特許第6498893号(P6498893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498893
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】回転コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 35/04 20060101AFI20190401BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20190401BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20190401BHJP
   B62D 1/10 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01R35/04 U
   G01B7/30 H
   B60R16/027 Q
   B62D1/10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-186431(P2014-186431)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-58352(P2016-58352A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】山越 健司
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−339109(JP,A)
【文献】 特開2004−306672(JP,A)
【文献】 特開2004−333303(JP,A)
【文献】 特開2013−073926(JP,A)
【文献】 特開2010−000868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/04
B60R 16/027
B62D 1/10
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
前記固定部材に対して相対回転可能であり、ステアリングホイールとともに回転する第1回転部材と、
前記固定部材と前記第1回転部材で覆われる空間に配置されるケーブルと、
前記固定部材に対して相対回転可能であり、前記ステアリングホイールを取り付けるためのステアリング取付部が形成されており、当該ステアリングホイールとともに回転する第2回転部材と、
前記ケーブルを挟んで前記ステアリングホイールの反対側に配置される回転角検出部と、
を備え、
前記第2回転部材には、前記ステアリングホイールとともに回転する回転体が一体的に構成されており、
前記回転角検出部は、前記ステアリングホイールに従動しないように配置された検出部を有しており、
前記検出部は、当該検出部に対する前記回転体の回転を検出することで、前記ステアリングホイールの回転角を検出し、
前記ステアリングホイールの回転力は、前記第2回転部材を介して、前記第1回転部材に伝達されることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転コネクタ装置であって、
前記第2回転部材に対して相対回転可能であり、前記ステアリングホイールの反対側から前記固定部材に取付可能な保護カバーを備え、
前記検出部が前記保護カバーに配置されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転コネクタ装置であって、
前記ステアリング取付部は、前記ステアリングホイールと嵌合するための嵌合部であることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回転コネクタ装置であって、
少なくとも前記固定部材には、前記ステアリングホイール及びステアリングシャフトが挿入される挿入孔が形成されており、当該挿入孔の軸方向に垂直な向きで見たときに、
前記第2回転部材の前記嵌合部が、前記固定部材又は前記第1回転部材から外側へ突出していないことを特徴とする回転コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角検出部を備える回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のステアリングホイールと車体のように、回転側と固定側を電気的に接続するために回転コネクタ装置が用いられている。回転コネクタ装置には、ステアリングホイールの操作角度(舵角、回転角)を検出するための回転角検出部(SAS、ステアリングアングルセンサ)を備えるものが知られている。特許文献1及び2は、この種の回転コネクタ装置を開示する。
【0003】
特許文献1の回転コネクタ装置は、ステータと、ロテータと、スリーブ(ばね受け部材)と、を備える。ステータは、ステアリングホイールと相対回転可能に構成される部材である。ロテータ及びスリーブは、ステアリングホイールとともに回転する部材である。ロテータには、ステアリングホイールを取り付けるための係合突起と、スリーブを係止するための係止爪と、が形成されている。スリーブには、回転角検出部(舵角センサ)を係合するための係合部が形成されている。この構成により、操縦者がステアリングホイールを回転させることで、その力がロテータ、スリーブ、及び回転角検出部の順に伝達する(図4(a)を参照)。回転コネクタ装置は、このようにしてステアリングホイールの回転角を検出する。
【0004】
特許文献1の回転コネクタ装置の内部には、エアバッグ又はホーン等の動作に関する信号を伝達するケーブルが配置される。ケーブルの一端はロテータの上面(ステアリングホイール側の面)のコネクタに接続される。ケーブルの他端は、ステータの側面のコネクタに接続される。ケーブルは、ステータとロテータで構成される環状の空間内で一方向に巻かれた後、巻かれる方向を反転されて逆方向に巻かれている。この構成により、当該ケーブルの長さに対応する回数だけ、ロテータを時計回り又は反時計回りに回転させることが可能となっている。
【0005】
また、特許文献1の回転コネクタ装置は、回転角検出部とケーブルのうち、ケーブルがステアリングホイール側に配置されている。これに対し、特許文献2の回転コネクタ装置(舵角センサユニット)は、回転角検出部(舵角センサ)とケーブルのうち、回転角検出部がステアリングホイール側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−73926号公報
【特許文献2】特開平9−326282号公報
【特許文献3】特開2000−241144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように特許文献1の回転コネクタ装置では、ステアリングホイールの回転がロテータ及びスリーブを経由して回転角検出部に伝達する。また、ステアリングホイール、ロテータ、スリーブ、及び回転角検出部は、一般的には一方を他方に嵌め込むことで固定されているため、ガタつきが生じることがある。従って、ステアリングホイールの回転が伝達する際にロテータ及びスリーブを経由することでガタつきが累積する。その結果、ステアリングホイールの回転角と、回転角検出部が検出する回転角と、がズレることが考えられる。特に、経年劣化によりロテータ及びスリーブの嵌合部分の遊びが大きくなる可能性があり、その場合はズレ量が増大する。
【0008】
この点、特許文献2の回転コネクタ装置は、ステアリングホイールと回転検出部の距離が近いので、ステアリングホイールの回転を回転検出部に伝達する部材を減らすことができる。そのため、特許文献1のようなガタつきの累積を低減することができる。しかし、特許文献2のように回転角検出部がケーブルよりもステアリングホイール側に配置される場合、以下の課題が存在する。
【0009】
即ち、回転角検出部がケーブルよりもステアリングホイール側に配置されることで、エアバッグモジュール等と接続するためのコネクタをロテータの上面に配置することが困難となる。実際に、特許文献2では、ケーブルの一端がステータの下面から引き出されて外部出力ケーブルに接続される旨は記載されているが、ケーブルの他端がどのように外部と接続されるかは記載されていない。
【0010】
また、特許文献2では、回転角検出部がケーブルよりもステアリングホイール側に配置されているため、回転角検出部及びケーブルを従来と異なる態様でケーシング内に配置する必要がある。しかし、特許文献2では、ケーシングの詳細な構造及び具体的な組立方法が記載されていない。このように、特許文献2のレイアウトでは各種の課題が存在するため、特許文献1のレイアウトで上記のガタつきを低減する構成が求められていた。
【0011】
なお、特許文献3は、ケーブルを収容する回転コネクタと、回転角を検出する舵角センサと、を別構成とした装置を開示する。ステアリングホイールに掛かった力は、回転コネクタを介して舵角センサに伝達される。従って、特許文献3の装置であっても、ステアリングホイールの回転角と、舵角センサが検出する回転角と、がズレる可能性がある。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、収容されるケーブルがステアリングホイール側に配置されている回転コネクタ装置において、ステアリングホイールの回転角を精度良く検出する構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の観点によれば、以下の構成の回転コネクタ装置が提供される。即ち、この回転コネクタ装置は、固定部材と、第1回転部材と、ケーブルと、第2回転部材と、回転角検出部と、を備える。前記第1回転部材は、前記固定部材に対して相対回転可能であり、ステアリングホイールとともに回転する。前記ケーブルは、前記固定部材と前記第1回転部材で覆われる空間に配置される。前記第2回転部材は、前記固定部材に対して相対回転可能であり、前記ステアリングホイールを取り付けるためのステアリング取付部が形成されており、当該ステアリングホイールとともに回転する。前記回転角検出部は、前記ケーブルを挟んで前記ステアリングホイールの反対側に配置される。前記第2回転部材には、前記ステアリングホイールとともに回転する回転体が一体的に構成されている。前記回転角検出部は、前記ステアリングホイールに従動しないように配置された検出部を有している。前記検出部は、当該検出部に対する前記回転体の回転を検出することで、前記ステアリングホイールの回転角を検出する。前記ステアリングホイールの回転力は、前記第2回転部材を介して、前記第1回転部材に伝達される。
【0015】
これにより、ケーブルがステアリングホイール側に配置されるレイアウトの回転コネクタ装置において、ステアリングホイールの回転を直接的に第2回転部材に伝達して、当該第2回転部材の回転角を検出できる。そのため、一般的なレイアウトを採用しつつ、ガタつきの累積による回転角の検出精度の低下を防止できる。第2回転部材の回転がガタつきなく回転体に伝わるため、第2回転部材に別途回転体を取り付ける場合と比較して、ステアリングホイールの回転角の検出精度を向上させることができる。また、ステアリングホイールの回転を第1回転部材を介することなく第2回転部材に伝達することができるので、ガタつきの累積を防止できる。
【0018】
前記の回転コネクタ装置においては、前記第2回転部材に対して相対回転可能であり、前記ステアリングホイールの反対側から前記固定部材に取付可能な保護カバーを備え、前記検出部が前記保護カバーに配置されていることが好ましい。
【0019】
これにより、回転体が形成された第2回転部材を取り付けた後に、それを覆うように保護カバーを取り付けることができる。従って、回転コネクタ装置の組立工程を単純にすることができる。また、保護カバーは、回転角検出部の保護や回転角検出部の検出素子の配置等にも利用できる。
【0020】
前記の回転コネクタ装置においては、前記ステアリング取付部は、前記ステアリングホイールと嵌合するための嵌合部であることが好ましい。
【0021】
これにより、ステアリングホイールを第2回転部材に差し込むだけで固定できる。
【0022】
前記の回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、少なくとも前記固定部材には、前記ステアリングホイール及びステアリングシャフトが挿入される挿入孔が形成されており、当該挿入孔の軸方向に垂直な向きで見たときに、前記第2回転部材の前記嵌合部が、前記固定部材又は前記第1回転部材から外側へ突出していない。
【0023】
これにより、嵌合部が外側へ突出していないので、回転コネクタ装置をステアリングホイールに取り付ける際に嵌合部が外部に当たって破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る舵角センサ組込み式の回転コネクタ装置の斜視図。
図2】舵角センサ組込み式の回転コネクタ装置の一部断面図。
図3】舵角センサ組込み式の回転コネクタ装置の分解斜視図。
図4】ステアリングホイールの回転が回転角検出部の回転体まで伝達する過程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照して本発明の実施形態の回転コネクタ装置を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る舵角センサ組込み式の回転コネクタ装置の斜視図である。図2は、舵角センサ組込み式の回転コネクタ装置の一部断面図である。図3は、舵角センサ組込み式の回転コネクタ装置の分解斜視図である。
【0028】
舵角センサ組込み式の回転コネクタ装置1(以下、単に回転コネクタ装置1と称する)は、図1に示すように、自動車のステアリングホイール(ハンドル)100のボス部101に接続される。回転コネクタ装置1は、ステアリング側(回転側)と車体側(固定側)とを電気的に接続する。また、回転コネクタ装置1は、ステアリングホイール100の回転角度を検出して、ECU等へ出力する。ステアリングホイール100の回転角度は、パワーステアリングの油圧調整や車両の挙動を安定させる制御等に用いられる。
【0029】
図3に示すように、回転コネクタ装置1は、ロテータ10と、ステータ20と、フレキシブルフラットケーブル30と、スリーブ40と、保護カバー50と、回転角検出部(舵角センサ)60と、を備える。なお、以下の説明では、回転コネクタ装置1のうちステアリングホイール100(特に操縦者が操作する部分)が位置する側を上側と称し、その反対側を下側と称することがある。
【0030】
ロテータ10は、ステータ20とともにフレキシブルフラットケーブル30を覆うとともに、ステアリングホイール100とともに回転する部材である。図3に示すようにロテータ10は、上面部11と、円筒部15と、を備えている。
【0031】
上面部11は、ロテータ10の上面を構成する略円板状の部分である。上面部11の中央には、ステアリングホイール100及び図略のステアリングシャフトが挿入される挿入孔12が形成されている。円筒部15は、この挿入孔12の内壁面を構成している。また、上面部11には、回転側コネクタ13が配置されている。回転側コネクタ13は、フレキシブルフラットケーブル30の一端と、ステアリング側(回転側)の部材又は補機(例えばホーンスイッチ、エアバッグモジュール、及びステアリングホイールスイッチユニット)から延びる電線と、を接続する。
【0032】
ステータ20は、ロテータ10の下方に配置され、ロテータ10とともにフレキシブルフラットケーブル30を覆う。また、ステータ20は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションスイッチ(図略)に固定されている。ステータ20はステアリングホイール100及びステアリングシャフト等の回転側の部材に対して相対回転可能に取り付けられている。図3に示すようにステータ20は、底面部21と、円筒部25と、を備えている。
【0033】
底面部21は、ステータ20の底面を構成する略円板状の部材である。ステータ20の中央には、ステアリングホイール100及びステアリングシャフトが挿入される挿入孔が形成されている。円筒部25は、ステータ20の外周(側面)部を構成する円筒状の部材である。円筒部25には、固定側コネクタ26が配置されている。固定側コネクタ26は、フレキシブルフラットケーブル30の他端と、車体側(固定側)の部材(例えば電源及びECU)から延びる電線と、を接続する。
【0034】
フレキシブルフラットケーブル30は、ロテータ10とステータ20で形成される環状の空間に配置されている。フレキシブルフラットケーブル30は、この環状の空間内で一方向に巻かれた後、巻かれる方向をU字状に反転されて逆方向に巻かれている。この構成で、当該フレキシブルフラットケーブルの長さに対応する回数だけ、ロテータを時計回り又は反時計回りに回転させることができる。なお、この環状の空間には、ローラを複数配置しても良い。これらのローラを備えることで、フレキシブルフラットケーブル30を環状の空間内で常に整列させた状態で保持することができる。
【0035】
スリーブ40は、ステータ20の下方に配置され、ステアリングホイール100とともに回転する部材である。スリーブ40は、側面部41と、ステアリング支持部45と、底面部48と、を備えている。スリーブ40は、樹脂製であり、各部が一体的に構成されている。なお、本明細書では、別個の部材を固定部材で取り付けるのではなく同一の型を用いる等して一体的に作られた物を「一体的に構成された」と称するものとする。
【0036】
スリーブ40の側面部41には、ロテータ取付部42と、回転体43と、が形成されている。ロテータ取付部42は、図略の取付爪等によりロテータ10を相対回転不能に取り付けることができる。回転体43は、側面部41の略中央から外側に向かって伸びるように形成された円板状の部材である。側面部41には、後述のリング磁石61が取り付けられる(固定される)。
【0037】
ステアリング支持部45は、スリーブ40の上面を構成する円板状の部材である。ステアリング支持部45はステアリングホイール100のボス部101を支持する。ステアリング支持部45の中央には、ステアリングシャフトが挿入される挿入孔が形成されている。
【0038】
また、ステアリング支持部45の外周部には、嵌合部47が形成されている。嵌合部47は、上方向に延びるように形成された2本の平行の棒状部材47aから構成される。また、図1に示すようにボス部101には、外周方向に突出する突出部101aが形成されている。嵌合部47は、この突出部101aを弾性力で挟むようにして保持する。これにより、スリーブ40にはステアリングホイール100の回転力が直接的に(ロテータ10を介さずに)伝達されるので、スリーブ40はステアリングホイール100と一体的に回転する。
【0039】
また、嵌合部47は、挿入孔12の軸方向に垂直な方向(側面視、図2)で見たときに、嵌合部47の上端(ステアリングホイール100側の端部)は、ロテータ10及びステータ20の上端よりも下側に位置している。換言すれば、嵌合部47がロテータ10及びステータ20から突出していない(嵌合部47が挿入孔12の内部に位置している)。これにより、回転コネクタ装置1をステアリングホイール100又はコンビネーションスイッチに取り付ける際に、嵌合部47が外部に当たって破損することを防止できる。
【0040】
底面部48は、スリーブ40の底面側を構成する部分である。底面部48の中央には、ステアリングシャフトを挿入するための挿入孔が形成されている。
【0041】
また、スリーブ40には、キャンセルカム49が接続されている。キャンセルカム49は、スリーブ40及びステアリングホイール100とともに回転するように構成されている。キャンセルカム49は、ステアリングホイール100の回転が戻った時(即ち自動車の右折又は左折が完了した時)に、方向指示器を操作するターンレバーを元に戻す部材である。
【0042】
保護カバー50は、スリーブ40の一部を覆うように配置され、ステアリングホイール100の回転に従動しないようにステータ20に取り付けられている。保護カバー50は、円筒部51と、底面部52と、を備える。
【0043】
円筒部51は、保護カバー50の側面部を構成する部分であり、円筒状の部材である。底面部52は、円筒部51の下方に接続される円板状の部材である。底面部52の中央には、ステアリングシャフトが挿入される挿入孔が形成されている。また、底面部52の内面側の面には、後述のホール素子62が2つ取り付けられる。
【0044】
回転角検出部60は、ステアリングホイール100の回転を検出する。回転角検出部60は、リング磁石61と、2つのホール素子62と、を備えている。リング磁石61は、スリーブ40の回転体43に取り付けられており、ステアリングホイール100の回転に伴って回転する。リング磁石61は例えば4極構成となっており、S極とN極が90度ごとに交互に配置されている。このリング磁石61が回転することによって、磁束密度が変化する。
【0045】
ホール素子62は、保護カバー50の底面部52の内面側に固定されている。2つのホール素子62は、回転体43(リング磁石61)の軸を中心として例えば略90°角度をなすように固定されている。ホール素子62は、検出した磁束密度に応じた信号を図略の基板等へ出力する。リング磁石61が回転すると磁束密度が変化するので、ホール素子62が出力する電圧も変化する。
【0046】
これにより、ステアリングホイール100の回転角を検出することができる。なお、回転コネクタ装置1の組立てについては後述する。
【0047】
次に、図4を参照して、従来例と本実施形態の回転コネクタ装置の構成、特にステアリングホイールの回転を伝達する構成について説明する。図4は、ステアリングホイールの回転が回転角検出部の回転体まで伝達する過程を示す説明図である。
【0048】
従来例(特許文献1等)の回転コネクタ装置では、ステアリングホイールはロテータに取り付けられる。そして、ロテータにスリーブが取り付けられるとともに、スリーブに回転角検出部が取り付けられる。なお、ステアリングホイール、ロテータ、スリーブ、及び回転角検出部は、一般的には一方を他方に嵌め込むことで固定されているため、ガタつきが生じることがある。
【0049】
従って、上述したように従来例の回転コネクタ装置では、ステアリングホイールの回転がロテータ及びスリーブを経由して回転角検出部に伝達する(図4(a)を参照)。そのため、ガタつきが累積し、ステアリングホイールの回転角と回転角検出部が検出する回転角とがズレることが考えられる。特に、経年劣化によりロテータ及びスリーブの嵌合部分の遊びが大きくなる可能性があり、その場合はズレ量が増大する。
【0050】
これに対し、本実施形態では、ステアリングホイール100の回転は、スリーブ40に直接的に伝達される(図4(b)を参照)。なお、スリーブ40の各部は一体的に構成されているため、スリーブ40の回転はガタつきなく回転体43に伝達する。また、リング磁石61は回転体43に固定されているためガタつきは生じない。従って、本実施形態では、ステアリングホイール100の回転角と、回転角検出部60と、が検出する回転角にズレが殆ど生じない。従って、ステアリングホイール100の回転角を精度良く検出することができる。
【0051】
以上に説明したように、この回転コネクタ装置1は、ステータ20と、ロテータ10と、フレキシブルフラットケーブル30と、スリーブ40と、回転角検出部60と、を備える。ロテータ10は、ステータ20に対して相対回転可能であり、ステアリングホイール100とともに回転する。フレキシブルフラットケーブル30は、ステータ20とロテータ10で覆われる空間に配置される。スリーブ40は、ステータ20に対して相対回転可能であり、ステアリングホイール100を取り付けるための嵌合部47が形成されており、当該ステアリングホイール100とともに回転する。回転角検出部60は、フレキシブルフラットケーブル30を挟んでステアリングホイール100の反対側に配置され、スリーブ40の回転角を検出する。
【0052】
これにより、フレキシブルフラットケーブル30がステアリングホイール100側に配置されるレイアウトの回転コネクタ装置1において、ステアリングホイール100の回転をそのままスリーブ40へ伝え、当該スリーブ40の回転角を検出することができる。そのため、一般的なレイアウトを採用しつつガタつきの累積による回転角の検出精度の低下を防止できる。
【0053】
また、本実施形態の回転コネクタ装置1においては、スリーブ40には、ステアリングホイール100とともに回転する回転体43が一体的に構成されている。回転角検出部60は、スリーブ40の回転体43の回転角を検出する。
【0054】
これにより、スリーブ40の回転がガタつきなく回転体43に伝わるため、スリーブ40に別途回転体を取り付ける場合と比較して、ステアリングホイール100の回転角の検出精度を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態の回転コネクタ装置1においては、スリーブ40に対して相対回転可能であり、ステアリングホイール100の反対側から固定部材に取付可能な保護カバー50を備える。
【0056】
本実施形態の保護カバー50を備える構成では、以下のように簡素な工程で組立てを行うことができる。即ち、初めにフレキシブルフラットケーブル30を挟むようにしてロテータ10をステータ20に取り付ける。次に、スリーブ40をロテータ10に取り付ける。その後、スリーブ40を覆うように保護カバー50を取り付ける。このように、本実施形態では回転コネクタ装置1の組立工程を単純にすることができる。また、保護カバー50は、回転角検出部60を保護する機能に加え、ホール素子62の設置先としての機能を有している。
【0057】
また、本実施形態の回転コネクタ装置1においては、ステアリング取付部は、ステアリングホイール100と嵌合するための嵌合部である。
【0058】
これにより、ステアリングホイール100をスリーブ40に差し込むだけで固定できる。
【0059】
また、本実施形態の回転コネクタ装置1においては、少なくともステータ20には、ステアリングホイール100が挿入される挿入孔12が形成されており、当該挿入孔12の軸方向に垂直な向き(図2)で見たときに、スリーブ40の嵌合部47が、ステータ20又はロテータ10から外側へ突出していない。
【0060】
これにより、嵌合部47が外側へ突出していないので、回転コネクタ装置1をステアリングホイール100に取り付ける際に嵌合部47が外部に当たって破損することを防止できる。
【0061】
また、本実施形態の回転コネクタ装置1においては、ステアリングホイール100の回転力は、スリーブ40を介して、ロテータ10に伝達される。
【0062】
これにより、スリーブ40と、回転角検出部60の回転体43と、が一体的に構成されているため、スリーブ40と回転角検出部60との間におけるガタつきを防止できる。従って、回転角の検出精度を一層向上させることができる。
【0063】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0064】
嵌合部47の突出部101aが形成される間隔も任意であり、例えば間隔を180°にして(即ち向かい合うようにして)配置しても良い。また、嵌合部47及び突出部101aが形成される個数は、1つに限られず、例えば2つ以上とすることができる。また、ステアリングホイール100とスリーブ40を固定する方法も任意であり、固定具を用いて固定しても良い。
【0065】
上記実施形態において、回転角検出部60は、検出部(ホール素子62)が磁場の変化を検出する構成であるが、これに限らず、例えば回転体43を金属製の非対称形状として、回転に伴う誘導起電力の変化を検出しても良い。また、フォトインタラプタ等を用いて回転体43の回転を検出する構成であっても良い。
【0066】
回転コネクタ装置1が備えるフレキシブルフラットケーブル30の数及び巻かれる方向は任意であり、適宜変更することができる。また、フレキシブルフラットケーブル30の形状も任意である。
【0067】
上記実施形態で示した回転コネクタ装置1を構成する各部の形状、配置、及び取付方法は一例であり、適宜変更することができる。例えば、ステータ20は、単一の部材であっても良いし、2つ以上の部材から構成されていても良い。また、回転体43は、ギア形状であっても良い。
【0068】
本発明の回転コネクタ装置は、自動車用のステアリングだけでなく、別の車両のステアリングに取り付けることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 回転コネクタ装置
10 ロテータ(第1回転部材)
12 挿入孔
20 ステータ(固定部材)
30 フレキシブルフラットケーブル(ケーブル)
40 スリーブ(第2回転部材)
43 回転体
47 嵌合部(ステアリング取付部)
50 保護カバー
60 回転角検出部
61 リング磁石
62 ホール素子
図1
図2
図3
図4