(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、
全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が40:60〜90:10であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、紫外線吸収剤1.0〜10.0重量部が配合されてなる樹脂組成物[E]からなるフィルム[F]の1面もしくは両面に、
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A’]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B’]とからなり、
全重合体ブロック[A’]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwA’とし、全重合体ブロック[B’]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwB’としたときに、wA’とwB’との比(wA’:wB’)が40:60〜80:20であるブロック共重合体[C’]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D’]及び/又は、ブロック共重合体水素化物[D’]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[D”]100重量部に対して、紫外線吸収剤0重量部以上1.0重量部未満が配合された樹脂組成物[E’]からなる層[F’]が積層されてなる光学用フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、1)多層フィルム、及び、2)多層フィルムの製造方法に項分けして詳細に説明する。
1)多層フィルム
本発明の多層フィルムは、後述するブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、紫外線吸収剤1.0〜10.0重量部が配合されてなる樹脂組成物[E]からなるフィルム[F]の1面もしくは両面に、ブロック共重合体水素化物[D’]及び/又は、ブロック共重合体水素化物[D’]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[D”]100重量部に対して、紫外線吸収剤0重量部以上1.0重量部未満が配合された樹脂組成物[E’]からなる層[F’]が積層されてなる。
【0013】
1.ブロック共重合体水素化物[D]
ブロック共重合体水素化物[D]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、
全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が40:60〜90:10であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化して得られるものである。
【0014】
(1)ブロック共重合体[C]
ブロック共重合体[C]は、本発明に係るブロック共重合体水素化物[D]の前駆体であり、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する。
【0015】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位(「構造単位」ともいう。以下にて同じ。)を主成分とするものである。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
また、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位以外の成分としては、鎖状共役ジエン由来の繰り返し単位及び/又はその他のビニル化合物由来の繰り返し単位が挙げられる。その含有量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位が上記範囲にあると、本発明の多層フィルムは耐熱性が高くなるため好ましい。
複数の重合体ブロック[A]同士は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、相異なっていても良い。
【0016】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とするものである。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
また、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位以外の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位及び/又はその他のビニル化合物由来の繰り返し単位が挙げられる。その含有量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位が上記範囲にあると、本発明の多層フィルムは柔軟性が良好になるため好ましい。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有量が増加すると、フィルムの複屈折発現性は低下するが、低温での柔軟性が低下し易くなる。
重合体ブロック[B]が複数ある場合には、重合体ブロック[B]同士は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、相異なっていても良い。
【0017】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等のアルキル基を置換基として有するスチレン類;4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等のハロゲン原子を置換基として有するスチレン類;4−メトキシスチレン、3,5−ジメトキシスチレン等のアルコキシ基を置換基として有するスチレン類;4−フェニルスチレン等のアリール基を置換基として有するスチレン類;等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から極性基を有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。
【0018】
鎖状共役ジエン系化合物としては、吸湿性の観点から極性基を有しないものが好ましい。例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手の容易さから1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0019】
その他のビニル系化合物としては、鎖状オレフィン、環状オレフィン、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、及び不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらのビニル化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から極性基を有しないものが好ましく、鎖状オレフィン及び環状オレフィンがより好ましい。これらの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;等が挙げられ、鎖状オレフィンがさらに好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0020】
ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下であり、ブロック[B]の数は、通常4個以下、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下である。
重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で、重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で、重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)としたとき、Mw(A1)とMw(A2)との比〔Mw(A1)/Mw(A2)〕、及び、Mw(B1)とMw(B2)との比〔Mw(B1)/Mw(B2)〕は、それぞれ2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
【0021】
Mw(A1)とMw(A2)の比が2を超えて非対象度が大きくなると、ブロック共重合体水素化物[D]の弾性率が高くなり、高温側のガラス転位温度も高く(上限は140℃)なるが、機械的強度は弱くなり、フィルム成形時に中間層が切れ易くなることが懸念される。
また、重合体ブロック[B]は重合体ブロク[A]に比べて含有率が少なく、Mw(B1)とMw(B2)の比が大きくなると、重合体ブロック[B2]の分子量が小さくなり過ぎて重合体ブロック[A]と相分離し難くなり、例えばペンタブロックポリマーであってもトリブロックポリマーと同様の粘弾性挙動となり、しかも、高温側のガラス転位温度が低下し、耐熱性が低下することが懸念される。
【0022】
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[C]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体〔[A]−[B]−[A]〕、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体〔[A]−[B]−[A]−[B]−[A]〕である。
【0023】
ブロック共重合体[C]中の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、40:60〜90:10、好ましくは50:50〜85:15、より好ましくは60:40〜80:20である。wAが高過ぎる場合は、本発明で使用するブロック共重合体水素化物[D]の耐熱性は高く、押出しフィルムの位相差は小さくなるが、柔軟性が低く、切断面でフィルムが割れ易くなる。また、wAが低過ぎる場合は、光学用フィルムとして耐熱性が不十分となるおそれがある。
【0024】
ブロック共重合体[C]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0025】
Mwが30,000を下まわる場合は、得られるブロック共重合体水素化物[D]の機械的強度が弱くなり、成形したフィルムが切れ易くなる。一方、Mwが200,000を超える場合は、得られるブロック共重合体水素化物[D]の溶融粘度が高くなり、ブロック共重合体水素化物[D]の熱分解が少ない250℃以下の成形温度での溶融成形が困難となるおそれがある。また、Mwが大きくなると、水素化反応の時間も長くなるため、工業的に不利となる。
【0026】
ブロック共重合体[C]の製造方法としては、例えばリビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法;等が挙げられる。
【0027】
前記モノマー混合物(a)は、芳香族ビニル化合物を、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上含み、芳香族ビニル化合物以外のモノマー成分を、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下含むものである。
また、前記モノマー混合物(b)は、鎖状共役ジエン化合物を、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上含み、鎖状共役ジエン化合物以外のモノマー成分を、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下含むものである。
【0028】
(2)ブロック共重合体水素化物[D]
本発明に係るブロック共重合体水素化物[D]は、上記のブロック共重合体[C]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られるものである。その水素化率は通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形したフィルムの耐光性、耐熱性が良好である。ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、
1H−NMRによる測定において求めることができる。
【0029】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、WO2011/096389号パンフレット、WO2012/043708号パンフレット等に記載された方法を挙げることができる。
【0030】
上記した方法で得られるブロック共重合体水素化物[D]は、水素化触媒及び/又は重合触媒を、ブロック共重合体水素化物[D]を含む反応溶液から除去した後、反応溶液から回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のフィルムの成形加工に供することができる。
【0031】
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常35,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは45,000〜100,000である。
また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、成形したフィルムの耐熱性や機械的強度が維持される。
【0032】
2.樹脂組成物[E]
本発明に使用する樹脂組成物[E]は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、紫外線吸収剤を、通常1.0〜10.0重量部、好ましくは2.0〜9.0重量部、より好ましくは3.0〜8.0重量部配合して得られるものである。
紫外線吸収剤の配合量がこの範囲内であれば、光学用フィルムにした場合に効率的に紫外線を遮断することができ、可視光領域の透明性は維持され、色調を悪化させることがないため好ましい。紫外線吸収剤の濃度が前記範囲の下限未満であると、波長380nm付近における光線透過率が大きくなり、本発明のフィルムを偏光板保護フィルムとして使用した場合に偏光板の偏光度が低下するおそれがある。また、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超えると、短波長側の光線透過率が小さくなり、フィルムの黄色味が強くなりすぎるおそれがある。
前記樹脂組成物[E]は、紫外線遮蔽の観点からは波長380nmでの透過率が8%以下であることが好ましく、4%以下がさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0033】
本発明に用いる紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;
2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジクミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;
2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;等が挙げられる。
これらの中でも、波長380nm付近での紫外線吸収性に優れる点で、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]等が好ましい。
【0034】
前記樹脂組成物[E]には、紫外線吸収剤以外のその他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、光安定剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用して配合してもよい。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。例えば、分子構造中に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基、あるいは、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基等を有する化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、その配合量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.9重量部、より好ましくは0.1〜0.8重量部である。酸化防止剤の量がこの範囲であれば、樹脂組成物[E]の耐熱安定性が優れるため、好ましい。
【0035】
酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
【0036】
ブロック共重合体水素化物[D]に、紫外線吸収剤及びその他の配合剤を配合する方法としては、例えば、ブロック共重合体水素化物[D]に紫外線吸収剤及びその他の配合剤を混合した後、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機等でブロック共重合体水素化物[D]を溶融状態にして均一に混練する方法が挙げられる。
【0037】
3.ブロック共重合体水素化物[D’]
ブロック共重合体水素化物[D’]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A’]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B’]とからなり、全重合体ブロック[A’]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwA’とし、全重合体ブロック[B’]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwB’としたときに、wA’とwB’との比(wA’:wB’)が40:60〜80:20であるブロック共重合体[C’]の、全不飽和結合の90%以上を水素化して得られるものである。
重合体ブロック[A’]、重合体ブロック[B’]を構成する繰り返し単位は、前記重合体ブロック[A]、重合体ブロック[B]と同様である。
ブロック共重合体水素化物[D’]は、ブロック共重合体[C’]をブロック共重合体[C]と同様の方法により水素化することで得られる。その水素化率は、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形したフィルムの耐光性、熱安定性が良好である。
ブロック共重合体水素化物[D’]の分子量は、前記のブロック共重合体水素化物[D]と同程度であれば良い。
【0038】
本発明に使用するブロック共重合体水素化物[D’]は、その前駆体であるブロック共重合体[C’]が、全重合体ブロック[A’]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwA’とし、全重合体ブロック[B’]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwB’とした時に、wA’とwB’との比(wA’:wB’)は、40:60〜80:20、好ましくは45:55〜70:30、より好ましくは50:50〜60:40であるものが使用される。wA’がこの範囲内にある場合は、ブロック共重合体[C’]を水素化して得られるブロック共重合体水素化物[D’]は、フィルムを成形した場合に柔軟性と機械的強度が良好であるため好ましい。
【0039】
4.変性ブロック共重合体水素化物[D”]
変性ブロック共重合体水素化物[D”]は、ブロック共重合体水素化物[D’]にアルコキシシリル基が導入されてなるものである。
変性ブロック共重合体水素化物[D”]は、前記ブロック共重合体水素化物[D’]に、有機過酸化物の存在下でエチレン性不飽和シラン化合物と反応させることによりアルコキシシリル基を導入する方法;重合段階で、エチレン性不飽和シラン化合物を芳香族ビニル化合物及び/又は鎖状共役ジエン化合物と共重合させて得られたブロック共重合体を水素化する方法;等により得ることができる。
アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物[D’]に、アルキレン基やアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
【0040】
アルコキシシリル基の導入量は、通常、変性ブロック共重合体水素化物[D”]100重量部中に、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると、所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲルが発生したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下する等の問題を生じ易くなる。アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると、ポリビニルアルコール系フィルムやガラスとの十分な接着力が得られなくなるおそれがある。アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、アルコキシシリル基の導入量は
1H−NMRスペクトル(導入量が少ない場合は積算回数を増やす)にて算出することができる。
【0041】
エチレン性不飽和シラン化合物としては、芳香族ビニル化合物や鎖状共役ジエン化合物と共重合ものや、ブロック共重合体水素化物[D’]とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入するものであれば特に限定されない。具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリルトリアルコキシシラン;ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等のアルキルジアルコキシシラン;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリルトリアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシトリアルコキシシラン;等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
ブロック共重合体水素化物[D’]に、有機過酸化物の存在下でエチレン性不飽和シラン化合物を反応させてアルコキシシリル基を導入する場合は、エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D’]100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0043】
過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用される。例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−(2−t一ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D’]100重量部に対して、通常0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量部である。
【0044】
上記のブロック共重合体水素化物[D’]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は、特に限定されない。例えば、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することによりアルコキシシリル基を導入することができる。
混練温度は、通常180〜220℃、好ましくは185〜210℃、より好ましくは190〜200℃である。また、加熱混練時間は、通常0.1〜10分、好ましくは0.2〜5分、より好ましくは0.3〜2分程度である。温度、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0045】
変性ブロック共重合体水素化物[D”]の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[D’]の分子量と実質的には変わらない。ただし、過酸化物の存在下でエチレン性不飽和シラン化合物と反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応も併発し、分子量分布は大きくなる。
変性ブロック共重合体水素化物[D”]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜300,000、好ましくは40,000〜200,000、より好ましくは50,000〜150,000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発明の多層フィルムの機械的強度が維持されるため好ましい。
【0046】
5.樹脂組成物[E’]
本発明に使用するブロック共重合体水素化物[D’]及び/又は変性ブロック共重合体水素化物[D”]は、紫外線吸収剤、耐光安定剤、酸化防止剤等の配合剤を含有させ、樹脂組成物[E’]として使用する。
樹脂組成物[E’]に含まれる紫外線吸収剤の量は、ブロック共重合体水素化物[D’]及び/又は変性ブロック共重合体水素化物[D”]の100重量部に対して、1.0重量部未満とする。
紫外線吸収剤を含む場合、その配合量は、通常0.01〜1.0重量部未満、好ましくは0.05〜0.6重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。
紫外線吸収剤としては、ブロック共重合体水素化物[D]に配合したのと同様の紫外線吸収剤を使用すればよい。紫外線吸収剤の配合量が1.0重量部以上の場合は、押出し成形機を使用して本発明の多層フィルムを長時間連続で押出し成形すると、キャストロールに汚れが付着し易くなる。
【0047】
樹脂組成物[E’]には、紫外線吸収剤以外の配合剤を配合することができる。紫外線吸収剤以外の配合剤としては、ブロック共重合体水素化物[D]の場合と同様の光安定剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上併用して配合してもよい。
【0048】
押出し成形法により、本発明の多層フィルムを成形する場合は、Tダイに目やにが付着するのを防止するために、酸化防止剤を配合することが望ましい。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤の配合量は、ブロック共重合体水素化物[D’]及び/又は変性ブロック共重合体水素化物[D”]の100重量部に対して、通常0.1〜1重量部、好ましくは0.2〜0.9重量部、より好ましくは0.3〜0.8重量部である。酸化防止剤の量がこの範囲であれば、長時間連続して多層フィルムを押し出し成形した場合に、Tダイの目やにの発生を低減することができるため好ましい。
ブロック共重合体水素化物[D’]及び/又は変性ブロック共重合体水素化物[D”]に、紫外線吸収剤及びその他の配合剤を配合する方法は、ブロック共重合体水素化物[D]の場合と同様である。
【0049】
後述するように、ブロック共重合体水素化物[D]からなるフィルムの表面に、樹脂組成物[E’]からなる層を積層することにより、例えば、偏光子を形成するポリビニルアルコール系フィルムや液晶表示素子基板のガラス等との良好な接着性が得られるようになる。
【0050】
6.多層フィルム
本発明の多層フィルムは、樹脂組成物[E]からなるフィルム[F]の1面もしくは両面に、樹脂組成物[E’]からなる層[F’]が積層されてなるものである。
【0051】
樹脂組成物[E]からなるフィルム[F]は紫外線を遮蔽する層である。その厚みは、通常10〜200μm、好ましくは15〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。フィルム[F]の厚みを前記範囲の下限以上にすると、例えば、偏光子の保護フィルムとして使用した際に紫外線遮蔽性能が高くなる。また、偏光フィルムの破損防止等の取扱い性が向上し、また、上限以下にすることで偏光フィルム全体の厚さを抑制することができるため好ましい。
【0052】
樹脂組成物[E’]からなる層[F’]は、フィルム[F]の1面もしくは両面に積層し、多層フィルムの機械的強度、柔軟性を改善する役割を果たす。また、多層フィルムの押出し成形時に、層[F’]がキャストロールに接するように成形することにより、キャストロールの汚れ付着を防止でき、表面荒れが少なく面状の優れた光学用フィルムに好適な多層フィルムを得ることができる。
【0053】
層[F’]の厚みは、通常1〜50μm、好ましくは2〜30μm、より好ましくは3〜20μmである。層[F’]の厚みを前記範囲の下限以上にすることで多層フィルムの柔軟性を高めることができる。また、層[F’]の厚みが50μmを超えると、多層フィルムの面内位相差が大きくなり過ぎ、また多層フィルムの厚さも厚くなり過ぎるおそれがある。
【0054】
本発明の多層フィルムを、偏光フィルムの偏光子保護フィルムとして用いる場合は、フィルム面内の位相差Reが10nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましい。位相差が10nm以下であることにより、液晶表示ユニットに組み込んだ場合の色ムラを抑えることができる。特に大画面の液晶表示装置において色ムラが顕著に目立つ傾向にあるが、このような大画面の表示装置にも好適である。
フィルム面内の位相差Reは、フィルム面内の主屈折率をNx、Nyとし、フィルムの厚さをdとすると、式:Re=(Nx−Ny)×dで求めることができる。フィルム面内の位相差Reは、市販の自動複屈折計を用いて測定することができる。
【0055】
本発明の多層フィルムは、優れた紫外線遮蔽性能を有するため、屋根材、天井材、壁材、窓材等の自動車、建築物、農業ハウス等の用途; 医薬品、食品、飲料水等の保護フィルム; 偏光フィルムの偏光子保護フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム、タッチパネル用基板、液晶基板、光拡散シート、プリズムシート等の液晶表示装置等に用いられる部材; ガラス板や透明プラスチック板等の表面に積層したり、複数のガラス板や透明プラスチック板等の間に介在させて、紫外線遮蔽物品;等に使用することもできる。
【0056】
2)多層フィルムの製造方法
本発明の多層フィルムの製造方法は、本発明の多層フィルムを製造する方法であって、前記樹脂組成物[E’]を、キャストロール面に接するようにして溶融押出し成形するものである。前記樹脂組成物[E’]を、キャストロール面に接するようにして溶融押出し成形することにより、前記層[F’]を形成することができる。本発明の製造方法によれば、本発明の多層フィルムを長時間連続で成形した場合であっても、得られる多層フィルムは表面荒れが生じ難く、面状の優れたフィルムを得ることができる。
【0057】
本発明の多層フィルムの製造方法に適用される成形法としては、特に制限は無いが、公知の2種3層多層共押出し成形法;溶融押出し法等で成形された樹脂組成物[E’]からなるフィルム上に、樹脂組成物[E]を溶融押出しして、2種2層あるいは2種3層の多層フィルムとする押出しラミネート成形法;等が適用できる。
いずれの成形法においても、キャストロールには樹脂組成物[E’]からなる層[F’]が接触し、樹脂組成物[E]からなる層がキャストロールに直接接触しないように押出し成形する。
【0058】
シートの成形条件は、成形方法により適宜選択されるが、例えば溶融押出し成形法による場合は、樹脂温度は、通常180〜250℃、好ましくは190〜240℃、より好ましくは200〜230℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が低過ぎる場合は、流動性が悪化し、成形された多層シートの表面平滑性が低下し易くなる。また、シートの押出し速度が上げられず工業生産性に劣る傾向がある。樹脂温度が高過ぎる場合は、ブロック共重合体水素化物[D]、[D’]、変性ブロック共重合体水素化物[D”]の熱安定性が不良となり、得られる多層フィルムの機械的強度が低下するおそれがある。
【0059】
本発明においては、ブロック共重合体水素化物[D]、[D’]、変性ブロック共重合体水素化物[D”]を押出機内で溶融させて、当該押出機に取り付けられたダイスから押出す前に、溶融状態の樹脂をギヤーポンプやフィルターに通すことが好ましい。ギヤーポンプを使用することにより、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚さむらを低減させることができる。
また、フィルターを使用することにより、樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れた光学用に適した多層フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0060】
本発明を、実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0061】
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、
1H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)フィルム表面性状
押出しフィルムの表面外観を目視で観察し、評価した。フィルム表面の反射光を見て、曇りが見られない場合を○(良好)、曇りが見られた場合を×(不良)として評価した。
(4)フィルムの面内位相差(Re)
自動複屈折計(製品名「KOBLA−21ADH」、王子計測機器社製)を使用して、押出しフィルムの幅方向に50mm間隔で1000mmに亘って測定した。全測定結果を平均して、積層フィルムの面内位相差Re値とした。
(5)紫外線遮蔽性
紫外可視分光光度計(製品名「V−570」、日本分光社製)を使用して、波長380nm及び300nmでのフィルムの光線透過率を測定した。
(6)機械的強度
オートグラフ(製品名「AGS−10KNX」、島津製作所社製)を使用して、フィルムの引張り特性を測定し、破断点の伸びが6%以上の場合を○(良好)、3%〜6%未満の場合を△(適用可)、3%未満の場合を×(不良)として評価した。
【0062】
[参考例1]
・ブロック共重合体水素化物[D1]の製造
(ブロック共重合体[C1]の製造)
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン37.5部、及びn−ジブチルエーテル0.475部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液0.72部を加えて、重合を開始させた。n−ブチルリチウム溶液の滴下終了後、さらに、60℃で60分間全容を攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点で、重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に脱水イソプレン25.0部を加え、そのまま30分間攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、脱水スチレンを37.5部加え、60分間攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応混合物にイソプロピルアルコール0.5部を加えて、反応を停止させた。得られた重合体溶液中に含まれるブロック共重合体[C1]の重量平均分子量(Mw)は60,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、wA:wB=75:25であった。
【0063】
(ブロック共重合体水素化物[D1]の製造)
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)8.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は63,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0064】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、コーヨ化学研究所社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて、ろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター社製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[D1]のペレット96部を作製した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は63,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、水素化率はほぼ100%であった。
【0065】
[参考例2]
・ブロック共重合体水素化物[D2]の製造
(ブロック共重合体[C2]の製造)
スチレンとイソプレンを5回に分け、スチレン30.0部、イソプレン7.5部、スチレン25.0部、イソプレン7.5部及びスチレン30.0部をこの順に加える以外は参考例1と同様にして重合反応を行い、反応を停止させた。得られたブロック共重合体[C2]の重量平均分子量(Mw)は61,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、wA:wB=85:15であった。
【0066】
(ブロック共重合体水素化物[D2]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は65,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.07であった。
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D2]のペレット92部を作製した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は64,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、水素化率はほぼ100%であった。
【0067】
[参考例3]
・ブロック共重合体水素化物[D’3]の製造
(ブロック共重合体[C’3]の製造)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン30.0部、イソプレン40.0部、スチレン30.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液を0.70部に変えて重合を開始する以外は参考例1と同様にして重合反応を行い、反応を停止させた。得られたブロック共重合体[C’3]の重量平均分子量(Mw)は60,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=60:40であった。
【0068】
(ブロック共重合体水素化物[D’3]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D’3]の重量平均分子量(Mw)は63,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥して、ブロック共重合体水素化物[D’3]のペレット95部を作製した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D’3]の重量平均分子量(Mw)は63,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、水素化率はほぼ100%であった。
【0069】
[参考例4]
・ブロック共重合体水素化物[D’4]の製造
(ブロック共重合体[C’4]の製造)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン25.0部、イソプレン50.0部、スチレン25.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液を0.68部に変えて重合を開始する以外は参考例1と同様にして重合反応を行い、反応を停止させた。得られたブロック共重合体[C’4]の重量平均分子量(Mw)は61,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=50:50であった。
【0070】
(ブロック共重合体水素化物[D’4]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D’4]の重量平均分子量(Mw)は64,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D’4]のペレット92部を作製した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D’4]の重量平均分子量(Mw)は64,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、水素化率はほぼ100%であった。
【0071】
[参考例5]
・変性ブロック共重合体水素化物[D”3]の製造
参考例3で得たブロック共重合体水素化物[D’3]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標) 25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[D”3]のペレット95部を得た。
【0072】
得られたブロック共重合体水素化物[D”3]のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解させた後、脱水したメタノール400部中に注いで、変性ブロック共重合体水素化物[D”3]を凝固させ、濾別した後、25℃で真空乾燥して、変性ブロック共重合体水素化物[D”3]のクラム8.9部を単離した。
このもののFT−IRスペクトルを測定したところ、1090cm
−1にSi−OCH
3基、825cm
−1と739cm
−1にSi−CH
2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075cm
−1、808cm
−1及び766cm
−1と異なる位置に観察された。また、
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[D’3]の100部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.7部が結合したことが確認された。
【0073】
[参考例6]
・紫外線吸収剤の配合
参考例1で得られたブロック共重合体水素化物[D1]のペレット100部に、紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール(SUMISORB(登録商標)300、住友化学社製)4.0部、及び2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(SUMISORB(登録商標)340、住友化学社製)4.0部を添加して、均一に混合した後、二軸押出機を用いて、樹脂温度210℃で押し出し、冷却後、ペレタイザーによりカッティングして樹脂組成物[E11]のペレット97部を得た。
【0074】
同様にして、参考例2〜参考例5で得られたブロック共重合体水素化物[D1]、[D2]、[D’3]、[D’4]、及び変性ブロック共重合体水素化物[D”3]を使用し、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、及び2,4−−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール(製品名「TINUVIN(登録商標)234」、BASFジャパン社製)から選択した紫外線吸収剤を配合して、樹脂組成物[E12]、[E13]、[E14]、[E21]、[E22]、[E’3]、[E’4]及び[E”3]を調製した。得られた樹脂組成物の内訳を表1にまとめて示した。
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例1]
参考例6で得られた樹脂組成物[E11]及び樹脂組成物[E”3]を、20mmφのスクリューを備えた単軸押出し機2機を有するTダイ式2種3層フィルム成形機(Tダイ幅300mm)、及び鏡面のキャストロールを備えたシート引取機を使用し、樹脂組成物[E11]が中間フィルム[F11]、樹脂組成物[E”3]が表層[F”3]となるようにして、樹脂温度210℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度80℃の条件で、2種3層の多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムは、表層[F”3]/中間フィルム[F11]/表層[F”3]の三層構造を有し、得られた多層フィルムの厚みは5μm/30μm/5μmであった。
【0077】
得られた多層シートを使用して、フィルム表面性状、フィルムの面内位相差(Re)、紫外線遮蔽性、機械的強度の評価を行った。フィルム表面性状は、安定してフィルムが成形できるようになっているフィルム成形開始から2時間後のフィルム表面を観察した。評価の結果は表2にまとめて記載した。
【0078】
[実施例2〜実施例6]
樹脂組成物[E12]、[E13]、[E14]、[E21]、[E22]、[E’3]、[E’4]、[E”3]及び[D1]を使用し、表2に記載した組合せで、実施例1と同様にして2種3層の多層フィルムをそれぞれ製造し、得られた多層シートのフィルムの表面性状、フィルムの面内位相差(Re)、紫外線遮蔽性、機械的強度の評価を行った。結果を表2に合せて記載した。
【0079】
[比較例1]
樹脂組成物[E11]のみを使用し、実施例1で使用したのと同じ2種3層フィルム成形機を使用して、中間フィルム、表層ともに樹脂組成物[E11]からなるフィルムを製造した。
得られたフィルムは樹脂組成物[E11]のみからなり、フィルムの厚みは30μmであった。
【0080】
得られた多層シートを使用して、フィルム表面性状、フィルムの面内位相差(Re)、紫外線遮蔽性、機械的強度の評価を行った。フィルム表面性状は、安定してフィルムが成形できるようになっているフィルム成形開始から2時間後のフィルム表面を観察した。評価の結果は表2にまとめて記載した。
【0081】
[比較例2]
樹脂組成物[E22]のみを使用し、比較例1と同様にして、中間フィルム、表層ともに樹脂組成物[E22]からなるフィルムを製造した。得られたフィルムの厚みは30μmであった。
得られた多層シートを使用して、比較例1と同様にしてフィルムの評価を行った。評価の結果は表2にまとめて記載した。
【0082】
[比較例3]
樹脂組成物[E22]が中間フィルム[F22]、樹脂組成物[D2]が表層[F’D2]となるようにして、実施例1で使用したのと同じ2種3層フィルム成形機を使用して、2種3層の多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムは表層[F’D2]/中間フィルム[F22]/表層[F’D2の三層構造を有し、得られた多層フィルムの厚みは7μm/30μm/7μmであった。
【0083】
得られた多層シートを使用して、フィルム表面性状、フィルムの面内位相差(Re)、紫外線遮蔽性、機械的強度の評価を行った。フィルム表面性状は、フィルムの成形開始から2時間以上を経過し、安定してフィルムが成形できている時点でのフィルム表面を観察した。評価の結果は表2にまとめて記載した。
【0084】
【表2】
【0085】
本実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
本発明の多層フィルムは、フィルム表面の荒れが無く、表面性状が良好であり、引張り伸び性が改善されてフィルムの成形加工時にフィルムが切れ難く、良好な作業性を有し、且つ十分な紫外線遮蔽性を示している(実施例1〜7)。
一方、紫外線吸収剤の量が特定量より少ない表面層を形成しない場合は、フィルム表面の荒れがあり、表面性状は不良である(比較例1、2)。
また、表面層を形成する場合も、鎖状共役ジエン化合物由来の重合体ブロックの含有量が特定量よりも少ないブロック共重合体水素化物で形成された場合は、フィルム表面性状は良好であるが、引張り伸びが小さく、フィルム成形加工時の作業性が劣る(比較例3)。