(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497535
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物用添加剤及び該添加剤を含むレジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20190401BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20190401BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
G03F7/11 503
C08F220/10
G03F7/20 521
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-551831(P2017-551831)
(86)(22)【出願日】2016年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2016083116
(87)【国際公開番号】WO2017086213
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-225048(P2015-225048)
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 登喜雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】
高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/065207(WO,A1)
【文献】
特開2012−078815(JP,A)
【文献】
特開2011−102974(JP,A)
【文献】
特開2015−087749(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/146443(WO,A1)
【文献】
特開2013−227466(JP,A)
【文献】
特開2013−011861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)乃至式(4)で表される構造単位を有する共重合体を含むレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【化1】
(式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、Aは保護基を表し、R
3は4員環乃至7員環のラクトン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格又はノルボルナン骨格を有する有機基を表し、R
4は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基で置換され、更に置換基として少なくとも1つのヒドロキシ基を有
するか又は置換基としてヒドロキシ基を有さない炭素原子数1乃至12の直鎖状、分岐鎖状又は環状の有機基を表し、Xは直接結合又は−C(=O)O−R
5−基を表し、該−C(=O)O−R
5−基を構成するR
5は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、該アルキレン基は硫黄原子と結合するものであり、R
6は水素原子、メチル基、メトキシ基又はハロゲノ基を表す。)
【請求項2】
前記式(4)で表される構造単位は下記式(4a)で表される構造単位又は下記式(4b)で表される構造単位である、請求項
1に記載のレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【化2】
(式中、R
1、R
5及びR
6は請求項
1に記載の式(4)におけるR
1、R
5及びR
6の定義と同義である。)
【請求項3】
前記式(1)で表される構造単位は下記式(1a)で表される構造単位、下記式(1b)で表される構造単位、下記式(1c)で表される構造単位又は下記式(1d)で表される構造単位である請求項1
又は請求項
2に記載のレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【化3】
(式中、R
1及びR
2は請求項1に記載の式(1)におけるR
1及びR
2の定義と同義であり、2つのR
7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R
8はメチル基を表し、bは0乃至3の整数を表し、R
9は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシアルキル基を表し、R
10は炭素原子数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を表し、R
11は水素原子、又は炭素原子数2乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシカルボニル基を表す。)
【請求項4】
下記式(1)、式(3)及び式(5)で表される構造単位を有する共重合体を含むレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【化2】
(式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、Aは保護基を表し、R
4は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基で置換され、更に置換基として少なくとも1つのヒドロキシ基を有
するか又は置換基としてヒドロキシ基を有さない炭素原子数1乃至12の直鎖状、分岐鎖状又は環状の有機基を表し、Yは−O−基又は−NH−基を表し、R
12は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基
もしくはクロロ基で置換されて
いるか又はフルオロ基もしくはクロロ基で置換されていない、置換基としてフェノキシ基を有
するか又は置換基としてフェノキシ基を有さない炭素原子数1乃至12の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記共重合体の重量平均分子量は1500乃至20000である、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物用添加剤。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のうちいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物用添加剤、前記添加剤に使用される共重合体とは異なる、下記式(6)で表される構造単位及び下記式(7)で表される構造単位を有する樹脂、有機酸、架橋剤並びに溶剤を含み、前記添加剤に使用される共重合体の含有量は前記樹脂100質量部に対し3質量部乃至40質量部である、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【化5】
(式中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立に、炭素原子数1乃至13の直鎖状もしくは分岐鎖状の炭化水素基を有する二価の有機基、脂環式炭化水素環を有する二価の有機基、芳香族炭化水素環を有する二価の有機基、又は窒素原子を1乃至3つ含む複素環を有する二価の有機基を表し、前記炭化水素基、前記脂環式炭化水素環、前記芳香族炭化水素環及び前記複素環は置換基を少なくとも1つ有してもよい。)
【請求項7】
請求項6に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布しベークして厚さ1nm乃至25nmのレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト溶液を塗布し加熱してレジスト膜を形成する工程、フォトマスクを介して前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー及び極端紫外線からなる群から選択される放射線により露光する工程、及び前記露光後に現像液によって現像する工程を含む、レジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成組成物に添加される添加剤に関し、特にレジスト下層膜とレジストパターンとの密着性を向上させることを目的とした添加剤に関する。更に、当該添加剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物に関し、特に薄い膜厚(例えば25nm以下)のレジスト下層膜を形成する場合であっても基板への塗布性に優れたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ArF液浸リソグラフィーや極端紫外線(EUV)リソグラフィーにおいては、レジストパターン線幅の加工寸法の微細化が求められている。このような微細なレジストパターンの形成においては、レジストパターンと下地基板との接触面積が小さくなることによって、レジストパターンのアスペクト比(レジストパターンの高さ/レジストパターンの線幅)が大きくなり、レジストパターンの倒壊が生じやすくなることが懸念される。そのため、レジストパターンと接触するレジスト下層膜又は反射防止膜においては、前記倒壊が生じないように、レジストパターンとの高い密着性が要求されている。
【0003】
レジスト下層膜においては、レジストパターンとの高い密着性を発現するために、ラクトン構造を含むレジスト下層膜形成組成物を用いることにより、得られるレジストパターンに対して密着性が向上することが報告されている(特許文献1)。すなわち、ラクトン構造のような極性部位を含むレジスト下層膜形成組成物を用いることにより、レジストパターンへの密着性が向上し、微細なレジストパターンにおいてもレジストパターンの倒壊を防止することが期待される。
【0004】
しかしながら、ArF液浸リソグラフィー、極端紫外線(EUV)リソグラフィーのような、より微細なレジストパターンの作製が要求されるリソグラフィープロセスにおいては、レジスト下層膜形成組成物としてラクトン構造を含むだけでは、レジストパターンの倒壊を防止するためには十分と言えない。
【0005】
レジスト下層膜とレジストパターンとの高い密着性を実現するために、特許文献2には、レジスト下層膜の表面状態を塩基性状態に改質させ、レジストパターンの裾形状がアンダーカット形状となることを抑制できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。一方、特許文献3には、レジスト下層膜の表面近傍に添加剤成分を偏析させることにより、レジストパターンの裾形状がフッティング形状となることを抑制できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。
【0006】
特許文献4には、レジスト下層膜の表面状態を疎水性に改質させ、レジストパターンを現像及び純水でリンスする際のラプラス力を低減させ、当該レジストパターンの前記レジスト下層膜との密着性が改善できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。一方、特許文献5には、レジスト膜を溶解し得る溶剤を用いて当該レジスト膜の未露光部を除去し、当該レジスト膜の露光部をレジストパターンとして残すレジストパターン形成方法において、レジスト下層膜の表面近傍の酸性度を調整することにより、レジストパターンの断面形状をストレート形状にすると同時に当該レジストパターンの前記レジスト下層膜との密着性が改善できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。
【0007】
特許文献6には、スルホ基を末端に導入した構造単位を有する共重合体、架橋剤、並びに溶剤を含む、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物が記載されている。そして、特許文献6に記載の発明は、レジスト下層膜を形成する際に架橋触媒成分に由来する昇華物の発生が抑制される効果を奏し、下部に裾引き形状をほとんど有さない良好な形状のレジストパターンを形成することができるレジスト下層膜を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/017002号
【特許文献2】国際公開第2013/058189号
【特許文献3】国際公開第2010/074075号
【特許文献4】国際公開第2015/012172号
【特許文献5】国際公開第2015/146443号
【特許文献6】特開2010−237491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、レジストパターンの微細化がますます加速している。レジストパターンの微細化に伴うパターン倒れを抑制するため、レジスト下層膜とレジストパターンとの相互作用に着目し、種々検討が行われている。その一つとして、レジスト材料の成分とレジスト下層膜の表面とを化学結合させることによって、レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性の向上が期待される。そこで本発明は、レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性を改善するため、レジスト下層膜形成組成物に添加することで、当該レジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜の表面を、レジスト材料の成分と架橋する表面状態に改質させる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤を提供することを目的とする。レジスト下層膜の表面をレジスト材料の成分と架橋する表面状態に改質させるとは、つまり、添加剤を含むレジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布し、ベークすることでレジスト下層膜を形成すると共に当該膜の表面に前記添加剤を移行させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、下記式(1)乃至式(3)で表される構造単位を有する共重合体を含むレジスト下層膜形成組成物用添加剤である。
【化3】
(式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、Aは保護基を表し、R
3は4員環乃至7員環のラクトン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格又はノルボルナン骨格を有する有機基を表し、R
4
は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基で置換され、更に置換基として少なくとも1つのヒドロキシ基を有
するか又は置換基としてヒドロキシ基を有さない炭素原子数1乃至12の直鎖状、分岐鎖状又は環状の有機基を表す。)
【0011】
前記共重合体は下記式(4)で表される構造単位をさらに有してもよい。
【化2】
(式中、R
1は前記式(1)、式(2)及び式(3)のR
1の定義と同義であり、Xは直接結合又は−C(=O)O−R
5−基を表し、該−C(=O)O−R
5−基を構成するR
5は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、該アルキレン基は硫黄原子と結合するものであり、R
6は水素原子、メチル基、メトキシ基又はハロゲノ基を表す。)
【0012】
前記式(4)で表される構造単位は、例えば下記式(4a)で表される構造単位又は下記式(4b)で表される構造単位である。
【化3】
(式中、R
1、R
5及びR
6は前記式(4)のR
1、R
5及びR
6の定義と同義である。)
【0013】
前記式(1)で表される構造単位は、例えば下記式(1a)で表される構造単位、下記式(1b)で表される構造単位、下記式(1c)で表される構造単位又は下記式(1d)で表される構造単位である。
【化4】
(式中、R
1及びR
2は前記式(1)のR
1及びR
2の定義と同義であり、2つのR
7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R
8はメチル基を表し、bは0乃至3の整数を表し、R
9は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシアルキル基を表し、R
10は炭素原子数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を表し、R
11は水素原子、又は炭素原子数2乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシカルボニル基を表す。)
【0014】
前記共重合体は前記式(2)で表される構造単位に替えて下記式(5)で表される構造単位を有してもよい。
【化4】
(式中、R
1は前記式(1)、式(2)及び式(3)のR
1と同義であり、Yは−O−基又は−NH−基を表し、R
12は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基
もしくはクロロ基で置換されて
いるか又はフルオロ基もしくはクロロ基で置換されていない、置換基としてフェノキシ基を有
するか又は置換基としてフェノキシ基を有さない炭素原子数1乃至12の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基を表す。)
【0015】
前記共重合体の重量平均分子量は、例えば1500乃至20000、好ましく3000乃至15000である。重量平均分子量が1500より小さいと、前記共重合体を添加剤として含むレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜の溶剤耐性が得られず、一方、重量平均分子量が20000よりも大きいと、レジスト下層膜形成組成物を調製する際に、前記共重合体の溶剤への溶解性が悪化することが懸念される。
【0016】
本発明の第2の態様は、前記レジスト下層膜形成組成物用添加剤、前記添加剤に使用される共重合体とは異なる、下記式(6)で表される構造単位及び下記式(7)で表される構造単位を有する樹脂、有機酸、架橋剤並びに溶剤を含み、前記添加剤に使用される共重合体の含有量は前記樹脂100質量部に対し3質量部乃至40質量部である、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。
【化6】
(式中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立に、炭素原子数1乃至13の直鎖状もしくは分岐鎖状の炭化水素基を有する二価の有機基、脂環式炭化水素環を有する二価の有機基、芳香族炭化水素環を有する二価の有機基、又は窒素原子を1乃至3つ含む複素環を有する二価の有機基を表し、前記炭化水素基、前記脂環式炭化水素環、前記芳香族炭化水素環及び前記複素環は置換基を少なくとも1つ有してもよい。)
【0017】
前記樹脂100質量部に対し、前記レジスト下層膜形成組成物用添加剤に使用される共重合体は、好ましくは5質量部乃至30質量部含まれる。前記共重合体の添加量が3質量部より少ないとレジストパターンの密着性が発現できない。一方前記共重合体の添加量が40質量部より多いとレジスト下層膜硬化後に溶剤耐性が得られない。
【0018】
本発明の第3の態様は、前記リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布しベークして厚さ1nm乃至25nmのレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト溶液を塗布し加熱してレジスト膜を形成する工程、フォトマスクを介して前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー及び極端紫外線からなる群から選択される放射線により露光する工程、及び前記露光後に現像液によって現像する工程を含む、レジストパターンの形成方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る添加剤が添加されたレジスト下層膜形成組成物をリソグラフィープロセスに適用することによって、レジスト下層膜の表面に前記添加剤を移行させる。このとき、前記レジスト下層膜の表面には、前記添加剤に使用される共重合体の式(1)で表される構造単位に由来する、保護基によりブロックされたイソシアネート基が存在する。その後、前記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する際の加熱時に、前記保護基が脱保護されることにより生成したイソシアネート基(−N=C=O)が、レジスト材料の成分と化学結合する。それゆえ、前記レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性が改善し、その結果レジストパターンの倒れを防止することができる。また、本発明に係る添加剤を、超薄膜で塗布可能なレジスト下層膜形成組成物に添加することで、EUVリソグラフィープロセスのような、超薄膜でのレジスト下層膜の使用が要求されるプロセスでも使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[共重合体]
本発明の第1の態様に係るレジスト下層膜形成組成物用添加剤に使用される共重合体は、前記式(1)乃至式(3)で表される構造単位を有する共重合体、前記式(1)乃至式(3)で表される構造単位に加えて前記式(4)で表される構造単位をさらに有する共重合体、又は前記共重合体において前記式(2)で表される構造単位に替えて前記式(5)で表される構造単位を有する共重合体である。
【0021】
前記式(1)で表される構造単位は、保護基によりブロックされたイソシアネート基を有し、当該保護基は加熱により脱保護され、イソシアネート基が生成する。このような構造単位としては、例えば、下記式(1−1)乃至式(1−20)で表される構造単位が挙げられる。
【化7】
【化8】
【0022】
前記式(2)で表される構造単位としては、例えば、下記式(2−1)乃至式(2−16)で表される構造単位が挙げられる。前記式(2)で表される構造単位のR
3として、レジスト溶液中のポリマーに導入されている骨格(環状構造)を有する有機基が選択される。
【化9】
【0023】
前記式(3)で表される構造単位としては、例えば、下記式(3−1)乃至式(3−6)で表される構造単位が挙げられる。前記式(3)で表される構造単位は、当該構造単位を有する共重合体をレジスト下層膜の表面へ移行させる部位となる。
【化10】
【0024】
前記式(4)で表される構造単位としては、例えば、下記式(4−1)乃至式(4−4)で表される構造単位が挙げられる。下記式(4−1)乃至式(4−4)は前記式(4)で表される構造単位のR
6が水素原子又はメチル基を表す例のみ示すが、R
6がハロゲノ基を表す場合、当該ハロゲノ基としてはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される。前記式(4)で表される構造単位は、光酸発生部位となる。
【化11】
【0025】
前記式(5)で表される構造単位を形成するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。そして、前記式(5)で表される構造単位としては、例えば、下記(5−1)乃至式(5−10)で表される構造単位が挙げられる。
【化12】
【0026】
[樹脂]
本発明の第2の態様に係るリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、前記共重合体とは異なる、前記式(6)で表される構造単位及び前記式(7)で表される構造単位を有する樹脂を含む。当該樹脂は、ポリマー鎖の末端に下記式(8)で表される構造をさらに有してもよい。
【化13】
(式中、R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至13の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、ハロゲノ基又はヒドロキシ基を表し、前記R
13、R
14及びR
15の少なくとも1つは前記アルキル基を表し、Arは芳香族炭化水素環又は脂環式炭化水素環を表し、2つのカルボニル基はそれぞれ前記Arで表される環の隣接する2つの炭素原子と結合するものであり、Zは炭素原子数1乃至3のアルコキシ基を置換基として有してもよい炭素原子数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。)
【0027】
前記樹脂としては、レジスト下層膜形成組成物に使用されるポリマーであれば、特に限定されない。例えば、下記式で表される2種の構造単位を有するポリマー、並びに下記式で表される2種の構造単位及び末端構造を有するポリマーが挙げられる。
【化14】
【化15】
【化16】
【0028】
[架橋剤]
前記レジスト下層膜形成組成物は、架橋剤をさらに含むものである。前記架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(POWDERLINK〔登録商標〕1174)、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素が挙げられる。前記架橋剤の含有割合は、前記樹脂に対し、例えば1質量%乃至30質量%である。
【0029】
[有機酸]
前記レジスト下層膜形成組成物は、さらに有機酸を含むものである。前記有機酸は、架橋反応を促進する触媒成分であり、例えば、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホネート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−フェノールスルホン酸、4−フェノールスルホン酸メチル、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等の、スルホン酸化合物及びカルボン酸化合物が挙げられる。これらの有機酸は単独で含有してもよいし、2種以上の組み合わせで含有することもできる。前記有機酸の含有割合は、前記架橋剤に対し、例えば0.1質量%乃至20質量%である。
【0030】
[溶剤]
前記レジスト下層膜形成組成物は、さらに溶剤を含むものである。前記溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、及びこれらの溶剤から選択された2種以上の混合物が挙げられる。前記溶剤の割合は、前記レジスト下層膜形成組成物に対し、例えば50質量%乃至99.5質量%である。前記レジスト下層膜形成組成物用添加剤は上記溶剤を含有してもよく、その場合、当該溶剤の割合は、前記レジスト下層膜形成組成物用添加剤に対し、例えば50質量%乃至95質量%である。
【0031】
[その他の添加物]
前記レジスト下層膜形成組成物は、必要に応じて界面活性剤をさらに含有してもよい。界面活性剤は、基板に対する前記レジスト下層膜形成組成物の塗布性を向上させるための添加物であり、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤のような公知の界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R−30、同R−40、同R−40−LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で含有してもよいし、2種以上の組合せで含有することもできる。前記レジスト下層膜形成組成物が界面活性剤を含有する場合、前記界面活性剤の割合は、前記樹脂に対し、例えば0.1質量%乃至5質量%であり、好ましくは0.2質量%乃至3質量%である。
【0032】
次に本発明のレジストパターン形成方法について説明する。まず、精密集積回路素子の製造に使用される基板〔例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコンウェハー等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む。)、ITO膜が形成されたガラス基板〕上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を塗布し、その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークして硬化させレジスト下層膜を作製する。
【0033】
塗布後、ベークする条件としては、例えばベーク温度80℃乃至250℃、ベーク時間0.3分乃至60分間の範囲から適宜選択され、好ましくは、150℃乃至250℃、0.5分乃至5分間である。このような条件でベークすることにより、ポリマーの構造単位中のヒドロキシ基等の架橋部位と架橋剤が反応して架橋構造が形成される。特に、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーを架橋させることで、架橋ポリマーの架橋密度を高くすることができる。また、レジスト下層膜の膜厚としては、例えば0.001μm(1nm)乃至0.025μm(25nm)であり、好ましくは0.003μm(3nm)乃至0.01μm(10nm)である。
【0034】
次に、作製したレジスト下層膜上にレジスト膜を形成する。レジスト膜の形成は一般的な方法、すなわち、レジスト溶液をレジスト下層膜上への塗布及びベークによって行うことができる。塗布されるレジスト溶液としては、例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV、電子線に感光するものであれば、特に限定はなく、ネガ型、ポジ型いずれも使用できる。使用可能なレジスト溶液としては、例えば、住友化学(株)製;商品名PAR710,同PAR855、JSR(株)製;商品名AR2772JN、信越化学工業(株)製;商品名SEPR430、ダウケミカル社(旧ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ社)製;商品名APEX−Xが挙げられる。
【0035】
続いて、レジスト下層膜の上層に形成されたレジスト膜に対して、所定のマスク(レチクル)を通して露光する。露光には、例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUVを使用することができる。但し、電子線露光の場合、マスク(レチクル)を必要としない。また露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行うこともできる。露光後加熱の条件としては、加熱温度80℃乃至150℃、加熱時間0.3分乃至60分間の範囲から適宜選択される。
【0036】
露光後、現像、リンス及び乾燥することにより良好なレジストパターンが得られる。レジスト膜の現像液としては、アルカリ類の水溶液又は有機溶媒を使用することができる。アルカリ類の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類の水溶液、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1級アミン類の水溶液、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第2級アミン類の水溶液、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3級アミン類の水溶液、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類の水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩の水溶液、及びピロール、ピペリジン等の環状アミン類の水溶液が挙げられる。さらに、前記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第4級アンモニウム塩の水溶液、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液である。現像液として使用される有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート及びプロピル−3−メトキシプロピオネートが挙げられる。これらの中で好ましくは酢酸ブチルである。現像の条件としては、現像温度5℃乃至50℃、現像時間10秒乃至300秒の範囲から適宜選択される。
【0037】
そして、レジスト膜が前記工程により現像除去されたことにより露出した部分のレジスト下層膜を、ドライエッチングにより除去し、所望のパターンを基板上に形成することができる。
【実施例】
【0038】
本明細書の下記合成例1及び合成例3に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用いた。また、本明細書の下記合成例に示す分散度は、測定された重量平均分子量、及び数平均分子量から算出される。
【0039】
<合成例1>
テレフタル酸ジグリシジルエステル(ナガセケムテックス(株)製、商品名:デナコール〔登録商標〕EX711)100.00g、5−ヒドロキシイソフタル酸(東京化成工業(株)製)63.32g、4−tert−ブチルフタル酸無水物(東京化成工業(株)製)15.97g及びベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)製)3.96gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル733.01gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマーを含む溶液を得た。該ポリマーを含む溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好である。得られたポリマーを含む溶液に対しGPC分析を行ったところ、当該溶液中のポリマーは、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量4095、分散度は1.36であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(6−7)で表される構造単位及び下記式(7−7)で表される構造単位を有すると共に、下記式(8−7)で表される構造をポリマー鎖の末端に有し、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる樹脂に該当する。
【化17】
【0040】
<合成例2>
メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル10.00g(昭和電工(株)製、商品名:カレンズ〔登録商標〕MOI−BM)、ヒドロキシプロピルメタクリレート3.57g(東京化成工業(株)製)、及びトリフルオロエチルメタクリレート2.78g(大阪有機工業(株)製)にプロピレングリコールモノメチルエーテル38.23gを加えた後、フラスコ内を窒素にて置換し70℃まで昇温した。重合開始剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル33.89gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.68gを前記フラスコ内に窒素加圧下添加し、24時間反応させ、下記式(1−2)で表される構造単位、下記式(5−1)で表される構造単位及び下記式(3−2)で表される構造単位を有する共重合体を含む溶液が得られた。得られた共重合体を含む溶液に対しGPC分析を行ったところ、当該溶液中の共重合体は、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量9465、分散度は2.37であった。本合成例で得られた共重合体は、本発明のレジスト下層膜形成組成物用添加剤に使用される共重合体に該当する。
【化18】
【0041】
<合成例3>
メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル6.82g(昭和電工(株)製、商品名:カレンズ〔登録商標〕MOI−BM)、メタクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル4.43g(東京化成工業(株)製)、アダマンチルメタクリレート6.20g(大阪有機工業(株)製)、及び前記特許文献5の合成例3によって得られた2−トシルエチルメタクリレート5.03gにプロピレングリコールモノメチルエーテル23.73gを加えた後、フラスコ内を窒素にて置換し70℃まで昇温した。重合開始剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル38.51gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.77gを前記フラスコ内に窒素加圧下添加し、24時間反応させ、下記式(1−2)で表される構造単位、下記式(2−9)で表される構造単位、下記式(3−4)で表される構造単位及び下記式(4−2)で表される構造単位を有する共重合体を含む溶液が得られた。得られた共重合体を含む溶液のGPC分析を行ったところ、当該溶液中の共重合体は、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量10012、分散度は2.52であった。本合成例で得られた共重合体は、本発明のレジスト下層膜形成組成物用添加剤に使用される共重合体に該当する。
【化19】
【0042】
<実施例1>
本明細書の合成例1で得られた、ポリマー0.14gを含む溶液0.87gに、上記合成例2で得られた、共重合体0.0021gを含む溶液0.12g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.035g、及びピリジニウムp−トルエンスルホナート0.0043g(東京化成工業(株)製)を混合し、当該混合物にプロピレングリコールモノメチルエーテル5.04g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13.86gを加え溶解させた。その後、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0043】
<実施例2>
上記合成例1で得られた、ポリマー0.14gを含む溶液0.87gに、上記合成例3で得られた、共重合体0.021gを含む溶液0.12g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.035g、及びピリジニウムp−トルエンスルホナート0.0044g(東京化成工業(株)製)を混合し、当該混合物にプロピレングリコールモノメチルエーテル5.09g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13.86gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0044】
<実施例3>
国際公開第2005/098542号に記載の合成例1により得られた、下記式(6−1)で表される構造単位及び下記式(7−1)で表される構造単位を有するポリマー0.21gを含む溶液1.17gに、上記合成例2で得られた、重合体0.031gを含む溶液0.19g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.52g、及びp−トルエンスルホン酸(東京化成工業(株)製)0.0066gを混合し、当該混合物にプロピレングリコールモノメチルエーテル12.68g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.91gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【化20】
【0045】
<実施例4>
国際公開第2005/098542号に記載の合成例1により得られた、前記式(6−1)で表される構造単位及び前記式(7−1)で表される構造単位を有するポリマー0.21gを含む溶液1.17gに、上記合成例2で得られた、重合体0.031gを含む溶液0.18g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.052g、及びp−トルエンスルホン酸(東京化成工業(株)製)0.0066gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル12.68g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.91gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0046】
<比較例1>
本明細書の合成例1で得られた、ポリマー0.16gを含む溶液0.97gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.039g及びピリジニウムp−トルエンスルホナート0.0049g(東京化成工業(株)製)を混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル5.12g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13.86gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。本比較例で調製されたレジスト下層膜形成組成物は、本発明のレジスト下層膜形成組成物用添加剤を含まない。
【0047】
<比較例2>
国際公開第2005/098542号に記載の合成例1により得られた、前記式(6−1)で表される構造単位及び前記式(7−1)で表される構造単位を有するポリマー0.16gを含む溶液0.87gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.039g、及びp−トルエンスルホン酸(東京化成工業(株)製)0.049gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.15g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.94gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。本比較例で調製されたレジスト下層膜形成組成物は、本発明のレジスト下層膜形成組成物用添加剤を含まない。
【0048】
(フォトレジスト溶剤への溶出試験)
実施例1乃至実施例4、比較例1及び比較例2で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、半導体基板であるシリコンウェハー上に塗布した。そのシリコンウェハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間ベークし、膜厚25nmのレジスト下層膜を形成した。これらのレジスト下層膜を、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30質量%から成る溶剤に浸漬し、その溶剤に不溶であるか否かの確認実験を行った。その結果、浸漬前と浸漬後とで膜厚は変化しなかった。
【0049】
(フォトレジストパターンの形成及びレジストパターンの密着性試験)
実施例1乃至実施例4、比較例1及び比較例2で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、SiON膜が蒸着されたシリコンウェハーに塗布した。そのウェハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間ベークし、膜厚5nmのレジスト下層膜を形成した。これらのレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(住友化学(株)製、商品名:PAR855)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で105℃にて60秒間加熱してフォトレジスト膜(膜厚0.10μm)を形成した。
【0050】
次いで、(株)ニコン製、NSR−S307E(波長193nm、NA:0.85,σ:0.65/0.93(Dipole))のスキャナーを用い、フォトマスクを通して最適露光量で露光を行った。フォトマスクは形成すべきレジストパターンに応じて選ばれる。露光後、ホットプレート上、105℃で60秒間、露光後ベーク(PEB)を行い、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として0.26規定のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像した。以上の過程を経て、レジストパターンを形成した。ラインアンドスペースパターン(以下、L/Sと略称する。)の形成可否の結果を表1及び表2に示す。目的のL/Sが形成された場合を「良好」と表した。
【0051】
また、露光量を上記最適露光量から段階的に増加させることにより、L/Sのスペース部に照射される露光量が増す結果として形成されるL/Sの線幅を徐々に細らせた。その際、ラインパターンの倒れが発生する一つ前段階のラインパターンの線幅を最少倒壊前寸法とし、レジストパターンの密着性の指標とした。表1及び表2にその結果を示す。この最少倒壊前寸法の値が小さいほど、レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性が高いことを示唆している。特レジストパターンの線幅が微細な場合、1nmの差は重大である。そのため、当該最少倒壊前寸法は1nmでも小さい方が極めて好ましい。
【表1】
【表2】