(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リブ部(14)が空隙(10.2)から磁気ヨーク(10)の内部に進行している間に、磁極片(10.1)を介してリブ部(14)を通過する磁束が、リブ部(14)及びリブ部と共にテーブル(6)の方向を反転させる磁気抵抗力を発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載のXYテーブル。
リブ部(14)と、反転用コイル(11)及び磁極片(10.1)を有する磁気ヨーク(10)とが、テーブル(6)の移動方向(X)に関して両側に配置されており、その結果、テーブル(6)が移動方向(X)に対して前方及び後方に動くことができることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のXYテーブル。
【背景技術】
【0002】
閉ループ制御による一つの平面内の二つの方向におけるテーブルの精確な位置決め、並びにこの平面に対して直角な方向におけるテーブルの位置とこれら三つの直線方向の周りのテーブルの回転に関する閉ループ制御は、特に、半導体製造時の重要な要件である。この場合、テーブル上に設置されたウェーハは、露光設備のレンズ、顕微鏡の対物レンズ、ウェーハを処理又は検査するための電子ビームレンズなどのツールの下で位置決めしなければならない。固定位置のツールと関連して、このテーブルは、ウェーハ自身の規模によるウェーハ面内の動きを実行できなければならず、それに対して直角な方向及び全ての起こり得る傾斜に関して、例えば、ウェーハの厚さ変化又はウェーハの前側と後側の平行度の偏差を補償できる少なくとも小さい補正が必要である。
【0003】
この技術分野では、ウェーハの幅に渡る個々のスワスに沿ってテーブルを水平方向に関して前方及び後方に動かす実際の用途が知られており、それぞれウェーハを横断した後、別のスワスへの飛び越しが行なわれ、その結果、ウェーハがツールにより曼陀羅形状の行程で走査される。そのように実施する際に、テーブルの速度は、一つのスワス内において一定である。この文脈において、主として各スワスの終端で方向反転するために大きな力が必要であり、それとは別に、これらの駆動部は、ただ小さい位置補正動作を可能にするとともに、テーブルの速度を一定に保持しなければならない。
【0004】
磁力により動かされて、浮遊状態に保持される(磁気浮上ステージと呼ばれる)この種のテーブルは、機械的な支持部を使用していないことにより、これらのテーブルが非常に僅かの邪魔な粒子しか発生せず、クリーンルームに特に相応しい状態を作り出すので、半導体製造に特に適している。
【0005】
そのようなテーブルの例は、特許文献1に記載されている。そこでは、テーブルは、平面アレイ磁石により動かされる。テーブルは、その下側にコイルを有し、そのコイルに電流を好適に流すことにより、六つの自由度全てにおいてテーブルを動かすことができる。しかし、この形式のテーブルは、(作業領域全体に渡る加速のための大きな力が不要であるため)その駆動部が不必要に重く、その結果、追加の重量を動かさなければならないので、前述した特別な移動パターンのためには最適化されていない。更に、可動コイルに必要な電源ケーブルは、精確な位置決めには不利である。テーブルと共に動くコイルで発生する熱が、多くの用途で問題となる可能性が有る。それらの磁石領域も、イオンビーム又は電子ビームの用途などの様々な実際の用途に対して不利となる可能性が有る。
【0006】
負荷を垂直方向に保持して、小さい距離に渡って位置決めできると同時に、水平方向に動かすことができる磁気軸受が特許文献2に記載されている。そこでは、可動式の強磁性棒の上と下に二つの平行な腕部分を配置したU字形状のヨークがステータとして使用されている。そのU字形状のヨークの閉じた端部には、永久磁石が組み込まれており、その磁束が腕部分に沿って案内されて、磁気回路がヨークと棒の間の空隙を横切って閉じている。その例で発生する磁気抵抗力は、棒の重力に対抗して作用し、棒の垂直方向の繊細な位置決めのために、磁石の磁界を強弱できるコイルを用いて調節することができる。更に、そのヨークの腕部分の中の一つに巻き付けられた別のコイルによって、棒に水平方向の力を加えることができる。そのような様々な方向に互いに相対的に配置されたヨークと棒の幾つかの構成は、六つの自由度全てにおける棒及びその棒に連結された物体の位置決めを可能にしている。その駆動部により動かされる重量、そのため棒は非常に小さく、その駆動部は、可動コイル又は可動磁石を備えた駆動部と異なり、「可動鉄片」形式である。
【0007】
そのような駆動部により得られる水平方向の力は、或る実際の用途に対して問題となり、それらの力は、恐らく高いスループット率による機械加工プロセスを実行可能とするには小さ過ぎる。高いスループットを実現するには、速く動くウェーハを減速して短い距離で停止させた後、反転させて速い動きにするまで再び逆方向に加速する必要が有る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のことから、本発明の課題は、機械加工プロセスのより高いスループット率を保証するために、少なくともXYテーブルの或る位置において、テーブルの移動方向を反転させるのに使用可能な大きな力を作り出す手法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、請求項1に記載されたテーブルの方向を反転させるための別個の駆動部を有するXYテーブルによって達成される。
【0011】
テーブルの一つの端部から突き出るとともに、反転すべきテーブルの移動方向に対して直角に延びる強磁性のリブ部を備えた、テーブルの移動方向を反転させるための別個の駆動部を有するXYテーブルを開示する。この駆動部は、テーブルが反転地点に近付いた時に、このリブ部を受け入れる磁気ヨークを有し、この磁気ヨークの自由端は、反転用コイルを用いて切換可能な磁極片を有し、この磁極片は、リブ部をヨークの内部に通過させるためのヨークの空隙内に磁束を集束させる。
【0012】
従って、そのような方向反転用の別個の駆動部を備えたXYテーブルは、ウェーハのスワス単位のプロセスのために、走査動作中の外部からの影響を克服するとともに、その動作中の位置又は速度を精密に制御する比較的弱い駆動部(そのような駆動部も以下で説明する)しか必要としない。この場合、各スワスの終端での方向反転に必要な大きな力は、そのような目的のために最適化された別個の駆動部によって発生される。この別個の駆動部は、好ましくは、走査動作中は作動されず、実際の機械加工プロセスを妨害しない。
【0013】
この方向反転用の別個の駆動部は、「可動鉄片」形式である。そのことは、小さい追加重量だけをテーブルと共に動かせば良いことを意味する。テーブル又は電気エネルギー供給部の冷却は不要である。磁石又はコイルをテーブルに直接取り付けた関連技術による平面モータの場合のように、磁界を発生する部品を動くテーブルに配置することもない。
【0014】
この別個の駆動部は、非接触式に動作するダイレクトドライブである。それは、歯車ユニットを必要とせず、邪魔な粒子を発生しない。この駆動部は、少数の簡単な部品だけから構成され、そのため、安価であり、製造及び保守が複雑とならない。この駆動部は、非常に平坦に組み立てられ、そのため、(テーブル面に対して直角な)垂直方向において非常に小さいスペースしか占有しない。特に、本発明の駆動部方式を二つの交差する直線軸を上下に積み重ねた構造の関連技術によるXYテーブルと比較した場合に、そのことが当てはまる。
【0015】
この方向反転用駆動部がテーブル用の実際のXY駆動部とは別物であるので、これら二つの駆動部の力の経路は異なる。テーブルの方向を反転させるのに必要な大きな力又はその反力は、テーブル又はツールに悪い影響を与えないように、釣合重りによって吸収するか、或いは別個の補強フレームを介して床に案内することができる。
【0016】
本発明の更なる利点及び詳細は、以下における図面に基づく様々な特別実施形態の記述から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ずは、
図1〜4を用いて、垂直方向の力と比較的小さい水平方向の力を発生する駆動部とそのような駆動部を使用するXYテーブルを説明する。次に、
図5〜7を用いて、XYテーブルの移動方向を反転させるための別個の駆動部の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、XYテーブル用の駆動部の斜視図を図示している。第一の腕部分1.1、第二の腕部分1.2及びこれら二つの腕部分を連結してU字形状を形成する閉じた端部1.3を有する透磁率の高い材料から成る固定位置のU字形状のヨーク1を見ることができる。
【0020】
ヨーク1に対して相対的に動くことができる強磁性の棒2が、腕部分1.1,1.2と交差して延びている。何れにせよ、棒2と腕部分1.1,1.2の間の交差地点には、ヨーク1と棒2を互いに分離する空隙が有る。
【0021】
このヨーク1の閉じた端部1.3には、ヨーク1と棒2の部分を通る磁束を発生する永久磁石3が配置されている。この閉じた磁気回路は、二つの空隙を横切る行路を有し、自己完結している。同じくヨーク1の閉じた端部1.3に配置され、ヨーク1の周りに巻き付けられた第一のコイル4によって、この第一のコイル4を流れる電流の強さと方向に応じて、ヨーク1と棒2を通る磁束を増減することができる。この第一のコイル4における磁石3の磁界と等しい磁界を発生させる追加の一定の電流を使用することによって、磁石3を省略することができるが、その選択肢の電力効率はずっと小さい。
【0022】
この磁気回路の磁気抵抗は、特に、空隙において高く、その値は、棒の位置に依存する。そのため、磁気抵抗力は、これらの空隙を小さくするように作用する。腕部分1.1,1.2が水平面内に有り、棒2が垂直方向に関してヨーク1の下に有る場合、この磁気抵抗力は、少なくとも棒2及び棒2と繋がった部分の重力に対抗して作用する。第一のコイル4を流れる電流の好適な閉ループ制御を規定すると、この空隙を一定に保持することができ、そのため、棒2(及びそれと繋がった部分)の重力を相殺することができる。棒2は、ヨーク1の下で空中に浮遊し、Z方向における垂直位置に関して、或る限度内で位置決めすることもできる。そのために、好適なコントローラ構成を用いて、この空隙、即ち、棒の垂直位置が目標値に調整されるように、第一のコイル4を流れる電流を制御する。更に、このコントローラ構成は、例えば、音及び気流により生じる、棒2に作用する外乱力に対抗するために使用することができる。
【0023】
同じくヨーク1の腕部分1.1,1.2の(ここでは、X方向とも呼ばれる)延伸方向Xに関して棒2を位置決めできるようにするために、第二のコイル5が第二の腕部分1.2の周りに巻き付けられている。棒2がこの第二のコイル5の下に位置する限り、この第二のコイル5を流れる電流は、第二の腕部分1.2と棒2の間の交差地点で空隙を通る磁束を横切る。ローレンツ反力(より正確には、主にローレンツ型の力)の一つの成分がX方向に対して棒2に作用し、この力は、大きさと方向に関して第二のコイル5の電流により調整することができる。この棒2の取り得る行程範囲を出来る限り大きくするために、第二のコイル5は、第二の腕部分1.2の全長に巻き付けられる。
【0024】
ヨーク1の閉じた端部1.3における磁石3と第一のコイル4の配置に関して、閉じた端部1.3は、第二のコイル5を備えていない、棒2の可動範囲外に有る、ヨーク1の部分と見做される。この「U」字の底部に加えて、その底部に近い第一と第二の腕部分1.1,1.2の一部も、第一のコイル4と磁石3を配置するのに適しており、U字形状のヨーク1の閉じた端部とも呼ばれる。
【0025】
このコイル5を棒2の位置に応じて電流を運ぶか、或いは運ばない幾つかの部分に分割することは一つの選択肢であり、その利点は、第二のコイル5の損失が低減されることである。第二の腕部分1.2における第二のコイル5と同様に、第一の腕部分1.1に追加のコイルを使用することは別の選択肢である。
【0026】
図2は、XZ平面に沿って見た第二の腕部分1.2の断面図を図示している。ここでは、第二のコイル5の電流が空隙内の磁束Φを横切っていることが明らかに分かり、そのようにすることで、X方向にローレンツ力を発生させて、その反力−FLが棒2に作用する。
【0027】
従って、好適なコントローラ構成によって、二つのコイル4と5を流れる電流を調整して、垂直のZ方向と腕部分1.1,1.2に沿った水平のX方向の両方に関して、棒2を位置決めすることができる。第一のコイル4又は第二のコイル5を流れる電流の変化が常に水平方向及び垂直方向の力に作用するので、そのようなコントローラ構成は、水平方向及び垂直方向の力の相互依存性を考慮しなければならない。例えば、水平方向Xの力が必要であれば、第二のコイル5を流れる電流を作動しなければならない。この電流は、空隙内の磁束Φを、そのため、垂直方向の力を変化させる。さもなければ棒2の垂直方向の位置が変化してしまうので、第一のコイル4を流れる電流によって、それに対抗しなければならない。
【0028】
図2に図示されている通り、テーブル6が、異なる方向に延びる、何れにせよ二つのコイル4と5を有するU字形状のヨーク1と交差する少なくとも三つの棒2と接続されている場合、全部で六つのコイル電流によって、テーブル6の六つの自由度全てを調整することができる。テーブル6は、機械的な支持部を必要とせず、非接触式に浮遊状態に保持するとともに、水平面内に位置決めすることができる。
【0029】
そのような構成の例が
図3に図示されている。そこでは、可動式の長方形のテーブル6の各外縁に沿って、それぞれ一つの棒2が配置されている。これらの棒2(何れにせよ直角に交差する棒2)の上には、固定位置の四つのU字形状のヨーク1が配置されており、それぞれが、前述した通り、磁石3と第一及び第二のコイル4,5を有する。固定位置のツール8により処理すべきウェーハ7は、テーブル6上に配置されている。例えば、ツール8は、ウェーハ7を検査する顕微鏡又は恐らくウェーハに塗布されたフォトレジストを露光する機器とすることができる。
【0030】
ウェーハ7を保持するテーブル6の表面は、駆動部のヨーク1のXY平面に対して平行である。本出願を通じて平行性に言及する全ての場合において、数学的な意味での平行性を技術的には実現できない。完全な平行性からの或る程度のずれは、多くの場合弊害とはならない。
【0031】
ヨーク1の腕部分とその上に巻き付けられた第二のコイル5は、何れにせよ十分に長く、その結果、ツール8がウェーハ7の各地点に到達できるように、テーブル6及びそれと共にウェーハ7をX方向及びY方向に移動させることができる。そのような棒2の長さは、四つの駆動部の各々がテーブル6の実際の位置に関係無く何時でもX方向又はY方向に対して水平方向の力を印加できるとともに、Z方向に対して垂直方向の力を印加できることを保証する。
【0032】
同じく四つの駆動部全てにおいて実現可能なZ方向の小さい動きは、Z方向におけるテーブル6の移動、或いはX方向又はY方向の周りの傾斜を可能とする。何れにせよ互いに逆側に配置された第二のコイル5が一つのヨーク1の幅だけ互いに相対的に横方向にずれており、そのため、Z方向の周りのトルクを発生できるので、Z軸の周りの回転を実現することができる。
【0033】
そのため、四つの駆動部の好適な制御を規定すると、全部で八つの電流を調節することによって、六つの自由度全てにおいて、テーブル6を位置決めすることができる。
【0034】
例えば、個々の駆動部の最も大きな垂直方向の力は数十Nの範囲内とすることができる。従って、そのような四つの駆動部は、棒2とその積載物を含む重量が10kgの規模であるテーブル6を浮遊状態に保持することができる。
【0035】
他方、水平方向に実現されるローレンツ力はそれより著しく、例えば、一桁小さい。以下において、その結果得られる水平方向における比較的小さい最大加速を考察する。
【0036】
先ず第一に、
図4を参照して、別の実施例を説明する。そこには、テーブル6用の四つの駆動部が模式的にのみ図示されており、前の実施例と同様に構成されている。しかし、そこでは、四つのヨーク1全てとそれらの腕部分1.1,1.2は、X方向に沿って延びている。棒2は、大幅に短くされて、テーブル6の隅に配置されている、より詳しくは、それらがヨークと90度以外の角度で交差するように配置されている。ヨーク1に対して相対的な棒2の回転によって、垂直方向の(磁気抵抗)力は限られた程度しか影響されない。水平方向のローレンツ力は、棒2に対して直角の成分を有する。
【0037】
この配置構成は、XとY方向における力の発生とテーブル6の位置決めを可能とする。このY方向に縮小され、X方向に延伸された構造形状は、駆動部の外側寸法を低減し、そのようにして装置全体の外側寸法も低減させる。
【0038】
図4に図示された構成が役に立つ実際の用途の例は、ツール8が既にY方向においてウェーハ7の大部分を覆っており、その結果、Y方向には、小さい動作範囲しか必要でない一方、X方向には、ウェーハ7の直径全体に渡って移動させなければならない処理設備とすることができる。そのような用途では、図示された駆動部の配置形態がY方向の動作範囲を縮小していることは問題とならない。この例の構成の利点は、
図3による構成と比べて、Y方向に、より小さくなっていることである。
【0039】
既に前述した通り、ここで説明した駆動部によって得ることができる水平方向の力は比較的限定されている。ウェーハ7をスワス単位に走査しなければならない、そのため、ウェーハが一つのスワスを一定の(取り得る最高の)速度で通過した後、各スワスの終端で(ここでは、方向反転とも呼ばれる)移動方向を反転させて、別のスワスに飛び移り、この次のスワスを逆方向に動く実際の用途は、特に、取り得る最高の加速度と、それに対応して方向反転のための大きな力を必要とする一方、さもなければ、小さい力を用いて、摩擦だけを克服するとともに、位置又は速度の起こり得る、より小さい補正を行なわなければならない。この小さい力は、前述した駆動部を用いて、或いは恐らく関連技術による別の駆動部を用いて比較的簡単に加えることができる。そのために、方向反転プロセスに特化した、この短い時間期間の間だけ動作すれば良い別個の駆動部を使用可能とするのが有利である。そして、この直線運動用の駆動部は、それに応じて、より小さい寸法にすることができる。
【0040】
図5は、テーブルの方向を反転させる別個の駆動部を有するXYテーブル6を図示している。先ず第一に、
図5(a)を参照して、この別個の駆動部の基本構成を詳しく説明する。
【0041】
X方向に動くことができるテーブル6の上端には、前述した形式の駆動部に対して、棒2が固定されている。しかし、関連するU字形式のヨーク1は図示されていない。
【0042】
テーブル6の外側の端部には、反転すべき移動方向Xに対して直角に延びる突き出た強磁性のリブ部14が取り付けられている。磁気ヨーク10は、テーブル6の移動範囲の外側の終端に配置されている。この磁気ヨーク10は、スイッチ13を介して電圧源又は電流源12に接続された反転用コイル11を有する。
【0043】
磁気ヨーク10は、テーブル6の方を向いた側に、反転用コイル11を用いて発生した磁束を空隙10.2内に集束させる一対の磁極片10.1を有する。この空隙10.2は、テーブル6の強磁性のリブ部14を受け入れ可能な形状をしており、その結果、リブ部14は、空隙10.2を通過して移動し、そのテーブル6から遠い方を向いた側に再び出現することができる(その位置は
図5(c)に図示されている)。磁気ヨーク10は、必ずしもそこに図示されている通りC字形状にする必要はなく、切換可能な最大の実現し得る磁束を空隙10.2内に発生させることができるとともに、強磁性のリブ部14が空隙10.2を通って磁気ヨーク10内に十分に延びることができることだけが重要である。そのために、ヨーク10の腕部分は、X方向に十分長くなければならない。以下において、
図6を参照して、この制限を回避する別の実施形態を説明する。
【0044】
リブ部14が磁気ヨーク10内に十分に進入できるようにするため、リブ部14は、更に、テーブル6の非強磁性の突起部14.1上に配置される。この突起部は、リブ部14と同様に、磁極片10.1の間に嵌入するように形成しなければならない。
【0045】
図5(a)〜(g)は、方向反転の時間シーケンスを詳しく図示している。最初の(a)では、反転用コイル11に電流は流れておらず、磁極片10.1の間の空隙10.2内には磁束は発生していない。テーブル6及びそれと共にリブ部14が、負のX方向に空隙10.2に向かって動く。
【0046】
リブ部14が完全に空隙10.2内に入った場合(b)にのみ、スイッチ13が閉じられて(c)、リブ部14で満たされた空隙10.2内の磁束が増大する。しかし、テーブル6が制動されずに動き続けるので、リブ部は磁気ヨーク10の内部に進行し、そのようにして、空隙10.2のテーブル6から遠い方を向いた側で空隙10.2から離れる(d)。しかし、そのことは、空隙10.2の磁気抵抗を上昇させ、その結果、動きを弱める磁気抵抗力を発生させることとなる。この磁気抵抗力は、リブ部14を空隙10.2の方に引き戻そうとする。そのため、その力は、テーブル6の移動方向に対抗して、最終的に所望の方向反転を引き起こす。例えば、典型的な実際の用途では、磁束が作動状態となった後、方向反転が起こる前にテーブル6が、そのためリブ部14が依然として進む距離を5cmと想定することができる。この距離は、方向反転用の別個の駆動部を設計する際に考慮しなければならない。
【0047】
リブ部14は、磁気抵抗力によって加速されて、方向反転後に空隙10.2の方に逆戻りする(e)。その時点で、スイッチ13が再び開かれて(f)、リブ部14は、ここで正のX方向に空隙10.2から離れる(g)。ここで空隙から離れると、磁束が既に再び停止状態となるので、磁気抵抗力は発生しない。
【0048】
従って、リブ部14が、空隙10.2のテーブル6の方を向いた側に入るとともに、空隙10.2のテーブルから遠い方を向いた側に再び出現する。そこで、磁気抵抗力が方向反転を引き起こす。リブ部は、再度逆方向に空隙10.2を通過して進行する。リブ部が空隙を出た時に、方向反転が完了する。
【0049】
図6は、テーブル6の移動方向を反転させる別個の駆動部の代替実施形態を図示している。二つの空隙10.2と二対の磁極片10.1を有する二体構成のヨーク10が使用されている。この構成では、ヨーク10のテーブル6から遠い方を向いた側が開いている。それにも関わらず、このヨークのテーブル6から遠い方を向いた側は、
図5の前の実施形態のように、ヨーク10の内部と呼ばれる。同様の部分には、
図5と同じ符号が付与されている。この代替実施形態は、
図5(a)〜(g)を参照して前述したものと同じ形態で動作する。
【0050】
XYテーブルの方向を反転させる別個の駆動部の特別な利点は、方向反転時にだけ作動することである。その時には、通常テーブル6上に配置されたウェーハ7に対して機械加工プロセスは行なわれない。そのことは、機械加工が外部磁界により妨害される場合に、そのため、例えば、電子ビームリソグラフィ又はそれ以外のマスクを使わない露光プロセスの場合に特に重要である。
【0051】
電源12は、短い時間反転用コイル11に使われる高い電流を作り出さなければならない。そのような好適な形式の電流源は、個々の方向反転事象の間に充電され、スイッチ13が閉じた時に反転用コイル11にエネルギーを出力するコンデンサとすることができる。このコンデンサに蓄えられたエネルギーは、最終的にテーブル6の方向反転のために使用される。
【0052】
図7から明らかな通り、何れにせよ方向反転用の別個の駆動部は、テーブル6上に設置されたウェーハ7をスワス単位で曼陀羅形状に処理するテーブル6の二つの互いに逆側の端部に配備しなければならない。従って、テーブル6は、前方及び後方に速く動くことができ、動きの終りに、何れにせよ方向を反転させる。
【0053】
図7の上半分には、最終的にテーブル6の一連の動きを決定する典型的な曼陀羅形状の処理行程7.1が図示されている。例えば、テーブルを浮遊状態に保持するには、ちょうど全体として100Nで十分であるので、X方向の長い動きの間、外乱の補償と方向及び速度の閉ループ制御のためには、
図1〜4で述べたXYテーブル6用駆動部により加えられる1N以内の力で十分である。Y方向におけるスワスの飛び移りも、1ニュートン以内で対処できるとともに、この駆動部により加えることができる。しかし、方向反転のためには、著しくより大きな力、例えば、この例では200Nが必要である。それらの力は、テーブル6の方向を反転させる別個の駆動部により加えなければならない。
【0054】
図7で見ることができる通り、X方向のスワスは、例えば、ウェーハ7の(Y方向に関して)中央で最も長い一方、プロセスの開始及び終了近くでは、著しく短くなっている。テーブル6の網羅する必要の無い区画に関する時間を節約するために、X方向の方向反転用の二つに別個の駆動部を調整することが可能である。そのために、
図7の下半分には、テーブル6がそれらの間を前方及び後方に動く間に、方向反転用の二つの別個の駆動部が移動する行程15が図示されている。ウェーハ7上の処理すべきスワスが長くなる程、方向反転用の二つの駆動部が互いに遠ざけられる。
【0055】
方向反転用の別個の駆動部の磁気ヨーク10に作用する高い反力のために、それらがテーブル6又はツール8に影響しないように、それらの反力を設計時に考慮することが推奨される。
【0056】
例えば、そのことは、別個の補強フレームを用いて実現することができ、そのフレームを介して、磁気ヨーク10が直接地面と接続される一方、XYテーブル6の駆動部のU字形状のヨーク1が、当該の機械を取り付けた御影石と接続され、この御影石は、地面に対して絶縁され、多くの場合振動に対しても能動的に遮断されている。
【0057】
それに代わって、これらの反力が釣合い重りを前方及び後方に動かして、その結果、これらの力が完全にシステム内に留まると同時に、テーブル6にもツール8にも到達しなくなるようにすることができる。従って、基礎部分も振動の影響を受けなくなる。