特許第6495083号(P6495083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495083
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】スピンナ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   H01L21/304 643A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-86684(P2015-86684)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-207800(P2016-207800A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】松山 敏文
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−260094(JP,A)
【文献】 特開2006−245022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングフレームの開口部を封鎖して粘着テープを貼着し該開口部の該粘着テープにウエーハを貼着するワークセットを保持するスピンナテーブルと、該スピンナテーブルの中心を軸に回転させる回転手段と、該スピンナテーブルを収容する洗浄ケースと、該スピンナテーブルが保持するワークセットに洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、を備えるスピンナ洗浄装置であって、
該スピンナテーブルは、ウエーハに相当する面積で該粘着テープを介してウエーハを吸引保持する吸引面を有する吸引プレートと、該吸引プレートに連結され該リングフレームを保持するリングフレーム保持部と、を備え、
該洗浄ケース内において該スピンナテーブルの回転方向に沿って該スピンナテーブルの最外周から径方向の距離が段階的に大きく該スピンナテーブルの上から見て渦巻き状に形成される螺旋内側壁と、該螺旋内側壁と該スピンナテーブルの最外周との距離が最も大きい該螺旋内側壁に配設される排気口と、該螺旋内側壁と連接される底板と、該スピンナテーブルの最外周から所定の隙間を設けて該スピンナテーブルを囲繞して下側が広い末広がりの斜面を形成して該洗浄ケースを上下に仕切るリングカバーと、を備え、
該リングフレーム保持部は、該リングフレームを保持したときに該リングカバーの該斜面に平行な斜面となる保持部斜面を有し、
該スピンナテーブルを回転させたとき回転する該保持部斜面と該リングカバーの斜面とによって該スピンナテーブルの上から下に向かって気流を発生させ、該気流を該スピンナテーブルの回転による遠心力によって該螺旋内側壁に沿って旋回させて該排気口から排気させることを特徴とするスピンナ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを回転させながら洗浄水で洗浄するスピンナ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエーハを切削ブレードで切削する切削装置には、切削加工後のウエーハの表面を洗浄するスピンナ洗浄装置が導入されているものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなスピンナ洗浄装置では、ウエーハがスピンナテーブルに吸引保持され、スピンナテーブルが高速回転された状態でウエーハの上面中央に洗浄水が噴射される。洗浄水は、高速回転するスピンナテーブルによる遠心力によってウエーハの上面全体に行き渡り、ウエーハ上面の汚れは洗浄水と共にウエーハの外周から外側へ洗い流される。洗浄後は、洗浄時よりもさらに高速でスピンナテーブルを回転させて遠心力を強めて洗浄水をウエーハから吹き飛ばすことで、ウエーハを乾燥させている。この場合、吹き飛ばされた洗浄水が再びウエーハの上面に付着するおそれがあった。
【0003】
そこで、遠心力によって吹き飛ばされた洗浄水のウエーハへの再付着を防止するため、スピンナ洗浄装置内に気流を発生させるスピンナ洗浄装置も提案されている(例えば、特許文献2又は特許文献3参照)。特許文献2又は特許文献3に記載のスピンナ洗浄装置では、スピンナテーブルの上方をカバーで覆い、スピンナテーブルが高速回転されることにより、スピンナ洗浄装置内でウエーハの上方を旋回する気流が発生する。これにより、遠心力で吹き飛ばされた洗浄水が直接ウエーハの上面に付着することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−339435号公報
【特許文献2】特開2012−015347号公報
【特許文献3】特開2012−094659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載のスピンナ洗浄装置では、気流がスピンナテーブルの上方を旋回するように発生するため、遠心力で吹き飛ばされた洗浄水が気流によって巻き上げられ、洗浄水はスピンナテーブルの上方を覆うカバーに付着することがある。この洗浄水がウエーハの上面に落下する結果、ウエーハには間接的に洗浄水が付着してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、スピンナテーブルの上方をカバーで覆うことなくウエーハの上面に洗浄水が付着するのを防止することができるスピンナ洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスピンナ洗浄装置は、リングフレームの開口部を封鎖して粘着テープを貼着し開口部の粘着テープにウエーハを貼着するワークセットを保持するスピンナテーブルと、スピンナテーブルの中心を軸に回転させる回転手段と、スピンナテーブルを収容する洗浄ケースと、スピンナテーブルが保持するワークセットに洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、を備えるスピンナ洗浄装置であって、スピンナテーブルは、ウエーハに相当する面積で粘着テープを介してウエーハを吸引保持する吸引面を有する吸引プレートと、吸引プレートに連結されリングフレームを保持するリングフレーム保持部と、を備え、洗浄ケース内においてスピンナテーブルの回転方向に沿ってスピンナテーブルの最外周から径方向の距離が段階的に大きくスピンナテーブルの上から見て渦巻き状に形成される螺旋内側壁と、螺旋内側壁とスピンナテーブルの最外周との距離が最も大きい螺旋内側壁に配設される排気口と、螺旋内側壁と連接される底板と、スピンナテーブルの最外周から所定の隙間を設けてスピンナテーブルを囲繞して下側が広い末広がりの斜面を形成して洗浄ケースを上下に仕切るリングカバーと、を備え、リングフレーム保持部は、リングフレームを保持したときにリングカバーの斜面に平行な斜面となる保持部斜面を有し、スピンナテーブルを回転させたとき回転する保持部斜面とリングカバーの斜面とによってスピンナテーブルの上から下に向かって気流を発生させ、気流をスピンナテーブルの回転による遠心力によって螺旋内側壁に沿って旋回させて排気口から排気させることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、スピンナテーブルが回転されることにより、リングカバーの斜面とリングフレーム保持部の保持部斜面との隙間を通じて洗浄ケース内にスピンナテーブルの上から下に向かい旋回する螺旋状の気流が螺旋内側壁に沿って発生する。ウエーハの上面に噴射される洗浄水は、スピンナテーブルの回転による遠心力によってウエーハの外周側に吹き飛ばされると共に、この螺旋状の気流によって洗浄ケース内の空気と共に排気口に向かって移動する。このため、ウエーハの上面に噴射された洗浄水がスピンナテーブルの上方に巻き上げられることがない。よって、スピンナテーブルの上方を防水カバーで覆う必要がなく、ウエーハの上面に洗浄水が再付着するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スピンナテーブルの周囲で下方向に旋回する螺旋状の気流を発生させることにより、スピンナテーブルの上方をカバーで覆うことなくウエーハの上面に洗浄水が付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の斜視図である。
図2】本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の断面模式図である。
図3】本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の上面模式図である。
図4】本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の動作説明図である。
図5】変形例に係るスピンナ洗浄装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る洗浄装置について説明する。図1は、本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の斜視図である。なお、スピンナ洗浄装置は、以下に示す構成に限定されず、スピンナテーブルを回転させながらウエーハを洗浄可能であればどのように構成されてもよい。
【0013】
図1に示すように、スピンナ洗浄装置1は、ウエーハW1を保持したスピンナテーブル3を回転させ、ウエーハW1の上方で洗浄水を噴射しながら洗浄するように構成されている。ウエーハW1は、略円板状の板状ワークであり、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板に半導体デバイスが形成された半導体ウエーハで構成される。なお、ウエーハW1は、上記構成に限定されず、セラミック、ガラス、サファイア系の無機材料基板に光デバイスが形成された光デバイスウエーハや、デバイス形成前の半導体基板や無機材料基板でもよい。ウエーハW1は、粘着テープTを介してリングフレームFに貼着される。粘着テープTは、リングフレームFの開口部を封鎖するように貼着され、開口部の粘着テープTの上にウエーハW1が貼着される。これにより、1つのワークセットWが形成される。
【0014】
スピンナ洗浄装置1の洗浄ケース2は、円筒状の周壁部20を有する有底筒状に形成されている。周壁部20の内側には、洗浄ケース2内の空間を上下に仕切るようにリングカバー23が設けられている。なお、リングカバー23や洗浄ケース2の内部構成については後述する。また、洗浄ケース2内には、ウエーハW1を保持して回転するスピンナテーブル3が収容されている。スピンナテーブル3の外周には、スピンナテーブル3が保持するワークセットWに洗浄水を供給する洗浄水供給手段4が設けられている。
【0015】
スピンナテーブル3は、ウエーハW1を吸引保持する吸引プレート30と、リングフレームFを保持するリングフレーム保持部31とを備えている。スピンナテーブル3は、後述する回転手段5(図2参照)により、吸引プレート30の中心を軸に回転可能に構成される。吸引プレート30はウエーハW1より大径の円形状を有している。吸引プレート30の上面には、同心で径の異なる2つの円形溝32、33と、2つの円形溝32、33を繋げる1つの直線溝34とが形成されている。円形溝32、33の中心は、吸引プレート30の中心と一致している。また、直線溝34は、吸引プレート30の中心を通り、円形溝32の直径に至る長さで形成されている。
【0016】
直線溝34は、吸引プレート30内に形成される連通路35(図2参照)に繋がっており、連通路35の先には、後述する吸引源36(図2参照)が接続されている。吸引源36によって円形溝32、33及び直線溝からエアーが引っ張られることにより、吸引プレート30の上面にはウエーハW1を吸引保持する吸引面37が形成される。この吸引面37は、ウエーハW1の面積に相当する面積を有し、粘着テープTを介してウエーハW1を吸引保持する。
【0017】
吸引プレート30の外周には、4つのリングフレーム保持部31が連結されている。リングフレーム保持部31は、スピンナテーブル3から四方に延びる支持板38に、振り子状のクランプ部39を揺動可能に支持して構成される。リングフレーム保持部31は、吸引プレート30の回転時にクランプ部39の外側の錘部分が遠心力で跳ね上げられて、クランプ部39の内側の爪部分と支持板38との間にリングフレームFをクランプする。
【0018】
洗浄水供給手段4は、スピンナテーブル3の外周で立設する旋回軸40と、旋回軸40の上端から水平に延びる水平管41と、水平管41の先端に設けられる洗浄ノズル42とによって構成される。洗浄ノズル42は、下方に向けて洗浄水を噴射すると共に、旋回軸40によってスピンナテーブル3の上方を旋回可能に構成される。水平管41は、洗浄ノズル42が旋回する際に先端がスピンナテーブル3の中心に届く長さを有している。また、水平管41には図示しない洗浄水供給源が接続されている。
【0019】
このように構成されるスピンナ洗浄装置1では、ワークセットWを吸引保持するスピンナテーブル3が高速回転されることで、リングフレームFがリングフレーム保持部31によってクランプされる。スピンナテーブル3を回転させながら洗浄水を洗浄ノズル42から噴射し、洗浄ノズル42を径方向に旋回させることにより、ウエーハW1の全面が洗浄される。洗浄後は、洗浄時よりもさらに高速でスピンナテーブル3を回転させて洗浄水をウエーハW1から吹き飛ばすことにより、ウエーハW1が乾燥される。
【0020】
ところで、遠心力によってリングフレームをクランプするクランプ機構を備えたスピンナ洗浄装置においては、スピンナテーブルが高速回転されると、スピンナテーブル全体が送風機となって洗浄ケース内に気流が発生する。すなわち、クランプ機構が送風機の羽根部として機能し、洗浄ケース内に空気の流れを生じさせている。この気流は、ウエーハに向かって噴射され跳ね返った洗浄水を洗浄ケース内に巻き上げる原因となる。
【0021】
また、通常のスピンナ洗浄装置にあっては、スピンナテーブルの上方がカバーによって覆われているため、巻き上げられた洗浄水が当該カバーに付着するおそれがある。そして、この洗浄水がウエーハの上面に落下し、洗浄水がそのまま乾燥される結果、ウエーハの上面にウォーターマークが残ってしまうことがある。このウォーターマークは後の洗浄工程では容易に除去することが難しく、デバイスの汚染原因となる。
【0022】
そこで、本実施の形態では、クランプ機構によって発生する気流を敢えて活用し、洗浄ケースの内壁形状を変えることで、洗浄ケース内にダウンフローを発生させることに成功した。これにより、スピンナテーブルの上方をカバーで覆うことなくウエーハの上面に洗浄水が付着するのを防止することが可能になっている。また、洗浄ケースの内壁形状を変えるだけでダウンフローを発生させることができるため、スピンナ洗浄装置の大幅な設計変更を伴うことがない。
【0023】
次に、図2及び図3を参照して、本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の内部構造について詳細に説明する。図2は、本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の断面模式図である。図3は、本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の上面模式図である。なお、図2においては説明の便宜上、洗浄水供給手段を図示しておらず、図3においては、スピンナテーブル及び洗浄ケースの一部(螺旋内側壁)のみ図示している。
【0024】
図2に示すように、スピンナテーブル3は、洗浄ケース2に収容されており、回転手段5によって回転可能とされると共に、昇降手段6によって昇降可能に構成されている。洗浄ケース2は、スピンナテーブル3の外周側を覆う筒状の周壁部20と、スピンナテーブル3の下方に設けられる回転手段5や昇降手段6等を収容する筒状の内周壁部21と、周壁部20の下端と内周壁部21の下端とを連結する底壁部22(底板)とによって構成される。内周壁部21は、周壁部20に対して小さい外径を有しており、周壁部20と同軸に設けられている。底壁部22は、中央が開口された円形状を有している。
【0025】
上記したように、周壁部20の内面には、洗浄ケース2内の空間を上下に仕切るリングカバー23が設けられている。リングカバー23は、図2に示すように、スピンナテーブル3が洗浄ケース2内に収容されている状態において、吸引プレート30の上面と略同一の高さから内向きに突出している。リングカバー23は、周壁部20の内面から径方向内側に向かうにしたがって上方に傾斜するように形成されている。また、リングカバー23の外径は、上方に向かうにしたがって徐々に縮径している。これにより、リングカバー23は、スピンナテーブル3の最外周から所定の隙間を設けてスピンナテーブル3を囲繞し、下側が広い末広がりの斜面が形成される。また、リングカバー23は、洗浄ケース2内に気流を発生させる気流発生手段の一部を構成する。
【0026】
周壁部20と内周壁部21との間には、図3に示すように上面視螺旋状(渦巻き状)の螺旋内側壁24が設けられている。この螺旋内側壁24は、洗浄ケース2内に螺旋状の気流を発生させる気流発生手段の一部を構成する。螺旋内側壁24は、スピンナテーブル3の回転方向に沿ってスピンナテーブル3の最外周から径方向の距離が段階的に大きくなるように形成される。図3に示す状態では、左側の螺旋内側壁24から時計回りに進むにしたがって徐々に螺旋内側壁24の外径が大きくなっている。
【0027】
そして、螺旋内側壁24が一周したところで、スピンナテーブル3の最外周との距離が最も大きくなる部分に排気口25が形成されている。排気口25は、洗浄ケース2の下方であって底壁部22近傍の高さ位置において、螺旋内側壁24から周壁部20を貫通して周壁部20の外面から突出するように形成される。詳細は後述するが、洗浄ケース2内の空気は、洗浄ケース2の上方から螺旋内側壁24に沿って流れ、洗浄ケース2下方の排気口25から外に排出される。また、排気口25近傍の底壁部22(螺旋内側壁24と連接される底板)には、洗浄水を排出する排水口26が設けられている。
【0028】
スピンナテーブル3(吸引プレート30)には、回転軸50を介してロータリージョイント51が取り付けられており、ロータリージョイント51の先には、吸引源36が接続されている。吸引プレート30内の連通路35は、ロータリージョイント51を介して吸引源36に連通される。ロータリージョイント51の下方には、電動モータ等で構成される回転手段5が設けられている。ロータリージョイント51の外周には、スピンナテーブル3を支持するテーブルベース52が設けられている。テーブルベース52は、内周壁部21の外径より大きい円形状に形成される。テーブルベース52の外周縁は下方に突出しており、この突出した部分が内周壁部21の上端部分に覆い被さっている。これにより、内周壁部21の上方開口が塞がれ、内周壁部21の内側に対する防水効果を得ることができる。
【0029】
テーブルベース52の下方には、スピンナテーブル3や回転手段5を昇降させる昇降手段6が設けられている。昇降手段6は、スピンナテーブル3を昇降駆動するため駆動部60とスピンナテーブル3を昇降をガイドするガイド部61と有している。駆動部60は、例えば、シリンダで構成され、ロッドを伸縮させることでスピンナテーブル3を昇降駆動させる。駆動部60及びガイド部61の一端はテーブルベース52の下面に連結されており、他端はベース部62に支持されている。なお、昇降手段6は、上記した構成に限定されず、例えば、駆動部60とガイド部61とが一体となったガイドアクチュエータで構成されてもよい。
【0030】
次に、図4を参照して、本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の動作について説明する。図4は、本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置の動作説明図である。
【0031】
図4Aに示すように、スピンナ洗浄装置1では、昇降手段6によりスピンナテーブル3が上昇され、スピンナテーブル3が洗浄ケース2から露出される。このとき、リングフレーム保持部31では、クランプ部39の自重によりクランプ部39が鉛直方向に沿っており、クランプ部39の一端側の錘部分が下で他端側の爪部分が上に向けられている。そして、図示しない搬送装置によってワークセットWがスピンナテーブル3の上に載置され、ウエーハW1が粘着テープTを介して吸引プレート30の吸引面37に吸引保持される。
【0032】
次に、スピンナテーブル3が降下され、ウエーハW1を吸引保持したスピンナテーブル3が洗浄ケース2内に収容される。そして、ウエーハW1の上方に洗浄ノズル42(図1参照)が位置付けられて洗浄ノズル42から洗浄水が噴射されると共に、回転手段5によりスピンナテーブル3が回転される。スピンナテーブル3が回転されると、図4Bに示すように、遠心力によってクランプ部39の錘部分が跳ね上げられて外側に向けられる一方、爪部分が内側に向けられてリングフレームFがクランプ部39と吸引プレート30との間に挟持される。
【0033】
クランプ部39の外側面が傾くことでリングカバー23の斜面とクランプ部39の外側面とが平行になる。このとき、クランプ部39の外側面は、リングカバー23の斜面に対向する保持部斜面を形成する。この結果、リングカバー23とクランプ部39との間には所定の隙間が形成される。洗浄中はスピンナテーブル3が高速回転されているため、洗浄ケース2内の空気(特にスピンナテーブル3上方の空気)は当該隙間を通じて螺旋内側壁24内に向かって誘導される。すなわち、気流発生手段は、スピンナテーブル3を回転させたときにリングカバー23の斜面とクランプ部39の外側面との間にスピンナテーブル3の上から下に向かって気流(ダウンフロー)を発生させる。螺旋内側壁24内に誘導される空気は、螺旋内側壁24に沿って旋回され、排気口25から排出される。このように、洗浄ケース2内では、スピンナテーブル3が高速回転されることにより、スピンナテーブル3の上から下に向かう螺旋状の気流が発生する。
【0034】
また、ウエーハW1の上面に噴射される洗浄水は、ウエーハW1の汚れを洗い流すと共に遠心力によってウエーハW1の外周側に吹き飛ばされる。ウエーハW1の外周に吹き飛ばされた洗浄水の一部は、リングカバー23の内面に衝突し、洗浄ケース2の下方空間に落下する。そして、底壁部22を伝って排水口26から排水される。上記したように、洗浄ケース2に気流が発生しているため、ウエーハW1の上面に噴射され噴霧となった洗浄水は、当該気流と共に洗浄ケース2の下方空間内に誘導される。このため、洗浄水がスピンナテーブル3の上方に巻き上げられることがない。よって、スピンナテーブル3の上方を防水カバーで覆う必要がなくなる。
【0035】
また、洗浄ケース2の下方空間において、空気が流れる方向に対して螺旋内側壁24の外径が徐々に大きくなるため、気流の速度が徐々に落とされる。これにより、気流と共に螺旋内側壁24の内側に誘導される洗浄水は、気流から分離されて底壁部22に落下する。このように、洗浄ケース2内の空気と洗浄水とを分離することにより、空気は排気口25から排出される一方、洗浄水は排水口26から排出される。
【0036】
洗浄後は、洗浄時よりもさらに高速でスピンナテーブル3が回転され、洗浄水は遠心力によってウエーハW1から吹き飛ばされる。これにより、ウエーハW1の上面が乾燥される。乾燥中においても、スピンナテーブル3が高速回転されることで、スピンナテーブル3の上から下に向かう螺旋状の気流が発生する。よって、洗浄水がスピンナテーブル3の上方に巻き上げられることがなく、ウエーハW1の上面に洗浄水が再付着することがない。このため、乾燥後にウエーハW1の上面にウォーターマークが残ることもない。
【0037】
以上のように、本実施の形態に係るスピンナ洗浄装置1によれば、スピンナテーブル3が回転されることにより、スピンナテーブル3の上方の空気がリングカバー23の斜面とリングフレーム保持部31の保持部斜面との隙間を通じて洗浄ケース2の下方に流れ込む。この空気は洗浄ケース2内の螺旋内側壁を伝って旋回し、排気口25から外に排出される。このため、洗浄ケース2内にスピンナテーブル3の上から下に向かい旋回する螺旋状の気流が螺旋内側壁24に沿って発生する。ウエーハW1の上面に噴射される洗浄水は、スピンナテーブル3の回転による遠心力によってウエーハW1の外周側に吹き飛ばされると共に、この螺旋状の気流によって洗浄ケース2内の空気と共に排気口25に向かって移動する。このため、ウエーハW1の上面に噴射された洗浄水がスピンナテーブル3の上方に巻き上げられることがない。よって、スピンナテーブル3の上方を防水カバーで覆う必要がなく、ウエーハW1の上面に洗浄水が再付着するのを防止することができる。また、洗浄ケース2の内壁形状(螺旋内側壁24)を変えるだけでダウンフローを発生させることができるため、スピンナ洗浄装置1の大幅な設計変更を伴うことがない。よって、既存の構成を活用しつつ、ウエーハW1に対する洗浄水の付着を防止するための構成を実現することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0039】
例えば、上記した実施の形態において、気流発生手段は、螺旋内側壁24及びリングカバー23によってダウンフローを発生させる構成としたが、この構成に限定されない。気流発生手段は、洗浄ケース2内にダウンフローを発生させることができれば、どのように構成されてもよい。例えば、排気口25に吸引源となる吸引手段を接続して、吸引手段が洗浄ケース2を吸引する構成としてもよい。この場合、洗浄ケース2内の空気が排気口25から強制排気されることで、リングカバー23を備えなくても洗浄ケース2内に螺旋状のダウンフローを発生させることができる。
【0040】
また、上記した実施の形態において、リングカバー23とクランプ部39との隙間は、洗浄ケース2内にダウンフローを発生させることができる程度に適宜変更が可能である。例えば、当該隙間を微調整し、スピンナテーブル3を高速回転させることで、洗浄ケース2の下方空間内に負圧を生成してもよい。この場合、洗浄ケース2の下方空間が負圧になることで、洗浄ケース2の外側から洗浄ケース2内に向かうダウンフローを発生させることができる。
【0041】
また、上記した実施の形態において、上面視渦巻き状に形成される螺旋内側壁24を洗浄ケース2内で一周させる構成としたが、この構成に限定されない。図5に示すように、螺旋内側壁24の外径を下方に向かうにしたがって徐々に大きくし、複数周させて螺旋状に形成してもよい。図5においては、リングカバー23が、螺旋内側壁24の上端から径方向内側に向かうにしたがって上方に傾斜するように形成されている。リングカバー23の外径は、上方に向かうにしたがって徐々に縮径している。これにより、スピンナテーブル3がリングカバー23によって囲繞される。このような構成であっても、リングカバー23とクランプ部39との間から洗浄ケース2内に向かうダウンフローを発生させることができる。
【0042】
特に、図5においては、螺旋内側壁24を複数周させたことで洗浄ケース2内のダウンフローの流路長を長くとることができるため、気液分離の効果を高めることができる。また、螺旋の形状は特に限定されるものではなく、放物螺旋やアルキメデスの螺旋等の代数螺旋や、対数螺旋で構成されてもよい。特に対数螺旋の場合、外周に向かうにしたがって螺旋の間隔が広がるため、ダウンフローの流路面積が徐々に大きくなる。この結果、気流の流速が落とされ、気液分離の効果を更に高めることができる。
【0043】
また、上記した実施の形態において、スピンナテーブル3が回転されることにより、リングカバー23の斜面とリングフレーム保持部31の保持部斜面とが平行になる構成としたが、この構成に限定されない。例えば、リングカバー23の斜面とリングフレーム保持部31の保持部斜面との隙間が洗浄ケース2の径方向内側において狭く径方向外側で広くなるようにしてもよい。
【0044】
なお、昇降手段6がスピンナテーブル3を昇降させる構成としたが、この構成に限定されない。昇降手段6は、スピンナテーブル3ではなくリングカバー23を昇降させてもよい。さらに、昇降手段6はスピンナテーブル3へのウエーハW1の搬送を容易にするために配設しているので、昇降手段6を配設しない構成としてもよい。つまり、いずれの場合においてもスピンナーテーブル3が回転したときにリングフレーム保持部31の保持部斜面とリングカバーの斜面とによりスピンナテーブルの上から下に向かって気流を発生させる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明は、スピンナテーブルの上方をカバーで覆うことなくウエーハの上面に洗浄水が付着するのを防止することができるという効果を有し、特に、ウエーハを回転させながら洗浄水で洗浄するスピンナ洗浄装置に有用である。
【符号の説明】
【0046】
F リングフレーム
T 粘着テープ
W1 ウエーハ
W ワークセット
1 スピンナ洗浄装置
2 洗浄ケース
22 底壁部(底板)
23 リングカバー
24 螺旋内側壁
25 排気口
3 スピンナテーブル
30 吸引プレート
31 リングフレーム保持部
37 吸引面
4 洗浄水供給手段
5 回転手段
図1
図2
図3
図4
図5