特許第6494423号(P6494423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494423
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20190325BHJP
   B29B 13/04 20060101ALI20190325BHJP
   B29B 13/00 20060101ALI20190325BHJP
   B29B 9/16 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCES
   B29B13/04
   B29B13/00
   B29B9/16
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-108970(P2015-108970)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-222782(P2016-222782A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(72)【発明者】
【氏名】相田 真男
(72)【発明者】
【氏名】安田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】石橋 宏文
(72)【発明者】
【氏名】籠田 康人
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−001727(JP,A)
【文献】 特開2007−153979(JP,A)
【文献】 特表2010−512258(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/117963(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0019882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
B29B 7/00−11/14
13/00−15/06
B29C31/00−31/10
37/00−37/04
71/00−71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有する樹脂でありかつ結晶前の未結晶状態の樹脂である軟質樹脂の造粒物について、上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れて貯蔵するための貯蔵装置と、
前記貯蔵装置から抜き出した前記軟質樹脂の造粒物を、再度、前記貯蔵装置へ戻すための配管と、
前記貯蔵装置と該配管とにより形成される循環路内で、前記軟質樹脂の造粒物を循環させるための空送装置と、
を備えた貯蔵システムを用いて、
結晶性を有する樹脂でありかつ結晶前の未結晶状態の樹脂である軟質樹脂の造粒物について、前記上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を前記貯蔵装置に受け入れながら、前記空送装置によって、前記循環路を介して、前記軟質樹脂の造粒物を循環させることで、該軟質樹脂の結晶化を促進させ、該結晶化が進んだ樹脂の造粒物を貯蔵する軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【請求項2】
上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れて貯蔵するために、さらに他の貯蔵装置を備えた貯蔵システムを用いて、
前記貯蔵装置では、前記循環路を介して前記軟質樹脂の造粒物を循環させ、前記軟質樹脂の結晶化を促進させて、該結晶化が進んだ樹脂の造粒物を貯蔵しつつ、
前記他の貯蔵装置では、新たに前記上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れる、請求項1に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【請求項3】
前記循環路内で前記軟質樹脂の造粒物を空送させる際の、前記配管における軟質樹脂のペレットと空気風量の比が、0.02トン/Nm以下である、請求項1又は2に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【請求項4】
前記軟質樹脂が、少なくとも(1)、(2)のいずれかを満たすプロピレン系重合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。
(2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
【請求項5】
前記軟質樹脂の引張弾性率が、1〜200MPaであり、前記軟質樹脂の温度230℃、加重21.18Nの条件におけるメルトフローレート(MFR)が、1〜10,000g/10分である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【請求項6】
前記軟質樹脂の造粒物を前記循環路内で循環させる時間が、4時間以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【請求項7】
前記軟質樹脂の造粒物を貯蔵する貯蔵装置内の温度が、35℃以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【請求項8】
前記軟質樹脂の造粒物が空送される配管内の温度が、10℃以上30℃以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質樹脂は、環境負荷の大きい軟質塩化ビニル樹脂の代替品として、フィルム等の原料に広く使用されている。この軟質樹脂は、その性質上、その造粒物の表面が粘着性を示すことがある。そのため、軟質樹脂の中でも、特に軟質ポリオレフィン樹脂を、製品として取り扱いやすいサイズに造粒する際には、造粒物同士が粘着し塊を形成(ブロッキング)しやすいという課題がある。
この課題を解決するため、重合し脱揮した後の、溶融状態の軟質樹脂を一定温度に冷却し、その後、水中造粒法にて造粒することにより、造粒物同士の粘着を低減し、さらに、この造粒物を循環水流(冷却水)と共に脱水工程へ移送し、この間においても冷却を行なうことで効率を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/117963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、軟質樹脂は、結晶化が十分に進むまでは表面の粘着性が低減されず、これを貯蔵する貯蔵装置にそのまま搬送してしまうと、造粒物が堆積した状態で互いに固着してしまい、貯蔵装置内で閉塞を起こす可能性があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明者らは、結晶化が十分に進んでいない造粒物を、そのまま貯蔵装置へ送るのではなく、一旦、結晶化槽と称される水槽へと送り、そこで造粒物を冷却水と共に所定時間撹拌することで造粒物の結晶化を促進させる方法をあわせて見出した(特許文献1を参照)。
しかしながら、大量の造粒物を処理する為には、巨大な水槽が必要になり、また、結晶化を十分に進めるためには、5分間から、場合によっては24時間といった長時間を要する。そこで、造粒物の結晶化に関して、結晶化工程の設備費用や、結晶化造粒物の製造効率の観点から、造粒物の製造方法には、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、軟質樹脂の造粒物のブロッキングを抑制しつつ、これを貯蔵することができる造粒物の貯蔵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、軟質樹脂の造粒物を空送により循環させながら貯蔵していくことで、その間に結晶化を促進させて、結晶化が十分進んでいない軟質樹脂の造粒物の“べたつき”に起因する“ブロッキング”を抑制することができ、さらに、結晶化が十分に進んでいない造粒物であっても、貯蔵装置において、これを受け入れて、結晶化及び貯蔵の両方の処理を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1] 上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れて貯蔵するための貯蔵装置と、前記貯蔵装置から抜き出した前記軟質樹脂の造粒物を、再度、前記貯蔵装置へ戻すための配管と、前記貯蔵装置と該配管とにより形成される循環路内で、前記軟質樹脂の造粒物を循環させるための空送装置と、を備えた貯蔵システムを用いて、前記上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を前記貯蔵装置に受け入れながら、前記空送装置によって、前記循環路を介して、前記軟質樹脂の造粒物を循環させることで、該軟質樹脂の結晶化を促進させ、該結晶化が進んだ樹脂の造粒物を貯蔵する軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
[2] 上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れて貯蔵するために、さらに他の貯蔵装置を備えた貯蔵システムを用いて、前記貯蔵装置では、前記循環路を介して前記軟質樹脂の造粒物を循環させ、前記軟質樹脂の結晶化を促進させて、前記結晶化が進んだ樹脂の造粒物を貯蔵しつつ、前記他の貯蔵装置では、新たに前記上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れる、[1]に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
[3] 前記循環路内で前記軟質樹脂の造粒物を空送させる際の、前記配管における軟質樹脂のペレットと空気風量の比が、0.02トン/Nm以下である、[1]又は[2]に記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
[4] 前記軟質樹脂が、少なくとも(1)、(2)のいずれかを満たすプロピレン系重合体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。
(2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
[5] 前記軟質樹脂の引張弾性率が、JIS K 7113に準拠して、1〜200MPaであり、前記付着性を有する樹脂ペレットのJIS K7210に準拠し、温度230℃、加重21.18Nの条件におけるメルトフローレート(MFR)が、1〜10,000g/10分である、[1]〜[4]のいずれかに記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
[6] 前記軟質樹脂の造粒物を前記循環路内で循環させる時間が、4時間以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
[7] 前記軟質樹脂の造粒物を貯蔵する貯蔵装置内の温度が、35℃以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
[8] 前記軟質樹脂の造粒物が空送される配管内の温度が、10℃以上30℃以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軟質樹脂の造粒物を循環させながら貯蔵していくことで、その間に結晶化を促進させて、結晶化が十分進んでいない軟質樹脂の造粒物の“べたつき”に起因する“ブロッキング”を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵システムの一例を示す構成概略図である。
図2】本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵システムの他の例を示す構成概略図である。
図3】本発明の樹脂の造粒物の製造工程の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法の説明に入る前に、軟質樹脂を経て結晶化して成る樹脂の製造方法について説明する。
【0011】
軟質樹脂を経て結晶化した樹脂の製造方法を、図3に示す。ここで、軟質樹脂として、軟質ポリオレフィン樹脂を例に取って説明する。なお、軟質樹脂について、さらに詳細に後述する。
軟質ポリオレフィン樹脂を経て成る樹脂の造粒物の製造方法は、図3に示すとおりである。まず、原料であるオレフィン単量体は、溶液重合法や気相重合法等により重合され軟質ポリオレフィン系樹脂となる(S100)。この樹脂から溶媒や未反応のモノマー成分等を除去するため、加熱、脱揮する(S102)。脱揮工程の温度は、通常100℃〜250℃程度であるため、樹脂は溶融状態となっている。次いで、この溶融状態の樹脂を冷却工程に直接移送する(S104)。これにより、樹脂の再加熱工程が不要となるため、生産効率を向上できる。
【0012】
冷却工程では、溶融状態の軟質ポリオレフィン系樹脂を、樹脂の融点(Tm−D)±50℃の温度範囲に、好ましくは、融点(Tm−D)±20℃の温度範囲に冷却した後に造粒する。これにより、造粒時における樹脂の粘着性を低減できる。従って、造粒時にペレットが粘着し合い、塊を形成することを抑制できる。
なお、本明細書において、樹脂の融点(Tm−D)は、後述のとおりに求められる。
【0013】
樹脂を冷却する装置としては、ポリマークーラー、ジャケット付混練機、ジャケット付ポリマーミキサー等が使用できる。比較的安価であり、設備コストの低減が図れることからポリマークーラーが好ましい。
【0014】
樹脂の冷却後に、水中造粒を行なう(S106)。水中造粒の一例としては、冷却機にて冷却された樹脂が、冷却機の先端に取り付けられた、所定形状の穴を1以上有するダイスを通過した後、カッティングチャンバーで切断されペレット形状となる。
切断されたペレットは、水流によりチャンバーから脱水機に搬送される。そして、脱水機により、軟質樹脂の造粒物と冷却水が分離され、軟質樹脂の造粒物が回収される。
【0015】
次いで、水中造粒の工程(S106)で得られた軟質樹脂の造粒物は、結晶化工程(S108)に供され、結晶化後の樹脂の造粒物が最終製品として梱包される(S110)。
本発明では、結晶化工程(S108)が、第一結晶化の工程(S202)と、後述する貯蔵システムを用いた第二結晶化及び貯蔵の工程(S204)の2工程に分けられている。これにより、水中にて結晶化を完結させる造粒法のみによる造粒時間に比べ、造粒時間を短縮することができる。また、水中にて結晶化を完結させる造粒法に比べ、既存の貯蔵装置を用いて、空送にて結晶化を促進させるため、設備費用が削減でき、その結果、結晶化工程(S108)としての延べ時間を短縮することができる。
【0016】
本発明の第一結晶化工程では、水中にて攪拌を行いながら、未結晶樹脂の造粒物から軟質樹脂の造粒物まで結晶化を進める(S202)。
第一結晶化工程では、水中の温度は30℃程度が好ましい。温度を下げ過ぎると結晶化が進まないので留意する。これにより、未結晶樹脂の造粒物の結晶化を促進させる。
第一結晶化工程は、結晶化工程の延べ時間短縮及び設備費用削減の観点から、ペレットが互誤しない範囲で時間を短くすることが好ましい。
なお、攪拌するための水に融着防止剤を添加してもよい。融着防止剤としては、シリコーン等が使用できる。
融着防止剤の添加量は、使用する融着防止剤の種類により適宜調整するが、例えば、シリコーンを使用した場合には、冷却水に100質量ppm〜5000質量ppm、好ましくは、500質量ppm〜1000質量ppm添加する。
【0017】
〔軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法〕
<第1の実施態様>
本発明は、図3における、第二結晶化及び貯蔵の工程に関するものであり、第一結晶化の工程で得られた、軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法に関するものである。
本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法の第1の実施態様は、図1に示すように、上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れて貯蔵するための貯蔵装置10と、貯蔵装置10から抜き出した前記軟質樹脂の造粒物を、再度、貯蔵装置10へ戻すための配管12と、貯蔵装置10と配管12とにより形成される循環路内で、前記軟質樹脂の造粒物を循環させるための空送装置14と、を備えた貯蔵システム100を用いて、前記上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置10に受け入れながら、空送装置14によって、前記循環路を介して、前記軟質樹脂の造粒物を循環させることで、該軟質樹脂の結晶化を促進させ、結晶化した樹脂の造粒物を貯蔵する軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法である。
【0018】
本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法によれば、結晶化が十分に進んでいない造粒物であっても、貯蔵装置において、これを受け入れて、結晶化及び貯蔵の両方の処理を行うことができる。したがって、水中造粒法にて造粒する時間を短縮することができ、軟質樹脂の造粒物を製造するための、設備費用が削減できるとともに、結晶化工程としての延べ時間を短縮することができ、製造効率を向上させることができる。
【0019】
さらに、図1を用いて、本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法に供する、貯蔵システム100について、詳細に説明する。
図1に示す貯蔵システム100は、第一結晶化の工程において得られた軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置10に搬送するための配管22が設けられ、配管22には空送装置24とバルブ26が設けられている。また、貯蔵装置10には、内部の温度を測定可能な温度計11が設けられ、さらに貯蔵装置10の下部から抜き出した軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置10の上部に戻すための配管12が設けられている。さらに、配管12には、配管内の温度を測定可能な温度計13が設けられ、さらに、バルブ16及び三方弁36が設けられている。また、結晶化後の樹脂の造粒物を搬送するための配管32が、三方弁36を介して、配管12から分岐するように設けられている。
次に、軟質樹脂から結晶化した樹脂の造粒物の貯蔵方法について説明する。
まず、バルブ26を「開」にして、空送装置24を介して配管22を経て、貯蔵装置10に軟質樹脂の造粒物が空送される。貯蔵装置10に、軟質樹脂の造粒物が搬送されると同時又は一定量の造粒物が貯まった時点で、配管12側に「開」になるように三方弁36を操作し、また、バルブ16を「開」にして、空送装置14を用いて、軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置10から配管12を介して、再度、貯蔵装置10に戻す。
一方、上流工程から貯蔵装置10への軟質樹脂の造粒物の空送は、貯蔵装置と配管とからなる循環路内で、ブロッキングを起こさない容量までとして、その後、空送装置24で配管22内の軟質樹脂の造粒物を排出した後、空送装置24を止め、バルブ26を閉じる。
【0020】
貯蔵システム100では、貯蔵装置10と配管12とにより形成される循環路内で、前記軟質樹脂の造粒物を空送させる際に、前記配管における軟質樹脂のペレットと空気風量の比が、0.02トン/Nm以下であることが好ましく、0.015トン/Nm以下であることがより好ましく、0.01トン/Nm以下であることがさらに好ましい。上記空気風量比であることにより、軟質樹脂の造粒物のブロッキングがより顕著に抑制される。
ここで、「ブロッキング」とは、軟質樹脂の造粒物の付着または結着をいい、接近するもくっ付かない場合はブロッキングとは言わない。
【0021】
また、前記軟質樹脂の造粒物を前記循環路内で循環させる時間は、ブロッキングを抑制しつつ結晶化を行う観点から、4時間以上であることが好ましく、6時間以上であることがより好ましく、8時間以上であることがさらに好ましい。
【0022】
温度計11で測定される、前記軟質樹脂の造粒物を貯蔵する貯蔵装置10内の温度は、軟質樹脂の結晶化の促進の観点から、35℃以下が好ましく、25℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。
【0023】
温度計13で測定される、前記軟質樹脂の造粒物が空送される配管内の温度が、軟質樹脂の結晶化の促進の観点から、20℃以上、30℃以下であることが好ましい。
【0024】
上述した空送及び温度条件により循環路内で軟質樹脂の造粒物の結晶化を促進した後、三方弁36を閉め、空送装置14により配管12内の樹脂の造粒物を排出させた後、バルブ16を閉める。次いで、結晶化した樹脂の造粒物は、三方弁36を配管32に向けて「開」になるように操作して、最終製品として梱包する。
【0025】
<第2の実施態様>
本発明は、図3における、第二結晶化及び貯蔵の工程に関するものであり、第一結晶化の工程で得られた、他の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法に関するものである。
本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法の第2の実施態様は、図2に示すように、上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れて貯蔵するための貯蔵装置10と、貯蔵装置10から抜き出した前記軟質樹脂の造粒物を、再度、貯蔵装置10へ戻すための配管12と、貯蔵装置10と配管12とにより形成される循環路内で、前記軟質樹脂の造粒物を循環させるための空送装置14と、上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れて貯蔵するために、さらに他の貯蔵装置40とを備えた貯蔵システムを用いて、貯蔵装置10では、前記循環路を介して前記軟質樹脂の造粒物を循環させ、前記軟質樹脂の結晶化を促進させて、結晶化した樹脂の造粒物を貯蔵しつつ、他の貯蔵装置40では、新たに前記上流工程から空送される軟質樹脂の造粒物を受け入れる、軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法である。
【0026】
本発明の軟質樹脂の造粒物の貯蔵方法の第2の実施態様は、貯蔵装置が、少なくとも2個以上設けられている。したがって、複数の貯蔵装置において、軟質樹脂の造粒物の結晶化と貯蔵が順次行うことができる。なお、貯蔵装置の個数は、樹脂の造粒物の製造量と製造時間を考慮して、適宜選択される。
【0027】
さらに図2を用いて、第2の実施の形態の貯蔵システム200を用いた製造方法について説明する。
図2に示す貯蔵システム200において、第一結晶化の工程において得られた軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置10、40に搬送するための配管23、25が設けられ、配管23には空送装置24、三方弁26が設けられ、配管25にはバルブ56が設けられている。また、配管23に設けられた三方弁26を切り替えることにより配管23から配管22に流路を変更することができる。
さらに、貯蔵装置10には、内部の温度を測定可能な温度計11が設けられ、さらに貯蔵装置10の下部から抜き出した軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置10の上部に戻すための配管12が設けられている。さらに、配管12には、配管内の温度を測定可能な温度計13が設けられ、さらに、バルブ16及び三方弁36が設けられている。また、結晶化後の樹脂の造粒物を搬送するための配管32が、三方弁36を介して、配管12から分岐するように設けられている。
また、貯蔵装置40には、内部の温度を測定可能な温度計41が設けられ、さらに貯蔵装置40の下部から抜き出した軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置40の上部に戻すための配管42が設けられている。さらに、配管42には、配管内の温度を測定可能な温度計43が設けられ、さらに、バルブ46及び三方弁66が設けられている。また、結晶化後の樹脂の造粒物を搬送するための配管62が、三方弁66を介して、配管62から分岐するように設けられている。
【0028】
次に、第2の実施の形態における、軟質樹脂から結晶化した樹脂の造粒物の貯蔵方法について説明する。
まず、三方弁26を配管22に向けて「開」になるように操作する。次いで、空送装置24を介して配管22を経て、貯蔵装置10に軟質樹脂の造粒物が空送される。貯蔵装置10に、軟質樹脂の造粒物が搬送されると同時又は一定量の造粒物が貯まった時点で、配管12側に開になるように三方弁36を操作し、また、バルブ16を「開」にして、空送装置14を用いて、軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置10から配管12を介して、再度、貯蔵装置10に戻す。
一方、上流工程から貯蔵装置10への軟質樹脂の造粒物の空送は、貯蔵装置10と配管12とからなる循環路内で、ブロッキングを起こさない容量までとして、その後、空送装置24で配管22内の軟質樹脂の造粒物を排出した後、空送装置24を止め、バルブ26を閉じる。
貯蔵システム200では、貯蔵装置10と配管12とにより形成される循環路内で、前記軟質樹脂の造粒物を空送させる際に、前記配管における軟質樹脂のペレットと空気風量の比は、第1の実施の形態で記載したと同じであるため、ここでは記載を省略する。
また、前記軟質樹脂の造粒物を前記循環路内で循環させる時間、温度計11で測定される、前記軟質樹脂の造粒物を貯蔵する貯蔵装置10内の温度、及び、温度計13で測定される、前記軟質樹脂の造粒物が空送される配管内の温度は、第1の実施の形態で記載したと同じであるため、ここでは記載を省略する。
【0029】
上述した空送及び温度条件により循環路内で軟質樹脂の造粒物の結晶化を促進した後、三方弁36を閉め、空送装置14により配管12内の樹脂の造粒物を排出させた後、バルブ16を閉める。次いで、結晶化した樹脂の造粒物は、三方弁36を配管32に向けて開になるように操作して、最終製品として梱包する。
【0030】
貯蔵装置10と配管12との循環路内で、軟質樹脂の造粒物の循環を開始した時点、又はそれより後に、三方弁26を配管25に向けて「開」になるように操作する。次いで、空送装置24を介して配管25を経て、貯蔵装置40に軟質樹脂の造粒物が空送される。貯蔵装置40に、軟質樹脂の造粒物が搬送されると同時又は一定量の造粒物が貯まった時点で、配管42側に「開」になるように三方弁66を操作し、また、バルブ46を「開」にして、空送装置44を用いて、軟質樹脂の造粒物を貯蔵装置40から配管42を介して、再度、貯蔵装置40に戻す。
一方、上流工程から貯蔵装置40への軟質樹脂の造粒物の空送は、貯蔵装置40と配管42とからなる循環路内で、ブロッキングを起こさない容量までとして、その後、空送装置44で配管42内の軟質樹脂の造粒物を排出した後、空送装置44を止め、バルブ46を閉じる。
貯蔵システム200では、貯蔵装置40と配管42とにより形成される循環路内で、前記軟質樹脂の造粒物を空送させる際に、前記配管における軟質樹脂のペレットと空気風量の比は、第1の実施の形態で記載したと同じであるため、ここでは記載を省略する。
また、前記軟質樹脂の造粒物を前記循環路内で循環させる時間、温度計41で測定される、前記軟質樹脂の造粒物を貯蔵する貯蔵装置40内の温度、及び、温度計43で測定される、前記軟質樹脂の造粒物が空送される配管内の温度は、第1の実施の形態で記載したと同じであるため、ここでは記載を省略する。
【0031】
上述した空送及び温度条件により循環路内で軟質樹脂の造粒物の結晶化を促進した後、三方弁66を閉め、空送装置44により配管42内の樹脂の造粒物を排出させた後、バルブ46を閉める。次いで、結晶化した樹脂の造粒物は、三方弁66を配管62に向けて開になるように操作して、最終製品として梱包される。
【0032】
次に、本発明の造粒物の製造方法が適用できる、軟質樹脂について説明する。
軟質樹脂の引張弾性率は、JIS K 7113に準拠して、1〜200MPaであることが好ましく、より好ましくは5〜150MPa、さらに好ましくは10〜100MPaである。
また、本発明における軟質樹脂は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、加重21.18Nの条件におけるメルトフローレート(以下「MFR」ともいう)は、1〜10,000g/10分であることが好ましく、より好ましくは3〜5,000g/10分であり、さらに好ましくは5〜3,000g/10分である。
ここで、軟質樹脂は、結晶性を有する樹脂において結晶前の未結晶状態の樹脂を含む意味で用いる。
なお、前記軟質樹脂の具体例は、後述する。
前記軟質樹脂が、上述の範囲の引張弾性率及びMFRを有していたとしても、本発明の造粒物の製造方法を用いることにより、樹脂ペレット同士のブロッキングが抑制される。
なお、引張弾性率及びMFRの測定方法は、以下に記載のとおりである。
【0033】
〔引張弾性率の測定〕
JIS K 7113に準拠して、下記条件にて引張弾性率を測定した。
・試験片(2号ダンベル) 厚み:1mm
・クロスヘッド速度:100mm/分
・ロードセル:100N
・測定温度:23℃
【0034】
〔メルトフローレート(MFR)の測定〕
JIS K7210に準拠し、温度230℃、加重21.18Nの条件で測定した。
【0035】
本発明の樹脂ペレットの攪拌方法に供される付着性を有する樹脂としては、上述の物性値を有し、具体的には、以下のものが挙げられる。
〔オレフィン系重合体〕
付着性を有する樹脂として用いられる、オレフィン系重合体は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が1〜80J/gであることが好ましい。
本発明のオレフィン系重合体は、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合してなるオレフィン系重合体が好ましい。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体を使用してもよい。なお、本発明において、単に「オレフィン系重合体」という場合には、オレフィン系共重合体も含まれる。
オレフィン系重合体としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられ、剛性や透明性の観点から優れた成形体物性、例えば、フィルム物性が得られる、プロピレン系重合体がより好ましい。
【0036】
本発明に用いる、オレフィン系重合体は、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレンーブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、またはプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体であることが好ましい。
さらに、前記プロピレン系重合体は、前記オレフィン系重合体を構成するモノマーの50モル%以上が、プロピレンモノマーであることがより好ましく、前記プロピレン系重合体が、(i)及び/又は(ii)を満たす重合体であってもよい。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、20モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
【0037】
〔融解吸熱量(ΔH−D)〕
前記オレフィン系重合体、及び前記プロピレン系重合体の融解吸熱量(ΔH−D)は、0〜80J/gであることが好ましく、より好ましくは10〜70J/g、さらに好ましくは20〜60J/g、特に好ましくは20〜50J/gである。
なお、本発明では、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線(ベースライン)とで囲まれる面積を求めることで算出される。
【0038】
本発明に用いる、プロピレン系重合体は、好ましくは下記の少なくとも(1)、(2)のいずれかを満たすプロピレン系重合体であり、より好ましくは下記(3)及び(4)を満たし、更に好ましくは下記(5)及び(6)を満たす。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。
(2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(3)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(4)分子量分布(Mw/Mn)<4.0
(5)[rmrm]>2.5モル%
(6)[mm]×[rr]/[mr] ≦2.0
【0039】
(1)メソペンタッド分率[mmmm]
メソペンタッド分率[mmmm]は、プロピレン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。
【0040】
(2)融点(Tm−D)
プロピレン系重合体の融点(Tm−D)は、強度や成形性の観点から高い方が好ましい。好ましくは0〜120℃、より好ましくは50〜100℃、更に好ましくは55〜90℃、より更に好ましくは60〜80℃である。
なお、本発明では、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点(Tm−D)とする。融点は、モノマー濃度や反応圧力を適宜調整することで制御可能である。
【0041】
(3)[rrrr]/(1−[mmmm])
[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、メソペンタッド分率[mmmm]及びラセミペンタッド分率[rrrr]から求められ、ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。[rrrr]/(1−[mmmm])のこの値が大きくなると既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、成形後のポリプロピレン延伸フィルムのべたつきの原因となる。なお、上記における[rrrr]及び[mmmm]の単位は、モル%である。
プロピレン系重合体における[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、べたつきの観点から、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.001〜0.05、更に好ましくは0.001〜0.04、特に好ましくは0.01〜0.04である。
【0042】
ここで、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、及び後述するラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、後述するトリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出される。
【0043】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
プロピレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、高強度の観点から、好ましくは4未満である。分子量分布(Mw/Mn)が4未満であれば、延伸性やフィルム物性(たとえば、力学特性、光学特性)に悪影響を及ぼす低分子量成分が抑制され、後述する本発明のポリプロピレン延伸フィルムのフィルム物性の低下が抑制される。オレフィン系重合体、及びプロピレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは1.5〜2.5である。
本発明において、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
【0044】
(5)ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]
ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、ポリプロピレンの立体規則性のランダム性を表す指標であり、値が大きいほどポリプロピレンのランダム性が増加する。
プロピレン系重合体のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、好ましくは2.5モル%を超えることが好ましく、より好ましくは2.6モル%以上、さらに好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常、好ましくは10モル%程度であり、より好ましくは7モル%、更に好ましくは5モル%、特に好ましくは4モル%である。
【0045】
(6)[mm]×[rr]/[mr]
トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]から算出される[mm]×[rr]/[mr]の値は、重合体のランダム性の指標を表し、1に近いほどランダム性が高くなる。本発明に用いるプロピレン系重合体は、上式の値が通常2以下、好ましくは1.8〜0.5、さらに好ましくは1.5〜0.5の範囲である。なお、上記における[mm]及び[rr]の単位は、モル%である。
【0046】
本発明の効果は、付着性を有する樹脂ペレットの樹脂の結晶化時間が長いほど大きくなり、半結晶化時間が1分以上の樹脂の場合に大きなブロッキング抑制効果が得られ、半結晶化時間が5分以上の樹脂では更にその効果が大きい。
【0047】
上記プロピレン系重合体は、例えば、WO2003/087172号に記載されているようなメタロセン系触媒とプロピレンを使用してプロピレン単独重合体を製造することができる。特に、配位子が架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物を用いたものが好ましく、なかでも、2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られるメタロセン系触媒が好ましい。
具体的に例示すれば、
(i)一般式(I)
【0048】
【化1】
【0049】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E及びEはそれぞれ置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ヘテロシクロペンタジエニル基、置換ヘテロシクロペンタジエニル基、アミド基、ホスフィド基、炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A及びAを介して架橋構造を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX、E、E又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E、E又はXと架橋していてもよく、A及びAは二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−Se−、−NR−、−PR−、−P(O)R−、−BR−又は−AlR−を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
で表される遷移金属化合物、及び(ii)(ii−1)該(i)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(ii−2)アルミノキサンから選ばれる成分を含有する重合用触媒が挙げられる。
【0050】
上記(i)成分の遷移金属化合物としては、配位子が(1,2’)(2,1’)二重架橋型の遷移金属化合物が好ましく、例えば(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドが挙げられる。
【0051】
上記(ii−1)成分の化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム、テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸フェロセニウム、テトラフェニル硼酸銀、テトラフェニル硼酸トリチル、テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀、ヘキサフルオロ砒素酸銀、過塩素酸銀、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。
【0052】
上記(ii−2)成分のアルミノキサンとしては、公知の鎖状アルミノキサンや環状アルミノキサンが挙げられる。
【0053】
また、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等の有機アルミニウム化合物を併用して、プロピレン系重合体を製造してもよい。
【0054】
〔その他の付着性を有する樹脂〕
同様にメタロセン触媒で製造されているプロピレン系重合体の例としては、プロピレンとエチレンの共重合体(Exxon Mobel 社製vistamaxxなど)、エチレンとオクテンの共重合体(ダウ・ケミカル社製Engageなど)、プロピレンとエチレン、ブテン共重合体(Degussa社製ベストプラストなど)等が挙げられる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
以下に、実施例で用いたオレフィン系重合体、プロピレン系重合体、及び付着性を有する樹脂の)の測定方法について説明する。
〔DSC測定〕
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから融解吸熱量ΔH−Dとして求めた。また、得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップから融点(Tm−D)を求めた。
なお、融解吸熱量(ΔH−D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用いた、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
【0057】
〔重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)測定〕
ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定には、下記の装置および条件を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量を得た。分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
<GPC測定装置>
カラム :東ソー(株)製「TOSO GMHHR−H(S)HT」
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出 ウォーターズ・コーポレーション製「WATERS 150C」
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0058】
〔NMR測定〕
以下に示す装置および条件で、13C−NMRスペクトルの測定を行った。なお、ピークの帰属は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された方法に従った。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0059】
<計算式>
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
【0060】
メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]およびラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して求めたものであり、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、およびラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、トリアッド分率[mm]、[rr]および[mr]も上記方法により算出した。
【0061】
〔メルトフローレイト(MFR)測定〕
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0062】
製造例1[ポリプロピレン系重合体(PP1)の製造]
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/hr、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド及びトリイソブチルアルミニウムを質量比1:2:20で、プロピレンと事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hrで連続供給した。
反応器内の全圧を1.0MPa・Gに保つようプロピレンと水素とを連続供給し、重合温度を65℃付近で適宜調整し所望の分子量を有する重合溶液を得た。
得られた重合溶液に、酸化防止剤をその含有割合が1000質量ppmになるように添加し、次いで溶媒であるn−ヘプタンを除去することにより、ポリプロピレン系重合体(PP1)を得た。
【0063】
製造例2[ポリプロピレン系重合体(PP2)の製造]
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/hr、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド及びトリイソブチルアルミニウムを質量比1:2:20で、プロピレンと事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で30μmol/hrで連続供給した。
反応器内の全圧を1.0MPa・Gに保つようプロピレンと水素とを水素の比率が製造例1より非常に小さい条件で連続供給し、重合温度を70℃付近で適宜調整し所望の分子量を有する重合溶液を得た。
得られた重合溶液に、酸化防止剤をその含有割合が1000質量ppmになるように添加し、次いで溶媒であるn−ヘプタンを除去することにより、ポリプロピレン系重合体(PP1)を得た。
【0064】
製造例1、2で得られた、ポリプロピレン系重合体(PP1)及びポリプロピレン系重合体(PP2)について、上述の測定を行った。結果を、以下の表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
次に、製造例1にて製造されたポリプロピレン系重合体(PP1)の、酸化防止剤の添加前であって、溶媒除去前の重合溶液にイルガノックス1010を500質量ppmになるように添加し、内容積3mのステンレス製脱揮槽を用いて、内温150℃で脱溶媒を実施した。
その後、溶融樹脂を移送ポンプにてジャケット付ポリマーミキサー(サタケ社製、L84−VPR−3.7)に移送した。ポリマーミキサーにて樹脂を65℃まで冷却した後、造粒機にて水中造粒した。造粒機は田辺プラスチックス機械社製のPASC−21HSを使用し、冷却水の水温を10℃、カッターの周速を3.8m/sとした。また、冷却水には、シリコーン(信越化学工業社製、X−22−904)を600質量ppmになるように添加した。
【0067】
水中造粒の工程から第一結晶化工程までの時間は、80分間で、その後、第二結晶化工程として、脱水を行い、得られた半結晶状態のポリプロピレンペレットを、図1に示す貯蔵システムを用いて、貯蔵装置10と配管12とにより形成される循環路内を、ペレットと空気風量の比が0.01トン/Nmで、8時間循環させたところ、塊を形成することはなかった。
【0068】
比較例1
図1に示す貯蔵装置10と配管12とにより形成される循環路内を循環させない以外、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例2〜6
図1に示す貯蔵装置10と配管12とにより形成される循環路内の条件を、表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
また、サイロからの排出の可否についても評価した。
【0070】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、軟質樹脂の造粒物のブロッキングを抑制しつつ、これを貯蔵することができる造粒物の貯蔵方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 貯蔵装置、11,13 温度計、12,22 配管、14,24 空送装置、16,26 バルブ、36 三方弁、100 貯蔵システム。
図1
図2
図3