(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前胴回り域と、後胴回り域と、前記前後胴回り域の間に位置する股間域とを有し、前記股間域から前後胴回り域へ延び出す縦長の吸収構造体を備える使い捨ておむつであって、
  前記吸収構造体は、吸収体と、前記吸収体の両側縁から前記吸収体の幅方向両外側に延び出す一対の延出部とを備え、
  前記延出部はシート材の積層体で形成されるとともに、前記吸収体の側縁から幅方向に離間して縦方向に延びる遠位縁と、前記吸収体の側縁と前記遠位縁との間に位置して縦方向に延びるカフ分岐線と、前記カフ分岐線と前記遠位縁との間に延在するレッグギャザー部と、前記カフ分岐線から分岐して前記レッグギャザー部と交差する方向に延び出す防漏カフ部とを備え、
  前記レッグギャザー部は、前記幅方向において互いに間隔を空けて前記縦方向へ延びる複数条のレッグ弾性部材を有し、
  前記防漏カフ部は、前記カフ分岐線から幅方向に離間並行して前記縦方向に延びる自由縁を有し、
  前記カフ分岐線から前記遠位縁までの距離の方が、前記カフ分岐線から前記自由縁までの距離よりも大きく、
  前記レッグギャザー部に含まれるシート材の層数の方が、前記防漏カフ部に含まれるシート材の層数より多く、
  1本の前記レッグ弾性部材が、前記延出部において前記カフ分岐線と重なって位置することを特徴とする使い捨ておむつ。
  前記防漏カフ部から前記レッグギャザー部に延び出す少なくとも1層の前記シート材が、前記レッグギャザー部に含まれるシート材に接着または溶着される、請求項4に記載の使い捨ておむつ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  しかし、特許文献1に開示された使い捨ておむつでは、着用者の鼠蹊部にフィットすることにより防漏カフとして機能するサイドフラップの自由部分の長さの方が、着用者の脚回りにフィットすることによりレッグギャザーとして機能する固定部分の長さより大きくなっている。このため、使い捨ておむつの使用時に、サイドフラップの自由部分が着用者の脚によっておむつの外に引きずり出され、防漏カフとして十分機能しないおそれがある。また、レッグギャザーとして機能する固定部分に配置された糸状の弾性部材の本数が少ないため、おむつの使用時に固定部分が幅方向に蛇腹状に縮んでしまい、着用者の脚回りに適正にフィットしないおそれがある。
【0006】
  以上に鑑み、本発明は、フィット性が改良された使い捨ておむつを提供することを課題とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  本発明は、前胴回り域と、後胴回り域と、前後胴回り域の間に位置する股間域とを有し、股間域から前後胴回り域へ延び出す縦長の吸収構造体を備える使い捨ておむつに関する。
【0008】
  第1発明の使い捨ておむつは、吸収構造体は、吸収体と、吸収体の両側縁から吸収体の幅方向両外側に延び出す一対の延出部とを備え、延出部はシート材の積層体で形成されるとともに、吸収体の側縁から幅方向に離間して縦方向に延びる遠位縁と、吸収体の側縁と遠位縁との間に位置して縦方向に延びるカフ分岐線と、カフ分岐線と遠位縁との間に延在するレッグギャザー部と、カフ分岐線から分岐してレッグギャザー部と交差する方向に延び出す防漏カフ部とを備え、
レッグギャザー部は、幅方向において互いに間隔を空けて縦方向へ延びる複数条のレッグ弾性部材を有し、防漏カフ部は、カフ分岐線から
前記幅方向に離間並行して
前記縦方向に延びる自由縁を有し、カフ分岐線から遠位縁までの距離の方が、カフ分岐線から自由縁までの距離よりも大きく、レッグギャザー部に含まれるシート材の層数の方が、防漏カフ部に含まれるシート材の層数より多
く、1本の前記レッグ弾性部材が、延出部においてカフ分岐線と重なって位置することを特徴とする。
  
第2発明の使い捨ておむつは、吸収構造体は、吸収体と、吸収体の両側縁から吸収体の幅方向両外側に延び出す一対の延出部とを備え、延出部はシート材の積層体で形成されるとともに、吸収体の側縁から幅方向に離間して縦方向に延びる遠位縁と、吸収体の側縁と遠位縁との間に位置して縦方向に延びるカフ分岐線と、カフ分岐線と遠位縁との間に延在するレッグギャザー部と、カフ分岐線から分岐してレッグギャザー部と交差する方向に延び出す防漏カフ部とを備え、防漏カフ部は、カフ分岐線から前記幅方向に離間並行して前記縦方向に延びる自由縁を有し、カフ分岐線から遠位縁までの距離の方が、カフ分岐線から自由縁までの距離よりも大きく、レッグギャザー部に含まれるシート材の層数の方が、防漏カフ部に含まれるシート材の層数より多く、防漏カフ部がレッグギャザー部と別体に設けられ、防漏カフ部は、2層のシート材と、2層のシート材の間に縦方向に伸長された状態で接合される少なくとも1条のカフ弾性部材を備え、防漏カフ部に含まれる2層のシート材の内の少なくとも1層がレッグギャザー部に延び出してレッグギャザー部に含まれることを特徴とする。
【0009】
  請求項2に係る発明では、レッグギャザー部に3層以上のシート材が含まれ、3層以上のシート材が、接着または溶着により接合される。この実施形態では、レッグギャザー部に3層以上のシート材が含まれることにより、レッグギャザー部の剛性が高くなって幅方向に蛇腹状に収縮することが抑制される結果、レッグギャザー部が着用者の脚に幅広くぴったり面でフィットする。
  請求項3に係る発明では、レッグギャザー部が、少なくとも3層のシート材と、少なくとも3層のシート材のうち互いに隣接する2層のシート材の間に縦方向に伸長された状態で接合される少なくとも4本のレッグ弾性部材とを備え、幅方向におけるレッグ弾性部材の間隔が6mm以下である。この実施形態では、レッグギャザー部に少なくとも4本のレッグ弾性部材が6mm以下の間隔で配置されていることにより、レッグギャザー部が幅方向に蛇腹状に収縮することが抑制される結果、レッグギャザー部が着用者の脚に幅広くぴったり面でフィットする。
  請求項4に係る発明では、防漏カフ部がレッグギャザー部と別体に設けられ、防漏カフ部は、2層のシート材と、2層のシート材の間に縦方向に伸長された状態で接合される少なくとも1条のカフ弾性部材を備え、防漏カフ部に含まれる2層のシート材の内の少なくとも1層がレッグギャザー部に延び出してレッグギャザー部に含まれる。この実施形態では、防漏カフ部に含まれる2層のシート材の内の少なくとも1層がレッグギャザー部に含まれることにより、レッグギャザー部の剛性が向上して幅方向に蛇腹状に収縮することが抑制される結果、レッグギャザー部が着用者の脚に幅広くぴったり面でフィットする。
  請求項5に係る発明では、防漏カフ部からレッグギャザー部に延び出す少なくとも1層のシート材が、レッグギャザー部に含まれるシート材に接着または溶着される。この実施形態では、防漏カフ部からレッグギャザー部に延び出す少なくとも1層のシート材がレッグギャザー部に接着または溶着されることにより、レッグギャザー部の剛性がさらに向上して幅方向に蛇腹状に収縮することが抑制される結果、レッグギャザー部が着用者の脚に幅広くぴったり面でフィットする。
  請求項6に係る発明では、吸収構造体の幅方向において、防漏カフ部からレッグギャザー部に延び出す少なくとも1層のシート材と、レッグギャザー部とが重なり合う領域の幅が、カフ分岐線から遠位縁までの距離の少なくとも80%である。この実施形態では、防漏カフ部からレッグギャザー部に延び出すシート材が、レッグギャザー部の少なくとも80%に重なることにより、レッグギャザー部の剛性がさらに向上して幅方向に蛇腹状に収縮することが抑制される結果、レッグギャザー部が着用者の脚に幅広くぴったり面でフィットする。
  請求項7に係る発明では、カフ分岐線において、防漏カフ部とレッグギャザー部とがホットメルト接着剤により接合されている。これにより、おむつの使用時に防漏カフ部が着用者の鼠蹊部にフィットし、さらにレッグギャザー部が着用者の脚に幅広くぴったり面でフィットする。
  請求項8に係る発明では、吸収構造体の縦方向両端部に位置する前端領域と後端領域がそれぞれ前胴回り域と後胴回り域に固定され、レッグギャザー部のうち前端領域及び後端領域に位置する部分が、吸収構造体の幅方向外側向きで前胴回り域及び後胴回り域に対し固定され、防漏カフ部のうち前端領域及び後端領域に位置する部分が、吸収構造体の幅方向内側向きで前胴回り域及び後胴回り域に対し固定される。このようにレッグギャザー部が外向きに固定され、防漏カフ部が内向きに固定されていることにより、防漏カフ部がレッグギャザー部を乗り越えてレッグギャザー部の外へ飛び出すことをより確実に防ぐことができる。
 
【発明の効果】
【0010】
  本発明では、カフ分岐線から遠位縁までの距離の方が、カフ分岐線から自由縁までの距離よりも大きいので、おむつの使用時に防漏カフ部が着用者の脚によっておむつの外に引きずり出されることが防止され、さらに、レッグギャザー部に含まれるシート材の層数の方が、防漏カフ部に含まれるシート材の層数より多いので、レッグギャザー部が幅方向に蛇腹状に収縮することが抑制される。これにより、フィット性が改良された使い捨ておむつが提供される。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0012】
  下記の実施の形態は、本発明の使い捨ておむつ10(以下、おむつ10と記す)に関し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい構成を含む。
 
【0013】
  図1〜3を参照すると、おむつ10は、前胴回り域11と、後胴回り域12と、前後胴回り域11,12の間に位置する股間域13とを有し、股間域13から前後胴回り域11,12へ延び出す縦長の吸収構造体21を備える。
図2,3に示すように、吸収構造体21は、吸収体22と、吸収体22の両側縁23,23から吸収体22の幅方向X両外側に延び出す一対の延出部31とを備える。なお、本願では、おむつ10の幅方向Xに直交する方向を縦方向Yと呼ぶ。
 
【0014】
  本実施形態では、前胴回り域11と、後胴回り域12はそれぞれ、前ウエストパネル14と後ウエストパネル15で形成される。前ウエストパネル14と後ウエストパネル15はいずれも、内面シート16と外面シート17との間に、複数本のウエスト弾性糸18が幅方向Xに伸長された状態で接合された矩形のシート部材である。前ウエストパネル14と後ウエストパネル15それぞれの幅方向X中央部には、矩形の吸収構造体21の縦方向Y両端部に位置する前端領域24と後端領域26が固定される。股間域13は、吸収構造体21の前端領域24と後端領域26の間に位置する中間領域25により形成される。
 
【0015】
  前ウエストパネル14と後ウエストパネル15は、それぞれの幅方向X両側に位置して縦方向Yに延びるシーム域64において、接着または溶着により接合される。これにより、ウエスト開口62と、一対のレッグ開口63が形成され、
図1に示すパンツ型(プルオンタイプとも呼ばれる)のおむつ10が得られる。詳しくは、ウエスト開口62は前後ウエストパネル14,15の上辺14a,15aにより形成され、レッグ開口63は前後ウエストパネル14,15の下辺14b,15bのうち吸収構造体21の幅方向X外側に位置する部分と、吸収構造体21の中間領域25の側縁部27とにより形成される。
 
【0016】
  前後ウエストパネル14,15を形成する内面シート16と外面シート17には、本発明が属する技術分野で公知の不織布または樹脂フィルムを用いることができる。また、ウエスト弾性糸18には、公知の弾性糸を用いることができ、例えばポリウレタン系の弾性糸を用いることができる。内外面シート16,17にウエスト弾性糸18を接着により接合する際には、本発明が属する技術分野で公知のホットメルト接着剤を用いることができる。また、吸収構造体21に配置される吸収体22には、公知のおむつ用の吸収体22を用いることができ、例えば高吸収性ポリマー及びフラッフパルプ(図示せず)の少なくとも一方が含まれる吸収コア65を、ティッシュペーパ等の透液性シート69で包んだ吸収体22を用いることができる。
 
【0017】
  本実施形態の吸収構造体21は、着用者の肌に対向する肌対向面と、その反対側の非肌対向面とを有し、吸収体22と、吸収体22の肌対向面側に位置するトップシート66と、吸収体22の非肌対向面側に位置して吸収体22の幅方向X両外側に延び出す外装複合シート28と、吸収体22の幅方向X両外側に配置されるとともに外装複合シート28の肌対向面に接合される一対の肌側複合シート29とを備える。すなわち、吸収体22の両側縁23,23から吸収体22の幅方向X両外側に延び出す一対の延出部31は、外装複合シート28の吸収体22の幅方向X両外側に延び出す部分と、一対の肌側複合シート29とが含まれる、シート材の積層体である。
 
【0018】
  延出部31は、吸収体22の側縁23から幅方向Xに離間して縦方向Yに延びる遠位縁32と、吸収体22の側縁23と遠位縁32との間に位置して縦方向Yに延びるカフ分岐線33と、カフ分岐線33と遠位縁32との間に延在するレッグギャザー部41と、カフ分岐線33から分岐してレッグギャザー部41と交差する方向に延び出す防漏カフ部51とを備える。防漏カフ部51は、カフ分岐線33から幅方向Xに離間並行して縦方向Yに延びる自由縁52を有する。なお、
図2,3ではカフ分岐線33を一点鎖線で表している。
 
【0019】
  外装複合シート28には、吸収体22の非肌対向面に配置され吸収体22の幅方向X外側に延出する矩形の防漏フィルム67と、防漏フィルム67の非肌対向面に配置され吸収体22の幅方向X外側に延出する矩形のバックシート68とが含まれる。防漏フィルム67の幅方向X寸法は、吸収構造体21の幅方向X寸法と同じか、わずかに小さい。バックシート68の幅方向X寸法は、防漏フィルム67の幅方向X寸法より大きい。バックシート68において、防漏フィルム67から幅方向X両外側に延出する部分は、防漏フィルム67の側縁67aに沿って折り返され、防漏フィルム67の肌対向面に接合される。バックシート68を防漏フィルム67の側縁67aに沿って折り返したときの折返し線が、延出部31の遠位縁32に相当する。
 
【0020】
  折り返されたバックシート68において、縦方向Yに延びるバックシート68の両側縁末端部分68aは、吸収体22の非肌対向面まで延在して吸収体22と防漏フィルム67との間に固定されている。また、防漏フィルム67と、折り返されたバックシート68との間には、複数条のレッグ弾性部材42が、縦方向Yに伸長された状態で接合されている。複数本のレッグ弾性部材42の伸長倍率は、互いに等しいか、または、幅方向Xにおいてカフ分岐線33から遠位縁32に向かうに従いレッグ弾性部材42の伸長倍率が低くなる。レッグ弾性部材42は、吸収構造体21の中間領域25に配置されるとともに前端領域24と後端領域26に延び出す。レッグ弾性部材42の両端は、ホットメルト接着剤により吸収構造体21の前端領域24と後端領域26に固定されている。防漏フィルム67及びバックシート68は公知のシート材を用いて形成することができる。例えば、防漏フィルム67はプラスチックフィルムを用いて形成することができ、バックシート68は不織布を用いて形成することができる。
 
【0021】
  一対の肌側複合シート29のそれぞれは、縦長の不織布片75と、少なくとも1条のカフ弾性部材53とを備える。不織布片75の縦方向寸法は、吸収構造体21の縦方向寸法と同じであるか、または小さい。カフ弾性部材53は、不織布片75を折返線Fに沿って折り返した内側に、縦方向に伸長された状態で折返線Fに隣接して接合される。すなわち、本実施形態の肌側複合シート29では、カフ弾性部材53は2層のシート材の間に接合されている。また、折返線Fは、防漏カフ部51の自由縁52に相当する。
 
【0022】
  肌側複合シート29は、吸収体22の側縁23から幅方向X両側に延出しているバックシート68の肌対向面側のそれぞれに接合される。より詳しくは、肌側複合シート29は、折返線Fに並行して縦方向Yに延びる外側縁部29cを有し、肌側複合シート29の外側縁部29cと折返線Fとの間において外側縁部29c寄りに位置する領域が、バックシート68の肌対向面側に接合される。さらに、肌側複合シート29の縦方向両端部分29a,29bも、バックシート68の肌対向面側に接合される。これにより、肌側複合シート29においてバックシート68に接合されていない部分が防漏カフ部51として機能する。肌側複合シート29とバックシート68との接合は、ホットメルト接着剤(図示せず)を用いて行うことが好ましい。しかし、肌側複合シート29とバックシート68とを、溶着により接合することもできる。なお、肌側複合シート29は、吸収体22のトップシート66には接合されていない。
 
【0023】
  バックシート68に接合されたとき、肌側複合シート29の外側縁部29cは、バックシート68の折返し線、すなわち延出部31の遠位縁32にほぼ一致するか、または延出部31の遠位縁32から離れている。バックシート68に接合された肌側複合シート29において、バックシート68に接合された部分と、接合されていない部分との境界線が、縦方向Yに延びるカフ分岐線33となり、カフ分岐線33から折返線F、すなわち防漏カフ部51の自由縁52に至る領域が防漏カフ部51となる。一方、肌側複合シート29においてカフ分岐線33から延出部31の遠位縁32に至る領域は、レッグギャザー部41に含まれる。本発明では、カフ分岐線33から遠位縁32までの距離L1の方が、カフ分岐線33から自由縁52までの距離L2よりも大きい。また以上の説明から明らかなように、本実施形態では、防漏カフ部51がレッグギャザー部41と別体に設けられており、カフ分岐線33において、防漏カフ部51とレッグギャザー部41とが、溶着又は接着により接合されている。
 
【0024】
  図1を参照して、おむつ10の使用時には、防漏カフ部51の自由縁52に隣接して接合されたカフ弾性部材53が収縮することにより、防漏カフ部51はカフ分岐線33を基端として吸収体22に対し起立した状態となって着用者の鼠蹊部にフィットするとともに、排泄物がおむつ10の外に漏出することを防止する。
図2に示すように、本実施形態では、カフ分岐線33から遠位縁32までの距離L1の方が、カフ分岐線33から自由縁52までの距離L2よりも大きいので、おむつ10の使用時に、防漏カフ部51が着用者の脚によってレッグギャザー部41を越えておむつ10の外に引きずり出されることが防止される。好ましくは、カフ分岐線33から自由縁52までの距離L2は、カフ分岐線33から遠位縁32までの距離L1の50%〜90%である。さらに、本実施形態では、吸収構造体21の縦方向Y両端部に位置する前端領域24と後端領域26がそれぞれ前胴回り域11と後胴回り域12に固定されており、レッグギャザー部41のうち前端領域24及び後端領域26に位置する部分が、吸収構造体21の幅方向X外側向きで前胴回り域11及び後胴回り域12に対し固定されている。また、防漏カフ部51のうち前端領域24及び後端領域26に位置する部分が、吸収構造体21の幅方向X内側向きで前胴回り域11及び後胴回り域12に対し固定されている。このように、レッグギャザー部41が幅方向X外向きに固定され、防漏カフ部51が幅方向X内向きに固定されていることにより、防漏カフ部51がレッグギャザー部41を乗り越えておむつ10の外に引きずり出されることをより確実に防ぐことができる。防漏カフ部51がおむつ10の外に引きずり出された状態では、レッグギャザー部41の防漏機能が十分に発現されないため、防漏カフ部51がおむつ10の外に引きずり出されることを防止することが好ましい。また、防漏カフ部51がおむつ10の外に引きずり出されることを防止すれば、防漏カフ部51とレッグギャザー部41とが協働して二重の防漏機能が発現される。したがって、防漏カフ部51の機能が損なわれることが無い。
 
【0025】
  図1に示すように、レッグギャザー部41は、おむつ10の外側に向けて筒状に突き出す。これにより、レッグギャザー部41が着用者の脚回りに幅広くぴったり面でフィットする。また、
図4に示すように、本実施形態ではレッグギャザー部41に少なくとも4層のシート部材が含まれている一方、防漏カフ部51は2層のシート部材が含まれている。このようにレッグギャザー部41に含まれるシート材の層数の方が、防漏カフ部51に含まれるシート材の層数より多いことにより、レッグギャザー部41の剛性が相対的に高くなって、おむつ10の外側に筒状に突き出すレッグギャザー部41が幅方向Xに蛇腹状に収縮することが抑制される。したがって、着用者が脚を動かしたときでも、レッグギャザー部41と着用者の脚の間に隙間ができにくく、排泄物の漏出が防止される。さらに、レッグギャザー部41が幅方向Xに蛇腹状に収縮することが抑制されることにより、着用者の脚にギャザー跡がつくことを抑制できる。なお、本発明でレッグギャザー部41の剛性が高いというときは、レッグギャザー部41がおむつ10の幅方向Xに変形しにくいことを意味する。
 
【0026】
  肌側複合シート29において、防漏カフ部51となる部分では、不織布が2層になっている。しかし、肌側複合シート29の外側縁部29cにおいても不織布が2層になっている必要はなく、
図4に示すように、外側縁部29cに含まれる不織布が1層だけであってもよい。すなわち、肌側複合シート29を構成する2層の不織布の内の1層がレッグギャザー部41に延び出してレッグギャザー部41に含まれていてもよい。これにより、レッグギャザー部41に含まれるシート材の層数が増加して、レッグギャザー部41の剛性が増加する。また、肌側複合シート29からレッグギャザー部41に延び出す不織布は、レッグギャザー部41の肌対向面側に位置するシート材に、接着または溶着により接合することが好ましい。これにより、レッグギャザー部41の剛性がさらに増加する。レッグギャザー部41の剛性を十分向上させるためには、肌側複合シート29からレッグギャザー部41に延び出すシート材と、レッグギャザー部41とが重なり合う領域の幅は、カフ分岐線33から遠位縁32までの距離の少なくとも80%であることが好ましい。また、肌側複合シート29から少なくとも1層のシート材をレッグギャザー部41に延び出させ、レッグギャザー部41の末端部、すなわち延出部31の遠位縁32にほぼ一致するまで延在させることもできる。
 
【0027】
  レッグギャザー部41の剛性を向上させるためには、レッグギャザー部41に含まれるシート材どうしを、接着または溶着により接合することが好ましい。シート材どうしを接合するホットメルト接着剤または溶着部もレッグギャザー部41の剛性の向上に寄与するので、おむつ10の使用時にレッグギャザー部41が幅方向Xに蛇腹状に収縮することがより有効に抑制される。
図4に、ホットメルト接着剤61を用いてレッグギャザー部41に含まれるシート材どうしを接合する例を示す。レッグギャザー部41に含まれるシート材どうしをホットメルト接着剤により接合するとき、ホットメルト接着剤61をレッグ弾性部材42に交差する方向(すなわち幅方向X成分を含む方向)に線状に塗布することが好ましい。縦方向Yに延びるレッグ弾性部材42に対し交差する方向にホットメルト接着剤61を塗布することにより、おむつ10の使用時にレッグギャザー部41が幅方向Xに収縮して幅方向Xに蛇腹状になることを抑制することができる。このようなホットメルト接着剤61の塗布パターンの具体例として、スパイラル状または波状の塗布パターンが挙げられる。なお、
図4では理解を容易にするためにシート材どうしを接合するホットメルト接着剤61の一部のみを図示している。
図4において任意のシート部材間にホットメルト接着剤を塗布できることは言うまでもない。
 
【0028】
  前述のように、レッグギャザー部41に縦方向Yに配置される複数本のレッグ弾性部材42の両端は、吸収構造体21の前端領域24と後端領域26に固定されている。したがってレッグ弾性部材42も、レッグギャザー部41が幅方向Xに収縮して幅方向Xに蛇腹状になることを抑制可能である。すなわち、レッグ弾性部材42の本数を増やすとともにレッグ弾性部材42間の間隔を狭くすることにより、レッグギャザー部41が幅方向Xに蛇腹状に収縮することを抑制できる。具体的には、レッグ弾性部材42の本数は4本以上であることが好ましく、6本以上であることがより好ましい。また、複数条のレッグ弾性部材42の間隔が6mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。レッグ弾性部材42には、例えば繊度が約300〜940dtexのポリウレタン系弾性糸を用いることができるが、これに限定されない。また、ポリウレタン系弾性糸に代えて伸縮不織布または伸縮フィルムを用いることもできる。これらの弾性部材の伸長倍率は、典型的には2.0〜2.3倍であるが、これに限定されない。
 
【0029】
  図4に示すように、幅方向Xにおいて、カフ分岐線33を吸収体22の外側に配置するとともに、防漏カフ部51に含まれるシート材をレッグギャザー部41に向けて延出させることが好ましい。これにより、吸収体22の側縁23とカフ分岐線33との間の領域に含まれるシート材の層数が、カフ分岐線33から遠位縁32までの領域、すなわちレッグギャザー部41に含まれるシート材の層数よりも少なくなる。このようにカフ分岐線33を境としてシート材の層数が変化することにより、レッグギャザー部41がカフ分岐線33に沿って曲がりやすくなる結果、レッグギャザー部41がおむつ10の外側に向けて突き出しやすくなる。また、レッグギャザー部41は吸収体22に近接して縦方向Yに延びるカフ分岐線33を介して吸収体22を持ち上げて、着用者の体に吸収体22を近づけやすくなる。好ましくは、吸収体22の側縁23からカフ分岐線33までの距離は、カフ分岐線33から遠位縁32までの距離の5%から30%である。なお、おむつ10の各部の寸法は、
図2に例示するようにおむつ10を平面に展開し、おむつ10の表面に皺が形成されていない状態で測定する。
 
【0030】
  さらに、延出部31においてカフ分岐線33と重なる位置に、1本のレッグ弾性部材42を配置することが好ましい。前述のように、複数本のレッグ弾性部材42の伸長倍率は、互いに等しいか、または、幅方向Xにおいてカフ分岐縁33から遠位縁32に向かうに従いレッグ弾性部材42の伸長倍率が低くなるように設定されている。したがって、おむつ10の使用時におけるレッグ弾性部材42の収縮量は、カフ分岐線33から遠位縁32に向かうに従い小さくなるか、または変化しない。この結果、おむつ10の使用時に、延出部31においてカフ分岐線33から遠位縁32に至る領域、すなわちレッグギャザー部41は、次第に拡径する円錐台状の形状または円筒状となっておむつ10の外側に突き出す。さらに、カフ分岐線33と重なる位置にレッグ弾性部材42を配置することにより、防漏カフ部51の基端が確実に着用者の脚に密着して、排泄物の漏出が防止される。
 
【0031】
  本発明について
図1から
図4を参照して説明したが、本発明はこれに限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、
図5(a)に示すように、防漏カフ部51をレッグギャザー部41とは別体のシート材の積層体にする代わりに、防漏カフ部51とレッグギャザー部41とを同一のシート材で形成することができる。
図5(a)に示す例では、1枚の不織布から成るバックシート68を折り返して、防漏カフ部51とレッグギャザー部41とを一体に形成している。
図5(a)に示す例に代えて、吸収体22の幅方向X両側に、防漏カフ部51とレッグギャザー部41とが一体となったシート材の積層体を一つずつ配置することもできる(図示せず)。別言すれば、本発明では、防漏カフ部51とレッグギャザー部41とが一体となった一対の延出部31を吸収体22とは別体で形成することができる。また、1枚の不織布から成るバックシート68を折り返して、防漏カフ部51とレッグギャザー部41とを形成し、レッグギャザー部41に含まれるシート材を折り返す回数を
図5(a)に示す例よりも増やすことにより、レッグギャザー部41に含まれるシート材の層数を、防漏カフ部51に含まれるシート材の層数よりも多くすることもできる。
 
【0032】
  さらに別の変形例として、
図5(b),(c)に示すように、レッグギャザー部41に、レッグギャザー部41とは別体の補強シート76をホットメルト接着剤61により接合することが挙げられる。補強シート76は、不織布またはプラスチックフィルムを用いて形成することができる。補強シート76は、レッグギャザー部41を構成するシート材の積層体の任意の位置に配置することができる。
図5(b)は、補強シート76をレッグギャザー部41の肌対向面側に配置した例である。
図5(c)は、レッグギャザー部41を構成するシート材の積層体の層間に、補強シート76を配置した例である。このほか、補強シート76をレッグギャザー部41の非肌対向面側に配置することもできる(図示せず)。なお、
図5(a)〜(c)では理解を容易にするためにシート材どうしを接合するホットメルト接着剤61の一部のみを図示している。
図5(a)〜(c)において任意のシート部材間にホットメルト接着剤を塗布できることは言うまでもない。
 
【0033】
  図示例では、防漏フィルム67は幅方向Xにおいて延出部31の遠位縁32から離れている。これにより、延出部31の遠位縁32、すなわち、レッグギャザー部41の遠位縁32の剛性が過度に高くなって着用者の肌を刺激することを抑制することができる。しかし、防漏フィルム67を延出部31の遠位縁32まで延在させることもできる。また図示例では前後ウエストパネル14,15は、不織布とウエスト弾性糸18で構成されているが、前後ウエストパネル14,15を矩形の伸縮性不織布で構成して弾性糸を省略することもできる。