特許第6497701号(P6497701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497701
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】非破壊検査方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/20066 20180101AFI20190401BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   G01N23/20066
   G01N23/203
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-96037(P2015-96037)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-232557(P2015-232557A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2018年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-98896(P2014-98896)
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐嗣
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−281339(JP,A)
【文献】 特開昭59−221644(JP,A)
【文献】 特開昭55−082006(JP,A)
【文献】 特開2010−249785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 − G01N 23/2276
G01B 15/00 − G01B 15/08
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線またはγ線(以下、両者をまとめてγ線という)を検査対象物に照射して前記検査対象物におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーおよび前記1回散乱γ線よりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーを含み、かつ各前記散乱γ線エネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出する第1の工程と、
前記散乱γ線エネルギー分布特性に基づき前記1回散乱γ線のピークと、前記2回散乱γ線のピークとを比較することにより前記検査対象物における減肉の有無を検出する第2の工程とを有することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載する非破壊検査方法において、
前記コンプトン散乱は、コンプトン後方散乱であることを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する非破壊検査方法において、
前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合であって、前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射する場合において、
主として前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく1回散乱γ線のピークと、主として前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークの両者に基づき、前記第1の壁部材の減肉の有無と、前記第2の壁部材における減肉の有無とを検出することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載する非破壊検査方法において、
前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合であって、前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射する場合において、
前記散乱γ線信号のうち、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記γ線源からγ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部の領域を除去した散乱γ線信号に基づき前記第2の壁部材における減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載する非破壊検査方法において、
前記γ線源は、陽電子の消滅に伴う一対のγ線を利用するとともに前記一対のγ線をコリメートして使用し、さらに前記陽電子の消滅に伴うγ線が検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記散乱γ線信号の所定の一部を選択することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項6】
請求項4に記載する非破壊検査方法において、
前記γ線源から照射するγ線は、レーザー光と電子線との衝突に伴う相互作用により発生させる一方、
前記γ線源の手前で前記レーザー光の一部を分岐し、分岐したレーザー光が検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記散乱γ線信号の所定の一部を選択することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一つに記載する非破壊検査方法において、
前記1回散乱γ線ピークの信号強度P1と前記2回散乱γ線ピークの信号強度P2の比(P2/P1)をとり、この比(P2/P1)が所定の閾値以上の場合に減肉が発生していると判断することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項8】
検査対象物に向けてγ線を照射するγ線源と、前記照射により検査対象物においてコンプトン散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出する検出器とを有する非破壊検査装置において、
前記散乱γ線エネルギーに対する前記散乱γ線信号の信号強度を表し、かつ1回散乱γ線のエネルギーおよび前記1回散乱γ線よりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーを含む散乱γ線エネルギー分布特性に基づき、前記1回散乱γ線の前記信号強度のピークである1回散乱γ線のピークと、前記2回散乱γ線の前記信号強度のピークである2回散乱γ線のピークとを比較することにより前記検査対象物における減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載する非破壊検査装置において、
前記コンプトン散乱は、コンプトン後方散乱であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載する非破壊検査装置において、
前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する前記検査対象物の前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射することにより前記第2の壁部材の減肉を検出する場合において、
主として前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく1回散乱γ線のピークと、主として前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークの両者に基づき、前記第1の壁部材の減肉の有無と、前記第2の壁部材における減肉の有無とを検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項11】
請求項8〜請求項10のいずれか一項に記載する非破壊検査装置において、
前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する前記検査対象物の前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射することにより前記第2の壁部材の減肉を検出する場合において、
前記散乱γ線信号のうち、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記γ線源からγ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部の領域を除去した散乱γ線信号に基づき前記第2の壁部材における減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項12】
請求項11に記載する非破壊検査装置において、
陽電子の消滅に伴う一対のγ線の一方を利用したγ線源と、
前記一方のγ線の照射と同時に反対方向に照射される他方のγ線をコリメートして検出するトリガー用検出器を有するとともに、
前記陽電子の消滅に伴うγ線が前記トリガー用検出器で検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記トリガー用検出器が前記陽電子の消滅に伴うγ線を検出した時点で生成されるトリガー信号で前記散乱γ線信号の所定の一部を前記検出器に取り込むように構成したことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項13】
請求項11に記載する非破壊検査装置において、
前記γ線源は、レーザー光と電子線との衝突に伴う相互作用によりγ線を発生させるものとし、
前記γ線源の手前で前記レーザー光の一部を分岐する分岐手段を有し、前記分岐手段で分岐したレーザー光が検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記散乱γ線信号の所定の一部を前記検出器に取り込むように構成したことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項14】
請求項8〜請求項13のいずれか一つに記載する非破壊検査装置において、
前記検出器は、
前記1回散乱γ線ピークの信号強度P1と前記2回散乱γ線ピークの信号強度P2の比(P2/P1)をとり、この比(P2/P1)が所定の閾値以上の場合に減肉が発生していると判断するように構成したことを特徴とする非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非破壊検査方法およびその装置に関し、特にコンプトン散乱を利用した非破壊検査に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
原子力設備の配管の検査等にはX線またはγ線(以下、本明細書において両者をまとめてγ線という)を利用した非破壊検査が汎用されている。これは検査対象物である配管等にγ線を照射し、これによる検査対象物の透過画像を解析して減肉の程度等を検出するものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、検査対象物の透過画像を得ることにより減肉の程度等を検査する場合においては、γ線を検出する検出器を、γ線を照射する線源に対し検査対象物を挟んで反対側に配置する必要がある。
【0004】
このため、線源に対する検査対象物の反対側が狭隘部であったり、他の配管等の障害物の存在により検出器を配設するための十分なスペースが確保できない場合も多い。
【0005】
一方、コンプトン後方散乱に基づく散乱γ線を利用すれば線源と検出器を検査対象物に対して同じ側に配設することもできる。コンプトン後方散乱とは、図16(a)に示すように、所定のγ線をターゲットTに照射したとき、γ線に対して角度Φの方向に飛び出す反跳電子Eとともに、エネルギーが変化した散乱γ線として元のγ線が散乱される現象をいう。ここで、散乱γ線の散乱角θはターゲットTに照射されるγ線のエネルギーEと散乱される散乱γ線のエネルギーEとで一意に定まる。散乱角θ>90°の領域に散乱する場合を、特に後方散乱という。
【0006】
したがって、図16(b)に示すように、γ線源01と検出器02とを散乱角θ>90°に合致するように配設すれば、γ線源01と検出器02とを検査対象物である配管03に対して同じ側に配設することができ、検出器02の配設条件を緩和することができる。ここで、検出器02では、図16(c)に示すように、散乱角θ(γ線源01の配設位置と検出器02の配設位置とがなす角度)で一意に特定される散乱γ線のエネルギーEで信号強度がピークとなる散乱γ線エネルギー分布が得られる。なお、図16(c)の横軸には、散乱γ線のエネルギーを採り、縦軸には検出器02で検出される散乱γ線信号の信号強度を採ってある。散乱γ線信号は、散乱γ線の強度を表す信号である。また、γ線源01および検出器02の前には、図示はしないが、通常コリメーターが配設される。
【0007】
一方、図17(a)に示すように、検査対象物である配管03が内周に減肉を生起することなく正常な状態を維持している場合の後方散乱γ線のエネルギーEの信号強度は、図17(b)に示すように、検査対象物である配管03の内周に減肉部03Aが形成されている場合よりも大きくなる。検査対象物である配管03の肉厚部分は鉄等の高密度物質であるのに対し、減肉部03Aは低密度の空気であるので、かかる空気部分でγ線の散乱強度が大きく低下するからである。例えば、γ線源01である放射性同位体イリジウム線源から照射されるγ線のエネルギーEが320keVとすると、散乱角θ=90°の場合の散乱γ線のエネルギーEは197keVと、一意に決まる。したがって、検査対象物である配管03に減肉部03Aが発生している場合には散乱γ線のエネルギーEの信号強度が小さくなる。
【0008】
そこで、図16(c)に示す散乱γ線エネルギー分布において散乱γ線のエネルギーEを検出することにより減肉の発生を検出し得る(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006―177841号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】(社)日本原子力学会「1995秋の大会」(1995年10月17日〜20日、原研) コンプトン散乱を用いた保温材表面からの点検技術、(株)東芝、宇高彰、濱島隆之、後藤哲夫
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上述の如く図16(c)に示す散乱γ線エネルギー分布特性における散乱γ線のエネルギーEの信号強度に基づき減肉を検出する場合には、γ線源01の揺らぎが問題となる。γ線源として、例えば放射性同位体線源を用いた場合、γ線源01から照射されるγ線の強度が時間の経過とともに揺らぐことがあり、これに伴い基準の信号強度が変化して高精度の測定の阻害要因となってしまうからである。
【0012】
なお、上述の如く、基準の信号強度が変化してしまうという問題は、図17に示す場合のように、コンプトン後方散乱を利用する場合のみならず、コンプトン散乱を利用する場合には、同様に発生する。すなわち、かかる基準の信号強度の揺れという問題は、散乱γ線のエネルギーEの信号強度の大きさのみを利用する限り、後方散乱に限ることなく、一般に発生する。
【0013】
本発明は、上述の従来技術に鑑み、コンプトン散乱γ線を利用する場合において、検査対象物の状態を、γ線源の揺らぎの影響を受けることなく、さらに検出器の配設位置の制限という問題を生起することなく、高精度に検出し得る非破壊検査方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明は次の知見を基礎とするものである。図1(a)に示すように、コンプトン散乱は、前述の如く、エネルギーEのγ線がターゲットT1に照射されることにより、γ線に対して角度Φの方向に飛び出す反跳電子Eとともに、エネルギーが変化した散乱γ線として元のγ線が散乱される現象をいうが、かかる散乱は、所定の確率で複数回生起されることもある。図1(a)では、2回散乱の態様を示している。この場合、エネルギーEのγ線がターゲットT1に照射されてエネルギーE21の1回散乱γ線となり、さらに1回散乱γ線が同じターゲットT1で2回目の散乱を起こすことにより、エネルギーE22の2回散乱γ線となっている。このときの各γ線のエネルギーE,E21,E22および1回散乱角θ、2回散乱角θとの関係は、次式(1)(2)で示される。
【0015】
【数1】
【0016】
ちなみに、エネルギーEのγ線がターゲットT1内で1回のみ散乱される場合の散乱角θ(=θ+θ)と散乱エネルギーEの関係は式(3)で示される。
【0017】
【数2】
【0018】
一般に、散乱回数が多くなるにつれ、信号強度が小さくなるので、散乱回数が増える程、図16(c)に示す散乱γ線エネルギー分布特性上では散乱γ線信号が検出されにくくなる。しかも、多重散乱に基づく散乱γ線信号は、通常、図16(c)に示す散乱γ線エネルギー分布特性上では1回散乱の場合の散乱γ線エネルギーよりも低エネルギー側に出現する。
【0019】
ところが、図1(b)に示すように、γ線源1から検査対象物である配管3に照射するγ線のエネルギーEおよび散乱角θを適切に選び、かつ測定精度を上げることにより、検出器2ではエネルギーEの1回散乱の高エネルギー側に、エネルギーE22の2回散乱のピークを観測できる。すなわち、例えば、E=320keVで散乱角θ=90°とすると、上式(3)よりE=197keV、上式(1)、(2)よりE22=234keVとなる。
【0020】
ここで、2回の散乱により後方90°(=θ=θ+θ)に散乱されるための散乱角度として、1回目の散乱角θ=45°、2回目の散乱角θ=45°とした。図1(c)は、1回散乱とともに2回散乱のピークが出現した散乱γ線エネルギー分布特性を示す特性図である。同図に示す特性図においては、エネルギーEの信号強度P1よりも小さいが、エネルギーEの1回散乱ピークよりも高エネルギー側でエネルギーE22の2回散乱ピークを与える信号強度P2が観測されている。
【0021】
今回、2回散乱ピークを有するエネルギー分布特性を解析する中で、図2(a)に示すように、検査対象物である配管3に減肉が発生していない場合と、図2(c)に示すように、減肉部3Aを有する場合とでは、散乱γ線エネルギー分布特性に顕著な違いが存在することが分かった。すなわち、減肉が発生していない場合には、図2(b)に示す散乱γ線エネルギー分布特性のように、予想通り、エネルギーEの1回散乱ピークの信号強度P1がエネルギーE22の2回散乱ピークの信号強度P2よりも大きいが、減肉部3Aが大きくなるにつれ、エネルギーEの1回散乱ピークの信号強度P1とエネルギーE22の2回散乱ピークの信号強度P2との差が縮まり、終には図2(d)に示す散乱γ線エネルギー分布特性のように、エネルギーEの1回散乱ピークの信号強度P1よりもエネルギーE22の2回散乱ピークの信号強度P2が大きくなるという逆転現象が生起されることが分かった。
【0022】
かかる逆転現象の発生原因は、次のように考えられる。図3に示す1回散乱の場合において、γ線源を点線源でペンシルビームを放出するものとし、さらに散乱γ線の観測点も理想的な鉛コリメーターを設置して1点のみとすると、観測点における1回散乱ピークの信号強度は、一点(γ線進行軸と鉛コリメーター回転対称軸の交差点)のみの散乱情報を得ていることになる。このため、1回散乱ピークは、減肉等で鉄材質が存在しない領域においては、空気からの後方散乱となるため、散乱γ線は急激に減少する。一方、図3に示す2回散乱の場合においては、理想的なコリメーターを設置したとしても、サンプル内での経路は無数に存在する。図中では、サンプル部分の垂直な線が経路の一部を表わしており、これはθ=θ=45°の場合に相当する。θ≠θ、θ=θ+θ(=90°)の場合の2回散乱を含めると経路は更に多くなる。ただし、この場合は2回散乱ピークのエネルギー位置が多少ずれるため、2回散乱ピークはブロードなものとなる。ここで、減肉等により、鉄サンプルの厚さが薄くなったとすると、図3(b)に示すように減肉した領域に相当する部分(図中の灰色部分)については、2回散乱は起こらないが、減肉せず残っている領域については、依然として2回散乱が起こり得る領域となる。したがって、サンプル厚さ減少に伴う2回散乱の信号強度の低下は、1回散乱の信号強度低下に比べて緩やかなものになると考えられる。場合によっては、今回の例のように1回散乱ピークと2回散乱ピーク強度が逆転する現象が起こるものと考えられる。
【0023】
2回散乱ピークは、ノイズではないγ線信号の信号強度であることから、これをうまく利用することにより、新たな減肉検知手法に繋がる可能性がある。すなわち、1回散乱の信号強度の大小のみを見るのではなく、散乱γ線エネルギー分布特性を健全な場合のものと比較することで、配管等の減肉の発生、さらに一般的には検査対象物の状態を検出することができると考えられる。例えば、図4に示すように1回散乱ピークと2回散乱ピークの信号強度比(P2/P1)をとり、この比が所定の閾値以上の場合に減肉が発生していると判断するという手法である。また、この比は配管の減肉量に応じて変化すると考えられるので、その変化量により減肉量を特定することもできる。
【0024】
この手法の利点としては、1回散乱ピーク、2回散乱ピークともに同じ線源および計測配置で測定を行っているため、信号強度比をとることにより、照射するγ線の線量が経時的に変化してもその影響を小さくして高精度の計測を行うことができる点が挙げられる。これは、例えば、健全なサンプルを用いて基準エネルギー分布特性を取得したときの照射γ線量に対し、実測時の照射γ線量が変化していたとしても、その変化の影響をキャンセルすることができるので、非常に有効である。
【0025】
かかる知見を基礎とする本発明の第1の態様は、X線またはγ線(以下、両者をまとめてγ線という)を検査対象物に照射して前記検査対象物におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーおよび前記1回散乱γ線よりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーを含み、かつ各前記散乱γ線エネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出する第1の工程と、前記散乱γ線エネルギー分布特性に基づき前記1回散乱γ線のピークと、前記2回散乱γ線のピークとを比較することにより前記検査対象物における減肉の有無を検出する第2の工程とを有することを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0026】
本態様によれば、配管の減肉等、検査対象物の状態によってコンプトン散乱の1回散乱ピークよりも2回散乱ピークが大きくなる場合があるという知見に基づき、コンプトン散乱の1回散乱ピークと2回散乱ピークとを比較することにより、検出対象物における減肉の有無を検出しているので、かかる検出を含む所定の非破壊検査を簡便かつ高精度なものとすることができる。
【0027】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する非破壊検査方法において、前記コンプトン散乱は、コンプトン後方散乱であることを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0028】
本態様によれば、コンプトン後方散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出して検査対象物の減肉等の状態を検出しているので、検査対象物に対して散乱γ線の検出をγ線の照射側と同じ側で行うことができる。この結果、検出器等の機器配置の自由度が大きく効率的な非破壊検査を実現し得る。
【0029】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合であって、前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射する場合において、主として前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく1回散乱γ線のピークと、主として前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークの両者に基づき、前記第1の壁部材の減肉の有無と、前記第2の壁部材における減肉の有無とを検出することを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0030】
本態様によれば、例えば配管の場合におけるγ線側の肉厚部における減肉の有無と、γ線源側の反対側の肉厚部における減肉の有無とを同時に検出することができる。
【0031】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれか一つに記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合であって、前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射する場合において、前記散乱γ線信号のうち、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記γ線源からγ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部の領域を除去した散乱γ線信号に基づき前記第2の壁部材における減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0032】
本態様によれば、例えば配管の場合におけるγ線源側の反対側の肉厚部における減肉の有無を良好に検出することができる。
【0033】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載する非破壊検査方法において、前記γ線源は、陽電子の消滅に伴う一対のγ線を利用するとともに前記一対のγ線をコリメートして使用し、さらに前記陽電子の消滅に伴うγ線が検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記散乱γ線信号の所定の一部を選択することを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0034】
本態様によれば、第2の壁部材における所定の情報を容易かつ適切に選択し得る。
【0035】
本発明の第6の態様は、第4の態様に記載する非破壊検査方法において、前記γ線源から照射するγ線は、レーザー光と電子線との衝突に伴う相互作用により発生させる一方、前記γ線源の手前で前記レーザー光の一部を分岐し、分岐したレーザー光が検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記散乱γ線信号の所定の一部を選択することを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0036】
本態様によれば、第2の壁部材における所定の情報を容易かつ適切に選択し得る。ここで、レーザー光が検出されるまでの光路長はサブミクロン〜ミクロンオーダーで調整することができるので、mmオーダーの減肉部であっても容易かつ高精度に検出し得る。
【0037】
本発明の第7の態様は、第1〜第6の態様のいずれか一つに記載する非破壊検査方法において、前記1回散乱γ線ピークの信号強度P1と前記2回散乱γ線ピークの信号強度P2の比(P2/P1)をとり、この比(P2/P1)が所定の閾値以上の場合に減肉が発生していると判断することを特徴とする非破壊検査方法にある。
【0038】
本発明の第8の態様は、検査対象物に向けてγ線を照射するγ線源と、前記照射により検査対象物においてコンプトン散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出する検出器とを有する非破壊検査装置において、前記散乱γ線エネルギーに対する前記散乱γ線信号の信号強度を表し、かつ1回散乱γ線のエネルギーおよび前記1回散乱γ線よりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーを含む散乱γ線エネルギー分布特性に基づき、前記1回散乱γ線の前記信号強度のピークである1回散乱γ線のピークと、前記2回散乱γ線の前記信号強度のピークである2回散乱γ線のピークとを比較することにより前記検査対象物における減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0039】
本態様によれば、配管の減肉等、検査対象物の状態によってコンプトン散乱の1回散乱ピークよりも2回散乱ピークが大きくなる場合があるという知見に基づき、コンプトン散乱の1回散乱ピークと2回散乱ピークとを比較することにより、検出対象物における減肉の有無を検出しているので、かかる検出を含む所定の非破壊検査を簡便かつ高精度なものとすることができる。
【0040】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載する非破壊検査装置において、前記コンプトン散乱は、コンプトン後方散乱であることを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0041】
本態様によれば、コンプトン後方散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出して検査対象物の減肉等の状態を検出しているので、検査対象物に対して散乱γ線の検出をγ線の照射側と同じ側で行うことができる。この結果、検出器等の機器配置の自由度が大きく効率的な非破壊検査を実現し得る。
【0042】
本発明の第10の態様は、第8または第9の態様に記載する非破壊検査装置において、前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する前記検査対象物の前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射することにより前記第2の壁部材の減肉を検出する場合において、主として前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく1回散乱γ線のピークと、主として前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークの両者に基づき、前記第1の壁部材の減肉の有無と、前記第2の壁部材における減肉の有無とを検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0043】
本態様によれば、例えば配管の場合におけるγ線側の肉厚部における減肉の有無と、γ線源側の反対側の肉厚部における減肉の有無とを同時に検出することができる。
【0044】
本発明の第11の態様は、第8〜第10の態様のいずれか一つに記載する非破壊検査装置において、前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線源側で交差する第1の壁部材および前記γ線源の反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する前記検査対象物の前記第2の壁部材に向けて前記γ線を照射することにより前記第2の壁部材の減肉を検出する場合において、前記散乱γ線信号のうち、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記γ線源からγ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部の領域を除去した散乱γ線信号に基づき前記第2の壁部材における減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0045】
本態様によれば、例えば配管の場合におけるγ線源側の反対側の肉厚部における減肉の有無を良好に検出することができる。
【0046】
本発明の第12の態様は、第11の態様に記載する非破壊検査装置において、陽電子の消滅に伴う一対のγ線の一方を利用したγ線源と、前記一方のγ線の照射と同時に反対方向に照射される他方のγ線をコリメートして検出するトリガー用検出器を有するとともに、前記陽電子の消滅に伴うγ線が前記トリガー用検出器で検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記トリガー用検出器が前記陽電子の消滅に伴うγ線を検出した時点で生成されるトリガー信号で前記散乱γ線信号の所定の一部を前記検出器に取り込むように構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0047】
本態様によれば、第2の壁部材における所定の情報を容易かつ適切に選択し得る。
【0048】
本発明の第13の態様は、第11の態様に記載する非破壊検査装置において、前記γ線源は、レーザー光と電子線との衝突に伴う相互作用によりγ線を発生させるものとし、前記γ線源の手前で前記レーザー光の一部を分岐する分岐手段を有し、前記分岐手段で分岐したレーザー光が検出されるまでの光路長を、前記γ線源から照射され前記第2の壁部材を経た前記散乱γ線が検出されるまでの光路長に対して調整することにより前記散乱γ線信号の所定の一部を前記検出器に取り込むように構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0049】
本態様によれば、第2の壁部材における所定の情報を容易かつ適切に選択し得る。ここで、レーザー光が検出されるまでの光路長はサブミクロン〜ミクロンオーダーで調整することができるので、mmオーダーの減肉部であっても容易かつ高精度に検出し得る。
【0050】
本発明の第14の態様は、第8〜第13の態様のいずれか一つに記載する非破壊検査装置において、前記検出器は、前記1回散乱γ線ピークの信号強度P1と前記2回散乱γ線ピークの信号強度P2の比(P2/P1)をとり、この比(P2/P1)が所定の閾値以上の場合に減肉が発生していると判断するように構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0051】
本態様によれば、照射するγ線の線量が経時的に変化してもその影響を除去して高精度の非破壊検査の実現に資することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、検査対象物に衝突して散乱する後方散乱γ線による2回散乱ピークが観察できる散乱γ線の散乱γ線エネルギー分布特性が、検査対象物が正常な場合と、そうでない場合とでは顕著に異なるという知見に基づいて両方の場合の特性を比較することにより、検査対象物の減肉等、検査対象物の状態を検出するようにしたので、γ線源と検出器とを検査対象物に対して同じ側に配設することができ、γ線源と検出器との配設条件の緩和を図ることができるばかりでなく、簡便に所望の非破壊検査を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】コンプトン後方散乱の2回散乱を利用する本発明の原理を模式的に示す図で、(a)は2回散乱を概念的に示す説明図、(b)はこの場合の機器配置を示す説明図、(c)は2回散乱ピークが観察される散乱γ線エネルギー分布特性を示す特性図である。
図2】本発明の原理を模式的に示す図で、(a)および(b)が検出対象物の配管に減肉がない場合、(c)および(d)が減肉がある場合である。
図3】コンプトン後方散乱における1回散乱の場合と2回散乱との場合の比較において、鉄サンプルに照射されたγ線の経路を示す説明図である。
図4】1回散乱ピークと2回散乱ピークの信号強度比(P2/P1)の鉄サンプルの厚さに対する特性を示す特性図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。
図6】配管の奥側の肉厚部にγ線を照射する場合の態様を示す図で、(a)は照射位置がZ=cで減肉がない場合、(b)は照射位置がZ=dで減肉がない場合、(c)は照射位置がZ=dで減肉がある場合の説明図である。
図7】第2の実施の形態の動作を説明するための図で、(a)はコンプトン後方散乱γ線信号の信号強度の時間特性を示す特性図、(b)は配管において2回散乱が発生する領域と2回散乱のγ線の経路との関係を示す説明図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。
図9】第2の実施の形態をさらに具体化した第1の実施例を示すブロック図である。
図10】第2の実施の形態をさらに具体化した第2の実施例を示すブロック図である。
図11】本発明の第3の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。
図12】本発明の第3の実施の形態の動作を説明するための図である。
図13】本発明の第3の実施の形態の動作を説明するための図である。
図14】本発明の第3の実施の形態の動作を説明するための図である。
図15】本発明の第3の実施の形態の動作を説明するための図である。
図16】従来周知のコンプトン後方散乱(1回散乱)の原理を模式的に示す説明図である。
図17】コンプトン後方散乱を利用して配管の減肉を非破壊検査する従来技術の原理を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一部分には、同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
<第1の実施の形態>
図5は本発明の第1の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。同図に示すように、本形態に係る非破壊検査装置は、本形態における検査対象物である配管3にγ線を照射するγ線源1と、配管3に照射されたγ線に基づき生成されるコンプトン後方散乱γ線を入射して所定の処理を行う検出器2とを有する。γ線源1と、コンプトン後方散乱γ線を入射する検出器2とは、配管3に対し同じ側(図では左側)に配設されている。ここで、γ線源1は配管3の内周面の一点であるγ線との交点I図5におけるZ=a)を狙って配管3にγ線を照射するように配設してある。γ線の照射により、配管3においてはコンプトン後方散乱による散乱γ線が生成される。検出器2は、散乱γ線を検出するように、配管3に対しγ線源1と同じ側に配設してある。本形態においては、γ線源1から配管3に向かう直線が配管3の内周面に入射する入射角α1と、コンプトン後方散乱γ線の散乱角α2とが同一となるように、γ線源1に対する検出器2の相対位置が選定されている。ここで、入射角α1と散乱角α2との基準となる線上には鉛ブロック11が配設してある。鉛ブロック11はγ線源1側と検出器2側とを分離するためのものである。このように分離することでγ線源1側で配管3の表面等で反射されたγ線を遮蔽して検出器2に入射されるのを防止している。なお、このように鉛ブロック11を配設することは必須ではない。また、γ線源1と検出器2とが上述の如き位置関係(α1=α2)とすることも必須ではない。さらに、理想的には、γ線源1はペンシルビームと呼ばれる極めて細いγ線を照射し、検出器2は入射面が可及的に点に近い面を有するものとする。
【0056】
本形態における、γ線源1は、例えば放射性同位体イリジウム線源を好適に適用し得る。検出器2は、コンプトン後方散乱γ線を入射する入射部2A、コンプトン後方散乱γ線を表すコンプトン後方散乱γ線信号を生成する信号処理部2B、コンプトン後方散乱γ線信号を処理して配管3の減肉の状態を検出する演算処理部2C、減肉の状態を検出するための配管3の基準データを記憶している記憶部2Dおよび演算処理部2Cで検出した検出結果を表示する表示部2Eを有している。さらに詳言すると、信号処理部2Bでは、コンプトン後方散乱γ線を処理して散乱γ線エネルギーに対するコンプトン後方散乱γ線信号の信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を生成する。記憶部2Dには、健全な(減肉を生起していない)配管3の散乱γ線エネルギー分布特性(以下、基準散乱γ線エネルギー分布特性という)が予め記憶してある。ここで、基準散乱γ線エネルギー分布特性は、図2(b)に示すように、エネルギーEの1回散乱ピークP1の信号強度とエネルギーE22の2回散乱ピークP2の信号強度とを含んでおり、この場合はP1>P2となっている。
【0057】
演算処理部2Cでは、入射部2Aを介してリアルタイムで入射されたγ線の実測データに基づき信号処理部2Bで得られた散乱γ線エネルギー分布特性と記憶部2Dに記憶している基準散乱γ線エネルギー分布特性とを比較して配管3における減肉の有無および場合によってはその程度(減肉量)を検出する。ここで、配管3に減肉部3A(図2(c)参照)を生起している場合、その程度によっては、図2(d)に示すように、散乱γ線エネルギー分布特性におけるエネルギーEの1回散乱ピークの信号強度P1とエネルギーE22の2回散乱ピークP2の信号強度との大小関係が逆転し、P1<P2となる場合がある。そこで、基準散乱γ線エネルギー分布特性と実測データから得られた散乱γ線エネルギー分布特性とを比較すれば、配管3における減肉の有無および場合によってはその程度(減肉量)を検出することができる。具体的には、例えば1回散乱ピークP1の信号強度P1と2回散乱ピークP2の信号強度P2との比(P2/P1)をとり、この比(P2/P1)が所定の閾値以上の場合に減肉が発生していると判断する。また、比(P2/P1)は配管3の減肉量に基づいて変化すると考えられるので、その大きさにより減肉量を特定することもできる。このように比(P2/P1)を採るようにすれば、γ線源1の揺らぎ等、経時的にγ線源1から照射されるγ線の線量が変化しても、減肉測定におけるその影響を完全に除去することができる。すなわち、基準エネルギー分布を得たときのγ線源1が照射するγ線の線量に対し、非破壊検査に伴う実測時のγ線源1が照射するγ線の線量が変化していても、その変化の影響をキャンセルすることができる。
【0058】
演算処理部2Cにおける所定のデータ処理の結果の減肉の有無およびその程度等の情報は表示部2Eに表示される。
【0059】
<第2の実施の形態>
配管3には、これを横断する一つの直線上に2箇所の肉厚部(壁部)が存在する。すなわち、同一直線上におけるγ線源1側(以下、これを「手前側」と称する。)の肉厚部とその反対側(以下、これを「奥側」と称する。)の肉厚部である。上記第1の実施の形態は、検査対象物である配管3の手前側の肉厚部における減肉の有無等を検出するものである。これに対し、減肉は配管3の奥側の肉厚部にも発生する場合がある。奥側の減肉を検出する場合には、配管3の奥側に向けてγ線源1からのγ線を照射する必要がある。すなわち、配管3の奥側の内周面の状態を検出する場合には、図6(a)に示すように奥側の内周面(Z=c)の一点を狙ってγ線を照射する必要がある。また、奥側の肉厚部の途中の位置(Z=d)の状態を検出する場合には、図6(b)に示すように位置(Z=d)の一点を狙ってγ線を照射する必要がある。ここで、図6(c)に示すように、Z=cからZ=dに至る減肉部3Bが発生した場合を考える。
【0060】
図6(a)に示す場合は、図中に垂直な線で示す2回散乱の経路は、ほとんどがZ=0〜aの手前側の肉厚部に形成される。したがって、この場合の2回散乱に基づく後方散乱γ線信号の信号強度は、手前側の肉厚部で発生した2回散乱に起因するものとなる。一方、図6(b)に示す場合(Z=d)は、図中に垂直な線で示す2回散乱の経路は、Z=c〜dの間で、奥側の肉厚部にも形成されるが、Z=0〜aの手前側の肉厚部に起因する信号強度が断然大きいので、奥側に起因する”2回散乱に基づく”後方散乱γ線信号は、手前側に起因する”2回散乱に基づく”後方散乱γ線信号に埋没してしまい、検出することができない場合が発生する。この場合、図6(b)に示す場合(Z=d)において、図6(c)に示すように減肉部3Bが発生しており、その影響で奥側に起因する2回散乱に基づく後方散乱γ線信号の散乱γ線エネルギー分布特性が変化していても、手前側に起因する2回散乱に基づく後方散乱γ線信号に埋没してしまい、検出器2で検出する後方散乱γ線信号に基づき前記変化を検出することは不可能である。
【0061】
奥側に起因する2回散乱に基づく後方散乱γ線信号の散乱γ線エネルギー分布特性の変化に基づいて、奥側の減肉部3Bを検出するためには、手前側の2回散乱の情報を遮断すれば良い。そこで、本形態ではγ線源1から照射されたγ線が、配管3の手前側の肉厚部のみを通り、検出器2に入射されるまでの時間と、配管3の奥側の肉厚部も通り、検出器2に入射されるまでの時間とを比較した場合、前者の時間がより短いことを利用して両者を分離している。すなわち、図7(a)に示すように理論的なデータに基づき、信号処理部2Bで得られる後方散乱γ線信号の信号強度の時間特性において、手前側の肉厚部に相当する領域を領域I、奥側の肉厚部に相当する領域を領域IIとする。この場合の、配管3の領域I、IIと2回散乱のγ線の経路との関係は、図7(b)に示す通りとなる。
【0062】
図8は本発明の第2の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。同図に示すように、本形態に係る非破壊検査装置の検出器12は、信号処理部2Bと演算処理部2Cとの間に領域選択部2Fを介在させてある。領域選択部2Fは、信号処理部2B、入射部2Aを介して入射されたコンプトン後方散乱γ線を表す理論的なデータであるコンプトン後方散乱γ線信号から領域IIの情報のみを選択する。すなわち、図7(a)に示すように、γ線源1から検出器2に至る光路長の違いに起因して時間軸上の位置が特定されるコンプトン後方散乱γ線信号Sγのうち、領域IIに相当する部分のみを切り出す。
【0063】
かかる本形態によれば、図7(b)に示すように、γ線源1から配管3の領域Iで2回散乱されて検出器2に入射されたコンプトン後方散乱γ線に基づく信号成分は領域選択部2Fで除去され、領域IIで2回散乱されて検出器2に入射された信号成分のみが演算処理部2Cに供給される。演算処理部2Cに供給される領域IIに対応するコンプトン後方散乱γ線信号Sγは、図2(b)または図2(d)に示すような散乱γ線エネルギー分布の情報を有しているので、記憶部2Dに記憶されている基準散乱γ線エネルギー分布特性のデータを参照しつつ演算処理部2Cで領域IIに関し第1の実施の形態と同様の信号処理を行うことにより領域IIに限定した配管3の減肉を検出し得る。
【0064】
領域選択部2Fは、さらに具体的には次に示すような実施例で好適に実現し得る。
【0065】
<第1の実施例>
図9は上記第2の実施の形態をさらに具体化した第1の実施例を示すブロック図である。同図に示すように、本実施例におけるγ線源1はコリメーター4の内部に配設してあり、γ線源1から照射される消滅γ線の一部がコリメーター4により配管3の領域IIにおける肉厚部のZ=dの位置に向けて照射されるよう配設されている。
【0066】
ここで、本実施例におけるγ線源1は、陽電子からの消滅γ線を利用するものである。陽電子は、すぐに消滅するが、消滅する際に消滅γ線として一対のγ線(エネルギー511keV)を、互いに反対方向に放出することが知られている。このγ線は四方に放射されるが、コリメーター4に規制されて配管3のZ=dの位置に向かう511keVのγ線に対して反対方向に向かうもののみをコリメーター4の内部に閉じ込め、コリメーター4の配管3とは反対側の開口に臨ませて配設したトリガー用検出器5に入射させている。トリガー用検出器5は陽電子の消滅に起因して発生したγ線の入射によりトリガー信号を生成する。トリガー信号は、検出器2がγ線源1から照射され配管3の領域Iおよび領域IIを経由したコンプトン後方散乱γ線に基づくコンプトン後方散乱γ線信号Sγ(図7(a)参照;以下同じ)のうち領域IIに対応するものを選択するためのものである。具体的には、図8に示す非破壊検査装置の信号処理部2Bから演算処理部2Cにコンプトン後方散乱γ線信号Sγを取り込むタイミングを制御する。すなわち、本実施例では、γ線源1から配管3の領域Iのみの肉厚部を通り、検出器12に至る2回散乱γ線の光路長LI1、γ線源1から配管3の領域Iおよび領域IIの肉厚部を通り、検出器12に至るまでの2回散乱γ線の光路長LII1およびγ線源1からトリガー用検出器5に至る光路長L01が、LII1>L01>LI1の関係を有するように各光路長L01、LI1、LII1を調整してある。すなわち、本実施例ではトリガー用検出器5がコリメーター4と一体となって図8における領域選択部2Fを構成している。
【0067】
かかる本実施例によれば、γ線源1から配管3の領域Iのみで2回散乱されて検出器2に入射されたコンプトン後方散乱γ線に基づく信号成分は実質的にトリガー用検出器5の出力信号であるトリガー信号で除去することができるので、領域IIで2回散乱されて検出器2に入射された信号成分のみ基づき領域IIに限定した配管3の減肉を検出し得る。
【0068】
なお、本実施例では、光路長L01,LI1,LII1の関係を最適化することにより領域IIに限定した配管3の減肉を検出するようにしたが、トリガー用検出器5と検出器2との間に遅延手段を介在させて遅延時間の最適化を図るように構成することもできる。
【0069】
<第2の実施例>
図10は上記第2の実施の形態をさらに具体化した第2の実施例を示すブロック図である。同図に示すように、本実施例におけるγ線源1はレーザー光と電子線との衝突に伴う相互作用によりγ線を生成するものである。かかるγ線源1は、レーザーコンプトン散乱(LCS)γ線源と呼称され、サブピコ秒からピコ秒オーダーの超短パルスレーザー光に基づく超短パルスγ線を照射する。
【0070】
本実施例では、γ線源1に至るレーザー光の一部を分岐手段であるビームスプリッター6で分岐し、分岐したレーザー光をミラー7を介してトリガー用検出器8に入射させている。この結果、レーザー光がトリガー用検出器8に入射された時点でトリガー信号が検出器2に供給される。トリガー信号は、検出器2がγ線源1から照射され配管3の領域Iおよび領域IIを経由したコンプトン後方散乱γ線に基づくコンプトン後方散乱γ線信号Sγのうち領域IIに対応するものを選択するためのものである。具体的には、図8に示す非破壊検査装置の信号処理部2Bから演算処理部2Cにコンプトン後方散乱γ線信号Sγを取り込むタイミングを制御する。すなわち、本実施例では、レーザー光発生手段(図示せず)からγ線源1に至り、配管3の領域Iのみの肉厚部を通り、検出器2に至るまでの2回散乱γ線の光路長LI2、同様に配管3の領域Iおよび領域IIの肉厚部を通り、検出器2に至るまでの2回散乱γ線の光路長LII2および前記レーザー光発生手段からビームスプリッター6,ミラー7を経てトリガー用検出器8に至る光路長L02が、LII2>L02>LI2の関係を有するように各光路長L02、LI2、LII2を調整してある。すなわち、本実施例ではトリガー用検出器8がビームスプリッター6,ミラー7と一体となって図8における領域選択部2Fを構成している。
【0071】
かかる本実施例によれば、γ線源1から配管3の領域Iのみで2回散乱されて検出器2に入射されたコンプトン後方散乱γ線に基づく信号成分は実質的にトリガー用検出器8の出力信号であるトリガー信号で除去することができるので、領域IIで2回散乱されて検出器2に入射された信号成分のみに基づき領域IIに限定した配管3の減肉を検出し得る。
【0072】
なお、本実施例でも、光路長L02,LI2,LII2の関係を最適化することにより領域IIに限定した配管3の減肉を検出するようにしたが、トリガー用検出器8と検出器2との間に遅延手段を介在させて遅延時間の最適化を図るように構成することもできる。
【0073】
<第3の実施の形態>
上述した実施の形態では、手前側の肉厚部又は奥側の肉厚部の減肉の有無等を検査するために、手前側又は奥側の何れかにγ線を照射し、照射した部位のコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーおよび2回散乱γ線のエネルギーを用いたが、本実施の形態では、奥側の肉厚部にγ線を照射し、奥側の肉厚部のコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーと、手前側の肉厚部のコンプトン散乱に基づく2回散乱γ線のエネルギーとを用い、奥側の肉厚部の減肉はコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーで、手前側の肉厚部の減肉はコンプトン散乱に基づく2回散乱γ線のエネルギーで、同時に検査することができる。
【0074】
図11は本発明の第3の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。基本的な構成は、図5図8と同一であり、γ線源1と検出器2とが所定の角度、本実施の形態では、120°の角度で配置されている。なお、本実施の形態では、γ線源1と検出器2とが、配管3の長手方向に沿って面内配置されているが、上述した実施の形態のように、配管3の横断面に沿った平面内に配置してもよい。また、γ線源1の照射側及び検出器2の入射側には、コリメーター9が配置され、また、γ線源1と検出器2との間には鉛ブロック11が配置されている。
【0075】
図12(a)には、図12(b)に示すように、配管3に減肉が生じていない場合の散乱γ線エネルギー分布を示す。また、図13(a)には、図13(b)に示すように、手前側に50%の減肉3Cが生じ、奥側に減肉が生じていない場合の散乱γ線エネルギー分布を示す。また、図14(a)には、図14(b)に示すように、奥側に50%の減肉3Dが生じ、手前側に減肉が生じていない場合の散乱γ線エネルギー分布を示す。また、図15(a)には、図15(b)に示すように、手前側に25%の減肉3Eが生じ、奥側にも25%の減肉3Fが生じている場合の散乱γ線エネルギー分布を示す。
【0076】
これらの結果より、1回散乱ピークP1は、手前側及び奥側の両方の減肉情報を反映し、手前側に減肉が生じると、奥側肉厚部からの1回散乱γ線に対する手前側肉厚部での減衰が減少するので、1回散乱ピークP1は大きくなり、奥側に減肉が生じると奥側肉厚部で生じる1回散乱γ線自体が少なくなるため、1回散乱ピークP1は小さくなる。一方、2回散乱ピークP2は、主に手前側の情報を反映し、手前側の減肉が大きいほど小さくなる。
【0077】
よって、1回散乱ピークP1と2回散乱ピークP2の両方の情報を分析することにより、手前側の減肉と奥側の減肉の状態を把握することができる。例えば、手前側に生じた減肉の状態毎、また、奥側に生じた減肉の状態毎、さらに、手前側及び奥側の両方に減肉が生じた場合の状態毎に、1回散乱ピークP1と2回散乱ピークP2の両方の情報を予め把握しておけば、検査時の手前側の減肉の状態と、奥側の減肉の状態とを同時に把握することができる。
【0078】
なお、本実施の形態の検査に加えて、上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態での検査を組み合わせることで、より正確な検査ができることはいうまでもない。
【0079】
<その他の実施の形態>
上記実施の形態において、減肉部3A,3Bの発生は、基準散乱γ線エネルギー分布特性と実測データによる散乱γ線エネルギー分布特性とに基づき1回散乱ピークP1の信号強度と2回散乱ピークP2の比(P2/P1)をとり、この比(P2/P1)が所定の閾値以上の場合に減肉が発生していると判断するようにしたが、これに限るものではない。
【0080】
エネルギーEの1回散乱ピークP1がエネルギーE22の2回散乱ピークP2よりも大きいが、減肉部3A,3Bが大きくなるにつれ、エネルギーEの1回散乱ピークP1とエネルギーE22の2回散乱ピークP2との差が縮まり、終にはエネルギーEの1回散乱ピークP1よりもエネルギーE22の2回散乱ピークP2が大きくなるという逆転現象が生起されるという知見を利用するものであれば、それ以上の特別な制限はない。したがって、前記逆転現象または逆転現象に向かって1回散乱ピークP1の信号強度と2回散乱ピークP2の信号強度の差が縮まっている事実に基づき検出対象物の減肉を検出するものであれば、全て本発明の技術思想の範囲に含まれる。例えば、ピークP1,P2の差に基づく場合や、散乱γ線エネルギー分布特性のパターン認識を利用する場合等が考えられる。ただ、上述の如く比(P2/P1)を基準とする場合、γ線源1の線量の揺らぎ等、経時的な変動要素の影響を完全に除去することができるという利点はある。
【0081】
また、検出対象物は配管3に限定するものではない。コンクリート構造物等、空気よりも高密度の壁部材であれば特に材料および形状を限定する必要はない。特に、第2の実施の形態の検出対象物であっても、γ線の照射方向となる直線にγ線源側(手前側)で交差する第1の壁部材(肉厚部)および前記γ線源の反対側(奥側)で前記直線に交差する第2の壁部材(肉厚部)とを有するものであれば、それ以上の制限はない。すなわち、壁部材が配管3のように連続している必要は必ずしもなく、個別に独立していても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は配管等の検査対象物が錯綜して配設されている発電所等の保守、点検等に伴う非破壊検査を実施する産業分野で有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
I,II 領域
1 γ線源
2,12 検出器
3 配管(検査対象物)
4 コリメーター
5,8 トリガー用検出器
6 ビームスプリッター(分岐手段)
7 ミラー
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