(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498085
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】設置物固定機構
(51)【国際特許分類】
G01V 1/20 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
G01V1/20
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-174813(P2015-174813)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-49209(P2017-49209A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬英
(72)【発明者】
【氏名】高木 義彦
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−089790(JP,A)
【文献】
実開平06−058388(JP,U)
【文献】
特開2009−097869(JP,A)
【文献】
米国特許第04583207(US,A)
【文献】
特開2001−133558(JP,A)
【文献】
特開平02−190739(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0075341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00〜99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設され水で満たされた外部容器内への設置物に搭載され、前記設置物を前記外部容器内に固定する設置物固定機構であって、
一部が前記設置物本体の底部より前記外部容器の底に向けて突出しているように設けられ、前記設置物が前記外部容器内を自重により沈降し、突出した部分が前記外部容器の底に到達して沈降を停止すると、引き続き沈降する前記設置物本体との相対的位置関係の変化に従い前記設置物の内部に押し込まれる着底検出手段と、
前記着底検出手段が押し込まれることにより、前記水を前記設置物の内部空間に導入する水導入孔と、
前記設置物の内部に設けられ、前記内部空間に導入された前記水の水深相当の圧力により移動し一部が前記設置物の外部に突出して前記外部容器の内側壁を押圧することにより前記設置物を前記外部容器内に固定する固定手段と、
を備える設置物固定機構。
【請求項2】
前記水導入孔は、前記設置物の本体に設けられ、前記水が満たされた外部に通じる第1導入孔と、前記着底検出手段に設けられ、前記内部空間に通じる第2導入孔と、から構成され、
前記第1導入孔は、前記着底検出手段が押し込まれていない状態では塞がれ、前記着底検出手段が押し込まれることにより、前記第2導入孔と連通し、水深相当の前記水の圧力により前記水を前記設置物の前記内部空間に導入する
ことを特徴とする請求項1に記載の設置物固定機構。
【請求項3】
前記固定手段は複数設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の設置物固定機構。
【請求項4】
前記設置物本体と前記着底検出手段との間に伸びた状態で設けられ、前記着底検出手段が押し込まれることにより縮む、ばねを更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の設置物固定機構。
【請求項5】
前記設置物は地震計であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の設置物固定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された容器内に設置する物を固定するための設置物固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
地震計などの設置物20が地中10に設置される場合、
図2(a)に示すように地中10に予め埋設され水11で満たされた外部容器12(ケーシング)内に、
図2(b)に示すように挿入され、外部容器12の底まで自重により沈降後、外部容器12内に固定される。設置物20は、自身を外部容器12内に固定するための設置物固定機構30を搭載する。設置物固定機構30は、駆動手段33及び固定手段34を備える。
【0003】
設置物固定機構30による設置物20の固定は、設置物20が外部容器12の底に着底したことが所定の方法により検出された後に次のように行われる。自動的に又は外部からの操作によりモータ等の駆動手段33を駆動し、
図3(b)に示すように固定手段34を設置物20の外部に突出させ、外部容器12の内壁に押し付ける。例えば、外部容器12及び設置物20が円筒形である場合、設置物20の中心軸に対し等角度間隔で固定手段34を複数突出させて押し付けるとよい。これにより、多方向からの均等な外部容器12内壁の反発力により設置物20を中心軸上に、安定的に固定することができる。
【0004】
設置物20の着底を検出する方法のひとつとして、設置物20に搭載される着底検出手段31を利用する方法が挙げられる。着底検出手段31は、設置物20の下部に、一部が設置物20の底部から突出するように設けられ、設置物20が外部容器12内を沈降し、突出部分が外部容器12の底に到達して沈降を終了すると(
図3(a)の状態)、引き続き沈降する設置物20本体との相対的位置関係の変化に従い設置物20の内部に押し込まれる(
図3(b)の状態)。これにより、設置物20に着底検出手段31が押し込まれたことを検出するセンサを設けておくことで、設置物20が着底したことを検出することができる。着底検出手段31の形状は、例えば
図2(b)に示すような逆T字型が好適である。
【0005】
着底検出手段31の突出部分が外部容器12の底に到達するまでの間、着底検出手段31が押し込まれないように、設置物20本体と着底検出手段31との間にばね32を挿入するとよい。ばね32は、着底検出手段31が着底するまでは着底検出手段31が押し込まれないよう伸びた状態を維持し、着底検出手段31が着底して押し込まれるとともに縮み、縮みきったところで設置物20本体も着底するように構成する。
【0006】
以上で説明したような、設置物を外部容器に固定する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−133558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方法の場合、設置物20がモータ等の駆動手段33を実装する必要があるため、給電が必要であり、また、モータや駆動用の配線に不具合が生じると、固定できなくなったり、逆に固定状態を解除できずに引き上げられなくなったりする恐れがある。
【0009】
本発明の目的は、動作信頼性が高く、かつ、低価格に実現可能な設置物固定機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の設置物固定機構は、地中に埋設され水で満たされた外部容器内に設置される地震計などの設置物に搭載され、設置物を外部容器内に固定する設置物固定機構であって、着底検出手段、水導入孔、及び固定手段を備える。着底検出手段は、一部が当該設置物本体の底部より外部容器の底に向けて突出しているように設けられ、当該設置物が外部容器内を自重により沈降し、突出した部分が当該外部容器の底に到達して沈降を停止すると、引き続き沈降する設置物本体との相対的位置関係の変化に従い当該設置物の内部に押し込まれる。水導入孔は、着底検出手段が押し込まれることにより、設置物の周囲の水を設置物の内部空間に導入する。固定手段は、設置物の内部に設けられ、内部空間に導入された水の水深相当の圧力により移動し一部が当該設置物の外部に突出して外部容器の内側壁を押圧することにより当該設置物を外部容器内に固定する。
【0011】
本発明においては、固定手段の駆動を、設置物の外部から設置物の内部空間に導入された水の水深相当の圧力により行うため、機械式でありながら給電が不要であり、かつ、モータや配線も不要である。そのため、動作の確実性が向上し、かつ、低価格化を実現することができる。また、既存の着底検出機能を、固定手段を突出させるスイッチとして利用するため、固定手段を突出させるための別途の制御や操作が不要となる。
【0012】
水導入孔は、設置物本体に設けられ、水が満たされた外部に通じる第1導入孔と、着底検出手段に設けられ、内部空間に通じる第2導入孔と、から構成し、第1導入孔が、着底検出手段が押し込まれていない状態では塞がれ、着底検出手段が押し込まれることにより第2導入孔と連通して、水深相当の圧力により水が設置物の内部空間に導入されるように構成するとよい。
【0013】
設置物の固定状態を安定させるため、固定手段は複数設けるとよい。
【0014】
ばねを設置物本体と着底検出手段との間に伸びた状態で設け、着底検出手段が押し込まれることにより縮むように構成してもよい。これにより、沈降中に着底検出手段が押し込まれてしまうことを防ぐことができる。また、設置物を引き上げる際の引き上げ力の軽減に資する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の設置物固定機構を説明する図である。
【
図2】地中への外部容器の埋設態様、外部容器への設置物の挿入態様、及び従来の設置物の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(a)に本発明の設置物固定機構40の構成例を示す。本発明の設置物固定機構40は、地中10に埋設され水11で満たされた外部容器12内に設置される地震計などの設置物20に搭載され、設置物20を外部容器12内に固定するためのものである。設置物固定機構40は、着底検出手段41、水導入孔42、及び固定手段43を備える。
【0017】
着底検出手段41は、一部が設置物20本体の底部より外部容器12の底に向けて突出しているように設けられる。例えば、
図1(a)に示すように、一部が設置物20本体の内部に挿入され、その他の一部が設置物20本体の底部から外部容器12の底に向けて突出するように設ける。設置物20が外部容器12内を自重により沈降し、突出した部分が外部容器12の底に到達して沈降を停止すると(
図1(a)の状態)、引き続き沈降する設置物20本体との相対的位置関係の変化に従い設置物20の内部に押し込まれる(
図1(b)の状態)。着底検出手段41の形状は、例えば
図1(a)に示すような逆T字型が好適である。
【0018】
着底検出手段41の突出部分が外部容器12の底に到達するまでの間に水圧で押し込まれないように設置物20本体と着底検出手段41との間にばね32を挿入するとよい。ばね32は、着底検出手段41が着底するまでは着底検出手段41が水圧で押し込まれないよう伸びた状態を維持し、着底検出手段41が着底して設置物20の自重により着底検出手段41が設置物20の内部に押し込まれるとともに縮み、縮みきったところで設置物20本体も着底するように設計したものを適用するとよい。また、ばね32を挿入することは、後述するように設置物20を外部容器12から引き上げる際の引き上げ力の軽減にも資する。
【0019】
水導入孔42は、着底検出手段41が押し込まれることにより、設置物20の周囲の水11を設置物20の内部空間44に導入する。
【0020】
水導入孔42は具体的には、例えば、設置物20本体に設けられ、水11が満たされた外部に通じる第1導入孔42aと、着底検出手段41に設けられ内部空間44に通じる第2導入孔42bと、から構成される。第1導入孔42aが、着底検出手段41が押し込まれていない状態では
図1(a)に示すように塞がれ、着底検出手段41が押し込まれることにより
図1(b)に示すように第2導入孔42bと連通して、水深相当の圧力により水11を設置物20の内部空間44に導入するように構成するとよい。
【0021】
固定手段43は、設置物20の内部に設けられ、内部空間44に導入された水の水深相当の圧力により、
図1(b)に示すように移動し一部が設置物20の外部に突出して外部容器の内側壁を押圧することにより、設置物20を外部容器内に固定する。
【0022】
固定手段43による押圧力は、固定手段43が水11を受圧する面のうち、押圧力を発生させる部分の面積Aに依存し、この面積が広ければ広いほど押圧力が大きくなる。しかし、固定手段43は設置物20の空きスペースに設けられるものであるため、その範囲内で面積を適切に設計して必要な押圧力F
Nを確保する必要がある。
【0023】
固定手段43の水11を受圧する面及び押圧に係る突起部の断面が共に円形で、
図1(b)に示すようにそれぞれの直径がD、dであるとすると、押圧力を発生させる部分の面積Aは、水11を受圧する面の面積から押圧に係る突起部の断面積を差し引いた値、すなわちA=(π/4)・(D
2−d
2)である。また、水深相当の圧力がP
wであるとき、押圧力F=A・P
wとなる。そのため、F≧F
Nとなるように各パラメータ値を設計すればよい。例えば、P
w=10kgf/cm
2(水深100m)、d=1cm、F
N=60kgf(モータ式の固定手段の押圧力相当)であるとすると、D≧2.94cmというように求めることができる。
【0024】
設置物20を外部容器内に安定的に固定するには、固定手段43を複数設けるとよい。例えば、外部容器12及び設置物20が円筒形である場合、設置物20の中心軸に対し等角度間隔で固定手段43を複数突出させることで、多方向から均等に及ぼされる外部容器12内側壁の反発力により、設置物20を中心軸上に安定的に固定することができる。特に3個以上を等角度間隔で突出させて固定するとより安定性が高まる。
【0025】
本発明の設置物固定機構40により設置物20を固定した場合、設置物20の固定状態の解除は、外部容器12の外から設置物20本体に接続された引き上げ用のロープなどで引き上げることにより行う。このとき、設置物20本体と着底検出手段41との間にばね32を設けておくことで固定状態の解除が容易になる。設置物20本体を引き上げると、ばね32の圧縮状態が緩和されて設置物20本体と着底検出手段41との相対的位置が変化する。相対的位置の変化により、やがて第1導入孔42aと第2導入孔42bとの連通が失われ、固定手段43に水深相当の水圧が印加されなくなる。これにより、固定手段43による外部容器12内側壁への押圧力が低下し、よって設置物20の固定状態が解除される。
【0026】
本発明の設置物固定機構は、固定手段の駆動を、設置物の周囲から設置物の内部空間に導入された水の水深相当の圧力により行うため、機械式でありながら給電が不要であり、かつ、モータや配線も不要である。そのため、動作の確実性が向上し、かつ、低価格化を実現することができる。また、既存の着底検出機能を、固定手段を突出させるスイッチとして利用するため、固定手段を突出させるための別途の制御や操作が不要となる。
【0027】
本発明の設置物固定機構の構成は、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0028】
10…地中
11…水
12…外部容器
20…設置物
30、40…設置物固定機構
31、41…着底検出手段
32…ばね
33…駆動手段
34、43…固定手段
42…水導入孔
42a…第1導入孔
42b…第2導入孔
44…内部空間