(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単結晶SiCの一方の面に絶縁性材料を含んだ流体物を塗布し、この塗布した流体物を前記単結晶SiCの他方の面からマイクロパイプ内に吸引した後、この吸引した流体物をマイクロパイプ内で硬化させ絶縁性部材とすることを特徴とするサブマウントの製造方法。
前記単結晶SiCの一方の面及び/又は他方の面に形成された絶縁性部材の全部又は一部を除去し、前記単結晶SiCの一方の面及び/又は他方の面に前記絶縁性部材が形成されていない領域を設けることを特徴とする請求項1または2に記載のサブマウントの製造方法。
前記絶縁性部材を除去する速度が前記単結晶SiCを除去する速度よりも速い溶液及び/又は砥粒を用いて前記絶縁性部材を除去することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のサブマウントの製造方法。
前記単結晶SiCの一方の面と他方の面とに前記絶縁性部材が形成されている場合に、前記単結晶SiCの一方の面と他方の面とのうち前記絶縁性部材の量が多い方の面を基部に固定すると共に前記絶縁性部材の量が少ない方の面に半導体レーザ素子を設けることを特徴とする請求項5に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
[半導体レーザ装置]
図1は、本発明の実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を示す模式図である。
図1中、(a)は斜視図であり、(b)は(a)中のA-A断面(半導体レーザ素子30の短手方向において、半導体レーザ素子30から基部20まで切断した図)である。
【0010】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本発明の実施形態に係る半導体レーザ装置1は、第1面11、第2面12、及び第1面11と第2面12とに開口を有するマイクロパイプ15を備えた絶縁性の単結晶SiC10と、単結晶SiC10の第1面11側に設けられた導電性の基部20と、単結晶SiC10の第2面12側に設けられた半導体レーザ素子30と、マイクロパイプ15内に形成された絶縁性部材40aと、を備えた半導体レーザ装置である。
【0012】
(単結晶SiC)
単結晶SiC10は、サブマウントとして用いられる。サブマウントは、基部20と半導体レーザ素子30との間に設けられる部材である。単結晶SiC10は、上記したとおり熱引きがよいため、発熱量が大きい高出力の半導体レーザ素子を用いた半導体レーザ装置のサブマウントとして特に好ましく用いることができる。
【0013】
単結晶SiC10としては、一方の面に導電性の部品(例えば基部)を設け、他方の面にも導電性の部品(例えば半導体レーザ素子)を設けた場合に、これらの部品がリークしない程度の抵抗を有した絶縁性のものを用いる。比抵抗が1×10
7Ω・cm以上のものを用いてもよい。
【0014】
単結晶SiC10の形状は特に限定されない。単結晶SiC10の形状の一例としては、直方体や三角柱などを挙げることができる。
【0015】
単結晶SiC10の厚みは、特に限定されない。ただし、単結晶SiC10の厚みは、半導体レーザ素子30や基部20と接合すると熱膨張係数差により単結晶SiC10に負荷がかかることから、また、製造時のハンドリングの容易性の観点から、例えば100μm以上とすることができる。また、単結晶SiC10の厚みを半導体レーザ素子30の厚みよりも厚くすることで、半導体レーザ素子30の熱を効率的に放熱することができる。
【0016】
なお、厚みが400μm以下の単結晶SiC10は、単結晶SiC10の第1面11と第2面12との距離が短いため、マイクロパイプ15内に導電性部材が入り込むと、絶縁性が破壊され易い。したがって、厚みが400μm以下の単結晶SiC10をサブマウントとして用いた従来の半導体レーザ装置はその歩留まりが必ずしもよいものではなかった。しかしながら、本発明の実施形態によれば、マイクロパイプ15内に形成された絶縁性部材40aによって単結晶SiC10の絶縁性が向上するため、厚みが400μm以下の単結晶SiC10をサブマウントとして用いた半導体レーザ装置について、その歩留まりを改善することができる。
【0017】
(マイクロパイプ)
マイクロパイプ15は、主として、単結晶SiC10の結晶成長方向(結晶のC面に対して垂直な方向)に伸びる中空パイプ状の欠陥である。なお、全てのマイクロパイプが一定の方向で伸びるとは限らず、C面に対して斜めに伸びるマイクロパイプもある。
【0018】
マイクロパイプ15には、単結晶SiC10を貫通するものと貫通しないものとがあるが、貫通しないものも貫通するものと同様に、単結晶SiC10の第1面11及び第2面12の少なくとも一方に開口を有する。ただし、単結晶SiC10を貫通するマイクロパイプ15は、単結晶SiC10の第1面11と第2面12との双方に開口を有する。なお、絶縁性部材40aは、単結晶SiC10を貫通するマイクロパイプ15内に形成されるが、単結晶SiC10を貫通していないマイクロパイプ15内には形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。
【0019】
マイクロパイプ15の口径は、例えば0.1μm〜100μm程度であり、本発明の実施形態は、これら様々な口径を有するマイクロパイプ15に適用することができる。ただし、単結晶SiC10の第1面11及び第2面12の少なくとも一方には半田などの導電性部材(接合部材50a、50b)が設けられ、このような部材は毛細管現象によってマイクロパイプ15内に入り込むと考えられる。このため、本発明の実施形態は、毛細管現象の影響が大きくなる小口径のマイクロパイプ15に特に好ましく適用することができる。具体的には、口径が0.1μm〜30μm程度であるマイクロパイプ15に特に好ましく適用することができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、単結晶SiCのウエハから切り出された複数のサブマウント用の個片の中に、マイクロパイプと呼ばれる中空パイプ状の欠陥を有するものが多数混ざっていても(例えば、50%程度の割合で混ざっていても)、マイクロパイプ15内に形成された絶縁性部材40aによって単結晶SiC10の絶縁性が向上するため、単結晶SiC10をサブマウントとして用いた半導体レーザ装置について、その歩留まりを改善することができる。
【0021】
(基部)
基部20は、単結晶SiC10の第1面11側に設けられる。基部20には、半導体レーザ素子30で生じた熱を効率的に逃がすことができるよう、銅や鉄、及びそれらを用いた合金などの導電性部材を用いることができる。
【0022】
基部20を単結晶SiC10の第1面11側に設けるに当たっては、例えば、基部20と第1面11とを接合する接合部材50aを用いることができる。接合部材50aには、半導体レーザ素子30で生じた熱を効率的に逃がすことができるよう、半田材料やAgペーストなどの導電性部材を用いる。
【0023】
(半導体レーザ素子)
半導体レーザ素子30は、単結晶SiC10の第2面12側に設けられる。
【0024】
半導体レーザ素子30を単結晶SiC10の第2面12側に設けるに当たっては、例えば、単結晶SiC10の第2面12にチタン、ニッケル、パラジウム、白金、金、及び/又は銅などの金属層60を設け、この金属層60に半導体レーザ素子30を実装する。半導体レーザ素子30の実装は、接合部材(例:AuSn等の半田材料、銀ペースト等の導電性接着材、金バンプ等の金属バンプ)を用いた接合などにより行うことができるが、
図1(b)では、一例として、接合部材50bを用いて実装する形態を示している。なお、接合部材として半田等の流動性が高い部材を用いた場合には、第2面12からも導電性材料がマイクロパイプ15内に入り込み易くなると考えられるため、特にこのような場合にマイプロパイプ15内の一端から他端に亘って絶縁性部材40aを設けることが好ましい。
【0025】
半導体レーザ素子30には、GaN系やGaAs系などの各種の半導体レーザ素子を用いることができる。ただし、GaNは単結晶SiC10との熱膨張係数差が小さいため、またGaN系半導体レーザはGaAs系半導体レーザよりも駆動電圧が高く発熱し易いため、熱引きがよい単結晶SiC10をサブマウントとして用いる本発明の実施形態は、GaN系半導体レーザ素子を用いる半導体レーザ装置に適している。なお、優れた放熱性を確保するためには、絶縁性部材40aが形成されていない領域に半導体レーザ素子30が接合されていることが好ましい。
【0026】
半導体レーザ素子30には、低出力(例:0.5W以下)のもののほか、高出力(例:1W以上、特に3.5W以上など)のものを用いることができる。高出力の半導体レーザ素子は、低出力の半導体レーザ素子よりも発熱量が多いため、熱引きがよい単結晶SiC10をサブマウントとして用いる本発明の実施形態は、高出力の半導体レーザ素子を用いる半導体レーザ装置に適している。
【0027】
(絶縁性部材)
絶縁性部材40aは、マイクロパイプ15内に形成される。これにより、接合部材50a、50bなどの導電性部材が単結晶SiC10の第1面11側や第2面12側からマイクロパイプ15内に入り込みにくくなるため、単結晶SiC10の絶縁性が向上する。
【0028】
なお、単結晶SiC10は、第1面11側の導電性部材と第2面12側の導電性部材とが接近するほど絶縁破壊され易く、第1面11側の導電性部材と第2面12側の導電性部材とが繋がった場合だけではなく、第1面11側の導電性部材と第2面12側の導電性部材とが離間している場合であっても近接していれば絶縁破壊され得る。したがって、マイクロパイプ15内は、接合部材50a、50bなどの導電性部材が入り込む余地がなくなるように、絶縁性部材40aで空隙なく埋められていることが好ましい。
【0029】
しかしながら、たとえ空隙が存在していても、絶縁性部材40aが存在していれば、第1面11側の導電性部材や第2面12側の導電性部材がマイクロパイプ15内に深く入り込むことが防止されるため、第1面11側の導電性部材と第2面12側の導電性部材とは、絶縁性部材40aがない場合よりも離間することになる。
【0030】
したがって、マイクロパイプ15内が絶縁性部材40aによって完全に埋められておらず、空隙がある場合であっても(例えばマイクロパイプ15の容積の8、9割程度の空隙がある場合であっても)、単結晶SiC10の絶縁性は向上する。空隙がある場合は、絶縁性部材40aがマイクロパイプ15の第1面側11から第2面12側にかけて、空隙を有して設けられている(マイクロパイプ15の一端から他端に亘って分布している)ことが好ましい。これによって、導電性部材がマイクロパイプ15内に深く入り込むことを防止することができる。
【0031】
なお、例えば厚みが約200μmの単結晶SiCの両面にそれぞれ導電性部材を設けて絶縁破壊試験を行い、絶縁破壊する電圧と、一方の導電性部材と他方の導電性部材の距離とを測定したところ、両者の間には相関がみられ、導電性部材間の距離が小さくなるほど絶縁破壊電圧が低下する傾向にあることが確認できた。この傾向は、複数の試料における絶縁破壊電圧と導電性部材間の距離との関係を、横軸が絶縁破壊電圧であり縦軸が導電性部材間の距離であるグラフにプロットすることで確認した。具体的には、絶縁破壊電圧が500V、700V、800V、900V、1000Vである場合における導電性部材間の距離を上記のグラフにプロットし、各絶縁破壊電圧における導電性部材間の距離の中央値を用いて一次近似直線を引いた。
【0032】
このグラフからすると、導電性部材間の距離が15μm以上であれば絶縁破壊電圧を250V以上にできると考えられるが、絶縁破壊電圧は250V以上であることが好ましいため、より優れた絶縁性を得るためには、導電性部材間の距離が15μm以上となる絶縁性部材40aを設けることが好ましい。さらには、上記のグラフからすると、導電性部材間の距離30μm以上であれば500Vまでは絶縁破壊しないと見込まれるが、より好ましい形態においては、500Vの絶縁破壊電圧は確保して単結晶SiC10の耐電圧を向上させたいため、導電性部材間の距離は、500Vの絶縁破壊電圧を確保できると見込まれる30μm以上とすることが好ましい。
【0033】
なお、絶縁破壊電圧とは、電圧を段階的に増加させたときに急激に電流が流れだす電圧である。また、導電性部材間の距離とは、一方の面側の導電性部材と他方の面側の導電性部材の最短距離である。一方の面側の導電性部材と他方の面側の導電性部材の少なくともいずれか一方の一部がマイクロパイプ内に入り込むことで導電性部材間の最短距離が小さくなるので、導電性部材間の最短距離は、主にマイクロパイプ内の導電性部材間の距離を測定することにより求められる。導電性部材間の距離は、例えば、単結晶SiCの側方から撮影したX線写真によって測定することができる。
【0034】
単結晶SiC10の第1面11及び/又は第2面12は、絶縁性部材40aの熱引きが単結晶SiC10よりも悪い場合、絶縁性部材40aが形成されていない領域を有することが好ましく、その全領域が絶縁性部材40aが形成されていない領域であることがより好ましい。このようにすれば、半導体レーザ装置1の放熱性を良くすることができる。
【0035】
なお、単結晶SiC10の第1面11と第2面12とのうち、第2面12側は、半導体レーザ素子30が設けられる側の面であるため、基部20が設けられる側の面である第1面11側よりも熱が滞留しやすい。したがって、単結晶SiC10の一方側の面と他方側の面とで絶縁性部材40aの量に差がある場合は、絶縁性部材40aの量が多い方の面を基部20が設けられる側の面である第1面11とし、少ない方の面を半導体レーザ素子30が設けられる側の面である第2面12とすることが好ましい。
【0036】
絶縁性部材40aには、シリコン酸化物(SiO
2)や酸化アルミニウム(Al
2O
3)などの絶縁性材料からなる部材を用いる。また、シリコン樹脂やエポキシ樹脂などの絶縁性材料を用いてもよい。樹脂を用いる場合には、単結晶SiC10を基部20や半導体レーザ素子30と接合する際に樹脂が熱で溶融してしまわないように、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、高出力の半導体レーザ素子30ほど、有機物を用いた場合にレーザ光による集塵が生じ易いため、集塵が生じないようにSiO
2などの無機物を用いることが好ましい。
【0037】
以上のとおり、本発明の実施形態によれば、単結晶SiC10のマイクロパイプ15内に絶縁性部材40aが形成されるため、第1面11側の導電性部材や第2面12側の導電性部材がマイクロパイプ15内に入り込まず、たとえ入り込んだとしても、絶縁性部材40aがない場合より両者は離間される。したがって、本発明の実施形態によれば、マイクロパイプ15に起因した絶縁性の低下を抑制して、単結晶SiC10をサブマウントとして用いる半導体レーザ装置の歩留まりを改善することができる。
【0039】
図2(a)〜
図2(e)は、本発明の実施形態に係るサブマウントの製造方法の一例を示す模式図である。以下、
図2(a)〜
図2(e)を参照しつつ、説明する。
【0040】
(第1工程)
まず、
図2(a)に示すように、単結晶SiC10の一方の面13をジグ100がある側とは異なる方向に向けつつ、単結晶SiC10の他方の面14とジグ100とを向かい合わせ、絶縁性の単結晶SiC10をジグ100の上に置く。ジグ100は、単結晶SiC10を載置する台である吸着テーブルなどである。
【0041】
ジグ100には、単結晶SiC10を吸着しやすいように、空洞Xが設けられている。例えば
図2(a)に示すように、単結晶SiC10の外縁がジグ100と接するようにジグ100に凹みを形成して空洞Xを設けて吸引すると、空洞X内の圧力が低下するため、単結晶SiC10を安定して固定することができる。
【0042】
なお、空洞Xの開口面積は、例えば、単結晶SiC10の98%程度(他方の面14の面積でみた割合)とすることができる。この場合は、例えば単結晶SiC10の97%程度(他方の面14の面積でみた割合)をサブマウントとして用いることができる。このようにすれば、単結晶SiC10の1%程度(他方の面14の面積でみた割合)は使用されずに除かれるため(97%=98%−1%:いずれも他方の面14の面積でみた割合)、吸着が十分なされた部分のみをサブマウントとして使用することができる。
【0043】
(第2工程)
次に、
図2(b)に示すように、単結晶SiC10の一方の面13に絶縁性材料を含んだ流体物40bを塗布する。流体物40bには、例えば、溶媒(例:有機溶剤)に絶縁性材料が溶解されたもの(例:スピンオンガラス)を用いる。
【0044】
(第3工程)
次に、
図2(c)に示すように、単結晶SiC10の他方の面14をジグ100に吸着する。これにより、塗布した流体物40bが、単結晶SiC10の他方の面14からマイクロパイプ15内に吸引される。このとき、流体物40bが他方の面14に到達するまで吸引することが好ましい。
【0045】
(第4工程)
次に、
図2(d)に示すように、吸引した流体物40bをマイクロパイプ15内で硬化させ絶縁性部材40aとする。例えば流体物40bにスピンオンガラスを用いる場合には、流体物40bを乾燥させて溶媒(流体物40bの一部)を揮発させ、乾燥温度より高い温度において焼成する。これによって、焼成中に金属有機化合物の熱分解が始まり、金属酸化物(SiO
2)が形成される。この場合は、SiO
2が絶縁性部材40aとしてマイクロパイプ15内に形成される。
【0046】
なお、上記のように流体物40bの一部を揮発させると、絶縁性部材40aの体積が流体物40bのときよりも減少する。したがって、マイクロパイプ15内は、絶縁性部材40aで空隙なく埋められた状態ではなく、例えばマイクロパイプ15の容積の8、9割程度の空隙が存在する状態となる。しかしながら、上記のとおり、このような状態であっても、単結晶SiC10の絶縁性は向上する。
【0047】
(第5工程)
次に、
図2(e)に示すように、単結晶SiC10の一方の面13及び/又は他方の面14に形成された絶縁性部材40a(すなわち、マイクロパイプ15内に吸引されず外部に取り残された絶縁性部材40a)を除去する。これにより、単結晶SiC10の一方の面13及び/又は他方の面14に絶縁性部材40aが形成されていない領域が設けられる。一般に、絶縁性部材40aの熱引きは単結晶SiC10よりも悪いため、このように絶縁性部材40aが形成されていない領域が設けられると、半導体レーザ装置1の放熱性は良くなる。
【0048】
なお、絶縁性部材40aの一部を除去する場合は、単結晶SiC10の一方の面13及び/又は他方の面14に絶縁性部材40aが形成されることになるが、この場合は、絶縁性部材40aの厚みを1μm以下とすることが好ましい。上記のとおり、一般に、絶縁性部材40aの熱引きは単結晶SiC10よりも悪いため、このようにすれば、半導体レーザ装置1の放熱性が良くなる。
【0049】
絶縁性部材40aを除去する際には、単結晶SiC10よりも絶縁性部材40aの方が除去されやすい(除去される速度が速い)方法で除去することが好ましい。このようにすれば、絶縁性部材40aの除去が促進される一方で、単結晶SiC10の除去が抑制されるため、可能な限り、単結晶SiC10を除去することなく、絶縁性部材40aのみを除去することができる。
【0050】
このような方法の一例としては、単結晶SiC10よりも絶縁性部材40aの方が除去されやすい(エッチングレートが大きい)溶液を用いてウェットエッチングを行う方法を挙げることができる。このような溶液としては、例えば絶縁性部材40aがSiO
2である場合には、アルカリ性の溶液を用いることが好ましく、具体的にはKOH(水酸化カリウム)溶液やNaOH(水酸化ナトリウム)などを用いることが好ましい。
【0051】
また、上記の方法の一例としては、単結晶SiC10よりも絶縁性部材40aの方が除去されやすい(除去速度が速い)砥粒を用いて機械研磨する方法を挙げることもできる。このような砥粒としては、例えばシリカ(SiO
2)を用いることが好ましい。機械研磨によれば、マイクロパイプ15内に形成された絶縁性部材40aを除去することなく、単結晶SiC10の一方の面13及び/又は他方の面14に形成された絶縁性部材40aのみを除去することができる。
【0052】
さらに、上記の方法の一例としては、上記溶液と上記砥粒とを併用するCMP(Chemical Mechanical Polishing)を挙げることができる。CMPによれば、より平坦な表面を得ることができるため、単結晶SiC10の一方の面13や他方の面14に基部20や半導体レーザ素子30などを安定して固定し易くなる。また、CMPによれば、機械研磨と比較して、単結晶SiC10の除去量を少なくできるので単結晶SiC10の膜厚変化を少なくでき、また、研磨によるダメージを少なくできるので接合部材50a、50bとの密着性が良いものとできる。
【0053】
以上説明した本発明の実施形態に係るサブマウントの製造方法によれば、単結晶SiC10の一方の面13に絶縁性部材40aとなる流体物40bを塗布した後に単結晶SiC10の他方の面14をジグ100に吸着するため、CVDや熱酸化で絶縁性部材40aをマイクロパイプ15内に形成する方法よりも、短い時間(数分程度)で精度良くマイクロパイプ15内に絶縁性部材40aを形成することができる。したがって、本発明の実施形態に係るサブマウントの製造方法は、本発明の実施形態に係る半導体レーザ装置1の量産に適している。また、吸着によって流体物40bをマイクロパイプ15に引き込むため、主面に対して傾斜した方向に伸びるマイクロパイプ15や単結晶SiC10内で屈曲したマイクロパイプ15についても、その内部に絶縁性部材40aを形成することができる。
【0054】
なお、上記の工程で用いる単結晶SiC10は、サブマウント用としてウエハから切り出された後の状態にあるものでもよいが、切り出す前のウエハの状態にあるものの方が好ましい。ウエハの方が量産に適しているからである。
【0055】
また、単結晶SiC10のジグ100と接する部分(第1工程の説明で言及した2%の部分)はジグ100に吸着されず、この部分のマイクロパイプ15内には絶縁性部材40aが形成されないため、この点からもウエハの方が上記の工程で用いる単結晶SiC10に適している。
【0056】
つまり、上記の工程をウエハの状態にある単結晶SiC10で行えば、サブマウント用の個片を切り出す際にジグ100と接していた外縁の部分(第1工程の説明で言及した2%の部分)を除いて切り出すことができるため、絶縁性部材40aが形成された領域だけをサブマウントとして使用することができる。個片化する工程は、流体物40bを硬化する上記第4工程以降に行うことが好ましい。さらには、上記第5工程は個片化した状態よりもウエハの状態である方が効率的に行うことができるため、個片化工程は第5工程の後がより好ましい。
【0057】
なお、上記のとおり、本発明の実施形態では、ジグ100と接していた外縁の部分(第1工程の説明で言及した2%の部分)にさらに1%のマージンを加えた領域を除いて切り出すことにより、吸引が十分なされた部分のみをサブマウントとして使用することにしている。
【0058】
図3(a)、(b)は、以上のような工程によって形成されたサブマウントを用いた本発明の実施形態に係る半導体レーザ装置の製造方法の一例を示す模式図である。
【0059】
上記の工程の後、例えば、ジグ100に吸着した単結晶SiC10の他方の面14を単結晶SiC10の第2面12としてこの面の側に半導体レーザ素子30を設け、流体物40bを塗布した単結晶SiC10の一方の面13を単結晶SiC10の第1面11としてこの面の側に基部20を設けることができる。
【0060】
これは、例えば、
図3(a)に示すように、単結晶SiC10の他方の面14(第2面12)に金属層60を設けると共に、単結晶SiC10の他方の面14(第2面12)と一方の面13(第1面11)とに導電性の接合部材50a、50bを固体の状態で設け、単結晶SiC10の一方の面13(第1面11)を加熱した基部20上に置き、単結晶SiC10の他方の面14(第2面12)に半導体レーザ素子30を置くことにより行う。
【0061】
このようにすれば、
図3(b)に示すように、固体の状態にあった接合部材50a、50bが基部20の熱によって溶け単結晶SiC10の一方の面13(第1面11)側が基部20に接合されると共に、この接合と同時にあるいはこの接合に前後して、単結晶SiC10の他方の面14(第2面12)側に半導体レーザ素子30が接合される。
【0062】
したがって、単結晶SiC10の一方の面13(第1面11)側が導電性の基部20に固定されると共に、単結晶SiC10の他方の面14(第2面12)側に半導体レーザ素子30が設けられる。
【0063】
なお、上記の説明とは異なり、ジグ100に吸着した単結晶SiC10の他方の面14を単結晶SiC10の第1面11としてこの面の側に基部20を設け、流体物40bを塗布した単結晶SiC10の一方の面13を単結晶SiC10の第2面12としてこの面の側に半導体レーザ素子30を設けることも可能である。
【0064】
しかしながら、
図2(d)に示すように、単結晶SiC10の一方の面13は、流体物40bが塗布される面であるため、絶縁性部材40aを適切に除去しない限り、絶縁性部材40aの量が単結晶SiC10の他方の面14よりも多くなり易い。
【0065】
したがって、上記の説明のとおり、ジグ100に吸着した単結晶SiC10の他方の面14は単結晶SiC10の第2面12とし、流体物40bを塗布した単結晶SiC10の一方の面13は単結晶SiC10の第1面11とすることが好ましい。
【0066】
これにより、単結晶SiC10の一方の面13と他方の面14とのうち絶縁性部材40aの量が多い方の面に基部20が設けられると共に絶縁性部材40aの量が少ない方の面(絶縁性部材40aがまったく形成されていない面を含む。)に半導体レーザ素子30が設けられる。
【0067】
なお、本実施形態では単結晶SiC10を半導体レーザ装置1のサブマウントとして用いたが、例えばLED装置など、半導体レーザ装置以外の装置に用いることもできる。ただし、半導体レーザ素子は、LED素子と異なり、素子全体の面積に占める発光領域の面積が極端に小さいため、発光領域に熱が集中し易く、より高い放熱性が求められる傾向がある。このため、熱伝導率に優れた材料である単結晶SiCは、半導体レーザ素子を載置するサブマウント(ヒートシンク)として特に適していると考えられる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。