特許第6495760号(P6495760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6495760塗料用添加剤組成物を含有する塗料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495760
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】塗料用添加剤組成物を含有する塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20190325BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20190325BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190325BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20190325BHJP
   C08G 18/70 20060101ALI20190325BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/65
   C09D175/04
   C09D133/00
   C08G18/70
   C08G18/10
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-124002(P2015-124002)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-27113(P2016-27113A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-138585(P2014-138585)
(32)【優先日】2014年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】塚原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】保坂 将毅
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−100426(JP,A)
【文献】 特開2012−158709(JP,A)
【文献】 特開2010−241944(JP,A)
【文献】 特開2015−174928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量1000〜3000、イソシアネート基含有率が10〜25質量%であるアロファネート基含有ポリイソシアネート(A)と、重量平均分子量100〜5000、水酸基価が20〜600mgKOH/g、水酸基数が1〜5であるアルコール化合物(B)との反応物を含有する塗料用添加剤組成物を含有する塗料組成物であって、該塗料組成物の固形分100質量部に対して、該塗料用添加剤組成物の固形分の含量が0.03〜15質量部である、塗料組成物。
【請求項2】
アロファネート基含有ポリイソシアネート(A)由来のイソシアネート基と、アルコール化合物(B)由来の水酸基のモル比が、イソシアネート基/水酸基=0.4〜1.1である、請求項1に記載の塗料組成物
【請求項3】
アロファネート基含有ポリイソシアネート(A)が、脂肪族ジイソシアネート化合物と水酸基数が1〜3の脂肪族アルコール化合物を原料として得られる化合物である、請求項1又は2に記載の塗料組成物
【請求項4】
アロファネート基含有ポリイソシアネート(A)の平均NCO官能基数が2〜8である請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物
【請求項5】
アルコール化合物(B)が、エーテル基を含有するアルコール化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物
【請求項6】
ベース樹脂が、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜の傷の自己修復性を向上させる塗料用添加剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の塗膜は、鋼板の上に主に4種の層が形成されており、下から順に、カチオン電着塗料の層、中塗り塗料の層、ベースコート層、クリアコート層が重なっている。各層の主な役割は、カチオン電着塗料の層は防錆性、中塗り塗料の層は仕上り性、耐チッピング性、ベースコート層は色付け、意匠性、光線透過抑制性、クリアコート層は、ベースコート層の保護とされている。
【0003】
クリアコート層は、ベースコート層の色を艶良く出すための透明性、ベースコート層の意匠性を長期間保つための耐候性、傷や凹み等から自動車の塗装を守るための耐擦傷性等に優れることが求められ、自動車メーカーや消費者から求められる性能のレベルは非常に高い。
【0004】
塗膜の耐擦傷性を上げる方法としては、(1)塗膜自体を傷が付きにくい膜にする方法、(2)傷が付いてもその傷を修復することができる膜にする方法の2つに大別できる。(1)の方法としては、例えば、珪素化合物やその加水分解物を用いて成形品の表面にハードコート層を設け、硬度が高い膜で被覆することによって傷が付きにくい塗膜にする方法(特許文献1〜3参照)がよく知られている。(2)の方法としては、例えば、塗料中に原料を内包した修復カプセルを含有させておき、傷が付いた際にその修復カプセルが壊れ、内包していた樹脂原料によって傷を修復するといった方法や、塗料自体に柔軟性を持たせ、傷が付いても自己修復作用によって修復する方法(特許文献4〜7参照)が公知である。
【0005】
しかしながら、(1)の方法の珪素化合物やその加水分解物を用いた方法では、樹脂の上にハードコート層を設けた場合、耐擦傷性は上がるものの耐衝撃性が悪化する場合が多い。そこで、耐衝撃性改善の為に比較的柔軟性のある柔らかい樹脂の上にハードコート層を設ける案が検討されたが、加工する際や使用する際に、柔らかい樹脂とハードコート層とではなじみが悪く、塗膜にクラックが生じやすいという欠点が新たに生じた。(2)の方法のうち、修復カプセルを塗料に配合する方法は、製造のコストの上昇と塗料へのカプセルの均一分散性の問題があり、カプセルが均一に塗料に分散されていないと、傷が付いてもカプセル中の原料が上手く傷の修復に寄与できない場合や、また、塗膜の透明性の悪化等にも影響を及ぼす場合があった。(2)の方法のうち樹脂自体に自己修復性を持たせる方法としては、樹脂自体を変性して自己修復性を向上させることが検討されているが、十分な耐擦傷性能を満たしておらず、クリアコート用の塗料としての透明性も不十分であった。塗料用の樹脂については種々の検討が行われているが、塗料に添加することにより、塗膜に自己修復性を付与したり、塗膜の自己修復性を向上させたりするような塗料用添加剤についてはあまり検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−22365号公報
【特許文献2】特開昭61−166824号公報
【特許文献3】特開2006−193537号公報
【特許文献4】開昭63−86762号公報
【特許文献5】特開平7−258601号公報
【特許文献6】特開2012−121985号公報
【特許文献7】特開2012−107101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
市場からは、十分な耐擦傷性と透明性を持ち併せたクリアコート用の塗料組成物の開発が望まれている。従来の塗料に配合することにより、塗膜の自己修復の機能を付与することができる塗料用添加剤があれば、塗料用の樹脂の検討を行うことなく、種々の塗料に塗膜の自己修復の機能を付与できることから、このような塗料用添加剤の開発は、塗料業界から強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは鋭意検討し、塗膜の透明性を低下させず、塗膜の傷に対する自己修復効果を向上させる塗料用添加剤を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、重量平均分子量1000〜3000、イソシアネート基含有率が10〜25質量%であるアロファネート基含有ポリイソシアネート(A)と、重量平均分子量100〜5000、水酸基価が20〜600mgKOH/g、水酸基数が1〜5であるアルコール化合物(B)との反応物を含有する塗料用添加剤組成物を含有する塗料組成物であって、該塗料組成物の固形分100質量部に対して、該塗料用添加剤組成物の固形分の含量が0.03〜15質量部である、塗料組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、塗膜の透明性の低下が少なく、塗膜の傷に対する自己修復効果を向上若しくは促進させる塗料用添加剤組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、重量平均分子量1000〜3000、イソシアネート基含有率が10〜25質量%であるアロファネート基含有ポリイソシアネート(A)と、重量平均分子量100〜5000、水酸基価が20〜600mgKOH/g、水酸基数が1〜5であるアルコール化合物(B)との反応物を含有する塗料用添加剤組成物である。尚、本明細書において、重量平均分子量1000〜3000、イソシアネート基含有率が10〜25質量%であるアロファネート基含有ポリイソシアネート(A)をイソシアネート(A)、重量平均分子量100〜5000、水酸基価が20〜600mgKOH/g、水酸基数が1〜5であるアルコール化合物(B)をアルコール化合物(B)という場合がある。
【0011】
本発明のイソシアネート(A)は、イソシアネート化合物とアルコール化合物の反応物であり、更に、分子内にアロファネート基を含有していなければならず、重量平均分子量1000〜3000、イソシアネート基含有率が10〜25質量%であるポリイソシアネートが本発明の効果を奏する。尚、本明細書において、アロファネート基とは、イソシアネート化合物とアルコール化合物の反応によって形成したウレタン結合に、更にイソシアネート化合物が反応した基のことを言う。
【0012】
イソシアネート(A)の原料のイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物等のポリイソシアネート化合物が使用できるが、自己修復効果の点から、ジイソシアネート化合物が好ましい。ジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート(水素添加TDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水素添加XDI)及び2,4,4(又は2,2,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0013】
イソシアネート(A)の原料のイソシアネート化合物としては、自己修復効果の点から、脂肪族ジイソシアネート化合物が好ましく、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、HDI等の直鎖状の脂肪族ジイソシアネート化合物が更に好ましく、HDIが最も好ましい。なお、これらジイソシアネート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよく、2種以上を組合わせて用いる場合は、少なくとも1種はHDIであることが好ましい。
【0014】
イソシアネート(A)の原料として使用可能なアルコール化合物は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチルペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−メチル−2−ヘプタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、イソヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、イソオクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、シクロヘキサノール、メトキシエチレングリコール、メトキシジエチレングリコール、メトキシトリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシエチレングリコール、エトキシジエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ブトキシエチレングリコール、ブトキシジエチレングリコール、メトキシプロピレングリコール、メトキシジプロピレングリコール、メトキシトリプロピレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシプロピレングリコール、エトキシジプロピレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、ブトキシプロピレングリコール、ブトキシジプロピレングリコール等のモノオール化合物;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,9,9−テトラメチル−1,10−デカンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)、ノルボルナン−2,3−ジメタノール等のジオール化合物;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン等のトリオール化合物;ブタンテトラオール、ペンタンテトラオール、ヘキサンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオール化合物;ペンタンペンタオール、ヘキサンペンタオール等のペンタオール化合物等が挙げられる。
【0015】
更には、上記列挙した1種又は2種以上のジオールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート又はジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート等の群から選ばれる1種又は2種以上のカーボネートとの反応によって得られる(ポリ)カーボネートジオールが挙げられ、更には、上記列挙した1種又は2種以上のジオールと、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等の群から選ばれる1種又は2種以上のジカルボン酸又は無水物との反応によって得られる(ポリ)エステルポリオール等が挙げられる。
【0016】
イソシアネート(A)の原料のアルコール化合物としては、自己修復効果の点から、モノオール化合物、ジオール化合物が好ましく、エーテル基を含有するジオール化合物が更に好ましい。イソシアネート(A)の原料として好ましいアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。なお、イソシアネート(A)の原料のアルコール化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0017】
イソシアネート(A)は、上記に列挙したジイソシアネート化合物とアルコール化合物を原料として使用して、公知の方法で製造することができ、例えば、ジイソシアネート化合物とアルコール化合物をウレタン化反応を行った後に、アロファネート化触媒を用いて、更にジイソシアネート化合物をアロファネート化反応させることにより、製造することができる。具体的には、特開2006−022133、特開2006−328252、特開2006−124610、特開2009−007472、特開2009−046548、特開2010−195903、特開2012−107101等に記載の条件によればよい。なお、製造上、イソシアヌレート環構造を有するポリイソシアネートが副生する場合がある。このような副生物の含量があまりに多い場合には、自己修復効果が低下する可能性があるため、イソシアネート(A)に対する当該副生成物の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましい。イソシアネート(A)中の、副生物であるイソシアヌレート環構造を有するポリイソシアネートの含量は、H−NMR及び13C−NMRによる分析にて算出可能である。
【0018】
本発明のイソシアネート(A)の重量平均分子量は、1000〜3000である。イソシアネート(A)の重量平均分子量が1000よりも低い場合、及び3000よりも高い場合は、十分な自己修復効果が得られない場合がある。イソシアネート(A)の重量平均分子量は、1200〜2000が好ましく、1300〜1800が更に好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量とは、テトラヒドロフラン(THF)溶媒中、GPCにより測定し、スチレン換算で求めた重量平均分子量をいう。
【0019】
本発明のイソシアネート(A)のイソシアネート基含有率は、10〜25質量%である。イソシアネート(A)のイソシアネート基含有率が10質量%よりも低い場合、及び25質量%0よりも高い場合は、十分な自己修復効果が得られない場合がある。イソシアネート(A)のイソシアネート基含有率は、12〜20質量%が好ましく、15〜18質量%が更に好ましい。尚、イソシアネート基含有率は、JIS K 1603−1(プラスチック−ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法−第1部:イソシアネート基含有率の求め方)に記載の方法により算出することができる。
【0020】
イソシアネート(A)の粘度があまりに高い場合には、ハンドリング性が低下することから、25℃の粘度は、4000mPa・s以下が好ましく、3500mPa・s以下がより好ましく、2500mPa・s以下が更に好ましい。
なお、このときの粘度は、B8H型粘度計(東京計器株式会社製)、No.1の使用ローター、回転数が12rpmの条件下で測定された粘度を指す。
【0021】
(A)の数平均分子量は、通常、500〜2000であり、600〜1800が好ましく、700〜1500がより好ましい。尚、数平均分子量は、重量平均分子量と同様、テトラヒドロフラン(THF)溶媒中、GPCにより測定し、スチレン換算で求めることができる。
【0022】
イソシアネート(A)の平均NCO官能基数があまりに少ない場合、及びあまりに多い場合には、十分な自己修復効果が得られない場合があることから、イソシアネート(A)の平均NCO官能基数は、2〜8であることが好ましく、3〜7であることが更に好ましく、4〜6であることが最も好ましい。尚、平均NCO官能基数は、イソシアネート基含有率と数平均分子量から下記の式により算出することができる。
〔平均NCO官能基数〕=〔数平均分子量〕×〔イソシアネート基含有率〕/4200
【0023】
上記記載の条件を満たした、本発明の塗料用添加剤組成物の原料として使用可能なアロファネート基含有ポリイソシアネート(A)に、市販品として日本ポリウレタン株式会社製の「コロネート2793」、住化バイエルウレタン株式会社製の「デスモジュールXP2565」、「デスモジュールXP2580」等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0024】
本発明のアルコール化合物(B)は、重量平均分子量100〜5000、水酸基価が20〜600mgKOH/g、水酸基数が1〜5であるアルコール化合物であり、これと本発明の成分(A)との反応物が所望の効果を奏する。
【0025】
アルコール化合物(B)の重量平均分子量が、100よりも小さい場合、及び5000よりも大きい場合には、十分な自己修復効果が得られない場合がある。アルコール化合物(B)の重量平均分子量は、150〜4000が好ましく、200〜3000がより好ましく、300〜1200が更に好ましい。
【0026】
アルコール化合物(B)の水酸基価が、20mgKOH/gよりも小さい場合、及び600mgKOH/gよりも大きい場合には、十分な自己修復効果が得られない場合がある。アルコール化合物(B)の水酸基価は、25〜550mgKOH/gが好ましく、100〜530mgKOH/gがより好ましい。水酸基価は、JIS K 1557−1(プラスチック−ポリウレタン原料ポリオール試験方法−第1部:水酸基価の求め方)に記載の方法により測定することができる。
【0027】
本発明のアルコール化合物(B)の水酸基数が5よりも大きい場合には、十分な自己修復効果が得られない場合がある。アルコール化合物(B)の水酸基数は、1〜4が好ましく、1.2〜3.5が更に好ましい。
【0028】
アルコール化合物(B)のアルコール化合物は、重量平均分子量100〜5000、水酸基価が20〜600mgKOH/g、水酸基数が1〜5であれば、その構造は限定されず、脂肪族アルコール化合物、脂環式アルコール化合物、エーテル基を有するアルコール化合物、芳香環を有するアルコール化合物、エステル基を有するアルコール化合物、カーボネート基を有するアルコール化合物等の種々の構造のアルコール化合物が使用できるが、自己修復効果の点から、エーテル基を有するアルコール化合物が好ましく、水酸基数が1〜5の脂肪族アルコール化合物のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物が更に好ましい。
【0029】
水酸基数が1〜5の脂肪族アルコール化合物のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物に使用される水酸基数が1〜5の脂肪族アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール等の脂肪族モノオール化合物;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオール化合物;ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール等の脂肪族テトラオール化合物;ペンタンペンタオール等の脂肪族ペンタオール化合物等が挙げられる。
【0030】
水酸基数が1〜5の脂肪族アルコール化合物のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物は、プロピレンオキシド付加物であることが好ましく、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の場合は、プロピレンオキシド由来のユニットの割合が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。エチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の場合は、エチレンオキシド由来のユニットとプロピレンオキシド由来のユニットは、ブロック状に連結していてもよいし、ランダム状に連結していてもよい。
【0031】
アルコール化合物(B)は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。2種以上を組合わせて使用する場合、重量平均分子量、水酸基価及び水酸基数は、アルコール化合物(B)を構成するアルコール化合物の平均値である。アルコール化合物(B)が2種以上の組合せである場合には、水酸基数が1〜5のアルコール化合物の組合せであることが好ましく、水酸基数が1〜3のアルコール化合物の組合せであることが更に好ましい。
【0032】
イソシアネート(A)とアルコール化合物(B)を反応する場合の反応比は、自己修復効果の点から、水酸基に対するイソシアネート基のモル比(以下、NCOインデックスという)が0.4〜1.1となる比であることが好ましく、0.45〜1.05であることがより好ましく、0.8〜1.05であることが更に好ましく、0.95〜1.0であることが最も好ましい。
【0033】
イソシアネート(A)とアルコール化合物(B)を反応では、反応進行による粘度上昇によりハンドリング性が低下したり、異常反応によりゲル物が発生する場合があることから、反応溶媒を使用することが好ましい。一方、反応溶媒があまりにも多い場合には、反応の進行が遅くなると共に、工業的な製造効率が低下することから、反応溶媒の量は、反応終了後の固形分が、20〜40質量%になる量であることが好ましい。反応溶媒としては、ウレタン化反応に一般的に使用される有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル系溶媒;ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。反応溶媒は、相溶性、重合反応性、沸点等を考慮して適宜選択され、必要に応じて1種又は2種以上を選択し使用してもよい。
【0034】
イソシアネート(A)とアルコール化合物(B)の反応物を製造する方法は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。具体例としては、アルコール化合物(B)と溶剤、必要に応じてウレタン化触媒を仕込み、均一になるまで撹拌した後、イソシアネート(A)を添加し、所定の温度まで昇温し、ウレタン化反応が完結するまで撹拌を続ける。反応の完結は、赤外分光光度計(IR)を用いてイソシアネート基由来の吸収の有無により判断できる。なお、NCOインデックスが1.0よりも大きく、イソシアネート基が過剰である場合には、イソシアネート基由来の吸収強度が減少しなくなってから、エタノール等の低級モノアルコールを添加して、過剰のイソシアネート基を減少させてもよい。
【0035】
イソシアネート(A)とアルコール化合物(B)の反応物は、粘度が低下し、塗料に配合しやすくなることから、有機溶媒に希釈されていることが好ましい。希釈溶媒は、前記反応溶媒と同一でも異なってもよく、希釈溶媒と反応溶媒と同一の場合は、反応溶媒を除去せずにそのまま希釈溶媒としてもよい。希釈溶媒と反応溶媒が異なる場合は、公知の方法により、溶媒を置換すればよい。希釈溶媒の量は、粘度が低下し、塗料に配合しやすくなることから、本発明の塗料用添加剤組成物の固形分量が10〜50質量%となる量であることが好ましく、20〜40質量%となる量であることが更に好ましい。
【0036】
アロファネート基含有ポリイソシアネート(A)とアルコール化合物(B)との反応によって得られるポリウレタン化合物の重量平均分子量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常、1000〜50000であり、1500〜35000が好ましく、2000〜25000がより好ましい。
【0037】
本発明の塗料用添加剤組成物は、種々の塗料に配合することにより、塗膜の自己修復性を付与又は向上させることができる。また、透明性にも優れていることから、塗膜の透明性を低下させることもない。このため、クリア塗料用の添加剤組成物として有用であり、特に、塗装の最上部形成されるクリアコート用のクリア塗料用の添加剤組成物として有用である。
【0038】
本発明の塗料用添加剤組成物の塗料への添加量は、所望の効果を奏する限り特に限定されないが、あまりにも少ない場合には十分な添加効果が得られず、またあまりにも多い場合は、塗膜の物性に悪影響がでる場合があることから、塗料組成物の固形分100質量部に対して、本発明の塗料用添加剤組成物の固形分が0.03〜15質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.2〜7質量部であることが更に好ましく、0.7〜5質量部であることが最も好ましい。
【0039】
本発明の塗料用添加剤組成物が使用できる塗料用の樹脂としては、塗料のベース樹脂として従来使用されている樹脂であれば特に制限されず、種々の樹脂の塗料に配合することが可能であり、塗膜の透明性を低下させることなく自己修復性を向上させることができる。本発明の塗料用添加剤組成物が使用できる塗料用のベース樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、クマロン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ニトリルブタジエン樹脂、石油樹脂、ロジン、乾性油、ボイル油、アセチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられ、中でも、本発明の塗料用添加剤組成物により、高い自己修復性の向上効果が得られることから、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂が好ましく、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂が更に好ましい。ベース樹脂は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよく、2種以上を組合わせて用いる場合には、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の含有量が、ベース樹脂の全量100質量部に対して、少なくとも60質量部であることが好ましく、少なくとも80質量部であることが更に好ましい。一般に、アクリルウレタン樹脂やウレタン樹脂の塗膜は、凹みや傷の自己修復性を有しているとされているが、本発明の塗料用添加剤組成物を配合することにより、自己修復性を更に向上させることができる。
【0040】
本発明の塗料用添加剤組成物を塗料に配合する場合、その調製方法は特に制限されないが、塗料用樹脂に本発明の塗料用添加剤組成物をあらかじめ添加し均一分散させたものを塗料に配合してもよく、各種添加剤や溶剤、塗料用樹脂と共に、塗料を配合する際に一緒に添加・混合してもよい。本発明の塗料用添加剤組成物の塗料への分散が不十分な場合には、本発明の効果を十分に発揮できない場合がある。本発明の塗料用添加剤組成物を添加する塗料が、二液型塗料(主剤と硬化剤を使用直前に混合して使用する塗料)の場合には、本発明の塗料用添加剤組成物は主剤に配合することが好ましい。
【0041】
本発明の塗料用添加剤組成物が配合された塗料組成物は、塗料に通常使用される塗料添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、染料、顔料、可塑剤、触媒、防かび剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤、艶消し剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0042】
本発明の塗料用添加剤組成物を含有する塗料組成物により得られる塗膜は、塗膜の凹みや傷の自己修復性に優れており、クリア塗料の場合には自動車等の塗装のクリアコート用塗料として有用である。このほか、本発明の塗料用添加剤組成物を含有する塗料組成物は金属製品やプラスチック製品の塗料、壁面塗料等として有用である。
【0043】
本発明の塗料用添加剤組成物を含有する塗料組成物により得られる塗膜は、塗膜の凹みや傷の自己修復性に優れるが、常温では修復にやや時間を要する場合がある。凹みや傷の自己修復時間を短縮する場合は、塗膜の凹みや傷が付いた箇所を、30〜90℃に加熱することが好ましく50〜70℃に加熱することが更に好ましい。
【実施例】
【0044】
以下本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。尚、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。
本実施例において、各化合物の重量平均分子量、イソシアネート基含有率、水酸基価、粘度等の測定条件若しくは測定方法は以下の通りである。
【0045】
重量平均分子量測定条件
GPC装置:Waters ACQUITY UPLC(Waters Corporation社製)
カラム:ACQUITY APC XT 45,1.7μm,4.6×150mm
ACQUITY APC XT 125,2.5μm,4.6×150mm
ACQUITY APC XT 450,2.5μm,4.6×150mm
検出器:RI検出器
流量:0.8ml/min
サンプル濃度:5mg/10ml(THF溶液)
注入量:10μl
カラム温度:45℃
標準サンプル:ポリスチレン
【0046】
イソシアネート基含有率(質量%)測定方法
1.5gの試料を三角フラスコに精秤し、トルエンを10ml加え、溶解する。ホールピペットにて1N ジn−ブチルアミン−トルエン溶液を15ml加え軽く振り混ぜ溶解した後、20分間25℃にて放置する。メタノールを10ml、BTB指示薬を3〜4滴加え、N/2の塩酸−メタノール溶液にて滴定し、イソシアネート基含有率(質量%)を算出した。
【0047】
水酸基価測定方法
5.0gの試料を三角フラスコに精秤し、ホールピペットにて0.95mol/lの無水フタル酸のピリジン溶液を25ml加える。100℃で熱しながら約2時間加熱反応させ(時々振り混ぜる)、25℃まで冷却後、フェノールフタレインのピリジン溶液を指示薬として加え、0.5mol/lの水酸化ナトリウム溶液にて滴定し、水酸基価を算出した。
【0048】
粘度測定条件
測定機器:B8H型粘度計(東京計器株式会社製)
使用ローター:No.1
回転数:12rpm
測定温度:25℃
【0049】
塗料用添加剤組成物の製造
塗料用添加剤組成物の原料は以下の通りである。
< イソシアネート(A)>
化合物A:重量平均分子量1700、イソシアネート基含有率16.4質量%のアロファネート基含有ポリイソシアネート(製品名:コロネート2793、日本ポリウレタン工業株式会社製)、なお、25℃の粘度は2100 mPa・s、数平均分子量は1350、平均NCO官能基数は5であった。
【0050】
< アロファネート基を含有しないイソシアネート化合物 >
化合物B:ヘキサメチレンジイソシアネート
化合物C:ヘキサメチレンジイソシアヌレート
【0051】
< アルコール化合物(B) >
化合物D:下記一般式(1)で表される、重量平均分子量400、水酸基価268mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(1)のn=7)
化合物E:下記一般式(1)で表される、重量平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(1)のn=51)
【0052】
【化1】
【0053】
化合物F:下記一般式(2)で表される、重量平均分子量300、水酸基価510mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(2)のs+l+t=4)
化合物G:下記一般式(2)で表される、重量平均分子量4000、水酸基価43mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(2)のs+l+t=67)
【0054】
【化2】
【0055】
化合物H:下記一般式(3)で表される、重量平均分子量1100、水酸基価99mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(3)のo+q=3、p=17)
化合物I:下記一般式(3)で表される、重量平均分子量2300、水酸基価49mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(3)のo+q=5、p=35)
【0056】
【化3】
【0057】
化合物J:下記一般式(4)で表される、重量平均分子量170、水酸基価332mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(4)のr=2)
化合物K:下記一般式(4)で表される、重量平均分子量2300、水酸基価25mgKOH/gのアルコール化合物(一般式(4)のr=38)
【0058】
【化4】
【0059】
上記原料を用い、表1に示す量を用いて、下記の製造手順により、実施例1〜14及び比較例16〜20の塗料用添加剤組成物を製造した。NCOインデックス及び各反応によって得られた生成物(ウレタン化合物)の重量平均分子量を表1に示す。
【0060】
( 塗料用添加剤組成物の製造手順 )
反応フラスコにアルコール化合物(B)と、溶媒として酢酸ブチルを仕込み、常温にて撹拌し均一溶液にした。そこに、イソシアネート(A)若しくはアロファネート基を含有しないイソシアネート化合物を添加し、再度常温にて撹拌し均一溶媒にした後に、窒素雰囲気下にて75℃に昇温し、70〜80℃で2時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応が終了は、赤外分光光度計を用い、イソシアネート基由来の吸収が消失により判断し、反応が終了していない場合は、イソシアネート基由来の吸収が消失するまで70〜80℃で撹拌を続けた。ウレタン化反応後、反応組成物をろ過し、固形分30質量%となるように溶媒により調整して、目的とする塗料用添加剤組成物を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
評価用塗膜の調製
市販品の補修用塗料であるRETAN PG ECO(2液型塗料;主剤アクリル樹脂、硬化剤イソシアネート化合物、関西ペイント株式会社製、固形分40質量%。以下塗料Aという)又はRETAN PG MULTI(2液型塗料;主剤アクリル樹脂、硬化剤イソシアネート化合物、関西ペイント株式会社製、固形分38質量%。以下塗料Bという)に、実施例又は比較例の塗料用添加剤組成物を添加して塗料組成物を調製し、塗料組成物を、黒色の電着塗装板または透明なガラス板上にアプリケーターを用いて10mil(約0.254mm)の厚さで塗布し、25℃にて10分養生した後、70℃で1時間焼き付けを行い、更に25℃にて一日以上養生したものを評価に用いた。なお、自己修復性の評価では電着塗装板上に形成した塗膜、透明性の評価ではガラス板状に形成した塗膜を用いた。
なお、塗料Aは、塗膜の傷の自己修復性が高い塗料であり、塗料Bは塗膜の傷の自己修復性が低い塗料である。
【0063】
自己修復性の評価方法
荷重変動型摩耗・摩擦試験機(型番:HHS−2000、新東科学株式会社製)にて、作製した塗膜にスチールウールで傷を付けた。擦傷条件は、荷重500g、往復回数10回、移動速度10mm/sec、作動幅40mmであった。光沢計(型番:VG7000、日本電色工業株式会社製)を用いて塗膜の20°グロスを測定する。グロスは、傷を付ける前、傷を付けた直後、50℃又は70℃に加温(それぞれ2分後、5分後、15分後の3回測定)し、傷を付ける前のグロスの値に対する、傷を付けた後の値の百分率をグロスの戻り率とする。グロスとは、鏡面光沢度のことであり、規定された入射角に対して、試料面からの鏡面反射光束を測定した値である。数値が高い方が光沢を持つことを示し、傷がない平滑な塗膜は高い値を、傷がついた塗膜は低い数値を示すことから、グロスの戻り率が高いほど、自己修復性が高いことを示す。
グロスの戻り率(%)=100×(擦傷後のグロス)/(擦傷前のグロス)
【0064】
透明性の評価方法
Haze metor(型番:NPH2000、日本電色株式会社製)にて、作製した塗膜の垂直方向の全光線透過率を測定し、以下の基準で透明性を評価した。塗膜の垂直方向の全光線透過率は、塗膜を通して光がどの程度透過するかを示した数値であることから、数値が高い程、より光を透過する透明な塗膜と言える。本測定において全光線透過率が80%未満の塗膜は、透明性が低くオーバーコーティング用の塗膜としては適さないものと考えられる。
◎:透過率85%以上であり、透明性が非常に良好。
○:透過率80%以上〜85%未満であり、透明性が良好。
×:透過率80%未満であり、透明性が不良。
【0065】
評価結果
塗料Aに実施例1〜14又は比較例1〜6の塗料用添加剤組成物を2質量%、実施例1、3、7、9の塗料用添加剤組成物を1質量%添加した塗料組成物、並びに塗料Aにより得られた塗膜についてのグロスの戻り率の結果を、表2に示す。本発明の塗料用添加剤組成物を用いた塗膜は、比較例に比べ、何れも加熱後のグロスの戻り率が大きく、塗膜の傷の自己修復性の向上効果が大きいことが分かる。グロスの戻り率は50℃で加熱した場合が大きく、塗膜の傷の自己修復性の向上効果が大きいことが分かる。
【0066】
NCOインデックス0.5で反応させた実施例1〜6に比べて、NCOインデックス1.0で反応させた実施例7〜14の方が、グロスの戻り率が大きく、塗膜の傷の自己修復性の向上効果が大きい。
【0067】
実施例1、3、7、9の塗料用添加剤組成物を1質量%添加したものは、2質量%添加したものに比べて、塗膜の傷の自己修復性の向上効果がやや低いが、比較例7(塗料Aのみ)よりも高く、本発明の塗料用添加剤組成物の添加量が1質量%であっても、自己修復性の向上効果を付与できることわかる。
【0068】
【表2】
【0069】
塗料Bに実施例7、9又は比較例5、6の塗料用添加剤組成物を5質量%、実施例7、9の塗料用添加剤組成物を1質量%添加した塗料組成物、並びに塗料Bにより得られた塗膜についてのグロスの戻り率の結果を、表3に示す。本発明の塗料用添加剤組成物を用いた塗膜は、比較例に比べ、何れも加熱後のグロスの戻り率が大きく、塗膜の傷の自己修復性の向上効果が大きく、特に70℃で加熱した場合が大きい。
【0070】
実施例7、9の塗料用添加剤組成物を1質量%添加したものは、5質量%添加したものに比べて、塗膜の傷の自己修復性の向上効果がやや低いが、比較例7(塗料Bのみ)よりも優れており、本発明の塗料用添加剤組成物の添加量が1質量%であっても、自己修復性の向上効果を付与できることわかる。
【0071】
【表3】
【0072】
塗料Aに実施例1〜14又は比較例1〜6の塗料用添加剤組成物を1質量%又は2質量%添加した塗料組成物、並びに塗料Aにより得られた塗膜についての透過率と透明性の評価結果を表4に示す。本発明の塗料用添加剤組成物を添加したものは何れも、透過率80%以上であり、透明性が良好であることが分かる。
【0073】
【表4】
【0074】
塗料Bに実施例7、9又は比較例5、6の塗料用添加剤組成物を5質量%、並びに塗料Bにより得られた塗膜についての透過率と透明性の評価結果を表5に示す。本発明の塗料用添加剤組成物を添加したものは何れも、透過率85%以上であり、透明性が良好であることが分かる。
【0075】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の塗料用添加剤組成物は、塗膜の透明性を良好に保ちつつ、更に、塗膜に傷が付いた際、その傷を自己修復させる機能を付与する優れた添加剤である。既存の塗料には樹脂自体に自己修復効果を持つものも存在するが、本発明品はそういった塗料の自己修復性能をも向上もしくは促進させる効果を持つ。本発明の塗料用添加剤組成物は、自動車製品のトップコート用の塗料用添加剤としてだけではなく、プラスチック製品等のクリアコート等の用途にも転用でき、非常に広い分野で使用可能であることから非常に有用である。