特許第6494520号(P6494520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494520
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】再生原料に基づく超吸収体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20190325BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20190325BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20190325BHJP
   C07C 57/05 20060101ALI20190325BHJP
   C07C 51/25 20060101ALI20190325BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B01J20/30
   C08J3/12 Z
   C08F220/06
   C07C57/05
   C07C51/25
   B01J20/26 D
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-543398(P2015-543398)
(86)(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公表番号】特表2016-501124(P2016-501124A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2013074007
(87)【国際公開番号】WO2014079785
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】61/729,645
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12194209.8
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ディーター ヘアナー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー フンク
(72)【発明者】
【氏名】レナーテ ヴュステフェルト
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−504826(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/012440(WO,A1)
【文献】 特表2011−527366(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/28;20/30−20/34
C07B 31/00−61/00;63/00−63/04
C07C 1/00−409/44
C08C 19/00−19/44
C08F 6/00−246/00;301/00
C08J 3/00−3/28;99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階:
i) 天然油および/または脂肪に基づくバイオナフサを、水蒸気の存在下で熱分解して、プロパンおよびプロペンを含有する混合物にする段階、
ii) 段階i)において得られた混合物から、プロペンおよび少なくとも一部のプロパンを分離する段階であって、プロペンは前記プロペンに対して3.4〜30質量%のプロパンを含有する段階
iii) 段階ii)において得られたプロペン/プロパン混合物を気相酸化してアクリル酸にする段階、および
iv) 段階iii)において得られたアクリル酸を重合して吸水性ポリマー粒子にする段階を含み、
段階iv)において使用されるアクリル酸が、0.02〜2.0質量%のプロピオン酸を含有する、吸水性ポリマー粒子の製造方法。
【請求項2】
バイオナフサがパーム油に基づくことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階iii)における気相酸化が二段階で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階i)においてナフサおよびバイオナフサが使用されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階iii)において、ナフサに基づくプロペン/プロパン混合物、およびバイオナフサに基づくプロペン/プロパン混合物が使用されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階iv)において、ナフサに基づくアクリル酸、およびバイオナフサに基づくアクリル酸が使用されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階iv)において使用されるアクリル酸が、0.03〜1.0質量%のプロピオン酸を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
段階iv)において、アクリル酸に対して0.2〜0.6質量%の架橋剤が使用されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
吸水性ポリマー粒子を表面後架橋することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
吸水性ポリマー粒子を無機の不活性物質で被覆することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気の存在下でバイオナフサを熱分解する段階、プロペンおよび少なくとも一部のプロパンを分離する段階、気相酸化してアクリル酸にする段階、および重合して吸水性ポリマー粒子にする段階を含む、吸水性ポリマーの製造方法に関する。
【0002】
吸水性ポリマー粒子は、おむつ、タンポン、ナプキンおよびその他の衛生物品を製造するために使用され、また農業園芸における保水剤としても使用される。この吸水性ポリマー粒子は、超吸収体とも称される。
【0003】
吸水性ポリマー粒子の製造は、モノグラフィー「Modern Superabsorbent Polymer Technology」、F.L.BuchholzおよびA.T.Graham,Wiley−VCH,1998,第71頁〜第103頁に記載されている。
【0004】
吸水性ポリマー粒子の特性は、例えば、使用する架橋剤の量によって調整することができる。架橋剤の含有量が増加するにつれて、遠心保持容量(CRC)は減少し、且つ21.0g/cm2(AUL0.3psi)の圧力下での吸収は最大値を通り抜ける。
【0005】
EP2395029号A1は、少なくとも0.04質量%のプロピオン酸を含有するアクリル酸を、吸水性ポリマー粒子を製造するために用いる使用を開示している。その例は、得られる吸水性ポリマー粒子の特性、例えば遠心保持容量(CRC)が、重合に際したプロピオン酸の存在によって改善され得ることを示している。
【0006】
DE10336786号A1は、プロペンの二段階気相酸化および引き続く反応混合物の後処理によるアクリル酸の製造方法を開示している。
【0007】
EP2290045号A1は、バイオナフサからのプロペンの製造を開示している。
【0008】
本発明の課題は、吸水性ポリマー粒子を製造するための改善された方法を提供することであった。
【0009】
本発明のさらなる課題は、再生原料に基づく吸水性ポリマー粒子の安価な製造方法を提供することであった。
【0010】
前記の課題は、以下の段階:
i) 天然油および/または脂肪に基づくバイオナフサを、水蒸気の存在下で熱分解して、プロパンおよびプロペンを含有する混合物にする段階、
ii) 段階i)において得られた混合物から、プロペンおよび少なくとも一部のプロパンを分離する段階、
iii) 段階ii)において得られたプロペン/プロパン混合物を気相酸化してアクリル酸にする段階、および
iv) 段階iii)において得られたアクリル酸を重合して吸水性ポリマー粒子にする段階
を含む、吸水性ポリマー粒子の製造方法によって解決された。
【0011】
本発明に関してバイオナフサは全ての天然油および/または脂肪並びにその誘導体である。例えばEP2290034号A1内に記載されるように、天然油および/または脂肪を鹸化し、且つ、単にそのように得られた脂肪酸をバイオナフサとして使用することが可能である。しかし、EP2290045号A1内に記載されるように、分離された脂肪酸を水素化することも可能である。本発明の特に好ましい実施態様において、パーム油に基づくバイオナフサが使用される。
【0012】
プロペンのアクリル酸への気相酸化は限定されず、且つ、有利には二段階で実施される、即ち、プロペンからアクロレインへの第一の段階と、アクロレインからアクリル酸への第二の段階である。
【0013】
本発明は、バイオナフサの熱分解に際して、プロペンに対してより多くのプロパンが生じるという知見に基づいている。沸点が類似しているために、プロペンからのプロパンの分離は煩雑であり且つ費用がかさむ。
【0014】
プロペンを気相酸化においてアクリル酸に変換する場合、この条件下でプロペン中に含有されるプロパンが酸化されてプロピオン酸になる。アクリル酸からのプロピオン酸の分離は、沸点が類似しているために同様に煩雑であり且つ費用がかさむ。
【0015】
生成物の特性を改善するために、吸水性ポリマー粒子の製造に際したプロピオン酸の存在が実際に望ましい。使用されるアクリル酸は、有利には0.02〜2.0質量%、特に好ましくは0.03〜1.0質量%、とりわけ特に好ましくは0.04〜0.5質量%のプロピオン酸を含有する。
【0016】
従って、バイオナフサに基づくアクリル酸を使用する場合、特に煩雑なプロペンまたはアクリル酸の精製を省略することができる。
【0017】
気相酸化のために使用されるプロペンは、各々プロペンに対して有利には3.4〜30質量%、特に好ましくは3.8〜15質量%、とりわけ特に好ましくは4.2〜7.5質量%のプロパンを含有する。
【0018】
バイオナフサとナフサとを同時に使用することによって、例えば段階iにおける熱分解に際してバイオナフサとナフサとを一緒に使用することによって、プロピオン酸の含有率を望ましい値に調節することも可能である(図1)。
【0019】
しかし、バイオナフサとナフサとを別々にプロペンに変換し、そのように得られたバイオプロペンとプロペンとを一緒にアクリル酸に変換することも可能である(図2)。
【0020】
さらには、バイオナフサとナフサとを別々にプロペンに変換し、そのように得られたバイオプロペンとプロペンとを別々にアクリル酸に変換し、且つそのように得られたバイオアクリル酸とアクリル酸とを一緒に吸水性ポリマー粒子へと変換することが可能である(図3)。
【0021】
さらには、ナフサの熱分解(水蒸気分解)に際して使用量の一部だけをバイオナフサに置き換え、例えば計算上、吸水性ポリマー粒子を製造するためにプロペンおよびアクリル酸の段階を通じて必要な正確な量にすることが可能である。例えば、より大きな製造設備の費用面での利点を断念する必要なく、再生原料に基づく少量の吸水性ポリマー粒子を製造することもできる。
【0022】
吸水性ポリマー粒子は、例えば
a) 少なくとも部分的に中和されていることがあるアクリル酸、
b) 少なくとも1つの架橋剤、
c) 少なくとも1つの開始剤、
d) 随意に1つまたはそれより多くのa)で挙げられたモノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマー、および
e) 随意に1つまたはそれより多くの水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液またはモノマー懸濁液を重合することによって製造され、且つ通常は水不溶性である。
【0023】
モノマーの全体量におけるアクリル酸および/またはその塩の割合は、有利には少なくとも50mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%、とりわけ特に好ましくは少なくとも95mol%である。
【0024】
使用されるアクリル酸は通常、重合阻害剤、有利にはヒドロキノン半エーテルを貯蔵安定剤として含有する。
【0025】
従って、モノマー溶液は、それぞれ中和されていないアクリル酸に対して、有利には250質量ppmまで、好ましくは最高130質量ppm、特に好ましくは最高70質量ppm、好ましくは少なくとも10質量ppm、特に好ましくは少なくとも30質量ppm、殊に約50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有する。例えば、モノマー溶液を製造するために、相応の含有率のヒドロキノン半エーテルを有するアクリル酸を使用できる。
【0026】
好ましいヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはα−トコフェロール(ビタミンE)である。
【0027】
適した架橋剤b)は、架橋のために適した基を少なくとも2つ有する化合物である。かかる基は、例えば、ポリマー鎖中にラジカル重合により導入可能であるエチレン性不飽和基、およびアクリル酸の酸基と共有結合を形成できる官能基である。さらには、アクリル酸の少なくとも2つの酸基と配位結合を形成できる多価の金属塩も架橋剤b)として適している。
【0028】
架橋剤b)は有利には、ポリマーネットワーク中にラジカル重合により導入可能である少なくとも2つの重合性基を有する化合物である。適した架橋剤b)は、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン(例えばEP0530438号A1内に記載)、ジアクリレートおよびトリアクリレート(例えばEP0547847号A1、EP0559476号A1、EP0632068号A1、WO93/21237号A1、WO2003/104299号A1、WO2003/104300号A1、WO2003/104301号A1およびDE10331450号A1内に記載)、アクリレート基の他にさらなるエチレン性不飽和基を含有する混合アクリレート(例えばDE10331456号A1およびDE10355401号A1内に記載)、または架橋剤混合物(例えばDE19543368号A1、DE19646484号A1、WO90/15830号A1およびWO2002/032962A2内に記載)である。
【0029】
好ましい架橋剤b)は、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、メチレンビスメタクリルアミド、15箇所エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリアリルアミンである。
【0030】
とりわけ特に好ましい架橋剤b)は、アクリル酸またはメタクリル酸を用いてジアクリレートまたはトリアクリレートへとエステル化された、多数箇所エトキシ化および/またはプロポキシ化されたグリセリンであり、例えばWO2003/104301号A1内に記載されている。3〜10箇所エトキシ化されたグリセリンのジアクリレートおよび/またはトリアクリレートが特に有利である。1〜5箇所エトキシ化および/またはプロポキシ化されたグリセリンのジアクリレートおよび/またはトリアクリレートがとりわけ特に好ましい。多くの場合、3〜5箇所エトキシ化および/またはプロポキシ化されたグリセリンのトリアクリレート、殊に3箇所エトキシ化されたグリセリンのトリアクリレートが好ましい。
【0031】
架橋剤b)の量は、各々アクリル酸に対して有利には0.05〜1.5質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%、とりわけ特に好ましくは0.2〜0.6質量%である。架橋剤の含有率が増加するにつれて、遠心保持容量(CRC)は減少し、且つ、21.0g/cm2(AUL0.3psi)の圧力下での吸収は最大値を通り抜ける。
【0032】
開始剤c)として、重合条件下でラジカルを生成する化合物の全て、例えば熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤を使用できる。適したレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウム、および過酸化水素/重亜硫酸ナトリウムである。有利には、熱開始剤とレドックス開始剤との混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸を使用する。しかし、還元性成分として、有利には2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸のナトリウム塩と、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸の二ナトリウム塩と、重亜硫酸ナトリウムとの混合物を使用する。かかる混合物は、Brueggolite(登録商標) FF6およびBrueggolite(登録商標) FF7 (Brueggemann Chemicals; Heilbronn; ドイツ)として入手できる。
【0033】
アクリル酸と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーd)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートである。
【0034】
さらに適したモノマーd)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばメタクリル酸およびイタコン酸、およびエチレン性不飽和スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0035】
水溶性ポリマーe)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、変性セルロース、例えばメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコールまたはポリアクリル酸、有利にはデンプン、デンプン誘導体および変性セルロースを使用できる。
【0036】
通常、モノマー水溶液を使用する。モノマー溶液の含水率は、有利には40〜75質量%、特に好ましくは45〜70質量%、とりわけ特に好ましくは50〜65質量%である。モノマー分散液、即ち、過剰なアクリル酸、例えばアクリル酸ナトリウムを有するモノマー溶液を使用することも可能である。含水率が上昇するにつれて、引き続く乾燥に際したエネルギー消費が上昇し、且つ、含水率が減少するにつれて、重合熱が不充分にしか除去できなくなる。
【0037】
好ましい重合阻害剤は、最適な作用のために溶存酸素を必要とする。従って、モノマー溶液を重合前に不活性化、即ち不活性ガス、有利には窒素または二酸化炭素を流通することによって溶存酸素を取り除くことができる。有利には、モノマー溶液の酸素含有率は重合前に1質量ppm未満、特に好ましくは0.5質量ppm未満、とりわけ特に好ましくは0.1質量ppm未満に下げられる。
【0038】
適した反応器は、例えば混練反応器またはベルト式反応器である。ニーダー内で、水性モノマー溶液またはモノマー懸濁液の重合の際に生じたポリマーゲルを、WO2001/038402号A1内に記載されるように、例えば反転する撹拌シャフトによって連続的に破砕する。ベルト上での重合は、例えばDE3825366号A1およびUS6241928号内に記載されている。ベルト式反応器における重合の場合、さらなる工程段階において、例えば押出機またはニーダー内で破砕されなければならないポリマーゲルが生じる。
【0039】
乾燥特性を改善するために、ニーダーを用いて得られた破砕済みポリマーゲルを追加的に押し出すことができる。
【0040】
得られたポリマーゲルの酸基は、通常、部分的に中和されている。中和は有利にはモノマーの段階で実施される。これは通常、水溶液としての、または好ましくは固体としての中和剤の混入によって行われる。中和度は有利には25〜95mol%、特に好ましくは30〜80mol%、とりわけ特に好ましくは40〜75mol%であり、その際、通常の中和剤、有利にはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩並びにそれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を使用することもできる。ナトリウムおよびカリウムがアルカリ金属として特に好ましく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム並びにそれらの混合物がとりわけ特に好ましい。
【0041】
しかし、重合後に、重合の際に生じたポリマーゲルの段階で中和を行うことも可能である。さらには、中和剤の一部を予めモノマー溶液に添加しておくことによって、40mol%までの、有利には10〜30mol%、特に好ましくは15〜25mol%の酸基を重合前に中和し、且つ、重合後にポリマーゲルの段階において初めて望ましい最終中和度に調節することも可能である。ポリマーゲルを少なくとも部分的に重合後に中和する場合、ポリマーゲルを有利には機械的に、例えば押出機を用いて破砕し、その際、中和剤を吹き付ける、散布する、または注ぎ、次に入念に混合することができる。そのために、得られるゲル塊を繰り返し均質化のために押し出すことができる。
【0042】
その後、ポリマーゲルを有利にはベルト式乾燥機で、残留湿分含有率が有利には0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%、とりわけ特に好ましくは2〜8質量%になるまで乾燥させ、その際、残留湿分含有率はEDANA推奨試験方法No. WSP 230.2−05 「Mass Loss Upon Heating」に準拠して測定される。残留湿分が多すぎると、乾燥されたポリマーゲルが低すぎるガラス転移温度Tgを有し、且つ、さらなる加工が困難である。残留湿分が少なすぎると、乾燥されたポリマーゲルが脆すぎ、且つ、引き続く破砕段階において、小さすぎる粒径を有するポリマー粒子(「微細物」)が不所望に多量に発生する。ゲルの固体含有率は、乾燥前に有利には25〜90質量%、特に好ましくは35〜70質量%、とりわけ特に好ましくは40〜60質量%である。選択的に、乾燥のために流動床乾燥機またはパドル乾燥機を使用することもできる。
【0043】
この後で、乾燥されたポリマーゲルを粉砕且つ分級し、その際、粉砕のために、通常、一段式または多段式のローラー、好ましくは二段式または三段式のローラー、ピン付きミル、ハンマミルまたは揺動ミルを使用することができる。
【0044】
本発明の好ましい実施態様において、モノマー水溶液を液滴化し、且つ生じた液滴を加熱されたキャリアガス流中で重合する。この場合、WO2008/040715号A2内、WO2008/052971号A1内、および殊にWO2011/026876号A1内に記載されるとおり、重合および乾燥の工程段階を一緒にすることができる。この好ましい実施態様の場合、粒径は、生じる液滴の大きさを介して調節される。
【0045】
吸水性ポリマー粒子の平均粒径は、有利には少なくとも200μm、特に好ましくは250〜600μm、とりわけ特に300〜500μmである。平均粒径は、EDANA推奨試験方法No. WSP 220.2−05 「Partikel Size Distribution」を用いて測定でき、その際、ふるい留分の質量割合を累積してプロットし、且つ平均粒径をグラフにより測定する。この場合、平均粒径は、累積で50質量%をもたらすメッシュサイズの値である。
【0046】
150μmより大きい粒径を有する粒子の割合は、有利には少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%、とりわけ特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0047】
小さすぎる粒径を有するポリマー粒子は、透過性(SFC)を下げる。従って、小さすぎるポリマー粒子(「微細物」)の割合は低くなければならない。
【0048】
従って、小さすぎるポリマー粒子は通常分離され、且つ工程に返送される。これは有利には重合前、重合の間または重合直後、即ち、ポリマーゲルの乾燥前に行われる。小さすぎるポリマー粒子を、返送の前または間に、水および/または水性の界面活性剤で湿らせることができる。
【0049】
後の工程段階において、例えば表面後架橋または他の被覆段階の後に、小さすぎるポリマー粒子を分離することも可能である。この場合、返送された小さすぎるポリマー粒子は表面後架橋されているか、もしくはそうでなければ例えば熱分解法シリカで被覆されている。
【0050】
重合のために混練反応器が使用される場合、小さすぎるポリマー粒子は有利には重合の最後の三分の一の間に添加される。
【0051】
小さすぎるポリマー粒子を非常に早く、例えば予めモノマー溶液に添加する場合、そのことによって、得られる吸水性ポリマー粒子の遠心保持容量(CRC)が低下する。しかし、例えば架橋剤b)の使用量を調節することによって、それを補償することができる。
【0052】
小さすぎるポリマー粒子が非常に遅く、例えば重合反応器の後に接続された装置、例えば押出機内で初めて添加される場合、その小さすぎるポリマー粒子を、生じるポリマーゲルに混入するのが困難である。しかし、不十分に混入された小さすぎるポリマー粒子は、粉砕中に乾燥されたポリマーゲルから離れ、従って分級の際に再度分離され、返送されるべき小さすぎるポリマー粒子の量を高める。
【0053】
最大850μmの粒径を有する粒子の割合は、有利には少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%、とりわけ特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0054】
150〜850μmの粒径を有する粒子の割合は、有利には少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%、とりわけ特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0055】
大きすぎる粒径を有するポリマー粒子は、膨潤速度を低下させる。従って、大きすぎるポリマー粒子の割合も、同様に低くなければならない。
【0056】
従って、大きすぎるポリマー粒子は、通常は分離され、且つ乾燥されたポリマーゲルの粉砕に返送される。
【0057】
このポリマー粒子を、特性のさらなる改善のために表面後架橋することができる。適した表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2つのカルボキシレート基と共有結合を形成できる基を含有する化合物である。適した化合物は、例えば多官能性アミン、多官能性アミドアミン、多官能性エポキシド(例えばEP0083022号A2、EP0543303号A1およびEP0937736A2内に記載)、二官能性または多官能性アルコール(例えばDE3314019号A1、DE3523617号A1およびEP0450922号A2内に記載)、またはβ−ヒドロキシアルキルアミド(例えばDE10204938号A1およびUS6239230号内に記載)である。
【0058】
さらに、DE4020780号C1内で環状カーボネートが、DE19807502号A1内で2−オキサゾリジノンおよびその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリジノンが、DE19807992号C1の中でビス−およびポリ−2−オキサゾリジノンが、DE19854573号A1内で2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジンおよびその誘導体が、DE19854574号A1内でN−アシル−2−オキサゾリジノンが、DE10204937号A1内で環式ウレアが、DE10334584号A1内で二環式アミドアセタールが、EP1199327号A2内でオキセタンおよび環式ウレアが、およびWO2003/031482号A1内でモルホリン−2,3−ジオンおよびその誘導体が適した表面後架橋剤として記載されている。
【0059】
好ましい表面後架橋剤は、エチレンカーボネート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物、およびプロピレングリコールと1,4−ブタンジオールとの混合物である。
【0060】
とりわけ特に好ましい表面後架橋剤は、2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリジノン、2−オキサゾリジノンおよび1,3−プロパンジオールである。
【0061】
さらには、DE3713601A1に記載されるとおり、追加的な重合性エチレン性不飽和基を含有する表面後架橋剤も使用することができる。
【0062】
表面後架橋剤の量は、それぞれポリマー粒子に対して、有利には0.001〜2質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%、とりわけ特に好ましくは0.05〜0.2質量%である。
【0063】
本発明の好ましい実施態様において、表面後架橋前、間または後に、表面後架橋剤に加えて、多価カチオンを粒子表面上に施与する。
【0064】
本発明による方法において使用可能な多価カチオンは、例えば二価のカチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄およびストロンチウムのカチオン、三価のカチオン、例えばアルミニウム、鉄、クロム、希土類およびマンガンのカチオン、四価のカチオン、例えばチタンおよびジルコニウムのカチオンである。対イオンとして、水酸化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオンおよびカルボン酸イオン、例えば酢酸イオン、クエン酸イオンおよび乳酸イオンが可能である。種々の対イオンとの塩も可能であり、例えば塩基性のアルミニウム塩、一酢酸アルミニウムまたは一乳酸アルミニウムである。硫酸アルミニウム、一酢酸アルミニウム、および乳酸アルミニウムが好ましい。金属塩以外に、多価カチオンとしてポリアミンも使用できる。
【0065】
多価カチオンの使用量は、それぞれポリマー粒子に対して、例えば0.001〜1.5質量%、有利には0.005〜1質量%、特に好ましくは0.02〜0.8質量%である。
【0066】
表面後架橋は通常、表面後架橋剤の溶液を、乾燥されたポリマー粒子に吹き付けて行う。この吹付けに引き続き、表面後架橋剤で被覆されたポリマー粒子を熱により乾燥させ、その際、表面後架橋反応は、乾燥前にも乾燥の間にも生じ得る。
【0067】
表面後架橋剤溶液の吹き付けは、有利には、可動式混合器具を備えたミキサー、例えばスクリューミキサー、ディスクミキサー、およびパドルミキサー内で行われる。特に好ましいのは横型ミキサー、例えばパドルミキサーであり、とりわけ特に好ましいのは縦型ミキサーである。横型ミキサーおよび縦型ミキサーは、混合シャフトの取り付け部により区別される、即ち、横型ミキサーは、水平に取り付けられた混合シャフトを有し、且つ縦型ミキサーは、垂直に取り付けられた混合シャフトを有する。適したミキサーは、例えば横型Pflugschar(登録商標)ミキサー(Gebr. Loedige Maschinenbau GmbH; Paderborn; ドイツ)、Vrieco−Nauta連続ミキサー(Hosokawa MicronBV; Doetinchem; オランダ)、Processall Mixmillミキサー(Processall Incorporated; Cincinnati; 米国)およびSchugi Flexomix(登録商標)(Hosokawa Micron BV; Doetinchem; オランダ)である。しかし、表面後架橋剤溶液を流動床中で吹き付けることも可能である。
【0068】
表面後架橋剤は、典型的には水溶液として使用される。非水性溶剤の含有率もしくは全溶剤量を介して、ポリマー粒子中の表面後架橋剤の浸透深さを調節することができる。
【0069】
溶剤として水のみを使用する場合、界面活性剤を添加することが有利である。このことにより、湿潤挙動が改善され、凝塊形成傾向が減少する。しかし有利には、溶剤混合物、例えばイソプロパノール/水、1,3−プロパンジオール/水、およびプロピレングリコール/水が使用され、その際、この混合質量比は有利には20:80〜40:60である。
【0070】
熱による乾燥を、有利には接触乾燥機、特に好ましくはパドル乾燥機、とりわけ特に好ましくはディスク乾燥機内で実施する。適した乾燥機は、例えばHosokawa Bepex(登録商標) 横型パドル乾燥機(Hosokawa Micron GmbH; Leingarten; ドイツ)、Hosokawa Bepex(登録商標) ディスク乾燥機(Hosokawa Micron GmbH; Leingarten; ドイツ)、Holo−Flite(登録商標)乾燥機(Metso Minerals Industries Inc.; Danville; 米国)、およびNaraパドル乾燥機(Nara Machinery Europe; Frechen; ドイツ)である。さらに、流動床乾燥機も使用できる。
【0071】
乾燥を、混合機自体の中で、外装の加熱、または熱風の吹き込みによって行なうことができる。後に接続された乾燥機、例えばシェルフ乾燥機、回転管状炉、または加熱可能なスクリューが同様に適している。流動層乾燥機内で混合および乾燥することが特に有利である。
【0072】
好ましい乾燥温度は、100〜250℃、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは130〜210℃、とりわけ特に好ましくは150〜200℃の範囲である。この温度での反応ミキサーまたは乾燥機内での好ましい滞留時間は、有利には少なくとも10分、特に好ましくは少なくとも20分、とりわけ特に好ましくは少なくとも30分であり、且つ通常は最長60分である。
【0073】
本発明の好ましい実施態様において、吸水性ポリマー粒子を、熱による乾燥後に冷却する。この冷却を、有利には接触冷却機、特に好ましくはパドル冷却機、とりわけ特に好ましくはディスク冷却機内で実施する。適した冷却機は、例えばHosokawa Bepex(登録商標) 横型パドル冷却機(Hosokawa Micron GmbH; Leingarten; ドイツ)、Hosokawa Bepex(登録商標) ディスク冷却機(Hosokawa Micron GmbH; Leingarten; ドイツ)、Holo−Flite(登録商標)冷却機(Metso Minerals Industries Inc.; Danville; 米国)、およびNaraパドル冷却機(Nara Machinery Europe; Frechen; ドイツ)である。さらに、流動床冷却機も使用できる。
【0074】
冷却機内で、吸水性ポリマー粒子は、20〜150℃、有利には30〜120℃、特に好ましくは40〜100℃、とりわけ特に好ましくは50〜80℃に冷却される。
【0075】
引き続き、表面後架橋されたポリマー粒子を再度分級することができ、その際、小さすぎるポリマー粒子および/または大きすぎるポリマー粒子が分離され、且つ工程に返送される。
【0076】
表面後架橋されたポリマー粒子を、特性のさらなる改善のために被覆するか、または後の加湿をすることができる。
【0077】
後の加湿は、有利には30〜80℃、特に好ましくは35〜70℃、とりわけ特に好ましくは40〜60℃で実施される。低すぎる温度では、吸水性ポリマー粒子が凝塊形成する傾向があり、高すぎる温度では既に著しい水が蒸発する。後の加湿のために使用される水の量は、有利には1〜10質量%、特に好ましくは2〜8質量%、とりわけ特に好ましくは3〜5質量%である。後の加湿によって、ポリマー粒子の機械的安定性が高められ、且つ静電気が帯電する傾向が減少する。有利には、後の加湿を熱による乾燥後に冷却機内で実施する。
【0078】
膨潤速度並びに透過性(SFC)を改善するために適した被覆は、例えば無機の不活性物質、例えば水不溶性の金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマー並びに二価または多価の金属カチオンである。粉塵結合のための適した被覆は、例えばポリオールである。ポリマー粒子の望ましくないケーク化(Verbackung)傾向に対する適したコーティングは、例えば熱分解シリカ、例えばAerosil(登録商標)200、および界面活性剤、例えばSpan(登録商標)20である。
【0079】
吸水性ポリマー粒子は、典型的には少なくとも15g/g、有利には少なくとも20g/g、好ましくは少なくとも22g/g、特に好ましくは少なくとも24g/g、とりわけ特に好ましくは少なくとも26g/gの遠心保持容量(CRC)を有する。吸水性ポリマー粒子の遠心保持容量(CRC)は、通常は、60g/g未満である。遠心保持容量(CRC)は、EDANA推奨試験方法No.WSP241.2−05「Fluid Retention Capacity in Saline, After Centrifugation」に準拠して測定される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明の方法を説明するための図である。
図2】本発明の方法を説明するための図である。
図3】本発明の方法を説明するための図である。
図1
図2
図3