【実施例】
【0026】
図1及び
図2は半導体製造プロセスにおいて、ウェハを研削して所定の厚みへと薄化し、平坦化する研削装置を示すものであり、
図1はその概略平面図、
図2はその一部を破断して示す側面図である。
【0027】
図1及び
図2において、ワーク加工装置としての研削装置10は、チャックテーブル11と、該チャックテーブル11上にセットされた支持基盤12と、支持基盤12上に冷却水(純水)を供給する冷却水供給ノズル13と、砥石14を設けた加工ホイール15と、加工ホイール15を支持する送り機構16と、接触型の第1センサ(プローブ)17と、接触型の第2センサ(プローブ)18と、制御手段20などを備えている。
【0028】
前記制御手段20は、接触型の第1センサ17及び非接触型のセンサ18からの測定結果を基に、前記研削装置10を決められた手順で動作させるプログラムなどが格納されてなる手段であり、例えばコンピュータである。
【0029】
前記チャックテーブル11は、回転軸心O1を中心に、
図1中の矢印Aで示す反時計回りに回転する。また、チャックテーブル11は、チルト機構21を有しており、該チルト機構21は、チャックテーブル11の回転軸心O1をX−Y方向に傾倒させて、そのチャックテーブル11をX−Y方向に傾倒調整ができるようになっている。
【0030】
前記支持基盤12は、チャックテーブル11上に、そのチャックテーブル11の保持面として一体回転可能に取り付けられた円板状の基盤であり、チャックテーブル11の回転軸心O1と同心的に配設されている。その支持基盤12は、例えばセラミック材などで形成されている。そして、支持基盤12上(以下、支持基板12の上面を「保持面12a」という)には、回転軸心O1の周りで、かつ、同心円C3上に4つのウェハWがほぼ等間隔で配置されて固定されている。それら4つのウェハWの固定は、例えばワックスなどで取り外し自在に固定される。なお、支持基盤12の保持面12a上に配置するウェハWの数は、支持基盤12の大きさによって変更される。また、支持基盤12は必ずしも必要とするものではなく、例えばチャックテーブル11の上面を保持面12aとして使用する場合もある。
【0031】
前記加工ホイール15は、支持基盤12と対向する面に研削又は研磨部材としての砥石14を設けて、回転可能に前記送り機構16に取り付けられている。加工ホイール15の砥石面(砥石14が占める面)は、支持基盤12の最外周縁から回転軸心O1のほぼ近傍の位置を通過するように、支持基盤12との位置関係を設定する。その加工ホイール15は、回転軸心O2を中心に
図1中の矢印Bで示す時計回りに回転する。また、加工ホイール15は、チルト機構22を有しており、そのチルト機構22は、加工ホイール15の回転軸心O2をX−Y方向に傾倒させて、その加工ホイール15をX−Y方向に傾倒調整ができるようになっている。
【0032】
前記送り機構16は、加工ホイール15と砥石14を一体に、回転軸心O2方向に移動させるものであり、その送り移動により、加工ホイール15と共に回転している前記砥石14を保持面12a上のウェハWに押し付け、ウェハWを研削することができるようになっている。
【0033】
前記冷却水供給ノズル13は、切削ホイール15の砥石14と支持基盤12の保持面12aが当接する位置(以下、この位置を「加工位置」と言う)の上流側に、供給水吹出口をその加工位置に向けて配設されている。その冷却水供給ノズル13は、砥石14と支持基盤12が当接する加工位置に冷却水を供給して、その加工位置での温度上昇を抑える。
【0034】
前記接触型の第1センサ17は、保持面12a上のウェハWよりも回転軸心O1側の円周部分C1において該保持面12a上に当接されており、該保持面12aの形状(高さ位置)を測定可能になっている。また、その測定された結果は、前記制御手段20に入力される。
【0035】
前記接触型の第2センサ18は、保持面12a上のウェハWよりも外周縁側の円周部分C2において該保持面12a上に当接されており、該保持面12aの形状(高さ位置)を測定可能になっている。また、その測定された結果は、前記制御手段20に入力される。
【0036】
図3は、前記制御手段20が第1センサ17、第2センサ18の形状測定に基づいて、チルト機構22を介して加工ホイール15の回転軸線O2の傾きを制御する制御手順の一例を示すフローチャートである。次に、
図3に示すフローチャートに従って、本実施例における研削装置10の動作を(1)〜(5)の順に説明する。
【0037】
(1) まず、加工に先立ち、
図1に示すように、チャックテーブル11の保持面12a上には、加工を必要とする4枚のウェハWが同心円C3上に固定してセットされる。セット後、制御手段20は、チャックテーブル11の回転を開始させると共に、加工ホイール15の回転を開始させる。例えば、この時の加工ホイール15の回転数は毎分2000回転、チャックテーブル11の回転数は毎分300回転である。そして、チャックテーブル11が4枚のウェハWと共に回転し、加工ホイール15が砥石14と共に回転する。また、同時に第1センサ17と第2センサ18が保持面12上の高さの測定を開始し、その測定結果が制御手段20に入力される(ステップS1)。
【0038】
(2) 次いで、制御手段20は、送り機構16を介して回転している加工ホイール15を指定の速度でチャックテーブル11に向けて送り込み、回転している砥石14をチャックテーブル11上のウェハWに押し付ける。また、その加工の初期段階では、チャックテーブル11の回転軸心O1と加工ホイール15の回転軸心O2は、互いに略平行に保持され、加工ホイール15はチャックテーブル11に対して略平行に押し付けられている。
【0039】
(3) 次に、制御手段20は、第1センサ17と第2センサ18からの測定結果から、内側の円周部分C1の高さと、外側の円周部分C2の高さとを比較する。そして、ステップS3、ステップS4で、それぞれ円周部分C1と円周部分C2との高さの差が、±Xの範囲内であると判定された場合、制御手段20は、チルト機構21、22を制御することなく、送り機構16を介して加工ホイール15を所定の量だけチャックテーブル11に向けて送り込む。また、所定の量だけ送り込まれたら、加工ホイール15をチャックテーブル11から離して初期位置まで戻し、加工を終了する(ステップS5、S6)。これにより、チャックテーブル11上の4枚のウェハWは全て同じ厚みに薄化及び平坦化される。
【0040】
(4) 一方、ステップS3において、制御手段20が、円周部分C1と円周部分C2との高さの差が+X以上であると判定した場合は、
図4中に1点鎖線で示すように、制御手段20は、チルト機構22を介して、加工ホイール15の回転軸心O2を矢印31aで示す方向、すなわちチャックテーブル11の回転軸線O1に対し外側に向けて倒し、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを調整する(ステップS7)。
【0041】
すなわち、ステップS3において、制御手段20が、円周部分C1と円周部分C2との高さの差が+X以上であると判定したということは、
図5の(a)に示すように回転軸心O1側の円周部分C1の高さが最外周位置側の円周部分C2の高さよりも高く、熱などで変形した場合である。したがって、チルト機構22を調整せずに加工ホイール15が、回転軸心O2に沿ってチャックテーブル11に向かって押し付けられたときには、各ウェハWの断面形状は、
図5の(b)に示すように、回転軸心O1側の厚みの方が最外周位置側の厚みよりも小さくなり、厚みが均一にならない。しかし、加工ホイール15をチャックテーブル11に対して外側に起こして倒すように、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを、円周部分C1と円周部分C2との高さの差に応じて調整し、加工ホイール15をチャックテーブル11に押し付けると、各ウェハWの断面形状は、
図5の(c)に示すように厚みが均一になる。
【0042】
(5) 一方、ステップS4において、制御手段20が、円周部分C1と円周部分C2との高さの差が−X以下であると判定した場合は、
図6中に1点鎖線で示すように、制御手段20は、チルト機構22を介して、加工ホイール15の回転軸心O2を矢印31bで示す方向、すなわちチャックテーブル11の回転軸線O1に対し内側に倒し、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを調整する(ステップS8)。
【0043】
すなわち、ステップS4において、制御手段20が、円周部分Aと円周部分Bとの高さの差が−X以上であると判定したということは、
図7の(a)に示すように回転軸心O1側の円周部分C1の高さが最外周位置側の円周部分Cの高さよりも低く、熱などで変形した場合である。したがって、チルト機構22を調整せずに加工ホイール15が、回転軸心Oに沿ってチャックテーブル11に向かって押し付けられたときには、各ウェハWの断面形状は、
図7の(b)に示すように、回転軸心O1側の厚みの方が最外周位置側の厚みよりも大きくなり、厚みが均一にならない。しかし、加工ホイール15をチャックテーブル11に対して内側に倒して、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを、円周部分C1と円周部分C2の高さの差に応じて調整し、加工ホイール15をチャックテーブル11に押し付けると、各ウェハWの断面形状は、
図7の(c)に示すように厚みが均一になる。
【0044】
したがって、この実施例による研削装置10によれば、加工中に接触型の第1センサ17により保持面12aの回転軸心O1側における円周部分C1の高さと、接触型の第2センサ18により保持面12aの最外周縁側における円周部分C2の高さとをそれぞれ測定し、その接触型の第1センサ17と第2センサ18の測定結果に基づいて加工途中に、保持面12aの形状を判定する。また、その判定に基づいて加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを制御手段20により逐次調整し、保持面12aの熱変形などを補正するので、保持面12aの熱による撓み変形などの影響を受けること無く、ウェハWを精度良く加工することができる。これにより、加工によるウェハWの厚みのバラツキを少なくして、製品精度を向上させることができることになる。
【0045】
なお、第1センサ17と第2センサ18の計測は、加工中、連続して行わずに、所定時間毎に行ってもよい。
【0046】
また、上記実施例の構造では、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の相対的な傾きを調整するのに、加工ホイール15の回転軸心O2の傾きを回転軸線O2に対して調整するようにした構造を開示したが、反対にチャックテーブル11の回転軸心O1の傾きを回転軸線O2に対して調整するようにしても良いものである。さらに、加工ホイール15の回転軸心O2とチャックテーブル11の回転軸心O1の、両方の傾きを調整するようにしてもよいものである。
【0047】
また、上記実施例では、ウェハを研削して所定の厚みへと薄化する場合について説明したが、ウェハを研磨する研磨装置にも同様して適用することができるものである。よって、本発明はワークを研削する研削装置だけでなく、ワークを研磨する研磨装置にも権利化が及ぶものである。
【0048】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。