(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1制御電圧生成部は、複数のコンデンサと複数のスイッチとを含むとともに、前記セット信号により前記複数のスイッチを切り替えて前記第1充電信号をサンプリングすることにより前記振幅制御電圧を生成し、前記リセット信号により前記複数のスイッチを切り替えて前記第2充電信号をサンプリングすることにより前記振幅制御電圧を生成するスイッチドキャパシタ回路であり、
前記第1電圧制御部は、前記第2基準電圧と前記振幅制御電圧との差分の電圧を積分する積分回路である
請求項1に記載の発振回路。
前記第1電圧制御部は、電源電圧を分圧する抵抗対、第3基準電圧を入力とするバッファ、および前記抵抗対の接続点と前記バッファの出力との間に接続された可変抵抗を含み、調整信号により前記可変抵抗の抵抗値を調整することにより前記電源電圧の変動による電圧値の変動が抑制された前記第2基準電圧を生成する第2基準電圧生成部を備える
請求項1または請求項2に記載の発振回路。
前記充放電制御部は、前記第1のコンデンサを前記第1充電電流で充電するか前記第1のコンデンサに蓄積された電荷を放電するかを切り替える第1のスイッチ部と、前記第2のコンデンサを前記第2充電電流で充電するか前記第2のコンデンサに蓄積された電荷を放電するかを切り替える第2のスイッチ部と、を含み、前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを前記出力信号により切り替えて前記第1のコンデンサと前記第2のコンデンサとを充放電する
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発振回路。
前記充電電流制御部は、第4基準電圧および前記出力信号の周波数に基づいて制御電圧を生成する第2制御電圧生成部、第5基準電圧と前記制御電圧との差分の電圧を第4基準電圧として生成する第2電圧制御部、および前記第4基準電圧に基づいて前記第1充電電流および前記第2充電電流を生成する可変電流源回路を含む
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発振回路。
前記第2制御電圧生成部は、前記出力信号の周波数に応じた抵抗値を示すスイッチドキャパシタ抵抗、カレントミラー、および前記スイッチドキャパシタ抵抗と前記カレントミラーの入力との間に挿入されるとともに前記第4基準電圧によって前記スイッチドキャパシタ抵抗との接続点の電圧が制御される第1の電圧制御素子を含み、前記カレントミラーの出力電流を電圧に変換することにより前記出力信号の周波数に応じた前記制御電圧を生成し、
前記第2電圧制御部は、前記第5基準電圧と前記制御電圧との差分の電圧を積分する積分回路であり、
前記可変電流源回路は、前記第4基準電圧に接続されるとともに前記第4基準電圧に応じた基準電流を流す第2の電圧制御素子、前記基準電流から複数の電流値の複数の電流を複製し、前記複数の電流の電流値の各々を調整信号により調整して前記第1充電電流および前記第2充電電流を生成するトリミング回路を含む
請求項6に記載の発振回路。
前記第2電圧制御部は、PTAT電流源、CTAT素子、および前記PTAT電流源の電流値を調整信号により調整するトリミング回路を備え、前記トリミング回路で調整した電流を前記CTAT素子に流すことにより周囲温度の変動による電圧値の変動が抑制された前記第5基準電圧を生成する第5基準電圧生成部を含む、
請求項6または請求項7に記載の発振回路。
セット信号およびリセット信号の入力により出力信号を生成するRSフリップフロップ、第1充電電流によって充電される第1のコンデンサ、および第2充電電流によって充電される第2のコンデンサを含む発振回路を発振させる発振方法であって、
前記第1充電電流による前記第1のコンデンサの充放電に伴う電圧の変化である第1充電信号と、第1基準電圧とを比較して前記セット信号を出力させ、前記第2充電電流による前記第2のコンデンサの充放電に伴う電圧の変化である第2充電信号と、前記第1基準電圧とを比較して前記リセット信号を出力させ、
前記第1基準電圧の電圧値と前記第1充電信号の電圧値とが一致するタイミングと、前記第1基準電圧の電圧値と前記第2充電信号の電圧値とが一致するタイミングと、を前記第1充電信号の波高値および前記第2充電信号の波高値に応じて制御させ、
前記出力信号の周波数に応じ前記第1充電電流を変化させて前記第1充電信号のスルーレートを制御させ、前記出力信号の周波数に応じ前記第2充電電流を変化させて前記第2充電信号のスルーレートを制御させる
発振方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1ないし
図4を参照して、本実施の形態に係る発振回路10について説明する。
【0014】
図1に示すように、発振回路10は、フリップフロップ11、充放電制御部12、コンパレータ13、14、振幅制御部15、充電電流制御部16、およびコンデンサC1、C2を含んで構成されている。
【0015】
フリップフロップ11は、セット信号Sおよびリセット信号Rにより出力信号Q、QNを生成するRS型のフリップフロップである。フリップフロップ11の出力信号Q、QNが、発振回路10の発振信号(クロック信号)として出力される。
【0016】
充放電制御部12は、出力信号Q、QNに基づいて、コンデンサC1を充電させる充電電流BおよびコンデンサC2を充電させる充電電流BNの導通状態を制御し、コンデンサC1およびC2を相補的に充放電する回路である。より具体的には、充放電制御部12は、スイッチSW1、SW2、SW3、およびSW4から構成されるスイッチ部を有する。
該スイッチSW1、SW2、SW3、SW4が、充電電流BおよびBNを生成する充電電流制御部16と、コンデンサC1、C2との間の導通状態、および、GND(グランド、接地)と、コンデンサC1、C2との間の導通状態を、出力信号Q、QNに基づいて制御することにより、コンデンサC1およびC2が相補的に充放電される。コンデンサC1の充放電によりコンデンサC1の端子電圧が変化して充電信号Aを生成し、コンデンサC2の充放電によりコンデンサC2の端子電圧が変化して充電信号ANを生成する。
【0017】
コンパレータ13は、コンデンサC1の充電信号Aと基準電圧WAVE_Hとを比較してセット信号Sを出力する。また、コンパレータ14は、コンデンサC2の充電信号ANと基準電圧WAVE_Hとを比較してリセット信号Rを出力する。
【0018】
振幅制御部15は、セット信号Sおよびリセット信号Rを用いて充電信号Aおよび充電信号ANの波高値を検出し、検出した波高値に基づいて基準電圧WAVE_Hを生成する回路である。
【0019】
充電電流制御部16は、コンデンサC1を充電する充電電流B、およびコンデンサC2を充電する充電電流BNを、フリップフロップ11の出力信号Q、QNの周波数に応じて制御する回路である。
【0020】
図2を参照して、振幅制御部15についてより詳細に説明する。
図2に示すように、振幅制御部15は、制御電圧生成部151、電圧制御部152、およびバッファ157を含んで構成されている。
【0021】
バッファ157は、セット信号Sおよびリセット信号Rを受け、セット信号Sの反転信号SN(反転セット信号SN)、およびリセット信号Rの反転信号RN(反転リセット信号RN)を生成し、制御電圧生成部151に供給する回路である。
【0022】
制御電圧生成部151は、反転セット信号SNによって制御されるスイッチSW5、セット信号Sによって制御されるSW6、反転リセット信号RNによって制御されるSW7、およびリセット信号Rによって制御されるSW8、スイッチSW5とSW6との間に接続されたコンデンサC4、スイッチSW7とSW8との間に接続されたコンデンサC5、およびコンデンサC6を含んで構成されるスイッチドキャパシタ回路を備え、充電信号Aおよび充電信号ANの波高値に応じた振幅制御電圧PEAKを生成する回路である。
【0023】
電圧制御部152は、アンプ158、コンデンサC3を含んで構成される積分器154、および、抵抗R8とコンデンサC8を含む位相補償回路153aを備え、基準電圧VREF_Hと振幅制御電圧PEAKとの差分に応じた基準電圧WAVE_Hを生成する回路である。
【0024】
図3を参照して、本実施の形態に係る充電電流制御部16について、より詳細に説明する。充電電流制御部16は、制御電圧生成部161、電圧制御部162、および可変電流源回路163を含んで構成されている。
【0025】
制御電圧生成部161は、スイッチドキャパシタ抵抗165、カレントミラー164、フィルタ166、およびMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、以下「MOSトランジスタ」という)Q1を含んで構成された、周波数を電圧に変換する周波数−電圧変換回路(f−V)変換回路)である。すなわち、出力信号Q、QNの周波数に応じた電圧値を有する制御電圧VFCRを生成する。
【0026】
スイッチドキャパシタ抵抗165は、出力信号Qによって制御されるスイッチSW9、出力信号QNによって制御されるSW10、スイッチSW9とSW10との間に接続されたコンデンサC9、およびコンデンサC10を含んで構成されている。そして、出力信号Q、QNによってスイッチSW9、SW10を相補的にオン、オフすることにより、C9、C10が相補的に充放電される。その結果、出力信号Q、QNの周波数に応じて、MOSトランジスタQ1のソース−GND間の抵抗値が変化し、MOSトランジスタQ1に流れる電流Iが出力信号Q、QNの周波数によって変化する。
【0027】
MOSトランジスタQ1は、カレントミラー164とスイッチドキャパシタ抵抗165との間に接続されるとともに、ゲート電圧が基準電圧VCONTによって制御される。つまり、MOSトランジスタQ1は、スイッチドキャパシタ抵抗165を負荷とするソースフォロワ回路を構成し、電圧制御素子として機能する。
【0028】
カレントミラー164は、カレントソースCS1およびCS2を含んで構成され、カレントソースCS1に流れる基準電流Iをミラーリングして、所定の倍率の電流をカレントソースCS2に流す。カレントソースCS2に流れる電流は、カレントソースCS2に接続された抵抗R1により電圧に変換される。
【0029】
フィルタ166は、抵抗R1によって電圧に変換された信号のスイッチングノイズを取り除き、制御電圧VFCRを生成する。
【0030】
電圧制御部162は、アンプ169、コンデンサC11を含んで構成される積分回路167、および抵抗R12、コンデンサC12を含む位相補償回路153bを備え、基準電圧VREFと制御電圧VFCRとの差分に応じた参照電圧を基準電圧VCONTとして生成する回路である。
【0031】
可変電流源回路163は、MOSトランジスタQ2、トリミング回路168、および抵抗R2を含んで構成される。
【0032】
MOSトランジスタQ2は、ゲート電圧が基準電圧VCONTによって制御され、基準電圧VCONTに応じてソース電位を変化させ、基準電圧VCONTに応じた電流I’を抵抗R2に流す。つまり、MOSトランジスタQ2は、抵抗R2を負荷とするソースフォロワ回路を構成し、電圧制御素子として機能する。
【0033】
トリミング回路168は、カレントソースCS3、CS4、およびCS5を含んで構成されたミラー回路であり、基準電流I’を所定倍した充電電流B、BNを生成する。トリミング回路168では、電流調整信号によりカレントソースCS4およびCS5のミラー比が調整可能となっており、充電電流B、BNの電流値が調整される。
【0034】
つぎに、
図4を参照して、発振回路10の動作について説明する。
図4は、時間tの経過に伴う、充電信号A、AN、セット信号S、リセット信号R、出力信号Q、QNの変化を示すタイムチャートである。
【0035】
フリップフロップ11の入力端子Rに入力されるリセット信号RがL(ロー)レベルの状態で、入力端子Sに入力されるセット信号SがH(ハイ)レベルに立ち上がる状態を考える。このとき、時刻t1において出力端子Qから出力される出力信号QはHレベルになり、一方の出力端子QNから出力される出力信号QNはLレベルになる。
【0036】
すると、出力信号Q、QNにより、
図1に示す充放電制御部12のスイッチSW1がオフし、スイッチSW2がオンするので、コンデンサC1に蓄えられていた電荷はスイッチSW2を介して放電され、充電信号AはLレベルとなり、その結果、コンパレータ13通過後のセット信号SはLレベルになる。
【0037】
一方、スイッチSW3がオンし、スイッチSW4がオフするので、
図3に示す充電電流制御部16の可変電流源回路163からの定電流である充電電流BNにより、コンデンサC2が充電され、充電信号ANの電位が徐々に上昇する。そして充電信号ANの電位が、コンパレータ14の基準電圧WAVE_Hに達すると、リセット信号RがHレベルになって、フリップフロップ11の出力信号QはLレベルに、QNはHベルになる。以上が、時刻t1からt2にかけての動作である。
【0038】
出力信号Q、QNによって、充放電制御部12のスイッチSW3がオフし、スイッチSW4がオンするので、コンデンサC2に蓄えられていた電荷はスイッチSW4を介して放電され、充電信号ANはLレベルとなり、コンパレータ14通過後のリセット信号はLレベルになる。
【0039】
一方、出力信号Q、QNによって、スイッチSW1がオンし、スイッチSW2がオフするので、充電電流制御部16の可変電流源回路163からの定電流である充電電流BによりコンデンサC1が充電され、充電信号Aの電位が徐々に上昇する。そして、充電信号Aの電位がコンパレータ13の基準電圧WAVE_Hに達すると、セット信号SがHレベルになり、フリップフロップ11の出力信号QはHレベルに、出力信号QNはLレベルになる。以上が時刻t2からt3にかけての動作である。
【0040】
上記の時刻t1からt3にかけての動作を繰り返すことにより、発振回路10は、フリップフロップ11の出力信号Q、QNを発振信号(クロック信号)として出力する。
【0041】
ここで、充電信号A、ANの遅延時間Tdについて説明する。
図4に示すように、遅延時間Tdは、充電信号A、ANのピークが、基準電圧VREF_Hに達する時間と基準電圧WAVE_Hに達する時間との差である。この遅延時間Tdは、コンパレータ13あるいは14の遅延時間とフリップフロップ11の遅延時間との合計の遅延時間により発生する。
【0042】
本来、充電信号A、ANがコンパレータ13、14の比較レベルに到達した時点でコンパレータ13、14からセット信号S、リセット信号Rが瞬時に出力されるのが望ましい。しかしながら、コンパレータ13、14の遅延時間およびフリップフロップ11の遅延時間の合計である遅延時間Tdによって、充電信号A、ANの波高値がコンパレータ13、14の比較レベルよりも高くなってしまう。この遅延時間Tdが、温度の変動、あるいは電源電圧(VDD)の変動によって変化すると、充電信号A、ANの波形(波高値)が変化するので、発振回路10の発振周波数が変動する。そこで、本実施の形態では、振幅制御部15によって充電信号A、ANの波高値を一定に保つことにより、遅延時間Tdに起因する発振周波数の変動を抑制している。
【0043】
以下、本実施の形態に係る発振回路10における振幅制御部15、および充電電流制御部16の回路動作について、より詳細に説明する。
【0044】
図2に示す振幅制御部15の制御電圧生成部151は、先述したように、スイッチSW5、SW6、SW7、およびSW8、コンデンサC4、C5、およびC6を含むスイッチドキャパシタとして構成されている。つまり、セット信号SがLレベルのときに充電信号AによりコンデンサC4を充電し、セット信号SがHレベルのときにコンデンサC4の電荷をコンデンサC6に転送して、制御電圧生成部151からの出力である振幅制御電圧PEAKを生成する。同様にリセット信号RがLレベルのときに充電信号ANによりコンデンサC5を充電し、リセット信号RがHレベルのときにコンデンサC5の電荷をコンデンサC6に転送して制御電圧生成部151からの出力である振幅制御電圧PEAKを生成する。
【0045】
セット信号Sは、充電信号Aの電圧がほぼ最大になるタイミングで充電信号Aをサンプリングするので、制御電圧生成部151の出力である振幅制御電圧PEAKの電圧は、充電信号Aの最大値、つまり波高値となる。また、リセット信号Rは、充電信号ANがほぼ最大になるタイミングで充電信号ANをサンプリングするので、振幅制御電圧PEAKの電圧は、充電信号ANの最大値、つまり波高値となる。
【0046】
図2に示す振幅制御部15の電圧制御部152は、積分器154を含む積分回路として構成されており、積分器154は、アンプ158およびコンデンサC3を含んでいる。すなわち、積分器154は、アンプ158の基準電圧VREF_Hと振幅制御電圧PEAKとの差分を積分してコンデンサC3に蓄積する。振幅制御電圧PEAKが基準電圧VREF_Hより高い場合には、積分器154の出力である基準電圧WAVE_Hの電圧は低下し、
図1に示すコンパレータ13および14の比較レベルが下がるので、充電信号Aおよび充電信号ANの波高値は低下する。充電信号Aおよび充電信号ANの波高値が低下すると、制御電圧生成部151の出力である振幅制御電圧PEAKの電圧を低下させるように負帰還がかかる。
【0047】
一方、振幅制御電圧PEAKが基準電圧VREF_Hより低い場合には基準電圧WAVE_Hの電圧は上昇し、コンパレータ13および14の比較レベルが上がるので、充電信号Aおよび充電信号ANの波高値は上昇する。充電信号Aおよび充電信号ANの波高値が上昇すると、振幅制御電圧PEAKの電圧を上昇させるように負帰還がかかる。
【0048】
以上の動作によって、振幅制御部15は、充電信号A、ANの波高値が一定に維持されるように制御する。なお、位相補償回路153aは、上記負帰還ループの位相余裕が小さい場合に、負帰還ループが発振しないように負帰還ループの位相余裕を補償する回路である。したがって、負帰還ループの位相余裕が十分であれば設ける必要はない。
【0049】
図3に示す充電電流制御部16は、先述したように、
図1に示すコンデンサC1に充電電流Bを、コンデンサC2に充電電流BNを供給する回路である。制御電圧生成部161は周波数−電圧変換回路(f−V変換回路)であり、MOSトランジスタQ1のソースに接続されたスイッチドキャパシタ抵抗165の抵抗値が出力信号Q、QNに応じて変化すると、MOSトランジスタのソース負荷が変化する。その結果、MOSトランジスタQ1に流れる平均的な電流Iは、発振回路10の発振周波数をf(Hz)、コンデンサC9の容量をC(F)、コンデンサC10に印加される電圧をV(V)として、以下に示す(式1)で表される。
I=fCV ・・・ (式1)
【0050】
(式1)を換言すると、IとVとの関係から等価的な抵抗Rが導かれるので、スイッチドキャパシタ抵抗165の等価的な抵抗Rは、以下に示す(式2)のように表すことができる。
R=V/I=1/(fC) ・・・ (式2)
【0051】
より具体的には、コンデンサC10はMOSトランジスタ(電圧制御素子)Q1のソースに接続され、MOSトランジスタQ1はソースフォロワ回路として動作するので、コンデンサC10に印加される電圧は、MOSトランジスタQ1のゲート電圧である基準電圧VCONTによって制御される。その結果、コンデンサC10に流れる電流Iは基準電圧VCONTによって制御される。電流Iはカレントミラー164により抵抗R1に流されて電圧に変換され、フィルタ166を介して制御電圧生成部161の出力である制御電圧VFCRとして出力される。
【0052】
第2電圧制御部162は、アンプ169およびコンデンサC11を含む積分回路167を有し、基準電圧VREFと、制御電圧生成部161の出力である制御電圧VFCRとの差分を積分してコンデンサC11に蓄積する。
【0053】
可変電流源回路163のMOSトランジスタ(電圧制御素子)Q2は、ソースに抵抗R2が接続されたソースフォロワ回路として動作するので、抵抗R2の両端の電圧はMOSトランジスタQ2のゲート電圧である基準電圧VCONTにより制御される。本実施の形態においては、MOSトランジスタQ1とQ2とは同一ディメンジョン(大きさ)で構成されている。そして、抵抗R2の抵抗値を(式2)に示す値に設定し、R2=1/(fC)とすることにより、抵抗R2に流れる電流I’を、スイッチドキャパシタ抵抗165に流れる基準電流Iとおなじ大きさの電流としている。
【0054】
カレントミラーによって構成されたトリミング回路168は、電流I’の電流源となるカレントソースCS3、カレントソースCS3に流れる電流Iを所定の倍率でミラーリングし、充電電流Bを生成するカレントソースCS5、充電電流BNを生成するカレントソースCS4を備えている。カレントソースCS4およびCS5は各々充電電流調整信号により調整可能なように構成されており、抵抗R2に流れる電流I’を基準電流として、充電電流BおよびBNの電流値が可変とされている。本実施の形態では、充電電流BおよびBNは、同じ大きさの電流値とされている。
【0055】
つぎに、
図3を参照して、充電電流制御部16の負帰還動作について説明する。出力信号QおよびQNの周波数(発振周波数)が上昇すると、スイッチドキャパシタ抵抗165の抵抗値が低下し基準電流Iが増え、制御電圧生成部161の出力である制御電圧VFCRが上昇する。すると積分回路167の入力において、基準電圧VREFよりも制御電圧VFCRが高くなり、基準電圧VCONTを低下させる。その結果、MOSトランジスタQ1のゲート電位が下がるので、スイッチドキャパシタ抵抗165に流れる電流Iが低下する。
【0056】
他方、低下した基準電圧VCONTによりMOSトランジスタQ2の電位も下がるので、抵抗R2に流れる電流I’も低下し、可変電流源回路163から出力される充電電流BおよびBNが低下するので、
図1に示す充電信号AおよびANのスルーレートが低下する。すると、充電信号AおよびANが所定の波高値に達するまでの時間が長くなり、その結果発振回路10の発振周波数が低下する。出力信号Q、およびQNの周波数が低下した場合は上記と逆の動作になる。
【0057】
以上のように、充電電流制御部16は、充電信号AおよびANのスルーレートに負帰還をかけて、発振回路10の発振周波数が一定になるようにしている。なお、位相補償回路153bは、上記負帰還ループの位相余裕が小さい場合に、負帰還ループが発振しないように負帰還ループの位相余裕を補償する回路である。したがって、負帰還ループの位相余裕が十分であれば設ける必要はない。
【0058】
以上詳述したように、本実施の形態に係る発振回路10では、振幅制御部15によって、コンデンサC1を充放電する充電信号A、および、コンデンサC2を充放電する充電信号ANの波高値が、基準電圧VREF_Hと等しくなるようにフィードバック制御している。その結果、温度や電源電圧VDDが変化してもコンデンサC1およびC2を充電する充電信号AおよびANの波高値が一定に保たれる。本実施の形態に係る発振回路10では、さらに、充電電流制御部16によって、発振回路10の発振周波数を検知し、コンデンサC1およびC2を充電する充電電流B、BNが一定に保たれるようにフィードバック制御している。その結果、温度や電源電圧VDDが変化しても充電信号AおよびANのスルーレートが一定に保たれる。換言すると、本実施の形態に係る発振回路10では、振幅制御部15および充電電流制御部16により、充電信号AおよびANの波形が一定となるようにフィードバック制御されている。以上のように構成された本実施の形態に係る発振回路10によれば、温度変動、電源電圧変動に対する発振周波数の変動が抑制され、かつ精度の高い周波数の発振信号を出力することができる。
【0059】
[第2の実施の形態]
図5および
図6を参照し、本実施の形態に係る発振回路について説明する。本実施の形態に係る発振回路は、上記の発振回路10における振幅制御部15および充電電流制御部16を変えたものである。したがって、発振回路全体の構成は発振回路10と同様なので、発振回路全体について言及する場合は、
図1を参照して説明する。
【0060】
図5は、本実施の形態に係る振幅制御部15aを示している。
図2に示す振幅制御部15に対し、振幅制御部15aは、電源電圧VDDに応じて基準電圧VREF_Hの電圧レベルを制御する基準電圧生成部155をさらに備えている。
【0061】
基準電圧生成部155は、電源電圧VDDを分圧する分圧抵抗R3およびR4と、基準電圧VBGをバッファリングするユニティゲインアンプ(バッファ)156と、可変抵抗R5とを備えている。そして、分圧抵抗R3とR4との分圧点と、ユニティゲインアンプ156の出力との間に可変抵抗R5が接続され、複数の電圧依存性調整信号(図示省略、電圧値に応じてトリミング回路を所定の特性にトリミングする信号)により可変抵抗R5の抵抗値が調整される。基準電圧VBGは、バンドギャップ回路(図示省略)から生成される。バンドギャップ回路とは、半導体材料の物性であるバンドギャップ電圧を利用して温度変動、電源電圧変動に対して安定な電圧値を作る回路であり、バンドギャップレファレンスともよばれる。
【0062】
標準設計条件において、分圧抵抗R3およびR4によって分圧された電圧は、基準電圧VBGに等しくされている。そして、コンパレータ13、14、およびフリップフロップ11の遅延時間、つまり上述した遅延時間Tdの電源電圧VDDの変動による変化に応じて、上記複数の電圧依存性調整信号で可変抵抗R5の抵抗値を調整することにより、基準電圧VREF_Hの電源電圧依存性を調整する。
【0063】
すなわち、電源電圧VDDが変化すると基準電圧VREF_Hも変化するが、可変抵抗R5の抵抗値を小さくすれば、基準電圧VREF_Hは基準電圧VBGに近い電圧になる。逆に、可変抵抗R5の抵抗値を大きくすれば、基準電圧VBGに影響されず、分圧抵抗R3、R4の比で分圧された電圧に近い電圧となる。つまり、可変抵抗R5によって、基準電圧VREF_Hの電源電圧依存性を調整することが可能となっている。
【0064】
そして、電源電圧VDDが上昇してVREF_Hが上昇すると、コンデンサC1、C2への充電電流を一定とした場合、充電信号A、ANの波高値が高くなる(コンデンサC1、C2への充電時間が長くなる)。一方、遅延時間Tdは、一般に電源電圧VDDが高くなると短くなる(コンデンサC1、C2への充電時間が短くなる)。したがって、両者はキャンセルされ、その結果、電源電圧変動による発振回路10の発振周波数の変動が抑制される。電源電圧VDDが低下した場合は、上記と逆の動作となり、やはり電源電圧変動による発振回路10の発振周波数の変動が抑制される。
【0065】
つぎに、
図6を参照して、本実施の形態に係る充電電流制御部16aについて説明する。充電電流制御部16aは、
図3に示す充電電流制御部16に対して、温度に応じて基準電圧VREFの電圧レベルを制御する基準電圧生成部17をさらに備える。
【0066】
基準電圧生成部17は、PTAT(Proportional To Absolute Temperature)電流源171と、PTAT電流源171に接続されたR17と、CTAT(Complementary To Absolute Temperature)素子172と、PTAT電流源171の電流値を、複数の電圧依存性調整信号により調整するトリミング回路173を備え、トリミング回路173で調整した電流をCTAT素子172に流して基準電圧VREFを生成する。
【0067】
上述した、コンパレータ13、14の入力からフリップフロップ11の出力までの遅延時間Tdは、発振回路10の発振周波数が比較的高い場合には、発振波形の1周期における遅延時間Tdに占める割合が大きくなり、無視できなくなる。
【0068】
この遅延時間Tdは、一般に温度依存性をもっているが、本実施の形態に係る基準電圧生成部17は、PTAT電流源171とCTAT素子172との組み合わせで基準電圧VREFの温度依存性を調整することにより、遅延時間Tdの温度依存性を抑制している。
つまり、PTAT電流源171は、温度依存性が正の電流源である一方、CTAT素子172は、ダイオード接続されたMOSトランジスタQ3と抵抗R18を含んで構成された、抵抗値の温度依存性が負の抵抗素子である。このCTAT素子172に、PTAT電流源171の電流値をトリミング回路173によって調整した電流を流すことにより、基準電圧VREFの温度依存性を調整している。
【0069】
より具体的には、遅延時間Tdの温度依存性が正の場合には、温度が上昇すると遅延時間Tdが大きくなる。このとき、基準電圧VREFの温度依存性を正、つまり温度が上昇したときに電圧が高くなるように設定すれば、基準電圧VCONTが高くなり、可変電流源回路163で生成されるコンデンサC1、C2への充電電流B、BNが大きくなる。充電電流B、BNが大きくなると充電信号A、ANのスルーレートが大きくなり、充電時間が短くなるように働くので、遅延時間Tdの増加をキャンセルして、発振周波数の変動を小さくすることができる。
【0070】
一方、遅延時間Tdの温度依存性が負の場合には、温度が上昇すると遅延時間Tdが小さくなる。このとき、基準電圧VREFの温度依存性を負、つまり温度が上昇したときに電圧が低くなるように設定すれば、基準電圧VCONTが低くなり、コンデンサC1、C2への充電電流B、BNが小さくなる。充電電流B、BNが小さくなると充電信号A、ANのスルーレートが小さくなり、充電時間が長くなるように働くので、遅延時間Tdの減少をキャンセルして、発振周波数の変動を小さくすることができる。
【0071】
遅延時間Tdは一般に温度依存性、電源電圧依存性をもっているところ、本実施の形態に係る発振回路10では、充電信号A、ANの波高値を調整する振幅制御部15aに、電源電圧変動を抑制するための基準電圧生成部155を設けた。また、コンデンサC1、C2への充電電流B、BNを調整する充電電流制御部16aに、温度変動を抑制するための基準電圧生成部17を設けた。その結果、本実施の形態に係る発振回路によれば、発振周波数が比較的高い場合にあっても、精度がより高い発振周波数を得ることができる、という効果が得られる。
【0072】
なお、電源電圧依存性を抑制する基準電圧生成部155は、振幅制御部15に限らず、充電電流制御部16に用いてよいし、また、温度変動を抑制する基準電圧生成部17は、充電電流制御部16に限らず、振幅制御部15に用いてもよい。すなわち、基準電圧生成部155、および基準電圧生成部17は、電源電圧変動、温度変動を抑制した基準電圧を生成する汎用的な回路である。
【0073】
[第3の実施の形態]
図7および
図8を参照して、本実施の形態に係る発振回路10aについて説明する。発振回路10aでは、
図1に示す発振回路10に対して、コンデンサC1、C2を可変容量C13、C14に置き換え、また、充電電流制御部16を充電電流制御部16bに置き換えている。
図7は、発振回路10aの全体回路を、
図8は充電電流制御部16bの回路を、各々示している。
【0074】
図7に示すように、発振回路10aでは、充放電制御部12によって充電、放電されるコンデンサC13、およびコンデンサC14が、各々可変容量となっている。可変容量C13、C14は各々複数のコンデンサと、各コンデンサに接続された複数のスイッチから成り、該複数のスイッチを制御する制御信号により可変容量C13、C14の容量値が調整される。
【0075】
可変容量C13(C14)の容量値を大きく設定すると、充電信号A(AN)のスルーレートが小さくなるので、コンパレータ13(14)の比較電圧である基準電圧WAVE_Hに達する時間が長くなり、発振周波数が低下する。一方、可変容量C13(C14)の容量値を小さく設定すると、充電信号A(AN)のスルーレートが大きくなるので、基準電圧WAVE_Hに達する時間が短くなり、発振周波数が上昇する。以上のようにして、可変容量C13、C14の容量値を調整することにより、発振周波数を制御することができる。
【0076】
コンデンサC1、C2を可変容量C13、C14に置き換えたことに伴い、
図8に示すように、本実施の形態に係る充電電流制御部16bでは、
図6に示すトリミング回路168をカレントミラー回路174に置き換えている。すなわち、トリミング回路168はカレントソースCS3、CS4、CS5によるカレントミラーにより構成され、カレントソースCS3に流れる電流を基準電流として、複数の電流調整信号によりカレントソースCS4、CS5に流れる電流を調整し、充電電流B、BNを設定した。これに対し、発振回路10aでは、充電電流制御部16bから出力される充電電流B、BNは、カレントソースCS8、CS9、およびCS10を含んで構成されるカレントミラー回路174で一定とし、可変容量C13、C14の容量値を変えることによって、充電電流B、BNの設定を行っている。
【0077】
以上のように、本実施の形態に係る発振回路によっても、温度変動、電源電圧変動に対する発振周波数の変動が抑制され、かつ発振周波数の精度を向上させることが可能な発振回路および発振方法を提供することができる。本実施の形態では、特に、本実施の形態に係る発振回路を半導体集積回路で構成し、モールド樹脂でパッケージ化した際に生ずる応力による特性変化が低減され、発振周波数の変動を抑制することができる、という効果が得られる。
【0078】
なお、上記実施の形態では、可変電流源回路163において、基準電圧VCONTに応じた基準電流I’を流す抵抗R2を備え、さらに、複数の電流調整信号により基準電流I’から可変電流を生成するトリミング回路168を備える構成としたが、これに限られない。たとえば、抵抗R2の代わりに、直列に接続した複数の抵抗素子と、それら複数の抵抗素子の接続点の各々とGNDとを接続する複数のスイッチ素子からなる回路を用い、複数のスイッチ素子の各々を制御する複数の調整信号により、複数の抵抗の接続点を選択的にGNDに接続するようにして、抵抗値を変える構成としてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、基準電圧生成部17において、PTAT電流源171に流れる電流をミラーリングしたトリミング回路173によって電流値を変える構成を用いたが、これに限られない。たとえば、CTAT素子172の代わりに、直列に接続した複数のCTAT素子と、それら複数のCTAT素子の接続点の各々とGNDとを接続する複数のスイッチ素子からなる回路を用い、複数のスイッチ素子の各々を制御する調整信号により、複数のCTAT素子の接続点を選択的にGNDに接続するようにして、電流値を変える構成としてもよい。