(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500350
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20190408BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
G01N35/00 C
G01N35/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-115039(P2014-115039)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-230182(P2015-230182A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土本 健太郎
【審査官】
島田 保
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−112786(JP,A)
【文献】
特開2007−333466(JP,A)
【文献】
特開2008−275585(JP,A)
【文献】
特開2013−205365(JP,A)
【文献】
特開2007−240222(JP,A)
【文献】
特開2002−048800(JP,A)
【文献】
特開2010−261823(JP,A)
【文献】
米国特許第04267149(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容した試薬容器と、試薬容器に付された識別コードを読み取るハンディーコードリーダと、前記ハンディーコードリーダが読み取った識別コードが有する試薬情報を登録・表示する試薬情報登録・表示手段と、前記試薬を用いて試料の測定を行なう測定部と、を備えた自動分析装置であって、
前記試薬情報は前記試薬の用途を含んでおり、前記試薬情報登録・表示手段は前記用途に関連付けられた既定の表示領域を有する、前記自動分析装置。
【請求項2】
同じ用途の試薬を収容した複数の試薬容器と前記試薬とは異なる用途の試薬を収容した複数の試薬容器とを収納可能な試薬収納部と、試薬容器に付された識別コードを読み取るハンディーコードリーダと、前記ハンディーコードリーダが読み取った識別コードが有する試薬情報を登録・表示する試薬情報登録・表示手段と、前記試薬を用いて試料の測定を行なう測定部と、を備えた自動分析装置であって、
前記試薬情報登録・表示手段は前記試薬の用途に関連付けられた既定の表示領域を有する、前記自動分析装置。
【請求項3】
試薬情報登録・表示手段は、前記ハンディーコードリーダが読み取った識別コードが有する試薬情報が同じ用途の試薬を収容した複数の試薬容器を指している場合、前記試薬収納部における試薬容器の収納位置を選択する入力画面をさらに表示する、請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
試薬情報登録・表示手段は、前記ハンディーコードリーダが読み取った識別コードが有する試薬情報の登録を受け付ける受付手段をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項5】
受付手段による受け付けにより、試薬情報が読み取られた試薬を使用可能の状態にするための液置換動作を開始させる、請求項4に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の試薬を用いて試料を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置により試料を分析するためには、試料と混合する反応試薬、希釈液、洗浄液等の液体消耗品(以下、まとめて試薬という)を必要とする。試薬には、1テストごとに容器に小分けして供給する形態、複数のテスト回数をまかなう分量の試薬を容器に入れて供給する形態、配管等により連続的に試薬を供給する形態などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
試薬の供給を、複数のテスト回数をまかなう分量の試薬を容器に入れて供給する場合、測定が進行するにつれ、試薬容器中の試薬量が減少するため、試薬量が不足した時点で新たな試薬容器に交換する必要がある。臨床検査用の分析装置の場合、トレーサビリティ確保のため、通常、容器への試薬の注ぎ足しは行わず、容器ごと交換する。
【0004】
試薬容器を交換する際、新たな試薬情報(ロット番号、シリアル番号、製造日など)を分析装置の制御部(コンピュータ)に入力する必要がある。試薬情報の入力は、ユーザーの負担軽減と誤入力防止のため、試薬容器に付された識別コードを光学式読取手段(コードリーダー)で読み取らせるのが一般的である。
【0005】
試薬の種類が多い場合や同じ種類の試薬容器を複数備える構成(たとえば、洗浄液容器を2本、分注液容器を2本、基質容器を1本、および基質補助液容器を1本備える構成)の場合、従来は
図1に示すように、試薬の種類または試薬容器ごとに試薬情報の入力および登録を行なっていた。
図1は2本ある洗浄液容器のうちの一方(洗浄液1)について試薬情報を入力するタブが選択されている状態を示す。分析装置を稼働させる際は、使用する試薬容器ごとに入力画面のタブをクリックしてウィンドウを切り替え、試薬情報を個別に入力・登録する必要がある。そのため測定前の操作が多く、作業時間が長くなっていた。
【0006】
本発明の目的は、使用する試薬の種類が多い場合や同じ種類の試薬容器を複数備える自動分析装置において、試薬情報の入力・登録操作を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明の第一の態様は、
試薬を収容した試薬容器と、試薬容器に付された識別コードを読み取る読取手段と、読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報を登録・表示する試薬情報登録・表示手段と、前記試薬を用いて試料の測定を行なう測定部と、を備えた自動分析装置であって、
前記試薬情報は前記試薬の属性を含んでおり、前記試薬情報登録・表示手段は前記属性に関連付けられた既定の表示領域を有する、前記自動分析装置である。
【0009】
さらに本発明の第二の態様は、
同じ属性の試薬を収容した複数の試薬容器と前記試薬とは異なる属性の試薬を収容した複数の試薬容器とを収納可能な試薬収納部と、試薬容器に付された識別コードを読み取る読取手段と、読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報を登録・表示する試薬情報登録・表示手段と、前記試薬を用いて試料の測定を行なう測定部と、を備えた自動分析装置であって、
前記試薬情報登録・表示手段は前記試薬の属性に関連付けられた既定の表示領域を有する、前記自動分析装置である。
【0010】
また本発明の第三の態様は、試薬情報登録・表示手段は、読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報が同じ属性の試薬を収容した複数の試薬容器を指している場合、前記試薬収納部における試薬容器の収納位置を選択する入力画面をさらに表示する、前記第二の態様に記載の自動分析装置である。
【0011】
また本発明の第四の態様は、試薬情報登録・表示手段は、読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報の登録を受け付ける受付手段をさらに備えた、前記第一から第三の態様のいずれかに記載の自動分析装置である。
【0012】
また本発明の第五の態様は、受付手段による受け付けにより、試薬情報が読み取られた試薬を使用可能の状態にするための液置換動作を開始させる、前記第四の態様に記載の自動分析装置である。
【0013】
本発明において試薬容器に付される識別コードは、試薬容器内の試薬を識別できるものであれば特段の制限はなく、試薬容器に付されるラベルに印字されたバーコード、ドットコード、二次元コード等があげられる。本発明における読取手段は前記識別コードを電子情報に変換できるものであれば、特に制限はない。
【0014】
本発明において試薬情報とは、化学的組成や試薬形態などの試薬の属性に関する情報を含んでいればよいが、さらに試薬の製造ロット、製造日、使用期限、試薬の残量に関する情報を含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、試薬を収容した試薬容器と試薬容器に付された識別コードを読み取る読取手段と読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報を登録・表示する試薬情報登録・表示手段と前記試薬を用いて試料の測定を行なう測定部とを備えた自動分析装置において、前記試薬情報は前記試薬の属性を含んでおり、前記試薬情報登録・表示手段は前記属性に関連付けられた既定の表示領域を有することを特徴としている。
【0016】
従来の自動分析装置では、試薬容器を交換し登録する際、交換する試薬容器の試薬属性にそれぞれ対応した登録用ダイアログを呼び出したり、登録したい属性の入力箇所にカーソルをフォーカスしてから試薬容器に付された識別コードの読み取りを行なったりしていた。一方、本発明の自動分析装置では、ユーザは登録しようとする試薬容器に付された識別コードを読取手段で読み取るだけで、読み取った識別コードが有する試薬情報(試薬の属性)が既定の表示領域に表示され、引き続き別の試薬容器を登録する場合は、同じ試薬情報登録・表示手段の操作画面を表示させた状態で、読取手段による識別コードの読み取り操作をすることで、読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報(試薬の属性)に応じて、既定の表示領域にその試薬情報が表示される。そのため、使用する試薬の種類が多い場合であっても、試薬情報の入力・登録操作を簡素化できる。
【0017】
なお、本発明の自動分析装置が、
同じ属性の試薬を収容した複数の試薬容器と前記試薬とは異なる属性の試薬を収容した複数の試薬容器とを収納可能な試薬収納部と試薬容器に付された識別コードを読み取る読取手段と読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報を登録・表示する試薬情報登録・表示手段と前記試薬を用いて試料の測定を行なう測定部とを備え、
前記試薬情報登録・表示手段が、前記試薬の属性に関連付けられた既定の表示領域を有し、かつ前記読取手段が読み取った試薬情報が試薬の属性が同じ複数の試薬容器を指している場合、前記試薬収納部における試薬容器の収納位置を選択する入力画面をさらに表示する手段、
であると、試薬容器の収納位置に関するユーザーの意図を自動分析装置に教えることができる点で好ましい。
【0018】
また本発明の自動分析装置において、試薬情報登録・表示手段に読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報の登録を受け付ける受付手段をさらに備えると、新規に搭載したまたは交換したすべての試薬の登録を一括して実施することができる点で好ましい。さらに、前記受付手段による受け付けにより、試薬情報が読み取られた試薬を使用可能の状態にするための液置換動作を開始させる機能を設けると、試薬の液置換指示の操作を簡略化することができる点で、より好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来の自動分析装置における試薬情報登録画面。
【
図3】本発明の自動分析装置に備える試薬情報登録・表示手段の一例を示す操作画面。
【
図4】本発明の実施形態における、試薬容器の位置を指定するダイアログ。
【
図5】本発明の実施形態における、試薬の登録と置換を確認するダイアログ。
【
図7】本発明の自動分析装置における試薬容器交換の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0021】
図2に本発明の自動分析装置の一例を示す。
図2に示す自動分析装置は、試薬を用いて試料の測定を行なう測定部1と、試薬容器2に付された識別コード(記号A1、A2等で表す。)を読み取る読取手段4と、読取手段4が読み取った識別情報が有する試薬情報(試薬の属性に関する情報を含む)を登録・表示する試薬情報登録・表示手段5と、を備えており、試薬情報登録・表示手段5には前記試薬の属性に関連付けられた既定の表示領域6を有している。また
図2に示す自動分析装置では、同じAという属性の試薬を収容した試薬容器A1・A2、同じBという属性の試薬を収容した試薬容器B1・B2、Cという属性の試薬を収容した試薬容器C、およびDという属性の試薬を収容した試薬容器Dが試薬収納部3内に収納されている。例えば、ここで試薬容器A2およびB1を、新たな試薬容器A2およびB1に交換する際は、まず新たな試薬容器に付された識別コードを読取手段4により読み取る。
【0022】
読取手段が読み取った識別コードが有する試薬情報は、試薬情報登録・表示手段5に表示される。試薬情報登録・表示手段5における操作画面の一例を
図3を示す。
図3では、「共通試薬交換」と称する一つの表示画面に試薬情報表示画面と試薬情報入力画面が同時に表示されている。
図3の上半分は本発明の自動分析装置が備える測定部で使用する試薬に関する情報(使用中の共通試薬情報)を表示しており、
図3の下半分は交換対象試薬に関する情報入力画面(共通試薬情報の入力)である。具体的には
図3の上半分(使用中の共通試薬情報)には、同じ属性(洗浄液)の試薬を収容した2本の試薬容器(洗浄液1および洗浄液2)、同じ属性(分注液)の試薬を収容した2本の試薬容器(分注液1および分注液2)、基質液を収容した試薬容器(基質液)、および基質補助液を収容した試薬容器(基質補助液)に関する情報が表示されている。各試薬容器に表示されている、ロット、シリアルおよび使用期限は識別コードが有する試薬情報であり、オンボード残日数、残りテスト数および備考は試薬の使用状態に関する試薬情報である。ここで、ロットとは試薬の同一製造品の一定量を表し、シリアルは個々の試薬容器の識別単位である。
【0023】
以下、本発明の自動分析装置において、試薬容器を交換する際の手順を、フローチャート(
図7)および
図3から6を用いて説明する。
【0024】
まず試薬情報登録・表示手段に試薬容器に収容した試薬に関する情報の画面を表示させる(S1)。
図3の上半分において基質液の残りテスト数が0となっているため、基質液容器を交換する必要がある。そこで、新しい基質液容器に付された識別コードをハンディーコードリーダなどの読取手段で読み取る(S2)。基質液容器は、同じ属性の試薬容器がないため、ステップS3でNoとなり、ステップS6に進む。ただちに
図3の下半分の試薬情報入力画面のうち基質液容器(基質液)の入力ボックスに、ロット、シリアルおよび使用期限が自動的に入力される。これは、試薬情報登録・表示手段が、読取手段が読み取った識別コードが有する試薬の属性(この場合、基質液)に関連付けられた規定の表示領域を有しているため可能となっている。
【0025】
ひきつづきステップS7において、交換する全試薬の情報取得が済んでいるかを判断する。
図3の上半分では、洗浄液2がオンボード期限切れ(試薬容器を試薬収納部に搭載した後、一定期間を経過したもの)、分注液1が使用期限切れ(試薬製造日を起点として定められた期限を経過したもの)となっている。そのためステップS7ではNoとなり、S2に進む。ユーザーは洗浄液容器(洗浄液2)および分注液容器(分注液1)をそれぞれ交換するために、新たな試薬容器に付された識別コードをハンディーコードリーダなどの読取手段で読み取る(S2)。洗浄液容器や分注液容器は、試薬収納部に同じ属性の試薬を収容した試薬容器を複数収納可能なため、ステップS3ではYesとなり、ステップS4に進み、収納位置の選択画面が表示される(
図4)(S4)。ユーザーは
図3の上半分に表示された試薬情報を参照して、試薬容器の収納位置(洗浄液2の場合は収容部2)を指定する(S5)。収納位置が指定されると、
図3下半分の試薬情報入力画面のうち既定の入力ボックス(表示領域)に、ロット、シリアルおよび使用期限が自動的に入力される(S6)。
【0026】
ひきつづきステップS7において、交換する全試薬の情報取得が済んでいるかを判断し、Noの場合は、前述したステップで交換する試薬の情報を入力する。交換すべき全ての試薬の情報が入力されると、ステップS7でYesとなり、ステップS8に進む。交換する試薬容器を試薬収納部の所定の収容部にセットした後、必要な試薬情報の読み取りの終了を受け付ける意味でユーザーは登録ボタンを押す(S8)。すると、試薬の登録と置換を確認するダイアログが現れる(
図5)(S9)。
図5に示すダイアログは、交換した試薬情報を一括して試薬情報登録・表示手段に登録する機能と、一種類しか搭載できない試薬の液置換操作を開始させる機能を有する。なお、登録ボタンを押したとき試薬がセットされていない場合は
図6に示す警告ダイアログが現れる。
図5に示すダイアログ(S9)でOKボタンが押されると、試薬情報表示画面(
図3の上半分)の更新が行なわれ、交換した試薬情報が表示される。最後にステップS11において、試薬収納部に収納する試薬容器が1本の試薬に対し、当該試薬容器を使用可能にするための液置換指示を開始する。
【符号の説明】
【0027】
1:測定部
2:試薬容器
3:試薬収納部
4:読取手段
5:試薬情報登録・表示手段
6:表示領域