(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリシジル基を有する不飽和単量体(a1−1)及び脂肪族第3級アミン(a1−2)を反応させて得られる化合物(a1)と不飽和単量体(a2)とを重合させて得られるガラス転移温度が50℃以下の重合体(A)、及び、水(B)を含有することを特徴とするコンクリート打継剤。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のコンクリート打継剤は、オグリシジル基を有する不飽和単量体(a1−1)及び脂肪族第3級アミン(a1−2)を反応させて得られる化合物(a1)と不飽和単量体(a2)とを重合させて得られるガラス転移温度が50℃以下の重合体(A)、及び、水(B)を含有するものである。
【0009】
前記重合体(A)は、コンクリート打継目に優れた接着強度を付与する上で必須の成分であり、グリシジル基を有する不飽和単量体(a1−1)及び脂肪族3級アミン(a1−2)を反応させて得られる化合物(a1)と不飽和単量体(a2)とを重合させて得られるものである。
【0010】
前記重合体(A)のガラス転移温度としては、コンクリートへ密着性を上げ、優れた接着強度を得る点で50℃以下であることが必須である。前記重合体(B)のガラス転移温度が50℃を超える場合には、所望の接着強度が得られない。前記重合体(A)のガラス転移温度としては、接着強度をより一層向上できる点から、−10〜20℃の範囲であることが好ましい。なお、前記重合体(A)のガラス転移温度は、JISK7121−1987に準拠し、DSCにより測定した値を示し、具体的には、示差走査型熱量計装置内に前記重合体(A)を入れ、(Tmg+50℃)まで昇温速度10℃/分で昇温した後、3分間保持し、その後急冷し、得られた示差熱曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0011】
前記重合体(A)の含有量としては、コンクリートへの浸透性、及び、保存安定性の点から、コンクリート打継剤中20〜60質量%の範囲であることが好ましく、30〜50質量%の範囲がより好ましい。
【0012】
前記グリシジル基を有する不飽和単量体(a1−1)としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等を用いることができる。これらの単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記脂肪族3級アミン(a1−2)は、コンクリート打継剤にカチオン性基を付与できるため、コンクリートへの浸透や吸着により優れた接着強度を発現することができる。
【0014】
前記脂肪族3級アミン(a1−2)としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基を3つ有するアミン化合物を用いることができる。これらの中でも、重合体(A)の良好な安定性が得られる点で、炭素原子数1〜2のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが炭素原子数6〜20のアルキル基であるアミン化合物を用いることが好ましく、2つのメチル基と、残りが炭素原子数6〜20のアルキル基であるアミン化合物を用いることよりが好ましい。
【0015】
前記化合物(a1)と反応させる不飽和単量体(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエステル化合物;(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸等の一塩基酸;(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、ビニルエーテル、アクリロニトリル等のビニル化合物;ジアリルフタレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパン鶏メタクリレートなどを用いることができる。これらの単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記化合物(a1)と前記不飽和単量体(a2)との反応としては、例えば、前記不飽和単量体(a2)100質量部に対して、好ましくは前記化合物(a1)を0.2〜10質量部の範囲の使用量により公知のラジカル重合法を行うことが挙げられる。具体的には、前記化合物(a1)と水と必要に応じて乳化剤及び開始剤とを撹拌混合した後、例えば0〜100℃の温度下で、前記不飽和単量体(a2)を一括、又は連続的に滴下し、例えば30〜90℃の温度にてラジカル重合させる方法が挙げられる。
【0017】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等を用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記乳化剤を用いる場合の使用量としては、前記化合物(a1)及び前記不飽和単量体(a2)の合計質量に対して、0.001〜1質量%の範囲であることが好ましい。
【0018】
前記開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等のラジカル重合開始剤や、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、例えば、アスコルビン酸等の還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
【0019】
前記重合開始剤の代表的なものである過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、有機過酸化物として、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
【0020】
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、前記化合物(a1)及び前記不飽和単量体(a2)の合計質量に対して、10質量%以下とすることが好ましい。
【0021】
前記水(B)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、市水等を用いることができる。前記水(B)の含有量としては、良好な作業性が得られる点から、コンクリート打継剤中40〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明のコンクリート打継剤は、前記重合体(B)、及び、前記水(B)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0023】
前記その他の添加剤としては、例えば、顔料、難燃剤、可塑剤、ワックス、消泡剤、酸化防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明のコンクリート打継剤により、コンクリートを打継する際には、内継するコンクリート面に対し、前記コンクリート打継剤を100〜500g/m
2の量で散布することが好ましく、100〜400g/m
2の量の散布がより好ましい。前記散布は、噴霧器、ジョーロ等を使用する方法が挙げられる。
【0025】
以上、本発明のコンクリート打継剤は、コンクリート打継目に優れた接着強度を付与することができる。
【0026】
本発明のコンクリート打継剤を使用して得られたコンクリート構造物の曲げ強度としては、2〜2.5(N/mm
2)の範囲であることが好ましく、2.3〜2.45(N/mm
2)の範囲がより好ましい。なお、前記コンクリート構造物の曲げ強度の測定方法は、実施例にて記載する。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
撹拌棒、温度計、及び窒素気流管を備えた反応容器に、イオン交換水を119質量部、花王株式会社製「ラテムルK−120」(アリルグリシジルエーテル(以下「AGE」)とN,N−ジメチルラウリルアミン(以下「DMLA」)との付加反応物の30質量%水溶液)を10質量部、乳化剤として花王株式会社製「エマルゲン920」(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)0.5質量部を仕込み、窒素気流下で50℃に加温し撹拌した。
次いで、80℃に加温し、クメンハイドロパーオキサイドを0.5質量部仕込み、更にブチルアクリレート(以下「BA」と略記する。)55質量部及びメチルメタクリレート45質量部からなる混合物を180分間要して滴下し、更に30分間保持して重合させた。次いで、30℃に冷却し、2%塩酸1質量部にてpH205.0に調整し、ガラス転移温度;5℃の重合体を含有する、不揮発分;45質量%、粘度;120mPa・sのコンクリート打継剤(X)を得た。
【0029】
次いで、コンクリートを打設するにあたり、コンクリートとしては、JISA5308:2014に準拠したレディーミクストコンクリート「普通30−10−20N」(呼び強度;30(N/mm
2)、スランプ;10±2.5(cm)、粗骨材の最大寸法;20(mm)の普通ポルトランドセメント)を使用した。
前記レディーミクストコンクリートを型枠に流し込み、断面;150mm×150mm、長さ;290mmとなるように打設した。打設後3時間経過後に、打継面のノロ等を除去し、前記コンクリート打継剤(X)を300g/m
2霧吹きで散布した。この打継処理した打設物を型枠にセットし、20℃、湿度65%の環境下で7日間養生した。その後、更に、前記レディーミクストコンクリートを前記打継面の上に流し込み、長さ290mmとなるように打設し、3時間放置することでコンクリート構造物を得た。
【0030】
[比較例1]
ノニルフェノールエチレンオキサイド18モル付加体硫酸ナトリウム塩を3質量部、イオン交換水を140質量部を撹拌、溶解し、乳化剤水溶液を得た。
次いで、撹拌棒、温度計、及び窒素気流管を備えた反応容器に、アクリル酸ブチルを68質量部、メタクリル酸ブチルを30質量部、メタクリル酸を2質量部入れ、前記乳化剤水溶液143質量部のうち、50質量部を乳化混合し、このうち5質量部を反応容器に入れ、残りの乳化剤水溶液を加え65℃まで昇温した。その後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩基酸を0.3質量部、イオン交換水を0.8質量部に溶解し、反応容器に添加し、直ちに残りの不飽和単量体乳化物145質量部を60分間にわたって反応容器に滴下し、65℃で重合を行った。滴下終了後、65℃まで180分間熟成を行い重合を完結させた。次いで、室温まで冷却後、不揮発分を40質量%に調整し、コンクリート打継剤(X’)を得た。
コンクリート打継剤(X)の代わりに、得られたコンクリート打継剤(X’)を使用した以外は、実施例1と同様にしてコンクリート構造物を得た。
【0031】
[比較例2]
コンクリート打継剤を使用しないでコンクリート構造物を得た。
具体的には、実施例1と同様のレディーミクストコンクリートを型枠に流し込み、断面;150mm×150mm、長さ;580mmとなるように打設した。打設後3時間放置することでコンクリート構造物を得た。
【0032】
[接着強度の評価]
実施例及び比較例で得られた長さ;580mmのコンクリート構造物に対し、JISA1106:2006に準拠して3等分曲げ強度試験を実施し、曲げ強度(N/mm
2)を測定し、接着強度とした。
【0033】
【表1】
【0034】
以上、本発明のコンクリート打継剤は、コンクリート打継目に優れた接着強度を付与することができることが分かった。
【0035】
一方、比較例1は公知のコンクリート打継剤を使用した例であるが、接着強度が不充分であった。また、比較例2は、打継剤を使用しない例であるが、接着強度が不良であった。