回転するチャックテーブルと、前記保持面上のワークと対向して配設される研削又は研磨部材と共に回転する加工ホイールと、前記加工ホイールを回転可能に支持して前記ワーク方向に送り、前記保持面上のワークに前記研削又は研磨部材を押し付ける送り機構と、前記保持面上の前記ワークよりも回転軸心側で該保持面上に当接されて、その当接している箇所における該保持面の高さを加工中に測定する接触型の第1センサと、前記保持面上の前記ワークよりも外周縁側で該保持面上に当接されて、その当接されている箇所における該保持面の高さを加工中に測定する接触型の第2センサと、前記各センサの測定結果に基づいて前記保持面の形状を判定し、前記加工ホイールの回転軸心と前記チャックテーブルの回転軸心の相対的な傾きを調整する制御手段と、を備えるワーク加工装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、加工途中に、接触型の第1センサにより保持面の回転軸心側における高さを測定すると共に、接触型の第2センサにより保持面の外周縁側における高さを測定し、その接触型の第1センサと第2センサの測定結果に基づいて加工途中における保持面の形状を判定する。また、その判定に基づいて加工ホイールの回転軸心とチャックテーブルの回転軸心の相対的な傾きを制御手段により調整して、保持面の熱変形などを補正するので、保持面の熱による撓み変形などを考慮して、ワークを精度よく加工することができる。これにより、加工によるワークの厚みのバラツキが少なくなる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、前記加工ホイールの回転軸心と前記チャックテーブルの回転軸心との相対的な傾き調整は、前記チャックテーブルの回転軸心に対して前記加工ホイールの回転軸心を傾けて行う、ワーク加工装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、保持面に熱による撓み変形などがあるとき、加工ホイールの回転軸心をチャックテーブルの回転軸心に対して傾けることで、加工ホイールの回転軸心とチャックテーブルの回転軸心との相対的な傾き調整を簡単に行うことができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の構成において、前記加工ホイールの回転軸心と前記チャックテーブルの回転軸心との相対的な傾き調整は、前記加工ホイールの回転軸心に対して前記チャックテーブルの回転軸心を傾けて行う、ワーク加工装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、保持面に熱による撓み変形などがあるとき、チャックテーブルの回転軸心を加工ホイールの回転軸心に対して傾けることで、チャックテーブルの回転軸心と加工ホイールの回転軸心との相対的な傾き調整を簡単に行うことができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3に記載の構成において、前記チャックテーブルの前記保持面は、チャックテーブル上に載置された支持基盤でなる、ワーク加工装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、チャックテーブルの保持面を、チャックテーブル上に配置される支持基盤で形成することができる。すなわち、支持基盤をワークの製作に適した材質のものに変えることにより、ワークを精度良く加工をすることができるので、更に、加工によるワークの厚みのバラツキを少なくして、製品精度を向上させることができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1、2、3または4に記載の構成において、前記ワークが半導体ウェハである、ワーク加工装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、半導体ウェハを精度良く厚みを均一に加工することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、チャックテーブルの保持面の熱変形などを考慮した加工を行うことができるので、製品毎に仕上がり厚みのバラツキが出るのを少なくして、製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るワーク加工装置の平面図である。
図2】一部を破断して示す同上ワーク加工装置の側面図である。
図3】同上ワーク加工装置の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図4】第1制御例での、同上ワーク加工装置の動作を説明する図である。
図5】同上ワーク加工装置の第1制御例を説明する図で、(a)は保持面が変形している状態の説明図、(b)は保持面が変形しているときに作られるウェハの説明図、(c)は正常なウェハの説明図である。
図6】第2制御例での、同上ワーク加工装置の動作を説明する図である。
図7】同上ワーク加工装置の第2制御例を説明する図で、(a)は保持面が変形している状態の説明図、(b)は保持面が変形しているときに作られるウェハの説明図、(c)は正常なウェハの説明図である。
図8】従来の一例として示すワーク加工装置の概略斜視図である。
図9】複数のウェハを支持した環状フレームの一例を示す斜視図である。
図10】複数のウェハを加工するときの問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明はワークの厚みのバラツキを少なくできるようにしたワーク加工装置を提供するという目的を達成するために、複数のワークを同時に研削又は研磨して所定の厚みへと加工するワーク加工装置において、複数の前記ワークを同心円上に配列して保持する保持面を有し、該保持面と直交した回転軸心を中心に回転するチャックテーブルと、前記保持面上のワークと対向して配設される研削又は研磨部材と共に回転する加工ホイールと、前記加工ホイールを回転可能に支持して前記ワーク方向に送り、前記保持面上のワークに前記研削又は研磨部材を押し付ける送り機構と、前記保持面上の前記ワークよりも回転軸心側で該保持面上に当接されて、その当接している箇所における該保持面の高さを加工中に測定する接触型の第1センサと、前記保持面上の前記ワークよりも外周縁側で該保持面上に当接されて、その当接している箇所における該保持面の高さを加工中に測定する接触型の第2センサと、前記各センサの測定結果に基づいて前記保持面の形状を判定し、前記加工ホイールの回転軸心と前記チャックテーブルの回転軸心の相対的な傾きを調整する制御手段と、を備えることにより実現した。
【0025】
以下、本発明の実施形態によるワーク加工装置を半導体製造プロセスにおいて、ウェハを研削して所定の厚みへと薄化し、また平坦化する研削装置に適用した場合を例に挙げ、図1乃至図7を参照しながら好適な実施例について詳細に説明する。なお、本実施例では、ウェハを研削して所定の厚みへと薄化する場合について説明するが、ウェハを研磨する研磨装置にも同様して適用することができるものである。
【実施例】
【0026】
図1及び図2は半導体製造プロセスにおいて、ウェハを研削して所定の厚みへと薄化し、平坦化する研削装置を示すものであり、図1はその概略平面図、図2はその一部を破断して示す側面図である。
【0027】
図1及び図2において、ワーク加工装置としての研削装置10は、チャックテーブル11と、該チャックテーブル11上にセットされた支持基盤12と、支持基盤12上に冷却水(純水)を供給する冷却水供給ノズル13と、砥石14を設けた加工ホイール15と、加工ホイール15を支持する送り機構16と、接触型の第1センサ(プローブ)17と、接触型の第2センサ(プローブ)18と、制御手段20などを備えている。
【0028】
前記制御手段20は、接触型の第1センサ17及び非接触型のセンサ18からの測定結果を基に、前記研削装置10を決められた手順で動作させるプログラムなどが格納されてなる手段であり、例えばコンピュータである。
【0029】
前記チャックテーブル11は、回転軸心O1を中心に、図1中の矢印Aで示す反時計回りに回転する。また、チャックテーブル11は、チルト機構21を有しており、該チルト機構21は、チャックテーブル11の回転軸心O1をX−Y方向に傾倒させて、そのチャックテーブル11をX−Y方向に傾倒調整ができるようになっている。
【0030】
前記支持基盤12は、チャックテーブル11上に、そのチャックテーブル11の保持面として一体回転可能に取り付けられた円板状の基盤であり、チャックテーブル11の回転軸心O1と同心的に配設されている。その支持基盤12は、例えばセラミック材などで形成されている。そして、支持基盤12上(以下、支持基板12の上面を「保持面12a」という)には、回転軸心O1の周りで、かつ、同心円C3上に4つのウェハWがほぼ等間隔で配置されて固定されている。それら4つのウェハWの固定は、例えばワックスなどで取り外し自在に固定される。なお、支持基盤12の保持面12a上に配置するウェハWの数は、支持基盤12の大きさによって変更される。また、支持基盤12は必ずしも必要とするものではなく、例えばチャックテーブル11の上面を保持面12aとして使用する場合もある。
【0031】
前記加工ホイール15は、支持基盤12と対向する面に研削又は研磨部材としての砥石14を設けて、回転可能に前記送り機構16に取り付けられている。加工ホイール15の砥石面(砥石14が占める面)は、支持基盤12の最外周縁から回転軸心O1のほぼ近傍の位置を通過するように、支持基盤12との位置関係を設定する。その加工ホイール15は、回転軸心O2を中心に図1中の矢印Bで示す時計回りに回転する。また、加工ホイール15は、チルト機構22を有しており、そのチルト機構22は、加工ホイール15の回転軸心O2をX−Y方向に傾倒させて、その加工ホイール15をX−Y方向に傾倒調整ができるようになっている。
【0032】
前記送り機構16は、加工ホイール15と砥石14を一体に、回転軸心O2方向に移動させるものであり、その送り移動により、加工ホイール15と共に回転している前記砥石14を保持面12a上のウェハWに押し付け、ウェハWを研削することができるようになっている。
【0033】
前記冷却水供給ノズル13は、切削ホイール15の砥石14と支持基盤12の保持面12aが当接する位置(以下、この位置を「加工位置」と言う)の上流側に、供給水吹出口をその加工位置に向けて配設されている。その冷却水供給ノズル13は、砥石14と支持基盤12が当接する加工位置に冷却水を供給して、その加工位置での温度上昇を抑える。
【0034】
前記接触型の第1センサ17は、保持面12a上のウェハWよりも回転軸心O1側の円周部分C1において該保持面12a上に当接されており、該保持面12aの形状(高さ位置)を測定可能になっている。また、その測定された結果は、前記制御手段20に入力される。
【0035】
前記接触型の第2センサ18は、保持面12a上のウェハWよりも外周縁側の円周部分C2において該保持面12a上に当接されており、該保持面12aの形状(高さ位置)を測定可能になっている。また、その測定された結果は、前記制御手段20に入力される。
【0036】
図3は、前記制御手段20が第1センサ17、第2センサ18の形状測定に基づいて、チルト機構22を介して加工ホイール15の回転軸線O2の傾きを制御する制御手順の一例を示すフローチャートである。次に、図3に示すフローチャートに従って、本実施例における研削装置10の動作を(1)〜(5)の順に説明する。
【0037】
(1) まず、加工に先立ち、図1に示すように、チャックテーブル11の保持面12a上には、加工を必要とする4枚のウェハWが同心円C3上に固定してセットされる。セット後、制御手段20は、チャックテーブル11の回転を開始させると共に、加工ホイール15の回転を開始させる。例えば、この時の加工ホイール15の回転数は毎分2000回転、チャックテーブル11の回転数は毎分300回転である。そして、チャックテーブル11が4枚のウェハWと共に回転し、加工ホイール15が砥石14と共に回転する。また、同時に第1センサ17と第2センサ18が保持面12上の高さの測定を開始し、その測定結果が制御手段20に入力される(ステップS1)。
【0038】
(2) 次いで、制御手段20は、送り機構16を介して回転している加工ホイール15を指定の速度でチャックテーブル11に向けて送り込み、回転している砥石14をチャックテーブル11上のウェハWに押し付ける。また、その加工の初期段階では、チャックテーブル11の回転軸心O1と加工ホイール15の回転軸心O2は、互いに略平行に保持され、加工ホイール15はチャックテーブル11に対して略平行に押し付けられている。
【0039】
(3) 次に、制御手段20は、第1センサ17と第2センサ18からの測定結果から、内側の円周部分C1の高さと、外側の円周部分C2の高さとを比較する。そして、ステップS3、ステップS4で、それぞれ円周部分C1と円周部分C2との高さの差が、±Xの範囲内であると判定された場合、制御手段20は、チルト機構21、22を制御することなく、送り機構16を介して加工ホイール15を所定の量だけチャックテーブル11に向けて送り込む。また、所定の量だけ送り込まれたら、加工ホイール15をチャックテーブル11から離して初期位置まで戻し、加工を終了する(ステップS5、S6)。これにより、チャックテーブル11上の4枚のウェハWは全て同じ厚みに薄化及び平坦化される。
【0040】
(4) 一方、ステップS3において、制御手段20が、円周部分C1と円周部分C2との高さの差が+X以上であると判定した場合は、図4中に1点鎖線で示すように、制御手段20は、チルト機構22を介して、加工ホイール15の回転軸心O2を矢印31aで示す方向、すなわちチャックテーブル11の回転軸線O1に対し外側に向けて倒し、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを調整する(ステップS7)。
【0041】
すなわち、ステップS3において、制御手段20が、円周部分C1と円周部分C2との高さの差が+X以上であると判定したということは、図5の(a)に示すように回転軸心O1側の円周部分C1の高さが最外周位置側の円周部分C2の高さよりも高く、熱などで変形した場合である。したがって、チルト機構22を調整せずに加工ホイール15が、回転軸心O2に沿ってチャックテーブル11に向かって押し付けられたときには、各ウェハWの断面形状は、図5の(b)に示すように、回転軸心O1側の厚みの方が最外周位置側の厚みよりも小さくなり、厚みが均一にならない。しかし、加工ホイール15をチャックテーブル11に対して外側に起こして倒すように、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを、円周部分C1と円周部分C2との高さの差に応じて調整し、加工ホイール15をチャックテーブル11に押し付けると、各ウェハWの断面形状は、図5の(c)に示すように厚みが均一になる。
【0042】
(5) 一方、ステップS4において、制御手段20が、円周部分C1と円周部分C2との高さの差が−X以下であると判定した場合は、図6中に1点鎖線で示すように、制御手段20は、チルト機構22を介して、加工ホイール15の回転軸心O2を矢印31bで示す方向、すなわちチャックテーブル11の回転軸線O1に対し内側に倒し、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを調整する(ステップS8)。
【0043】
すなわち、ステップS4において、制御手段20が、円周部分Aと円周部分Bとの高さの差が−X以上であると判定したということは、図7の(a)に示すように回転軸心O1側の円周部分C1の高さが最外周位置側の円周部分Cの高さよりも低く、熱などで変形した場合である。したがって、チルト機構22を調整せずに加工ホイール15が、回転軸心Oに沿ってチャックテーブル11に向かって押し付けられたときには、各ウェハWの断面形状は、図7の(b)に示すように、回転軸心O1側の厚みの方が最外周位置側の厚みよりも大きくなり、厚みが均一にならない。しかし、加工ホイール15をチャックテーブル11に対して内側に倒して、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを、円周部分C1と円周部分C2の高さの差に応じて調整し、加工ホイール15をチャックテーブル11に押し付けると、各ウェハWの断面形状は、図7の(c)に示すように厚みが均一になる。
【0044】
したがって、この実施例による研削装置10によれば、加工中に接触型の第1センサ17により保持面12aの回転軸心O1側における円周部分C1の高さと、接触型の第2センサ18により保持面12aの最外周縁側における円周部分C2の高さとをそれぞれ測定し、その接触型の第1センサ17と第2センサ18の測定結果に基づいて加工途中に、保持面12aの形状を判定する。また、その判定に基づいて加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを制御手段20により逐次調整し、保持面12aの熱変形などを補正するので、保持面12aの熱による撓み変形などの影響を受けること無く、ウェハWを精度良く加工することができる。これにより、加工によるウェハWの厚みのバラツキを少なくして、製品精度を向上させることができることになる。
【0045】
なお、第1センサ17と第2センサ18の計測は、加工中、連続して行わずに、所定時間毎に行ってもよい。
【0046】
また、上記実施例の構造では、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを調整するのに、加工ホイール15の回転軸心O2の傾きを回転軸線O2に対して調整するようにした構造を開示したが、反対にチャックテーブル11の回転軸心O1の傾きを回転軸線O2に対して調整するようにしても良いものである。さらに、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の、両方の傾きを調整するようにしてもよいものである。
【0047】
また、上記実施例では、ウェハを研削して所定の厚みへと薄化する場合について説明したが、ウェハを研磨する研磨装置にも同様して適用することができるものである。よって、本発明はワークを研削する研削装置だけでなく、ワークを研磨する研磨装置にも権利化が及ぶものである。
【0048】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明は半導体製造プロセスにおける加工に限ることなく、広く一般の研磨・研削装置にも応用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 研削装置(ワーク加工装置)
11 チャックテーブル
12 支持基盤
12a 保持面
13 冷却水供給ノズル
14 砥石(研削又は研磨部材)
15 加工ホイール
16 送り機構
17 第1センサ
18 第2センサ
20 制御手段
21 チルト機構
22 チルト機構
31a、31b 傾倒方向
W ウェハ
O1、O2 回転軸心
A、B 矢印(回転方向)
C1 内側の円周部分
C2 外側の円周部分
C3 同心円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10