特許第6494629号(P6494629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6494629N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494629
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/14 20060101AFI20190325BHJP
   C07C 209/48 20060101ALI20190325BHJP
   C07C 265/04 20060101ALI20190325BHJP
   C07C 263/10 20060101ALI20190325BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190325BHJP
   C08G 59/50 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
   C07C211/14CSP
   C07C209/48
   C07C265/04
   C07C263/10
   !C07B61/00 300
   !C08G59/50
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-538664(P2016-538664)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2017-504587(P2017-504587A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2014075263
(87)【国際公開番号】WO2015086293
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月21日
(31)【優先権主張番号】13196613.7
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー イェグリ
(72)【発明者】
【氏名】モニカ シャラク
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー パンチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン−ペーター メルダー
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03218345(US,A)
【文献】 特開平03−002145(JP,A)
【文献】 特表2010−514724(JP,A)
【文献】 特表2008−540375(JP,A)
【文献】 特表平08−511255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/00
C07C 209/00
C07C 263/00
C07C 265/00
C08G 59/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、
1は、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される]の2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体。
【請求項2】
1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルの群から選択され、かつR2は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルの群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
1はメチルであり、かつR2は水素である、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
式(I)の化合物の製造方法において、前記2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体を、式(II)
【化2】
[式中、
1は、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される]の相応する2−[N,N−(ビス−1−シアノアルキル)アミノ]アルキルニトリルから、触媒及び水素の存在で水素化することにより製造する、式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
前記水素化を連続式に実施し、かつアンモニアの遮断下で作業する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物の製造方法において、2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体を、式(IIa)
【化3】
[式中、
1aは、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基及び水素の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される]の2−[N,N−(ビス−1−シアノアルキル)アミノ]アルキルニトリルから、触媒及び水素の存在下で水素化することにより製造し、ここで前記方法を、連続式でかつアンモニアの遮断下で実施する、式(I)の化合物の製造方法。
【請求項7】
触媒として、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtの群から選択される1種以上の元素を活性種として含む触媒を使用する、請求項4及び5又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
触媒として、ラネーニッケル触媒又はラネーコバルト触媒を使用する、請求項4、5及び7又は6及び7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
使用される触媒は、助触媒として、Mo、Cr又はFeの元素の少なくとも1種を含むラネーコバルト触媒である、請求項4、5、7から8まで又は6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化を、アミド、芳香族炭化水素、アルコール、アミン、エステル及びエーテルの群から選択される溶媒中で実施する、請求項4、5、7から9まで又は6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
60〜180℃の範囲内の温度及び40〜300barの範囲内の圧力で水素化する、請求項4、5、7から10まで又は6から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
メチルグリシンニトリル−ジアセトニトリル(MGDN)を、N,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミン(MGTA)に水素化する、請求項4、5、7から11まで又は6から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
メチルグリシンニトリル−ジアセトニトリル(MGDN)を純粋な結晶形で使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
エポキシ樹脂用の硬化剤として、トリイソシアナートの製造の際の中間生成物として、ポリエーテロールの製造の際の開始剤として及び/又はポリアミド製造用のモノマーとしての、請求項1から3までのいずれか1項に記載の式(I)のN,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体の1種の使用。
【請求項15】
一般式(III)
【化4】
[式中、
1は、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基及び水素の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される]のトリイソシアナート。
【請求項16】
1はメチルであり、かつR2は水素である、請求項15に記載のトリイソシアナート。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のトリイソシアナートの製造方法において、請求項1又は3に記載の式(I)の2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体をホスゲンと反応させる、トリイソシアナートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】
の2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体自体、2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体の製造方法、エポキシ樹脂用の硬化剤として、トリイソシアナートの製造の際の中間生成物として、ポリエーテロール用の開始剤として及び又はポリアミド製造用のモノマーとしての2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体の使用、式(I)の2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体から誘導されたトリイソシアナート並びにこのトリイソシアナートの製造方法に関する。
【0002】
脂肪族ニトリルを水素及び触媒の存在で水素化して相応するアミンにすることができることは一般に公知である。このような水素化法は、β−アミノニトリルについても、アミノアセトニトリル(AAN)又はエチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)のような多様なα−アミノニトリルについても、エチレンジアミン(EDA)又はトリエチレンテトラミン(TETA)のような相応するアミンの製造のために公知である。更に、β−アミノニトリルの水素化は一般に問題なく進行するが、α−アミノニトリルの水素化は、使用されたニトリルのC−CN結合又は水素化により得られたアミンのH2N−C結合の水素化分解のような多数の欠点の出現と結びついている。「Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis」(John Wiley & Sons, New York, 2001、173-275頁)は、1−シクロヘキシル−2,5−ジシアノ−2,5−ジメチルピロリジンのような環状α−アミノニトリルに基づくα−アミノニトリルの水素化の問題を示す。
【0003】
EP 382508は、回分法としてのニトリロトリアセトニトリル(NTAN)の水素化方法を記載している。連続式の方法は、ここでは明確に排除されている。
【0004】
WO 2008/080755も同様に、NTANの水素化を記載している。しかしながら、この場合、アンモニアの存在で作業している、というのもWO 2008/080755によると、これにより第1級アミンだけが得られるためである。
【0005】
US 8227641には、相応する多官能性ニトリルの水素化による多官能性アミンの製造が記載されていて、この場合、水素化はアルコール、水又は水/アルコール混合物及びアンモニアの存在で実施される。
【0006】
WO 2008/104553は、トリエチレンテトラアミン(TETA)の製造方法に関し、ここでは、エチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)を触媒及び溶媒の存在で水素化する。更に、EDDNは、アミノニトリル混合物の成分としても存在し、この混合物は更にエチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)を含み、ここで、EDMNから水素化によりジエチレントリアミン(DETA)が得られる。TETA及びDETAは、両方の場合に、非環式の(線状の)エチレンアミンである。
【0007】
2−N,N−(ビス−2−アミノエチル)1,2−プロパンジアミン(ここではMGTAという)の本発明による製造方法で使用される相応するメチルグリシンニトリルN,N−ジアセトニトリル(ここではMGDNという)は、すでにUS 5849950から公知である。ここでは、MGDNの製造自体が記載されていて、ここで、アルファ−アラニンニトリルをホルムアルデヒド及び青酸(HCN)と反応させる。しかしながら、相応するアミノメチル化合物(MGTA)の獲得下でのこの方法の際に得られる生成物の場合による水素化は、この文献には開示されていない。先行技術では、なお多数の他の文献が公知であり、これらの文献は、例えばEP 1881957のように、MGDNの全体的な製造方法が記載されている。しかしながら、MGDNからMGTAへの水素化は、これらの文献のいずれにも記載又は示唆されていない。
【0008】
EP 375279では、アジリジン環の開環により生じるアルキレンアミンの製造が記載されている。EP 375279の式(III)によると、式(I)の本発明による2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体も、式(III)において、R1=メチル又はエチル、R2=H、R3及びR4=C2〜C4−アミノアルキル基及びn=1の場合には、EP 375279の式(III)に当てはまることになる。ただし、Yusin, A. et al.著、「Aziridines and Epoxides in Organic Synthesis」、ED- Wiley- VCH; Weinheim, Germany 2006並びにChernitskij K. et al著、Zhurnal Obshchei Khimii, 60(3), 617-25; 1990 「Nucleophilic cleavage and formation of saturated heterocycles. X. Reactivity of 2-methylaziridine in aminolysis reaction」から、開環反応の際に少なくとも立体障害C原子に求核攻撃の反応が行われ、その結果、EP 375279の式IIIの場合にはR1は好ましくは水素であり、R2は相応してメチル又はエチルであることは公知である。従って、EP 375279に記載された方法から、式(I)の本発明による2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−ジアミノアルキル誘導体を得ることはできない。
【0009】
US 3527757は、同様に、アジリジン環の、第1級又は第2級アミンとの反応を開示している。式(I)の本発明による2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミンは、しかしながら、この方法によって得ることはできない、というのも、少なくとも立体障害炭素原子に攻撃が行われるので、本発明による目的生成物は得られないことが期待される。
【0010】
2つ又は3つの第1級アミノ官能基を有する化合物(「ジアミン」又は「トリアミン」)は、多数の用途、例えばエポキシ樹脂の場合の硬化剤として又はジイソシアナート又はトリイソシアナートの製造のために使用することができる。使用したポリアミンの構造は、このポリアミンから製造されたポリマー材料の特性、例えば耐候性、耐加水分解性、耐化学薬品性、耐光性、電気特性並びに機械特性に影響を及ぼすことができる。しかしながら、この構造は、相応するポリマー材料へのポリアミンの加工性及び加工、例えばエポキシ樹脂の硬化に影響を及ぼすこともできる。
【0011】
従って、本発明の課題は、エポキシ樹脂の硬化のために使用することができかつポリアミン製造の際に新たな特性プロフィールを有する3つの第1級アミノ官能基を有する化合物を提供することである。本発明の他の課題は、できるだけ高い収率でかつ選択的に、2位でアルキル化されている2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン、例えば2−N,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミン(MGTA)を製造することを可能にする方法を提供することである、というのも公知のプロピルイミンを介した開環は、優先的に、最大限で1位でアルキル化されていて、かつ従って本発明による化合物の位置異性体であるN,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミンを得ることができるためである。
【0012】
更に、特にMGTAの製造の際に、障害となる副生成物、例えば2−ピペラジン−1−イル−プロパン−1−アミンの製造を低減するべきである。
【0013】
これらの課題は、一般式(I)
【化2】
[式中、
1は、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される]の2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体により解決される。
【0014】
式(I)の本発明による化合物において、R1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルの群から選択され、かつR2は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルの群から選択される場合が好ましい。
【0015】
式(I)の本発明による化合物において、R1はメチルであり、かつR2は水素である場合が好ましい。
【0016】
本発明の他の主題は、式(I)の化合物の製造方法であり、ここで、2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体は、式(II)
【化3】
[式中、
1は、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される]の相応する2−[N,N−(ビス−1−シアノアルキル)アミノ]アルキルニトリルから、触媒及び水素の存在で水素化することにより製造される。
【0017】
好ましくは、R1≠Hである本発明の化合物が好ましく、この場合、水素化は連続的に実施され、かつアンモニアの遮断下で作業される。
【0018】
本発明の他の主題は、式(I)の化合物の製造方法であり、ここで、2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体は、式(IIa)
【化4】
[式中、
1aは、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基及び水素の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される
]の相応する2−[N,N−(ビス−1−シアノアルキル)アミノ]アルキルニトリルから、
触媒及び水素の存在で水素化することにより製造され、ここでこの方法は連続的にかつアンモニアの遮断下で実施される。
【0019】
この2つの本発明による方法は、活性種として、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtの群から選択される1つ以上の元素を含むような触媒を触媒として使用する場合が好ましい。
【0020】
この2つの本発明による方法は、触媒としてラネーニッケル触媒又はラネーコバルト触媒を使用する場合が好ましい。
【0021】
この2つの本発明による方法は、使用される触媒が、助触媒としてMo、Cr又はFeの元素の少なくとも1つを含むラネーコバルト触媒である場合が好ましい。
【0022】
この2つの本発明による方法は、水素化を、アミド、芳香族炭化水素、アルコール、アミン、エステル及びエーテルの群から選択される溶媒中で実施する場合が好ましい。
【0023】
この2つの本発明による方法は、60〜180℃の範囲内の温度及び40〜300barの範囲内の圧力で水素化する場合が好ましい。
【0024】
この2つの本発明による方法は、メチルグリシンニトリルジアセトニトリル(MGDN)をN,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミン(MGTA)に水素化する場合が好ましい。
【0025】
この2つの本発明による方法は、メチルグリシンニトリルジアセトニトリル(MGDN)とNTANとを純粋な結晶形で使用する場合が好ましい。
【0026】
本発明の別の主題は、エポキシ樹脂用の硬化剤として、トリイソシアナートの製造の際の中間生成物として、ポリエーテロールの製造の際の開始剤として及び/又はポリアミド製造のためのモノマーとしての、式(I)の2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体の使用である。
【0027】
本発明の別の主題は、一般式(III)
【化5】
[式中、
1は、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基及び水素の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される
]のトリイソシアナートである。
【0028】
本発明によるトリイソシアナートにおいて、R1はメチルであり、かつR2は水素である場合が好ましい。
【0029】
本発明の別の主題は、本発明によるトリイソシアナートの製造方法であり、この場合、式(I)の2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体をホスゲンと反応させる。
【0030】
式(I)
【化6】
[式中、
1は、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択され、
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される
]の本発明による2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミンにおいて、R1は、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルの群から選択され、特に好ましくはメチル及びエチルであり、殊に好ましくはメチルである。
【0031】
2は、式(I)において、好ましくは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルの群から選択され、特に水素、メチル及びエチルであり、殊に好ましくは水素である。
【0032】
好ましい化合物は、R1はメチルでありかつR2は水素である、R1はメチルでありかつR2はメチルである、並びにR1はメチルでありかつR2はエチルであるの群から選択され、殊に、R1はメチル及びR2は水素である化合物(N,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミン(ここではMGTAという))が好ましい。
【0033】
式(I)の化合物の本発明による製造方法は、一般に、式(II)
【化7】
[式中、R1及びR2は上述の意味を示す]の化合物の、水素化触媒の存在での水素との反応により行われる。好ましくは、式(II)の化合物を使用する水素化法は、アンモニアなしでかつ連続的に実施される。
【0034】
上述の方法の特別な実施態様の場合に、この水素化は、アンモニアの不存在で、かつ連続式の方法として実施され、ここで式(IIa)
【化8】
[式中、
1aは、分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基及び水素の群から選択され、かつ
2は、水素及び分枝又は非分枝の脂肪族C1〜C10−アルキル基の群から選択される]の化合物が使用される。
【0035】
しかしながら、式(II)の化合物を使用する方法が好ましい。
【0036】
式(I)の本発明による2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体は、好ましくは、高い転化率及び/又は高い選択率で製造することができる。副生成物、例えば相応する2−ピペラジン−1−イル−アルキル−1−アミン誘導体又は2−(2,6−ジアルキル)ピペラジン−1−イル−アルキル−1−アミン−誘導体は、少量で生じるだけであるか、又は製造パラメータ、例えば圧力、温度又は触媒の制御により更に低減することができる。特に、相応するN,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミン自体(MGTA)の獲得下でのMGDNの水素化は、好ましくは60%の、特に好ましくは>65%の高い選択率で実施することができる。
【0037】
本発明による2−N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体を得る水素化の際に、一般に、N,N−(ビス−2−シアノアルキル)−1,2−アルキルジニトリル1モル当たり少なくとも6モルの水素が必要である。しかしながら、この方法は、過剰量の水素を用いて実施することもできる。
【0038】
水素化を実施する温度は、60〜180℃、好ましくは80〜140℃、特に100〜130℃の範囲内である。
【0039】
水素化の際にとりまく圧力は、一般に40〜300bar、好ましくは40〜240bar、特に好ましくは80〜200barである。
【0040】
好ましい実施態様の場合に、式(II)又は(IIa)の化合物は、式(II)又は(IIa)の化合物が水素化の際に水素と反応する速度を超えない速度で水素化に供給される。
【0041】
この供給速度は、好ましくは完全な反応が達成されるように調節することができる。これは、温度、圧力、式(II)又は(IIa)の化合物の種類、触媒の量及び種類、反応媒体の量及び種類、反応器内容物の混合状態、滞留時間などによって影響される。
【0042】
本発明による方法は、触媒の存在で実施される。触媒として、実際にニトリル水素化のための当業者に公知の全ての触媒を使用することができる。ニトリル官能基の水素化により本発明による式(II)又は(IIa)の化合物を得る触媒として、従って、例えば、活性種として、周期表の第8副族の1種以上の元素(Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、好ましくはFe、Co、Ni、Ru又はRh、特に好ましくはCo又はNiを含む触媒を使用することができる。
【0043】
その中には、1種以上の活性種を酸素含有化合物の形で含むいわゆる酸化物系触媒、及び、水素化活性金属と他の成分(好ましくはAl)との合金の溶出(活性化)により得られるいわゆる骨格触媒(ラネー(登録商標)タイプとも言われる;以後ラネー触媒とも言う)が含まれる。これらの触媒は、付加的に1種以上の助触媒を含んでいてもよい。
【0044】
特に好ましい実施態様の場合に、式(II)又は(IIa)の化合物の水素化の際に、ラネー触媒、好ましくはラネーコバルト触媒又はラネーニッケル触媒、特に好ましくは助触媒としてMo、Cr又はFeの元素の少なくとも1種を含むラネーコバルト触媒が使用される。このラネーコバルト触媒は、つまりこれらの元素の少なくとも1つでドープされている。
【0045】
これらの触媒は、非担持触媒として又は担持させて使用されていてもよい。担体として、好ましくは、金属酸化物、例えばAl23、SiO2、ZrO2、TiO2、金属酸化物の混合物、又は炭素(活性炭、カーボンブラック、黒鉛)が使用される。
【0046】
酸化物系触媒は、使用の前に、反応器の外側で又は反応器内で、高温で、水素含有ガス流中で金属酸化物の還元により活性化される。触媒を反応器の外側で還元する場合、その後に空気による制御されない酸化を避けかつ安全な取り扱いを可能とするために、酸素含有ガス流によるパッシベーション又は不活性材料中への埋め込みを行うことができる。不活性材料として、有機溶媒、例えばアルコール、さらには水又はアミン、好ましくは反応生成物を使用することができる。活性化の際の例外は、例えばEP-A 1 209 146に記載されているように、水性塩基を用いた溶出により活性化することができる骨格触媒である。
【0047】
実施される方法(懸濁水素化、流動層法、固定床水素化)に応じて、これらの触媒は、粉末、破片又は成形体(好ましくは押出物又はタブレット)として使用される。
【0048】
特に好ましい固定床触媒は、EP-A1 742 045に開示された、Mn、P及びアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)でドープされたコバルト非担持触媒である。この触媒の触媒活性材料は、水素を用いた還元の前に、それぞれ酸化物として算定して、コバルト55〜98質量%、特に75〜95質量%、リン0.2〜15質量%、マンガン0.2〜15質量%及びアルカリ金属、特にナトリウム0.05〜5質量%からなる。
【0049】
他の適切な触媒は、EP-A 963 975に開示された触媒であり、この触媒活性材料は、水素を用いた処理の前に、ZrCO2 22〜40質量%、CuOとして算定した銅の酸素含有化合物1〜30質量%、NiOとして算定したニッケルの酸素含有化合物15〜50質量%(ここで、Ni:Cuのモル比は1より大)、CoOとして算定したコバルトの酸素含有化合物15〜50質量%、Al23又はMnO2として算定した、アルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物0〜10質量%を含みかつモリブデンの酸素含有化合物を含まず、例えばこの文献に開示された、ZrO2として算定したZr33質量%、NiOとして算定されたNi28質量%、CuOとして算定したCu11質量%及びCoOとして算定したCo28質量%の組成を含む触媒Aである。
【0050】
更に、EP-A 696 572で公知の触媒が適していて、この触媒活性材料は、水素を用いた処理の前に、ZrO2 20〜85質量%、CuOとして算定した銅の酸素含有化合物1〜30質量%、NiOとして算定したニッケルの酸素含有化合物30〜70質量%、MoO3として算定したモリブデンの酸素含有化合物0.1〜5質量%、及びAl23又はMnO2として算定したアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物0〜10質量%を含む。例えば、この文献中で具体的に開示された、ZrO2 31.5質量%、NiO 50質量%、CuO 17質量%及びMoO3 1.5質量%の組成を含む触媒が例示されている。同様に、WO-A-99/44984に記載された、(a)鉄又は鉄を基礎とする化合物又はそれらの混合物、(b)(a)を基準として0.001〜0.3質量%のAl、Si、Zr、Ti、Vの群から選択される2、3、4又は5種の元素を基礎とする助触媒、(c)(a)を基準として0〜0.3質量%のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を基礎とする化合物、並びに(d)(a)を基準として0.001〜1質量%のマンガンを含む触媒が適している。
【0051】
懸濁法のために好ましくはラネー触媒が使用される。ラネー触媒の場合に、活性触媒は、「金属スポンジ」として二成分合金(アルミニウム又はケイ素を有するニッケル、鉄、コバルト)から酸又は苛性アルカリ液による合金相手の溶出により製造される。当初の合金相手の残りは、しばしば相乗的に作用する。
【0052】
本発明による方法で使用されるラネー触媒は、好ましくは、コバルト又はニッケル、特に好ましくはコバルトと、アルカリ中に溶解可能な他の合金成分との合金から出発して製造される。この可溶性合金成分において、好ましくはアルミニウムが使用されるが、亜鉛及びケイ素のような他の成分又はこれらの成分の混合物を使用することもできる。
【0053】
ラネー触媒の活性化のために、可溶性の合金成分を完全に又は部分的にアルカリによって抽出し、このために例えば水性苛性ソーダ液を使用することができる。この触媒を、次いで例えば、水又は有機溶媒で洗浄することができる。
【0054】
この触媒において、個々の又は複数の他の元素は助触媒として存在していてもよい。助触媒の例は、周期表の副族IB、VIB及び/又はVIIIの金属、例えばクロム、鉄、モリブデン、ニッケル、銅などである。可溶性成分(一般的にはアルミニウム)の溶出による触媒の活性化は、反応器自体の中で又は反応器中に充填する前に行うことができる。予め活性化された触媒は、空気に敏感でありかつ発火性であり、従って、一般に、例えば水、有機溶媒又は本発明による反応の際に添加される物質(溶媒、出発材料、生成物)のような媒体に貯蔵して取り扱うか又は室温で固体の有機化合物中に埋め込まれる。
【0055】
好ましい実施態様の場合に、本発明により、Co/Al合金からアルカリ金属水酸化物水溶液、例えば苛性ソーダ液を用いた溶出及び引き続き水を用いた洗浄により得られ、かつ助触媒としてFe、Ni又はCrの元素の少なくとも1種を含むラネーコバルト骨格触媒が使用される。
【0056】
このような触媒は、一般に、コバルトの他に、更にAl 1〜30質量%、特にAl 2〜12質量%、更に特にAl 3〜6質量%、Cr 0〜10質量%、特にCr 0.1〜7質量%、更に特にCr 0.5〜5質量%、殊にCr 1.5〜3.5質量%、Fe 0〜10質量%、特にFe 0.1〜3質量%、更に特にFe0.2〜1質量%及び/又はNi 0〜10質量%、特にNi 0.1〜7質量%、更に特にNi 0.5〜5質量%、殊にNi 1〜4質量%を含み、これらの質量の表示はそれぞれ触媒の全質量を基準とする。
【0057】
本発明による方法において触媒として、例えば好ましくはW. R. Grace & Co.社のコバルト骨格触媒「Raney 2724」を使用することができる。この触媒は次の組成を有する:
Al:2〜6質量%、Co:≧86質量%、Fe:0〜1質量%、Ni:1〜4質量%、Cr:1.5〜3.5質量%。
【0058】
同様に、本発明の場合に、Ni/Al合金からアルカリ金属水酸化物水溶液、例えば苛性ソーダ液を用いた溶出及び引き続き水を用いた洗浄により得られ、かつ好ましくは助触媒としてFe、Crの元素の少なくとも1種を含むニッケル骨格触媒を使用することができる。
【0059】
このような触媒は、典型的には、ニッケルの他に、Al 1〜30質量%、特にAl 2〜20質量%、更に特にAl 5〜14質量%、Cr 0〜10質量%、特にCr 0.1〜7質量%、更に特にCr 1〜4質量%、及び/又はFe 0〜10質量%、特にFe 0.1〜7質量%、更に特にFe 1〜4質量%を含み、これらの質量の表示はそれぞれ触媒の全質量を基準とする。
【0060】
これらの触媒は、場合により、活性及び/又は選択率が低下した場合に、当業者に公知の方法、例えばWO 99/33561及びここに引用された文献に開示された方法によって再生することができる。
【0061】
触媒の再生は、本来の反応器中で(in situ)又は取り外した触媒について(ex situ)実施することができる。固定床法の場合には、好ましくはin situで再生され、懸濁法の場合には、好ましくは触媒の一部を連続的に又は不連続的に取り出し、ex situで再生して、戻す。
【0062】
本発明による方法は、溶媒の存在で実施することができる。溶媒として、原則として、当業者に公知の全ての溶媒が適していて、ここで溶媒は、好ましくは式(II)又は(IIa)の化合物に対して不活性に挙動する。
【0063】
可能な溶媒は、有機溶媒、例えば、アミド、例えばN−メチルピロリドン(NMP)及びジメチルホルムアミド(DMF)、芳香族及び脂肪族炭化水素、例えばトルエン、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール及びtert−ブタノール、アミン、例えばEDA又はエチルアミン及びアンモニア、エステル、例えば酢酸メチルエステル又は酢酸エチルエステル、及びエーテル、例えばジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル、ジオキサン及びテトラヒドロフラン(THF)である。
【0064】
好ましくは、溶媒は、アミド、芳香族炭化水素、アルコール、アミン、エステル又はエーテルである。更に好ましくは、本発明による方法の場合にエーテル、更により好ましくは環状エーテル、特に好ましくはテトラヒドロフランが使用される。
【0065】
この溶媒は、通常では、式(II)又は(IIa)の使用された化合物に対して0.1:1〜15:1の質量比で使用される。水素化を実施する溶液中の式(II)又は(IIa)の化合物の濃度は、適切な供給速度又は滞留時間を生じることができるように選択するのが好ましい。好ましくは式(II)又は(IIa)の化合物は、5〜50質量%が溶媒と混合される。特に好ましい溶媒のテトラヒドロフランに対して、例えば、式(II)又は(IIa)の化合物を、この溶媒を基準として10〜40質量%使用することが好ましい。
【0066】
式(II)又は(IIa)の化合物と水素との触媒の存在での反応は、接触反応のために通常適した反応容器中で、固定床運転法、流動層運転法、懸濁運転法によって連続式、半連続式、又は不連続式で実施することができる。水素化の実施のために、式(II)又は(IIa)の化合物及び触媒が加圧下で水素と接触することができる反応容器が適している。
【0067】
懸濁運転法での水素化は、攪拌型反応器、ジェットループ型反応器、ジェットノズル型反応器、泡鐘塔型反応器又はこの種の同じ又は異なる反応器のカスケード中で実施することができる。
【0068】
固定床触媒での水素化は、好ましくは1つ以上の管型反応器、更にまた管束型反応器中で行われる。
【0069】
ニトリル基の水素化は、熱の発生下で行われ、この熱は一般に搬出しなければならない。排熱は、組み込まれた熱伝達面、冷却ジャケット又は反応器の周囲を循環する外側に置かれた伝熱体によって行うことができる。水素化反応器又は水素化反応器カスケードは、直線的通路の形で運転することができる。これとは別に、反応器搬出物の一部を反応器入口に、好ましくは循環流を予め後処理することなく返送する循環運転法も可能である。
【0070】
特に、循環流を、外部の伝熱体によって簡単にかつ低コストで冷却し、従って反応熱を搬出することができる。
【0071】
反応器は断熱的に運転することもできる。反応器の断熱的運転の場合、反応混合物中の温度上昇は、供給物の冷却又は「冷たい」有機溶媒の供給によって制限することができる。
【0072】
反応器自体を冷却する必要がないため、簡単でかつ低コストの構造様式が可能である。別の選択肢は、冷却された管束型反応器(固定床の場合にだけ)である。両方の運転法を組み合わせることも考えられる。この場合に、好ましくは固定床反応器を懸濁反応器の後方に配置する。
【0073】
触媒は、固定床の形で配置することができ(固定床運転法)又は反応混合物の形で懸濁させることもできる(懸濁運転法)。
【0074】
特に好ましい実施態様の場合に、この触媒は、水素化されるべき混合物中に懸濁される。
【0075】
選択された溶媒中での水素化触媒の沈殿速度は低い場合が好ましく、これは10秒内で沈殿しないことを意味し、それにより触媒は良好に懸濁したままに保つことができる。使用される触媒の粒子サイズは、従って、懸濁法の場合に、好ましくは0.1〜500μm、特に1〜100μmである。
【0076】
式(II)又は(IIa)の化合物の水素化を懸濁運転法で連続式に実施する場合、式(II)又は(IIa)の化合物を、好ましくは連続的に反応器に供給し、反応器から連続的に、水素化生成物の(N,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体を含む流を取り出す。
【0077】
この連続式の懸濁運転法の場合、式(II)又は(IIa)の化合物の供給を伴うセミバッチ運転法が好ましい。
【0078】
触媒の量は、好ましくは、全体の反応混合物を基準として、1〜60質量%、特に好ましくは5〜40質量%、更に特に好ましくは20〜30質量%である。
【0079】
反応器中の滞留時間は、不連続式懸濁運転法の場合に、好ましくは0.1〜6時間、特に好ましくは0.5〜2時間である。
【0080】
反応器中の滞留時間は、連続式懸濁運転法の場合に、好ましくは0.1〜6時間、特に好ましくは0.5〜2時間である。
【0081】
触媒空間速度は、連続式懸濁運転法又はセミバッチ法の場合に、触媒1kg及び1時間当たり式(II)又は(IIa)の化合物0.1〜5kg、好ましくは0.2〜2kg、特に好ましくは0.3〜1kgである。
【0082】
この反応を懸濁運転法で攪拌反応器中で実施する場合、攪拌機に関する電力入力は好ましくは0.1〜100kW/m3である。
【0083】
使用された触媒は、濾過、遠心分離又はクロスフロー濾過により分離することができる。この場合、当初の触媒量の摩耗及び/又は失活による損失分を、新たな触媒の添加で補償する必要がある。
【0084】
この水素化に引き続き、水素化からの搬出物を場合により更に後処理することができる。触媒は、当業者に公知の方法で分離することができる。一般に、触媒の分離の後に、水素化の間に存在する水素を分離する。
【0085】
水素の分離は、好ましくは、水素化を実施する圧力を、水素がガス状であり、反応搬出物中の他の成分は液相で存在する値に低下させることにより行われる。好ましくは、反応搬出物は、好ましくは60〜325bar、特に好ましくは100〜280bar、更に特に好ましくは170〜240barの水素化圧力から、容器中で5〜50barの圧力に放圧される。この容器の頂部では、水素、場合によりアンモニア並びに場合により少量の蒸発した低沸点物又は溶媒、例えばTHFが得られる。
【0086】
反応搬出物中に場合により存在する溶媒は、一般に、同様に蒸留により分離することができる。特に、本発明によるN,N−(ビス−2−アミノアルキル)−1,2−アルキルジアミン誘導体は、当業者に公知の方法により反応生成物から単離することができる。
【0087】
本発明は、更に、エポキシ樹脂用の硬化剤として、トリイソシアナートの製造の際の中間生成物として、ポリエーテロールの製造の際の開始剤として及び/又はポリアミド製造のためのモノマーとしての式(I)の化合物の使用に関する。
【0088】
式(I)の化合物は、エポキシ樹脂用の代替の硬化剤であり、エポキシ樹脂の調製及び加工の際の新規の方法を可能にし、かつエポキシ樹脂の特性スペクトルの調節のために使用することができる。式(I)の本発明による化合物は、エポキシ樹脂用の硬化剤として、急速な硬化時間及び高いガラス転移温度を示し、これは接着剤、床材及び樹脂トランスファー成形(RTM)での適用のために特に適して使用される。
【0089】
式(I)の化合物は、下記の一般式(III)
【化9】
の相応するトリイソシアナートの製造の際の中間生成物としても使用することができる。
【0090】
一般式(III)中で、R1及びR2のようなそれぞれの基は、一般式(I)について上記に定義されたものと同じ意味を示す。
【0091】
このトリイソシアナートは、耐光性ポリウレタンの製造のため、例えば塗料又は被覆として適していて、かつその構造に基づいて、新たな調製方法及びそれにより新たな興味深い特性プロフィールへの到達を提供する。このトリイソシアナートは、例えば式(I)の化合物をホスゲンと反応させることにより得られる。
【0092】
式(I)の化合物は、ポリエーテロールの製造の際の開始剤としても使用することができる。式(I)の化合物は、CH酸性化合物であり、この化合物は塩基を用いて脱プロトンすることができ、後続するアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドに付加することができる。
【0093】
アルコキシル化されたトリアミンは、例えばPUR製造における触媒として使用することができる。
【0094】
式(I)の化合物は、ポリアミドの製造の際のモノマーとして使用することができる。式(I)の化合物は、例えばジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸及び/又はフタル酸と反応してポリマーにすることができる。
【0095】
従って、本発明の他の主題は、一般式(III)
【化10】
のトリイソシアナートでもあり、ここで、R1及びR2は、式(I)と同じ意味を示し、かつ好ましい態様及び特に好ましい態様は、式(I)からのR1及びR2についてと同様である。
【0096】
従って、本発明の他の主題は、上記の定義によるトリイソシアナートの製造方法でもある。
【0097】
相応するトリアミンから、例えばホスゲンとの反応によるトリイソシアナートの製造方法は、当業者に公知であるため、当業者はこの方法を相応して適用することができる。
【0098】
本発明の場合に、トリイソシアナートは、好ましくは、式(I)の相応する化合物をホスゲンと反応させることにより製造される。好ましくは、この場合、N,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミン(MGTA)を使用し、場合により、式(I)のこのような化合物の2種以上の混合物も使用することができる。
【0099】
次に、本発明を実施例によって説明する。
【0100】
実施例1
N,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミンの製造(セミバッチ式)
バッフル及びディスク型攪拌機を備えた270mlのオートクレーブ中に(乾燥)ラネーコバルト5g及びTHF40gを装入した。オートクレーブを120℃に加熱し、水素を100barの全体圧力にまで圧入した。2時間の間に、THF90g中の純粋なMGDN10gからなる混合物を供給した。この反応混合物を、更に60分間反応条件下で攪拌した。転化率及び選択率を、GC分析(GCカラム:DB1、長さ=30m、内径=0.32mm、膜厚=1μm−開始温度80℃及び温度勾配10℃/minで280℃−キャリアガス=ヘリウム−FID検出器)によって決定し、面積%で表した。
【0101】
水素化搬出物は、N,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミン61%、下記に示す式(1)のピペラジン誘導体15%、下記に示す式(2)のアミノピペラジン誘導体7.5%、下記に示す式(3)のデヒドロピペラジン誘導体8%を含んでいた。残りは未知の副成分であった。
【化11】
【0102】
実施例2
N,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミンの製造(連続式)
バッフル及びディスク型攪拌機を備えた270mlのオートクレーブ中に(乾燥)ラネーコバルト7g及びTHF40g中の25%の水性苛性ソーダ液0.1gを装入した。連続的に水素15NL/hを供給した。THF90g中の純粋MGDN10gからなる混合物50gを、1時間当たり連続的に190barで圧送した。反応器中の温度は120℃であった。この触媒を、500nmの細孔直径の燒結金属フリットを介した連続的濾過により反応搬出物から分離した。この搬出物を、調整弁を介して放圧した。後方に配置された相分離器中で引き続き水素を分離した。この条件下で、100%の転化率が達成され、かつN,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミンの収率は、粗製搬出物中の生成物含有率の計算の下で70%であった。全体で、MGDN300gを使用しかつ60時間にわたり選択率は一定に維持された。本発明による生成物(MGTA70%)の他に、この水素化搬出物は、上述の式(1)の化合物6%、上述の式(2)の化合物5.5%、及び上述の式(3)の化合物4%を含んでいた。水素化搬出物の残りは、未知の副成分であった。
【0103】
粗製反応混合物の一部を、回転蒸発器中で濃縮し、ビグリューカラムを介して<0.5mbarで蒸留した。95℃で、生成物を塔頂から留去した。生成物のN,N−(ビス−2−アミノエチル)−1,2−プロパンジアミンが85%の純度で得られた。
【0104】
この生成物を、GC−MS及びNMRで特性決定した。
13C−NMR(125MHz、THF):58.73、53.73、46.37、41.85、31.25。
GC−MS:DB1カラム、30m、0.32mm、1μm;開始温度80℃、温度勾配10℃/minで280℃−反応時間10.11min(93.3面積%)。GC−MSの条件は、実施例1と同様である。
【0105】
エポキシ樹脂系での使用のための例
実施例3
反応樹脂材料の製造及び活性プロフィールの調査
相互に比較すべき調製物を、アミンの化学量論量の、ビスフェノールA−グリシジルエーテルを基礎とするエポキシ樹脂(EEW 182)との混合により製造し、すぐに調査した。
【0106】
アミンのエポキシ樹脂との活性プロフィールの調査のための流動学的測定を、プレート直径15mm及び間隔0.25mmの、剪断応力制御されたプレート−プレート式レオメータ(MCR 301, Anton Paar)で多様な温度で実施した。
【0107】
調査3a)新たに製造した反応樹脂材料の、定義された温度で10,000mPa・sの粘度に達成するために必要な時間の比較:この測定は、上述のレオメータを回転させて多様な温度(23℃、75℃)で実施した。
【0108】
調査3b)ゲル化時間の比較:この測定は、上述のレオメータを回転−振動させて23℃及び75℃で実施した。損失弾性率(G″)と貯蔵弾性率(G′)との交点がゲル化時間を提供する。
【表1】
【0109】
結果
MGTAは、他の脂肪族アミンのポリエーテルアミンD230、ポリエーテルアミンT403及びトリエチレンテトラアミン(TETA)と比較して極端に短いゲル化時間を示す。
【0110】
実施例4
反応性樹脂材料の発熱プロフィール及び硬化した熱硬化性樹脂のガラス転移温度
アミンの、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルを基礎とするエポキシ樹脂(EEW 182)による硬化反応の、オンセット温度(To)、発熱(ΔE)並びにガラス転移温度(Tg)の決定のためのDSC調査を、ASTM D 3418により実施した。
【0111】
調査4)DSC試験のための測定プログラム:0℃ → 5K/min 180℃ → 30min 180℃ → 20K/min 0℃ → 20K/min 220℃。
【表2】
【0112】
結果
MGTAは、他の脂肪族アミンと比較して極端に高いガラス転移温度を示す。