(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495079
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】チャックテーブル
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20190325BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20190325BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20190325BHJP
B24B 27/06 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
B24B41/06 Z
H01L21/78 N
H01L21/68 P
!B24B27/06 M
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-82376(P2015-82376)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2016-198870(P2016-198870A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】福岡 武臣
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−123340(JP,U)
【文献】
特開2015−109416(JP,A)
【文献】
特開2009−206166(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0207094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 41/06,
H01L 21/68,21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部を有するリングフレームに粘着テープを貼着し該開口部から露出した該粘着テープに板状ワークを貼着して構成されるワークセットを保持するチャックテーブルであって、
板状ワークを吸引する吸引面と、該吸引面を吸引源に連通させる吸引孔と、該吸引面の外周側において該リングフレームを磁着によって保持する載置面を有するフレーム保持手段と、該載置面と面一に形成され該吸引面の外周から垂下する側面の下端に接続されるか、又は、該吸引面の外周と該載置面の内周とに接続され内周側に向かって上昇する傾斜を有する接続面と、を備え、
該フレーム保持手段は、該載置面と、該載置面に該リングフレームを磁着させる磁石と、該載置面において該磁石を露出させずに該載置面に磁着力を作用させる磁着力発生部とを備え、
該磁着力発生部は、該磁石が挿入される磁石挿入孔と、該載置面に該磁着力を作用させるように該磁石挿入部に挿入された該磁石を固定するスナップリングと、
を備えるチャックテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークを保持するチャックテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置において板状ワークを切削する際には、板状ワークが完全に切断されたときにチップがばらばらにならないようにするために、例えば中央部分が開口したリングフレームの下面に粘着テープを貼着して開口から露出した粘着テープに板状ワークを貼着することにより、粘着テープを介してリングフレームで板状ワークを支持している。そして、粘着テープを介してリングフレームと一体となった板状ワークをチャックテーブルで保持している(例えば、下記の特許文献1を参照)
【0003】
ここで、リングフレームが磁着可能な材料で形成されている場合は、例えば、
図6に示す従来のチャックテーブル20によって、リングフレームに支持された板状ワークを保持することができる。チャックテーブル20は、円板状の枠体21と、枠体21の中央部に形成された矩形状の吸引面22aを有する吸引保持部22と、吸引面22aと連通する
図7に示す吸引孔23と、枠体21の周縁においてネジ27で固定された円弧状の固定プレート24と、固定プレート24によって固定された複数の磁石25とを備えている。
【0004】
固定プレート24の上端面は、リングフレームを載せる載置面26となっている。また、
図7に示すように、チャックテーブル20では、各磁石25を接着材などで載置面26に固定するのではなく、2枚の固定プレート24で磁石25の側面側を挟み込んで磁石25の表面を露出させた構成となっているため、載置面26の表面の高さを一定にすることができ、載置面26にリングフレームを確実に磁着させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−183586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記したチャックテーブル20は、枠体21の周縁において起立した固定プレート24で磁石25を固定した構成となっていることから、吸引保持部22の吸引面22aと固定プレート24の載置面26との間に凹面28が形成されてチャックテーブル20の上面が凸凹状となっている。そのため、板状ワークの切削中に、切削屑や切削水などが凹面28に溜まり、載置面26に載置されるリングフレームの下面を汚してしまう。そして、板状ワークを切削した後は、リングフレームごと板状ワークを次工程に搬送するため、リングフレームに付着した切削屑も搬送してしまうという問題がある。
【0007】
また、板状ワークの切削中に、載置面26にも切削屑などが進入するおそれがあるため、切削屑などが載置面26に堆積された状態のままになると、リングフレームに対する磁石25の磁着力が低下するという問題もある。
【0008】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、チャックテーブルの上面に切削屑などが溜まるのを防止してリングフレームを汚さないようにすること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、中央に開口部を有するリングフレームに粘着テープを貼着し該開口部から露出した該粘着テープに板状ワークを貼着したワークセットを保持するチャックテーブルであって、板状ワークを吸引する吸引面と、吸引源に該吸引面を連通させる吸引孔と、
該吸引面の外周側において該リングフレームを磁着力によって保持する
載置面を有するフレーム保持手段と、
該載置面と面一に形成され該吸引面の外周から垂下する側面の下端に接続されるか、又は、該吸引面の外周と該載置面の内周とに接続され内周側に向かって上昇する傾斜を有する接続面と、を備え、該フレーム保持手段は、該リングフレームを載置させる載置面と、該載置面に該リングフレームを磁着させる磁石と、該載置面において該磁石を露出させずに該載置面に磁着力を作用させる磁着力発生部と、
を備え、該磁着力発生部は、該磁石が挿入される磁石挿入孔と、該載置面に該磁着力を作用させるように該磁石挿入部に挿入された該磁石を固定するスナップリングと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチャックテーブルは、リングフレームが載置される載置面に磁着力を備えるフレーム保持手段を備え、該フレーム保持手段は、該載置面において磁石を露出させないように磁着力を作用させる磁着力発生部を備えるため、載置面の上面に凸凹部分ができないように構成することができる。これにより、板状ワークの切削時に発生する切削屑などが載置面に堆積するのを防止でき、リングフレームの下面を汚したり、磁石の磁着力が低下したりすることもない。
【0011】
また、本発明のチャックテーブルでは、載置面から径方向内側に向かって延在し吸引面の外周に接続される接続面を有するため、載置面と吸引面との間に凹部が形成されず、切削屑などが溜まるのを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】チャックテーブルの一例の構成を示す平面図である。
【
図3】(a)は、磁石挿入孔に磁石が挿入される前の状態のチャックテーブルの構成を示す断面図である。(b)は、磁石挿入孔に磁石が挿入された状態のチャックテーブルの構成を示す断面図である。
【
図4】チャックテーブルでワークセットを保持するとともに、切削ブレードで板状ワークを切削する状態を示す断面図である。
【
図5】チャックテーブルの変形例の構成を示す断面図である。
【
図6】従来のチャックテーブルの構成を示す平面図である。
【
図7】従来のチャックテーブルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すチャックテーブル10は、
図2に示すリングフレーム2と一体となった板状ワーク1を保持するチャックテーブルの一例である。チャックテーブル10は、円板状の枠体11と、枠体11の中央部分に形成された矩形状の吸引保持部12と、枠体11の周縁側にリングフレーム2を載置させて磁着するフレーム保持手段13とを備えている。
【0014】
吸引保持部12は、例えばポーラスセラミックス等の多孔質部材で形成されている。吸引保持部12の上面は、矩形状の板状ワークに相当する面積を有する吸引面120となっている。
図3(a)に示すように、吸引保持部12の下方には、吸引面120を吸引源121に連通させる吸引孔122を備えている。吸引源121の吸引力が、吸引孔122を通じて吸引面120で作用すると、板状ワークを吸引面120で吸引保持することができる。
【0015】
一方、フレーム保持手段13は、枠体11の周縁側においてリングフレーム2が載置される載置面130と、載置面130にリングフレーム2を磁着させる磁石131と、載置面130に磁石131の磁着力を作用させる磁着力発生部132とを備えている。図示の例の載置面130の高さ位置は、吸引面120よりも低い位置に設定されている。例えば、リングフレーム2を載置面130に載置したときのリングフレーム2の上面が、吸引面120よりも低い位置に位置づけられるように、載置面130の高さが設定されている。
【0016】
磁着力発生部132は、
図3(a)に示すように、載置面130の反対側の下面130aから上方に凹み載置面130に達しない底面133を有する磁石挿入孔134と、磁石挿入孔134に挿入される磁石131を固定するスナップリング135とにより構成されている。スナップリング135の材質は、磁石挿入孔134の内周壁に対して反発する材質であればよい。また、スナップリング135の形状は、リング状であればよく、例えば多角形状(例えば、三角形)のリングで形成されるタイプのものでもよい。
【0017】
チャックテーブル10において磁着力発生部132を機能させるためには、
図3(b)に示すように、磁石挿入孔134に磁石131を挿入するとともに、磁石131の下端側からスナップリング135を磁石挿入孔134にはめ込んで固定する。このように、磁石131の表面を載置面130から露出させずに、載置面130の直下に磁石130を配置させ、載置面130に磁着力を作用させてリングフレームを磁着可能な状態にすることができる。
【0018】
また、載置面130と吸引面120との間には、載置面130から径方向内側に向かって延在する平面状の接続面14が形成されており、接続面14は、吸引面120の外周、例えば吸引面120の外周縁から垂下した側面120aの下端に接続されている。
【0019】
次に、チャックテーブル10を用いて矩形状の板状ワークを保持する動作について説明する。
図2に示す板状ワーク1は、矩形状の被加工物の一例であって、例えばCSP基板である。板状ワーク1には、縦横に交差する複数の分割予定ライン6によって区画されて複数のチップ5が配設されている。板状ワーク1は、中央に開口部を有するリングフレーム2の下端に粘着テープ3を貼着し開口部から露出した粘着テープ3に板状ワーク1を貼着したワークセット4の状態でチャックテーブル10に保持される。
【0020】
具体的には、
図4に示すように、吸引面120に板状ワーク1を粘着テープ3側から載置するとともに、リングフレーム2を粘着テープ3側から載置面130に載置する。このとき、磁石挿入孔134に挿入されて固定された磁石131の磁着力が載置面130で作用し、リングフレーム2を載置面130に磁着させる。また、吸引源121が、吸引孔122を通じて吸引面120に吸引力を作用させ、板状ワーク1の下面を吸引保持する。このようにしてチャックテーブル10でワークセット4を保持する。
【0021】
続いて、切削手段15によって板状ワーク1を切削する動作について説明する。切削手段15は、板状ワーク1の表面に対して平行な方向の軸心を有するスピンドル150と、スピンドル150の先端において着脱可能に装着された切削ブレード151と、切削水を切削ブレード151に向けて噴出するノズル152とを少なくとも備えている。
【0022】
切削手段15で板状ワーク1を切削するときは、チャックテーブル10を所定の方向に回転させつつチャックテーブル10を例えばX方向に水平移動させるとともに、切削手段15のスピンドル150が回転し、切削ブレード151を例えば矢印A方向に回転させながら、切削ブレード151を板状ワーク1に接触するまで下降させる。
【0023】
回転する切削ブレード151をさらに下降させて板状ワーク1の表面から切り込ませ、
図2に示した分割予定ライン6に沿って切削する。板状ワーク1の切削中は、ノズル152から切削ブレード151に向けて切削水を噴出し続ける。載置面130は平面状に形成され、凹凸がないため、板状ワーク1を切削する際に発生する切削屑とこれを含んだ切削水とが載置面130に堆積するのを防ぐことができる。また、接続面14も、載置面130から吸引面120の外周にかけて連なって形成されているため、接続面14に切削屑や切削水が堆積するのを防ぐことができる。
【0024】
このようにして、切削ブレード151によって
図2に示したすべての分割予定ライン6に沿って縦横に切削し、板状ワーク1を個々のチップ5に分割する。個片化されたチップ5は、粘着テープ3によって支持されていることから、ばらばらになることはない。
【0025】
このように、本発明のチャックテーブル10は、枠体11の周縁側の載置面130において磁石131の表面を露出させずに磁着力を作用させる磁着力発生部132を備え、この磁着力発生部132は、磁石挿入孔134と、磁石挿入孔134に挿入される磁石131を固定するスナップリング135とを備えるため、載置面130を平面状に形成し、上面に凸凹部分ができないように構成することができる。これにより、切削屑などが載置面130に堆積するのを防止することができるため、リングフレーム2の下面を汚したり、リングフレーム2に対する磁石131の磁着力が低下したりすることもない。また、仮に載置面130に切削屑などが付着したとしても、清掃により容易に除去することができる。
【0026】
図5に示すチャックテーブル10aは、チャックテーブルの変形例である。チャックテーブル10aは、傾斜した上面を有する枠体11aを備えている点以外は、上記したチャックテーブル10と同様である。チャックテーブル10aでは、載置面130と吸引面120との間に、載置面130から径方向内側に向かって上昇する傾斜を有する接続面16が形成されている。このチャックテーブル10aにおいても、枠体11aの上面に凹凸部分がないため、接続面16に切削屑などが堆積するのを防止することができる。また、載置面130も、平面状に形成されているため、載置面130に切削屑などが堆積するのを防止することができる。
【0027】
実施形態に示すチャックテーブル10,10aでは、矩形状の板状ワーク1の形状に合わせて矩形状の吸引面120を備えた場合を説明したが、この構成に限定されない。例えば円板状の板状ワークの形状に合わせて吸引面を円板状に形成してもよい。
【0028】
実施形態に示すチャックテーブル10,10aでは、載置面130が吸引面120よりも低い位置に形成されているが、吸引面の高さと載置面の高さとを同じにしてもよい。このように構成されるチャックテーブルでワークセットを保持すると、載置面に載置されるリングフレームの上面が吸引面よりも高くなるため、板状ワークの切削時に切削ブレードがリングフレームに接触しないようにする必要があるが、例えば、
図2に示したようなワークセット4を形成する時に、リングフレームの内周と板状ワークの外周との間に所定の隙間を設けておき、切削ブレードがリングフレームの内周に接触しないように、切削ブレードの切削送り動作と昇降動作とを制御しながら板状ワークを切削すればよい。
また、磁着力発生部は、載置面130に磁石を露出させないで磁石を配設する構成としたが、載置面130を磁性体で構成しても良い。すなわち、載置面130自体を磁着力発生部としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1:板状ワーク 2:リングフレーム 3:粘着テープ 4:ワークセット 5:チップ
6:分割予定ライン
10,10a:チャックテーブル 11,11a:枠体 12:吸引保持部
120:吸引面 120a:側面 121:吸引源 122:吸引孔
13:フレーム保持手段 130:載置面 131:磁石 132:磁着力発生部
133:底面 134:磁石挿入孔 135:スナップリング 14:接続面
15:切削手段 150:スピンドル 151:切削ブレード 152:ノズル
16:接続面