(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1試料と前記第2試料は、充放電回数が異なる2つの二次電池からそれぞれ取り出した電極から作成したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電極の評価方法。
前記第1試料と前記第2試料は、少なくとも1回の充放電を行った一つの二次電池から取り出した一つの電極内の異なる部分から作成したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電極の評価方法。
前記第1試料と前記第2試料は、少なくとも1回の充放電を行った一つの二次電池から取り出した異なる電極からそれぞれ作成したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電極の評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0012】
[実施形態1]
実施形態1の評価方法は、電極から作成した少なくとも2つの試料の共振周波数を比べることで、それら電極の構造に違いがあるか否かを評価するものである。
【0013】
図1は、共振周波数による電極評価の作業手順を説明する流れ図である。
【0014】
本実施形態1の電極の評価方法は、まず、第1試料と、第2試料を用意する(S11)。このとき第1試料と第2試料は同じ大きさにする。物体の共振周波数は、その物体の構造が同じでも大きさが違うと違ってくる。したがって、第1試料と第2試料の大きさが違うと、両試料の大きさが違うために共振周波数が違うのか、構造が違うために共振周波数が違うのか判別できなくなる。このため第1試料と第2試料は大きさを同じにするのである。
【0015】
なお、試料の大きさは、共振周波数を測定する装置に適合するように切り出すことになる。装置によっては電極を切り出さずにそのまま試料として用いてもよい。
【0016】
このとき用意する試料によって様々な評価を行うことができる。評価内容の詳細は後述する。
【0017】
次に、第1試料および第2試料の共振周波数をそれぞれ測定する(S12)。共振周波数の測定は振動リード法を用いる。振動リード法は、真空中(減圧下)において、試料に振動を加え、試料の振動状態を測定するものである。このため真空中での振動測定であるので、空気の影響を受けることない。したがって振動リード法は、電極のような薄い材料の測定に適している。もちろん、共振周波数を測定することができれば他の方法や装置を使用してもよい。このとき第1試料と第2試料を測定するときの温度は、同じ温度または同じ温度範囲で行う。
【0018】
図2は、振動リード法による測定システムの一例を説明するためのブロック図である。
【0019】
この測定システムは、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200には真空ポンプ201が接続されていて、真空チャンバ200内を減圧することができる。また、真空チャンバ200には液体窒素202を用いた冷却器203と、内部を温めるための電気ヒーター204を備えている。これにより真空チャンバ200内の温度を自在に制御することができる。真空チャンバ200内には、試料300を支持する台座205が設けられており、この台座205に試料が片持ち支持されるように固定される。また真空チャンバ200内には、高周波電源206に接続された電極207が設けられている。台座205は導電性であり高周波電源206と接続されている。
【0020】
さらに、試料300の振動を測定するためにレーザー変位計208が設けられている。レーザー変位計208には、パソコン209が接続されていて、レーザー変位計208によって測定された変位量のデータを解析する。
【0021】
この測定システムを用いた共振周波数の測定は以下のとおりである。まず、試料300の一端を台座205に固定する。そして真空チャンバ200内を減圧する。減圧時の圧力は特に限定されない。もちろんこの圧力は振動リード法に用いる装置において設定可能な圧力を使用することになる。高周波電源206を電極−台座間に印加する。高周波電源206の周波数は特に限定されない。商用電源の交流周波数(50Hzまたは60Hz)のままでもよい。これにより静電力によって試料が電極側に吸着する方向に力が加わることになる。その後高周波電源206を切ると、試料300は試料固有の共振周波数によって振動し、次第に振動が減衰してゆく。この高周波電源206を切った後の振動をレーザー変位計208で測定する。測定結果をパソコン209で解析することにより共振周波数が得られる。
【0022】
図3は、振動計測波形の一例を示すグラフである。図示するように、レーザー変位計208によって測定された試料の振動波形は、一定の周期振動をしつつ減衰してゆく。このとき、下記(1)の関係式が成り立つ。tは時間、A(t)は任意の時間の振幅、A0はt=0のときの振幅、αは吸収係数である。
【0023】
A(t)=A0e
−αt …(1)
レーザー変位計208によって測定された波形から、t=0のときの振幅A0および任意の時間tのときの振幅A(t)が得られる。高周波電源206を切った直後、すなわち試料に力がかからなくなった時点をt=0とする。振幅A0はこのときの振幅である。この測定においては、振幅A0が最大振幅となる。そして、得られた振幅A0および振幅A(t)を用いて(1)式から吸収係数αが算出できる。
【0024】
また、レーザー変位計208によって測定された波形から内部摩擦Q
−1を求めることができる。内部摩擦Q
−1は後述する実施形態2において使用する。
【0025】
内部摩擦Q
−1は下記(2)式のとおりである。
【0026】
Q
−1=α/(πf) …(2)
周波数fは、レーザー変位計208によって測定された波形から得られる。レーザー変位計208によって測定された波形はパソコン209によって再現されると同時に、周波数、振幅などの測定値が得られる。また、レーザー変位計208にオシロスコープを接続して、波形をみられるようにして周波数、振幅などの測定値を得てもよい。
【0027】
共振周波数の測定が終われば、第1試料の共振周波数と第2試料の共振周波数を比較する(S13)。両者の共振周波数に差があれば、電極を構成している活物質に何らかの構造の違いがあることがわかる。
【0028】
[実施形態2]
実施形態2の評価方法は、電極から作成した少なくとも2つの試料の共振周波数を測定後、それらの内部摩擦を算出して、内部摩擦を比べる。これにより電極の構造に違いがあるか否かを評価するものである。
【0029】
図4は、内部摩擦による電極評価の作業手順を説明する流れ図である。
【0030】
本実施形態2の電極の評価方法は、まず、第1試料と、第2試料を用意する(S21)。このとき第1試料と第2試料は同じ大きさにする。その理由は実施形態1と同じである。
【0031】
次に、第1試料および第2試料の共振周波数をそれぞれ測定する(S22)。ここでも振動リード法を用いる。振動リード法はすでに説明したとおりである。
【0032】
次に、第1試料および第2試料の共振周波数から内部摩擦を算出する(S23。内部摩擦Q
−1の求め方は実施形態1で説明したとおりであり、(1)式及び(2)式により求めることができる。
【0033】
次に、第1試料の内部摩擦と第2試料の内部摩擦を比較する(S24)。両者の内部摩擦に差があれば、電極を構成している活物質に何らかの構造の違いがあることがわかる。
【0034】
[電極の構造評価例]
実施形態1および2による電極の評価方法を用いて、たとえば下記のとおり3つの評価が可能である。
【0035】
(1)経時変化に伴う電極の構造変化の評価。
【0036】
この評価は、充放電回数の異なる2つの試料(第1試料と第2試料)の構造の違いを評価するものである。第1試料は、たとえば二次電池製造後の初期充放電直後の二次電池から取り出した電極を用いる。具体的には、二次電池から電極を取り出す。取り出した電極を適当な大きさに切り出して第1試料する。
【0037】
一方、第2試料は、充放電を繰り返した二次電池から取り出した電極とする。第2試料も同様に、まず二次電池から電極を取り出す。取り出した電極を第1試料と同じ大きさに切り出して第2試料とする。第1試料を取り出した二次電池と、第2試料を取り出した二次電池は個体としては別のものになるが、二次電池自体の仕様は同じものである。
【0038】
これにより2つの試料、すなわち第1試料と第2試料ができあがる。実施形態1の評価方法では、第1試料および第2試料の共振周波数を測定して、比較する。実施形態2の評価方法では、第1試料および第2試料の共振周波数を測定後、内部摩擦を算出して比較する。これらにより、製造初期における電極構造から、複数回の充放電によって電極構造が変化したか否かを知ることができる。
【0039】
(2)1つの電極内における面内バラつきの評価。
【0040】
たとえば、二次電池の製造においては、電極を密閉容器(缶、フィルムラミネート封止体など)に入れてから、電解液を注入して封止する。その後、初期充電を行っている。このような製造過程においては、電極の一部に電解液が十分に浸透しない場合がある。一つの電極がその面内において構造に違いがあるか否かを検知できれば、一つの電極における電解液の浸透性の違いやそれによる構造の違いを検知することができる。
【0041】
この評価では、まず、二次電池から一つの電極を取り出す。このときの二次電池は、たとえば、初期充電直後の二次電池である。初期充電直後の二次電池を用いれば、製造直後の状態がわかる。または、複数回充放電を行った後の二次電池である。複数回充放電を行った後の二次電池であれば、使用後、経時変化によって一つの電極の面内バラつきを検知できる。
【0042】
そして、取り出した電極を複数に分割して、任意の場所から少なくとも2つの試料を切り出す。これらを第1試料と第2試料とする。なお、第1試料と第2試料の大きさは同じにする。
【0043】
その後、実施形態1の評価方法では、第1試料および第2試料の共振周波数を測定して、比較する。実施形態2の評価方法では、第1試料および第2試料の共振周波数を測定後、内部摩擦を算出して比較する。これらにより一つの電極の面内における構造の違いを検知することができる。
【0044】
(3)同一二次電池内における電極構造のバラつき評価
二次電池によっては、一つの密閉容器(缶、フィルムラミネート封止体など)内に複数の電極を入れた形態のものがある(この場合の複数の電極とは、正極が2個以上、それと対をなす負極も2個以上という意味である)。
【0045】
このような二次電池の製造においては、複数の電極を密閉容器(缶、フィルムラミネート封止体など)に入れてから、電解液を注入して封止する。その後、初期充電を行っている。このような製造過程においては、複数の電極ごとに電解液の浸透度合いが違ってしまうことがある。そのような場合に、一つひとつの電極において構造に違いがあるか否かを検知できれば、このような二次電池における電解液の浸透性の違いやそれによる構造の違いが検知できる。
【0046】
この評価では、まず、二次電池から複数の電極を取り出す。このときの二次電池は、たとえば、初期充電直後の二次電池である。初期充電直後の二次電池を用いれば、製造直後の状態がわかる。または、複数回充放電を行った後の二次電池である。複数回充放電を行った後の二次電池であれば、使用後、経時変化によって二次電池内における複数電極間のバラつきを検知できる。
【0047】
そして、取り出した複数の電極からそれぞれ試料を作成する。これらをたとえば、第1試料と第2試料とする。もちろん電極がさらに多ければさらに多くの試料を作成する。なお、第1試料と第2試料(多数の試料を作成した場合はすべての試料)の大きさは同じにする。
【0048】
その後、実施形態1の評価方法では、第1試料および第2試料の共振周波数を測定して、比較する。実施形態2の評価方法では、第1試料および第2試料の共振周波数を測定後、内部摩擦を算出して比較する。これらによりそれら試料のもとになっている電極の構造の違いを検知することができる。
【0049】
そのほかここで例示した3つの評価内容以外でも、2つの試料を用意して、それらの共振周波数、または内部摩擦の違いを比べることで、様々な電極の評価を行うことが可能となる。
【0050】
[実施例]
電池仕様、製造ライン、製造装置、製造条件などが同じ2つのリチウムイオン二次電池を用意した。
【0051】
第1試料:用意した2つの二次電池のうち一つを1回充放電した(初期充電と同様である)。その後分解して、正極、負極の両方を取り出した。取り出した正極を6mm×29mmと、6mm×39mmの大きさとなるように切り出した。同様に、取り出した負極を6mm×32mmと、6mm×37mmの大きさとなるように切り出した。
【0052】
第2試料:用意した2つの二次電池のうち他の一つを150回充放電した。その後に分解して、正極、負極の両方を取り出した。取り出した正極および負極を、それぞれ第1試料と同じ大きさとなるように切り出した。
【0053】
なお、すべての試料は幅が6mmであるので、以下では長さの値で試料の違いを示す。
【0054】
振動リード法による測定:上述した振動リード法による測定システムを用い、第1試料、第2試料をそれぞれ以下の条件によって共振周波数を測定した。
【0055】
それぞれの試料の長手方向の一端を台座205に固定。圧力約133.32Paで、100Kから400Kまで昇温させつつ、5K刻みで測定した。
【0056】
内部摩擦の計算:振動リード法による測定結果を用いてそれぞれの試料の内部摩擦を算出した。
【0057】
図5は正極の共振周波数を示すグラフであり、(a)は29mmの試料、(b)は39mmの試料である。
図6は負極の共振周波数を示すグラフであり、(a)は32mmの試料、(b)は37mmの試料である。
【0058】
表1は正極29mmの第1試料および第2試料の100Kと400Kの共振周波数、および100〜400K、5K刻み共振周波数測定値の第1試料と第2試料の差の平均を示した表である。表2は正極39mmの第1試料および第2試料の100Kと400Kの共振周波数、および100〜400K、5K刻み共振周波数測定値の第1試料と第2試料の差の平均を示した表である。表3は負極32mmの第1試料および第2試料の100Kと400Kの共振周波数、および100〜400K、5K刻み共振周波数測定値の第1試料と第2試料の差の平均を示した表である。表4は負極37mmの第1試料および第2試料の100Kと400Kの共振周波数、および100〜400K、5K刻み共振周波数測定値の第1試料と第2試料の差の平均を示した表である。
【0063】
図5および6から、それぞれの試料単独では、共振周波数に温度依存性のあることがわかる。第1試料と第2試料の共振周波数を比較すると、すべての温度で共振周波数が違うことがわかる。そして
図5、6、および表1〜4から、充放電回数が増えることで共振周波数が低下していることがわかる。また、このような第1試料と第2試料の共振周波数の違いは、試料の大きさを変えても、その傾向は同じである。また、正極よりも負極の方が充放電回数の違いによる共振周波数の違いが大きいことがわかる。
【0064】
これらのことから、同じ温度または同じ温度範囲で、2つの試料の共振周波数を測定することで、それら2つの試料の違いを検知することができる。
【0065】
リチウムイオン二次電池に用いられている正極は、その初期の充電過程において、リチウムイオンが正極活物質粒子から放出されるのと併せて結晶構造の変化が起こる。充電過程においては、正極活物質が有する可動性リチウムイオンをすべて放出(充電)したのち、戻す(放電)と、充電前と比較して結晶構造が変化する。このため充電、放電を繰り返し行うことで、活物質の結晶構造変化に伴い、活物質粒子表面において極めて微小な割れや構造の非晶化が進行すると推測される。その結果として、その後の充放電サイクルにおいて電池性能の劣化などが考えられる。
【0066】
負極においても同様に、充放電を繰り返すことで、活物質に微小な構造変化が起きて、電池性能の劣化などが考えられる。
【0067】
本実施例は、製造装置、製造条件などが同じ2つの二次電池をもとにした試料である。したがって、電極構造の極めて微小な変化を共振周波数の違いとして検出したものである。
【0068】
図7は正極の内部摩擦を示すグラフであり、(a)は29mmの試料、(b)は39mmの試料である。
図8は負極の内部摩擦を示すグラフであり、(a)は32mmの試料、(b)は37mmの試料である。
【0069】
図7および8から、第1試料と第2試料の内部摩擦を比較すると、すべての温度で内部摩擦の値が違うことがわかる。そして充放電回数が増えることで内部摩擦が低下していることがわかる。このような第1試料と第2試料の内部摩擦の違いは、試料の大きさを変えても、その傾向は同じである。
【0070】
これらのことから、同じ温度または同じ温度範囲で、2つの試料の内部摩擦を求めることで、それら2つの試料の違いを検知することができる。
【0071】
内部摩擦の評価においては、
図7および8からわかるように、2つの試料におけるグラフ曲線のピークの位置が異なることがわかる。したがって、内部摩擦の評価においては、内部摩擦の差だけでなく、このような複数の温度によって評価することで、その内部摩擦の値のピークが現れる位置の違いによっても、電極構造の差を検知することが可能となる。
【0072】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施形態1および2によれば、電極から少なくとも2つ試料を作成して、それら試料のもとになっている電極の構造の違いを、共振周波数の違い(実施形態1)、または内部摩擦の違い(実施形態2)によって評価することができる。このため従来のように、電極に通電する必要がない。このため評価中の通電によって電極の活物質が変化したり、電極自体の温度が変化したりすることはない。したがって、本実施形態では、評価中の電極に電気を流すなど、構造変化や温度変化をきたすような要因を加えることなく、電極の構造に違いを正確に評価することができる。
【0073】
また、本実施形態1および2を用いることで、経時変化による電極構造の変化、同一電極内における構造の違い、同一二次電池内における複数電極の構造の違いなど、様々な電極構造の違いを評価することができる。
【0074】
また、本実施形態1および2における測定対象となる電極は、正極、負極のどちらであっても、その仕様や元の構造にかかわらず、評価可能である。
【0075】
また、本実施形態1および2において、共振周波数の測定には振動リード法を用いたことで、空気抵抗による影響が少なく、電極のような薄い材料でも正確に共振周波数を測定することができる。
【0076】
[電池の全体構造]
ここで実施形態1または2の評価対象となり得る二次電池の例を説明する。
図9は二次電池の1例としてのリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0077】
(外観)
図示するチウムイオン二次電池10は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ27、負極タブ25が引き出されている。発電要素21は、リチウムイオン二次電池10の電池外装材29によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は、正極タブ27および負極タブ25を外部に引き出した状態で密封されている。発電要素21は、正極150、電解質層17および負極130で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。このためこのような形態の電池は積層型電池とも称される。
【0078】
(内部構造)
図10はリチウムイオン二次電池の構成を示す概略断面図である。
【0079】
図示するようにリチウムイオン二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極150と、セパレーター17と、負極130とを積層した構成を有している。なお、セパレーター17は、非水電解質(たとえば、液体電解質)を内蔵している。
【0080】
正極150は、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された構造を有する。負極130は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された構造を有する。
【0081】
実施形態1および2による評価対象は、これら正極150または負極130ということになる。
【0082】
発電要素21は、1つの正極活物質層15とこれに隣接する負極活物質層13とが、セパレーター17を介して対向するようにして、負極130、電解質層(非水電解質含有セパレータ17)および正極150がこの順に積層されている。これにより、隣接する負極130、電解質層および正極150は、1つの単電池層19を構成する。図に示すリチウムイオン二次電池10は、単電池層19が6層積層されていることを示している。もちろん実際の電池にあっては、このような層数に制限されるものではない。これにより各単電池は電気的に並列接続されてなる構成を有する。
【0083】
正極集電体12および負極集電体11は、各電極(正極150および負極130)と導通される正極集電板(タブ)27および負極集電板(タブ)25がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板27および負極集電板25はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体12および負極集電体11に超音波溶接や抵抗溶接などにより取り付けられていてもよい。
【0084】
(正極活物質層)
正極活物質層15は、放電時にイオンを吸蔵し、充電時にイオンを放出できる正極活物質を含む。具体的には、リチウム含有遷移金属酸化物、またはリチウム含有複合遷移金属酸化物など含む。正極活物質層は、さらに必要に応じて、界面活性剤、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などを含む。
【0085】
(負極活物質層)
負極活物質層13としては、たとえば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、ケイ素系材料、スズ系材料などを含む。またこれらが2種以上含まれていてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0086】
負極活物質層は、必要に応じて、界面活性剤、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などの添加剤をさらに含む。
【0087】
(電解質層)
本実施形態における電解質層は、セパレーターに電解液が含浸されてなる構成を有する。本実施形態にかかるセパレーターは、電解液を浸潤させた際のイオン伝導率が電解液単体のイオン伝導率に対して一定の割合以上であること、および/または開口率(単位面積あたりに占める空孔の割合)が一定の割合以上であることを特徴とする。
【0088】
(セパレーター)
セパレーターは、電解質を保持して正極150と負極130との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極150と負極130との間の隔壁としての機能を有する。
【0089】
セパレーターの形態としては、たとえば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレーターや不織布セパレーター等を挙げることができる。
【0090】
(電解質)
セパレーターに浸潤する電解質としては、特に制限されないが、液体電解質またはゲルポリマー電解質が用いられる。ゲルポリマー電解質を用いることにより、電極間距離の安定化が図られ、分極の発生が抑制され、耐久性(サイクル特性)が向上する。
【0091】
(集電体)
集電体を構成する材料は導電材料であれば特に制限はないが、好適には金属が用いられる。
【0092】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。
【0093】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。たとえば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
【0094】
(正極集電板および負極集電板)
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、たとえば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0095】
(電池外装体)
電池外装体29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、たとえば、PP、アルミニウム、ポリアミド系合成繊維をこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部からかかる発電要素への電圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミネートラミネートがより好ましい。
【0096】
以上本実施形態による評価対象となる二次電池およびそれに使用されている電極などについて説明したが、本発明は、このような扁平な積層型の二次電池に限定されない。たとえば、1枚の正極と1枚の負極とをセパレーターを間に挟んで巻き込んだ巻回型の二次電池における電極でも評価することができる。
【0097】
また、元の電極構造自体も、上述したように、集電体の両面に活物質が形成された電極に限定されない。たとえば、集電体の片面に活物質が形成された電極(正極または負極)であっても評価可能である。さらには、集電体の一方の面に正極活物質、他方の面に負極活物質が形成された双曲型電極の評価も行うことができる。
【0098】
そのほか、本発明は特許請求の範囲によって解釈されるものであって、上述した実施形態や実施例に限定的に解釈されるものではない。